計量液滴吸入器
本発明は、薬物を供給するための計量液滴吸入装置に関し、装置は、細長い管状のシャーシと、シャーシに解除可能に接続される薬物容器保持部と、薬物容器保持部内に設けられる薬物容器と、軸方向に動作可能な少なくとも1つのピストンと、回転力を蓄積することによって、放出される用量を設定するためのシャーシの遠位端の外からアクセス可能な用量ノブと、回転力をピストンに加えられる軸方向の力に変換して薬物容器内に圧力を発生させることが可能な動力供給機構と、動力供給機構に機械的に結合される作動手段と、容器保持部に機械的に結合されるマウスピースと、マウスピース内に設けられる複数の貫通開口部を有する液滴発生器とを備え、開口部は容器およびマウスピースと液体連通し、装置はさらに、薬物容器内の初期圧力ピークを減衰させるために動力供給機構に機械的に結合された回転減衰部材を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、計量液滴吸入器に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
薬物を経口投与するための装置が多数存在する。これらの装置は、薬物を呼吸器系で吸収させることを目的としている。1つの強い傾向としては、自己投与のための吸入装置が開発されている。従来、経口薬は、気管、気管支および/または肺の病気、および特定的には喘息の急性症状または慢性症状を治療することを意図したものであった。しかし、吸収率が良く、副作用が減少することから、他の病気に関しても薬物の経肺投与を行うことについて、多くの研究が現在行われている。さらに、使用済み針による汚染の可能性の問題から、経肺投与は、針を使用した供給装置よりも安全性が高い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、一部の薬組成物は既存の装置に対応しておらず、既存の装置には更にいくつかの欠点がある。例えば、エアロゾル噴霧器は、液体の薬物をエアロゾル化するための力を与える推進剤を利用する。しかし、これには環境に影響を及ぼす液体推進剤を収容するための特殊な加圧容器が必要となる。また、弾道エアロゾルは非常に速度が高く、口および喉への薬物の堆積が増加し、副作用がより強まる。
【0004】
市販の装置の多くは、等しい用量を繰り返し供給する点に関しての正確性または信頼性がそれほど高くない。一部の装置および/または薬組成物についての他の欠点としては、液滴の大きさ、液垂れ、および吸入と用量供給との整合性についての要件が挙げられる。
【0005】
計量された経口投与に使用することができる装置の一例は、WO06/130100号に記載されている。開示されている装置は、プランジャ棒を備える。プランジャ棒は、予め張力をかけられた螺旋ばねによって駆動されると、薬物を収容するカートリッジにストッパを押し込む。これによって所定用量の薬物が投与部材から供給される。投与部材としては、マウスピースまたは鼻ピースがある。この装置は、信頼性および正確性の高い用量設定機構を提供するが、投薬部材をどのように構成するのか、または異なる物理的特性を有する複数種類の薬物についてどのように調整するのかについては教示していない。
【0006】
概して管状のコンパートメント内に薬物が収容される薬物供給装置が数多く市販され、特許も取得されている。これらの装置のコンパートメントは、一端にストッパを有し、他端に供給部材が取り付けられる。供給部材は、例えば、針、薬物液滴発生器、またはこれらに類似の部材であって、患者に薬物を供給することができる部材である。
【0007】
所定量の薬物を供給するために、ストッパは圧力を受ける。すなわち、ストッパは、プランジャ棒によってコンパートメント内へ押し込まれる。ストッパの押し込み動作は、簡易な携帯用シリンジの場合は指を使って手動で行うことができ、自動注射器もしくは半自動注射器の場合には、一般的であるばねのような加圧手段によって行うことができる。
【0008】
多くの場合、所定量の薬物を供給することができるのが望ましい。例えば、コンパートメントが空になるまで複数の所定の用量を供給することができる複数用量注射装置の場合が考えられる。欧州特許出願第05104734.8号には、注射前に所定の用量を設定することができる装置の一例が開示されている。開示されている注射装置には、薬物に圧力を加えて所定用量を供給するためのばね手段が設けられている。すなわち、ばね手段がプランジャ棒を押し、これによってストッパが容器内に押し込まれる。
【0009】
所定用量の供給には、僅かに弾性を有するストッパとカートリッジの内側面との間の摩擦を克服し、場合によっては所定の時間内に、液体の薬物を供給部材のやや小さい経路に押し込むことが可能となるように、ばね手段による所定の力が必要である。
【0010】
ストッパが所定の距離を移動して所定用量が供給されても、ストッパのような圧力を受ける部品の弾性、空気または気体、および非ニュートン流体の薬物の弾性によって、優勢な圧力が残る。これは、やや高い粘性を有する薬物、弾性特性を有する薬物、および高い作動圧力を有する薬物を扱う場合に特に顕著となる。
【0011】
供給部材の経路は非常に小さいことが多いため、このように高い粘性を有するタイプの物質の場合、やや大きい力が必要となる。圧力が和らげられると、部品の弾性が原因で、供給の後であっても所定の少量の物質が供給部材から出てくる場合が多い。すなわち、供給部材から液垂れが起こり、この液垂れによって薬物の無駄が発生し、結果として用量の正確性が低下する。
【0012】
WO2008/020023A1には、一つの解決法が開示されている。ここには、少量の薬物を繰り返し投与するための装置が記載されている。この装置は、薬物容器の中の薬物に加わる圧力を所定量の供給後に解除する特徴を有するため、粘性のある液体に対して特に適している。これにより、所定量の供給後に装置からの滴下または液垂れが発生するリスクを減らす。
【0013】
液体の薬物を呼吸器で吸収させるための経口投与を容易にし、様々な薬組成物と併せて使用することができる正確な装置はいまだ必要とされている。このような装置においては、主要パッケージ、すなわち薬物容器が標準的なタイプおよび/または標準的なサイズの容器もしくはシリンジを構成することが好ましい。
【課題を解決するための手段】
【0014】
発明の簡単な説明
本発明の目的は、従来技術による装置の欠点を改善することにある。この目的は、独立特許の独立請求項の特徴を有する本発明により実現される。本発明の好適な実施例は、従属請求項の主題を構成する。
【0015】
本発明の主な局面によれば、薬物を供給するための計量液滴吸入装置は、対向する遠位端と近位端とを有する概して細長い管状のシャーシと、第一の係合手段によって前記シャーシに対して着脱可能に結合される薬物容器保持部と、前記薬物容器保持部内に設けられる薬物容器とを含む。前記容器は、組成物を収容可能な少なくとも1つのチャンバと、組成物を放出するための近位開口と、軸方向に動作可能な少なくとも1つのピストンとを有する管状の形態を含む。計量液滴吸入装置はさらに、シャーシの遠位端の外からアクセス可能であり、回転力を蓄積することにより、放出される用量を設定するための用量ノブと、回転力をピストンに加えられる軸方向の力に変換して、前記薬物容器内に圧力を発生させる動力供給機構と、動力供給機構と機械的に結合する作動手段と、口係合領域と空気開口とを有し、容器保持部の近位部分に機械的に結合するマウスピースと、複数の貫通オリフィスを有し、マウスピース内に設けられる液滴発生器とを備える。オリフィスは、容器の近位開口およびマウスピースと液体連通する。装置は、前記薬物容器内の初期の圧力ピークを減衰させるための動力供給機構と機械的に結合する回転減衰部材をさらに備える。
【0016】
本発明の他の局面によれば、動力供給機構は、対向する遠位端と近位端とを有し、近位端が薬物容器のピストンと接触する、ねじ切りされたプランジャ棒と、ねじ切りされたプランジャ棒とねじ結合する駆動ナットと、シャーシの遠位端の外からアクセス可能な用量ノブに回動可能に結合されたアーバーとを含み、前記アーバーは、アーバー延長部を介して駆動ナットに結合される。前記アーバー延長部と前記アーバーとは第二の係合手段によって相互結合され、前記アーバーが前記用量ノブによって回転された時に反対方向へのアーバー延長部の回転を係止する。前記アーバー延長部と前記駆動ナットとは第三の係合手段によって相互結合され、回転を係止するがアーバー延長部の駆動ナットに対する軸方向の動きを可能にする。動力供給機構はさらに、アーバーに結合された第一端と、シャーシの固定点に結合された第二端とを有し、前記用量ノブと前記アーバーとが回転された時に張力がかけられるばね力手段と、ガイド部分とを含む。ガイド部分は、プランジャ棒の長手溝と協働し、回転を係止めするがガイド部分に対するプランジャ棒の長手軸方向の動きを可能とするガイドレッジが設けられる。
【0017】
本発明のさらなる局面によれば、作動手段は、第四の係合手段によって前記アーバー延長部と解除可能に相互結合され、前記アーバーが回転されて前記ばね力手段に張力がかけられた時には、一方向においてアーバー延長部の回転を係止し、前記第四の係合手段が互いに離れる方向に動いた時は前記回転の係止を解除し、これにより、前記アーバー、前記アーバー延長部および前記駆動ナットは反対方向に回転してプランジャ棒を軸方向に動かし、ピストンと容器内の薬物に圧力をかけて特定の所定量の薬物を薬物液滴発生器およびマウスピースから放出する。
【0018】
本発明のさらに他の局面によれば、装置は、圧力開放手段をさらに備え、圧力開放手段は、前記駆動ナットに設けられたくさび型の傾斜面と、シャーシの固定された内側環状面に設けられたくさび型の傾斜面とを有し、くさび型の傾斜面は互いに当接し、供給の終了時に前記薬物容器内の圧力を下げるために駆動ナットが回転した時に、所定量の供給が終りに近づくと離れる。
【0019】
本発明のさらなる局面によれば、用量ノブとアーバーとは、用量の設定および前記ばね力手段に張力を加える間、第六の係合手段によって互いに解除可能に結合され、前記用量ノブと前記アーバーとが離れると、前記用量ノブは第五の係合手段によって回転が係止される。
【0020】
本発明の他の局面によれば、回転減衰部材は、前記アーバーと前記用量ノブとの間に配置され、用量の供給時において前記アーバーの初期動作を減衰させ、これによって前記薬物容器内の初期圧力ピークを減衰させることができる。
【0021】
本発明のさらなる局面によれば、前記回転減衰部材は、前記アーバーに回転可能に結合される近位部分と、前記用量ノブのコンパートメント内に突出する遠位部分とを有し、コンパートメントは粘度の高い材料で満たされる。前記粘度の高い材料は、グリースである。
【0022】
本発明のさらなる局面によれば、口係合領域の近位端は、ユーザの唇により容易に感じ取られ、効率的な空気流を確保し、マウスピースをユーザの咽頭から所定距離をおいて配置するための少なくとも1つのガイド手段を有する。
【0023】
本発明の他の局面によれば、マウスピースの中心軸は、薬物容器の中心軸に対して100−120°の範囲内にある。
【0024】
本発明のさらなる局面によれば、ピストンは、堅い芯などを有するカスタマイズされたピストンである。
【0025】
本発明のさらに他の局面によれば、シャーシと薬物容器保持部とは第一の係合手段によって互いに解除可能に結合される。
【0026】
本発明のさらなる局面によれば、薬物容器は、標準的なタイプおよび/または標準的なサイズの薬物カートリッジまたはシリンジである。
【0027】
本発明のさらなる局面によれば、前記薬物容器は、標準的なタイプおよび/または標準的なサイズのデュアルチャンバカートリッジまたはシリンジであって、手動または自動で混合することにより互いに合わされる2つの別個の成分を収容する。
【0028】
本発明の他の局面によれば、薬物の吸入と供給を整合させることが可能な操作整合機構をさらに備える。
【0029】
本発明のさらなる局面によれば、前記操作整合機構は、前記マウスピース内に配置される閉塞部材を有し、閉塞部材は動作可能に作動手段に結合され、作動手段が作動した時に前記閉塞部材は前記マウスピースから外される。
