説明

記録媒体及びそれを用いた記録方法

【課題】 インクの浸透性が良好で、ラインヘッドによる高速印画可能な記録媒体を提供することにある。更に、本発明の目的は、該記録媒体にモノマーインクを用いて記録する際にインク固化による目詰まりがなく、高画質で高光沢な画像を記録する記録方法を提供することにある。
【解決手段】 支持体上に、重合開始剤を含むインク受容層を有し、該インク受容層が有機微粒子を含む多孔質層であることを特徴とする記録媒体、及び該記録媒体に重合開始剤を含有しないで重合性モノマーを含有するインクを用いて印字することを特徴とする記録方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録等に用いる記録媒体及び記録方法に関し、特に、インク浸透性が良好で、ラインヘッドによる高速印画が可能な記録媒体及びそれを用いた記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット用記録媒体には、形成される画像の彩度が高いこと、色素が該インクジェット記録媒体に強固に染着可能であること、速乾性でありインク滲み等を生じないこと、などの特性が要求される。従来、これらの要求に応えるためのインクジェット用記録媒体として、支持体に、無機微粒子とポリビニルアルコールやゼラチン等の水溶性樹脂を含有する液を塗布して空隙層(インク受容層)を形成したもの等が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
更に、基材上に貫通孔を有す多孔質樹脂粒子を含有する塗工層を形成するインクジェット記録シートが提案されている(例えば、特許文献2参照。)。前記塗工層は、空隙率が高く、均一な空孔を有しているため、従来の記録シートに比べ表画部分における単位堆積あたりのインク吸収量が増していて、裏抜けが起こりにくく、より高解像度、高速印字に対応できるとされている。
しかしながら、前記インクジェット記録シートもインク吸収性の良好なインク受容層にしようとすると、多孔質粒子に対する水溶性ポリマーの含有率を低く抑える必要があるが、そうすると、塗布乾燥時にインク受容層のひび割れが発生し、支持体から塗布層が剥離してくるという問題があった。ひび割れを抑えるために水溶性ポリマー量を増やすとインク吸収性が低下するというトレードオフの問題が発生する。
【0004】
一方、インクジェット記録インクとしては水溶性染料系、顔料系、分散インク系、UVインク系、溶剤系等の種々のインクジェット記録インクが知られているが、実用上は水溶性染料系のインクが大勢を占めており、顔料系インクも一部用いられている。
また、水溶性インク、顔料インク及び分散インクを用いて印字する際、インク吸収性をアップするためには、細孔径を大きくすることは有効な手段であるが、そうすると表面の光沢性が低下するという問題があった。これを解決する方法として、熱可塑性多孔質層を形成し、印字後熱処理により細孔を潰し、表面の平滑度をアップして、光沢性を得る方法が提案されている(例えば、特許文献3〜5参照。)。
しかしながら、上記記録媒体に印字後直ちに平滑化処理:加熱加圧処理(例えば、印字面に平滑なフイルムを重ねてヒートローラーを通す方法)を行うと、インク自体の乾燥が不十分の為、ヒートローラーによる加熱時にインク溶媒が沸騰して発泡する危険性がある。平滑化処理後、インクが蒸発すると、発泡部分の孔が空いたままになっているため、そこで光が散乱しヘイズとなり、濃度低下、彩度低下が起こる。また、発泡しない場合でも、細孔径が0.3μmより大きい場合、そこにインク溶媒が詰まったままヒートローラーを通すと、発泡しなくとも乾燥後そこに孔が空いたままになるため、上記と同様ヘイズとなり、濃度及び彩度の低下が起こる。
また、紫外線硬化型インクは、インク自体が重合性モノマーと重合開始剤を内在する為、保存中に徐々に粘度が上昇したりインクジェットヘッドでの加熱・ヘッド先端での曝光により重合固化して目づまりを起こす原因となっていた。
【0005】
また、光重合開始剤を含まない紫外線硬化型インクジェットインクおよびシート基材面の所定部に光重合開始剤含有インクからなるインクジェット受容層が設けられ、更にこのインクジェット受容層上に前記紫外線硬化型インクジェットインクからなる印刷印字がなされた印字シートが提案されている(例えば、特許文献6参照)。
しかしながら、この方法は前記インク吐出用ノズルの詰まりの問題は解決されるが、インク浸透性、高速印画性の点で極めて不十分で、かつ、印画面の光沢性の点でも満足のいくものではなかった。
【特許文献1】特開平10−119423号公報
【特許文献2】特開平7−1835号公報
【特許文献3】特開平8−104056号公報
【特許文献4】特開平11−301108号公報
【特許文献5】特開2000−158803号公報
【特許文献6】特開2004−59810号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記のごとき要請に基づいてなされたものであり、その目的は、インクの浸透性が良好で、ラインヘッドによる高速印画可能な記録媒体を提供することにある。更に、本発明の目的は、該記録媒体にモノマーインクを用いて記録する際にインク固化による目詰まりがなく、高画質で高光沢な画像を記録する記録方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
<1> 支持体上に、重合開始剤を含むインク受容層を有し、該インク受容層が有機微粒子を含む多孔質層であることを特徴とする記録媒体。
【0008】
<2> 前記重合開始剤が光重合開始剤及び/又は熱重合開始剤であることを特徴とする上記<1>に記載の記録媒体。
【0009】
<3> 前記多孔質層の平均細孔径が、0.01〜10μmであることを特徴とする上記<1>又は<2>に記載の記録媒体。
【0010】
<4> 前記インク受容層が熱可塑性であることを特徴とする上記<1>〜<3>のいずれか1項に記載の記録媒体。
【0011】
<5> 前記有機微粒子が貫通孔型粒子であることを特徴とする上記<1>〜<4>のいずれか1項に記載の記録媒体。
【0012】
<6> 前記有機微粒子がスチレン及び/又はアルリル系の粒子であることを特徴とする上記<1>〜<5>のいずれか1項に記載の記録媒体。
【0013】
<7> 前記有機微粒子がプラス荷電を有する有機微粒子とマイナス荷電を有する有機微粒子であることを特徴とする上記<1>〜<6>のいずれか1項に記載の記録媒体。
【0014】
<8> 前記プラス荷電を有する有機微粒子とマイナス荷電を有する有機微粒子の少なくとも一方が、弱荷電性であることを特徴とする上記<7>に記載の記録媒体。
【0015】
<9> インクジェット記録用であることを特徴とする上記<1>〜<8>のいずれか1項に記載の記録媒体。
【0016】
<10> 上記<1>〜<9>のいずれか1項に記載の記録媒体に、重合開始剤を含有しないで重合性モノマーを含有するインクを用いて印字することを特徴とする記録方法。
【0017】
<11> 前記印字後の記録媒体を、更に加熱することを特徴とする上記<10>に記載の記録方法。
【0018】
<12> 前記印字後の記録媒体を、更に光照射後加熱することを特徴とする上記<10>に記載の記録方法。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、前記のごとき要請に基づいてなされたものであり、その目的は、インクの浸透性が良好で、ラインヘッドによる高速印画可能な記録媒体を提供することができる。
更に、本発明によれば、該記録媒体にモノマーインクを用いて記録する際に紫外線硬化型インクに見られるようなインク固化による目詰まりがなく、高画質で高光沢な画像を記録する記録方法を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
[記録媒体]
本発明の記録媒体は、支持体上に、重合開始剤を含むインク受容層を有し、該インク受容層が有機微粒子を含む多孔質層であることを特徴とする。
本発明の記録媒体において、前記インク受容層が重合開始剤を含有し、且つ有機微粒子を含む多孔質層であることにより、インクの浸透性が向上し、且つ、重合性モノマーインクを用いた場合は、ヒートローラーでの加熱によるインク固化を抑制することができる。
本発明の記録方法は、前記本発明の記録媒体に記録(例えば、インクジェット)を行う場合のインクは、重合性モノマーインクであるが、該重合性モノマーインクは重合開始剤を含まないことを特徴とする。
したがって、インク保存中には重合反応は起こらず、ヘッド詰まりも起こらない。
そして、本発明の前記記録媒体に該重合性モノマーインクを用いて印字すると、インク受容層中に重合性モノマーインクが浸透し、インク受容層中に含まれている重合開始剤と共存状態となる。
該重合開始剤が熱重合開始剤の場合、その状態で、例えば印字表面に耐熱性フイルム等を重ね合わせてヒートローラーに通すことにより、直ちに熱重合が起こり、インクが硬化し、多孔質の孔が塞がると同時に熱可塑性の多孔質表面が平滑化され、光沢性が付与される。
該重合開始剤が光重合開始剤の場合、印字直後に光照射(特に紫外線照射)し、引き続いて印字表面に耐熱性フイルム等を重ね合わせてヒートローラーに通すか、又は印字直後に印字表面に耐熱性フイルム等を重ね合わせてヒートローラーに通し、引き続いて光照射することにより光/熱重合が起こり、インクが硬化し、多孔質の孔が塞がると同時に熱可塑性の多孔質表面が平滑化され、光沢性が付与される。
【0021】
≪インク受容層≫
該インク受容層が有機微粒子を含む多孔質層であり、顔料系インクでもインク浸透性が大きく、高速印画が可能であるために、該多孔質層の平均細孔径が0.01〜10μmであることが好ましく、0.05〜5μmがより好ましく、0.1〜3μmが特に好ましい。0.01μmより小さいとインク吸収性が悪くなる場合があり、10μmより大きいと画像の鮮鋭度の低下が起こる場合がある。該平均細孔径の範囲とすることにより、高画質と高速印画性の両立が可能となる。
また、インク受容層の層厚は1〜100μmが好ましく、5〜90μmであることがより好ましく、10〜80μmが特に好ましい。
【0022】
本発明における「平均細孔径」は、Washburnによって提案された水銀圧入法(「表面」第13巻第10号第588頁に記載の浦野紘平著による「多孔質材料の細孔分布測定法の理論、装置及び問題点(その1)」)によって測定される。測定装置としては水銀ポロシメーター((株)島津製作所の商品名「ポアサイザー9320−PC2)が用いられる。
また、本発明におけるインク受容層(多孔質層)が紙支持体等に塗設により形成されていて、上記水銀圧入法による測定が正確にできない場合、記録媒体の断面(切片)の走査型電子顕微鏡写真を複数の倍率で撮影し、スキャナー入力法でデジタル化した後、コンピューター画像解析によって抽出された各空隙部分の面積と等しい面積を有する円の直径の分布を換算して求めた平均径(数平均)を、平均細孔径とした。
【0023】
前記インク受容層(多孔質層)は熱可塑性を有していることが好ましい。本発明において「熱可塑性」とは、一定温度以上で、物が柔らかくなり変形しやすくなる性質を意味し、通常ガラス転移点で150℃以下、好ましくは120℃以下、特に好ましくは110℃以下である。インク受容層(多孔質層)に熱可塑性を付与することにより、画像印画後の印画面を容易に平滑化処理することができ、この平滑処理により画像の光沢を大幅に改善しうる。
また、前記のようにインク受容層(多孔質層)が熱可塑性であるためには、該層を形成する組成のうち少なくとも30質量%以上、より好ましくは50質量%以上、特に好ましくは65質量%以上の物質が熱可塑性であることが望ましい。
インク受容層(多孔質層)に、有機微粒子としては、そのうちの少なくとも1つの有機微粒子が熱可塑性であることが好ましい。これらを複数有する場合は、より多くの有機微粒子が熱可塑性であることがより好ましい。全ての有機微粒子が熱可塑性を有していない場合でも、下記の低ガラス転移温度を有する熱可塑性バインダー樹脂(粒子状が好ましい)をインク受容層(多孔質層)に加えることにより、熱可塑性を付与することができる。
【0024】
更に、前記熱可塑性バインダー樹脂(以下、「熱可塑性物質」ともいう。)のうち50質量%以上、好ましくは80質量%以上が、ガラス転移温度(Tg)が25〜150℃、好ましくは40〜130℃、特に好ましくは50〜120℃である。
前記Tgが25℃より低いと空隙率が十分でなく、インクジェット記録媒体の保存中に空隙率が低下したり、ブロッキング故障が発生したりする。また、Tgが150℃より高いと多孔質層が脆く、印字後の平滑化処理も良好になされない。
【0025】
<有機微粒子>
次に、本発明における有機微粒子について説明する。
該有機微粒子としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、各種アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂等よりなる微粒子が挙げられ、中でもスチレン系及び/又はアクリル系の粒子であることが好ましい。
また、該有機微粒子としては、貫通孔型粒子、及び/又はプラス荷電を有する有機微粒子とマイナス荷電を有する有機微粒子との2種類の反対電荷を有する有機微粒子であること好ましい。
【0026】
(貫通孔型粒子)
以下、本発明における貫通孔型粒子について説明する。
貫通孔型粒子は、粒子のある面(エリア)から他の面(エリア)に貫通する孔を有する粒子である。インク受容層に貫通孔型粒子を含有させて形成することにより、粒子間の空隙のみならず、貫通孔にもインクを吸収(収容)することができるため、インク受容層全体としてのインクの吸収性が向上する。
貫通孔型粒子の表面は、疎水的あるいは疎水的な部分があるため、溶剤系インク、UVインクの浸透性は良好と推定される。
【0027】
貫通孔型粒子は、水性バインダーとともに水系塗布液中に分散して用いられる。このとき分散剤として用いられる界面活性剤としては、以下の明細書又は公報に記載のものが挙げられる。即ち、米国特許第2240469号、同2240470号、同2240471号、同2240472号、2240475号、2240476号、2353279号、同2719087号、同2739891号、同2801191号、同2813123号、同2843487号、3003877号、3026202号、同3038804号、同3041171号、同3038804号、同3041171号、同3068101号、3165409号、同3169870号、3201252号、同3220847号、同3306749号、同3408193号、同3425857号、同3437485号、同3502473号、同3506449号、同3514293号、同3539352号、同564576号、同3573049号、同3607291号、同3775126号、同3850640号、同3909272号、同887012号、
【0028】
米国出願第230519号、同442794号、同480101号、同515179号、同580872号、英国特許第774806号、同867842号、同874081号、同1186866号、特公昭43−10247号、同43−13481号、同43−24722号、同44−22659号、同45−38945号、同46−21985号、同49−16051号、特開昭48−43924号、同49−37623号、同50−46133号、同51−7917号、同53−21922号、同53−49427号、同54−98235号、同51−3219号、特公昭39−18702号、同40−376号、同40−1701号、同40−23747号、同43−13166号、同43−17922号、同44−22661号、同45−3830号、同45−334767号、同46−21183号、同46−25954号、46−31191号、同46−43428号、同47−4639号、同47−5318号、同47−15801号、特願昭42−58329号、
【0029】
英国特許第1039183号、同1178546号、同1301828号、同1320880号、同1336164号、同1336172号、同1344987号、同1345533号、西独特許第1171738号、同1186743号、ベルギー特許第609782号、同543287号、米国特許第3042222号、同3113816号、同3442654号、同3516835号、同3563756号、同3617292号、同3619199号、同3725079号、同3725680号、米国出願第505453号、同579213号、米国特許第3493379号、同3416923号、同3542581号、同3619195号、同3963688号、特開昭47−23378号、同48−9979号、同48−30933号、同50−66230号、同50−80119号、同51−25133号、同53−138726号、同50−34233号、特開昭41−72675号、
【0030】
英国特許第1346425号、同1346426号、同1498697号、西独特許第1772129号、同2049689号、同1201136号、同1597492号、米国特許第3565625号、同3679411号、同2848330号、同2940851号、同2944900号、同2944902号、同3017271号、同3061437号、同3062647号、同3068102号、同3128183号、同3434833号、同3523023号、3706562号、同3869289号、特公昭49−33788号、同53−12380号、同53−15831号、ベルギー特許第611864号、西独特許第1151437号、同1472790号、同1772315号、同1816570号、同1816572号、同2845907号、英国特許第1351498号、同1326358号、同1455413号、同1463659号、同1488991号、同1212312号、英国特許第3084044号、同3113026号、同2937087号、特開昭47−42001号、同49−55335号、同50−156423号、同53−44025号、同49−24427号、
【0031】
英国特許第1491902号、特開昭48−23436号、同48−63735号、同48−94433号、同50−57437号、米国特許第3062654号、同3093479号、同3396028号、同3743504号、リサーチディスクロージャNo.17643(1978年12月)、特公昭45−6629号、同47−41833号、同49−4530号、同54−15751号、同54−17832号、同54−89624号、特公昭45−6630号、同47−4417号、同47−15801号、同48−34166号、同50−40660号、同51−848号、西独特許第1202136号、同1447585号、同1472274号、同2641284号、同22031116号、ベルギー特許第605378号、同622859号、同631905号、同631557号、英国特許第1327032号、同1358848号、米国特許第3597214号、同3615612号、同3493379号、同3798265号、
【0032】
リサーチディスクロージャNo.11666(1973年12月)、米国特許第3705806号、特開昭55−59464号、同50−113221号、同55−22754号、同55−79435号、同54−81829号、同57−85047号、同57−104925号、同58−86540号、同58−90633号、同56−81841号、同53−138726号、ヨーロッパ特許19800号、同153133号、同60−203935号、同60−200251号、同60−209732号等である。
【0033】
以下に好ましい具体例化合物を例示する。
【0034】
【化1】

【0035】
【化2】

【0036】
【化3】

【0037】
【化4】

【0038】
【化5】

【0039】
【化6】

【0040】
【化7】

【0041】
【化8】

【0042】
【化9】

【0043】
【化10】

【0044】
【化11】

【0045】
【化12】

【0046】
【化13】

【0047】
【化14】

【0048】
【化15】

【0049】
【化16】

【0050】
【化17】

【0051】
【化18】

【0052】
貫通孔型粒子の体積平均粒径としては、0.1〜10μmであることが好ましく、0.2〜7μmであることがより好ましい。ここで、貫通孔型粒子の体積平均粒径は、レーザー回折/散乱式粒径測定装置LA−910(堀場製作所製)によって測定される数値である。
【0053】
また、貫通孔の径は、前記体積平均粒径の1/100〜1/2であることが好ましく、1/30〜1/2が好ましく、更に好ましくは1/10〜1/2であることがより好ましい。
以上のような貫通孔型粒子の具体例としては、スチレン系及び/又はアクリル系が好ましい。好適な具体的には、三井化学社製ミューティクルPP−2000TX(スチレン・アクリル系)等が挙げられる。これらは単独で用いても2種以上を併用して用いてもよい。
貫通孔型粒子は、例えば、特開平5−222108号公報、及び特開平5−112606号公報に記載の方法により製造することができる。該貫通孔型粒子は、印画後行う平滑化処理により画像の鮮明さ及び光沢性を発現させる上で熱可塑性であることが好ましい。
【0054】
以下、本発明におけるプラス荷電を有する有機微粒子とマイナス荷電を有する有機微粒子について説明する。
(プラス荷電を有する有機微粒子)
プラスの荷電を有する有機微粒子は粒子表面に荷電を有しており、例えば、主鎖又は側鎖に1級ないし3級アミノ基、イミノ基、又はこれらの塩(塩酸塩など)、第4級アンモニウム塩基、ピリジニウム塩基等のカチオン性基を有するポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアクリル酸エステル系、ポリメタクリル酸エステル系、ポリスチレン系微粒子などが挙げられる。
前記有機微粒子を構成するポリマーにおける、1級ないし3級アミノ基、イミノ基、又はこれらの塩、第4級アンモニウム塩基、ピリジニウム塩基等のカチオン性基を有する重合性モノマー単位の含有量は、0.1〜100モル%、好ましくは0.5〜50モル%、特に好ましくは1〜30モル%である。
また、前記ポリマーの重量平均分子量(Mw)は3,000〜100,000程度が適しており、5,000〜50,000程度のものが好ましい。
前記表面にプラスの荷電を有する有機微粒子としては、熱可塑性の有機微粒子が好ましく用いられる。
該プラス荷電有機微粒子を熱可塑性とすることにより、インク受容層に熱可塑性を付与することが出来やすくなり、印字後の平滑化処理も良好に成されやすい。
【0055】
表面にプラスの荷電を有する熱可塑性ポリマー微粒子としては、例えば、プラスの荷電を有するポリマーの分散体を用いることができる。このような分散体としては特開平9−114066号公報の段落0018〜0032に記載のモノマー単位を含む(共)重合体の分散体を用いることができる。前記(共)重合体を構成するモノマー単位a)、b)及びc)は、以下の一般式(1)で示される。
【0056】
【化19】

