説明

計量式吸入器を監視するためのシステム及び方法

分注における一以上の特徴を監視する対象者に対し、計量された薬剤を分注するためのシステム(10)及び方法(78)。その薬剤は、その対象者に対する分注のためにエアロゾル化され、その対象者がその薬剤を気道に吸入できるようにする。監視される分注における一以上の特徴は、薬剤のエアロゾル化によって生成される超音波エネルギに基づく。その監視される分注における一以上の特徴は、分注された薬の数、残っている薬の数、薬剤が分注されずに残っているかどうか、及び/又は、薬剤の分注における他の特徴のうちの一以上のものを含み得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この特許出願は、合衆国法典第35巻第119条(e)の下で、2008年12月11日出願の米国仮出願第61/121580号に関する優先権の利益を主張し、本書においてその内容を参照により援用する。
【0002】
この出願は、“薬剤の噴霧化を監視するためのシステム及び方法”をタイトルとする、2008年12月11日出願の米国特許出願第61/121582号に関し、本出願においてその全てを参照により援用する。
【0003】
本発明は、計量式吸入器を通じた薬剤の分注における一以上の特徴の監視に関する。
【背景技術】
【0004】
エアロゾル化された薬剤を対象者に分注するための既知のシステムの一つに計量式吸入器がある。一般的に、計量式吸入器は、推進剤とともに薬剤を保持するキャニスタから薬剤を分注する。推進剤は、キャニスタから分注される薬剤をエアロゾル化する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
計量式吸入器に関連する欠点の一つは、対象者が薬剤の分注における一以上の特徴を正確に監視できない点にある。例えば、対象者は、分注された投与回数が分からなくなるかもしれない。別の例として、対象者は、いつの時点で全ての(或いは実質的に全ての)薬剤がキャニスタから分注されたかが正確に分からないかもしれず、また、実際には如何なる薬剤をも受けることなしに吸入器を使い続けてしまうかもしれない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、計量式吸入器を用いた対象者の治療を監視するように構成されるシステムに関する。一実施例において、そのシステムは、センサ及びプロセッサを含む。そのセンサは、吸入器からの一回の薬剤の分注によって生成される超音波エネルギに関する情報を伝える一以上の出力信号を生成するよう構成される。そのプロセッサは、そのセンサによって生成された一以上の出力信号を受信し、受信した一以上の出力信号によって伝えられる、一回の薬剤の分注によって生成される超音波エネルギに関する情報に基づいて、その薬剤の分注における一以上の特徴を監視するよう構成される。
【0007】
本発明の別の態様は、計量式吸入器を用いた対象者の治療における一以上の特徴を監視する方法に関する。一実施例において、その方法は、吸入器からの一回の薬剤の分注によって生成される超音波エネルギに関する情報を伝える一以上の出力信号を生成すること、生成された一以上の出力信号に基づいて薬剤の分注における一以上の特徴を監視すること、及び、監視された薬剤の分注における一以上の特徴に関する情報をその薬剤を受ける者に提供することを含む。
【0008】
本発明のさらに別の態様は、計量式吸入器を用いた対象者の治療における一以上の特徴を監視するよう構成されたシステムに関する。一実施例において、そのシステムは、一回の薬剤の分注によって生成される超音波エネルギに関する情報を伝える一以上の出力信号を生成する手段、生成された一以上の出力信号に基づいて薬剤の分注における一以上の特徴を監視する手段、及び、監視された薬剤の分注における一以上の特徴に関する情報をその薬剤を受ける者に提供する手段を含む。
【0009】
本発明におけるこれらの並びに他の目的、特徴、及び特性は、動作方法、関連する構造要素の機能、部品の組み合わせ、及び、製造における簡潔さとともに、その全てが本明細書の一部を形成する添付図面を参照しながら、以下の説明及び添付の請求項を検討することでより明確なものとなる。なお、同様の参照番号は、種々の図面における対応する部品を指定する。しかし、当然のことながら、それら図面は、解説及び説明のみを目的とするものであって、本発明の限界の定義を意図するものではない。明細書及び特許請求の範囲で使用されるように、特に明示されない限り、“一の”、“一つの”及び“その”の単数形は、複数の指示対象を含むものとする。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一以上の実施例にしたがって、計量された薬剤を対象者に分注するよう構成されたシステムを示す。