【0030】
本発明のさらに他の局面によれば、前記操作整合機構は、マウスピースに動作可能に結合される作動閉塞機構を有し、前記マウスピースを介して呼吸が行われると、前記作動閉塞機構は作動手段から外される。
【0031】
本発明の他の局面によれば、前記ばね力手段は、予め張力のかけられた螺旋駆動ばねである。
【0032】
本発明には、いくつかの利点がある。薬物供給段階の終了時に減圧機能を使用すると、薬物容器内の圧力が大幅かつ急激に下がるため、液垂れのリスクが非常に小さくなる。特に、高い圧力を加えられた薬液を複数のオリフィスに通すことで非常に小さい液滴を複数のオリフィスを通してもたらす液滴吸入器においては、出来るだけ早く圧力を切る(cut off)ことが重要であり、そうしなければ、薬液は液滴とならず、薬物液滴発生器から垂れ落ちるのみとなる。他方では、これによって、装置、より特定的にはマウスピースが汚される、または汚染されるだけでなく、滴下または液垂れした薬物によってオリフィスが詰まる、または塞がれるというリスクがある。薬液の粘性が高い場合に液垂れの問題が顕著となり、弾性特性が液垂れを引き起こしやすいことを示している。
【0033】
薬物の供給時において薬物容器内の圧力をさらに制御するために、減衰部材が最初に使用される。これは初期のピーク応力およびピーク圧力を効果的に下げ、このピーク圧力の低下によって装置の部品の破損のリスクが低下する。
【0034】
供給の初期および終了時に使用されるこれらの方策、および用量を設定する前に予め張力がかけられた螺旋駆動ばねを利用し、ばねに張力をさらにかけることで、薬物供給段階の全体において非常に制御され、かつほぼ一定した圧力曲線がもたらされる。このような圧力曲線は、薬物の小液滴を作る全ての段階において非常に有益なものとなる。
【0035】
本装置は、新しい薬物容器と使用済みの薬物容器とを交換することができるように、2つの相互結合可能な部品によって構成されるのが好ましい。
【0036】
ユーザの肺にさらに適切に薬物を投与するために、操作整合機構を使用しても良い。この操作整合機構は、マウスピースと作動手段とを相互結合し、装置が作動するまで吸入ができないようにする、またはユーザが吸入するまで装置を作動させることが出来ないようにするのが好ましい。これにより、患者が吸入していない時に装置が所定用量を供給するリスクが低下し、装置が薬物により汚されるリスクが低下する。
【0037】
本発明のこれらの局面および他の局面、および利点は、以下の詳細な説明および添付の図面からより明らかになるであろう。
【0038】
以下の本発明の詳細な説明において、添付の図面が参照される。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明による装置の側面の断面図である。
【図2】図1の装置の分解図である。
【図3a】本発明を構成するシャーシの詳細図である。
【図3b】図3aを180°回転させた図である。
【図4】本装置の近位部分の詳細図である。
【図5】本発明による装置に含まれる駆動ナットおよびアーバー延長部の詳細図である。
【図6】本発明による装置に含まれるアーバーおよびアーバー延長部の詳細図である。
【図7】本発明による装置に含まれるハウスおよびばね力手段の詳細図である。
【図8】本発明による装置に含まれるハウス、ハウスカバー、および回転減衰部材の更なる詳細図である。
【図9】本発明による装置に含まれる回転減衰部材および用量ノブの詳細図である。
【図10】本発明による装置に含まれる、作動手段に結合されたシャーシの詳細図である。
【図11】本発明による装置に含まれる、アーバー延長部に結合されたアーバーおよび投薬作動部の更なる詳細図である。
【図12】本発明の装置に含まれる駆動ナット、ガイド部分、およびプランジャ棒の更なる詳細図である。
【図13a】第一の操作整合機構の詳細図である。
【図13b】第一の操作整合機構の詳細図である。
【図14】第三の操作整合機構の詳細図である。
【図15a】第二の操作整合機構の詳細図である。
【図15b】第二の操作整合機構の詳細図である。
【図16】第四の操作整合機構の詳細図である。
【図17a】第四の操作整合機構に含まれる部品の詳細図である。
【図17b】第四の操作整合機構に含まれる部品の詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
発明の詳細な説明
ここで使用される「液体」の用語は、使用温度において概して液体としての特性を持つ全ての溶液、懸濁液、乳状液、油、ジェルなどを包含する。この用語は、液体キャリアに溶解または分散された固形の組成物を明示的に含む。粘性の高い液体としての特性を持つ材料もまた含まれる。
【0041】
本件出願において、遠位部分/端の用語が使用された場合、これは薬物供給装置の部分/端、またはその部材の部分/端を表わし、装置の使用時において、患者への供給位置から最も離れた位置を示す。これに対応して、「近位部分/端」の用語が使用された場合、これは装置の部分/端、またはその部材の部分/端を表わし、装置の使用時において、患者への供給位置に最も近い位置を示す。
【0042】
図面に示される本発明の装置は、対向する近位端と遠位端とを有する概して細長い管状体の形態を有する主シャーシ10を有し、近位部分12(図2)は1の直径を有し、遠位部分14は僅かに大きい直径を有する。横断内壁16(図3aおよび3b)は、近位部分12と遠位部分14との間の移行部に配置され、中央通路18をさらに有する。シャーシの近位部分12は、その側面に通路20が設けられる。通路20は、突出部22と着脱可能に相互作用するように設けられ(図4)、第一の係合手段を形成する。突出部22は、概して細長い管状の薬物容器保持部24の遠位領域の外面に設けられ、2つの部分は互いに結合される。薬物容器保持部24の内側には、薬物容器26を配置することができる。
【0043】
薬物容器およびその内容物は、薬物容器保持部の開口または窓28(図4)を通して見ることができる。しかし、一部のタイプの感光性薬物のために、ガラスを薄く着色する、被覆させる、または不透明にしても良い。さらに、容器保持部は透明の材料からなっても良い。薬物容器26は、用途に応じた複数の寸法を有して容易に購入することが可能な、標準的なタイプおよび/または標準的なサイズのカートリッジまたはシリンジであることが望ましい。薬物容器は、組成物を収容可能な少なくとも1つのチャンバを有する管状の形態と、組成物を排出するための近位開口と、例えばゴムストッパのような少なくとも1つの軸方向に動作可能なピストン42とを有する。薬物容器保持部24の近位端の内周面には、ねじ山30が設けられる(図4)。これらのねじ部30は、マウスピース36のアタッチメント部分34の対応するねじ部32と協働する(図2)。
【0044】
吸入装置のマウスピースについての概説は、WO06/094796に記載されている。例えば、寸法の範囲および構成は、所望の粒子径および流れのパターンを実現するために適合させることができる点が記載されている。したがって、WO06/094796の開示は引用によりここに援用される。
【0045】
本発明の吸入装置の部品には、液滴発生器38が含まれる。液滴発生器38は、液滴発生器からの排出時に液滴が進む方向に対して略垂直の空気流と連結する。これにより、液滴が所望の大きさに保たれ、確実に空気流内に拡散される。
【0046】
マウスピース36は、口との係合領域と空気開口とを有する概して管状の形状となるように設計され、口との係合領域の近位端には、少なくとも1つのガイド手段が設けられる。ガイド手段は、例えば間隔を空けて同心で設けられた少なくとも3つのリングであり、ユーザの唇で容易に感じ取ることができるように構成されている。このような設計において、口との係合領域は、ユーザが口でマウスピースの周りを封止して効率的に空気流を確保することを助けるだけでなく、ユーザの咽頭から所定の距離を空けてマウスピースを配置する。
【0047】
ユーザがマウスピースを口内に入れ、口との係合領域の周りを封止するように唇を置くと、ユーザの口に向かって吸入された空気は、空気開口を介してマウスピースを通る。空気開口は、口との係合領域の対向する端部を形成する。代替の実施例も可能であり、例えば、近位端に近い筒状の表面に沿って複数の開口を設けても良い。
【0048】
空気開口の設計および配置を定める要因は、開口を通って吸入される空気がユーザの口内に液滴を運ぶことから、液滴発生器から最も近い位置に設けることにある。さらに、発生した液滴の進行方向に対して略垂直な空気流は、液滴を離散した状態に保ち、空気流内で十分に分布した状態を保つのに効果的である。
【0049】
マウスピース内には、液滴アクセス開口が設けられる。液滴アクセス開口は、液滴発生器38を組み込んでもよく、または液滴発生器に隣接して配置してもよい。
【0050】
図1において、マウスピースの中心軸は容器の中心軸に対して垂直ではなく、90°より大きい角度をとる。容器に対するマウスピースの角度は、約90°から180°の範囲内とすることができる。口を通って気道に入る組成物の量を最大にするためには、約100°から120°の範囲が好ましい。角度が90°に近付くにつれ、舌に堆積する組成物の量が増える。これは、組成物の味が不快なものである場合、特に望ましくない。
【0051】
マウスピースは装置の入替可能な部品としてもよく、装置への組成物の詰め替えまたは補給の度に廃棄される。代替的に、マウスピースは再使用可能としても良い。再使用が意図される場合、マウスピースは容易に洗浄または殺菌することができる。
【0052】
薬物液滴発生器は、非常に多数の非常に小さいオリフィスと協働するタイプのものであり、薬液はこのオリフィスを通って霧化される。利用することができるこのようなタイプの薬物液滴発生器は、WO02/18058に開示されており、狭い液滴サイズの分布で空気中に小さい液滴を作ることができる微小薬物液滴発生プレートが開示されている。供給端40の大きさおよび対応する薬物液滴発生器の大きさは、特定の用途に応じて様々である。また、薬物液滴発生器は交換可能であり、ガラス、プラスチック、シリコーン、および異なる材料の混合物などの適切な材料からなり得る。
【0053】
WO02/18058は、狭いサイズ分布を有する液滴を作ることが可能な霧化液滴発生器の価値について繰り返し言及している。さらに、WO02/18058のノズルは、霧、水中油滴型エマルション、油中水型エマルションを生成するために利用することができる。WO02/18058の開示は、本発明を実施する当業者にとって有用な参考文献となるため、その内容は引用によりここに援用される。さらに、液滴発生器の概説は、引用によりここに援用されるWO09/002178に記載されている。
【0054】
必要に応じて、製造の容易化の要求および装置の再利用の予定される頻度とタイプを考慮に入れ、液滴発生器38は、薬物容器の近位端の一部として設けることができる。
【0055】
また、装置は動力供給機構を有する。動力供給機構は、ねじ切りされたプランジャ棒48と、駆動ナット56と、アーバー64と、アーバー延長部50と、ばね力手段66と、ガイド部分152とを有する。
【0056】
ストッパ42は、標準的なタイプおよび/または標準的なサイズのカートリッジもしくはシリンジを使用する場合、遠位方向に向けられた中央凹部44を備えて設計されることが多く、強い力が加わった時にストッパ42が潰れないように、いわゆるプランジャ支持部46がストッパの凹部に嵌まるように設けられる。また、例えば堅い芯などを有するストッパのような、特製のストッパを設けることも考えられる。さらに、細長いねじ切りされたプランジャ棒48が、プランジャ支持部46の近位端に接触して設けられる。
【0057】
プランジャ棒48は、概して管状の形状を有する、いわゆるアーバー延長部50内に配置される(図2、図5)。アーバー延長部50の近位端部分の外面には、キー溝52が設けられる。キー溝52は、概して管状の形状を有する駆動ナット56の内側面の対応するキー隆起部54と結合し、第三の係合手段を形成する(図5)。さらに、アーバー延長部50にはリング状部分58が設けられ、リング58の内側面には横断係止レッジ60が設けられる。これらの係止レッジ60は、アーバー64の可撓アーム62と協働し(図6)、第二の係合手段を形成する。