【0057】
一般式(1)中、モノマー単位a)のAは、共重合可能なエチレン性不飽和基を少なくとも2つ有し、その少なくとも1つを側鎖に含むように共重合可能なモノマーを共重合したモノマー単位を表す。モノマー単位b)のBは、共重合可能なエチレン性不飽和モノマーを共重合したモノマー単位を表わす。モノマー単位c)中、R1 は、水素原子、低級アルキル基(炭素数1〜6)又はアラルキル基(炭素数7〜12)を表わす。Qは2価の連結基で、例えば、アルキレン基(炭素数1〜12)、フェニレン基、アラルキレン基(炭素数7〜12)、−COO−L−、−CONH−L−、−CONR−L−で表される基を表す。ここでLはアルキレン基(炭素数1〜6)、アリーレン基(炭素数6〜12)又はアラルキレン基(炭素数7〜12)を表わし、Rはアルキル基(炭素数1〜6)を表わす。
【0058】
Gは下記構造式(A)を表し、R2 、R3 、R4 、R5 、R6 、R7 、R8 、R9 はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基(炭素数1〜12)、アリール基(炭素数6〜20)又はアラルキル基(炭素数7〜20)を表わし、これらは互いに同じであっても異なってもよく、また置換されていてもよい。Xは陰イオンを表わす。また、Q、R2 、R3 、R4 又はQ、R5 、R6 、R7 、R8 、R9 の任意の2つ以上の基が相互に結合して、窒素原子とともに環構造を形成してもよい。
【0059】
【化20】

