説明

計量装置及び計量装置の制御方法

【課題】物質の計量が要求されるタスクを物質の量を示す数値や単位について意識することなく容易に遂行することを可能にする計量装置及びその制御方法を提供する。
【解決手段】内壁面の少なくとも一部が所定の範囲内で可動に構成され、上部に開口部を有し、可動の内壁面の位置に応じて容積が可変の容器と、前記容器に接続した取っ手と、可動内壁面の位置を移動させる駆動手段と、前記駆動手段の作動を制御する制御手段と、を有し、前記制御手段は、タスクの情報を入力する入力部と、入力したタスクの情報からタスクの遂行のために要求される物質の量の情報を取得する取得部と、物質の量の情報とその物質の体積との対応関係を記憶する記憶部と、前記対応関係に基づき物質の量の情報に対応するその物質の体積を算出する算出部と、算出した物質の体積と前記容器の容積とが等しくなる位置に可動内壁面が移動するように駆動手段を作動させる駆動制御部と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は調理材料等を計量する計量装置及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
計量可能な物質量を調節することができる調節型計量器が知られている。例えば特許文献1には、バケット部の壁の一部が可動壁により構成され、ユーザが可動壁の位置を変化させることによってスコップ容量を変化させることができる調節型計量スコップが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2007−519919号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような従来の調節型計量器では、調節型計量器の容量と可動壁の位置との対応関係に基づいて、目的の物質量に応じてユーザ自身が可動壁の位置を調節する必要がある。そのため、ユーザは、物質量が指定されるタスクを遂行する際に、従来の調節型計量器を利用する場合は、目的の物質量の数値を意識しなければならない。また、目的の物質量が体積値で与えられない場合は、ユーザ自身で目的の物質量を体積値に読み替える必要もある。
【0005】
物質量が指定されるタスクとしては、典型的には料理がある。料理タスクは一般にレシピとして表現されるが、レシピにおける材料や調味料の量の表記は、グラム、cc、カップ、大さじ、小さじなどのように、重量表記、体積表記、及び計量器に基づく表記が混在している。また、近年インターネットを介して世界各国のユーザがレシピを共有することも容易になっているが、そのようなレシピにおいてはユーザが普段使用している度量衡とは異なる度量衡で量が表記されることがあり得る。
【0006】
従来の調節型計量器を用いてこのような料理タスクを遂行する場合、ユーザは、このような種々の形式で表記される材料や調味料の量を示す数値を、調節型計量器の可動壁の操作に適した体積値に読み替える必要がある。つまり、従来の調節型計量器を用いても、結局、ユーザは目的の物質量を示す数値を意識して計量を行わなければならず、料理初心者やレシピを頼りに未経験の料理に挑戦しようとする者にとって負担やミスの原因になり得る。
【0007】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、物質を計量することが要求されるタスクを、物質の量を示す数値や単位について意識することなく容易に遂行することを可能にする計量装置及びその制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明は、内壁面の少なくとも一部が所定の範囲内で可動に構成され、上部に開口部を有し、可動内壁面の位置に応じて容積が可変の容器と、前記容器に接続した取っ手と、前記可動内壁面の位置を移動させる駆動手段と、前記駆動手段の作動を制御する制御手段と、を有し、前記制御手段は、タスクの情報を入力する入力部と、入力部から入力したタスクの情報からタスクの遂行のために要求される物質の量の情報を取得する取得部と、物質の量の情報とその物質の体積との対応関係を記憶する記憶
部と、記憶部が記憶する対応関係に基づき、取得部が取得した物質の量の情報に対応するその物質の体積を算出する算出部と、算出部が算出した物質の体積と前記容器の容積とが等しくなる位置に前記可動内壁面が移動するように前記駆動手段を作動させる駆動制御部と、を有する計量装置を提供する。