【0058】
しかし、係止レッジ60および可撓アーム62は、アーバー64がアーバー延長部50に対して一方向にのみ回転するように設けられ、可撓アーム62は係止レッジ60の上を摺動する。他の方向においては、可撓アーム62の端が係止レッジ60に当接し、回転が阻止される。
【0059】
例えば、螺旋状の駆動ばね片としてのばね力手段66は、アーバー64の周りに設けられ、その一端がアーバー64の細長いスリット68に取り付けられ、他端がハウス70のスリット69に取り付けられる(図7)。このハウス70がシャーシ10の遠位部分の内側に配置され、長手溝72が対応する隆起部74と嵌合することによりシャーシ10に対して固定して保持される(図3b、図7)。ハウス70は、内方向に突出する可撓アーム76が対応する溝78に嵌まることにより定位置に保持される(図3b、図7)。ハウス70は、ハウス70の外面の隆起部86が嵌まりこむ通路84を有する、近位方向に向けられたアーム82によりハウスカバー80に結合される(図8)。これにより、ハウス70とハウスカバー80とをシャーシに組み付ける際に、アーム82が径方向外側に向けて曲がることが防止される。ハウスカバー80には、遠位方向に向けられた管状部材88がさらに設けられる(図8)。
【0060】
アーバー64には、対応する係止レッジ92と共に作用する2つの係止レッジ90がさらに設けられる(図3b、図6)。以下に記載するように、係止レッジ92は、シャーシ10の内側に設けられ、アーバー64の回転を制限する。アーバー64の遠位端は、ハウスカバー80の管状部材88の中に延在する。アーバー64の遠位端には、中央通路94も設けられる(図8)。通路94には、キー溝(図示せず)が設けられる。
【0061】
本装置は、回転減衰部材100をさらに有する。回転減衰部材100は、アーバーに対して回転可能に結合された近位部分を有し、これにより、キー溝96は回転減衰部材100の近位外面上でキー部98と協働する。
【0062】
回転減衰部材100は、中央管状部材106のコンパートメント110内に突出する遠位部分を有する。回転減衰部材100と管状部材106の内側面との間の空間は、グリースのような粘性の高い材料で満たされている(図8、図9)。アーバー64の遠位領域の外面には、キー溝102がさらに設けられる(図8)。これらのキー溝102は、用量ノブ108の中央管状部材106に設けられた対応する隆起部104と協働し(図9)、第六の係合手段を形成する。用量ノブ108の近位端面に隣接して、径方向内側に向かって延在するレッジ112がさらに設けられる。レッジ112は、ハウスカバー80の管状部材88の外面上で隆起部114と協働し(図8、図9)、以下に記載するように、所定の動作パターンを可能とする。用量ノブ108の遠位領域の内側面には、さらに内側方向に延在するレッジ111が設けられる。レッジ111は、ハウスカバー80の管状部材88の遠位端において環状レッジ118と協働する。さらに、用量ノブおよび管状部材は、他の形態の協働手段を有することが考えられる。さらに、ハウスカバー80と用量ノブ108との間には、用量ノブ108を遠位方向に付勢するためのばね(図示せず)が設けられる。この位置にある時、用量ノブ108はアーバー64から外れる。すなわち、第六の係合手段102、104による結合がなくなる。
【0063】
さらに、本装置は、作動手段120を有する(図10)。作動手段120は、シャーシ10を囲うスリーブ状部材122および径方向に突出するボタン124と併せて摺動可能に設けられる。スリーブ部材122の遠位端には、遠位方向に向けられた舌部126が設けられる。舌部126には、内側方向に延在するレッジ128が設けられる。これらのレッジ128は、投薬作動部134の長手方向に延在するアーム132に設けられ、外側方向に延在するレッジ130の周りを囲う(図11)。投薬作動部134は、アーム132が取り付けられた環状体136を有する。さらに、環状体136の中心面には、径方向に延在する係止レッジ138が設けられる。係止レッジ138は、アーバー延長部50の外面の係止レッジ140と協働し、第四の係合手段を形成する。この作動手段は、引用してここに援用されるEP1225942B1に開示されるような呼吸作動手段とすることも考えられる。
【0064】
駆動ナット56の内側面(図5)には、プランジャ棒42の外面のねじ部144と協働するねじ部142がさらに設けられる。駆動ナット56には、いくつかのくさび形の傾斜面148を有し、遠位方向に向けられた端面を有する環状レッジ146がさらに設けられる。その機能については、以下で説明する。装置のシャーシ10の内壁16の近位方向に向けられた面には、対応するくさび形の傾斜面150が設けられる。戻しばね162は、シャーシ10の内壁16の遠位方向に向けられた面と、投薬作動部134の環状体136の近位方向に向けられた面との間に設けられる(図2)。その機能については、以下で説明する。
【0065】
プランジャ棒42は、さらにガイド部分152(図12)を介して設けられる。ガイド部分152は、シャーシ10に薬物容器保持部が結合されているときはシャーシ10に対して回転を係止可能であるが、シャーシに薬物容器保持部が結合されていないときは、ガイド部分は回転することができる。ガイド部分152には、プランジャ棒42の長手溝156と協働するガイドレッジ154が設けられ、プランジャ棒42のガイド部152に対する回転を係止するが長手方向への動きを可能とする。ガイド部分152の近位端面には、可撓リング状部材158が設けられる。可撓リング状部材158は、組み立てられた時に薬物容器26の遠位端面と接触し、これにより薬物容器26を近位方向に押す。さらに、本装置は、適切に設計されたケーシング160により覆われる。ケーシング160は、シャーシ10に対して用途に応じて固着または着脱可能に取り付けられる。
【0066】
本装置は、以下のように機能することを意図している。薬物容器26が薬物容器保持部内に設置され、シャーシ10に係合される。これにより、ガイド部分152は、シャーシおよび/または容器保持部の適切な係合手段によって回転が係止される。つぎに、ケーシング160は、シャーシ10および薬物容器保持部に取り付けられる。
【0067】
用量を設定する時、用量ノブ108が回転される。用量ノブ108を用量設定機構に結合するために、用量ノブは近位方向に押される。つぎに、用量ノブ108とアーバー64とは、第六の係合手段102、104により結合される。これにより、用量ノブ108が回転されると、アーバー64もまた回転される。アーバーの回転によって、ばねに対して既に事前に張力がかけられて回転力が蓄積した初期状態から、螺旋駆動ばね66にさらに張力がかかる。
【0068】
アーバー64の回転時において、可撓アーム62は、アーバー延長部50のリング状部材58の係止レッジ60から接触が外れ、次の係止レッジ60と接触するまで動く。可撓アーム62とアーバー延長部50の係止レッジ60との接触により、アーバー64は逆方向への動きが防止される(図6)。キー溝52と駆動ナット56の内側面の対応する隆起部54との接触により、アーバー延長部の回転が防止され、駆動ナット56のくさび形の傾斜面148とシャーシ10の内壁16のくさび形の傾斜面150との結合により、駆動ナットの回転が防止される。
【0069】
さらに、投薬作動部134のくさび形の係止レッジ138がアーバー延長部の係止レッジ140と接触するため、アーバー延長部50も同様に回転が防止される(図11)。アーバー64の係止レッジ90がシャーシ10の対応する係止めレッジ92と接触するまで、用量ノブ108は回転する(図3bおよび図6)。これにより、ユーザは事前に設定された位置を越えて用量ホイールを回転させることができず、過度に大きい用量を設定することができない。示される実施例では、用量ノブおよびアーバーは120度回転させて容量を設定することができる。このため、可撓アーム62と係止レッジ60との組み合わせは120度の間隔で3つ設けられる。120度の間隔は、駆動ナット56のくさび形面148(図5)およびシャーシ壁16のくさび形面150(図3a)にも同様に使用される。用量の大きさ、および/またはプランジャ棒48および駆動ナット56のねじ部144などの他の部品の設計に応じて、120度以外の間隔も使用することができると理解される。ユーザが用量ノブ108を放すと、用量ノブ108は遠位方向に動き、第五の係合手段を形成するハウスカバー80の管状部分88の隆起部114によって形成されるポケットに嵌まるレッジ112によって回転が止められる初期位置に戻り、用量ノブ108はアーバー64から再度外れる(図8および図9)。
【0070】
ユーザは、吸入器を供給位置に配置し、作動ボタン124およびスリーブ状部材122を戻しばね162の力に抗して近位方向に摺動させて吸入器を作動させる。スリーブ状部材122と投薬作動部134との結合により、投薬作動部134もまた近位方向に動く。これにより、投薬作動部の係止レッジ138がアーバー延長部50の係止レッジ140との接触から外れて動く(図10および図11)。可撓アーム62と係止レッジ60との結合により、アーバー延長部50およびアーバー64はばね66の力によって自由に動くことができる。アーバー延長部50と駆動ナット56とのキー結合により、駆動ナット56もまた回転する。
【0071】
アーバー64が回転するため、用量ノブ108の管状部分106内において回転減衰部材100も回転する。回転減衰部材が回転するコンパートメント内のグリースによって、薬物供給開始時の薬物容器内の圧力ピークを下げる減衰効果が得られる。
【0072】
ばねの蓄積した回転力は、プランジャ棒48のねじ部144とねじ係合する駆動ナット56の回転によって軸方向の力に変換される。ガイド部分152によってプランジャ棒の回転が係止されるため、プランジャ棒48は軸方向に進み、これによってストッパ42が動かされ、霧状薬物液滴発生器38を介して薬物が押し出される。これにより、非常に小さい液滴薬物が形成される。これらの液滴はマウスピースに入り、ユーザの呼吸によって肺に送られる。
【0073】
駆動ナット56の回転時において、駆動ナット56のくさび型の傾斜面148はシャーシ10の対応するくさび形面150の上を摺動し、アーバー延長部50とのキー結合により、駆動ナット56が近位方向に動く。駆動ナット56のくさび形面148、150およびシャーシは、それぞれ投薬終了動作の直前にくさび形状が突然終端するように設計されている。
【0074】
突然終端させることにより、駆動ナット56は反対方向、すなわち遠位方向にわずかに動き、プランジャ棒48もその方向に動く。このプランジャ棒の動きが、プランジャ棒によってストッパと容器内の薬物とに加えられる圧力を効果的に開放する。圧力を抜くことによって、供給後に起こる霧状薬物液滴発生器からの液垂れを大方回避することができる。突然の終端動作を強める(increase)ために、ばね164を駆動ナット56とガイド部分152(図2)との間に設けてもよく、これによって駆動ナット56を装置の遠位端に向かって付勢することができる。
【0075】
供給装置は、ここで供給位置から外すことができる。多種用量容器を使用し、続けて供給を行うために、用量ノブ108を回転させることで用量が設定され、ばねに張力がかけられる。多種用量容器が空になった場合、または単一用量容器が使用される場合、近位側の薬物容器保持部24はシャーシ10から外され、薬物容器26が外される。ガイド部分152が自由に回転できることから、近位方向に進んだプランジャ棒は当初の位置に戻してもよく、これによってプランジャ棒48も回転させることができる。新しい容器が近位側のハウジング部分に設置され、この後に近位ハウジング部分が再度遠位ハウジング部分に結合される。
【0076】