【図2】本発明の一以上の実施例にしたがって、計量された薬剤を対象者に分注するよう構成されたシステムを示す。
【図3】本発明の一以上の実施例にしたがって、薬剤の分注における一以上の特徴を監視する分注モニタを示す。
【図4】本発明の一以上の実施例にしたがって、薬剤の分注の際に超音波エネルギセンサによって検出される信号のプロットを示す。
【図5】本発明の一以上の実施例にしたがって、超音波エネルギセンサによって検出される、環境ノイズに起因する信号のプロットを示す。
【図6】本発明の一以上の実施例にしたがって、対象者に対する薬剤の分注を監視する方法を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、一実施例にしたがって、計量された薬剤を対象者に分注するように構成されたシステム10を示す。システム10は、対象者への分注のために薬剤をエアロゾル化し、対象者が薬剤を気道に吸入できるようにする。一実施例において、システム10は、薬剤の分注における一以上の特徴を監視する。例えば、システム10は、システム10によって分注された薬剤の数、システム10内に残っている薬剤の数、未だ分注されていない薬剤があるか、及び/又は、薬剤の分注における他の特徴を監視する。一実施例において、システム10は、薬剤キャニスタ14、吸入器ブーツ16、及び分注モニタ18を含む。
【0012】
薬剤キャニスタ14は薬剤を保持し、計量された薬剤をエアロゾル化された形で分注する。薬剤キャニスタ14は、タンク20とステム22を含む。タンク20は、一以上の他の流体とともに薬剤を保持する。ステム22は中空であり、タンク20の方に内側に押下された場合に、薬剤をタンク20から分注する。タンク20内において、薬剤は、少なくともエアロゾル推進剤(例えば、CFC型推進剤、HFA型推進剤等である。)とともに保持される。ステム22の押下によってキャニスタ14が作動すると、計量された量の加圧液体(薬剤及び推進剤を含む。)が、ステム22の開口を通って抜け出すことができるようになる。それが抜け出すときに、その加圧液体における推進剤が(例えば0.3〜0.5秒で)蒸発し、推進剤によって運ばれる薬剤が、蒸発した推進剤によって創出される周囲のガス雲中に分散される。結果として、吸引されるのに十分に小さい薬剤の粒子を含むエアロゾル化された溶液がもたらされる。CFC型推進剤で形成された溶液は、毎時60〜90マイルの速度でステム22を出る(HFA型推進剤は少しだけ遅い)。
【0013】
吸引器ブーツ16はキャニスタ14を保持し、エアロゾル化された溶液をキャニスタ14から対象者の気道に導く。吸引器ブーツ16は、キャニスタハウジング24及びマウスピース26を含む。典型的には、キャニスタハウジング24及びマウスピース26は、角度付きセクション28によって結合される。角度付きセクション28内において、キャニスタ座部が形成される。
【0014】
キャニスタハウジング24は、角度付きセクション28の反対にある端部で開口30を形成する。キャニスタ14がその中に挿入されるのを可能にするためである。開口30と、キャニスタハウジング24によって形成される導管とは、キャニスタ14よりも僅かに大きい。開口30からマウスピース26まで、キャニスタ14とキャニスタハウジング24の壁との間で、エアが進むことができるようにするためである。
【0015】
マウスピース26は、角度付きセクション28の反対にある端部で開口32を形成し、また、キャニスタ座部34から開口32までの導管を形成する。マウスピース26の外観は、対象者の口と合うように適合させられる。マウスピース26によって形成される導管は、吸入器ブーツ16内から(例えば対象者の口を通じて)対象者の気道中にエアロゾル化された溶液を運ぶように構成される。
【0016】
図2は、システム10の一実施例の断面を示し、薬剤を分注する際のシステム10の動作を示す。図2で見られるように、吸入器ブーツ16の角度付きセクション28内に配置されたキャニスタ座部34は、ステム開口36から供給開口38までの導管を形成する。キャニスタ座部34は、吸入器ブーツ16内の適切な位置にキャニスタ14を固定する座部を提供する。特に、ステム開口36は、吸入器ブーツ16に対してキャニスタ14を固定するために、キャニスタ14のステム22を受け入れるように構成される。例えば、一実施例では、ステム開口36は、ステム22がステム開口36内に挿入されたときに、ステム開口36の壁とステム22との間の摩擦によるかみ合いが実現されるように、テーパが付けられている。ステム開口36と供給開口38との間の導管は、エアロゾル化された溶液をキャニスタ14から受け入れるように、かつ、エアロゾル化された溶液がキャニスタ14からマウスピース26内に発射されるときにエアロゾル化された溶液をガイドするように構成される。
【0017】
