説明

記録材、ならびに記録材及び記録物の製造方法

【課題】本発明はインクジェット記録方式に適した記録材を提供することを目的としている。詳細には、溶剤インクを用いたインクジェット記録方式において、画像濃度が高く、発色性に優れた高画質な記録が可能であり、かつ耐候性が良好な記録材を提供することにある。
【解決手段】不透明基材上に非水溶性粒子と樹脂から主に構成される多孔質構造のインク受容層を設けた記録材であって、非水溶性樹脂がエチレン酢酸ビニル共重合体を含有し、かつ、エチレン酢酸ビニル共重合体の赤外吸収スペクトルで認められるC=Oによる波長1740cm−1付近の吸収ピーク高さ(Ha)とC−Hによる波長1460cm−1付近の吸収ピーク高さ(Hb)の比(Ha/Hb)が0を超え3以下であることを特徴とする記録材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はインクジェット記録方式に適した記録材に関する。詳細には、溶剤インクを用いたインクジェット記録方式において、野外看板として用いた場合に画像濃度が高く、発色性に優れた高画質な記録が可能であり、かつ耐候性が良好な記録材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、コンピューターの性能向上およびコンピューターの普及とともに、ハードコピー技術が急速に発達している。ハードコピーの記録方式としては、昇華転写記録方式、電子写真方式、インクジェット方式等の方式が知られている。
【0003】
インクジェット方式によるプリンターは、ノズルから被記録紙に向けてインク液滴を高速で噴射する方式である。カラー化、小型化がしやすいこと、印字騒音が低いことから、オフィス、ホーム、パーソナルコンピューター等の端末として、近年急速に普及しつつある。更に、銀塩写真に迫る記録品質の向上、大型化の容易さから、大型看板、電飾看板等の産業分野への応用が期待されている。
【0004】
インクジェット方式に使用されるインクとしては、水性染料インク、すなわち水或いは水と親水性溶剤の混合溶媒中に各種の水溶性染料を溶解し、必要に応じて各種の添加剤を混合したものが主流である。これは水性インクが色調の鮮やかな記録が可能であること、インクの粘度を調節しやすいこと、安全性の面で優位である為である。しかしながら、水性染料インクは水溶性染料を用いていることから耐水性、耐候性が劣るという欠点があり、それを改善した方策が各種提案されている(例えば、特許文献1〜6を参照)。しかしながら、野外で展示できる程のものではなく、表面に紫外線吸収性のラミネートフィルムを貼る必要がある。その為、コストが上昇する問題がある。
【特許文献1】特開昭55−150396号公報
【特許文献2】特開昭56−58869号公報
【特許文献3】特開昭56−77154号公報
【特許文献4】特開昭59−196285号公報
【特許文献5】特開昭62−141194号公報
【特許文献6】特開平2−80279号公報
【0005】
水性染料インクの欠点を補う為に、水性顔料インク、すなわち、有機顔料、無機顔料を水或いは水と親水性溶剤との混合溶液に分散し、かつ必要に応じて各種の添加剤を添加したインクが提案されている。水性顔料インクを用いて記録した場合には、印刷後の記録材を十分に乾燥させれば完全な耐水性を得ることが可能であり、近年急激に使用されるようになりつつある。しかしながら、主溶剤として水を用いている為、顔料の濃度を高くできず、発色性、更には鮮やかさが劣ること、ヘッドノズルの目詰まりが発生しやすいことなどの欠点がある。
【0006】
これらの諸問題を解決する方策として、油性インクが提案されている。油性インクとは、油溶性染料、有機顔料、無機顔料をパラフィン類等の溶剤に溶解もしくは分散したインクであり、水性染料インク、水性顔料インクと比較すると、染料、顔料の選択範囲が広がり耐候性、耐水性にすぐれた色材を選択できること、溶剤中に高濃度で溶解或いは分散できる為、高い画像濃度を実現できること、ヘッドの目詰まりが起こり難いこと、シートの吸水によるコックリングが生じ難いこと、インクの表面張力を低くすることが可能であり、高速に記録層に吸収されやすいこと等の利点がある。その為、高速印刷、高画質印刷、高耐候性を必要とする分野での水性インクの代替として有望視されている。しかしながら、印刷後の記録材中の溶剤の乾燥性が悪く、長時間乾燥する必要があり、各種のトラブルが発生などの欠点がある。
【0007】
近年、水系インクと油性インクのそれぞれの問題点を両立目的で、溶剤インクが提案されている。溶剤インクとは、有機顔料、無機顔料をグリコール類、エーテル類、アルコール類等の溶剤に分散したインクであり。油性インクと同様に耐候性、耐水性の優れた色材を選定できる利点があり、かつ、水系インクよりは劣るが油性インクよりも印刷後の記録材剤に残存する溶剤の蒸発が早い利点がある。