本発明によれば、例えば水または生理食塩水などに含まれる状態のエマルションも投与することができる。このような用途においては、組成物を2つの別個の成分として提供することができる。これらの成分は、例えばねじ切りされたプランジャ棒の中に同軸で追加のプランジャ棒を少なくとも1つ設けることで互いに合わせ、手動または自動で混合させることができる。EP1542744B1の開示は、本発明を実施する当業者にとって有用な参考文献となり、その内容は引用によりここに援用される。薬物容器保持部をシャーシ内に挿入または上に配置して軸方向に移動させることにより、手動で混合を行うことができる。
【0077】
図13−図17は、薬物吸入と薬物供給とを整合させることができる操作整合機構についての異なる手法を示す。操作整合機構は、マウスピースに配置された閉塞部材を有する。閉塞部材は動作可能に作動手段に結合され、作動手段が作動している時には閉塞部材はマウスピースから外される。代替的に、操作整合機構は作動閉塞機構を有する。作動閉塞機構は動作可能にマウスピースに結合され、マウスピースを介した吸入が行われているときは、作動閉塞機構は作動手段から外される。
【0078】
図13aおよび図13bは、装置の作動手段に結合された摺動ボタン124を有する簡易な設計を示す。ボタンには、例えばマウスピース36の空気開口が配置されたマウスピースのシート部170に摺動可能に設けられた舌部168としての閉塞部材がさらに設けられる。ボタン124が操作されていない時、舌部168は空気開口を閉塞し、マウスピース36を介した吸入を防止する(図13a)。ユーザがボタン166を操作すると、空気開口は、マウスピース内での薬物の開放と同時に開く(図13b)。これにより、吸入と用量供給の整合が実現する。
【0079】
図15aおよび図15bは、管状延長部178を有するマウスピース36の更なる変形例を示し、延長部の開口180は作動手段176に隣接している。管状延長部178には、吸入される空気流を制限して肺への堆積を向上させるための制限通路184を設けても良い。例えばプラグまたは封止部材182などの閉塞部材が作動手段176に結合され、作動手段が操作されていない時に開口180を封止する位置(図15a)から、作動手段が操作される時の開放位置(図15b)に動かすことができ、マウスピースを介した吸入が可能となる。封止部材182および開口180は、上述の目的と同様の目的のために制限手段と併せて使用することも考えられる。
【0080】
図14は、同様の方法を示し、たとえば蓋172としての閉塞部材がヒンジを介してマウスピース36の空気開口が閉塞する閉止位置と、吸入が可能な開放位置との間でマウスピースに取り付けられる。図面に示されるように、蓋はワイヤ174などにより作動手段176に結合してもよく、これにより、作動手段176が操作される時に蓋が動かされ、孔が開放される。
【0081】
図16および図17は、変形例を示しており、操作整合機構は、マウスピースを介した吸入時に作動閉塞機構が作動機構から外されるように、マウスピースに動作可能に結合された作動閉塞機構を有する。この変形例は、吸気口を有する管状延長部178を有する。延長部178の遠位端は、ここではチャンバ186に結合され、チャンバ186は作動手段176に隣接して配置されている。チャンバ186内には、シリコーン膜188(図17a)が配置され、チャンバが分割される。チャンバは、棒194が移動可能に延在して通る中央孔を有する蓋によって閉じられている。棒194は、膜188に取り付けられる。蓋は、複数の空気通路をさらに有する。この変形例は、装置が作動していない時、すなわち吸入がない時には膜188に影響はなく、棒194が通路から突出し(図17a)、これによって作動手段の動きが阻止されるように機能することを意図している。ユーザが吸入を始めると、膜188の両側のチャンバ186内で圧力差が生じ、膜188の撓みによって棒がチャンバ186内に引き戻される(図17b)。棒194の動きによって、作動手段が自由となって作動が可能となり、所定用量の薬物が供給される。
【0082】
もちろん喘息のような呼吸器系または肺系統のために設計された薬物に即時に本装置が適用可能であることは、上述の明細書本文から明らかである。嚢胞性線維症および/もしくはその合併症、および慢性閉塞性肺疾患の治療のために、他の種類の薬物および組成物も使用することができる。
【0083】
明細書本文に記載の実施例および図面に示される実施例は、本発明の限定されない例にすぎず、特許請求項の範囲内において多様に変更することができることが理解されるであろう。
【技術分野】
【0001】
本発明は、計量液滴吸入器に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
薬物を経口投与するための装置が多数存在する。これらの装置は、薬物を呼吸器系で吸収させることを目的としている。1つの強い傾向としては、自己投与のための吸入装置が開発されている。従来、経口薬は、気管、気管支および/または肺の病気、および特定的には喘息の急性症状または慢性症状を治療することを意図したものであった。しかし、吸収率が良く、副作用が減少することから、他の病気に関しても薬物の経肺投与を行うことについて、多くの研究が現在行われている。さらに、使用済み針による汚染の可能性の問題から、経肺投与は、針を使用した供給装置よりも安全性が高い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、一部の薬組成物は既存の装置に対応しておらず、既存の装置には更にいくつかの欠点がある。例えば、エアロゾル噴霧器は、液体の薬物をエアロゾル化するための力を与える推進剤を利用する。しかし、これには環境に影響を及ぼす液体推進剤を収容するための特殊な加圧容器が必要となる。また、弾道エアロゾルは非常に速度が高く、口および喉への薬物の堆積が増加し、副作用がより強まる。
【0004】
市販の装置の多くは、等しい用量を繰り返し供給する点に関しての正確性または信頼性がそれほど高くない。一部の装置および/または薬組成物についての他の欠点としては、液滴の大きさ、液垂れ、および吸入と用量供給との整合性についての要件が挙げられる。
【0005】
計量された経口投与に使用することができる装置の一例は、WO06/130100号に記載されている。開示されている装置は、プランジャ棒を備える。プランジャ棒は、予め張力をかけられた螺旋ばねによって駆動されると、薬物を収容するカートリッジにストッパを押し込む。これによって所定用量の薬物が投与部材から供給される。投与部材としては、マウスピースまたは鼻ピースがある。この装置は、信頼性および正確性の高い用量設定機構を提供するが、投薬部材をどのように構成するのか、または異なる物理的特性を有する複数種類の薬物についてどのように調整するのかについては教示していない。
【0006】
概して管状のコンパートメント内に薬物が収容される薬物供給装置が数多く市販され、特許も取得されている。これらの装置のコンパートメントは、一端にストッパを有し、他端に供給部材が取り付けられる。供給部材は、例えば、針、薬物液滴発生器、またはこれらに類似の部材であって、患者に薬物を供給することができる部材である。
【0007】
所定量の薬物を供給するために、ストッパは圧力を受ける。すなわち、ストッパは、プランジャ棒によってコンパートメント内へ押し込まれる。ストッパの押し込み動作は、簡易な携帯用シリンジの場合は指を使って手動で行うことができ、自動注射器もしくは半自動注射器の場合には、一般的であるばねのような加圧手段によって行うことができる。
【0008】
多くの場合、所定量の薬物を供給することができるのが望ましい。例えば、コンパートメントが空になるまで複数の所定の用量を供給することができる複数用量注射装置の場合が考えられる。欧州特許出願第05104734.8号には、注射前に所定の用量を設定することができる装置の一例が開示されている。開示されている注射装置には、薬物に圧力を加えて所定用量を供給するためのばね手段が設けられている。すなわち、ばね手段がプランジャ棒を押し、これによってストッパが容器内に押し込まれる。
【0009】
所定用量の供給には、僅かに弾性を有するストッパとカートリッジの内側面との間の摩擦を克服し、場合によっては所定の時間内に、液体の薬物を供給部材のやや小さい経路に押し込むことが可能となるように、ばね手段による所定の力が必要である。
【0010】
ストッパが所定の距離を移動して所定用量が供給されても、ストッパのような圧力を受ける部品の弾性、空気または気体、および非ニュートン流体の薬物の弾性によって、優勢な圧力が残る。これは、やや高い粘性を有する薬物、弾性特性を有する薬物、および高い作動圧力を有する薬物を扱う場合に特に顕著となる。
【0011】
供給部材の経路は非常に小さいことが多いため、このように高い粘性を有するタイプの物質の場合、やや大きい力が必要となる。圧力が和らげられると、部品の弾性が原因で、供給の後であっても所定の少量の物質が供給部材から出てくる場合が多い。すなわち、供給部材から液垂れが起こり、この液垂れによって薬物の無駄が発生し、結果として用量の正確性が低下する。
【0012】
WO2008/020023A1には、一つの解決法が開示されている。ここには、少量の薬物を繰り返し投与するための装置が記載されている。この装置は、薬物容器の中の薬物に加わる圧力を所定量の供給後に解除する特徴を有するため、粘性のある液体に対して特に適している。これにより、所定量の供給後に装置からの滴下または液垂れが発生するリスクを減らす。
【0013】
液体の薬物を呼吸器で吸収させるための経口投与を容易にし、様々な薬組成物と併せて使用することができる正確な装置はいまだ必要とされている。このような装置においては、主要パッケージ、すなわち薬物容器が標準的なタイプおよび/または標準的なサイズの容器もしくはシリンジを構成することが好ましい。
【課題を解決するための手段】
【0014】
発明の簡単な説明
本発明の目的は、従来技術による装置の欠点を改善することにある。この目的は、独立特許の独立請求項の特徴を有する本発明により実現される。本発明の好適な実施例は、従属請求項の主題を構成する。
【0015】
本発明の主な局面によれば、薬物を供給するための計量液滴吸入装置は、対向する遠位端と近位端とを有する概して細長い管状のシャーシと、第一の係合手段によって前記シャーシに対して着脱可能に結合される薬物容器保持部と、前記薬物容器保持部内に設けられる薬物容器とを含む。前記容器は、組成物を収容可能な少なくとも1つのチャンバと、組成物を放出するための近位開口と、軸方向に動作可能な少なくとも1つのピストンとを有する管状の形態を含む。計量液滴吸入装置はさらに、シャーシの遠位端の外からアクセス可能であり、回転力を蓄積することにより、放出される用量を設定するための用量ノブと、回転力をピストンに加えられる軸方向の力に変換して、前記薬物容器内に圧力を発生させる動力供給機構と、動力供給機構と機械的に結合する作動手段と、口係合領域と空気開口とを有し、容器保持部の近位部分に機械的に結合するマウスピースと、複数の貫通オリフィスを有し、マウスピース内に設けられる液滴発生器とを備える。オリフィスは、容器の近位開口およびマウスピースと液体連通する。装置は、前記薬物容器内の初期の圧力ピークを減衰させるための動力供給機構と機械的に結合する回転減衰部材をさらに備える。
【0016】
本発明の他の局面によれば、動力供給機構は、対向する遠位端と近位端とを有し、近位端が薬物容器のピストンと接触する、ねじ切りされたプランジャ棒と、ねじ切りされたプランジャ棒とねじ結合する駆動ナットと、シャーシの遠位端の外からアクセス可能な用量ノブに回動可能に結合されたアーバーとを含み、前記アーバーは、アーバー延長部を介して駆動ナットに結合される。前記アーバー延長部と前記アーバーとは第二の係合手段によって相互結合され、前記アーバーが前記用量ノブによって回転された時に反対方向へのアーバー延長部の回転を係止する。前記アーバー延長部と前記駆動ナットとは第三の係合手段によって相互結合され、回転を係止するがアーバー延長部の駆動ナットに対する軸方向の動きを可能にする。動力供給機構はさらに、アーバーに結合された第一端と、シャーシの固定点に結合された第二端とを有し、前記用量ノブと前記アーバーとが回転された時に張力がかけられるばね力手段と、ガイド部分とを含む。ガイド部分は、プランジャ棒の長手溝と協働し、回転を係止めするがガイド部分に対するプランジャ棒の長手軸方向の動きを可能とするガイドレッジが設けられる。