【0060】
Aにおけるモノマーの例は、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレートの他、前記公報の段落0018に記載のものが挙げられる。
Bにおけるエチレン性不飽和モノマーの例は、スチレン、n−ブチルメタクリレート、メチルメタクリレートの他、前記公報の段落0019〜0021に記載のものが挙げられる。
【0061】
前記R1としては、好ましくは水素原子あるいはメチル基の他、前記公報の段落0022に記載のものが、Qとしては、好ましくは−CH2−、−(CH26−等のアルキレン基、フェニレン基、p−フェニレンメチレン基の他、前記公報の段落0022に記載のものが挙げられる。
【0062】
前記構造式(A)におけるR2ないしR9のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基の他、前記公報の段落0027に記載のものが挙げられ、アリール基としてはフェニル基、ナフチル基の他、前記公報の段落0028に記載のものが挙げられ、アラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基の他、前記公報の段落0029に記載のものが挙げられる。また、Xとしては、塩素イオン、酢酸イオン、硫酸イオンの他、前記公報の段落0030に記載のものが挙げられる。
【0063】
前記(共)重合体は、モノマー単位c)を少なくとも含み、その含有量は0.1〜100モル%であり、好ましくは0.5〜50モル%、特に好ましくは1〜30モル%である。また、前記共重合体がAで表されるモノマー単位を含む場合、その含有量は1〜20モル%であり、Bで表されるモノマー単位を含む場合その含有量は0.1〜99.9モル%である。
【0064】
前記一般式(1)で表される重合体の具体例としては、前記公報の段落0037〜0041に記載のP−1からP−23までの共重合体の他、該共重合体モノマーのモル比を適宜変えたものを用いることができる。
【0065】
また、プラスの荷電を有する熱可塑性ポリマーの分散体として、特公昭62−11678号公報の3頁6欄5行ないし9頁18欄5行に記載の塩基性ラテックス、特開平5−306314号公報の2頁2欄28行〜4頁5欄1行に記載の、特開平9−99632号公報の3頁3欄6行〜4頁6欄41行に記載の、特開平11−348416号公報の6頁9欄33行〜7頁12欄3行に記載の、WO00/6390号公報の24頁12行〜27頁9行に記載の、特開2001−106732号公報の3頁4欄2行〜5頁8欄40行に記載の、特開2002−67495号公報の4頁6欄23行〜11頁19欄47行に記載の、特開2002−172854号公報の8頁14欄33行〜10頁18欄20行に記載の、特開2002−225414号公報の5頁8欄45行〜6頁9欄23行に記載の、特開2002−292993号公報の3頁3欄3行〜4頁6欄2行に記載の、及び特開2002−347338号公報の18頁33欄24行〜同欄35行に記載のそれぞれのカチオン性ポリマー微粒子を用いることができる。
【0066】
前記のポリマー微粒子表面に、疎水性基、例えばアルキル基、アリール基、アラルキル基等を有する重合性モノマーの疎水性基が現れていると、架橋凝集は更に起こりやすくなる。表面に疎水性基が現れている前記微粒子は、前記モノマー単位c)のR1、R2 、R3 、R4 、R5 、R6 、R7 、R8 、R9のうち、少なくとも1つが炭素数4以上の具体的には、アルキル基、アリール基又はアラルキル基であるものが挙げられる。
【0067】
(マイナス荷電を有する有機微粒子)
マイナス荷電を有する有機微粒子としては、表面に−COOH基、−SO3H基、−SO4H基、−SO2H基、−PO4H基又はこれらの塩(アルカリ金属塩、NH4+塩、4級アンモニウム塩等)等のアニオン性基を有する熱可塑性ポリマー微粒子が挙げられ、例えば、アニオン性基を有するポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアクリル酸エステル系、ポリメタクリル酸エステル系、ポリスチレン系のポリマーの微粒子などが挙げられる。
前記表面にマイナスの荷電を有する有機微粒子としては熱可塑性有機微粒子を用いることが好ましい。
【0068】
表面にマイナスの荷電を有する熱可塑性のポリマー微粒子としては、例えばマイナスの荷電を有するポリマーの分散体を用いることができる。
マイナスの荷電を有するポリマーとしては、前記のごときアニオン性基を有する重合性モノマーからのポリマーが挙げられる。アニオン性基を有する重合性モノマーとしては、例えば、α,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸、α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸若しくはそのモノアルキルエステル(アルキル基の炭素数1〜12)、又は前記アルキルエステル部分のアルキル基にアニオン性基が置換したモノマー等を重合したものが挙げられる。更に、前記モノマーには、α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸のモノアミドのN原子にアニオン性基置換アルキル基(アルキル基の炭素数1〜12)が置換したものも含まれる。前記α,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸としてはアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等が挙げられ、α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸としては、マレイン酸、フマル酸等が挙げられる。
この他に、スチレンにアニオン性基が置換したモノマー(フェニル置換、β位置換)も用いられる。
【0069】
前記アニオン性基含有モノマーに更に他のモノマーを共重合したものが好ましく用いられ、他のモノマーとして例えば、α,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸アルキルエステル(アルキル基の炭素数1〜12)、α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸のジアルキルエステル(アルキル基の炭素数1〜12)、スチレン、ジビニルベンゼン、ビニルエーテル、ビニルチオエーテル、ハロゲン化ビニル等が挙げられる。α,β−エチレン性不飽和としてはアクリル酸、メタクリル酸、クロトン等が挙げられ、α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸としては、マレイン酸及びフマル酸等が挙げられる。
【0070】
具体的な共重合体としては、特開昭62−215272号公報の231〜239頁に記載の共重合体のうち、239頁において、E−4、E−11ないしE−19、E−20、E−22及びE−23として挙げられたアニオン性基含有共重合体の他、該共重合体モノマーのモル比を適宜変えたものを用いることができる。
前記微粒子を構成するポリマーにおける、アニオン性基含有重合性モノマー単位の含有量は、0.1〜100モル%、好ましくは0.5〜50モル%、特に好ましくは1〜30モル%である。
更に、表面にマイナスの荷電を有する熱可塑性のポリマー微粒子として、特開平6−266040号公報の6頁9欄6行〜9頁15欄25行、特開2002−365767号公報の4頁5欄22行〜5頁7欄1行、特開2003−94597号公報の7頁11欄23行〜8頁14欄9行に記載のものが挙げられる。
【0071】
前記のポリマー微粒子表面に、疎水性基、例えばアルキル基、アリール基、アラルキル基等を有する重合性モノマーからの疎水性基が現れていると、架橋凝集は更に起こりやすくなる。表面に疎水性基が現れている前記微粒子は、具体的には、アニオン性基を有する重合性モノマー単位中に、炭素数4以上のアルキル基、アリール基又はアラルキル基を有する重合性モノマーを含むモノマーを重合させたポリマー微粒子が挙げられる。
また、前記マイナス荷電を有するポリマーの重量平均分子量(Mw)は3,000〜100,000程度が適しており5,000〜50,000程度のものが好ましい。
【0072】
本発明における前記プラス荷電又はマイナス荷電を有する有機微粒子の体積平均粒径は、0.01〜20μm、好ましくは0.02〜10μm、更に好ましくは0.05〜5μmである。体積平均粒径は走査型電子顕微鏡写真により計測して求めたものである。
また、前記ポリマー微粒子の形状は、球状、針状、平板状、赤血球状、貫通孔状、金平糖状等のいずれでもよいが、貫通孔状微粒子が特に好ましい。分散径は走査型電子顕微鏡写真により計測して測定されるものである。
また、前記有機微粒子と後述の水溶性ポリマーとの使用割合は、75:25〜99:1程度が適切であり、好ましくは80:20〜98:2、より好ましくは85:15〜97:3である。
【0073】
本発明におけるインク受容層(多孔質層)を形成する塗布液について説明する。
本発明に用いる塗布液は有機微粒子を含有するが、該有機微粒子が前記表面にプラス荷電を有する有機微粒子及びマイナス荷電を有する有機微粒子を含む場合は少なくとも一方が弱荷電性であることが好ましい。少なくとも一方が弱荷電性の有機微粒子を用いると、以下で述べる塗布適性と架橋凝集特性を容易に両立させることができる。
該塗布液はその他の後述する各成分を適宜含みうる。
【0074】
本発明の記録媒体における多孔質層が、互いに反対荷電を有する2種類の有機微粒子のみの有機微粒子から作成されるとき、架橋凝集させることにより形成するものであるが、架橋凝集は前記荷電粒子のプラス、マイナスの荷電数が同程度である方が生じやすい。しかし、架橋凝集を重視しすぎると塗布液の粘度が上がったり沈降が生じたりして塗布に適さなくなり(塗布液において過度の架橋凝集が生じてしまう)、また、塗布性を重視しすぎると架橋凝集が生じにくくなり良好な多孔質層が得にくい。そのため、本発明における塗布液においては、表面に荷電を有する有機微粒子及び該有機微粒子の荷電と反対荷電を有する有機微粒子の少なくとも一方を弱荷電性とし、塗布液のpH又は該塗布液を塗布することにより形成される塗布層のpHを調節して、塗布性と架橋凝集性を両立させることが好ましい。
前記プラス荷電を有する有機微粒子とマイナス荷電を有する有機微粒子との使用比率としては、95:5〜5:95であることが好ましく、中でも、95:5〜60:40であることがより好ましく、95:5〜70:30であることが特に好ましい。
【0075】
すなわち、弱荷電性を有するアニオン性基又はカチオン性基は、あるpH領域を境にして荷電状態が変化する。例えば、−COOH基の場合低いpH領域では解離しにくいが、pHを高くしていきあるpH領域を越えると水性媒体中にCOO-イオンが増える。一方、カチオン性基として四級塩アンモニウム基等を用いると、この基はpHによってカチオン数はほとんど変化しない。これらの性質を利用することにより、塗布液のpHを調節してCOO-イオン量を制御し、塗布適性と架橋凝集特性のバランスを図ったり(以下の第一の方法)、塗布時は塗布液のCOO-イオンが少なくなるように塗布液のpHを調節して塗布性を最適化し、塗布後塗布層にアルカリpH調節剤を付与してCOO-イオンを増やし架橋凝集特性を最適化する(以下の第二の方法)ことが容易となる。
前記の方法を利用することにより、前記第一及び第二の方法において塗布液の粘度を適性化するとともに、塗布液に沈殿を生じさせないようにすることが可能となる。塗布液の粘度は10〜500mPa・sが好ましく、20〜300mPa・sがより好ましく、30〜250mPa・sが特に好ましい。
【0076】
本発明において、有機微粒子が弱荷電性であるとは、有機微粒子が有している荷電性基、すなわちアニオン性基又はカチオン性基が、該有機微粒子を水性媒体に溶解ないし分散させたとき、水性媒体を特定のpH領域に調節しないとその解離が大きくならないものをいい、強荷電性とは、水性媒体のpHの如何にかかわらずその解離が大きいもの(解離定数10-3以上)をいう。
【0077】
前記アニオン性基のうち、−COOH基、−PO42基又はこれらの塩等が、弱荷電性を有するアニオン性基(弱アニオン性基)であり、また、前記カチオン性基のうち第1級、第2級、第3級アミノ基、イミノ基、又はこれらの塩等が弱荷電性を有するカチオン性基(弱カチオン性基)である。(強荷電性を有するアニオン性基(強アニオン性基)としては−SO3H基、−SO4H基、−SO2H基、又はこれらの塩等が挙げられ、強荷電性を有するカチオン性基(強カチオン性基)としては、第4級アンモニウム塩基、ピリジニウム塩基が挙げられる。)
【0078】
本発明において少なくとも1つが弱荷電性の有機荷電微粒子を用いる場合の組合わせとしては、以下のようなものが挙げられる。
1)弱アニオン性微粒子/強カチオン性微粒子の組み合わせ(例.−COOH基含有微粒子/4級アンモニウム塩基含有微粒子の組み合わせ)
2)弱カチオン性微粒子/強アニオン性微粒子の組み合わせ(例.−NH2基含有微粒子/−SO3-基含有微粒子の組み合わせ)
3)弱アニオン性微粒子/弱カチオン性微粒子の組み合わせ(例.−COOH基含有微粒子/−NH2基含有微粒子の組み合わせ)
【0079】
<重合開始剤>
本発明におけるインク受容層は未反応の重合開始剤を含有することを特徴とする。
インク受容層に該重合開始剤を添加しておくことにより、インク中に重合性モノマーを含有するモノマーインクを用いて記録する際、熱及び/又は光等により重合反応が開始して、インクがインク受容層内或いは層上ですぐに固化するため、従来のトラブルであるインク受容層での発泡や沸騰が無く、また、UVインクに見られるインクジェットヘッド内での加熱による重合固化が発生することなく、ラインヘッドによる高速印字が可能となる。
本発明における重合開始剤は、光重合開始剤系、熱重合開始剤系、を挙げることができる。
【0080】
(光重合開始剤)
以下、光重合開始剤について説明する。
インク受容層中に含ませる光重合開始剤は、実質的に既知の全ての化合物を挙げることができる。
本発明に用いられる光重合開始剤とは、活性な光線付与により活性なラジカル種又はカチオン種を発生し、結合剤の重合反応を開始、促進する化合物を言う。活性な光線として紫外線が好ましい。その他活性エネルギー線として知られる、ガンマ線、アルファ線、電子線などを活性な光線の代わりに用いることができる。
【0081】
光の作用によりラジカルを発生させる重合開始剤の例としてはアセトフェノン系化合物、ベンゾイン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、チオキサントン系化合物、ベンジル系化合物、アシルフォスフィンオキサイド系化合物等が好ましい。
【0082】
アセトフェノン系化合物としては、例えば、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシメチル−1−フェニルプロパン−1−オン、4’−イソプロピル−2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオフェノン、p−ジメチルアミノアセトン、p−tert−ブチルジクロロアセトフェノン、p−tert−ブチルトリクロロアセトフェノン、p−アジドベンザルアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等が挙げられる。
【0083】
ベンゾイン系化合物としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾイン−n−プロピルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン−n−ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンジルジメチルケタール等が挙げられる。
【0084】
ベンゾフェノン系化合物としては、例えば、ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、ミヒラーズケトン、4,4’−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン等が挙げられる。
【0085】
チオキサントン系化合物としては、例えば、チオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−イノプロピルチオキサントン、4−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン等が挙げられる。
【0086】
ベンジル系化合物としては、例えば、ベンジル、ベンジル−β−メトキシエチルアセタール等が挙げられる。
アシルフォスフィンオキサイド系化合物としては、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)(2,4,4−トリメチルぺンチル)フォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド等が挙げられる。
【0087】
水溶性の重合開始剤は本発明に好ましく用いられる。水溶性重合開始剤としては、ソジウム−1−(スルホメチル)ベンゾフェノン、(4−ベンゾイルベンジル)−トリメチルアンモニウムクロライド、ソジウム−4−(スルホメチル)ベンジル、4−(トリメチルアンモニウムメチル)ベンジルブロマイド、2−カルボキシ−メトキシ−チオキサントンのN(2−ヒドロキシエチル)−N,N−ジメチルアンモニウム塩、及びソジウム−2−(3−スルホプロポキシ)チオキサントン等が挙げられる。
【0088】
下記に述べる、通常、光カチオン発生剤として用いられるスルホニウム塩やヨードニウム塩なども紫外線照射によりラジカル発生剤として作用するため、本発明ではこれらを単独で用いてもよい。また、感度を高める目的で重合開始剤に加えて、増感剤を用いてもよい。増感剤の例には、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン、及びチオキサントン誘導体等が含まれる。
【0089】
紫外線によって活性なカチオン種を発生させる光重合開始剤としては、トリアリールスルホニウム塩等の芳香族ヨードニウム塩、ジアリールヨードニウム塩等の芳香族ヨードニウム塩等のオニウム塩開始剤が有用であり、スルホン酸のニトロベンジルエステルなどの非イオン性開始剤も使用できる。これらの中でも、芳香族スルフォニウム塩等が、熱的に比較的安定であるために、好ましい。その他、有機エレクトロニクス材料研究会編、“イメージング用有機材料”ぶんしん出版社刊(1997)などに記載されている公知の光重合開始剤も使用できる。
【0090】
芳香族スルフォニウム塩及び芳香族ヨードニウム塩をオニウム塩光反応開始剤として使用する場合、その対アニオンとしては、BF4-、AsF6-、SbF6-、PF6-、PF6‐、B(C654-などが挙げられる。開始剤としては、芳香族スルフォニウムのPF6塩又はSbF6塩が、溶解性と適度の重合活性を有するために好ましく使用できる。又、溶解性を改良するために、芳香族基ヨードニウム塩又は芳香族スルフォニウム塩の芳香族基、通常はフェニル基に、1ないし10の炭素を有する、アルキル基又はアルコキシ基を1つ以上導入した化学構造が好ましい。
芳香族スルフォニウム塩のPF6塩又はSbF6塩は、ユニオンカーバイド日本(株)等から市販されている。旭電化工業(株)からも、アデカオプトマーSPシリーズの商品名で芳香族スルフォニウムのPF6塩が市販されている。
芳香族スルフォニウム塩は約360nmまでに吸収を有し、芳香族ヨードニウム塩は約320nmまでに吸収を有するので、硬化させるには、この領域の分光エネルギーを含む紫外線を照射することが好ましい。
【0091】
(増感剤)
前記増感剤は、単独では光照射によって活性化しないが、光重合開始剤と一緒に使用した場合に光重合開始剤単独で用いた場合よりも効果があるものを用いることが出来、一般にアミン類が用いられる。アミン類の添加により硬化速度が速くなるのは、第一に水素引き抜き作用により光重合開始剤に水素を供給するためであり、第二に生成ラジカルが大気中の酸素分子と結合して反応性が悪くなるのに対して、アミンが組成中に溶け込んでいる酸素を捕獲する作用があるためである。
【0092】
増感剤としては、アミン化合物(脂肪族アミン、芳香族基を含むアミン、ピぺリジン、エポキシ樹脂とアミンの反応生成物、トリエタノールアミントリアクリレートなど)、尿素化合物(アリルチオ尿素、o―トリルチオ尿素など)、イオウ化合物(ナトリウムジエチルジチオホスフェート、芳香族スルフィン酸の可溶性塩など)、ニトリル系化合物(N,N−ジエチル−p−アミノベンゾニトリルなど)、リン化合物(トリ−n−ブチルホスフィン、ナトリウムジエチルジチオホスファイドなど)、窒素化合物(ミヒラーケトン、N−ニトリソヒドロキシルアミン誘導体、オキサゾリジン化合物、テトラヒドロ−1,3−オキサジン化合物、ホルムアルデヒド又はアセトアルデヒドとジアミンの縮合物など)、塩素化合物(四塩化炭素、ヘキサクロロエタンなど)等が挙げられる。
増感剤はインク受容層中に含有させることもできるが、インク中に含有させることが好ましい。
【0093】
増感剤の使用量は、通常0〜10質量%であり、0.1〜10質量%が好ましく、0.2〜5質量%が特に好ましい。光開始剤と増感剤の選定や組み合わせ、及び配合比に関しては使用する紫外線硬化モノマー、使用装置によって適宜選定すればよい。
【0094】
(熱重合開始剤)
熱重合開始剤としては、一般にラジカル重合による高分子合成反応に用いられるラジカル重合開始剤を好ましく用いることができる。これらのラジカル重合開始剤には次のものが挙げられる。
【0095】
(1)アゾビスニトリル系化合物
2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビスプロピオニトリル、2,2’−アゾビスバレロニトリル等が挙げられる。
【0096】
(2)有機過酸化物
過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、過酸化アセチル、過安息香酸−t−ブチル、α−クミルヒドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、過酸類、アルキルパーオキシカルバメート類、ニトロソアリールアシルアミン類等が挙げられる。
【0097】
(3)無機過酸化物としては、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過塩素酸カリウム等の無機過酸化物等が挙げられる。
【0098】
(4)その他
ニトロソフェニル尿素、テトラメチルチウラムジスルフィド等のテトラアルキルチウラムジスルフィド類、ジベンゾイルジスルフィド等のジアリールジスルフィド類、テトラアルキルチウラムモノスルフィド類、ジアルキルキサントゲン酸ジスルフィド類、アリールスルフィン酸類、アリールアルキルスルホン類、1−アルカンスルフィン酸類等を挙げることができる。
これらの熱重合開始剤については、例えば、高分子学会編:高分子工学講座1「高分子の化学」162〜181頁(地人書館、1968年刊)、宇野虹児著:高分子工学講座10「重合と解重合」146〜147頁(共立出版、1961年刊)、大津隆行著:化学増刊7「高分子の合成」14〜16頁(化学同人、1961年刊)、杉村ら:有機合成化学協会誌24巻、373〜390頁(1966年刊)等に記載されている。上記の熱重合開始剤はインク受容層に含有されるポリマーの種類によって好ましく選択される。
上記重合開始剤が油溶性の場合、低沸点及び/又は高沸点の有機溶剤に溶解して水性媒体中に乳化分散し、水性塗布液中に添加するのが好ましい。
熱重合又は光重合開始剤のインク受容層への添加量は、1μmol〜20mmol/m2が好ましく、0.005mmol〜5mmol/m2が更に好ましく、0.01mmol〜2mmol/m2が特に好ましい。
【0099】
また、本発明における多孔質層には層の50体積%を越えない範囲で、無機の荷電微粒子を加えることができる。
表面にプラス荷電を有する無機微粒子としては、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム等からなる微粒子が挙げられる。また、表面が中性又はマイナス荷電を有する微粒子(例えばシリカ微粒子、炭酸カルシウム微粒子、硫酸バリウム微粒子など)を、アルミニウム等の多価金属イオン又は4級塩化合物又は1級ないし3級アミノ基により表面修飾又は表面置換することにより、表面にプラス荷電をもたせた微粒子として用いることができる。
更に、前記プラス荷電を有する無機微粒子として、表面にプラス荷電を有する層状(平板状)粒子、例えば、ハイドロタルサイト等を用いることができる。層状(平板状)粒子の平均粒径は、0.1〜30μm、好ましくは0.2〜20μm、特に好ましくは0.5〜10μmであり、また、アスペクト比は3〜1000、好ましくは4〜500、特に好ましくは5〜300である。
【0100】
また、表面にマイナス荷電を有する無機微粒子としてはシリカ微粒子などが挙げられる。また、表面が中性又はプラス荷電を有していても、−COO-基、−SO3-基を有する化合物で表面修飾又は表面置換することにより、表面にマイナス荷電をもたせた微粒子とすることができる。
【0101】
表面にマイナス荷電を有する無機微粒子として、層状(平板状)粒子、例えば膨潤性合成雲母(コープケミカル(株)製ソマシフME100など)、非膨潤性雲母(コープケミカル(株)製ソマシフMK100など)、タルク、モンモリロナイト等の粘土鉱物を用いることもできる。
前記層状(平板状)粒子の平均粒径は、0.1〜30μm、好ましくは0.2〜20μm、特に好ましくは0.5〜10μmであり、また、アスペクト比は3〜2000、好ましくは5〜1000、特に好ましくは10〜500である。
【0102】
<熱可塑性微粒子>
インク受容層には、前記貫通孔粒子、及び/又は荷電を有する有機微粒子、を含有し、これらの微粒子の熱可塑性が不十分の場合は、更に他の熱可塑性微粒子を含有することが好ましい。該熱可塑性微粒子はバインダーとして機能する。
熱可塑性微粒子としては、水分散アクリル樹脂、水分散ポリエステル樹脂、水分散ポリスチレン樹脂、水分散ウレタン樹脂等の水分散型樹脂;アクリル樹脂エマルジョン、ポリ酢酸ビニルエマルジョン、SBR(スチレン・ブタジエン・ゴム)エマルジョン等のエマルジョン、下記「熱可塑性樹脂」を水分散したエマルジョン、あるいは、これらの共重合体、及び混合物等の水性液の中から適宜選択し、2種以上組合わせて用いることができる。水分散樹脂の市販品としては、例えば、東洋紡製バイロナールMD−1200、MD−1220、MD−1930や、互応化学製プラスコートZ−446、Z−465、RZ−96、大日本インキ化学工業製ES−611、ES−670、高松油脂製ペスレジンA−160P、A−210、A−620、星光化学工業製ハイロスXE−18、XE−35、XE−48、XE−60、XE−62、日本純薬製ジュリマーAT−210、AT−510、AT−515、AT−613、ET−410、ET−530、ET−533、FC−60、FC−80等が挙げられる。
【0103】
以下に、前記「熱可塑性樹脂」について例示する。
(イ)エステル結合を有するもの
テレフタル酸、イソフタル酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、アピエチン酸、コハク酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等のジカルボン酸成分(これらのジカルボン酸成分にはスルホン酸基、カルボキシル基等が置換してもよい)と、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ビスフェノールA、ビスフェノールAのジエーテル誘導体(例えば、ビスフェノールAのエチレンオキサイド2付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド2付加物など)、ビスフェノールS、2−エチルシクロヘキシルジメタノール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキシルジメタノール、グリセリン等のアルコール成分(これらのアルコール成分には、水酸基などが置換されていてもよい。)との縮合により得られるポリエステル樹脂、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリブチルアクリレート等のポリアクリル酸エステル樹脂又はポリメタクリル酸エステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、スチレンアクリレート樹脂、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体樹脂、ビニルトルエンアクリレート樹脂等が挙げられる。
【0104】
具体的には、特開昭59−101395号公報、同63−7971号公報、同63−7972号公報、同63−7973号公報、同60−294862号公報に記載のものを挙げることができる。また、市販品のポリエステル樹脂としては、東洋紡製のパイロン290、パイロン200、パイロン280、パイロン300、パイロン103、パイロンGK−140、パイロンGK−130、花王製のタフトンNE−382、タフトンU−5、ATR−2009、ATR−2010、ユニチカ製のエリーテルUE3500、UE3210、XA−8153、日本合成化学製のポリエスターTP−220、R−188等が挙げられ、アクリル樹脂としては、市販の商品名では、三菱レイヨン製のダイヤナールSE−5437、SE−5102、SE−5377、SE−5649、SE−5466、SE−5482、HR−169、124、HR−1127、HR−116、HR−113、HR−148、HR−131、HR−470、HR−634、HR−606、HR−607、LR−1065、574、143、396、637、162、469、216、BR−50、BR−52、BR−60、BR−64、BR−73、BR−75、BR−77、BR−79、BR−80、BR−83、BR−85、BR−87、BR−88、BR−90、BR−93、BR−95、BR−100、BR−101、BR−102、BR−105、BR−106、BR−107、BR−108、BR−112、BR−113、BR−115、BR−116、BR−117、積水化学工業製エスレックP、SE−0020、SE−0040、SE−0070、SE−0100、SE−1010、SE−1035、三洋化成工業ハイマーST95、ST120、三井化学製FM601等を使用することができる。
【0105】
(ロ)ポリウレタン樹脂
(ハ)ポリアミド樹脂、尿素樹脂等
(ニ)ポリスルホン樹脂
(ホ)ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂、塩化ビニル−プロピオン酸ビニル共重合体樹脂等
(ヘ)ポリビニルブチラ−ル等の、ポリオール樹脂、エチルセルロース樹脂、酢酸セルロース樹脂等のセルロース樹脂等、市販品として、電気化学工業製、積水化学製等のものが挙げられる。本発明に用いるポリビニルブチラ−ルとしては、ポリビニルブチラ−ル含有量が70質量%以上、平均重合度500以上のものが好ましく、更に好ましくは平均重合度1000以上である。市販の商品としては、電気化学工業製デンカブチラール3000−1、4000−2、5000A、6000C、積水化学製エスレックBL−1、BL−2、BL−3、BL−S,BX−L、BM−1、BM−2、BM−5、BM−S、BH−3、BX−1、BX−7等が挙げられる。
【0106】
(ト)ポリカプロラクトン樹脂、スチレン−無水マレイン酸樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリエーテル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等
(チ)ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン樹脂や、エチレンやプロピレン等のオレフィンと他のビニルモノマーとの共重合体等も使用することができる。さらに、熱可塑性樹脂としては、特公平5−127413号公報、同8−194394号公報、同8−334915号公報、同8−334916号公報、同9−171265号公報、同10−221877号公報等に開示されている物性等を満足するものが好ましく用いられる。
【0107】
熱可塑性微粒子の含有量としては、貫通孔型微粒子又は荷電を有する有機微粒子が熱可塑性である場合、それらも含めてインク受容層の全固形分質量に対して、30〜100質量%が好ましく、50〜100質量%がより好ましく、70〜100質量%がさらに好ましい。
【0108】
<低ガラス転移温度のバインダー樹脂>
また、本発明における、多孔質層膜脆性が不十分でひび割れ等が発生しやすい場合、低ガラス転移温度(Tg)のバインダー樹脂を添加することが好ましい。Tgは25℃以下のものが好ましく、10℃以下がより好ましく、0℃以下が特に好ましい。低Tgバインダー樹脂は、ポリマー分散物として用いることができる。また、25℃以上であってもオイル状の可塑剤と併用することにより実質的に25℃以下になっていればよい。可塑剤を用いる場合は、ポリマー分散物に可塑剤乳化物を混合して攪拌すればよい。ポリマー分散物の例としては、酢酸ビニル系、エチレン酢酸ビニル系、アクリル系、塩化ビニリデン系、塩化ビニル系、ブタジエン系、スチレン系、ポリエステル系等のポリマー分散物が挙げられる。前記ポリマーとしては、例えば、エチルアクリレート重合体、プロピルアクリレート重合体、2−エトキシエチルアクリレート重合体、n−ブチルアクリレート重合体、プロピルアクリレート−スチレン共重合体、エチルアクリレート−アクリル酸共重合体等が挙げられる。
前記のごとき低Tgバインダー分散物は、特開平4−321045号公報の段落0010ないし0016に詳細に記載されている。
低Tgバインダー樹脂を添加することにより微粒子同士の接着が強化されて膜強度、脆性が改善されるとともに、カール特性も改善される。
【0109】
<他の添加剤>
多孔質層又は/及びその隣接層には、公知のインクジェット記録媒体のインク受容層に添加する水溶性バインダー、媒染剤、微粒子、ゲル化剤、架橋剤等を適宜添加することができる。
【0110】
(水溶性バインダー)
水溶性バインダーとしては、例えば、親水性構造単位としてヒドロキシ基を有する樹脂であるポリビニルアルコール系樹脂〔ポリビニルアルコール(PVA)、アセトアセチル変性ポリビニルアルコール、カチオン変性ポリビニルアルコール、アニオン変性ポリビニルアルコール、シラノール変性ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール等〕、セルロース系樹脂〔メチルセルロース(MC)、エチルセルロース(EC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等〕、キチン類、キトサン類、デンプン、エーテル結合を有する樹脂〔ポリエチレンオキサイド(PEO)、ポリプロピレンオキサイド(PPO)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルエーテル(PVE)等〕、カルバモイル基を有する樹脂〔ポリアクリルアミド(PAAM)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリアクリル酸ヒドラジド等〕等が挙げられる。ポリビニルアルコールは好ましく用いられる。