動作中、キャニスタ14のステム22は、吸入器ブーツ16内のキャニスタ座部34によって形成されたステム開口36内にしっかりと置かれる。システム10から対象者に薬剤を分注するために、対象者は、吸入器ブーツ16中に下方にタンク20を動かす力をキャニスタ14に加える。この動きは、ステム22をタンク20の内部に押す。ステム22のタンク20内への押し込みは、計量された推進材及び薬剤をキャニスタ14から解放し、計量された推進材及び薬剤はエアロゾル化され、かつ、キャニスタ座部34内に形成されたステム開口36と供給開口38との間の導管によって、ステム22から吸入器ブーツ16のマウスピース26内に導かれる。その後、エアロゾル化された溶液は、対象者が吸入する際に、マウスピースから対象者の呼吸器系内に引き出される。
【0018】
再び図1を参照すると、分注モニタ18は、システム10によってキャニスタ14から供給されたエアロゾル化された薬剤の分注における一以上の特徴を監視するよう構成される。例えば、分注モニタ18は、キャニスタ14から分注された薬剤の投与回数、キャニスタ14内に残っている薬剤の投与回数、未だ分注されていない薬剤がキャニスタ14内にあるか、及び/又は、薬剤の分注における他の特徴を監視するようにしてもよい。分注モニタ18は、薬剤の分注によって生成される超音波に基づいて一以上の特徴を監視する。
【0019】
一実施例において、分注モニタ18は、キャニスタ14及び吸入器ブーツ16の一方又は双方に取り外し可能に固定される。この実施例において、分注モニタ18は、ブーツ16及び/又はキャニスタ14から選択的に取り外し可能であり、キャニスタ14が使い尽くされた後で、別のキャニスタ及び/又はブーツとともに使用され得る。一実施例において、分注モニタ18は、キャニスタ14及びブーツ16の一方又は双方と一体的に提供される。ここで用いられるように、用語“一体的に提供される”は、分注モニタ18が、一体的に提供されるもの以外の他の如何なるキャニスタ又はブーツとの使用をも対象としないことを意味するよう意図されている。言い換えれば、一体的に提供されたキャニスタ又はブーツからのモニタ18の取り外しは、モニタ18を動作不能にし、且つ/或いは、モニタ18をキャニスタ又はブーツに取り付ける機構を破壊することになる。
【0020】
図1で示す実施例では、分注モニタ18は、分注モニタ18が複数の異なるキャニスタとともに使用されるようにするために、キャニスタ14に取り外し可能に固定されている。特に、図1に示す分注モニタの実施例は、ベース40及びボディ42を含む。ベース40は、一方の側部でキャニスタ14に取り付けられる。例えば、ベース40は、キャニスタ14に固着されてもよく、キャニスタ14と一体的に提供されてもよい。キャニスタ14の反対にあるベース40の側部において、ベース40は、ボディ42をベース40上に保持するために選択的にボディ42と係合する一以上の特徴を含む。図1で示すその選択的にボディ42と係合する一以上の特徴は、ベース40の外面の周りに続く環状の突起部44である。ボディ42は、以下で説明する分注モニタ18の一以上の構成要素を収容するハウジング46を含む。ハウジング46は、ベース40と選択的に係合するよう構成される一以上の特徴を含む。図1で示すそのベース40と選択的に係合するよう構成されるハウジング46の一以上の特徴は、ベース40上に形成された環状突起部44と選択的に係合する溝48を含む。環状突起部44と溝48との選択的な係合は、スナップフィット、摩擦フィット、及び/又は、ベース40とボディ42との間の他のいくつかの選択的な係合を創出可能である。一実施例において、ボディ42がベース40と係合しその後にベース40から取り外された場合に環状突起部44が変形されたものとなるように、環状突起部44は形成される。これは、既に使い尽くされたキャニスタに結合されたベース40にボディ42が取り付け直されるのを防止するのに役立つ。
【0021】
図3は、分注モニタ18の機能ブロック図を示す。図3で示す実施例では、分注モニタ18は、ユーザインタフェース50、センサ52、及びプロセッサ54を含む。当然のことながら、これは、説明のみを目的とするものであり、実施例によっては、分注モニタ18が、図3のブロック図で示すものよりも多い或いは少ない構成要素を含むものであってもよい。
【0022】
ユーザインタフェース50は、分注モニタ18と対象者との間のインタフェースを提供するように構成される。ユーザインタフェース50を通じて、対象者は、分注モニタ18から情報を受けることができる。これは、データ、結果及び/又は指示、並びに、集合的に“情報”と称される他の任意のやり取り可能なアイテムが、対象者と分注モニタ18の構成要素との間でやり取りされるのを可能にする。一実施例では、分注モニタ18の形状因子は、ユーザインタフェース50の設計における検討事項である。この実施例では、ユーザインタフェース50によって提供されるインタフェースは、それが占有する空間を限定するために、比較的小さく、且つ/或いは、複雑でないものとされ得る。ユーザインタフェース50に含まれるのに適したインタフェース装置の例は、ディスプレイスクリーン、スピーカ、一以上の表示灯、警報器、数値表示器、及び/又は他のインタフェース装置を含む。