【0009】
本発明の計量装置によれば、計量装置にタスクの情報が入力されると、容器の容積がそのタスクの遂行のために要求される物質の体積と等しくなるように、自動的に可動内壁面の位置が調節される。すなわち、タスクの遂行のために要求される量の物質を得るためにユーザがすべきことは、タスクの情報を計量装置に入力し、しかる後、計量装置により物質をすくい取ったり注いだりすることだけである。従って、ユーザは、物質の量を示す数値や単位などについて意識することなく計量を行うことができる。本発明の計量装置を利用することによって、ユーザは、物質を計量することが要求されるタスクを容易に遂行するが可能になる。
【0010】
本発明の計量装置において、入力部は、物質の量の情報とその物質の体積との対応関係の情報を入力可能であっても良い。この場合、記憶部は、入力部から入力される対応関係を記憶するようにしても良い。この構成を採れば、記憶部に記憶されていない対応関係を追加したり、記憶部に記憶されている対応関係を更新したりすることができる。これにより、より広範なタスクにおいて本発明の計量装置を利用して物質の計量を行うことが可能になる。
【0011】
本発明は、内壁面の少なくとも一部が所定の範囲内で可動に構成され、上部に開口部を有し、可動内壁面の位置に応じて容積が可変の容器と、前記容器に接続した取っ手と、前記可動内壁面の位置を変化させる駆動手段と、を有する計量装置の制御方法として捉えることもできる。
すなわち、本発明は、タスクの情報を入力する入力ステップと、入力ステップで入力したタスクの情報からタスクの遂行のために要求される物質の量の情報を取得する取得ステップと、物質の量の情報とその物質の体積との対応関係を読み込むステップと、読み込んだ前記対応関係に基づき、取得ステップで取得した物質の量の情報に対応するその物質の体積を算出する算出ステップと、算出ステップで算出した物質の体積と前記容器の容積とが等しくなる位置に前記可動内壁面が移動するように前記駆動手段を作動させる駆動制御ステップと、を有する計量装置の制御方法を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、物質を計量することが要求されるタスクを、物質の量を示す数値や単位について意識することなく容易に遂行することを可能にする計量装置及びその制御方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施例に係る計量装置の構成を示す図。
【図2】本発明の一実施例に係る計量装置の機能構成を示し、特にタスク情報が計量装置とは別体の装置から計量装置に入力される構成例を示す図。
【図3】本発明の一実施例に係る計量装置の機能構成を示し、特にタスク情報が計量装置に備わる装置によって計量装置に入力される構成例を示す図。
【図4】本発明の一実施例に係る計量装置の記憶部に記憶される物質の量を示す情報と物質の体積との対応関係の一例。
【図5】本発明の一実施例に係る計量装置の記憶部に記憶される物質の量を示す情報と物質の体積との対応関係の一例。
【図6】本発明の一実施例に係る計量装置の記憶部に記憶される物質の量を示す情報と物質の体積との対応関係の一例。
【図7】本発明の一実施例に係る計量装置の駆動制御部が用いる物質の体積とリニアアクチュエータの位置との対応関係の一例。
【図8】本発明に係る計量装置の容積可変容器の構成例。
【図9】本発明に係る計量装置の容積可変容器の構成例。
【図10】本発明に係る計量装置の容積可変容器の構成例。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施例について説明する。図1は、本実施例に係る計量装置の構成を示す図である。図1(A)は計量装置1の長手方向の対称面による断面を示す図であり、図示するように、計量装置1は、概略、スコップ部2と、スコップ部2に接続した取っ手3と、から構成される。スコップ部2は、側壁部6と、側壁部6の底辺から取っ手3と反対方向に上方に向かって延びることにより底面と側壁面とを兼ねる壁部5と、により区画され、上部に開口部4を有する。
【0015】
スコップ部2の内部には、側壁部6の上辺に平行な回転軸7Aの周りに矢印A方向に回転可能に構成された可動壁7が設けられる。可動壁7の一方の面にはアーム9が取り付けられ、アーム9はリニアアクチュエータ10に接続されている。リニアアクチュエータ10がアーム9を駆動することにより、可動壁7が回転する。回転軸7Aと反対側の可動壁7の辺7Bは、壁部5の内壁面に接している。
