説明

記録媒体

【課題】 白モヤの発生を抑制し、記録媒体の最表面についた傷の視認性を低下させ、かつ記録を行った際の斑模様の発生を抑制した記録媒体を提供すること
【解決手段】 支持体と、該支持体上にインク受容層を有する記録媒体であって、記録媒体の最表面のJIS B 0601:2001で規定される算術平均粗さRaが1.1μm以上2.5μm以下であり、記録媒体の最表面のJIS B 0601:2001で規定される粗さ曲線のスキューネスRskが0.1以下であることを特徴とする記録媒体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
支持体上にインク受容層を有する記録媒体の表面光沢度の調整方法として、記録媒体の表面粗さをコントロールする方法が知られている。特許文献1には、記録媒体表面の中心線平均粗さが0.8μm〜4.0μm、60°鏡面光沢度が10%〜30%である記録媒体が記載されている。特許文献2には、記録媒体表面の中心線平均粗さが0.4μm〜2.5μm、十点平均粗さが中心線平均粗さの5倍〜20倍である記録媒体が記載されている。これらの記録媒体は、記録媒体の表面粗さをコントロールすることにより、記録画像の光沢ムラや、表面光沢によるギラツキを抑制したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−355160号公報
【特許文献2】特開2001−347748号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
記録媒体に画像を記録後、記録媒体を記録面同士が接触するように保存していると、一方の画像の形状が他方の画像中に白く写ったような現象(白モヤ)が発生することがある。これは、接触した記録媒体の間で水分や水溶性溶剤等の移動が生じることによるものと考えられる。水分や水溶性溶剤等が移動した場合、これらが移動した部分と、移動していない若しくは殆ど移動していない部分との間に、水分や水溶性溶剤等の存在量差が生じる。このため、画像に白モヤが発生するものと考えられる。
【0005】
また、別の課題として、記録媒体同士が接触して擦れ合うことによって記録媒体の最表面に傷が発生し、この傷が視認されることで記録媒体の外観が損なわれるという課題がある。
【0006】
特許文献1、2に記載の記録媒体に関して鋭意検討した結果、記録媒体の表面粗さが小さい場合には、接触した場合の記録媒体同士の密着性が高く、白モヤが発生しやすい傾向があった。また、記録媒体の最表面の光沢度が高く、傷がはっきりと視認される傾向があった。
【0007】
一方、これらの課題を解決しようと、記録媒体の最表面の表面粗さを大きくした場合には、記録媒体の最表面の凹凸形状の凹部にインクが溜まり、凹凸形状に応じた斑模様が生じることがあった。この凹凸形状に応じた斑模様は、中心線平均粗さと十点平均粗さを制御するだけで抑制することは困難であった。
【0008】
従って、本発明は、白モヤの発生を抑制し、記録媒体の最表面の傷の視認性を低下させ、かつ記録を行った際の斑模様の発生を抑制した記録媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成する本発明は、支持体と、該支持体上にインク受容層を有する記録媒体であって、記録媒体の最表面のJIS B 0601:2001で規定される算術平均粗さRaが1.1μm以上2.5μm以下であり、記録媒体の最表面のJIS B 0601:2001で規定される粗さ曲線のスキューネスRskが0.1以下であることを特徴とする記録媒体である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、白モヤの発生を抑制し、記録媒体の最表面の傷の視認性を低下させ、かつ記録を行った際の斑模様の発生を抑制した記録媒体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に本発明をその好ましい実施形態に基づいて説明する。尚、本発明はこれらの記載に限定して解釈されるものではない。
【0012】
<記録媒体>