【0023】
センサ52は、(例えば図1に示す上述のシステム10による)薬剤の分注によって生成される超音波エネルギに関する情報を伝達する一以上の出力信号を生成するよう構成される。そのため、センサ52は、超音波エネルギを電気的な出力信号(例えば電流、電圧等である。)に変換するように構成される変換器を含み得る。一実施例では、センサ52は、超音波マイク(例えば、可聴周波数よりも高い周波数に敏感なマイク)、圧電変換器、及び/又は、超音波エネルギを電気的な出力信号に変換可能な他の変換器を含む。一実施例では、センサ52は、吸入器ブーツ16内を指し示す超音波マイクである。
【0024】
エアロゾル化された薬剤を対象者に供給するための吸入器(例えば、図1に示す上述のキャニスタ14及びブーツ16である。)の動作は、通常、超音波エネルギを発生させる。そのため、この超音波エネルギの存在が、エアロゾル化及び一回の薬剤の分注の指標となり得る。一部の例では、薬剤の分注によって生成される超音波エネルギは、吸入器の動作における一以上の特徴による影響を受ける形で、より低い周波数(例えば可聴範囲内である。)で変調され得る。例えば、吸入器内における薬剤の存在、吸入器内に存在する薬剤の量、一回の投与で分注された薬剤の量、分注される薬剤の種類(例えば薬剤の組成である。)、及び/又は、吸入器による薬剤の分注における他の特徴は、薬剤の分注によって生成される超音波エネルギの変調に影響し得る。そのため、一実施例では、センサ52によって生成される一以上の出力信号によって伝達される、吸入器による薬剤の分注の際に生成される超音波エネルギに関する情報が、吸入器からの薬剤の分注における一以上の特徴を判定するために監視され得る超音波搬送波の検出を可能にする。例えば、超音波搬送波の振幅は、一回の薬剤がいつ投与されたかの指標を提供し、薬剤が吸入器内に残っているかどうかの判定を可能にし、どのくらいの(例えば何回分の)薬剤が吸入器内に残っているかの判定を可能にし、一回の投与でどのくらいの薬剤が分注されたか、分注された薬剤の種類(例えば薬剤の組成である。)、及び/又は、薬剤の分注における他の特徴の判定を可能にする形で変調され得る。
【0025】
プロセッサ54は、分注モニタ18における情報処理機能を提供するよう構成される。そのため、プロセッサ54は、デジタルプロセッサ、アナログプロセッサ、情報を処理するように設計されたデジタル回路、情報を処理するように設計されたアナログ回路、状態機械、及び/又は、電気的に情報を処理するための他の機構のうちの一つ以上のものを含み得る。図3においてプロセッサ54は単一の構成要素として示されているが、これは単に説明目的のために過ぎない。実施例によっては、プロセッサ54は、複数の処理ユニットを含み得る。これら処理ユニットは、同じ装置内に物理的に位置付けられてもよく、或いは、プロセッサ54は、協調して動作する複数の装置の処理機能を表す場合もある。
【0026】
図3で示すように、一実施例において、プロセッサ54は、前置増幅モジュール56、変調モジュール58、フィルタモジュール60、監視モジュール62、トリガモジュール64、及び/又は、他のモジュールを含む。モジュール56、58、60、62、及び/又は64は、ソフトウェア、ハードウェア、ファームウェア、及び/又は、それらの組み合わせで実現されてもよく、且つ/或いは、別の方法で実現されてもよい。当然のことながら、モジュール56、58、60、62、及び/又は64は、単一の処理ユニット内の同じ場所に位置付けられるものとして図3に示されているが、プロセッサ54が複数の処理ユニットを含む実施例では、モジュール56、58、60、62、及び/又は64は、他のモジュールから離れたところに位置付けられてもよい。さらに、以下に提示されるモジュール56、58、60、62、及び/又は64の機能の記載は、説明を目的とするものであり、限定を意図したものではなく、モジュール56、58、60、62、及び/又は64は何れも、記載されたものより多い或いは少ない機能を提供するものであってもよい。例えば、モジュール56、58、60、62、及び/又は64のうちの一以上のものは取り除かれてもよく、また、その機能の一部又は全部が、モジュール56、58、60、62、及び/又は64のうちの他のものによって提供されてもよい。別の例として、プロセッサ54は、モジュール56、58、60、62、及び/又は64のうちの一つに帰属する機能の一部又は全部を実行する一以上の追加的なモジュールを含んでいてもよい。
【0027】