【0016】
可動壁7のアーム9が取り付けられている面とは反対側の面と、可動壁7と壁部5の接線から開口部4の端縁までの壁部5の内壁面と、により、流体や流動性固形物質などの物質を貯留可能な容器8が構成される。容器8の内壁面の一部を構成する、可動壁7のアーム9の取り付け面と反対側の面が、本発明の「可動内壁面」に相当する。
【0017】
可動壁7の位置を変化させるアーム9及びリニアアクチュエータ10が、本発明の「駆動手段」に相当する。リニアアクチュエータ10の作動は、コントローラ11によって制御される。コントローラ11は本発明の「制御手段」に相当する。図1(B)及び図1(C)に示すように、リニアアクチュエータ10が可動壁7の位置を変化させることによって、容器8の容積が変化する。図1(B)及び図1(C)において、斜線で塗りつぶした部分が、容器8の容積を示す。
【0018】
図2は、計量装置1の機能構成を示す図である。図1に示した構成要素に対応するブロックには、図1と共通の符号を付した。図2に示すように、計量装置1は、可動壁7の位置により容積が可変の容器8を含むスコップ部2と、スコップ部2に接続される取っ手3と、可動壁7の位置を移動させる駆動手段10(リニアアクチュエータ)と、駆動手段10を制御する制御手段11(コントローラ)と、を有する。
【0019】
制御手段11は、タスクの情報を入力する入力部111、入力部111から入力したタスクの情報からタスクの遂行のために要求される物質の量の情報を取得する取得部112、物質の量の情報とその物質の体積との対応関係を記憶する記憶部113、記憶部113が記憶する対応関係に基づき、取得部112が取得した物質の量の情報に対応するその物質の体積を算出する算出部114、及び、算出部114が算出した物質の体積と容器8の容積とが等しくなる位置に可動壁7が移動するように駆動手段10(リニアアクチュエータ)を作動させる駆動制御部115を有する。
【0020】
ここで、タスクの情報とは、例えば、「鍋に塩を10g入れて10分加熱する」(料理タスク1)、「醤油を大さじ2杯入れてよく混ぜる」(料理タスク2)、「衣料5kgに適した量の洗剤を投入して洗濯する」(洗濯タスク)、「鈴木さんの好みの量の砂糖入りのコーヒーを作る」(コーヒータスク)のようなタスク全体の内容を示す情報である。つ
まり、入力部111は、タスクの遂行のために要求される物質の量そのものの情報ではなく、そのような物質の量の情報を含むタスク全体の内容を示す情報を入力する。
【0021】
このようなタスクの情報には、例示した「料理タスク1」のように、物質の量を数値によって陽に示す(直接的に示す)情報が含まれていても良いし、例示した「洗濯タスク」や「コーヒータスク」のように、物質の量を数値によって陽に示す情報を含んでいなくても良い。物質の量を数値によって陽に示す情報を含まないタスク情報には、物質の量を陰に示す(間接的に示す)情報が含まれる。
【0022】
上記例示した「洗濯タスク」の情報の場合は、「衣料5kg」がタスクの遂行のために計量すべき物質(洗剤)の量を陰に示す情報であり、コーヒータスクの情報の場合は、「鈴木さん」がタスクの遂行のために計量すべき物質(砂糖)の量を陰に示す情報である。このように、入力部111には、ユーザが遂行したいタスクの全体の内容を示す情報を入力すれば良いので、ユーザは、入力部111にタスク情報を入力する際に、そのタスクの遂行のために計量すべき物質の量を示す数値や単位などを意識する必要が無い。
【0023】
ここで、入力部111にタスク情報を入力するための具体的な方法をいくつか例示する。
【0024】
図2は、入力部111が、計量装置1とは別体のパーソナルコンピュータ121,携帯端末122,家電機器123などから、有線又は無線による通信手段を介して、タスクの情報を受け取る構成を示している。
【0025】
例えば、携帯端末122には、連続する複数の料理タスクからなるレシピのデータが記憶されており、携帯端末122の画面上でユーザはテキストや写真などを用いて各料理タスクの内容を把握できるとともに、ポインティングデバイスやキーボードなどの入力装置を用いて、現在の状況においてユーザが遂行したい料理タスクを指定する操作を行うことができる。或いは、携帯端末122によりインターネット上のレシピ共有サービスを提供するWebサイトなどにアクセスし、Webサイトからレシピデータをダウンロードすることにより、ユーザは、現在の状況において遂行したい料理タスクを指定する操作を行うことができる。