【0008】
一方、記録材としては、水性染料インク及び水性顔料インクに対して記録品質を満足させるべく、各種のものが提案されている。具体的には、顔料と樹脂を含有した多孔質層を支持体上に設けたものが提案されている(例えば、特許文献7〜21を参照)。
【特許文献7】特開昭55−11829号公報
【特許文献8】特開昭56−157号公報
【特許文献9】特開昭56−99692号公報
【特許文献10】特開昭56−148582号公報
【特許文献11】特開昭56−148583号公報
【特許文献12】特開昭57−107879号公報
【特許文献13】特開昭57−126691号公報
【特許文献14】特開昭58−136480号公報
【特許文献15】特開昭60−222281号公報
【特許文献16】特開昭62−233284号公報
【特許文献17】特開平3−56552号公報
【特許文献18】特開平3−24905号公報
【特許文献19】特開平2−76775号公報
【特許文献20】特開平4−128091号公報
【特許文献21】特開平5−221115号公報
【0009】
また、水溶性樹脂を支持体上に設けたものが提案されている(例えば、特許文献22〜30を参照)。
【特許文献22】特開昭59−45188号公報
【特許文献23】特開昭60−56587号公報
【特許文献24】特開昭60−234879号公報
【特許文献25】特開昭61−172786号公報
【特許文献26】特開昭61−189985号公報
【特許文献27】特開平1−190483号公報
【特許文献28】特開平4−263984号公報
【特許文献29】特開平4−201595号公報
【特許文献30】特開昭63−162674号公報
【0010】
また、透明支持体上に不透明な受理層を設けて画像を記録した面と反対面から鑑賞するバックプリント方式が提案されている(例えば、特許文献31〜51を参照)。
【特許文献31】特開昭61−92885号公報
【特許文献32】特開昭61−40181号公報
【特許文献33】特開昭61−135786号公報
【特許文献34】特開昭61−148091号公報
【特許文献35】特開昭61−148092号公報
【特許文献36】特開昭61−35275号公報
【特許文献37】特開昭61−35276号公報
【特許文献38】特開昭61−35986号公報
【特許文献39】特開昭61−35988号公報
【特許文献40】特開昭61−35989号公報
【特許文献41】特開昭61−92886号公報
【特許文献42】特開昭61−135787号公報
【特許文献43】特開昭61−135788号公報
【特許文献44】特開昭61−49884号公報
【特許文献45】特開昭61−49885号公報
【特許文献46】特開昭61−57378号公報
【特許文献47】特開昭61−41587号公報
【特許文献48】特開昭61−41588号公報
【特許文献49】特開昭61−41589号公報
【特許文献50】特開昭62−222885号公報
【特許文献51】特開昭62−222887号公報
【0011】
さらに、耐水性、ニジミ等の性能向上させるための各種の添加剤等が提案されている(例えば、特許文献52〜55を参照)。
【特許文献52】特開昭60−83882号公報
【特許文献53】特開昭61−47290号公報
【特許文献54】特開昭61−74880号公報
【特許文献55】特開昭61−89082号公報
【0012】
上記の記録材は水性染料或いは水性顔料用に設計されたものであり、油性インクや溶剤インクでの記録で用いた場合には必ずしも良好な記録が得られるものではない。これは、水性インクに適合する記録材の受像層が一般的に水溶性樹脂或いは吸水性樹脂が用いられていること、インク中の染料或いは顔料が電荷を有していること、主溶剤が水であることに起因する高表面張力、等の差により油性インクや溶剤インクと異なった挙動を取るためである。
【0013】
油性インク用に対して印刷品位を最適化して記録材としては、基材上に粒子と非吸水性の樹脂を設けたものが提案されている(例えば、特許文献56〜59を参照)。
【特許文献56】特開2000−335078号公報
【特許文献57】特開2000−335092号公報
【特許文献58】特開2000−335093号公報
【特許文献59】特開2000−335094号公報
【0014】
上記の油性インクを用いた記録材は、油性インク用に設計されたものであり、溶剤インクでの記録で用いた場合に必ずしも良好な記録が得られるものではない。これは、インク中の主溶剤が異なることにより、樹脂の溶解性、受容層への浸透が異なる為である。