【0017】
本発明のさらなる局面によれば、作動手段は、第四の係合手段によって前記アーバー延長部と解除可能に相互結合され、前記アーバーが回転されて前記ばね力手段に張力がかけられた時には、一方向においてアーバー延長部の回転を係止し、前記第四の係合手段が互いに離れる方向に動いた時は前記回転の係止を解除し、これにより、前記アーバー、前記アーバー延長部および前記駆動ナットは反対方向に回転してプランジャ棒を軸方向に動かし、ピストンと容器内の薬物に圧力をかけて特定の所定量の薬物を薬物液滴発生器およびマウスピースから放出する。
【0018】
本発明のさらに他の局面によれば、装置は、圧力開放手段をさらに備え、圧力開放手段は、前記駆動ナットに設けられたくさび型の傾斜面と、シャーシの固定された内側環状面に設けられたくさび型の傾斜面とを有し、くさび型の傾斜面は互いに当接し、供給の終了時に前記薬物容器内の圧力を下げるために駆動ナットが回転した時に、所定量の供給が終りに近づくと離れる。
【0019】
本発明のさらなる局面によれば、用量ノブとアーバーとは、用量の設定および前記ばね力手段に張力を加える間、第六の係合手段によって互いに解除可能に結合され、前記用量ノブと前記アーバーとが離れると、前記用量ノブは第五の係合手段によって回転が係止される。
【0020】
本発明の他の局面によれば、回転減衰部材は、前記アーバーと前記用量ノブとの間に配置され、用量の供給時において前記アーバーの初期動作を減衰させ、これによって前記薬物容器内の初期圧力ピークを減衰させることができる。
【0021】
本発明のさらなる局面によれば、前記回転減衰部材は、前記アーバーに回転可能に結合される近位部分と、前記用量ノブのコンパートメント内に突出する遠位部分とを有し、コンパートメントは粘度の高い材料で満たされる。前記粘度の高い材料は、グリースである。
【0022】
本発明のさらなる局面によれば、口係合領域の近位端は、ユーザの唇により容易に感じ取られ、効率的な空気流を確保し、マウスピースをユーザの咽頭から所定距離をおいて配置するための少なくとも1つのガイド手段を有する。
【0023】
本発明の他の局面によれば、マウスピースの中心軸は、薬物容器の中心軸に対して100−120°の範囲内にある。
【0024】
本発明のさらなる局面によれば、ピストンは、堅い芯などを有するカスタマイズされたピストンである。
【0025】
本発明のさらに他の局面によれば、シャーシと薬物容器保持部とは第一の係合手段によって互いに解除可能に結合される。
【0026】
本発明のさらなる局面によれば、薬物容器は、標準的なタイプおよび/または標準的なサイズの薬物カートリッジまたはシリンジである。
【0027】
本発明のさらなる局面によれば、前記薬物容器は、標準的なタイプおよび/または標準的なサイズのデュアルチャンバカートリッジまたはシリンジであって、手動または自動で混合することにより互いに合わされる2つの別個の成分を収容する。
【0028】
本発明の他の局面によれば、薬物の吸入と供給を整合させることが可能な操作整合機構をさらに備える。
【0029】
本発明のさらなる局面によれば、前記操作整合機構は、前記マウスピース内に配置される閉塞部材を有し、閉塞部材は動作可能に作動手段に結合され、作動手段が作動した時に前記閉塞部材は前記マウスピースから外される。
【0030】
本発明のさらに他の局面によれば、前記操作整合機構は、マウスピースに動作可能に結合される作動閉塞機構を有し、前記マウスピースを介して呼吸が行われると、前記作動閉塞機構は作動手段から外される。
【0031】
本発明の他の局面によれば、前記ばね力手段は、予め張力のかけられた螺旋駆動ばねである。
【0032】
本発明には、いくつかの利点がある。薬物供給段階の終了時に減圧機能を使用すると、薬物容器内の圧力が大幅かつ急激に下がるため、液垂れのリスクが非常に小さくなる。特に、高い圧力を加えられた薬液を複数のオリフィスに通すことで非常に小さい液滴を複数のオリフィスを通してもたらす液滴吸入器においては、出来るだけ早く圧力を切る(cut off)ことが重要であり、そうしなければ、薬液は液滴とならず、薬物液滴発生器から垂れ落ちるのみとなる。他方では、これによって、装置、より特定的にはマウスピースが汚される、または汚染されるだけでなく、滴下または液垂れした薬物によってオリフィスが詰まる、または塞がれるというリスクがある。薬液の粘性が高い場合に液垂れの問題が顕著となり、弾性特性が液垂れを引き起こしやすいことを示している。
【0033】
薬物の供給時において薬物容器内の圧力をさらに制御するために、減衰部材が最初に使用される。これは初期のピーク応力およびピーク圧力を効果的に下げ、このピーク圧力の低下によって装置の部品の破損のリスクが低下する。
【0034】
供給の初期および終了時に使用されるこれらの方策、および用量を設定する前に予め張力がかけられた螺旋駆動ばねを利用し、ばねに張力をさらにかけることで、薬物供給段階の全体において非常に制御され、かつほぼ一定した圧力曲線がもたらされる。このような圧力曲線は、薬物の小液滴を作る全ての段階において非常に有益なものとなる。
【0035】
本装置は、新しい薬物容器と使用済みの薬物容器とを交換することができるように、2つの相互結合可能な部品によって構成されるのが好ましい。
【0036】
ユーザの肺にさらに適切に薬物を投与するために、操作整合機構を使用しても良い。この操作整合機構は、マウスピースと作動手段とを相互結合し、装置が作動するまで吸入ができないようにする、またはユーザが吸入するまで装置を作動させることが出来ないようにするのが好ましい。これにより、患者が吸入していない時に装置が所定用量を供給するリスクが低下し、装置が薬物により汚されるリスクが低下する。
【0037】
本発明のこれらの局面および他の局面、および利点は、以下の詳細な説明および添付の図面からより明らかになるであろう。
【0038】
以下の本発明の詳細な説明において、添付の図面が参照される。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明による装置の側面の断面図である。
【図2】図1の装置の分解図である。
【図3a】本発明を構成するシャーシの詳細図である。
【図3b】図3aを180°回転させた図である。
【図4】本装置の近位部分の詳細図である。
【図5】本発明による装置に含まれる駆動ナットおよびアーバー延長部の詳細図である。
【図6】本発明による装置に含まれるアーバーおよびアーバー延長部の詳細図である。
【図7】本発明による装置に含まれるハウスおよびばね力手段の詳細図である。
【図8】本発明による装置に含まれるハウス、ハウスカバー、および回転減衰部材の更なる詳細図である。
【図9】本発明による装置に含まれる回転減衰部材および用量ノブの詳細図である。
【図10】本発明による装置に含まれる、作動手段に結合されたシャーシの詳細図である。
【図11】本発明による装置に含まれる、アーバー延長部に結合されたアーバーおよび投薬作動部の更なる詳細図である。
【図12】本発明の装置に含まれる駆動ナット、ガイド部分、およびプランジャ棒の更なる詳細図である。
【図13a】第一の操作整合機構の詳細図である。
【図13b】第一の操作整合機構の詳細図である。
【図14】第三の操作整合機構の詳細図である。
【図15a】第二の操作整合機構の詳細図である。
【図15b】第二の操作整合機構の詳細図である。
【図16】第四の操作整合機構の詳細図である。
【図17a】第四の操作整合機構に含まれる部品の詳細図である。
【図17b】第四の操作整合機構に含まれる部品の詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
発明の詳細な説明
ここで使用される「液体」の用語は、使用温度において概して液体としての特性を持つ全ての溶液、懸濁液、乳状液、油、ジェルなどを包含する。この用語は、液体キャリアに溶解または分散された固形の組成物を明示的に含む。粘性の高い液体としての特性を持つ材料もまた含まれる。
【0041】
本件出願において、遠位部分/端の用語が使用された場合、これは薬物供給装置の部分/端、またはその部材の部分/端を表わし、装置の使用時において、患者への供給位置から最も離れた位置を示す。これに対応して、「近位部分/端」の用語が使用された場合、これは装置の部分/端、またはその部材の部分/端を表わし、装置の使用時において、患者への供給位置に最も近い位置を示す。
【0042】
図面に示される本発明の装置は、対向する近位端と遠位端とを有する概して細長い管状体の形態を有する主シャーシ10を有し、近位部分12(図2)は1の直径を有し、遠位部分14は僅かに大きい直径を有する。横断内壁16(図3aおよび3b)は、近位部分12と遠位部分14との間の移行部に配置され、中央通路18をさらに有する。シャーシの近位部分12は、その側面に通路20が設けられる。通路20は、突出部22と着脱可能に相互作用するように設けられ(図4)、第一の係合手段を形成する。突出部22は、概して細長い管状の薬物容器保持部24の遠位領域の外面に設けられ、2つの部分は互いに結合される。薬物容器保持部24の内側には、薬物容器26を配置することができる。
【0043】
薬物容器およびその内容物は、薬物容器保持部の開口または窓28(図4)を通して見ることができる。しかし、一部のタイプの感光性薬物のために、ガラスを薄く着色する、被覆させる、または不透明にしても良い。さらに、容器保持部は透明の材料からなっても良い。薬物容器26は、用途に応じた複数の寸法を有して容易に購入することが可能な、標準的なタイプおよび/または標準的なサイズのカートリッジまたはシリンジであることが望ましい。薬物容器は、組成物を収容可能な少なくとも1つのチャンバを有する管状の形態と、組成物を排出するための近位開口と、例えばゴムストッパのような少なくとも1つの軸方向に動作可能なピストン42とを有する。薬物容器保持部24の近位端の内周面には、ねじ山30が設けられる(図4)。これらのねじ部30は、マウスピース36のアタッチメント部分34の対応するねじ部32と協働する(図2)。
【0044】
吸入装置のマウスピースについての概説は、WO06/094796に記載されている。例えば、寸法の範囲および構成は、所望の粒子径および流れのパターンを実現するために適合させることができる点が記載されている。したがって、WO06/094796の開示は引用によりここに援用される。
【0045】
本発明の吸入装置の部品には、液滴発生器38が含まれる。液滴発生器38は、液滴発生器からの排出時に液滴が進む方向に対して略垂直の空気流と連結する。これにより、液滴が所望の大きさに保たれ、確実に空気流内に拡散される。
【0046】
マウスピース36は、口との係合領域と空気開口とを有する概して管状の形状となるように設計され、口との係合領域の近位端には、少なくとも1つのガイド手段が設けられる。ガイド手段は、例えば間隔を空けて同心で設けられた少なくとも3つのリングであり、ユーザの唇で容易に感じ取ることができるように構成されている。このような設計において、口との係合領域は、ユーザが口でマウスピースの周りを封止して効率的に空気流を確保することを助けるだけでなく、ユーザの咽頭から所定の距離を空けてマウスピースを配置する。
【0047】
ユーザがマウスピースを口内に入れ、口との係合領域の周りを封止するように唇を置くと、ユーザの口に向かって吸入された空気は、空気開口を介してマウスピースを通る。空気開口は、口との係合領域の対向する端部を形成する。代替の実施例も可能であり、例えば、近位端に近い筒状の表面に沿って複数の開口を設けても良い。
【0048】
空気開口の設計および配置を定める要因は、開口を通って吸入される空気がユーザの口内に液滴を運ぶことから、液滴発生器から最も近い位置に設けることにある。さらに、発生した液滴の進行方向に対して略垂直な空気流は、液滴を離散した状態に保ち、空気流内で十分に分布した状態を保つのに効果的である。