【0026】
ユーザが、上記例示した「料理タスク1」を指定する操作を行うと、携帯端末122は、「料理タスク1」の内容を示す「塩」「10g」「10分」「加熱」などの情報を所定の形式で格納したデータを、有線又は無線により計量装置1に送信し、入力部111に「料理タスク1」の情報が入力される。ここで、ユーザは、遂行したい料理タスクを指定するだけでよい。その料理タスクの遂行のために要求される物質の量を陽に示す情報(塩10g)を意識する必要は無い。
【0027】
また、家電機器123は、例えば洗濯機であり、投入された洗濯物の総重量を測定するセンサと、有線又は無線による通信手段を備えているものとする。ユーザが、例えば5kgの衣料を洗濯機123に投入すると、洗濯機123は、上記例示した「洗濯タスク」の内容を示す「衣料」「5kg」などの情報を所定の形式で格納したデータを、有線又は無線により、計量装置1に送信し、入力部111に洗濯タスクの情報が入力される。
【0028】
ここで、ユーザは、洗濯したい衣料を洗濯機123に投入するだけでよい。ユーザは投入した衣料の総重量を調べる必要もないし、その衣料を洗濯するタスクの遂行のために要求される洗剤の量を陽に示す情報を得るために洗濯機123のマニュアルを調べる必要もない。
【0029】
図3は、入力部111が、計量装置1の本体に備わる画像認識装置13から内部バスを介してタスクの情報を受け取る構成を示している。
【0030】
例えば、計量装置1が、撮像部131及び認識処理部132を含む画像認識装置13を備え、レシピ本に記載されたバーコードやQRコードを画像認識装置13によって読み取ることにより、そのバーコードやQRコードにコード化された料理タスクの情報を取得できるように構成されているものとする。
【0031】
ユーザが、上記例示した「料理タスク2」の内容をコード化したバーコードを画像認識装置13によって読み取る操作を行うと、画像認識装置13は、撮像部131によって撮像して得られたバーコードの画像を解析し、デコードし、料理タスク2の内容を示す「醤油」「大さじ2杯」などの情報を取得し、それらの情報を所定の形式で格納したデータを入力部111に入力する。
【0032】
ここで、ユーザは、遂行したい料理タスクがコード化されたバーコードを画像認識装置13に読み取らせるだけでよい。その料理タスクの遂行のために要求される物質の量を示す情報(醤油大さじ2杯)を意識する必要はない。当然、大さじ2杯をメートル法などに換算する必要もない。
【0033】
このほか、計量装置1にカードリーダを備え、タスク情報が記載された磁気カードやICカードをカードリーダによって読み取ることにより、そのカードに記憶されたタスク情報を取得するように構成することもできる。或いは、計量装置1に生体認識装置を備え、計量装置1を手にしたユーザを認識し、そのユーザの識別情報に関連付けられたタスクの情報を取得するように構成することもできる。
【0034】
ユーザの識別情報に関連付けられたタスクの情報とは、例えば、上記の「コーヒータスク」の内容を示す「鈴木さんの好みの量」「砂糖」などの情報である。カードリーダや生体認識装置によってタスク情報を入力する場合も、ユーザは、タスクの遂行のために計量すべき物質の量を示す数値や単位など(醤油大さじ2杯に相当する体積値、鈴木さんの好みの量の砂糖の体積値など)を意識する必要が無い。
【0035】
取得部112は、以上いくつか例示した方法により入力部111に入力されるタスク情報から、物質の量を陽又は陰に示す情報を取得する。上記例示したタスクの情報が入力される場合、取得部112は、「塩10g」「醤油大さじ2杯」「衣料5kg」「鈴木さん」などの、物質の量を陽又は陰に示す情報を入力されるタスク情報から抽出する。
【0036】
記憶部113に記憶されている対応関係は、このような物質の量の陽又は陰に示す情報を、物質の体積を陽に示す情報に変換するためのテーブル及び/又は関数である。ここで、対応関係の例をいくつか示す。
【0037】
図4は、洗濯機に投入される衣料の総重量と洗剤の体積との関係を示すテーブルである。「洗濯機に投入される衣料の総重量」は、入力部111に入力される上記「洗濯タスク」の内容を示す情報から取得部112が抽出する、物質の量を陰に示す情報に相当し、「洗剤の体積」は、その物質の体積を陽に示す情報に相当する。