本発明の記録媒体は、支持体と、該支持体上にインク受容層を有する記録媒体である。本発明の記録媒体は、例えばフェルトペンにより記録を行う記録媒体や、インクジェット記録方法によって記録を行う記録媒体として用いることができる。インク受容層は、支持体の片面に設けられていても、両面に設けられていてもよい。また、支持体上に1層設けられていても、2層以上設けられていてもよい。
【0013】
本発明の記録媒体は、記録媒体の最表面のJIS B 0601:2001で規定される算術平均粗さRaが1.1μm以上2.5μm以下である。Raが1.1μm以上であることにより、画像記録後に記録媒体の最表面が接触した場合でも、記録媒体の最表面同士の接触面積を小さくすることが可能となる。このため、記録媒体間での水分、水溶性溶媒等の移動が起こりにくくなり、白モヤの発生を抑制することができる。また、Raが1.1μm以上であることにより、光沢性が高くなりすぎることを抑制し、記録媒体の最表面の傷の視認性を低減することができる。白モヤの発生をより抑制し、さらに記録媒体の最表面の傷の視認性をより低下させる観点から、Raは1.3μm以上であることが好ましい。一方、Raが2.5μmより大きくなると、後述するRskの値を変更しても、凹凸形状の凹部の体積が大きくなりすぎてしまい、インクを付与すると凹凸形状に応じた斑模様が発生することがある。特に、インクジェット記録で記録を行う場合には、インクの付与が高速であるため、斑模様が発生しやすい傾向がある。このため、Raは2.5μm以下である。記録媒体の最表面のRaは、2.0μm以下であることが好ましい。即ち、本発明においては、記録媒体の最表面のJIS B 0601:2001で規定される算術平均粗さRaが1.3μm以上2.0μm以下であることが好ましい。尚、本発明における記録媒体の最表面とは、記録媒体の面のうち、インク等を付与して記録を行う側の表面を意味する。例えば、支持体の片面にインク受容層を最表層として1層有する記録媒体の場合、インク受容層の支持体と反対側の面が、記録媒体の最表面となる。支持体の両面にインク受容層を最表層として1層有する記録媒体の場合は、それぞれのインク受容層の、支持体と反対側の面が、記録媒体の最表面となる。
【0014】
さらに、本発明の記録媒体は、記録媒体の最表面のJIS B 0601:2001で規定される粗さ曲線のスキューネスRskが0.1以下である。Raが1.1μm以上2.5μm以下であり、且つRskが0.1以下であることにより、凹部の体積を十分小さくすることができる。この結果、インクを付与することで凹凸形状に応じた斑模様が発生することを抑制することができる。Rskは、表面粗さの高さ方向の特徴を表し、凹部が凸部に比べて大きくなると、Rskは正の値を示し、凹部が凸部に比べて小さくなると、Rskは負の値を示す。Rskが0.1より大きくなると、Raが1.1μm以上2.5μm以下の範囲であっても、凹部の体積がかなり大きくなり、凹凸形状に応じた斑模様が発生しやすくなる。凹部の体積をより小さくして斑模様の発生を抑制するには、Rskは0.0以下であることが好ましい。また、凹凸形状形成の容易性の観点から、Rskは−1.5以上であることが好ましい。
【0015】
凹部の体積をさらに小さくする観点から、記録媒体の最表面のJIS B 0601:2001で規定される粗さ曲線要素の平均長さRSmは、0.65mm以下であることが好ましい。RSmは、表面粗さの横方向(水平方向)の特徴を表し、凹凸部の間隔を表す値である。縦方向(高さ方向)の特徴にも依存するが、RSmを0.65mm以下にすることで、凹部の体積をさらに小さくすることができる。この結果、凹凸形状に応じた斑模様の発生をより良好に抑制することができる。凹部の体積をさらに小さくする観点から、RSmは0.60mm以下であることが更に好ましい。RSmは0.10mm以上であることが好ましい。
【0016】