前置増幅モジュール56は、センサ52によって生成される一以上の出力信号を増幅するように構成される。一実施例において、前置増幅モジュール56は、プロセッサ54のモジュールによる後続の処理に先立って、それら一以上の出力信号を前置増幅する。それら一以上の出力信号の前置増幅は、後続の処理を容易にし得る。
【0028】
変調モジュール58は、センサ52によって生成された一以上の出力信号から検出される超音波搬送波信号によって伝達される変調信号を抽出するように構成される。一実施例において、変調信号は、薬剤の分注に関する情報を伝達する超音波搬送波信号の振幅の変化を含み得る。例えば、変調信号は、約1kHzと約10kHzの間の振幅変化及び/又は振幅振動のバーストを含み得る。一実施例において、変調モジュール58は、センサ52によって生成された一以上の出力信号の中に存在する超音波搬送波信号から変調信号を抽出する整流器を含む。
【0029】
フィルタモジュール60は、変調モジュール58によって抽出された変調信号にフィルタにかけるように構成される。一部の例では、薬剤の分注に関する情報を伝達する信号に加え、変調信号は、ノイズ、及び/又は、関心のない周波数における信号を含み得る。フィルタモジュール60は、薬剤の分注に関する情報を伝達する信号と干渉する、変調信号における周波数を除去し得る。例えば、一実施例において、フィルタモジュール60は、少なくともいくつかの可聴周波数を含む帯域に対する帯域通過フィルタを含む。帯域通過フィルタの帯域は、例えば、約2kHzと約10kHzの間となり得る。
【0030】
監視モジュール62は、フィルタモジュール60によって提供されるフィルタ済信号に基づいて、薬剤の分注を監視するように構成される。上記から明らかなように、もともとは吸入器の動作によって生成された超音波エネルギが持っていたものであるフィルタ済信号は、薬剤が分注されたかどうか、吸入器に残っている薬剤の量、一回の投与で分注される薬剤の量、分注される薬剤の種類(例えば薬剤の組成である。)、及び/又は、薬剤の分注における他の特徴に関する情報を伝達する。監視モジュール62は、フィルタモジュール60からフィルタ済信号を受信し、そのフィルタ済信号から、吸入器による薬剤の分注における一以上の特徴に関する情報を見つけ出す。一実施例において、監視モジュール62は、フィルタモジュール60から受信したフィルタ済信号内に含まれる周波数情報を電圧情報に変換する周波数−電圧変換器を含む。その後、噴霧器による薬剤の噴霧化における一以上の特徴に関する情報を見つけ出すために電圧情報が監視される。一実施例において、監視モジュール62は、その後、ユーザインタフェース50を通じて、薬剤の分注における一以上の特徴に関する情報をユーザに伝達する。
【0031】
上述のように、吸入器の動作によって生成される超音波エネルギは、吸入器の動作における一以上の特徴の変化に応じて変化する信号を用いて変調される。例えば、図4は、フィルタモジュールから受信したフィルタ済信号に基づいて監視モジュールが実行する周波数から電圧への変換によって生成される信号66の振幅のプロットを時間の関数として示す。第一期間68中、信号66の振幅におけるスパイクは、一回の薬剤が分注されたことを示す。第一期間68中の信号66は、一回の薬剤を分注するための吸入器の通常の作動を表す。
【0032】
第二期間70中、信号66の振幅におけるより小さな増加が、第二期間70内における二つの独立した極大値として存在する。第二期間70中の信号66の振幅は、第一期間68における形状、持続時間、及び/又は強度に対して、信号66の形状、持続時間、及び/又は強度を変化させる吸入器のゆっくりとした作動を表す。同様に、信号66の形状、持続時間、及び/又は強度は、吸入器に残された薬剤の量、一回の投与で分注された薬剤の量、分注された薬剤の種類(例えば薬剤の組成である。)、及び/又は、薬剤の分注における他の特徴による影響を受け得る。
【0033】
図3に戻ると、一実施例において、監視モジュール62は、図3に関して既に説明された原理にしたがって、フィルタモジュール60から受信した信号に基づいて、吸入器からの薬剤の分注を検出する。例えば、この実施例では、監視モジュール62は、フィルタモジュール60から監視モジュール62に提供されたフィルタ済信号(例えば図4に示す上述の信号と同様の信号である。)の周波数から電圧への変換を検出・監視する比較器を含み得る。既に説明したように、この信号の振幅及び/又は形状は、吸入器からの薬剤の分注を表す。監視モジュール62によって実行される検出の指標は、ユーザインタフェース50を通じてユーザに提供され得る。例えば、吸入器に関連するキャニスタから投与された薬剤の数、及び/又は、キャニスタ内に残っている薬剤の数がユーザインタフェース50を通じてユーザに提供され得る。
【0034】