【0038】
なお、記憶部113は、図4に示すテーブルの代わりに、衣料の総重量と洗剤の質量との対応関係を示すテーブルと、洗剤の密度の情報と、を記憶していても良い。この場合、後述する算出部114は、衣料の総重量に対応する洗剤の質量をテーブルに基づき算出し、更に、洗剤の密度の情報を用いて、洗剤の質量を洗剤の体積に換算する処理を行う。
【0039】
図5は、計量器単位で表される醤油の体積とメートル法の単位(ml)で表される醤油の体積との関係を示すテーブルである。「計量器単位で表される醤油の体積」は、入力部111に入力される上記「料理タスク2」の内容を示す情報から取得部112が抽出する、物質の量を陰に示す情報に相当し、「メートル方の単位で表される醤油の体積」は、その物質の体積を陽に示す情報に相当する。
【0040】
図6は、ユーザの識別情報と砂糖の体積との関係を示すテーブルである。「ユーザの識別情報」は、入力部111に入力される上記「コーヒータスク」の内容を示す情報から取得部112が抽出する、物質の量を陰に示す情報に相当し、「砂糖の体積」は、その物質の体積を陽に示す情報に相当する。なお、図4で説明した洗剤の例と同様、記憶部113は、ユーザの識別情報と砂糖の質量との関係を示すテーブルと、砂糖の密度の情報と、を記憶していても良い。
【0041】
なお、上記「コーヒータスク」の例では、ユーザの増加やユーザの嗜好の変化が想定されるので、計量装置1は、図6に示すテーブルに新たなユーザの識別情報及びそれに対応する砂糖の体積の情報を追加したり、既存のユーザの識別情報に対応する砂糖の体積の情報を変更したりすることが可能な構成を有していても良い。
【0042】
例えば、ユーザがパーソナルコンピュータ121や携帯端末122においてテーブルを更新する操作を行うと、入力部111がテーブルの更新内容を示す情報を受け取り、受け取った更新情報に基づいて記憶部113の記憶するテーブルが更新されるように計量装置1を構成することができる。図2において入力部111と記憶部113とを接続する破線は、このような構成を採った場合の計量装置1の機能構成を示す。
【0043】
算出部114は、以上例示したようなテーブルや関数に基づいて物質の量を陽又は陰に示す情報から、物質の体積を陽に示す数値を算出する。本実施例では、算出部114は、最終的にml単位で物質の体積値を算出するものとする。例えば、上記例示した「料理タスク1」を示す情報が入力された場合、算出部114は、塩の密度(粉体の食塩の場合約1.2g/cm3)を用いて塩の質量を塩の体積に変換する関数に基づき、「塩10g」に対応する塩の体積を算出する。
【0044】
上記例示した「料理タスク2」を示す情報が入力された場合、算出部114は、図5に示すテーブルに基づき、「醤油大さじ2杯」に対応する醤油の体積を算出する。上記例示した「洗濯タスク」を示す情報が入力された場合、算出部114は、図4に示すテーブルに基づき、「衣料5kg」に対応する洗剤の体積を算出する。上記例示した「コーヒータスク」を示す情報が入力された場合、算出部114は、図6に示すテーブルに基づき、「鈴木」に対応する砂糖の体積を算出する。
【0045】
駆動制御部115は、算出部114により算出された物質の体積に応じてリニアアクチュエータ10の位置を決定する。本実施例では、駆動制御部115は、図7に示すようなリニアアクチュエータ10の位置と容器8の容積との対応関係を定めたテーブルに基づき、算出部114から入力する体積からリニアアクチュエータ10の位置を算出する。このテーブルは予め記憶部113に記憶しておく。
【0046】
駆動制御部115は、リニアアクチュエータ10の位置が算出した位置になるように、リニアアクチュエータ10に制御信号を送信する。制御信号に応じて、リニアアクチュエータ10の位置が駆動制御部115により算出された位置に移動することにより、アーム9を介して可動壁7が移動する。これにより、容器8の容積が、算出部114の算出した物質の体積と等しくなる。ユーザは、可動壁7の移動が完了したことを確認した後、計量装置1のスコップ部2により目的の物質をすくい取ったり注いだりすることにより、タス
クの遂行のために要求される量の物質を得ることができる。
【0047】