【0049】
マウスピース内には、液滴アクセス開口が設けられる。液滴アクセス開口は、液滴発生器38を組み込んでもよく、または液滴発生器に隣接して配置してもよい。
【0050】
図1において、マウスピースの中心軸は容器の中心軸に対して垂直ではなく、90°より大きい角度をとる。容器に対するマウスピースの角度は、約90°から180°の範囲内とすることができる。口を通って気道に入る組成物の量を最大にするためには、約100°から120°の範囲が好ましい。角度が90°に近付くにつれ、舌に堆積する組成物の量が増える。これは、組成物の味が不快なものである場合、特に望ましくない。
【0051】
マウスピースは装置の入替可能な部品としてもよく、装置への組成物の詰め替えまたは補給の度に廃棄される。代替的に、マウスピースは再使用可能としても良い。再使用が意図される場合、マウスピースは容易に洗浄または殺菌することができる。
【0052】
薬物液滴発生器は、非常に多数の非常に小さいオリフィスと協働するタイプのものであり、薬液はこのオリフィスを通って霧化される。利用することができるこのようなタイプの薬物液滴発生器は、WO02/18058に開示されており、狭い液滴サイズの分布で空気中に小さい液滴を作ることができる微小薬物液滴発生プレートが開示されている。供給端40の大きさおよび対応する薬物液滴発生器の大きさは、特定の用途に応じて様々である。また、薬物液滴発生器は交換可能であり、ガラス、プラスチック、シリコーン、および異なる材料の混合物などの適切な材料からなり得る。
【0053】
WO02/18058は、狭いサイズ分布を有する液滴を作ることが可能な霧化液滴発生器の価値について繰り返し言及している。さらに、WO02/18058のノズルは、霧、水中油滴型エマルション、油中水型エマルションを生成するために利用することができる。WO02/18058の開示は、本発明を実施する当業者にとって有用な参考文献となるため、その内容は引用によりここに援用される。さらに、液滴発生器の概説は、引用によりここに援用されるWO09/002178に記載されている。
【0054】
必要に応じて、製造の容易化の要求および装置の再利用の予定される頻度とタイプを考慮に入れ、液滴発生器38は、薬物容器の近位端の一部として設けることができる。
【0055】
また、装置は動力供給機構を有する。動力供給機構は、ねじ切りされたプランジャ棒48と、駆動ナット56と、アーバー64と、アーバー延長部50と、ばね力手段66と、ガイド部分152とを有する。
【0056】
ストッパ42は、標準的なタイプおよび/または標準的なサイズのカートリッジもしくはシリンジを使用する場合、遠位方向に向けられた中央凹部44を備えて設計されることが多く、強い力が加わった時にストッパ42が潰れないように、いわゆるプランジャ支持部46がストッパの凹部に嵌まるように設けられる。また、例えば堅い芯などを有するストッパのような、特製のストッパを設けることも考えられる。さらに、細長いねじ切りされたプランジャ棒48が、プランジャ支持部46の近位端に接触して設けられる。
【0057】
プランジャ棒48は、概して管状の形状を有する、いわゆるアーバー延長部50内に配置される(図2、図5)。アーバー延長部50の近位端部分の外面には、キー溝52が設けられる。キー溝52は、概して管状の形状を有する駆動ナット56の内側面の対応するキー隆起部54と結合し、第三の係合手段を形成する(図5)。さらに、アーバー延長部50にはリング状部分58が設けられ、リング58の内側面には横断係止レッジ60が設けられる。これらの係止レッジ60は、アーバー64の可撓アーム62と協働し(図6)、第二の係合手段を形成する。
【0058】
しかし、係止レッジ60および可撓アーム62は、アーバー64がアーバー延長部50に対して一方向にのみ回転するように設けられ、可撓アーム62は係止レッジ60の上を摺動する。他の方向においては、可撓アーム62の端が係止レッジ60に当接し、回転が阻止される。
【0059】
例えば、螺旋状の駆動ばね片としてのばね力手段66は、アーバー64の周りに設けられ、その一端がアーバー64の細長いスリット68に取り付けられ、他端がハウス70のスリット69に取り付けられる(図7)。このハウス70がシャーシ10の遠位部分の内側に配置され、長手溝72が対応する隆起部74と嵌合することによりシャーシ10に対して固定して保持される(図3b、図7)。ハウス70は、内方向に突出する可撓アーム76が対応する溝78に嵌まることにより定位置に保持される(図3b、図7)。ハウス70は、ハウス70の外面の隆起部86が嵌まりこむ通路84を有する、近位方向に向けられたアーム82によりハウスカバー80に結合される(図8)。これにより、ハウス70とハウスカバー80とをシャーシに組み付ける際に、アーム82が径方向外側に向けて曲がることが防止される。ハウスカバー80には、遠位方向に向けられた管状部材88がさらに設けられる(図8)。
【0060】
アーバー64には、対応する係止レッジ92と共に作用する2つの係止レッジ90がさらに設けられる(図3b、図6)。以下に記載するように、係止レッジ92は、シャーシ10の内側に設けられ、アーバー64の回転を制限する。アーバー64の遠位端は、ハウスカバー80の管状部材88の中に延在する。アーバー64の遠位端には、中央通路94も設けられる(図8)。通路94には、キー溝(図示せず)が設けられる。
【0061】
本装置は、回転減衰部材100をさらに有する。回転減衰部材100は、アーバーに対して回転可能に結合された近位部分を有し、これにより、キー溝96は回転減衰部材100の近位外面上でキー部98と協働する。
【0062】
回転減衰部材100は、中央管状部材106のコンパートメント110内に突出する遠位部分を有する。回転減衰部材100と管状部材106の内側面との間の空間は、グリースのような粘性の高い材料で満たされている(図8、図9)。アーバー64の遠位領域の外面には、キー溝102がさらに設けられる(図8)。これらのキー溝102は、用量ノブ108の中央管状部材106に設けられた対応する隆起部104と協働し(図9)、第六の係合手段を形成する。用量ノブ108の近位端面に隣接して、径方向内側に向かって延在するレッジ112がさらに設けられる。レッジ112は、ハウスカバー80の管状部材88の外面上で隆起部114と協働し(図8、図9)、以下に記載するように、所定の動作パターンを可能とする。用量ノブ108の遠位領域の内側面には、さらに内側方向に延在するレッジ111が設けられる。レッジ111は、ハウスカバー80の管状部材88の遠位端において環状レッジ118と協働する。さらに、用量ノブおよび管状部材は、他の形態の協働手段を有することが考えられる。さらに、ハウスカバー80と用量ノブ108との間には、用量ノブ108を遠位方向に付勢するためのばね(図示せず)が設けられる。この位置にある時、用量ノブ108はアーバー64から外れる。すなわち、第六の係合手段102、104による結合がなくなる。
【0063】
さらに、本装置は、作動手段120を有する(図10)。作動手段120は、シャーシ10を囲うスリーブ状部材122および径方向に突出するボタン124と併せて摺動可能に設けられる。スリーブ部材122の遠位端には、遠位方向に向けられた舌部126が設けられる。舌部126には、内側方向に延在するレッジ128が設けられる。これらのレッジ128は、投薬作動部134の長手方向に延在するアーム132に設けられ、外側方向に延在するレッジ130の周りを囲う(図11)。投薬作動部134は、アーム132が取り付けられた環状体136を有する。さらに、環状体136の中心面には、径方向に延在する係止レッジ138が設けられる。係止レッジ138は、アーバー延長部50の外面の係止レッジ140と協働し、第四の係合手段を形成する。この作動手段は、引用してここに援用されるEP1225942B1に開示されるような呼吸作動手段とすることも考えられる。
【0064】
駆動ナット56の内側面(図5)には、プランジャ棒42の外面のねじ部144と協働するねじ部142がさらに設けられる。駆動ナット56には、いくつかのくさび形の傾斜面148を有し、遠位方向に向けられた端面を有する環状レッジ146がさらに設けられる。その機能については、以下で説明する。装置のシャーシ10の内壁16の近位方向に向けられた面には、対応するくさび形の傾斜面150が設けられる。戻しばね162は、シャーシ10の内壁16の遠位方向に向けられた面と、投薬作動部134の環状体136の近位方向に向けられた面との間に設けられる(図2)。その機能については、以下で説明する。
【0065】
プランジャ棒42は、さらにガイド部分152(図12)を介して設けられる。ガイド部分152は、シャーシ10に薬物容器保持部が結合されているときはシャーシ10に対して回転を係止可能であるが、シャーシに薬物容器保持部が結合されていないときは、ガイド部分は回転することができる。ガイド部分152には、プランジャ棒42の長手溝156と協働するガイドレッジ154が設けられ、プランジャ棒42のガイド部152に対する回転を係止するが長手方向への動きを可能とする。ガイド部分152の近位端面には、可撓リング状部材158が設けられる。可撓リング状部材158は、組み立てられた時に薬物容器26の遠位端面と接触し、これにより薬物容器26を近位方向に押す。さらに、本装置は、適切に設計されたケーシング160により覆われる。ケーシング160は、シャーシ10に対して用途に応じて固着または着脱可能に取り付けられる。
【0066】
本装置は、以下のように機能することを意図している。薬物容器26が薬物容器保持部内に設置され、シャーシ10に係合される。これにより、ガイド部分152は、シャーシおよび/または容器保持部の適切な係合手段によって回転が係止される。つぎに、ケーシング160は、シャーシ10および薬物容器保持部に取り付けられる。
【0067】
用量を設定する時、用量ノブ108が回転される。用量ノブ108を用量設定機構に結合するために、用量ノブは近位方向に押される。つぎに、用量ノブ108とアーバー64とは、第六の係合手段102、104により結合される。これにより、用量ノブ108が回転されると、アーバー64もまた回転される。アーバーの回転によって、ばねに対して既に事前に張力がかけられて回転力が蓄積した初期状態から、螺旋駆動ばね66にさらに張力がかかる。
【0068】
アーバー64の回転時において、可撓アーム62は、アーバー延長部50のリング状部材58の係止レッジ60から接触が外れ、次の係止レッジ60と接触するまで動く。可撓アーム62とアーバー延長部50の係止レッジ60との接触により、アーバー64は逆方向への動きが防止される(図6)。キー溝52と駆動ナット56の内側面の対応する隆起部54との接触により、アーバー延長部の回転が防止され、駆動ナット56のくさび形の傾斜面148とシャーシ10の内壁16のくさび形の傾斜面150との結合により、駆動ナットの回転が防止される。
【0069】
さらに、投薬作動部134のくさび形の係止レッジ138がアーバー延長部の係止レッジ140と接触するため、アーバー延長部50も同様に回転が防止される(図11)。アーバー64の係止レッジ90がシャーシ10の対応する係止めレッジ92と接触するまで、用量ノブ108は回転する(図3bおよび図6)。これにより、ユーザは事前に設定された位置を越えて用量ホイールを回転させることができず、過度に大きい用量を設定することができない。示される実施例では、用量ノブおよびアーバーは120度回転させて容量を設定することができる。このため、可撓アーム62と係止レッジ60との組み合わせは120度の間隔で3つ設けられる。120度の間隔は、駆動ナット56のくさび形面148(図5)およびシャーシ壁16のくさび形面150(図3a)にも同様に使用される。用量の大きさ、および/またはプランジャ棒48および駆動ナット56のねじ部144などの他の部品の設計に応じて、120度以外の間隔も使用することができると理解される。ユーザが用量ノブ108を放すと、用量ノブ108は遠位方向に動き、第五の係合手段を形成するハウスカバー80の管状部分88の隆起部114によって形成されるポケットに嵌まるレッジ112によって回転が止められる初期位置に戻り、用量ノブ108はアーバー64から再度外れる(図8および図9)。