記録媒体の最表面のRa、Rsk、RSmを上記範囲に調整する方法としては、以下のような方法が挙げられる。例えば、インク受容層を記録媒体の最表層とする場合、インク受容層に平均粒子径が1μm〜20μmの無機或いは有機粒子を添加する方法がある。他には、インク受容層表面に微細な凹凸を彫刻する方法や、凹凸を有する支持体上にインク受容層を設ける方法等がある。凹凸を有する支持体上にインク受容層を設ける方法では、予め支持体表面に凹凸の型付け処理を行う。次に、この支持体上にインク受容層用塗工液を塗工してインク受容層を形成する。これにより、インク受容層の表面、即ち記録媒体の最表面に、支持体が有する凹凸と同様の形状の凹凸を形成することができる。特に、インク受容層が堅い多孔質皮膜からなる場合には、この方法が適している。この場合、好ましく用いられる支持体は、基材を樹脂で被覆した樹脂被覆支持体である。特には、紙基材の両面をポリオレフィン樹脂で被覆した樹脂被覆支持体である。ポリオレフィン樹脂表面に凹凸を型付けする方法としては、基材上に溶融したポリオレフィン樹脂を押し出しコーティングした後、型付けローラーに圧接して微細な凹凸の模様付けを行う方法がある。模様付けを行う方法には、例えば以下の2つの方法がある。1つは、溶融押し出しで得られる樹脂コート紙に室温付近でエンボシングカレンダー処理する方法である。もう1つは、ポリオレフィン樹脂の押し出しコーティング時に、ロール表面に模様を彫刻したクーリングロールを用いて冷却しながら凹凸を形成する方法である。特に、後者の方法の方が、比較的弱い圧力で型付けすることができ、さらにより正確で均質な型付けができるため好ましい。
【0017】
インク受容層が多孔質のインク受容層である場合、インク受容層の塗工厚が厚くなりやすい。このため、支持体表面の凹凸形状がインク受容層表面に表れにくくなる。そこで、予め凹凸形状を表面に設けた支持体にインク受容層用塗工液を塗工することで得られる記録媒体の場合、支持体の表面粗さをインク受容層表面の表面粗さより大きくすることが好ましい。具体的には、支持体表面は、JIS B 0601:2001で規定される算術平均粗さRaが1.5μm以上であることが好ましい。また、1.6μm以上であることがより好ましい。支持体の表面の算術平均粗さRaは6.0μm以下であることが好ましく、3.0μm以下であることがより好ましい。
【0018】
インク受容層の塗工厚は、インク吸収性やクラック抑制の観点から、30μm以上45μm以下であることが好ましい。インク受容層の塗工厚が30μm以上であれば、インク吸収性が良好となる。また、インク受容層の乾燥後の塗工厚が45μm以下であれば、クラックの発生を抑制することができる。尚、本発明における塗工厚とは、絶乾時の厚さである。本発明では、記録媒体を四角形とし、四隅から四角形の重心方向に1cm離れた部分の絶乾時の厚さを走査電子顕微鏡を用いて測定し、これらを平均した値を塗工厚とする。
【0019】
記録媒体のTAPPI T 529 om−04に規定される紙面pHは、4.3以上であることが好ましい。紙面pHを4.3以上にすることで、ブロンズの発生を抑制でき、またブロンズの発生によるインク吸収性の低下を抑制することができる。
【0020】
以下に、本発明の記録媒体に用いる材料について詳細に説明する。
【0021】
(支持体)
本発明の支持体としては、キャストコート紙、バライタ紙、レジンコート紙(ポリオレフィン等の樹脂で基材を被覆した樹脂被覆紙)等の紙類を好ましく用いることができる。また、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリ乳酸、ポリスチレン、ポリアセテート、ポリ塩化ビニル、酢酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート等の透明な熱可塑性フィルム等を好ましく用いることができる。これ以外にも、適度なサイジングが施された紙である無サイズ紙やコート紙、無機物の充填もしくは微細な発泡により不透明化されたフィルムからなるシート状物質(合成紙等)を用いてもよい。また、ガラス又は金属等からなるシート等を用いてもよい。更に、これらの支持体とその上に形成する層との接着強度を向上させるため、支持体の表面にコロナ放電処理や各種アンダーコート処理を施してもよい。上述した支持体の中でも、記録媒体の光沢感の点から、レジンコート紙を用いることが好ましい。
【0022】
(インク受容層)
本発明のインク受容層は、顔料及びバインダーを含有することが好ましい。さらに、架橋剤、pH調整剤、各種添加剤等を含有してもよい。以下にこれらの成分について詳しく説明する。
【0023】