本実施例に係る計量装置1によれば、タスクの遂行のために要求される量の物質を得るためにユーザが行うべき作業は、そのタスクの内容を示す情報を計量装置1に入力することだけである。上述したように、このタスクの内容を示す情報の入力は、パーソナルコンピュータや携帯端末の表示内容から直感的に指定したり、バーコードやQRコードを読み込ませたりといった、ユーザの熟練度等に依存しない直感的な操作だけで行うことができ、物質の量を示す数値や単位などについてユーザは意識する必要がない。従って、どのようなユーザでも、目的とする物質の計量を容易に行うことが可能である。
【0048】
なお、以上説明したの計量装置1の実施例は、本発明に係る計量装置の実施形態の一例であり、上記実施例の構成には、本発明の範囲内で種々のバリエーションが考えられる。
【0049】
例えば、計量装置1に入力するタスク情報には、複数種類の物質の量を示す情報が含まれていても良い。例えば、「鍋に塩10gとごま油大さじ1杯を入れる」(料理タスク3)のようなタスクの情報を入力することが可能に構成しても良い。或いは、計量装置1に入力するタスク情報には、単一の物質の量を示す情報を含む複数のタスクに分解可能なシーケンシャルタスクの情報が含まれていても良い。例えば、「鍋に塩を10g入れて10分加熱し、その後ごま油を大さじ1杯入れる」(料理タスク4)のようなタスクの情報を入力可能に構成しても良い。
【0050】
いずれの場合も、記憶部113は、複数種類の物質の各々について、物質の量を示す情報とその物質の体積との対応関係を記憶する。また、計量装置1は、ユーザが、これから計量しようとする物質の種類を指定する操作を行うことが可能な構成を有していると良い。例えば、計量装置1は、塩やごま油の容器に記載したバーコードを読み取り、計量対象の物質を認識することが可能な画像認識装置を備えていると良い。
【0051】
このような構成を採れば、ユーザが塩の容器に記載されたバーコードを計量装置1に読み取らせると、計量装置1は、記憶部113から、塩の量を示す情報と塩の体積との対応関係を選択して読み込む。その後、上記の実施例と同様の処理により、容器8の容積が塩10gに対応する体積と等しくなる位置に、可動壁7が自動的に移動する。
【0052】
次に、ユーザがごま油の容器に記載されたバーコードを計量装置1に読み取らせると、計量装置1は、記憶部113から、ごま油の量を示す情報とごま油の体積との対応関係を選択して読み込む。その後、上記の実施例と同様の処理により、容器8の容積がごま油大さじ1杯に対応する体積と等しくなる位置に、可動壁7が自動的に移動する。
【0053】
なお、計量対象の物質の種類を指定する方法は、ここで例示した画像認識に限らない。例えば、シーケンシャルタスクの情報が入力される場合は、タスクの順番に従って、計量装置1が自動的に順次可動壁7の位置を移動させていっても良い。この場合、計量装置1は、次のタスクの計量のための処理に移行しても良いことをユーザが計量装置1に指示することができる構成を備えていると良い。
【0054】
例えば、上記例示した「料理タスク4」の情報が入力された場合、計量装置1は、まず塩10gを計量するための位置に可動壁7を移動させる。ユーザは、可動壁7の移動が完了したら、スコップ部2により塩をすくい取り、鍋に入れる。計量装置1には、タスクが完了し、次のタスクに移行しても良いことを指示することができるボタンが設けられ、ユーザが当該ボタンを押下する操作を行うと、計量装置1は、ごま油大さじ1杯を計量するための位置に可動壁7を移動させる。
【0055】
ユーザは、可動壁7の移動が完了したら、スコップ部2にごま油を注ぎ、鍋に入れる。このような計量装置1を用いることにより、ユーザは、複数の物質について、計量する順序を認識していればよく、各物質の量を示す数値や単位について認識する必要はない。
【0056】
入力部111に入力するタスク情報に含まれる物質の量の情報は、質量、体積、その他の形式で数値により陽に表現された情報でも良いし、言語や識別情報を用いて陰に表現された情報でも良い。タスク情報に含まれる物質の量の情報がどのような形式で表現されたものであっても、その形式で表現される物質の量の情報とその物質の体積との対応関係を記憶部113が記憶していれば、算出部114は、タスク情報に含まれる物質の量の情報に対応するその物質の体積を算出することができる。
【0057】