【0111】
(ゲル化剤)
本発明の有機微粒子及び水溶性ポリマーを含む塗布液を支持体上に塗布し、該塗布と同時に、あるいは該塗布した層が減率乾燥速度を示すようになる前に、該水溶性ポリマーをゲル化させることができるゲル化剤を含む溶液を付与し、ゲル化させた後に乾燥することにより、乾燥時に生じやすいインク受容層のひび割れも起こらず、インク吸収性の優れた多孔質のインク受容層を形成することができる。
前記ゲル化剤は、前記の水溶性バインダーがポリビニルアルコールの場合には、ホウ素化合物が好ましく用いられる。該ホウ素化合物としては、例えば、硼砂、硼酸、硼酸塩(例えば、オルト硼酸塩、InBO3、ScBO3、YBO3、LaBO3、Mg3(BO32、Co3(BO32、二硼酸塩(例えば、Mg225、Co225)、メタ硼酸塩(例えば、LiBO2、Ca(BO22、NaBO2、KBO2)、四硼酸塩(例えば、Na247・10H2O)、五硼酸塩(例えば、KB58・4H2O、Ca2611・7H2O、CsB55)等を挙げることができる。中でも、速やかにゲル化反応を起こすことができる点で、硼砂、硼酸、硼酸塩が好ましく、特に硼酸が好ましい。
【0112】
(架橋剤)
前記水溶性バインダーの架橋剤として、ホウ素化合物以外の下記化合物を使用することもできる。
例えば、ホルムアルデヒド、グリオキザール、スクシンアルデヒド、グルタルアルデヒド、ジアルデヒドスターチ、植物ガムのジアルデヒド誘導体等のアルデヒド系化合物;ジアセチル、1,2−シクロペンタンジオン、3−ヘキセン−2,5−ジオン等のケトン系化合物;ビス(2−クロロエチル)尿素、ビス(2−クロロエチル)スルホン、2,4−ジクロロ−6−ヒドロキシ−s−トリアジン・ナトリウム塩等の活性ハロゲン化合物;ジビニルスルホン、1,3−ビス(ビニルスルホニル)−2−プロパノール、N,N’−エチレンビス(ビニルスルホニルアセタミド)、ジビニルケトン、1,3−ビス(アクリロイル)尿素、1,3,5−トリアクリロイル−ヘキサヒドロ−s−トリアジン等の活性ビニル化合物;ジメチロ−ル尿素、メチロールジメチルヒダントイン等のN−メチロール化合物;トリメチロールメラミン、アルキル化メチロールメラミン、メラミン、ベンゾグアナミン、メラミン樹脂等のメラミン化合物;エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ジグリセリンポリグリシジルエーテル、スピログリコールジグリシジルエーテル、フェノール樹脂のポリグリシジルエーテル等のエポキシ化合物;
【0113】
1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシナネート等のイソシアネート系化合物;米国特許明細書第3017280号、同第2983611号等に記載のアジリジン系化合物;米国特許明細書第3100704号等に記載のカルボジイミド系化合物;1,6−ヘキサメチレン−N,N’−ビスエチレン尿素等のエチレンイミノ系化合物;ムコクロル酸、ムコフェノキシクロル酸等のハロゲン化カルボキシアルデヒド系化合物;2,3−ジヒドロキシジオキサン等のジオキサン系化合物;乳酸チタン、硫酸アルミ、クロム明ばん、カリ明ばん、酢酸ジルコニル、酢酸クロム等の金属含有化合物;テトラエチレンペンタミン等のポリアミン化合物;アジピン酸ジヒドラジド等のヒドラジド化合物;オキサゾリン基を2個以上含有する低分子又はポリマー等:米国特許明細書第2725294号、米国特許明細書第2725295号、米国特許明細書第2726162号、米国特許明細書第3834902号等に記載の多価酸の無水物、酸クロリド、ビススルホナート化合物;米国特許明細書第3542558号、米国特許明細書第3251972号等に記載の活性エステル化合物等があげられる。
前記の架橋剤は、一種単独で用いてもよいし、2種以上を組合わせて用いてもよい。
【0114】
(媒染剤)
アニオン性色素を多孔質層に固定するために媒染剤が用いられる。以下に述べる媒染剤は、前述の「表面にプラス荷電を有する微粒子」あるいは「プラス荷電を有する水溶性ポリマー」として多孔質層の形成に用いることもできる。
媒染剤としてはカチオン性のポリマー(カチオン性媒染剤)、又は無機媒染剤が好ましく用いられる。
カチオン性媒染剤としては、カチオン性基として、第1級〜第3級アミノ基、又は第4級アンモニウム塩基を有するポリマー媒染剤が好適に用いられるが、カチオン性の非ポリマー媒染剤も使用することができる。これら媒染剤は、多孔質層のインク吸収性良化の観点から、重量平均分子量が500〜100000の化合物が好ましい。
前記ポリマー媒染剤としては、第1級〜第3級アミノ基及びその塩、又は第4級アンモニウム塩基を有する単量体(媒染モノマー)の単独重合体や、該媒染モノマーと他のモノマー(以下、「非媒染モノマー」という。)との共重合体又は縮重合体として得られるものが好ましい。また、これらのポリマー媒染剤は、水溶性ポリマー又は水分散性ラテックス粒子のいずれの形態でも使用できる。
【0115】
前記単量体(媒染モノマー)としては、例えば、トリメチル−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、トリメチル−m−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、トリエチル−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、トリエチル−m−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、N,N−ジメチル−N−エチル−N−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、N,N−ジエチル−N−メチル−N−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、N,N−ジメチル−N−n−プロピル−N−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、N,N−ジメチル−N−n−オクチル−N−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、N,N−ジメチル−N−ベンジル−N−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、N,N−ジエチル−N−ベンジル−N−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、N,N−ジメチル−N−(4−メチル)ベンジル−N−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、N,N−ジメチル−N−フェニル−N−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド;
【0116】
トリメチル−p−ビニルベンジルアンモニウムブロマイド、トリメチル−m−ビニルベンジルアンモニウムブロマイド、トリメチル−p−ビニルベンジルアンモニウムスルホネート、トリメチル−m−ビニルベンジルアンモニウムスルホネート、トリメチル−p−ビニルベンジルアンモニウムアセテート、トリメチル−m−ビニルベンジルアンモニウムアセテート、N,N,N−トリエチル−N−2−(4−ビニルフェニル)エチルアンモニウムクロライド、N,N,N−トリエチル−N−2−(3−ビニルフェニル)エチルアンモニウムクロライド、N,N−ジエチル−N−メチル−N−2−(4−ビニルフェニル)エチルアンモニウムクロライド、N,N−ジエチル−N−メチル−N−2−(4−ビニルフェニル)エチルアンモニウムアセテート;
【0117】
N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドのメチルクロライド、エチルクロライド、メチルブロマイド、エチルブロマイド、メチルアイオダイド若しくはエチルアイオダイドによる4級化物、又はそれらのアニオンを置換したスルホン酸塩、アルキルスルホン酸塩、酢酸塩若しくはアルキルカルボン酸塩等が挙げられる。
【0118】
具体的には、例えば、モノメチルジアリルアンモニウムクロライド、トリメチル−2−(メタクリロイルオキシ)エチルアンモニウムクロライド、トリエチル−2−(メタクリロイルオキシ)エチルアンモニウムクロライド、トリメチル−2−(アクリロイルオキシ)エチルアンモニウムクロライド、トリエチル−2−(アクリロイルオキシ)エチルアンモニウムクロライド、トリメチル−3−(メタクリロイルオキシ)プロピルアンモニウムクロライド、トリエチル−3−(メタクリロイルオキシ)プロピルアンモニウムクロライド、トリメチル−2−(メタクリロイルアミノ)エチルアンモニウムクロライド、トリエチル−2−(メタクリロイルアミノ)エチルアンモニウムクロライド、トリメチル−2−(アクリロイルアミノ)エチルアンモニウムクロライド、トリエチル−2−(アクリロイルアミノ)エチルアンモニウムクロライド、トリメチル−3−(メタクリロイルアミノ)プロピルアンモニウムクロライド、トリエチル−3−(メタクリロイルアミノ)プロピルアンモニウムクロライド、トリメチル−3−(アクリロイルアミノ)プロピルアンモニウムクロライド、トリエチル−3−(アクリロイルアミノ)プロピルアンモニウムクロライド;
【0119】
N,N−ジメチル−N−エチル−2−(メタクリロイルオキシ)エチルアンモニウムクロライド、N,N−ジエチル−N−メチル−2−(メタクリロイルオキシ)エチルアンモニウムクロライド、N,N−ジメチル−N−エチル−3−(アクリロイルアミノ)プロピルアンモニウムクロライド、トリメチル−2−(メタクリロイルオキシ)エチルアンモニウムブロマイド、トリメチル−3−(アクリロイルアミノ)プロピルアンモニウムブロマイド、トリメチル−2−(メタクリロイルオキシ)エチルアンモニウムスルホネート、トリメチル−3−(アクリロイルアミノ)プロピルアンモニウムアセテート等を挙げることができる。
その他、共重合可能なモノマーとして、N―ビニルイミダゾール、N―ビニル−2−メチルイミダゾール等も挙げられる。
【0120】
また、アリルアミン、ジアリルアミンやその誘導体、塩なども利用できる。このような化合物の例としてはアリルアミン、アリルアミン塩酸塩、アリルアミン酢酸塩、アリルアミン硫酸塩、ジアリルアミン、ジアリルアミン塩酸塩、ジアリルアミン酢酸塩、ジアリルアミン硫酸塩、ジアリルメチルアミン及びこの塩(該塩としては、例えば、塩酸塩、酢酸塩、硫酸塩など)、ジアリルエチルアミン及びこの塩(該塩としては、例えば、塩酸塩、酢酸塩、硫酸塩など)、ジアリルジメチルアンモニウム塩(該塩の対アニオンとしてはクロライド、酢酸イオン硫酸イオンなど)が挙げられる。尚、これらのアリルアミン及びジアリルアミン誘導体はアミンの形態では重合性が劣るので塩の形で重合し、必要に応じて脱塩することが一般的である。
また、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルホルムアミドなどの単位を用い、重合後に加水分解によってビニルアミン単位とすること、及びこれを塩にしたものも利用できる。
【0121】
前記非媒染モノマーとは、第1級〜第3級アミノ基及びその塩、又は第4級アンモニウム塩基等の塩基性あるいはカチオン性部分を含まず、インクジェットインク中の染料と相互作用を示さない、あるいは相互作用が実質的に小さいモノマーをいう。
前記非媒染モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル;(メタ)アクリル酸シクロヘキシル等の(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル;(メタ)アクリル酸フェニル等の(メタ)アクリル酸アリールエステル;(メタ)アクリル酸ベンジル等のアラルキルエステル;スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;酢酸アリル等のアリルエステル類;塩化ビニリデン、塩化ビニル等のハロゲン含有単量体;(メタ)アクリロニトリル等のシアン化ビニル;エチレン、プロピレン等のオレフィン類、等が挙げられる。
【0122】
前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、アルキル部位の炭素数が1〜18の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましく、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル等が挙げられる。
中でも、メチルアクリレート、エチルアクリレート、メチルメタアクリレート、エチルメタアクリレート、ヒドロキシエチルメタアクリレートが好ましい。
前記非媒染モノマーも、一種単独で又は二種以上を組合せて使用できる。
【0123】
更に、前記ポリマー媒染剤として、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド、ジアリルジメチルアンモニウムクロライドと他のモノマー(媒染モノマー、非媒染モノマー)との共重合体、ジアリルジメチルアンモニウムクロライドとSO2との共重合体、ポリジアリルメチルアミン塩酸塩、ポリジアリル塩酸塩等に代表される環状アミン樹脂及びその誘導体(共重合体も含む);ポリジエチルメタクリロイルオキシエチルアミン、ポリトリメチルメタクリロイルオキシエチルアンモニウムクロライド、ポリジメチルベンジルメタクリロイルオキシエチルアンモニウムクロライド、ポリジメチルヒドロキシエチルアクリロイルオキシエチルアンモニウムクロリド等に代表される2級アミノ、3級アミノ又は4級アンモニウム塩置換アルキル(メタ)アクリレート重合体及び他のモノマーとの共重合体;ポリエチレンイミン及びその誘導体、ポリアリルアミン及びその誘導体、ポリビニルアミン及びその誘導体等に代表されるポリアミン系樹脂;ポリアミド−ポリアミン樹脂、ポリアミドエピクロロヒドリン樹脂等に代表されるポリアミド樹脂;カチオン化でんぷん、キトサン及びキトサン誘導体等に代表される多糖類;ジシアンジアミドホルマリン重縮合物、ジシアンジアミドジエチレントリアミン重縮合物 等に代表されるジシアンジアミド誘導体;ポリアミジン及びポリアミジン誘導体;ジメチルアミンエピクロロヒドリン付加重合物等に代表されるジアルキルアミンエピクロロヒドリン付加重合物及びその誘導体;第4級アンモニウム塩置換アルキル基を有するスチレン重合体及びその他のモノマーとの共重合体等も好ましいものとして挙げることができる。
【0124】
前記ポリマー媒染剤として、具体的には、特開昭48−28325号、同54−74430号、同54−124726号、同55−22766号、同55−142339号、同60−23850号、同60−23851号、同60−23852号、同60−23853号、同60−57836号、同60−60643号、同60−118834号、同60−122940号、同60−122941号、同60−122942号、同60−235134号、特開平1−161236号の各公報、米国特許2484430、同2548564号、同3148061号、同3309690号、同4115124号、同4124386号、同4193800号、同4273853号、同4282305号、同4450224号、特開平1−161236号、同10−81064号、同10−157277号、同10−217601号、特開2001−138621号、同2000−211235号、同2001−138627号、特開平8−174992号、特公平5‐35162号、同5−35163号、同5‐35164号、同5−88846号、特許第2648847号、同2661677号等の各公報に記載のもの等が挙げられる。
【0125】
本発明における媒染剤としては無機媒染剤を用いることも可能で、多価の水溶性金属塩や疎水性金属塩化合物が挙げられる。
無機媒染剤の具体例としては、例えば、マグネシウム、アルミニウム、カルシウム、スカンジウム、チタン、バナジウム、マンガン、鉄、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム、ゲルマニウム、ストロンチウム、イットリウム、ジルコニウム、モリブデン、インジウム、バリウム、ランタン、セリウム、プラセオジミウム、ネオジミウム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、ジスロプロシウム、エルビウム、イッテルビウム、ハフニウム、タングステン、ビスマスから選択される金属の塩又は錯体が挙げられる。
【0126】
具体的には例えば、酢酸カルシウム、塩化カルシウム、ギ酸カルシウム、硫酸カルシウム、酢酸バリウム、硫酸バリウム、リン酸バリウム、塩化マンガン、酢酸マンガン、ギ酸マンガンニ水和物、硫酸マンガンアンモニウム六水和物、塩化第二銅、塩化アンモニウム銅(II)二水和物、硫酸銅、塩化コバルト、チオシアン酸コバルト、硫酸コバルト、硫酸ニッケル六水和物、塩化ニッケル六水和物、酢酸ニッケル四水和物、硫酸ニッケルアンモニウム六水和物、アミド硫酸ニッケル四水和物、硫酸アルミニウム、アルミニウムミョウバン、亜硫酸アルミニウム、チオ硫酸アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム九水和物、塩化アルミニウム六水和物、塩基性硫酸アルミニウム、塩基性硝酸アルミニウム、塩基性ギ酸アルミニウム、塩基性酢酸アルミニウム、塩基性アルミニウムグリシネート、臭化第一鉄、塩化第一鉄、塩化第二鉄、硫酸第一鉄、硫酸第二鉄、フェノールスルホン酸亜鉛、臭化亜鉛、塩化亜鉛、硝酸亜鉛六水和物、硫酸亜鉛、四塩化チタン、テトライソプロピルチタネート、チタンアセチルアセトネート、乳酸チタン、ジルコニウムアセチルアセトネート、酢酸ジルコニル、硫酸ジルコニル、炭酸ジルコニウムアンモニウム、ステアリン酸ジルコニル、オクチル酸ジルコニル、硝酸ジルコニル、オキシ塩化ジルコニウム、ヒドロキシ塩化ジルコニウム、乳酸ジルコニル、こはく酸ジルコニル、蓚酸ジルコニル、酢酸ジルコニウムアンモニウム、炭酸ジルコニウムカリウム、塩基性ジルコニウムグリシネート、酢酸クロム、硫酸クロム、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム六水和物、クエン酸マグネシウム九水和物、リンタングステン酸ナトリウム、クエン酸ナトリウムタングステン、12タングストリン酸n水和物、12タングストけい酸26水和物、塩化モリブデン、12モリブドリン酸n水和物、硝酸ガリウム、硝酸ゲルマニウム、硝酸ストロンチウム、酢酸イットリウム、塩化イットリウム、硝酸イットリウム、硝酸インジウム、硝酸ランタン、塩化ランタン、酢酸ランタン、安息香酸ランタン、塩化セリウム、硫酸セリウム、オクチル酸セリウム、硝酸プラセオジミウム、硝酸ネオジミウム、硝酸サマリウム、硝酸ユーロピウム、硝酸ガドリニウム、硝酸ジスプロシウム、硝酸エルビウム、硝酸イッテルビウム、塩化ハフニウム、硝酸ビスマス等があげられる。
【0127】
無機媒染剤としては、アルミニウム含有化合物、チタン含有化合物、ジルコニウム含有化合物、元素周期律表第IIIB族シリーズの金属化合物(塩又は錯体)が好ましい。
【0128】
これらの媒染剤をアニオン性色素の固定剤として用いる場合には、多孔質層を形成する塗布液を塗布乾燥後、又は乾燥途中(生乾きの状態)で、媒染剤を含む液をディップ法、カーテンコート法、イクストルージョン法等で別途塗布することもできる。
【0129】
<その他の成分>
本発明の記録媒体は、必要に応じて、更に各種の公知の添加剤、例えば酸、紫外線吸収剤、酸化防止剤、蛍光増白剤、滲み防止剤、防腐剤、粘度安定剤、消泡剤、界面活性剤、帯電防止剤、マット剤、カール防止剤、耐水化剤等を含有することができる。
【0130】
(酸)
具体的な酸の例としては、ギ酸、酢酸、グリコール酸、シュウ酸、プロピオン酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、マレイン酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、フタル酸、イソフタル酸、グルタル酸、グルコン酸、乳酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、サリチル酸、サリチル酸金属塩(Zn,Al,Ca,Mg等の塩)、メタンスルホン酸、イタコン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、スチレンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、バルビツール酸、アクリル酸、メタクリル酸、桂皮酸、4−ヒドロキシ安息香酸、アミノ安息香酸、ナフタレンジスルホン酸、ヒドロキシベンゼンスルホン酸、トルエンスルフィン酸、ベンゼンスルフィン酸、スルファニル酸、スルファミン酸、α−レゾルシン酸、β−レゾルシン酸、γ−レゾルシン酸、没食子酸、フロログリシン、スルホサリチル酸、アスコルビン酸、エリソルビン酸、ビスフェノール酸、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸、ポリリン酸、ほう酸、ボロン酸等が挙げられる。これらの酸の添加量は、多孔質層の表面PHが3〜8になるように決めればよい。
前記の酸は金属塩(例えばナトリウム、カリウム、カルシウム、セシウム、亜鉛、銅、鉄、アルミニウム、ジルコニウム、ランタン、イットリウム、マグネシウム、ストロンチウム、セリウムなどの塩)、又はアミン塩(例えばアンモニア、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ピペラジン、2−メチルピペラジン、ポリアリルアミンなど)の形態で使用してもよい。金属塩の例としては、ポリ塩化アルミニウム、オキシ塩化ジルコニウム、酢酸ジルコニルなどがあげられる。
【0131】
(紫外線吸剤、酸化防止剤、滲み防止剤)
アルキル化フェノール化合物(ヒンダードフェノール化合物を含む)、アルキルチオメチルフェノール化合物、ヒドロキノン化合物、アルキル化ヒドロキノン化合物、トコフェロール化合物、チオエーテル結合を有する脂肪族・芳香族及び/又は複素環化合物、ビスフェノール化合物、O−,N−及びS−ベンジル化合物、ヒドロキシベンジル化合物、トリアジン化合物、ホスホネート化合物、アシルアミノフェノール化合物、エステル化合物、アミド化合物、アスコルビン酸、アミン系抗酸化剤、2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール化合物、2−ヒドロキシベンゾフェノン化合物、アクリレート、水溶性又は疎水性の金属塩、有機金属化合物、金属錯体、ヒンダードアミン化合物(TEMPO化合物を含む)、2−(2−ヒドロキシフェニル)1,3,5,−トリアジン化合物、金属不活性化剤、ホスフィット化合物、ホスホナイト化合物、ヒドロキシアミン化合物、ニトロン化合物、過酸化物スカベンジャー、ポリアミド安定剤、ポリエーテル化合物、塩基性補助安定剤、核剤、ベンゾフラノン化合物、インドリノン化合物、ホスフィン化合物、ポリアミン化合物、チオ尿素化合物、尿素化合物、ヒドラジト化合物、アミジン化合物、糖化合物、ヒドロキシ安息香酸化合物、ジヒドロキシ安息香酸化合物、トリヒドロキシ安息香酸化合物等が挙げられる。
【0132】
これらの中でも、アルキル化フェノール化合物、チオエーテル結合を有する脂肪族・芳香族及び/又は複素環化合物、ビスフェノール化合物、アスコルビン酸、アミン系抗酸化剤、水溶性又は疎水性の金属塩、有機金属化合物、金属錯体、ヒンダードアミン化合物、ヒドロキシアミン化合物、ポリアミン化合物、チオ尿素化合物、ヒドラジド化合物、ヒドロキシ安息香酸化合物、ジヒドロキシ安息香酸化合物、トリヒドロキシ安息香酸化合物等が好ましい。
【0133】
具体的な化合物例は、特願2002−13005号、特開平10−182621号、特開2001−260519号、特公平4−34953号、特公平4−34513号、特開平11−170686号、特公平4−34512号、EP1138509号、特開昭60−67190号、特開平7−276808号、特開2001−94829号、特開昭47−10537号、同58−111942号、同58−212844号、同59−19945号、同59−46646号、同59−109055号、同63−53544号、特公昭36−10466号、同42−26187号、同48−30492号、同48−31255号、同48−41572号、同48−54965号、同50−10726号、米国特許第2,719,086号、同3,707,375号、同3,754,919号、同4,220,711号、
【0134】
特公昭45−4699号、同54−5324号、ヨーロッパ公開特許第223739号、同309401号、同309402号、同310551号、同第310552号、同第459416号、ドイツ公開特許第3435443号、特開昭54−48535号、同60−107384号、同60−107383号、同60−125470号、同60−125471号、同60−125472号、同60−287485号、同60−287486号、同60−287487号、同60−287488号、同61−160287号、同61−185483号、同61−211079号、同62−146678号、同62−146680号、同62−146679号、同62−282885号、同62−262047号、同63−051174号、同63−89877号、同63−88380号、同63−88381号、同63−113536号、
【0135】
同63−163351号、同63−203372号、同63−224989号、同63−251282号、同63−267594号、同63−182484号、特開平1−239282号、特開平2−262654号、同2−71262号、同3−121449号、同4−291685号、同4−291684号、同5−61166号、同5−119449号、同5−188687号、同5−188686号、同5−110490号、同5−170361号、特公昭48−43295号、同48−33212号、米国特許第4814262号、同第4980275号等の各公報に記載のものがあげられる。
【0136】
前記その他の成分は、1種単独でも2種以上を併用してもよい。この前記その他の成分は、水溶性化、分散化、ポリマー分散、エマルション化、油滴化して添加してもよく、マイクロカプセル中に内包することもできる。本発明の記録媒体では、前記その他の成分の添加量としては、0.01〜10g/m2が好ましい。
【0137】
本発明において、多孔質層用塗布液は界面活性剤を含有しているのが好ましい。該界面活性剤としてはカチオン系、アニオン系、ノニオン系、両性、フッ素系、シリコン系界面活性剤のいずれも使用可能である。
前記ノニオン系界面活性剤としては、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル及びポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル類(例えば、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリーコールジエチルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等)、オキシエチレン・オキシプロピレンブロックコポリマー、ソルビタン脂肪酸エステル類(例えば、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノオレート、ソルビタントリオレート等)、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類(例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレート等)、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル類(例えば、テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット等)、グリセリン脂肪酸エステル類(例えば、グリセロールモノオレート等)、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル類(モノステアリン酸ポリオキシエチレングリセリン、モノオレイン酸ポリオキシエチレングリセリン等)、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル類(ポリエチレングリコールモノラウレート、ポリエチレングリコールモノオレート等)、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アセチレングリコール類(例えば、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、及び該ジオールのエチレンオキサイド付加物、プロピレンオキサイド付加物等)等が挙げられ、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル類が好ましい。該ノニオン系界面活性剤は、第1の塗布液及び第2の塗布液において使用することができる。また、前記ノニオン系界面活性剤は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0138】
前記両性界面活性剤としては、アミノ酸型、カルボキシアンモニウムベタイン型、スルホンアンモニウムベタイン型、アンモニウム硫酸エステルベタイン型、イミダゾリウムベタイン型等が挙げられ、例えば、米国特許第3,843,368号、特開昭59−49535号、同63−236546号、特開平5−303205号、同8−262742号、同10−282619号、特許第2514194号、特許2759795号、特開2000−351269号の各公報等に記載されているものを好適に使用できる。前記両性界面活性剤のなかでも、アミノ酸型、カルボキシアンモニウムベタイン型、スルホンアンモニウムベタイン型が好ましい。前記両性界面活性剤は1種で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0139】
前記アニオン系界面活性剤としては、脂肪酸塩(例えばステアリン酸ナトリウム、オレイン酸カリウム )、アルキル硫酸エステル塩(例えばラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸トリエタノールアミン)、スルホン酸塩(例えばドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム)、アルキルスルホコハク酸塩(例えばジオクチルスルホコハク酸ナトリウム)、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩、アルキルリン酸塩等が挙げられる。
前記カチオン系界面活性剤としては、アルキルアミン塩、第4級アンモニウム塩、ピリジニウム塩、イミダゾリウム塩などがあげられる。
【0140】
前記フッ素系界面活性剤としては、電解フッ素化、テロメリゼーション、オリゴメリゼーションなどの方法を用いてパーフルオロアルキル基を持つ中間体をへて誘導される化合物があげられる。
例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物、パーフルオロアルキルトリアルキルアンモニウム塩、パーフルオロアルキル基含有オリゴマー、パーフルオロアルキルリン酸エステルなどがあげられる。
【0141】
前記シリコン系界面活性剤としては、有機基で変性したシリコンオイルが好ましく、シロキサン構造の側鎖を有機基で変性した構造、両末端を変性した構造、片末端を変性した構造をとり得る。有機基変性としてアミノ変性、ポリエーテル変性、エポキシ変性、カルボキシル変性、カルビノール変性、アルキル変性、アラルキル変性、フェノール変性、フッ素変性等が挙げられる。
【0142】
本発明で界面活性剤の含有量としては、多孔質層用塗布液に対して0.001〜2.0%が好ましく、0.01〜1.0%がより好ましい。また、多孔質層用塗布液として2液以上を用いて塗布を行なう場合には、それぞれの塗布液に界面活性剤を添加するのが好ましい。
【0143】
また、多孔質層にはカール防止用又は/及びガラス転移温度調節用として、高沸点有機溶剤を含有させることができる。前記高沸点有機溶剤は常圧で沸点が150℃以上の有機化合物で、水溶性又は疎水性の化合物である。これらは、室温で液体でも固体でもよく、低分子でも高分子でもよい。
具体的には、芳香族カルボン酸エステル類(例えばフタル酸ジブチル、フタル酸ジフェニル、安息香酸フェニルなど)、脂肪族カルボン酸エステル類(例えばアジピン酸ジオクチル、セバシン酸ジブチル、ステアリン酸メチル、マレイン酸ジブチル、フマル酸ジブチル、アセチルクエン酸トリエチルなど)、リン酸エステル類(例えばリン酸トリオクチル、リン酸トリクレジルなど)、エポキシ類(例えばエポキシ化大豆油、エポキシ化脂肪酸メチルなど)、アルコール類(例えば、ステアリルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、グリセリン、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(DEGMBE)、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、グリセリンモノメチルエーテル、1,2,3−ブタントリオール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,4−ペンタントリオール、1,2,6−ヘキサントリオール、チオジグリコール、トリエタノールアミン、ポリエチレングリコールなど)、植物油(例えば大豆油、ヒマワリ油など)高級脂肪族カルボン酸(例えばリノール酸、オレイン酸など)等が挙げられる。
【0144】
≪支持体≫
本発明における支持体としては、プラスチック等の透明材料よりなる透明支持体、紙等の不透明材料からなる不透明支持体のいずれをも使用できる。多孔質層のインク吸収速度を上げるためには紙を用いることが好ましい。またCD−ROM、DVD−ROM等の読み出し専用光ディスク、CD−R,DVD−R等の追記型光ディスク更には書き換え型光ディスクを支持体として用いレーベル面側に多孔質層を付与することもできる。
【0145】
前記透明支持体に使用可能な材料としては、透明性で、OHPやバックライトディスプレイで使用される時の輻射熱に耐え得る性質を有する材料が好ましい。該材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル類;ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリアミド等を挙げることができる。中でも、ポリエステル類が好ましく、特にポリエチレンテレフタレートが好ましい。