薬剤分注の際に生成された超音波エネルギから薬剤分注における一以上の特徴を検出することは、様々な可聴音源によって引き起こされるノイズを除去し得る(これらの音は超音波搬送波によって伝達されないからである。)が、超音波エネルギにおけるいくらかの環境要因はなお残っている。例えば、キーが衝突するときにキーが作り出すノイズは、吸入器からの薬剤の分注によって生成されるエネルギに似た超音波エネルギを生成する。これら超音波エネルギの外部要因によって、薬剤の分注における一以上の特徴の判定が干渉されるのを避けるために、監視モジュール62は、薬剤の分注を識別する際に、閾値検出を超える追加的な分析を行うようにしてもよい。一実施例において、監視モジュール62は、薬剤の分注と他の超音波エネルギ源とを区別するために、フィルタモジュール60から受信した信号の振幅と閾値とを単に比較するだけでなく、その信号の形状を分析する。
【0035】
例として、図5は、フィルタモジュールから受信したフィルタ済信号に基づいて監視モジュールが実行する周波数から電圧への変換によって生成される信号72の振幅のプロットを時間の関数として示す。期間74中、キーリングとキーの衝突は超音波エネルギを生成し、センサ52による検出、並びにモジュール56、58、及び60による処理の後に、図5に示す信号72における凸凹を生じさせる。図5の信号72と図4の信号66との比較から理解されるように、キーの衝突に由来する信号は、定常状態からの信号の上昇であるところの吸引器からの薬剤の分注に由来する(図4で示す)信号というよりもむしろ、定常状態レベル付近の振動である。しかしながら、(上述のような)単純な閾値検出は、二つの信号を区別することができない。薬剤の分注によって引き起こされる信号の振幅における変動と、キーの衝突又は同じようなことの実行によって引き起こされる信号の振幅における変動との間の別の違いは、キーの衝突によって引き起こされる信号における変動が比較的短い期間にわたって生じるという点にある。言い換えれば、図5で示す期間74は、図4で示す期間68及び70よりも顕著に短い。
【0036】
図3に戻ると、一実施例では、センサ52によって検出される超音波エネルギで伝達される変調信号の形状を分析するよりもむしろ、分注モニタ18は、トリガセンサ76及びトリガモジュール64を含む。トリガセンサ76及びトリガモジュール64は、薬剤の分注における一以上の特徴が、薬剤が分注されている可能性が高い時間に限り、監視モジュール62によって監視されるように、分注モニタ18の動作を制御するように構成される。そのため、トリガセンサ76及びトリガモジュール64は、分注モニタ18の動作を始動させるトリガを形成する。
【0037】
トリガセンサ76は、薬剤の分注が行われる可能性が高いことを示す出力信号を生成する一以上のセンサを含み得る。非限定的な例として、一実施例では、トリガセンサ76は、吸入器が取り扱われているかどうかを示す出力信号を生成する。例えば、トリガセンサ76は、吸入器のキャニスタ、吸入器のブーツ、及び/又は分注モニタ18上の、薬剤を分注すべく吸入器を作動させるためにユーザが通常触る位置に配置されるタッチセンサを含み得る。
【0038】
トリガモジュール64は、トリガセンサ76によって生成された出力信号を受信し、薬剤の分注が行われる可能性が高いかどうかに基づいて、モジュール56、58、60、及び/又は62の動作を選択的に起動させかつ停止させるために作動する。例えば、トリガセンサ76及びトリガモジュール64は、薬剤の分注が行われる可能性が高い場合に、モジュール56、58、60、及び/又は62のうちの一以上のものを有効にするスイッチとしての機能を効果的に果たし得る。
【0039】
図6は、薬剤の分注における一以上の特徴を監視する方法78を示す。以下に提示する方法78の工程は、説明的であることを意図する。実施例によっては、方法78は、記載されていない一つ以上の追加的な工程とともに、且つ/或いは、説明される工程のうちの一つ以上を実行することなく、実行されてもよい。さらに、図6に示す以下の方法78の工程の順番が限定的となるのを意図しない。方法78の実施は上述のシステムの文脈の範囲内で説明されるが、実施例によっては、方法78が一以上の他の状況で実施される。
【0040】
方法78は、吸入器からの薬剤の注入が行われる可能性が高いかどうかを示す出力信号が生成される工程80を含む。例えば、出力信号は、トリガが連動されたかどうかを示し得る。一実施例では、工程80は、(図3に示す上述の)トリガセンサ76と同様の或いはトリガセンサ76と同じトリガセンサによって実行される。
【0041】
工程82では、工程80で生成された出力信号が、吸入器からの薬剤の分注が行われる可能性があることを示すかどうかに関する判定が行われる。一実施例では、工程82は、(図3に示す上述の)トリガモジュール64と同様の或いはトリガモジュール64と同じトリガモジュールによって実行される。薬剤の分注が行われる可能性が低いと判定されると、方法78は工程80に戻る。工程82で薬剤の分注が行われる可能性が高いと判定されると、方法78は工程84に進む。