本発明の計量装置における、容積可変の容器の構成(可動内壁面の構成)は、図1に示した構成に限らない。図8〜図10に容積可変容器のその他の構成例を示す。
【0058】
図8(A)は、計量装置101の長手方向の対称面による断面を示す図であり、計量装置101は、概略、スコップ部201と、スコップ部201に接続した取っ手301と、から構成される。スコップ部201は、ボウル状の底部501により区画され、上部に開口部401を有する。スコップ部201の内部における底部501の最深部には矢印A1方向に膨張又は収縮可能に構成されたエアバッグ701が設けられる。
【0059】
エアバッグ701にはチューブ901が接続され、チューブ901はポンプ1001に接続されている。ポンプ1001がエアバッグ701を膨張又は収縮させることにより、スコップ部201の内部空間においてエアバッグ701の占める領域が拡大又は縮小する。エアバッグ701の表面と、底部501の内壁面と、により、流体や流動性固形物質などの物質を貯留可能な容器801が構成される。容器801の内壁面の一部を構成する、エアバッグ701の表面が、本発明の「可動内壁面」に相当する。
【0060】
エアバッグ701を膨張又は収縮させるポンプ1001が、本発明の「駆動手段」に相当する。ポンプ1001の作動は、コントローラ1101によって制御される。コントローラ1101は本発明の「制御手段」に相当する。図8(B)及び図8(C)に示すように、ポンプ1001がエアバッグ701を膨張又は収縮させることによって、容器801の容積が変化する。図8(B)及び図8(C)において、斜線で塗りつぶした部分が、容器801の容積を示す。
【0061】
図9(A)は、計量装置102の長手方向の対称面による断面を示す図であり、計量装置102は、概略、スコップ部202と、スコップ部202に接続した取っ手302と、から構成される。スコップ部202は、シリコンやラバーなどの可撓性材料により構成されたボウル状の底部702により区画され、上部に開口部402を有する。
【0062】
底部702は側壁部602を摺動自在に貫通し、スコップ部202と反対側の端部がアーム902を介してリニアアクチュエータ1002に接続されている。リニアアクチュエータ1002がアーム902を駆動することにより、底部702が側壁部602を介して引き込まれ、或いは押し出される。底部702の内壁面と、側壁部602の内壁面と、により、流体や流動性固形物質などの物質を貯留可能な容器802が構成される。容器802の内壁面の一部を構成する、底部702の内壁面が、本発明の「可動内壁面」に相当する。
【0063】
底部702を引き込み、又は押し出すリニアアクチュエータ1002が、本発明の「駆動手段」に相当する。リニアアクチュエータ1002の作動は、コントローラ1102によって制御される。コントローラ1102は本発明の「制御手段」に相当する。図9(B
)及び図9(C)に示すように、リニアアクチュエータ1002が底部702を引き込み、又は押し出すことによって、容器802の容積が変化する。図9(B)及び図9(C)において、斜線で塗りつぶした部分が、容器802の容積を示す。
【0064】
図10(A)は、計量装置103の長手方向の対称面による断面を示す図であり、計量装置103は、概略、スコップ部203と、スコップ部203に接続した取っ手303と、から構成される。スコップ部203は、底部503と、可動壁703と、により区画され、上部に開口部403を有する。可動壁703の一方の面にはアーム903が取り付けられ、アーム903はリニアアクチュエータ1003に接続されている。
【0065】
リニアアクチュエータ1003がアーム903を駆動することにより、可動壁703が矢印A3の方向に移動する。可動壁703は底部503の内壁面に接している。可動壁703のアーム903が取り付けられている面とは反対側の面と、可動壁703と底部503の接線から開口部403の端縁までの底部503の内壁面と、により、流体や流動性固形物質などの物質を貯留可能な容器803が構成される。容器803の内壁面の一部を構成する、可動壁703のアーム903の取り付け面と反対側の面が、本発明の「可動内壁面」に相当する。
【0066】
可動壁703の位置を変化させるリニアアクチュエータ1003が、本発明の「駆動手段」に相当する。リニアアクチュエータ1003の作動は、コントローラ1103によって制御される。コントローラ1103は本発明の「制御手段」に相当する。図10(B)及び図10(C)に示すように、リニアアクチュエータ1003が可動壁703の位置を変化させることによって、容器803の容積が変化する。図10(B)及び図10(C)において、斜線で塗りつぶした部分が、容器803の容積を示す。