無機顔料としては、軽質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリン、硫酸バリウム、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム、合成非晶質シリカ、コロイダルシリカ、湿式及び乾式シリカゾル、アルミナ水和物等の白色顔料が好ましい。これら無機顔料は、単独で用いても良く、複数を混合して用いてもよい。中でも、インク吸収性等の点から、シリカ或いはアルミナ水和物が好ましい。さらに、白モヤの発生を抑制する点からは、アルミナ水和物が好ましい。一方、記録媒体の最表面の傷の視認性低減の点からは、気相法シリカが好ましい。
【0024】
バインダーとしては、ポリビニルアルコール(PVA)、酸化澱粉、エーテル化澱粉、リン酸エステル化澱粉、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カゼイン、ゼラチン、大豆蛋白、ポリビニルピロリドン、無水マレイン酸樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体等の共役重合体ラテックス、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルの重合体等のアクリル系重合体ラテックス、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のビニル系重合体ラテックス、メラミン樹脂、尿素樹脂、ポリメチルメタクリレート等のアクリル酸エステルやメタクリル酸エステルの重合体又は共重合体樹脂、ポリウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニルコポリマー、ポリビニルブチラール、アルキッド樹脂等を用いることが好ましい。上記バインダーは、単独で用いても良く、複数を混合して用いてもよい。中でも最も好ましく用いられるバインダーは、PVAである。PVAとしては、例えばポリ酢酸ビニルを加水分解して得られるPVAが挙げられる。また、粘度平均重合度が1500以上5000以下のものがより好ましい。ケン化度は70以上100以下のものが好ましい。この他に、末端をカチオン変性したPVAや、アニオン性基を有するアニオン変性PVA等の変性PVAを用いてもよい。インク受容層中の顔料及びバインダーの含有量比は、質量基準で1:1〜13:1であることが好ましい。
【0025】
架橋剤としては、本発明の効果を損なわないものであれば特に限定されないが、バインダーとしてPVAを用いる場合、PVAと架橋反応を起こして硬化可能なものが好ましい。架橋剤としては、特にホウ酸が好ましい。この際、用いるホウ酸としては、オルトホウ酸(HBO)だけでなく、メタホウ酸や次ホウ酸等が挙げられるが、塗工液の経時安定性と、クラック発生の抑制効果の点から、オルトホウ酸を用いることが好ましい。
【0026】
ホウ酸の使用量は、インク受容層中のPVAに対して、0.2当量以上1.2当量以下の範囲であることが好ましい。尚、上記「当量」については、PVAが有するヒドロキシル基量と理論上、完全に反応する架橋剤量を1.0当量とする。上記範囲とすることによって、インク受容層用塗工液の経時安定性を特に向上させることができる。一般的にインク受容層を形成する際は、塗工液を長時間に渡って用いることとなる。塗工液中のホウ酸の含有量を上記範囲内とすることによって、長時間使用中に塗工液の粘度が上昇することや、ゲル化物の発生が起こることを優れて抑制することができる。このため、塗工液の交換やコーターヘッドの清掃等も頻繁に行わずに済み、記録媒体等の記録媒体の生産性が低下することを抑制することができる。さらに、塗工液中のホウ酸の含有量が上記範囲内であれば、均質で良好な表面を得ることができる。
【0027】
インク受容層として、支持体上にインク受容層用塗工液を塗工することで形成するインク受容層を用いる場合、インク受容層用塗工液中には、pH調整剤として、例えば、下記の酸をそれぞれ適宜、添加してもよい。例えば、蟻酸、酢酸、グリコール酸、シュウ酸、プロピオン酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、マレイン酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、フタル酸。イソフタル酸、テレフタル酸、グルタル酸、グルコン酸、乳酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、ピメリン酸、スベリン酸、メタンスルホン酸。塩酸、硝酸、燐酸等の無機酸等である。例えば、無機顔料としてアルミナ水和物を用いた場合、アルミナ水和物を水中に分散させるために一塩基酸を用いることが好ましい。このため、上記pH調整剤の中でも、蟻酸、酢酸、グリコール酸、メタンスルホン酸等の有機酸や、塩酸、硝酸等を用いることが好ましい。また、添加剤として、顔料分散剤、堅牢性向上剤等をインク受容層形成後のインク受容層表面のイオン交換水に対する接触角が大きく変化しない範囲で適宜添加してもよい。