【0070】
ユーザは、吸入器を供給位置に配置し、作動ボタン124およびスリーブ状部材122を戻しばね162の力に抗して近位方向に摺動させて吸入器を作動させる。スリーブ状部材122と投薬作動部134との結合により、投薬作動部134もまた近位方向に動く。これにより、投薬作動部の係止レッジ138がアーバー延長部50の係止レッジ140との接触から外れて動く(図10および図11)。可撓アーム62と係止レッジ60との結合により、アーバー延長部50およびアーバー64はばね66の力によって自由に動くことができる。アーバー延長部50と駆動ナット56とのキー結合により、駆動ナット56もまた回転する。
【0071】
アーバー64が回転するため、用量ノブ108の管状部分106内において回転減衰部材100も回転する。回転減衰部材が回転するコンパートメント内のグリースによって、薬物供給開始時の薬物容器内の圧力ピークを下げる減衰効果が得られる。
【0072】
ばねの蓄積した回転力は、プランジャ棒48のねじ部144とねじ係合する駆動ナット56の回転によって軸方向の力に変換される。ガイド部分152によってプランジャ棒の回転が係止されるため、プランジャ棒48は軸方向に進み、これによってストッパ42が動かされ、霧状薬物液滴発生器38を介して薬物が押し出される。これにより、非常に小さい液滴薬物が形成される。これらの液滴はマウスピースに入り、ユーザの呼吸によって肺に送られる。
【0073】
駆動ナット56の回転時において、駆動ナット56のくさび型の傾斜面148はシャーシ10の対応するくさび形面150の上を摺動し、アーバー延長部50とのキー結合により、駆動ナット56が近位方向に動く。駆動ナット56のくさび形面148、150およびシャーシは、それぞれ投薬終了動作の直前にくさび形状が突然終端するように設計されている。
【0074】
突然終端させることにより、駆動ナット56は反対方向、すなわち遠位方向にわずかに動き、プランジャ棒48もその方向に動く。このプランジャ棒の動きが、プランジャ棒によってストッパと容器内の薬物とに加えられる圧力を効果的に開放する。圧力を抜くことによって、供給後に起こる霧状薬物液滴発生器からの液垂れを大方回避することができる。突然の終端動作を強める(increase)ために、ばね164を駆動ナット56とガイド部分152(図2)との間に設けてもよく、これによって駆動ナット56を装置の遠位端に向かって付勢することができる。
【0075】
供給装置は、ここで供給位置から外すことができる。多種用量容器を使用し、続けて供給を行うために、用量ノブ108を回転させることで用量が設定され、ばねに張力がかけられる。多種用量容器が空になった場合、または単一用量容器が使用される場合、近位側の薬物容器保持部24はシャーシ10から外され、薬物容器26が外される。ガイド部分152が自由に回転できることから、近位方向に進んだプランジャ棒は当初の位置に戻してもよく、これによってプランジャ棒48も回転させることができる。新しい容器が近位側のハウジング部分に設置され、この後に近位ハウジング部分が再度遠位ハウジング部分に結合される。
【0076】
本発明によれば、例えば水または生理食塩水などに含まれる状態のエマルションも投与することができる。このような用途においては、組成物を2つの別個の成分として提供することができる。これらの成分は、例えばねじ切りされたプランジャ棒の中に同軸で追加のプランジャ棒を少なくとも1つ設けることで互いに合わせ、手動または自動で混合させることができる。EP1542744B1の開示は、本発明を実施する当業者にとって有用な参考文献となり、その内容は引用によりここに援用される。薬物容器保持部をシャーシ内に挿入または上に配置して軸方向に移動させることにより、手動で混合を行うことができる。
【0077】
図13−図17は、薬物吸入と薬物供給とを整合させることができる操作整合機構についての異なる手法を示す。操作整合機構は、マウスピースに配置された閉塞部材を有する。閉塞部材は動作可能に作動手段に結合され、作動手段が作動している時には閉塞部材はマウスピースから外される。代替的に、操作整合機構は作動閉塞機構を有する。作動閉塞機構は動作可能にマウスピースに結合され、マウスピースを介した吸入が行われているときは、作動閉塞機構は作動手段から外される。
【0078】
図13aおよび図13bは、装置の作動手段に結合された摺動ボタン124を有する簡易な設計を示す。ボタンには、例えばマウスピース36の空気開口が配置されたマウスピースのシート部170に摺動可能に設けられた舌部168としての閉塞部材がさらに設けられる。ボタン124が操作されていない時、舌部168は空気開口を閉塞し、マウスピース36を介した吸入を防止する(図13a)。ユーザがボタン166を操作すると、空気開口は、マウスピース内での薬物の開放と同時に開く(図13b)。これにより、吸入と用量供給の整合が実現する。
【0079】
図15aおよび図15bは、管状延長部178を有するマウスピース36の更なる変形例を示し、延長部の開口180は作動手段176に隣接している。管状延長部178には、吸入される空気流を制限して肺への堆積を向上させるための制限通路184を設けても良い。例えばプラグまたは封止部材182などの閉塞部材が作動手段176に結合され、作動手段が操作されていない時に開口180を封止する位置(図15a)から、作動手段が操作される時の開放位置(図15b)に動かすことができ、マウスピースを介した吸入が可能となる。封止部材182および開口180は、上述の目的と同様の目的のために制限手段と併せて使用することも考えられる。
【0080】
図14は、同様の方法を示し、たとえば蓋172としての閉塞部材がヒンジを介してマウスピース36の空気開口が閉塞する閉止位置と、吸入が可能な開放位置との間でマウスピースに取り付けられる。図面に示されるように、蓋はワイヤ174などにより作動手段176に結合してもよく、これにより、作動手段176が操作される時に蓋が動かされ、孔が開放される。
【0081】
図16および図17は、変形例を示しており、操作整合機構は、マウスピースを介した吸入時に作動閉塞機構が作動機構から外されるように、マウスピースに動作可能に結合された作動閉塞機構を有する。この変形例は、吸気口を有する管状延長部178を有する。延長部178の遠位端は、ここではチャンバ186に結合され、チャンバ186は作動手段176に隣接して配置されている。チャンバ186内には、シリコーン膜188(図17a)が配置され、チャンバが分割される。チャンバは、棒194が移動可能に延在して通る中央孔を有する蓋によって閉じられている。棒194は、膜188に取り付けられる。蓋は、複数の空気通路をさらに有する。この変形例は、装置が作動していない時、すなわち吸入がない時には膜188に影響はなく、棒194が通路から突出し(図17a)、これによって作動手段の動きが阻止されるように機能することを意図している。ユーザが吸入を始めると、膜188の両側のチャンバ186内で圧力差が生じ、膜188の撓みによって棒がチャンバ186内に引き戻される(図17b)。棒194の動きによって、作動手段が自由となって作動が可能となり、所定用量の薬物が供給される。
【0082】
もちろん喘息のような呼吸器系または肺系統のために設計された薬物に即時に本装置が適用可能であることは、上述の明細書本文から明らかである。嚢胞性線維症および/もしくはその合併症、および慢性閉塞性肺疾患の治療のために、他の種類の薬物および組成物も使用することができる。
【0083】
明細書本文に記載の実施例および図面に示される実施例は、本発明の限定されない例にすぎず、特許請求項の範囲内において多様に変更することができることが理解されるであろう。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬物を供給するための計量液滴吸入装置であって、
−対向する遠位端と近位端とを有する概して細長い管状のシャーシ(10)と、
−第一の係合手段(20、22)によって前記シャーシ(10)に対して着脱可能に結合される薬物容器保持部(24)と、
−前記薬物容器保持部内に設けられる薬物容器(26)とを備え、前記容器は、組成物を収容可能な少なくとも1つのチャンバと、組成物を放出するための近位開口と、軸方向に動作可能な少なくとも1つのピストンとを有する管状の形態を含み、計量液滴吸入装置はさらに、
−シャーシ(10)の遠位端の外からアクセス可能であり、回転力を蓄積することにより、放出される用量を設定するための用量ノブ(108)と、
−回転力をピストンに加えられる軸方向の力に変換して、前記薬物容器内に圧力を発生させる動力供給機構と、
−動力供給機構と機械的に結合する作動手段(134)と、
−口係合領域と空気開口とを有し、容器保持部の近位部分に機械的に結合するマウスピース(36)と、
−複数の貫通オリフィスを有し、マウスピース(36)内に設けられる液滴発生器(38)とを備え、オリフィスは容器(40)の近位開口およびマウスピースと液体連通するオリフィスであって、
装置は、前記薬物容器内の初期の圧力ピークを減衰させるための動力供給機構と機械的に結合する回転減衰部材(100)をさらに備える、計量液滴吸入装置。
【請求項2】
動力供給機構は、
−対向する遠位端と近位端とを有し、近位端が薬物容器のピストンと接触する、ねじ切りされたプランジャ棒(48)と、
−ねじ切りされたプランジャ棒とねじ結合される駆動ナット(56)と、
−シャーシ(10)の遠位端の外からアクセス可能な用量ノブ(108)に回動可能に結合されたアーバー(64)とを含み、前記アーバー(64)は、アーバー延長部(50)を介して駆動ナット(56)に結合され、前記アーバー延長部(50)と前記アーバー(64)とは、第二の係合手段(60、62)によって相互結合され、前記アーバーが前記用量ノブによって回転された時に反対方向へのアーバー延長部の回転を係止し、前記アーバー延長部(50)と前記駆動ナット(56)とは第三の係合手段(52、54)によって相互結合され、回転を係止するがアーバー延長部(50)の駆動ナット(56)に対する軸方向の動きを可能とし、動力供給機構はさらに、
−アーバー(64)に結合された第一端とシャーシの固定点に結合された第二端とを有し、前記用量ノブ(108)と前記アーバー(64)とが回転された時に張力がかけられるばね力手段(66)と、
−ガイド部分(152)とを含み、ガイド部分(152)は、プランジャ棒(48)の長手溝(156)と協働し、回転を係止めするがガイド部分に対するプランジャ棒の長手軸方向の動きを可能とするガイドレッジ(154)が設けられる、請求項1に記載の計量液滴吸入装置。
【請求項3】
作動手段(134)は、第四の係合手段(138、140)によって前記アーバー延長部と解除可能に相互結合され、前記アーバー(64)が回転されて前記ばね力手段(66)に張力がかけられた時には一方向においてアーバー延長部(50)の回転を係止し、前記第四の係合手段(138、140)が互いに離れる方向に動いた時は前記回転の係止を解除し、これにより、前記アーバー(64)、前記アーバー延長部(50)および前記駆動ナット(56)は反対方向に回転してプランジャ棒(48)を軸方向に動かし、ピストンと容器内の薬物に圧力をかけて特定の所定量の薬物を薬物液滴発生器(38)およびマウスピース(36)から放出する、請求項2に記載の計量液滴吸入装置。
【請求項4】
装置は、圧力開放手段をさらに備え、圧力開放手段は、前記駆動ナット(56)に設けられたくさび型の傾斜面(148)と、シャーシ(10)の固定された内側環状面(16)に設けられたくさび型の傾斜面(150)とを有し、くさび型の傾斜面(148、150)は互いに当接し、供給の終了時に前記薬物容器内の圧力を下げるために駆動ナットが回転した時に、所定量の供給が終りに近づくと離れる、請求項3に記載の計量液滴吸入装置。