【0067】
このように、可変容積の容器を構成する方法はさまざま考えられるが、入力されるタスク情報に基づき、タスクの要求する物質の体積に等しい容積になるように、可動内壁面の位置を自動的に移動させる制御は、上記の実施例と共通である。図7に示した、物質の体積と駆動手段の作動量との対応関係を規定するテーブルを、可変容積の容器構造に合わせて変更すれば良い。
【符号の説明】
【0068】
1 計量装置
2 スコップ部
3 取っ手
4 開口部
5 壁部
6 側壁部
7 可動壁
7A 回転軸
7B 壁部と接する可動壁の辺
8 容器
9 アーム
10 リニアアクチュエータ
11 コントローラ
111 入力部
112 取得部
113 記憶部
114 算出部
115 駆動制御部
121 パーソナルコンピュータ
122 携帯端末
123 家電機器
13 画像認識装置
131 撮像部
132 認識処理部
101 計量装置
201 スコップ部
301 取っ手
401 開口部
501 底部
701 エアバッグ
801 容器
901 チューブ
1001 ポンプ
1101 コントローラ
102 計量装置
202 スコップ部
302 取っ手
402 開口部
602 側壁部
702 底部
802 容器
902 アーム
1002 リニアアクチュエータ
1102 コントローラ
103 計量装置
203 スコップ部
303 取っ手
403 開口部
503 底部
703 可動壁
803 容器
903 アーム
1003 リニアアクチュエータ
1103 コントローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内壁面の少なくとも一部が所定の範囲内で可動に構成され、上部に開口部を有し、可動内壁面の位置に応じて容積が可変の容器と、
前記容器に接続した取っ手と、
前記可動内壁面の位置を移動させる駆動手段と、
前記駆動手段の作動を制御する制御手段と、
を有し、
前記制御手段は、
タスクの情報を入力する入力部と、
入力部から入力したタスクの情報からタスクの遂行のために要求される物質の量の情報を取得する取得部と、
物質の量の情報とその物質の体積との対応関係を記憶する記憶部と、
記憶部が記憶する対応関係に基づき、取得部が取得した物質の量の情報に対応するその物質の体積を算出する算出部と、
算出部が算出した物質の体積と前記容器の容積とが等しくなる位置に前記可動内壁面が移動するように前記駆動手段を作動させる駆動制御部と、
を有する計量装置。
【請求項2】
入力部は、物質の量の情報とその物質の体積との対応関係の情報を入力可能であり、
記憶部は、入力部から入力される対応関係を記憶することを特徴とする請求項1に記載の計量装置。
【請求項3】
内壁面の少なくとも一部が所定の範囲内で可動に構成され、上部に開口部を有し、可動内壁面の位置に応じて容積が可変の容器と、
前記容器に接続した取っ手と、
前記可動内壁面の位置を変化させる駆動手段と、
を有する計量装置の制御方法であって、
タスクの情報を入力する入力ステップと、
入力ステップで入力したタスクの情報からタスクの遂行のために要求される物質の量の情報を取得する取得ステップと、
物質の量の情報とその物質の体積との対応関係を読み込むステップと、
読み込んだ前記対応関係に基づき、取得ステップで取得した物質の量の情報に対応するその物質の体積を算出する算出ステップと、
算出ステップで算出した物質の体積と前記容器の容積とが等しくなる位置に前記可動内壁面が移動するように前記駆動手段を作動させる駆動制御ステップと、
を有する計量装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−173062(P2012−173062A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−33773(P2011−33773)
【出願日】平成23年2月18日(2011.2.18)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.QRコード
【出願人】(503360115)独立行政法人科学技術振興機構 (1,734)