前記透明支持体の厚みとしては、特に制限はないが、取り扱い易い点で、50〜200μmが好ましい。
【0146】
高光沢性の不透明支持体としては、多孔質層の設けられる側の表面が40%以上の光沢度を有するものが好ましい。前記光沢度は、JIS P−8142(紙及び板紙の75度鏡面光沢度試験方法)に記載の方法に従って求められる値である。具体的には、下記支持体が挙げられる。
【0147】
例えば、アート紙、コート紙、キャストコート紙、銀塩写真用支持体等に使用されるバライタ紙等の高光沢性の紙支持体;ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル類、ニトロセルロース,セルロースアセテート,セルロースアセテートブチレート等のセルロースエステル類、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリアミド等のプラスチックフィルムに白色顔料等を含有させて不透明にした(表面カレンダー処理が施されていてもよい。)高光沢性のフィルム;或いは、前記各種紙支持体、前記透明支持体若しくは白色顔料等を含有する高光沢性のフィルムの表面に、白色顔料を含有若しくは含有しないポリオレフィンの被覆層が設けられた支持体等が挙げられる。
白色顔料含有発泡ポリエステルフィルム(例えば、ポリオレフィン微粒子を含有させ、延伸により空隙を形成した発泡PET)も好適に挙げることができる。更に銀塩写真用印画紙に用いられるレジンコート紙も好適である。
【0148】
前記不透明支持体の厚みについても特に制限はないが、取り扱い性の点で、50〜300μmが好ましい。
【0149】
また、前記支持体の表面には、濡れ特性及び接着性を改善するために、コロナ放電処理、グロー放電処理、火炎処理、紫外線照射処理等を施したものを使用してもよい。
【0150】
次に、前記レジンコート紙に用いられる原紙について詳述する。
前記原紙としては、木材パルプを主原料とし、必要に応じて木材パルプに加えてポリプロピレンなどの合成パルプ、あるいはナイロンやポリエステルなどの合成繊維を用いて抄紙される。前記木材パルプとしては、LBKP、LBSP、NBKP、NBSP、LDP、NDP、LUKP、NUKPのいずれも用いることができるが、短繊維分の多いLBKP、NBSP、LBSP、NDP、LDPをより多く用いることが好ましい。
但し、LBSP及び/又はLDPの比率としては、10質量%以上、70質量%以下が好ましい。
【0151】
前記パルプは、不純物の少ない化学パルプ(硫酸塩パルプや亜硫酸パルプ)が好ましく用いられ、漂白処理をおこなって白色度を向上させたパルプも有用である。
【0152】
原紙中には、高級脂肪酸、アルキルケテンダイマー等のサイズ剤、炭酸カルシウム、タルク、酸化チタンなどの白色顔料、スターチ、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール等の紙力増強剤、蛍光増白剤、ポリエチレングリコール類等の水分保持剤、分散剤、4級アンモニウム等の柔軟化剤などを適宜添加することができる。
【0153】
抄紙に使用するパルプの濾水度としては、CSFの規定で200〜500mlが好ましく、また、叩解後の繊維長が、JIS P−8207に規定される24メッシュ残分質量%と42メッシュ残分の質量%との和が30〜70%が好ましい。尚、4メッシュ残分の質量%は20質量%以下であることが好ましい。
【0154】
原紙の坪量としては、30〜250gが好ましく、特に50〜200gが好ましい。原紙の厚さとしては、40〜250μmが好ましい。原紙は、抄紙段階又は抄紙後にカレンダー処理して高平滑性を与えることもできる。原紙密度は0.7〜1.2g/m2(JIS P−8118)が一般的である。
更に、原紙剛度としては、JIS P−8143に規定される条件で20〜200gが好ましい。
【0155】
原紙表面には表面サイズ剤を塗布してもよく、表面サイズ剤としては、前記原紙中添加できるサイズと同様のサイズ剤を使用できる。
原紙のpHは、JIS P−8113で規定された熱水抽出法により測定された場合、5〜9であることが好ましい。
【0156】
原紙表面及び裏面を被覆するポリエチレンは、主として低密度のポリエチレン(LDPE)及び/又は高密度のポリエチレン(HDPE)であるが、他のLLDPEやポリプロピレン等も一部使用することができる。
【0157】
特に、多孔質層を形成する側のポリエチレン層は、写真用印画紙で広くおこなわれているように、ルチル又はアナターゼ型の酸化チタン、蛍光増白剤、群青をポリエチレン中に添加し、不透明度、白色度及び色相を改良したものが好ましい。ここで、酸化チタン含有量としては、ポリエチレンに対して、概ね3〜20質量%が好ましく、4〜13質量%がより好ましい。ポリエチレン層の厚みは特に限定はないが、表裏面層とも10〜50μmが好適である。さらにポリエチレン層上に多孔質層との密着性を付与するために下塗り層を設けることもできる。該下塗り層としては、水性ポリエステル、ゼラチン、PVAが好ましい。また、該下塗り層の厚みとしては、0.01〜5μmが好ましい。
【0158】
ポリエチレン被覆紙は、光沢紙として用いることも、また、ポリエチレンを原紙表面上に溶融押し出してコーティングする際に、いわゆる型付け処理をおこなって通常の写真印画紙で得られるようなマット面や絹目面を形成したものも使用できる。
前記ポリエチレン層は、通常ポリエチレンの溶融押し出し法によるラミネート加工が行われるが、ポリエチレン粒子の水性分散液を塗布し加熱乾燥することによっても設けることができる。また、ポリエチレン以外のポリマー分散物の塗布によっても樹脂被覆紙を製造することができる。
【0159】
支持体にはバックコート層を設けることもでき、このバックコート層に添加可能な成分としては、白色顔料や水性バインダー、その他の成分が挙げられる。
バックコート層に含有される白色顔料としては、例えば、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、カオリン、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、サチンホワイト、珪酸アルミニウム、珪藻土、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、合成非晶質シリカ、コロイダルシリカ、コロイダルアルミナ、擬ベーマイト、水酸化アルミニウム、アルミナ、リトポン、ゼオライト、加水ハロイサイト、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム等の白色無機顔料、スチレン系プラスチックピグメント、アクリル系プラスチックピグメント、ポリエチレン、マイクロカプセル、尿素樹脂、メラミン樹脂等の有機顔料等が挙げられる。
【0160】
バックコート層に用いられる水性バインダーとしては、例えば、スチレン/マレイン酸塩共重合体、スチレン/アクリル酸塩共重合体、ポリビニルアルコール、シラノール変性ポリビニルアルコール、澱粉、カチオン化澱粉、カゼイン、ゼラチン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドン等の水溶性高分子、スチレンブタジエンラテックス、アクリルエマルジョン等の水分散性高分子等が挙げられる。
バックコート層に含有されるその他の成分としては、消泡剤、抑泡剤、染料、蛍光増白剤、防腐剤、耐水化剤等が挙げられる。
【0161】
本発明の記録媒体の用途は、特に限定されないが、好ましくはインクジェット用である。また、用いるインクが特に制限無く、後述の水溶性染料系、顔料系、溶剤系インク等を用いることができるが、重合性モノマーを含有するインクの場合が本発明の効果をより発揮しうる。
【0162】
≪記録媒体の製造方法≫
本発明の記録媒体は、有機微粒子、重合性開始剤を含有するインク受容層(多孔質層)を形成するための塗布液を支持体に塗布して、インク受容層(多孔質層)を支持体の上に形成することにより作製される。
インク受容層用塗布液は、インク受容層を形成する各成分を溶媒、好ましくは水性溶媒中に分散・溶解させることにより調製される。
前記溶媒として水、有機溶媒、又はこれらの混合溶媒を用いることができる。前記有機溶媒としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、メトキシプロパノール等のアルコール類、アセトン等のケトン類、テトラヒドロフラン等が挙げられる。
【0163】
前記有機微粒子として前記荷電有機微粒子を含み、該荷電有機微粒子の少なくとも1つが弱荷電性のものを用いる場合には、塗布液のpHをあらかじめ調節して塗布性と架橋凝集性のバランスをとったものを支持体に塗布したり(第一の方法)、あるいは前記塗布液のpHを塗布性に最も適したpHとし、この塗布液を支持体に塗布すると同時に、又は塗布により形成される塗布層が乾燥する前に、塗布層にpH調節剤を付与して架橋凝集に適したpHとなるようにpH調節する(第二の方法)ことが好ましい。
【0164】
第一の方法における塗布液のpH制御は、塗布液中において微粒子等が安定に分散されること、塗布液の粘度が塗布適性を備えていること、また、塗布後の微粒子の凝集(架橋凝集)による多孔質層の形成が良好に行われること等を考慮して(分散安定性や塗布性を重視しすぎると好適な架橋凝集が生じないことがあり、また、逆に架橋凝集の点を考慮しすぎると分散安定性や塗布性が低下することがある)、最適pH領域を定めることが好ましい。
塗布液のpH調節剤としては、pHを上げるためには、NaOH,KOH等のアルカリ金属化合物、アンモニア水、アミン系化合物等が用いられ、pHを下げるためには、塩酸、硫酸、リン酸などの無機酸、酢酸などの有機酸を用いることができる。
【0165】
また、塗布液のpH調節剤として、例えば、揮発性のpH調節剤を用い、前記塗布液のpHを塗布に適したpHとし、塗布後、塗布層から前記pH調節剤を揮散させることによりpHを変動させ、塗布層のpHを架橋凝集に適したpHとする方法も好ましい方法である。揮発性のpH調節剤とは、多孔質層を形成する際の乾燥工程において揮発する程度の蒸気圧を有することをいう。揮発性のpH調節剤としては、例えば、アンモニア水、アミン水溶液、塩酸、酢酸等が挙げられる。
【0166】
例えば、弱カチオン性微粒子/強アニオン性微粒子の組み合わせ(例.−NH2基含有微粒子 /−SO3-基含有微粒子の組み合わせ)において、塗布液のpH調節剤としてアンモニア水を用いると、該塗布液の塗布後、塗布層からアンモニアが揮散し、塗布層のpHが下がり架橋凝集が促進される。この際、塗布層を加熱乾燥して揮散を促進してもよい。また、加熱等により脱炭酸しpHを上げる方法も有効である。例えば弱アルカリ性の炭酸水素ナトリウムは65℃以上で分解し強アルカリ性の炭酸ソーダとなる。
【0167】
第二の方法に用いるpH調節剤としては液状のpH調節剤を用いる他、気体状のpH調節剤を用いる方法が挙げられる。
液状のpH調節剤を用いて塗布層のpH調節をする方法としては、pH調節剤を含む液を多孔質層形成用塗布液による塗布層の上に重ねて塗布(重層塗布)するか、該塗布層にpH調節剤を含む液のミストを噴霧するなどの方法により行われる。前記塗布又は噴霧は、塗布層の形成と同時に又は塗布により形成される塗布層が乾燥する前に行われる。pH調節剤を含む液としては前述の塗布液に用いるpH調節剤が同様に用いられる。
気体状のpH調節剤を用いて塗布層のpH調節をする方法としては、前記塗布層の上に気体状のpH調節剤を適用することにより行われる。pH調節剤としてはアンモニアガス、塩酸ガス、炭酸ガス等が使用される。
【0168】
また、第二の方法における塗布液は、塗布液中において微粒子等が安定に分散され、かつ塗布液が塗布適性を備えた粘度となるような、プラスとマイナスの荷電量比にするためにpH調節を行い、一方、塗布後の塗布層中にpH調節剤を付与して、プラスとマイナスの荷電量比を再調節することにより、短時間で望ましい多孔質構造を形成する架橋凝集を起こすのに有効なpHに変化するように塗布層のpHを調節することが好ましい。
【0169】
また、前記第二の方法において、その少なくとも一方が弱荷電性である荷電微粒子の組合わせでは、塗布層のpH調節は具体的に以下のようにして行われる。
1)弱アニオン性微粒子/強カチオン性微粒子の組み合わせ(例.−COOH基含有微粒子/4級アンモニウム塩基含有微粒子の組み合わせ)の場合は、アルカリ性pH調節剤の付与により行われる。
2)弱カチオン性微粒子/強アニオン性微粒子の組み合わせ(例.−NH2基含有微粒子/−SO3-基含有微粒子の組み合わせ)の場合は、酸性pH調節剤の付与により行われる。
3)弱アニオン性微粒子/弱カチオン性微粒子の組み合わせ(例.−COOH基含有微粒子/−NH2基含有微粒子の組み合わせ)の場合は、酸性又はアルカリ性のpH調節剤により行われる。
【0170】
前記塗布液の塗布は、例えば、エクストルージョンダイコーター、エアードクターコーター、ブレッドコーター、ロッドコーター、ナイフコーター、スクイズコーター、リバースロールコーター、バーコーター等の公知の塗布方法によって行うことができる。
また、塗布層の上にpH調節剤を重層塗布する場合にはエクストルージョンダイコーターを用いることが好ましい。又、塗布層が、減率乾燥速度を示すようになる前に、前記塗布液のゲル化剤又は/及びpH調節剤をディップコート又は噴霧法にて浮揚する方法は好ましく用いられる。
【0171】
[記録方法]
本発明の記録方法は、前記本発明の記録媒体に重合性モノマーを含有するインク(以下、「モノマーインク」ともいう。)を用いて記録することを特徴とする。
該モノマーインクは、重合開始剤以外の成分を含み、印字後に加熱或いは光(紫外線等)を照射して重合硬化するインクである。
本発明の記録媒体に重合性モノマーを含有するインクを用いて記録する場合、印字後に該記録媒体を加熱(熱印加)するか、又は光照射後加熱(光照射後熱印加)することが好ましい。特に、該操作はモノマーインクがインク受容層に浸透した後が好ましい。
前記記録媒体中に前記重合開始剤を含有し、且つ、モノマーインクを用いて記録する場合、該モノマーインクは重合開始剤を含有しないことが好ましい。該記録媒体に前記重合開始剤を含有しないモノマーインクを用いて記録することにより、該インクがインクジェットヘッドで加熱されてもモノマーインクが重合固化して目詰まりが少なく、ラインヘッドによる高速印字可能となる傾向となる。
【0172】
更に、前記記録媒体に前記モノマーインクを用いて印字した後、直ちに得られた記録媒体に光照射及び平滑化処理を行うことが好ましい。従来は、記録媒体に印字後直ちに平滑化処理:加熱加圧処理(例えば,印字面に平滑なフイルムを重ねてヒートローラーを通す方法)を行うと膜中のヘイズが消えず、十分乾燥してから平滑化処理を行った場合に比べて、画像の先鋭度、色濃度及び光沢度が必ずしも十分ではなかった。本発明においては、インクとしてモノマーインクを用いて前記本発明の記録媒体に印画すれば、印画後直ちに平滑化処理を行い長時間経時しても、インク受容層の細孔は硬化したインクが詰まったままで、インク受容層中で光の散乱は起こらず、光沢度、色濃度、彩度、画像先鋭度等の低下が起こらない。
前記平滑化処理により、得られた画像は光沢性に優れる傾向となる。
更に、細孔に浸透したモノマーインクは平滑化処理時に同時に重合反応が起こり、モノマーインクは色素と共に細孔に固定される。即ち、細孔は重合体によって埋まり、耐オゾン性も大幅に向上する傾向となる。
該平滑化は、印画面を加圧する方法(加圧平滑化)、加熱する方法(加熱平滑化)、又は加熱・加圧する方法(加熱・加圧平滑化)等が挙げられるが、加熱・加圧平滑化が重合反応を開始するための加熱をも兼ねる点で好ましい。また、加熱して平滑化した場合は、加熱後、記録媒体を必要に応じ適宜冷却する。
【0173】
加圧平滑化に用いる加圧手段としては、1対のロールからなる加圧ロールの圧接部(ニップ部)に、印画後の記録媒体を通す方法が挙げられる。前記加圧ロールとしては、ステンレス鋼製等の金属ロール表面を硬質クロムめっきなどにより鏡面加工したものが用いられる。加圧条件は、16〜100Kg/cm程度である。
【0174】
また、加熱平滑化に用いる加熱手段としては印画後の記録媒体の印画面上方から赤外線ランプ、面状ヒータ等の輻射熱で加熱する方法が挙げられる。記録媒体表面における加熱温度は、多孔質層のTgにより適宜選択されるが、一般的に80〜160℃程度である。
【0175】
更に、加熱・加圧平滑化に用いる加熱・加圧手段としては、少なくとも1つのロール内部に加熱手段を設けた一対の加熱ロールのニップ部に印画後の記録媒体を通す方法や、加圧ロールと加熱ベルトのニップ部に印画後の記録媒体を通す方法などが挙げられ、中でも、加熱ロールを用いた平滑化が好ましい。
【0176】
前記一対の加熱ロールとしてはアルミ製又はステンレス鋼製等の金属ロール表面に、シリコーン樹脂(ゴム)やフッ素樹脂(ゴム)等の離型層を設けたものが用いられる。また、離型層の下に適宜弾性体層を設けることができる。また、ロールの中に設ける加熱手段としては、ハロゲンランプ、電熱方式、誘電加熱方式等、公知の加熱手段を採用可能である。
加熱・加圧処理と同時に光照射を行い、光重合と熱重合を同時に進行させる方法は好ましい。この方法は、例えば加熱・加圧処理を行う場合の印字面側に用いるロール、ベルトまたはプレートをガラス、石英等を用いて透明にし、ハロゲンランプ等を用いて加熱と光照射を同時に行う方法である。
前記1対の加熱ロールによる加熱・加圧平滑化における記録媒体表面における加熱温度は、多孔質層のTgにより適宜選択されるが、一般的に80〜160℃程度である。また、加圧条件は、1〜30Kg/cm程度である。
【0177】
加熱・加圧平滑化に用いる加熱ベルトは、複数のロール及び該ロール間に張架したベルトを有し、前記ロールの1つの内部に加熱手段が設けられる。そして、前記加熱手段が設けられたロールにニップ部を形成する加圧ロールが対向して設けられる。また加圧ロール内にも加熱手段を設けてもよい。ロールの中に設ける加熱手段としては、ハロゲンランプ、電熱方式、誘電加熱方式等、公知の加熱手段を採用可能である。
対向する1対のロールは、アルミ製又はステンレス鋼製等の金属ロール表面に、シリコーン樹脂(ゴム)やフッ素樹脂(ゴム)等の離型層を設けたものが用いられる。また、前記ベルトは、耐熱性及び機械的強度を考慮して、ニッケル、アルミニウム、ステンレス等の金属シートや、PET、PBT、ポリエステル、ポリイミド、ポリイミドアミド等の樹脂フィルムの上に、シリコーン系ゴム、フッ素系ゴム、シリコーン−フッ素系ゴムなどの耐熱性及び離型性に優れたゴムを含む離型層を形成したものを用いることができる。
【0178】
加熱ベルト及び加圧ロールを用いる加圧平滑化の場合、記録媒体表面における加熱温度は、多孔質層のTgにより適宜選択されるが、一般的に80〜160℃程度である。また、加圧条件は1〜30Kg/cm程度である。
また、加熱後、加熱ベルトを記録媒体の表面から剥離する際、剥離前に加熱ベルトを冷却してから剥離すると、剥離面がより平滑となり好ましい。
【0179】
図1に加熱・加圧平滑化に用いる加熱ロールの一例を示す。図1中、10及び20はロールであり、12及び22は金属ロール、14及び24は離型層である。また、ロール10の内部には、加熱手段16として例えばハロゲンランプが設けられている。30は印画された記録媒体であり、1対のロールのニップ部を通過することにより印画面が平滑化される。
図2は加熱・加圧平滑化に用いる他の手段を示すもので、40は加熱ベルトを示し、42はベルト、44は加熱ロール、45は金属ロール、46は離型層、48はハロゲンランプ等の加熱手段、49は支持ロールをそれぞれ示す。また、50は加熱ロール44とニップ部を形成する加圧ロールであり、52は金属ロール、54は離型層である。
【0180】
以下、前記記録インクについて詳細に説明する。
<モノマーインク>
本発明の記録方法に用いるモノマーインクは重合性モノマーを含有するが、特に限定されない。該インク中に着色剤を含有することが好ましい。
【0181】
(重合性モノマー)
本発明で使用できる重合性モノマーとしては、紫外線照射により、光重合開始剤から生じるラジカル種またはカチオン種等により、付加重合又は開環重合が開始され、重合体を生じるものが好ましく使用される。付加重合の重合様式として、ラジカル、カチオン、アニオン、メタセシス、配位重合が挙げられる。また、開環重合の重合様式として、カチオン、アニオン、ラジカル、メタセシス、配位重合が挙げられる。
本発明の重合様式としては、ラジカル重合が好ましく用いられるが、他の重合様式によって硬化する重合性モノマーと併用することもできる。重合性モノマーとして、特にラジカル重合様式により付加重合する化合物を好ましく用いることができる。
【0182】
付加重合性モノマーとしては、少なくとも1個のエチレン性不飽和二重結合を有する化合物が例示できる。付加重合性モノマーとして、末端エチレン性不飽和結合を少なくとも1個、好ましくは2個以上有する化合物が好ましく使用できる。このような末端エチレン性不飽和化合物群は当該産業分野において広く知られるものである。本発明においてはモノマーインクをインクジェットノズルから安定に吐出できる限り、特に限定無く使用することができる。
エチレン性不飽和重合性モノマーは、単官能の重合性モノマー及び多官能の重合性モノマー、(すなわち2官能、3官能及び4〜6官能)、またはそれらの混合物の化学的形態をもつものが挙げられる。単官能の重合性モノマーとしては、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸など)や、そのエステル類、アミド類が挙げられる。多官能の重合性モノマーとしては、不飽和カルボン酸と脂肪族の多価アルコール化合物とのエステル、不飽和カルボン酸と脂肪族の多価アミン化合物とのアミド類が用いられる。
【0183】
また、ヒドロキシル基や、アミノ基、メルカプト基等の求核性置換基を有する不飽和カルボン酸エステルまたはアミド類と単官能もしくは多官能イソシアネート類、エポキシ類との付加反応物、単官能もしくは、多官能のカルボン酸との脱水縮合反応物等も使用できる。また、イソシアネート基やエポキシ基等の親電子性置換基を有する不飽和カルボン酸エステルまたはアミド類と、単官能もしくは多官能のアルコール類、アミン類及がチオール類との付加反応物、さらに、ハロゲン基やトシルオキシ基等の脱離性置換基を有する不飽和カルボン酸エステルまたはアミド類と、単官能もしくは多官能のアルコール類、アミン類及びチオール類との置換反応物も使用できる。
【0184】
不飽和カルボン酸と脂肪族多価アルコール化合物とのエステルであるラジカル重合性モノマーの具体例としては、(メタ)アクリル酸エステルが代表的であり、三官能以上の(メタ)アクリレートの少なくとも1種、並びに単官能及び/又は二官能(メタ)アクリレートの少なくとも1種を使用することが好ましい。
【0185】
単官能の(メタ)アクリレートの具体例として、トリルオキシエチル(メタ)アクリレート、フェニルオキシエチル(メタ)アクリレート、シクロへキシル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、イノボルニル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレートを挙げることができる。
【0186】
二官能の(メタ)アクリレートの具体例として、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレートを挙げることができる。
【0187】
三官能の(メタ)アクリレートの具体例として、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンのアルキレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ((メタ)アクリロイルオキシプロピル)エーテル、イソシアヌル酸アルキレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリ((メタ)アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ヒドロキシピバルアルデヒド変性ジメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ソルビトールトリ(メタ)アクリレートを挙げることができる。
【0188】
四官能の(メタ)アクリレートの具体例として、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ソルビトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、プロピオン酸ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートを挙げることができる。
【0189】
五官能の(メタ)アクリレートの具体例として、ソルビトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートを挙げることができる。
【0190】
六官能の(メタ)アクリレートの具体例として、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ソルビトールヘキサ(メタ)アクリレート、フォスファゼンのアルキレンオキサイド変性ヘキサ(メタ)アクリレート、カプトラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートを挙げることができる。
【0191】
ここで上記の(メタ)アクリレートの表記はメタクリレート及びアクリレートの両方の構造をとり得ることを表す省略的表記である。
【0192】
種々の不飽和カルボン酸と脂肪族アルコール化合物とのエステルであるラジカル重合性モノマーが市販されており、PEG600ジアクリレート(EB11:ダイセル・ユーシービー製)、KAYARAD DPCA−60(力プロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート:日本化薬(株)製)、SR−494(エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート:サートマー社製)が例示できる。
【0193】
本発明において、重合性モノマーが官能性(メタ)アクリレートを少なくとも1種含むことが好ましい。また、重合性モノマーが(a)少なくとも1種の三官能以上の(メタ)アクリレート、並びに(b)少なくとも1種の単官能及び/又は二官能(メタ)アクリレートを含むことが好ましい。また、(a)三官能以上の(メタ)アクリレートが、四官能、五官能または六官能の(メタ)アクリレートであることがさらに好ましい。
【0194】
(メタ)アクリレートの他に、イタコン酸エステル、クロトン酸エステル、イソクロトン酸エステル、マレイン酸エステル等も重合性モノマーとして使用することができる。
イタコン酸エステルとしては、エチレングリコールジイタコネート、プロピレングリコールジイタコネート、1,3−ブタンジオールジイタコネート、1,4−ブタンジオールジイタコネート、テトラメチレングリコールジイタコネート、ペンタエリスリトールジイタコネート、ソルビトールテトライタコネート等がある。
【0195】
クロトン酸エステルとしては、エチレングリコールジクロトネート、テトラメチレングリコールジクロトネート、ペンタエリスリトールジクロトネート、ソルビトールテトラジクロトネート等がある。
【0196】
イソクロトン酸エステルとしては、エチレングリコールジイソクロトネート、ペンタエリスリトールジイソクロトネート、ソルビトールテトライソクロトネート等がある。
【0197】
マレイン酸エステルとしては、エチレングリコールジマレート、トリエチレングリコールジマレート、ペンタエリスリトールジマレート、ソルビトールテトラマレート等がある。
【0198】
その他のエステルの例として、例えば、特公昭46−27926号公報、特公昭51−47334号公報、特開昭57−196231号公報記載の脂肪族アルコール系エステル類や、特開昭59−5240号公報、特開昭59−5241号公報、特開平2−226149号公報記載の芳香族系骨格を有するもの、特開平1−165613号公報記載のアミノ基を含有するもの等も使用できる。
【0199】
また、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミン化合物とのアミドのモノマーの具体例としては、メチレンビス−アクリルアミド、メチレンビス−メタクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビス−アクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビス−メタクリルアミド、ジエチレントリアミントリスアクリルアミド、キシリレンビスアクリルアミド、キシリレンビスメタクリルアミド等がある。
【0200】
その他の好ましいアミド系モノマーの例としては、特公昭54−21726号公報記載のシクロへキシレン構造を有するものを挙げることができる。
【0201】
また、イノシアネートと水酸基の付加反応を用いて製造されるウレタン系付加重合性モノマーも好適であり、そのような具体例としては、例えば、特公昭48−41708号公報中に記載されている1分子に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物に、下記式(5)で示される水酸基を含有するビニルモノマーを付加させた1分子中に2個以上の重合性ビニル基を含有するビニルウレタン化合物等が挙げられる。
式(5)
CH2=C(R1)COOCH2CH(R2)OH
(ただし、Rl及びR2は、HまたはCH3を示す。)
【0202】
本発明において、エポキシ基及び/又はオキセタン基等の環状エーテル基を分子内に1つ以上有するカチオン開環重合性の化合物を紫外線カチオン重合開始剤と共に紫外線硬化性の結合剤として使用することができる。
【0203】
以下、本発明に好ましく用いられるカチオン重合性モノマー全般について説明する。カチオン重合性モノマーとしては、開環重合性基を含む硬化性化合物が挙げられ、この中でもヘテロ環状基含有硬化性化合物が好ましい。このような硬化性化合物としてエポキシ誘導体、オキセタン誘導体、テトラヒドロフラン誘導体、環状ラクトン誘導体、環状カーボネート誘導体、オキサゾリン誘導体などの環状イミノエーテル類、ビニルエーテル類などが挙げられ、特にエポキシ誘導体及びオキセタン誘導体、ビニルエーテル類が好ましい。
好ましいエポキシ誘導体の例としては、例えば単官能グリシジルエーテル類、多官能グリシジルエーテル類、単官能脂環式エポキシ類、多官能脂環式エポキシ類などに大別される。
【0204】
単官能及び多官能グリシジルエーテル類の具体的な化合物を例示すると、ジグリシジルエーテル類(例えばエチレングリコールジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル)、3官能以上のグリシジルエーテル類(トリメチロールエタントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、グリセロールトリグリシジルエーテル、トリグリシジルトリスヒドロキシエチルイソシアヌレートなど)、4官能以上のグリシジルエーテル類(ソルビトールテトラグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシルエーテル、クレゾールノボラック樹脂のポリグリシジルエーテル、フェノールノボラック樹脂のポリグリシジルエーテルなど)、脂環式エポキシ類(セロキサイド2021P、セロキサイド2081、エポリードGT−301、エポリードGT−401(以上、ダイセル化学工業(株)製))、EHPE(ダイセル化学工業(株)製)、フェノールノボラック樹脂のポリシクロへキシルエポキシメチルエーテルなど)、オキセタン類(OX―SQ、PNOX−1009(以上、東亞合成(株)製)など)などが挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0205】
本発明には脂環式エポキシ誘導体を好ましく使用できる。「脂環式エポキシ基」とは、シクロペンテン基、シクロへキセン基等のシクロアルケン環の二重結合を過酸化水素、過酸等の適当な酸化剤でエポキシ化した部分構造を言う。
脂環式エポキシ化合物としては、シクロへキセンオキシド基又はシクロペンテンオキシド基を1分子内に2個以上有する多官能脂環式エポキシ類が好ましい。単官能又は多官能の脂環式エポキシ化合物の具体例としては、4−ビニルシクロへキセンジオキサイド、(3,4−エポキシシクロへキシル)メチル−3,4−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、ジ(3,4−エポキシシクロへキシル)アジペート、ジ(3,4−エポキシシクロへキシルメチル)アジペート、ビス(2,3−エポキシシクロペンチル)エーテル、ジ(2,3−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、ジシクロペンタジエンジオキサイドが挙げられる。
脂環式エポキシ化合物は1種類を使用しても、2種以上の混合物を使用しても良い。
種々の脂環式エポキシ化合物が市販されており、ユニオンカーバイド日本(株)、ダイセル化学工業(株)等から入手できる。
【0206】
分子内に脂環式構造を有しない通常のエポキシ基を有するグリシジル化合物を単独で使用したり、上記の脂環式エポキシ化合物と併用することもできる。
このような通常のグリシジル化合物としては、グリシジルエーテル化合物やグリシジルエステル化合物を挙げることができるが、グリジルエーテル化合物を併用することが好ましい。
グリシジルエーテル化合物の具体例を挙げると、1,3−ビス(2,3−エポキシプロピロキシ)ベンゼン、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポシキ樹脂、フェノール・ノボラック型エポキシ樹脂、クレゾール・ノボラック型エポキシ樹脂、トリスフェノールメタン型エポキシ樹脂等の芳香族グリシジルエーテル化合物、1,4−ブタンジオールグリシジルエーテル、グリセロールトリグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリトリグリシジルエーテル等の脂肪族グリシジルエーテル化合物が挙げられる。グリシジルエステルとしては、リノレン酸ダイマーのグリシジルエステルを挙げることができる。
グリシジルエーテル類は油化シェルエポキシ(株)等から市販品を入手することができる。
【0207】
本発明において4員環の環状エーテルであるオキセタニル基を有する化合物(以下、単に「オキセタン化合物」ともいう。)を使用することができる。オキセタニル基含有化合物は、1分子中にオキセタニル基を1個以上有する化合物である。このオキセタニル基含有化合物は、1分子中に1個のオキセタニル基を有する単官能オキセタン化合物と、1分子中に2個以上のオキセタニル基を有する多官能オキセタン化合物に大別される。
【0208】
単官能オキセタン化合物としては、以下の式(6)で表される化合物が好ましい。
【0209】
【化21】