【0042】
工程84では、一回分の薬剤が分注される。工程84は、分注のために、薬剤をエアロゾル化することを含む。一実施例では、工程84は、(図1に示す上述の)キャニスタ14及びブーツ16と同じ或いはキャニスタ14及びブーツ16と同様のキャニスタ及びブーツを含む吸入器によって実行される。
【0043】
工程86では、薬剤の分注によって生成される超音波エネルギに関する情報を伝達する一以上の出力信号が生成される。一実施例では、工程86は、(図3に示す上述の)センサ52と同様の或いはセンサ52と同じセンサによって実行される。
【0044】
工程88では、生成された一以上の出力信号に基づいて、薬剤の分注における一以上の特徴が監視される。一実施例では、工程88は、(図3に示す上述の)プロセッサ54と同様の或いはプロセッサ54と同じプロセッサによって実行される。
【0045】
工程90では、監視された、薬剤の分注における一以上の特徴に関する情報が、薬剤を受ける者に提供される。一実施例では、工程90は、(図3に示す上述の)ユーザインタフェース50と同様の或いはユーザインタフェース50と同じユーザインタフェースによって実行される。
【0046】
本発明は、現時点で最も現実的でかつ好適な実施例であると考えられるものに基づいて、説明を目的として、詳細に記載されたが、当然のことながら、これらの詳細は、単に説明を目的とするものであり、本発明がそれら開示された実施例に限定されることはなく、反対に、添付の請求項の精神及び範囲内にある変形例及び均等物を包含することを意図する。例えば、当然のことながら、本発明は、可能な限りにおいて、任意の実施例における一以上の特徴が他の任意の実施例における一以上の特徴に組み合わせ可能であることを想定している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
計量式吸入器を用いた対象者の治療を監視するよう構成されるシステムであって、
吸入器からの薬剤の分注によって生成される超音波エネルギに関する情報を伝える一以上の出力信号を生成するよう構成されるセンサ、及び、
前記センサによって生成される前記一以上の出力信号を受信し、該受信した一以上の出力信号によって伝えられる、前記薬剤の分注によって生成される前記超音波エネルギに関する情報に基づいて、前記薬剤の分注における一以上の特徴を監視するよう構成されるプロセッサ、
を含むシステム。
【請求項2】
前記薬剤の分注によって生成される前記超音波エネルギは、変調周波数で変調された超音波搬送波信号を含み、
前記センサによって生成される前記一以上の出力信号によって伝えられる情報は、前記変調された超音波搬送波信号の前記プロセッサによる検出を可能にする、
請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記変調周波数は、約1kHzと約10kHzの間である、
請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記プロセッサは、前記変調された超音波搬送波の周波数に基づいて、前記薬剤の分注における一以上の特徴を監視するよう構成される、
請求項2に記載のシステム。
【請求項5】
前記プロセッサによる前記薬剤の分注における一以上の特徴の監視は、前記薬剤の一部が分注されないでいるかどうかの監視、前記吸入器に残っている前記薬剤の投与回数の監視、又は、前記吸入器から分注された前記薬剤の投与回数の計数のうちの一以上を含む、
請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記センサは、超音波マイクを含む、
請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記センサを支持する吸入器ブーツをさらに含む、
請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記センサを支持する吸入器キャニスタをさらに含む、
請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記プロセッサによって監視される前記薬剤の分注における一以上の特徴に関する情報をユーザに提供するユーザインタフェースをさらに含む、
請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
トリガであり、該トリガが連動すると、前記プロセッサが前記薬剤の分注における一以上の特徴を監視し、該トリガが連動しないと、前記プロセッサが前記薬剤の分注における一以上の特徴の監視を中止するように、前記プロセッサの動作を制御するよう構成されるトリガをさらに含む、