【0028】
<記録媒体の製造方法>
本発明の記録媒体は、例えば以下の方法で製造する。まず、無機顔料、バインダー、架橋剤、pH調整剤、各種添加剤、水等を混合したインク受容層用塗工液を調製する。続いて支持体上にインク受容層用塗工液を塗工、乾燥してインク受容層を形成することで、本発明の記録媒体が製造できる。尚、インク受容層に用いるこれらの材料の種類、使用量等は、本発明の要件を満たすように適宜選択して用いればよい。
【0029】
次に、インク受容層用塗工液の塗工方法について説明する。インク受容層用塗工液の塗工には、適正な塗工量が得られるように、例えば、各種カーテンコーター、エクストルージョン方式を用いたコーター。スライドホッパー方式を用いたコーター等により、オンマシン、オフマシンで塗工する。塗工時に、塗工液の粘度調製等を目的として、塗工液を加温してもよく、コーターヘッドを加温してもよい。
【0030】
塗工後の塗工液の乾燥には、例えば、直線トンネル乾燥機、アーチドライヤー、エアループドライヤー、サインカーブエアフロートドライヤー等の熱風乾燥機を用いる。また、赤外線、加熱ドライヤー、マイクロ波等を利用した乾燥機等を、適宜、選択して用いてもよい。
【実施例】
【0031】
以下、実施例及び比較例により本発明を詳しく説明するが、本発明の内容はこれらに限られるものではない。尚、「部」或いは「%」とあるのは、特に断りのない限り質量基準である。
【0032】
(表面粗さ測定方法)
算術平均粗さRa、粗さ曲線のスキューネスRsk、粗さ曲線要素の平均長さRSmの測定は、下記の測定装置及び条件で行った。
測定装置:Surfcorder SE3500(小坂研究所製)
測定条件:JIS B 0601:2001に準じて、カットオフ値を設定し、評価長さはカットオフ値の5倍の長さとして測定した。
【0033】
(支持体の作製)
軽質炭酸カルシウム20部を、広葉樹晒クラフトパルプ100部のスラリー中に添加し、カチオン澱粉2.0部、無水アルケニルコハク酸系中性サイズ剤0.3部を添加し、十分に混合して抄紙原料とした。長網多筒式抄紙機を用いて水分を10%まで乾燥させ、サイズプレスで酸化澱粉の7%溶液を両面で4g/m塗布し、さらに水分を7%まで乾燥させて坪量110g/mの基紙を作製した。その基紙の表裏両方の面に低密度ポリエチレン70部と高密度ポリエチレン20部からなる樹脂組成物を、片面当たり30g/mの塗工量となるように溶融押し出し塗布した。塗布直後に、表面に種々の不規則の形状の凹凸を有するクーリングロールを使用して、冷却しながらポリエチレン表面に10種類の型付け処理を行った。型付けの違いはクーリングロールの凹凸の幅及び凹凸の高さを調整することで行った。このようにして、坪量170g/mの支持体A〜Kを作製した。各支持体のRa、Rsk及びRSmを表1に示す。尚、支持体の両面ともに、表1に示す値となった。
【0034】
【表1】

【0035】
(インク受容層用塗工液Aの調製)
イオン交換水中に、アルミナ水和物(商品名:Disperal HP14、サソール製)を30%となるように添加した。次に、このアルミナ水和物に対してメタンスルホン酸を1.5%加えて攪拌し、コロイダルゾルを得た。得られたコロイダルゾルをアルミナ水和物が27%となるようにイオン交換水で希釈して、コロイダルゾルAを得た。
【0036】
一方、ポリビニルアルコール(商品名:PVA235、クラレ製、重合度:3500、ケン化度:88%)をイオン交換水中に溶解させて、8.0%のポリビニルアルコール水溶液を得た。そして、得られたポリビニルアルコール溶液を、コロイダルゾルAに、アルミナ水和物に対してポリビニルアルコールが10.0%となるように混合した。次に、3.0%ホウ酸水溶液を、アルミナ水和物に対してホウ酸が2.0%となるように混合して、インク受容層用塗工液Aを調製した。