【0210】
式(6)中、R1はメチル基又はエチル基を示す。R2は、炭素数6ないし12の炭化水素基を示す。
2の炭化水素基としては、フェニル基やベンジル基も採りうるが、炭素数6ないし8のアルキル基が好ましく、2−エチルヘキシル基等の分岐アルキル基が特に好ましい。R2がフェニル基であるオキセタン化合物の例は、特開平11−140279号公報に記載されている。R2が置換されていても良い、ベンジル基であるオキセタン化合物の例は、特開平6−16804号公報に記載されている。
【0211】
本発明においては、多官能オキセタン化合物が使用できるが、好ましい化合物群は、下記の式(7)で表される。
【0212】
【化22】

【0213】
式(7)中、mは2、3又は4の自然数を示し、Zは酸素原子、硫黄原子、又はセレン原子を表す。R3は水素原子、フッ素原子、炭素数が1ないし6の直鎖もしくは分岐状のアルキル基、炭素数が1ないし6のフルオロアルキル、アリル基、フェニル基又はフリル基である。R4は、m価の連結基であり、炭素数が1ないし20の基であることが好ましく、1個以上の酸素原子、硫黄原子を含んでいても良い。
Zは酸素原子が好ましく、R3はエチル基が好ましく、mは2が好ましく、R4としては、炭素数が1ないし16の線形又は分岐アルキレン基、線形又は分岐ポリ(アルキレンオキシ)基が好ましく、R3、R4、Z及びmに対する好ましい例の内から任意の2つ以上を組み合わせた化合物は更に好ましい。
【0214】
本発明の重合性モノマー(紫外線硬化性結合剤)として、ラジカル重合性のエチレン性不飽和化合物とカチオン重合性の環状エーテル類(エポキシ誘導体及び/又はオキセタン誘導体)とを併用することも好ましい。相互貫入ポリマー網(IPN)の構造をとるためにバランスの取れた物性を有する結合体が得られる利点がある。この場合には、光重合開始剤として光ラジカル重合開始剤と光カチオン重合開始剤(オニウム塩等)とを併用することが好ましい。
【0215】
重合性モノマー(紫外線硬化性結合剤)の硬化後の揮発成分は5重量%以下であることが好ましい。このために結合剤に有機溶媒を使用しない無溶媒処方とすることが好ましい。
硬化後の揮発成分を低減するために、残存する未硬化の重合性モノマーを紫外線照射または加熱により後重合させることができる。
【0216】
本発明において、重合性モノマーの重合を進行させるための放射線としてはガンマ線、アルファ線、X線、紫外線、可視光線、電子線などを使用することができる。これらのうち、紫外線、可視光線を用いることがコスト及び安全性の点から好ましく、紫外線を用いることが更に好ましい。
【0217】
重合性モノマーとしては、粘度調整の目的で添加することもできる。粘度調整用重合性モノマーとしては、低粘度かつ重合性モノマーと共重合可能な化合物が用いられる。例えば、アクリレート、メタアクリレート、アクリルアミド類が挙げられる。具体的には、トリルオキシエチル(メタ)アクリレート、フェニルオキシエチル(メタ)アクリレート、シクロへキシル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジビニルべンゼン、メチレンビスアクリルアミド、1,6−ジ(メタ)アクリロイルオキシヘキサン等、好ましくは、トリルオキシエチル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ジ(メタ)アクリロイルオキシヘキサン等が挙げられる。
開環重合性の環状エーテル類においても、2官能以上の環状エーテル類は、一般に反応性が高いが粘度が高い。低粘度に調整するために、単官能の環状エーテル類を併用することができる。
【0218】
(着色剤)
本発明における重合性モノマーインク(以下、インク組成物ともいう。)に使用できる着色剤としては、染料と顔料とに大別され、染料を好ましく使用することができる。染料は油溶性染料であることがさらに好ましい。油溶性染料については、分散インクの項で詳細に説明する。
【0219】
−染料−
染料としては、減色法の3原色であるイエロー(Y)、マゼンタ(M)及びシアン(C)の染料を使用することにより広い範囲の色相を異なる彩度で再現することができる。本発明において、カラー写真のカラープリントに利用される染料を使用することが好ましい。以下に詳しく述べる。
【0220】
イエロー染料としては、米国特許3,933,501号、同4,022,620号、同4,326,024号、同4,401,752号、同4,248,961号、特公昭58−10739号、英国特許1,425,020号、同1,476,760号、米国特許3,973,968号、同4,314,023号、同4,511,649号、欧州特許249,473A号、同502,424A号の式(I),(II)で表されるカプラー、同513,496A号の式(1),(2)で表されるカプラー(特に18頁のY−28)、同568,037A号のクレーム1の式(I)で表されるカプラー、米国特許5,066,576号のカラム1の45〜55行の一般式(I)で表されるカプラー、特開平4−274425号の段落0008の一般式(I)で表されるカプラー、欧州特許498,381A1号の40頁のクレーム1に記載のカプラー(特に18頁のD−35)、同447,969A1号の4頁の式(Y)で表されるカプラー(特に、Y−1(17頁),Y−54(41頁))、米国特許4,476,219号のカラム7の36〜58行の式(II)〜(IV)で表されるカプラー(特にII−17,19(カラム17),II−24(カラム19))から得られるケトイミン型染料が挙げられる。好ましくは、特開2001−294773号公報、特開2002−121414号公報、特開2002−105370号公報、特開2003−26974号公報、特開2003−73598号公報に記載の染料が挙げられ、なかでも特開2003−73598号公報に記載の一般式(Y−II)で表されるピラゾール合物がより好ましく用いられる。
以下に示すY−1をイエロー染料として好ましく用いることができる。
【0221】
【化23】