【請求項5】
前記ばね力手段(32)は、螺旋駆動ばねである、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
用量ノブとアーバーとは、用量の設定および前記ばね力手段に張力を加える間、第六の係合手段(102、104)によって互いに解除可能に結合され、前記用量ノブと前記アーバーとが離れると、前記用量ノブは第五の係合手段(112、114)によって回転が係止される、請求項2から5のいずれか1項に記載の装置。
【請求項7】
回転減衰部材(100)は、前記アーバーと前記用量ノブとの間に配置され、用量の供給時において前記アーバーの初期動作を減衰させ、これによって前記薬物容器内の初期圧力ピークを減衰させることができる、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記回転減衰部材は、前記アーバーに回転可能に結合される近位部分と、前記用量ノブのコンパートメント(110)内に突出する遠位部分とを有し、コンパートメントは粘度の高い材料で満たされる、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
口係合領域の近位端は、ユーザの唇により即時に感じ取られ、効率的な空気流を確保し、マウスピースをユーザの咽頭から所定距離をおいて配置するための少なくとも1つのガイド手段を有する、請求項1から8のいずれか1項に記載の装置。
【請求項10】
マウスピースの中心軸は、薬物容器の中心軸に対して100−120°の範囲内にある、請求項1から9のいずれか1項に記載の装置。
【請求項11】
ピストン(42)は、堅い芯などを有するカスタマイズされたピストンである、請求項1から10のいずれか1項に記載の装置。
【請求項12】
シャーシ(10)と薬物容器保持部(24)とは第一の係合手段(20、22)によって互いに解除可能に結合される、請求項2から11のいずれか1項に記載の装置。
【請求項13】
薬物容器は、標準的なタイプおよび/または標準的なサイズの薬物カートリッジまたはシリンジである、請求項1から12のいずれか1項に記載の装置。
【請求項14】
前記薬物容器は、標準的なタイプおよび/または標準的なサイズのデュアルチャンバカートリッジまたはシリンジであって、手動または自動で混合することにより互いに合わされる2つの別個の成分を収容する、請求項1から12のいずれか1項に記載の装置。
【請求項15】
薬物の吸入と供給を整合させることが可能な操作整合機構をさらに備える、請求項1から14のいずれか1項に記載の装置。
【請求項16】
前記操作整合機構は、前記マウスピース内に配置される閉塞部材を有し、閉塞部材は動作可能に作動手段に結合され、作動手段が作動した時に前記閉塞部材は前記マウスピースから外される、請求項15に記載の装置。
【請求項17】
前記操作整合機構は、マウスピースに動作可能に結合される作動閉塞機構を有し、前記マウスピースを介して呼吸が行われると、前記作動閉塞機構は作動手段から外される、請求項16に記載の装置。
【請求項1】
薬物を供給するための計量液滴吸入装置であって、
−対向する遠位端と近位端とを有する概して細長い管状のシャーシ(10)と、
−第一の係合手段(20、22)によって前記シャーシ(10)に対して着脱可能に結合される薬物容器保持部(24)と、
−前記薬物容器保持部内に設けられる薬物容器(26)とを備え、前記容器は、組成物を収容可能な少なくとも1つのチャンバと、組成物を放出するための近位開口と、軸方向に動作可能な少なくとも1つのピストンとを有する管状の形態を含み、計量液滴吸入装置はさらに、
−シャーシ(10)の遠位端の外からアクセス可能であり、回転力を蓄積することにより、放出される用量を設定するための用量ノブ(108)と、
−回転力をピストンに加えられる軸方向の力に変換して、前記薬物容器内に圧力を発生させる動力供給機構と、
−動力供給機構と機械的に結合する作動手段(134)と、
−口係合領域と空気開口とを有し、容器保持部の近位部分に機械的に結合するマウスピース(36)と、
−複数の貫通オリフィスを有し、マウスピース(36)内に設けられる液滴発生器(38)とを備え、オリフィスは容器(40)の近位開口およびマウスピースと液体連通するオリフィスであって、
装置は、前記薬物容器内の初期の圧力ピークを減衰させるための動力供給機構と機械的に結合する回転減衰部材(100)をさらに備える、計量液滴吸入装置。
【請求項2】
動力供給機構は、
−対向する遠位端と近位端とを有し、近位端が薬物容器のピストンと接触する、ねじ切りされたプランジャ棒(48)と、
−ねじ切りされたプランジャ棒とねじ結合される駆動ナット(56)と、
−シャーシ(10)の遠位端の外からアクセス可能な用量ノブ(108)に回動可能に結合されたアーバー(64)とを含み、前記アーバー(64)は、アーバー延長部(50)を介して駆動ナット(56)に結合され、前記アーバー延長部(50)と前記アーバー(64)とは、第二の係合手段(60、62)によって相互結合され、前記アーバーが前記用量ノブによって回転された時に反対方向へのアーバー延長部の回転を係止し、前記アーバー延長部(50)と前記駆動ナット(56)とは第三の係合手段(52、54)によって相互結合され、回転を係止するがアーバー延長部(50)の駆動ナット(56)に対する軸方向の動きを可能とし、動力供給機構はさらに、
−アーバー(64)に結合された第一端とシャーシの固定点に結合された第二端とを有し、前記用量ノブ(108)と前記アーバー(64)とが回転された時に張力がかけられるばね力手段(66)と、
−ガイド部分(152)とを含み、ガイド部分(152)は、プランジャ棒(48)の長手溝(156)と協働し、回転を係止めするがガイド部分に対するプランジャ棒の長手軸方向の動きを可能とするガイドレッジ(154)が設けられる、請求項1に記載の計量液滴吸入装置。
【請求項3】
作動手段(134)は、第四の係合手段(138、140)によって前記アーバー延長部と解除可能に相互結合され、前記アーバー(64)が回転されて前記ばね力手段(66)に張力がかけられた時には一方向においてアーバー延長部(50)の回転を係止し、前記第四の係合手段(138、140)が互いに離れる方向に動いた時は前記回転の係止を解除し、これにより、前記アーバー(64)、前記アーバー延長部(50)および前記駆動ナット(56)は反対方向に回転してプランジャ棒(48)を軸方向に動かし、ピストンと容器内の薬物に圧力をかけて特定の所定量の薬物を薬物液滴発生器(38)およびマウスピース(36)から放出する、請求項2に記載の計量液滴吸入装置。
【請求項4】
装置は、圧力開放手段をさらに備え、圧力開放手段は、前記駆動ナット(56)に設けられたくさび型の傾斜面(148)と、シャーシ(10)の固定された内側環状面(16)に設けられたくさび型の傾斜面(150)とを有し、くさび型の傾斜面(148、150)は互いに当接し、供給の終了時に前記薬物容器内の圧力を下げるために駆動ナットが回転した時に、所定量の供給が終りに近づくと離れる、請求項3に記載の計量液滴吸入装置。
【請求項5】
前記ばね力手段(32)は、螺旋駆動ばねである、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
用量ノブとアーバーとは、用量の設定および前記ばね力手段に張力を加える間、第六の係合手段(102、104)によって互いに解除可能に結合され、前記用量ノブと前記アーバーとが離れると、前記用量ノブは第五の係合手段(112、114)によって回転が係止される、請求項2から5のいずれか1項に記載の装置。
【請求項7】
回転減衰部材(100)は、前記アーバーと前記用量ノブとの間に配置され、用量の供給時において前記アーバーの初期動作を減衰させ、これによって前記薬物容器内の初期圧力ピークを減衰させることができる、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記回転減衰部材は、前記アーバーに回転可能に結合される近位部分と、前記用量ノブのコンパートメント(110)内に突出する遠位部分とを有し、コンパートメントは粘度の高い材料で満たされる、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
口係合領域の近位端は、ユーザの唇により即時に感じ取られ、効率的な空気流を確保し、マウスピースをユーザの咽頭から所定距離をおいて配置するための少なくとも1つのガイド手段を有する、請求項1から8のいずれか1項に記載の装置。
【請求項10】
マウスピースの中心軸は、薬物容器の中心軸に対して100−120°の範囲内にある、請求項1から9のいずれか1項に記載の装置。
【請求項11】
ピストン(42)は、堅い芯などを有するカスタマイズされたピストンである、請求項1から10のいずれか1項に記載の装置。
【請求項12】
シャーシ(10)と薬物容器保持部(24)とは第一の係合手段(20、22)によって互いに解除可能に結合される、請求項2から11のいずれか1項に記載の装置。
【請求項13】
薬物容器は、標準的なタイプおよび/または標準的なサイズの薬物カートリッジまたはシリンジである、請求項1から12のいずれか1項に記載の装置。
【請求項14】
前記薬物容器は、標準的なタイプおよび/または標準的なサイズのデュアルチャンバカートリッジまたはシリンジであって、手動または自動で混合することにより互いに合わされる2つの別個の成分を収容する、請求項1から12のいずれか1項に記載の装置。
【請求項15】
薬物の吸入と供給を整合させることが可能な操作整合機構をさらに備える、請求項1から14のいずれか1項に記載の装置。
【請求項16】
前記操作整合機構は、前記マウスピース内に配置される閉塞部材を有し、閉塞部材は動作可能に作動手段に結合され、作動手段が作動した時に前記閉塞部材は前記マウスピースから外される、請求項15に記載の装置。
【請求項17】
前記操作整合機構は、マウスピースに動作可能に結合される作動閉塞機構を有し、前記マウスピースを介して呼吸が行われると、前記作動閉塞機構は作動手段から外される、請求項16に記載の装置。
【図1】
【図2】
【図3a】
【図3b】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13a】
【図13b】
【図14】
【図15a】
【図15b】
【図16】
【図17a】
【図17b】
【図2】
【図3a】
【図3b】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13a】
【図13b】
【図14】
【図15a】
【図15b】
【図16】
【図17a】
【図17b】
【公表番号】特表2013−507172(P2013−507172A)
【公表日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−533112(P2012−533112)
【出願日】平成22年9月13日(2010.9.13)
【国際出願番号】PCT/SE2010/050972
【国際公開番号】WO2011/043712
【国際公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【出願人】(503211493)エス・ホー・エル・グループ・アクチボラゲット (30)
【氏名又は名称原語表記】SHL GROUP AB
【公表日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月13日(2010.9.13)
【国際出願番号】PCT/SE2010/050972
【国際公開番号】WO2011/043712
【国際公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【出願人】(503211493)エス・ホー・エル・グループ・アクチボラゲット (30)
【氏名又は名称原語表記】SHL GROUP AB
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