【0037】
(インク受容層用塗工液Bの調製)
シリカ(商品名:A300、日本アエロジル製)100部、カチオンポリマー(商品名:シャロールDC902P、第一工業製薬製)4部を、固形分濃度が18%となるようにイオン交換水に分散し、高圧ホモジナイザーで分散してコロイダルゾルBを得た。
【0038】
一方、ポリビニルアルコール(商品名:PVA235、クラレ製、重合度:3500、ケン化度:88%)をイオン交換水中に溶解させて、8.0%のポリビニルアルコール水溶液を得た。そして、得られたポリビニルアルコール水溶液を、コロイダルゾルBに、シリカに対してポリビニルアルコールが20.0%となるように混合した。次に、3.0%ホウ酸水溶液を、シリカに対してホウ酸が3.5%となるように混合して、インク受容層用塗工液Bを調製した。
【0039】
<実施例1>
支持体A上に、インク受容層用塗工液Aを塗工し、60℃で乾燥させて、インク受容層の塗工厚が32μmの記録媒体1を作製した。
【0040】
<実施例2>
記録媒体1の支持体の、インク受容層を有する面と反対側の面に、インク受容層用塗工液Aを塗工し、60℃で乾燥させて、両面のインク受容層の塗工厚がいずれも32μmの記録媒体2を作製した。
【0041】
<実施例3>
実施例1のインク受容層用塗工液Aをインク受容層用塗工液Bに変更した以外は、実施例1と同様の方法で、記録媒体3を作製した。
【0042】
<実施例4>
実施例1の支持体Aを支持体Bに変更した以外は、実施例1と同様の方法で、記録媒体4を作製した。
【0043】
<実施例5>
実施例1の支持体Aを支持体Cに変更した以外は、実施例1と同様の方法で、記録媒体5を作製した。
【0044】
<実施例6>
実施例1の支持体Aを支持体Dに変更した以外は、実施例1と同様の方法で、記録媒体6を作製した。
【0045】
<実施例7>
実施例3の支持体Aを支持体Dに変更した以外は、実施例3と同様の方法で、記録媒体7を作製した。
【0046】
<実施例8>
記録媒体7の支持体の、インク受容層を有する面と反対側の面に、インク受容層用塗工液Bを塗工し、60℃で乾燥させて、両面のインク受容層の塗工厚がいずれも32μmの記録媒体8を作製した。
【0047】
<実施例9>
実施例1の支持体Aを支持体Eに変更した以外は、実施例1と同様の方法で、記録媒体9を作製した。
【0048】
<実施例10>
実施例1の支持体Aを支持体Fに変更した以外は、実施例1と同様の方法で、記録媒体10を作製した。
【0049】
<実施例11>
実施例1の支持体Aを支持体Gに変更した以外は、実施例1と同様の方法で、記録媒体11を作製した。
【0050】
<実施例12>
実施例1の支持体Aを支持体Kに変更した以外は、実施例1と同様の方法で、記録媒体12を作製した。
【0051】
<比較例1>
実施例1の支持体Aを支持体Hに変更した以外は、実施例1と同様の方法で、記録媒体12を作製した。
【0052】
<比較例2>
実施例3の支持体Aを支持体Hに変更した以外は、実施例3と同様の方法で、記録媒体13を作製した。
【0053】
<比較例3>
実施例1の支持体Aを支持体Iに変更した以外は、実施例1と同様の方法で、記録媒体14を作製した。
【0054】
<比較例4>
実施例1の支持体Aを支持体Jに変更した以外は、実施例1と同様の方法で、記録媒体15を作製した。
【0055】
<比較例5>
実施例3の支持体Aを支持体Jに変更した以外は、実施例3と同様の方法で、記録媒体16を作製した。
【0056】
各記録媒体の最表面のRa、Rsk、RSmは、下記表2に示す通りである。また、各記録媒体に下記の評価を行い、その評価結果をあわせて表2に示す。
【0057】
<評価>
(白モヤ)
まず、同じ種類の記録媒体を2枚用意した。次に、一方の記録媒体のインク受容層に、インクジェット記録装置(商品名:PIXUS MP990、キヤノン製)を用いて、光沢プロプラチナグレードモード(標準設定、色/濃度:マッチングなし)にて、下記の画像1を記録した。同様にして、他方の記録媒体のインク受容層に、画像2を記録した。
画像1:15cm×15cmの領域を、PhotoShop7.0のRGBモードで、(R,G,B)=(0,0,0)で塗りつぶした画像。
画像2:5cm×5cmの領域を、PhotoShop7.0のRGBモードで、(R,G,B)=(255,255,0)で塗りつぶした画像。