請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
計量式吸入器を用いた対象者の治療における一以上の特徴を監視する方法であって、
吸入器からの薬剤の分注によって生成される超音波エネルギに関する情報を伝える一以上の出力信号を生成するステップ、
生成される前記一以上の出力信号に基づいて、前記薬剤の分注における一以上の特徴を監視するステップ、及び、
監視される前記薬剤の分注における一以上の特徴に関する情報を、前記薬剤を受ける者に提供するステップ、
を含む方法。
【請求項12】
前記薬剤の分注によって生成される前記超音波エネルギは、変調周波数で変調された超音波搬送波信号を含み、
生成される前記一以上の出力信号によって伝えられる情報は、前記変調された超音波搬送波信号のプロセッサによる検出を可能にする、
請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記変調周波数は、約1kHzと約10kHzの間である、
請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記変調された超音波搬送波の周波数に基づいて、前記薬剤の分注における一以上の特徴が監視される、
請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記薬剤の分注における一以上の特徴の監視は、前記薬剤の一部が分注されないでいるかどうかの監視、前記吸入器に残っている前記薬剤の投与回数の監視、又は、前記吸入器から分注された前記薬剤の投与回数の計数のうちの一以上を含む、
請求項11に記載の方法。
【請求項16】
計量される薬剤を前記吸入器でエアロゾル化するステップをさらに含む、
請求項11に記載の方法。
【請求項17】
トリガが連動するかどうかを判定するステップをさらに含み、
前記トリガは、該トリガが連動すると判定すると、前記薬剤の分注における一以上の特徴が前記一以上の出力信号に基づいて監視され、該トリガが連動しないと判定すると、前記薬剤の分注における一以上の特徴が、生成される前記出力信号に基づいて監視されないように、前記薬剤の分注における一以上の特徴の監視を制御する、
請求項11に記載の方法。
【請求項18】
計量式吸入器を用いた対象者の治療における一以上の特徴を監視するよう構成されるシステムであって、
薬剤の分注によって生成される超音波エネルギに関する情報を伝える一以上の出力信号を生成する手段、
生成される前記一以上の出力信号に基づいて、前記薬剤の分注における一以上の特徴を監視する手段、及び、
監視される前記薬剤の分注における一以上の特徴に関する情報を、前記薬剤を受ける者に提供する手段、
を含むシステム。
【請求項19】
前記薬剤の分注によって生成される前記超音波エネルギは、変調周波数で変調された超音波搬送波信号を含み、
生成される前記一以上の出力信号によって伝えられる情報は、前記変調された超音波搬送波信号のプロセッサによる検出を可能にする、
請求項18に記載のシステム。
【請求項20】
前記変調周波数は、約1kHzと約10kHzの間である、
請求項19に記載のシステム。
【請求項21】
前記変調された超音波搬送波の周波数に基づいて、前記薬剤の分注における一以上の特徴が監視される、
請求項19に記載のシステム。
【請求項22】
前記薬剤の分注における一以上の特徴を監視する手段は、前記薬剤の一部が分注されないでいるかどうかを監視し、前記吸入器に残っている前記薬剤の投与回数を監視する手段、又は、分注された前記薬剤の投与回数を計数する手段のうちの一方又は双方を含む、
請求項18に記載のシステム。
【請求項23】
計量される薬剤をエアロゾル化する手段をさらに含む、
請求項18に記載のシステム。
【請求項24】
前記薬剤の分注における一以上の特徴を監視する手段を制御する手段をさらに含み、
該制御する手段が連動すると判定すると、前記薬剤の分注における一以上の特徴が前記一以上の出力信号に基づいて監視され、該制御する手段が連動しないと判定すると、前記薬剤の分注における一以上の特徴が、生成される前記出力信号に基づいて監視されないようにする、
請求項18に記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2012−511375(P2012−511375A)
【公表日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−540275(P2011−540275)
【出願日】平成21年11月21日(2009.11.21)
【国際出願番号】PCT/IB2009/055256
【国際公開番号】WO2010/067240
【国際公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)