【0222】
マゼンタ染料としては、特開2001−181549号公報、特開2002−121414号公報、特開2002−105370号公報、特開2003−12981号公報、特開2003−26974号公報に記載の染料が挙げられる。
中でも特開2002−121414号公報に記載の一般式(III)で表されるピラゾロトリアゾールアゾメチン化合物が好ましく用いられる。
以下に示すM−1を好ましく用いることができる。
【0223】
【化24】

【0224】
シアン染料としては、特開2002−121414号公報、特開2002−105370号公報、特開2003−3109号公報、特開2003−26974号公報に記載の染料が挙げられる。
特開2002−121414号公報に記載の一般式(IV−1a)で表されるピロロトリアゾールアゾメチン化合物ならびに一般式(C−II−1)及び(C−II−2)で表されるフタロシアニン化合物が好ましく用いられる。
以下に示すC−1をシアン染料として好ましく用いることができる。
【0225】
【化25】

【0226】
必要に応じて、CMY3原色に黒(ブラック)染料を併用しても良い。黒染料はCMY3染料を混合して作ることができる。
【0227】
上記以外の染料としては、印刷の技術分野(例えば印刷インキ、感熱インクジェット記録、静電写真記録等のコピー用色材または色校正版など)で一般に用いられるものを使用することができる。
例えば、有機合成化学協会編「染料便覧」丸善株式会社(1970年刊)、安部田貞治、今日邦彦「解説 染料化学」(株)色染社(1988年刊)、大河原信編「色素ハンドブック」(株)講談社(1986年刊)、インクジェットプリンタ用ケミカルス−材料の開発動向・展望調査−」(株)シーエムシー(1997年刊)、前記の甘利武司「インクジェットプリンター技術と材料」等に記載の染料類が挙げられる。
【0228】
−酸化電位−
本発明における前記モノマーインクに用いられる染料としては、酸化電位が1.0V(vs SCE)よりも貴である油溶性染料を用いることが好ましい。酸化電位は貴であるほど好ましく、酸化電位が1.1V(vs SCE)よりも貴であるものがより好ましく、1.2V(vs SCE)より貴であるものが最も好ましい。
【0229】
酸化電位の値(Eox)は当業者が容易に測定することができる。この方法に関しては、例えばP.Delahay著“New Instrumental Methods in Electrochemistry”(1954年,Interscience Publishers社刊)やA.J.Bard他著“Electrochemical Methods”(1980年、John Wiley&Sons社刊)、藤嶋昭他著“電気化学測定法”(1984年 技報堂出版社刊)に記載されている。
【0230】
具体的に酸化電位は、過塩素酸ナトリウムや過塩素酸テトラプロピルアンモニウムといった支持電解質を含むジメチルホルムアミドやアセトニトリルのような溶媒中に、被験試料を1×10-4〜1×10-6モル/リットル溶解して、サイクリックボルタンメトリーや直流ポーラログラフィー装置により、作用極として炭素(GC)を、対極として回転白金電極を用いて酸化側(貴側)に掃引したときの酸化波を直線で近似して、この直線と残余電流・電位直線との交点と、直線と飽和電流直線との交点(又はピーク電位値を通る縦軸に平行な直線との交点)とで作られる線分の中間電位値をSCE(飽和カロメル電極)に対する値として測定する。この値は、液間電位差や試料溶液の液抵抗などの影響で、数10ミルボルト程度偏位することがあるが、標準試料(例えばハイドロキノン)を入れて電位の再現性を保証することができる。また、用いる支持電解質や溶媒は、被検試料の酸化電位や溶解性により適当なものを選ぶことができる。用いることができる支持電解質や溶媒については藤嶋昭他著“電気化学測定法”(1984年 技報堂出版社刊)101〜118ページに記載がある。
なお、上記の測定溶媒とフタロシアニン化合物試料の濃度範囲では、非会合状態の酸化電位が測定される。
【0231】
Eoxの値は試料から電極への電子の移りやすさを表わし、その値が大きい(酸化電位が貴である)ほど試料から電極への電子の移りにくい、言い換えれば、酸化されにくいことを表す。
酸化電位が低い染料を使用すると、染料による重合阻害が大きく、硬化性が低下する。酸化電位が貴である染料を使用した場合には、重合阻害がほとんど無い。
【0232】
−顔料−
顔料としては、特に限定されるものではなく、一般に市販されているすべての有機顔料及び無機顔料、または顔料を分散媒として不溶性の樹脂等に分散させたもの、あるいは顔料表面に樹脂をグラフト化したもの等を用いることができる。また、樹脂粒子を染料で染色したもの等も用いる事ができる。
【0233】
白色顔料の具体例としては、塩基性炭酸鉛(2PbCO3Pb(OH)2、いわゆる、シルバーホワイト)、酸化亜鉛(ZnO、いわゆる、ジンクホワイト)、酸化チタン(TiO2、いわゆる、チタンホワイト)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3、いわゆる、チタンストロンチウムホワイト)などが利用可能である。
【0234】
ここで、酸化チタンは他の白色顔料と比べて比重が小さく、屈折率が大きく、化学的、物理的にも安定であるため、顔料としての隠蔽力や着色力が大きく、さらに、酸やアルカリ、その他の環境に対する耐久性にも優れている。したがって、白色顔料としては酸化チタンを利用することが好ましい。もちろん、粉末材料や結合剤成分の種類に応じて他の白色顔料(列挙した白色顔料以外であってもよい。)を使用してもよい。
【0235】
本発明においてCMY染料に替えてCMY顔料を使用することもできる。
有機顔料及び無機顔料の具体例としては、例えば、イエロー色を呈するものとして、C.I.ピグメントイエロー1(ファストイエローG等),C.I.ピグメントイエロー74の如きモノアゾ顔料、C.I.ピグメントイエロー12(ジスアジイエローAAA等)、C.I.ピグメントイエロー17の如きジスアゾ顔料、C.I.ピグメントイエロー180の如き非ベンジジン系のアゾ顔料、C.I.ピグメントイエロー100(タートラジンイエローレーキ等)の如きアゾレーキ顔料、C.I.ピグメントイエロー95(縮合アゾイエローGR等)の如き縮合アゾ顔料、C.I.ピグメントイエロー115(キノリンイエローレーキ等)の如き酸性染料レーキ顔料、C.I.ピグメントイエロー18(チオフラビンレーキ等)の如き塩基性染料レーキ顔料、フラバントロンイエロー(Y−24)の如きアントラキノン系顔料、イソインドリノンイエロー3RLT(Y−110)の如きイソインドリノン顔料、キノフタロンイエロー(Y−138)の如きキノフタロン顔料、イソインドリンイエロー(Y−139)の如きイソインドリン顔料、C.I.ピグメントイエロー153(ニッケルニトロソイエロー等)の如きニトロソ顔料、C.I.ピグメントイエロー117(銅アゾメチンイエロー等)の如き金属錯塩アゾメチン顔料等が挙げられる。
【0236】
マゼンタ色を呈するものとして、C.I.ピグメントレッド3(トルイジンレッド等)の如きモノアゾ系顔料、C.I.ピグメントレッド38(ピラゾロンレッドB等)の如きジスアゾ顔料、C.I.ピグメントレッド53:1(レーキレッドC等)やC.I.ピグメントレッド57:1(ブリリアントカーミン6B)の如きアゾレーキ顔料、C.I.ピグメントレッド144(縮合アゾレッドBR等)の如き縮合アゾ顔料、C.I.ピグメントレッド174(フロキシンBレーキ等)の如き酸性染料レーキ顔料、C.I.ピグメントレッド81(ローダミン6G’レーキ等)の如き塩基性染料レーキ顔料、C.I.ピグメントレッド177(ジアントラキノニルレッド等)の如きアントラキノン系顔料、C.I.ピグメントレッド88(チオインジゴボルドー等)の如きチオインジゴ顔料、C.I.ピグメントレッド194(ペリノンレッド等)の如きペリノン顔料、C.I.ピグメントレッド149(ぺリレンスカーレット等)の如きペリレン顔料、C.I.ピグメントレッド122(キナクリドンマゼンタ等)の如きキナクリドン顔料、C.I.ピグメントレッド180(イソインドリノンレッド2BLT等)の如きイソインドリノン顔料、C.I.ピグメントレッド83(マダーレーキ等)の如きアリザリンレーキ顔料等が挙げられる。
【0237】
シアン色を呈する顔料として、C.I.ピグメントブルー25(ジアニシジンブルー等)の如きジスアゾ系顔料、C.I.ピグメントブルー15(フタロシアニンブルー等)の如きフタロシアニン顔料、C.I.ピグメントブルー24(ピーコックブルーレーキ等)の如き酸性染料レーキ顔料、C.I.ピグメントブルー1(ビクロチアピュアブルーBOレーキ等)の如き塩基性染料レーキ顔料、C.I.ピグメントブルー60(インダントロンブルー等)の如きアントラキノン系顔料、C.I.ピグメントブルー18(アルカリブルーV−5:1)の如きアルカリブルー顔料等が挙げられる。
【0238】
黒色を呈する顔料として、カーボンブラック、チタンブラックが挙げられる。
【0239】
本発明の記録媒体は、分散インク、顔料インク、水溶性染料インク、溶剤系インクを用いて記録することも出来る。
【0240】
<分散インク>
分散インクは、少なくとも一種の油溶性染料と、少なくとも一種の油溶性ポリマーと、少なくとも一種の(水の溶解度が4g以下である)低沸点有機溶媒とを混合して油相(有機相)を調製し、得られた油相を水(水相)中に加え、ホモジナイザーを用いて乳化分散させることにより得られる、油溶性ポリマー中に油溶性染料が内包された着色微粒子が分散されたインクである。
また、前記着色微粒子の分散液に、末端に疎水性基をもつ水溶性化合物(ポリマーを含む)を添加することにより、着色微粒子(分散滴)の凝集を効果的に抑制し、均一な分散状態を安定に保持することができる。
前記のごとき分散インクは特願2003−24530号明細書に詳細に記載されており、該明細書に記載の分散インクを本発明の記録方法に用いることができる。
【0241】
前記油溶性染料とは、水に実質的に不溶な色素を意味し、具体的には25℃での水への溶解度(水100gに溶解できる色素の質量)が1g以下であるものを指す。この溶解度の好ましい範囲は0.5g以下であり、より好ましくは0.1g以下である。油溶性染料としては、融点が200℃以下のものが好ましく、150℃以下のものがより好ましく、100℃以下のものが特に好ましい。油溶性染料の融点が低いと、該染料の結晶析出が抑制され、インクジェット記録インクの分散安定性、及び保存経時での保存安定性を向上させることができる。
例えば、アントラキノン系、ナフトキノン系、スチリル系、インドアニリン系、アゾ系、ニトロ系、クマリン系、メチン系、ポルフィリン系、アザポルフィリン系、フタロシアニン系等の染料が挙げられる。なお、フルカラー印刷用には、通常イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)の三原色に黒(K)を加えた、少なくとも4色が必要となる。これらの4色の色素の具体例及びインク中での含有量は前記明細書の段落0030〜0213に記載のものが適用できる。
【0242】
前記油溶性ポリマーはポリエステルや付加重合体であり、その具体例及び油溶性染料に対する添加量は、前記明細書の段落0217〜0239に記載のものを適用しうる。
【0243】
前記低沸点有機溶剤は、油溶性ポリマー及び油溶性染料の溶剤として添加し、乳化分散物の分散粒子径を微小化するために添加される。前記低沸点有機溶媒は乳化分散後減圧加熱又は限外濾過等により除去するのが好ましい。前記低沸点有機溶媒としては水への溶解度が25℃で4g以下、好ましくは3g以下、より好ましくは2g以下、特に1g以下が好ましい。沸点は100℃以下、好ましくは80℃以下、特に70℃以下が好ましい。具体例としては、前記明細書段落0295〜0296に記載のものが挙げられる。
また、油溶性ポリマーのガラス転移温度等を調節したり分散安定性等を向上させるために高沸点有機溶媒を添加することもできる。
【0244】
前記高沸点有機溶媒は沸点が200℃以上で、融点が80℃以下の有機溶媒であり、特に、25℃における水の溶解度が4g以下であるものが好ましい。該水の溶解度(25℃)が4gを越えると、インク組成物を構成する着色微粒子において、経時での粒子径の粗大化や凝集等が起こり易くなり、インクの吐出性に重大な悪作用を及ぼすことがある。該水の溶解度としては、4g以下が好ましく、3g以下がより好ましく、2g以下が更に好ましく、特に1g以下が好ましい。高沸点有機溶媒の具体例及び及びその添加量は前記明細書の段落0260〜0293に記載のものを適用しうる。
【0245】
また、前記の末端に疎水性基を有する水溶性ポリマーとは、疎水性基又は疎水性重合体がヘテロ結合を有する2価の連結基を介して水溶性ポリマーと連結されたポリマーを指す。
疎水性基とは脂肪族基、芳香族基、脂環式基等であり(具体的には前記明細書の段落0306〜0314に示されるものが挙げられる)、疎水性ポリマーとはポリスチレン及びその誘導体、ポリメタクリル酸エステル及びその誘導体、ポリアクリル酸エステル及びその誘導体、ポリ塩化ビニル等である。また、ヘテロ結合を有する2価の連結基とはエーテル結合、エステル結合、チオエーテル結合、チオエステル結合等をいう。また、水溶性ポリマーとはビニルアルコール系モノマー及び不飽和カルボン酸モノマー、不飽和スルホン酸モノマー又は不飽和ホスホン酸モノマーの少なくとも1種、更にこれらにビニルエステル系モノマー(酢酸ビニル、蟻酸ビニル、プロピオン酸ビニル等)を含むモノマーから重合して得られるポリマーや、−CH2−C(R)(OH)−CH2−O−(Rは水素原子又は炭素数1〜10のアルキル基)を繰り返し単位として含むポリマー等が挙げられる。
末端に疎水性基を有する水溶性ポリマーの具体例及びそのインク中の含有量は前記明細書の段落0329〜0332に記載のものを適用しうる。
前記成分の他に、油相を調製する際、他の水溶性ポリマー(前記明細書段落0336に記載のもの)、界面活性剤(前記明細書段落0337に記載のもの)を適宜使用できる。
【0246】
前記分散インクの平均粒径は0.1μm以下、特に0.01〜0.1μmであることが好ましい。
【0247】
<顔料インク>
顔料インクは、水不溶性の有機顔料を界面活性剤や分散ポリマーを含む水性媒体に添加後、硬質ビーズを用いてサンドミル、ボールミルなどの分散機によって微細化して調製される。この顔料インクにおいて、分散インクの説明の箇所で述べた、末端に疎水性基を有する水溶性ポリマーを顔料と共存させることにより、顔料を、凝集を起こすことなく均一かつ安定に水系媒体に分散させることができる。このような顔料インクは特願2003−24004号明細書に詳細に開示されており、本発明の記録方法に用いられる。前記の末端に疎水性基を有する水溶性ポリマー及びインク中の含有量は前記明細書の段落0023〜0056に記載のものを、また、用いうる顔料及びインク中の含有量は同明細書段落0057及び0058に記載のものを適用しうる。
【0248】
<水溶性染料インク>
水溶性染料インクは、水溶性染料を水性媒体に溶解させたインクである。水溶性染料インクは透明性及び色濃度が高いという特徴を有する。また、水溶性染料は水中安定性が良好であるが、まれに保存中に徐々に析出することがあり、これがノズル中で起こると液詰まりを起こす。このため、前記で述べたと同様な、ヘテロ結合を有する2価の連結基を介して、疎水性基又は疎水性ポリマーと、繰り返し単位として−CH2−C(R)(OH)−CH2−O−(Rは水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基)を含むポリマーとが連結した水溶性ポリマーを水溶性染料インク中に添加すると、保存時に染料の析出が抑制される。したがって、ノズル部での液詰まりの発生を防ぎ、また液詰まりが発生してもその部分での洗浄(クリーニング)性に優れている。このような水溶性染料インクは、特願2003−100492号明細書に詳細に説明されており、用いうる水溶性染料及び水溶性染料のインク中における含有量については前記明細書段落0045〜0056に、前記疎水性基含有水溶性ポリマー及び該ポリマーのインクにおける含有量については同明細書段落0019〜0043に記載のものを適用しうる。
【0249】
<溶剤系インク>
溶剤系インクは、油溶性染料を有機溶媒に溶解させたものである。油溶性染料としては、前記分散インクの箇所で記載した油溶性染料を同様に用いることができる。また、有機溶媒としては、溶剤系インクが記載されている特開昭63−60784号公報の4頁右下欄下から5行ないし5頁右下欄5行中、同箇所の5頁左上欄2行〜同頁左下欄7行に記載の有機溶媒が使用しうる。
【実施例】
【0250】
以下に、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。なお、実施例中の「部」及び「%」は、特に断らない限り「質量部」及び「質量%」を表し、「平均分子量」及び「重合度」は、「重量平均分子量」及び「重量平均重合度」を表す。尚、以下の作業で、重合開始剤を含むサンプルの作業は全て黄色灯下で行った。
【0251】
〔実施例1〕
(支持体の作製)
LBKP100部からなる木材パルプをダブルディスクリファイナーによりカナディアンフリーネス300mlまで叩解し、エポキシ化ベヘン酸アミド0.5部、アニオンポリアクリルアミド1.0部、ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン0.1部、カチオンポリアクリルアミド0.5部を、いずれもパルプに対する絶乾質量比で添加し、長網抄紙機により秤量し170g/m2の原紙を抄造した。
上記原紙の表面サイズを調整するため、ポリビニルアルコール4%水溶液に蛍光増白剤(住友化学工業(株)製の「Whitex BB」)を0.04%添加し、これを絶乾質量換算で0.5g/m2となるように上記原紙に含浸させ、乾燥した後、更にキャレンダー処理を施して密度1.05g/mlに調整された基紙を得た。
【0252】
得られた基紙のワイヤー面(裏面)側にコロナ放電処理を行った後、溶融押出機を用いて高密度ポリエチレンを厚さ19μmとなるようにコーティングし、マット面からなる樹脂層を形成した(以下、樹脂層面を「裏面」と称する。)。この裏面側の樹脂層に更にコロナ放電処理を施し、その後、帯電防止剤として酸化アルミニウム(日産化学工業(株)製の「アルミナゾル100」)と二酸化ケイ素(日産化学工業(株)製の「スノーテックスO」)とを1:2の質量比で水に分散した分散液を、乾燥質量が0.2g/m2となるように塗布した。
【0253】
更に、樹脂層の設けられていない側のフェルト面(表面)側にコロナ放電処理を施した後、アナターゼ型二酸化チタン10%、微量の群青、及び蛍光増白剤0.01%(対ポリエチレン)を含有し、MFR(メルトフローレート)3.8の低密度ポリエチレンを、溶融押出機を用いて、厚み29μmとなるように押し出し、高光沢な熱可塑性樹脂層を基紙の表面側に形成し(以下、この高光沢面を「オモテ面」と称する。)、支持体とした。
【0254】
(インク受容層用塗布液の作製)
下記インク受容層塗布液A1組成を攪拌しながら、上から順次少しずつ添加して調製した。
−インク受容層塗布液A1組成−
ミューティクルPP2000TX(アクリルスチレン系ディスパージョン、固形分濃度;20%、三井化学製、平均粒径;0.5μm、貫通孔の径0.2μm) 100部
エマルゲン109P(ポリオキシエチレンラウリルエーテル) 1部
(花王(株)製、HLB値13.6、固形分濃度;10%水溶液)
ポリビニルアルコールPVA235(クラレ(株)、固形分濃度;7%) 14.3部
熱重合開始剤V−59(2,2’−アゾビス(2−メチルブチルニトリル)、和光純薬工業製、固形分濃度;3%メタノール溶液) 10部
イオン交換水 12.8部
【0255】
(ゲル化剤溶液の調製)
下記ゲル化剤溶液B1組成を攪拌しながら、上から順次少しずつ添加して調製した。
【0256】
−ゲル化剤溶液B1−
イオン交換水 317部
ほう酸 16.5部
炭酸アンモニウム 17.5部
炭酸ジルコニウムアンモニウム(ニューテックス(株)製の商品名「ジルコゾルAC7」、13%水溶液)(13%水溶液) 12.7部
ポリオキシエチレンラウリルエーテル(ノニオン系界面活性剤)
(エマルゲン109P(2%水溶液)、花王(株)製) 150部
【0257】
前記貫通孔の径は、前述の該粒子の走査型電子顕微鏡写真より計測した。
【0258】
(インクジェット用記録材料の作製)
上記支持体のオモテ面に上記インク受容層塗布液A1を、ホッパー型塗布機を用いて乾燥膜厚25g/m2の塗布量で塗布し、熱風乾燥機にて60℃2分間乾燥し、半乾きの状態で、ゲル化剤溶液B1をディップ塗布し、ウェット塗布量が20g/m2となるようにエヤーナイフで掻き落とし60℃で10分間乾燥させた。これにより、インクジェット用記録材料を作製した。
【0259】
〔実施例2〕
実施例1において、熱重合開始剤V−59の代わりにV−501(2,2−アゾビス(4−シアノ吉草酸);和光純薬工業製)を用いる以外は、実施例1と同様にしてインクジェット用記録材料を作製した。
【0260】
〔実施例3〕
(重合開始剤の乳化分散物の調製)
光重合開始剤(1−ヒドロキン−シクロヘキシル−フェニルケトン)1部をジブチルフタレート1部と酢酸エチル9部の混合溶液に溶解し、溶液I(有機相)を得た。一方、水15部にジ(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウム0.3部を加えて溶液II(水相)を得た。前記溶液II中に前記溶液Iを加えてホモジナイザーにて乳化分散した後、ポリビニルアルコールPVA105の10%水溶液を3部加えて撹拌し、減圧脱溶媒して酢酸エチルを除去して、重合開始剤濃度5%の分散物Dを得た。
実施例1において、熱重合開始剤V−59の3%メタノール溶液10部の代わりに前記分散物Dの2部を用いる以外は、実施例1と同様にしてインクジェット用記録材料を作製した。
【0261】
〔実施例4〕
実施例1において、熱重合開始剤V−59の代わりに光重合開始剤(4−ベンゾイルベンジル)スルフォン酸ナトリウム3重量%水溶液10部を用いる以外は、実施例1と同様にしてインクジェット用記録材料を作製した。
【0262】
〔実施例5〕
実施例1において、熱重合開始剤V−59の代わりに、V−501の3%メタノール溶液5部と光重合開始剤(4−ベンゾイルベンジル)スルフォン酸ナトリウム3重量%水溶液5部を用いる以外は、実施例1と同様にしてインクジェット用記録材料を作製した。
【0263】
〔実施例6〕
(インク受容層用塗布液A2の作製)
下記インク受容層塗布液A2組成を、攪拌しながら上から順次少しずつ添加して調製した。更に、NaOH(1M)にて液pHを7.8に調整して目的とするインク受容層用塗布液を調製した。
【0264】
−インク受容層受像用塗布液A2組成−
アニオン性微粒子(下記構造式A−1の35%分散液、pH6.8) 100部
カチオン性微粒子(下記構造式K−1の35%分散液、pH4.0) 10部
エマルゲン109P(ポリオキシエチレンラウリルエーテル) 1部
(花王(株)製、HLB値13.6、固形分濃度;10%水溶液)
ポリビニルアルコールPVA440(クラレ(株)、固形分濃度;7%)15部
熱重合開始剤V−501(2,2−アゾビス(4−シアノ吉草酸);和光純薬工業製)、
固形分濃度;3%メタノール溶液) 20部
イオン交換水 15部
【0265】
【化26】