【0058】
画像記録後、30分間、23℃、50%RHの環境下で乾燥させた後、それぞれの記録媒体を画像1と画像2が接触するように重ね合わせ、24時間保管した。24時間保管後、画像1と画像2とが接触している部分と接触していない部分とを比較し、白モヤの発生について下記の基準で目視で評価した。尚、実施例2及び実施例8のような両面の記録媒体においては、一方の記録媒体には先に形成したインク受容層に画像1を、他方の記録媒体には後に形成したインク受容層に画像2を、それぞれ記録して評価を行った。
A:白モヤは確認されなかった。
B:白モヤがわずかに確認された。
C:白モヤがはっきりと確認された。
【0059】
(擦り傷)
白モヤの評価と同じ条件で、同じ種類の2枚の記録媒体にそれぞれ画像1を記録した。画像記録後、24時間、23℃、50%RHの環境下で乾燥し、その後各記録媒体を画像1が接触するように重ね合わせ、1.5g/mのおもりをのせ、前後3cm程度擦り合わせる動作を50回繰り返した。その後、画像1の擦り傷を下記の基準で目視で評価した。尚、実施例2及び実施例8のような両面の記録媒体においては、一方の記録媒体には先に形成したインク受容層に、他方の記録媒体には後に形成したインク受容層に画像1をそれぞれ記録して評価を行った。
A:擦り傷は確認できなかった。
B:擦り傷がわずかに確認された。
C:擦り傷がはっきりと確認された。
【0060】
(凹凸形状に応じた斑模様)
1種類の記録媒体を1枚用意し、白モヤの評価と同じ条件で、下記の画像3を記録した。
画像3:10cm×10cmの領域を、PhotoShop7.0のRGBモードで、(R,G,B)=(0,255,255)で塗りつぶした画像。
【0061】
画像記録後、24時間、23℃、50%RHの環境下で乾燥させた後、画像3の斑模様について下記の基準で目視で評価した。
AA:凹凸形状に応じた斑模様は確認されなかった。
A:凹凸形状に応じた斑模様がわずかに数箇所確認された。
B;凹凸形状に応じた斑模様がわずかではあるが多数確認された。
C:凹凸形状に応じた斑模様がはっきりと多数確認された。
【0062】
【表2】

【0063】
表2から、実施例1〜11の記録媒体は、白モヤ、擦り傷、斑模様のうち、C評価は0項目で、B評価は1項目以下で、かつその他の項目はA評価以上であり、記録媒体として良好であることが分かる。
【0064】
一方、比較例1、2の記録媒体は、Raが1.1μmより小さく、白モヤ及び擦り傷のいずれの項目もB評価以下となった。比較例3の記録媒体は、Raが2.5μmより大きく、斑模様がC評価となった。比較例4、5の記録媒体は、Rskが0.1より大きく、斑模様がC評価となった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体と、該支持体上にインク受容層を有する記録媒体であって、
記録媒体の最表面のJIS B 0601:2001で規定される算術平均粗さRaが1.1μm以上2.5μm以下であり、記録媒体の最表面のJIS B 0601:2001で規定される粗さ曲線のスキューネスRskが0.1以下であることを特徴とする記録媒体。
【請求項2】
前記記録媒体の最表面のJIS B 0601:2001で規定される粗さ曲線要素の平均長さRSmが0.65mm以下である請求項1に記載の記録媒体。
【請求項3】
前記支持体が、基材を樹脂で被覆した樹脂被覆支持体である請求項1または2に記載の記録媒体。
【請求項4】
前記記録媒体の最表面のJIS B 0601:2001で規定される算術平均粗さRaが1.3μm以上2.0μm以下である請求項1〜3のいずれか1項に記載の記録媒体。
【請求項5】
前記記録媒体の最表面のJIS B 0601:2001で規定される粗さ曲線のスキューネスRskが0.0以下である請求項1〜4のいずれか1項に記載の記録媒体。

【公開番号】特開2012−11773(P2012−11773A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−110622(P2011−110622)
【出願日】平成23年5月17日(2011.5.17)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】