【0266】
下記ゲル化剤溶液B2組成を攪拌しながら、上から順次少しずつ添加して調製した。
【0267】
−ゲル化剤溶液B2組成−
イオン交換水 303部
ほう酸 17部
炭酸アンモニウム 17部
炭酸ジルコニウム(13%) 13部
エマルゲン109P(2%) 150部
【0268】
(インクジェット用記録材料の作製)
上記支持体のオモテ面に上記インク受容層受像用塗布液A2を、ホッパー型塗布機を用いて乾燥膜厚35g/m2の塗布量で塗布し、熱風乾燥機にて60℃2分間乾燥し、半乾きの状態で、ゲル化剤溶液B2をディップ塗布し、ウェット塗布量が20g/m2となるようにエヤーナイフで掻き落とし60℃で10分間乾燥させた。これにより、インクジェット用記録材料を作製した。
【0269】
[比較例1]
実施例1において、重合開始剤を含有させない以外は、実施例1と同様にしてインクジェット用記録材料を作製した。
【0270】
(モノマーインクIの調製)
下記モノマーインクI組成を攪拌混合し、モノマーインクIを調製した。
−モノマーインクI組成−
重合性モノマー:ACMO 20部
N−エチルジエタノールアミン 0.3部
着色剤:M−1 0.8部
【0271】
(モノマーインクIIの調製)
下記モノマーインクII組成を攪拌混合し、モノマーインクIIを調製した。
−モノマーインクII組成−
重合性モノマー:HDDA 20部
p―tert―ブチルフェノール 0.3部
着色剤:M−1 0.8部
【0272】
(比較用モノマーインクIIIの調製)
下記比較用モノマーインクIII組成を攪拌混合し、比較用モノマーインクIIIを調製した。
−比較用モノマーインクIII組成−
重合性モノマー:HDDA 20部
p―tert―ブチルフェノール 0.3部
着色剤:M−1 0.8部
光重合開始剤:2,4,6−トリメチルベンゾイルエトキシフェニルフォスフィンオキサイド 0.6部
【0273】
(比較用インクIV:水溶性染料系インクの調整)
下記比較用インクIV組成を攪拌混合し、比較用インクIVを調製した。
−比較用インクIV組成−
着色剤:M−1 4部
ジエチレングリコール 9部
テトラエチレングルコールモノブチルエーテル 9部
グリセリン 7部
ジエタノールアミン 1部
水 70部
【0274】
【化27】

【0275】
[評価試験]
上記より得られた実施例1〜6、比較用1のインクジェット用記録材料、及び市販のインクジェット用写真用紙(セイコーエプソン社製)の各々のサンプルについて、以下の評価を行なった。試験結果は下記表1に示す。
【0276】
(1)平均細孔径(インク受容層の平均細孔径の測定)
インクジェット記録材料表面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真(引き伸ばし後の倍率1万〜10万倍)をスキャナに入力してデジタル化した後、コンピュータ画像処理を行い、抽出された各空隙部分の面積と等しい面積を有する円の直径の分布の平均径(数平均)を求めて、それぞれインク受容層の平均細孔径とした。
【0277】
(2)インク浸透性
従来のBristow法を改良した熊谷理工業(株)製の自動走査型吸液計KM500Winにより求めた。この装置による測定法については紙パ技協誌第48巻第6号88〜92ページに記載されている。この装置により、上記のインクのインクジェット記録材料へのインク転移量を測定し、この測定より得られる吸液曲線(液体転移量対接触時間)より傾きを求め、上記インク30ml/m2が浸透するに要する時間を計算して、インク浸透性の評価を行った。
【0278】
(印字処理)
上記により調製したモノマーインク及び比較用インクをインクジェットプリンターLPR5000(ソニー社製)のブラック用カートリッジに入れ、上記サンプルをにベタ印字をステップワイズに行なった(印字スピード、6秒/A4)。
【0279】
(平滑化処理)
次に、離型性を有するシリコーン系樹脂を塗布した100μmのポリイミドフィルムの離型剤塗布面と、上記インクジェット記録材料の印字面を重ね合わせて、インクジェット用記録材料表面が140℃となる温度にてヒートローラーを通して加熱加圧処理を行ない、冷却後フイルムを剥離した。このときのニップ圧は20kg/cm2であった。
上記平滑化処理後における光沢度、光学濃度、ノズル詰まり、及び画像滲みの測定を行なった。
【0280】
(3)印字面の光沢度
前記平滑化処理後で、印字したインクジェット記録材料の印字面の光沢度をJIS P−8142(紙及び板紙の60°鏡面光沢度試験方法、1993年)に記載の方法に従って測定し、評価を行った。
【0281】
(4)光学濃度
上記インクジェット記録材料の光学濃度をXrite938(Xrite(株)製)により測定した。
【0282】
(5)ノズル詰まり
ラインヘッド直下でDeepUVランプ(SP−7、ウシオ(株)製)を用いて100mJ/cm2のエネルギーになる条件で露光しながら、A4の印字を100枚行った後ノズルの様子を目視観察し、以下の三段階で評価した。
○;ノズル詰まりが全くない。
△;ノズルの一部が詰まり線状の印字ムラが発生。
×;半分以上のノズル詰まり、印字不能。
【0283】
(6)画像滲み
線画像を印画し、後処理(加熱処理または光照射後加熱処理)を行った後、25℃80%RHの雰囲気下に1週間放置して画像ににじみを観察し、以下の三段階で評価した。
○;滲みが全くない。
△;滲みが少しあり、線が太っている。
×;滲み大で、線が大きくぼやけている。
【0284】
【表1】

【0285】
【表2】

【0286】
表1の記録材料の評価結果から明らかな通り、本発明の記録材料を用いた実験No.1〜7はすべての項目において良好であるが、実験No.8〜11は、いずれかの項目が不良であることが分かる。
表2の記録方法の評価結果から明らかな通り、本発明の記録方法である実験No.1〜7はすべての項目において良好であるが、実験No.8〜13は、いずれかの項目が不良であることが分かる。特に、実験No.8、9のインク受容層に重合開始剤のない記録媒体を用いると、印字したモノマーインクの重合が起こらず、加熱処理時(光沢化処理時)に着色剤がフイルム側に転移するため、フイルムを汚し、同時に記録材料の光学濃度が低くなることが分かる。また、保存中に画像の滲みが起こりやすいこと分かる。
これらより、本発明の記録媒体及び重合開始剤を含まないモノマーインクを用いて印字する本発明の記録方法は、ノズルの目詰まりは起こらず、高光沢で、滲みのない、高画質の画像が得られることが分かる。また、インク浸透性も高いため、高速印画に対応できることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0287】
【図1】本発明の記録方法における平滑化処理に用いる加熱ロールの一例を示す図である。
【図2】本発明の記録方法における平滑化処理に用いる加熱ベルト及び加圧ロールの一例を示す図である。
【符号の説明】
【0288】
10、20 ロール
16、48 加熱手段
30 記録媒体
40 加熱ベルト
42 ベルト
44 加熱ロール
50 加圧ロール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上に、重合開始剤を含むインク受容層を有し、該インク受容層が有機微粒子を含む多孔質層であることを特徴とする記録媒体。
【請求項2】
前記重合開始剤が光重合開始剤及び/又は熱重合開始剤であることを特徴とする請求項1に記載の記録媒体。
【請求項3】
前記多孔質層の平均細孔径が、0.01〜10μmであることを特徴とする請求項1又は2に記載の記録媒体。
【請求項4】
前記インク受容層が熱可塑性であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の記録媒体。
【請求項5】
前記有機微粒子が貫通孔型粒子であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の記録媒体。
【請求項6】
前記有機微粒子がスチレン及び/又はアルリル系の粒子であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の記録媒体。
【請求項7】
前記有機微粒子がプラス荷電を有する有機微粒子とマイナス荷電を有する有機微粒子であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の記録媒体。
【請求項8】
前記プラス荷電を有する有機微粒子とマイナス荷電を有する有機微粒子の少なくとも一方が、弱荷電性であることを特徴とする請求項7に記載の記録媒体。
【請求項9】
インクジェット記録用であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の記録媒体。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の記録媒体に、重合開始剤を含有しないで重合性モノマーを含有するインクを用いて印字することを特徴とする記録方法。
【請求項11】
前記印字後の記録媒体を、更に加熱することを特徴とする請求項10に記載の記録方法。
【請求項12】
前記印字後の記録媒体を、更に光照射後加熱することを特徴とする請求項10に記載の記録方法。
【請求項13】
前記印字後の記録媒体を、更に光照射と同時に加熱することを特徴とする請求項10に記載の記録方法。
【請求項14】
前記加熱を加圧下で行うことを特徴とする請求項11〜13のいずれか1項に記載の記録方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−212983(P2006−212983A)
【公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−29561(P2005−29561)
【出願日】平成17年2月4日(2005.2.4)
【出願人】(000005201)富士写真フイルム株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】