従って、溶剤インクの性能を最大限に生かせる記録材は存在していない。
【0015】
そこで、本発明者らは優れた記録材の研究開発をしているときに、透明基材に粒子とエチレン−酢酸ビニル共重合体を主体とする非水溶性樹脂からなるインク受容層を設けた記録材を開発して、これは既に特許出願済みである。しかし、その後、その基材として、不透明基材を用いた場合に、裏の模様、色彩および画像などに影響されない、優れた特有の機能を備えた記録材ができるという知見に基づいて本発明を想到するに至ったものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明はインクジェット記録方式に適した記録材を提供することを目的としている。詳細には、溶剤インクを用いたインクジェット記録方式において、野外看板として使用した場合に画像濃度が高く、発色性に優れた高画質な記録が可能であり、かつ耐候性が良好な記録材、ならびに記録材及び記録物の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、溶剤インクの性能を最大限に活かすべく、不透明基材上に粒子と非水溶性樹脂から主に構成される多孔質構造のインク受容層を設けた記録材であって、該樹脂がエチレン酢酸ビニル共重合体を含有し、かつ、該エチレン酢酸ビニル共重合体の赤外吸収スペクトルで認められるC=Oによる波長1740cm−1付近の吸収ピーク高さ(Ha)とC−Hによる波長1460cm−1付近の吸収ピーク高さ(Hb)の比を特定の範囲内とすることにより溶剤インクを用いたインクジェット記録方式において、良好な印刷品位が得られることを見出したものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明の目的は、溶剤インクを用いたインクジェット記録方式において、画像濃度が高く、発色性に優れた高画質な記録が可能であり、かつ耐候性が良好な記録材、並びに記録材及び記録物の製造方法を提供することにある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明において、不透明基材は特に限定されるものではないが、例えばポリエステルフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ナイロン、ポリカーボネート、ノルボルネン、ビニロン、アクリル等のプラスティックフィルム又はシートやこれらの材料に無機顔料、発泡剤を混合した不透明樹脂フィルム、ポリエステル系布、ポリエステル/綿混合布、綿布、不織布、パルプ、樹脂含浸紙、キャストコート紙、レジンコート紙、ガラスおよびこれらの任意の2種類以上のものを貼り合わせたものが挙げられるが、好ましくは、耐熱性に優れる不透明なポリエステル系フィルムが好ましく、より好ましくは、柔軟性に優れる内部に空洞を有する不透明なポリエステル系フィルムである。好ましい不透明度は、全光線透過率は30%以下である。不透明性が不良の場合は、壁等に貼り付けた際に裏地が見える問題が発生する。
【0020】
ポリエステル系フィルムとは、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸のごとき芳香族ジカルボン酸又はそのエステルとエチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコールのごときグリコールとを重縮合させて製造されるフィルムである。
【0021】
内部に空洞を発現させる方法が挙げられる。特に限定されるものではないが、好ましくは以下にのべるポリエステルに非相溶の熱可塑性樹脂を混合、溶融、押し出しした未延伸シートを少なくとも1軸方向に延伸することにより、内部に微細な空洞を多数含有する方法である。
【0022】
ポリエステルに非相溶性の熱可塑性樹脂としては、具体的には、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスルホン系樹脂、セルロース系樹脂などが挙げられる。特にポリスチレン系樹脂、ポリメチルペンテン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂が好ましい。
【0023】
ポリエステルとポリエステルに非相溶性の熱可塑性樹脂を混合させた未延伸シートは、たとえば、各樹脂のチップを混合し押出機内で溶融混練した後、押出して固化することによって得られる方法や、あらかじめ混練機によって両樹脂を混練したものを更に押出機より溶融押出して固化する方法や、ポリエステルの重合工程においてポリエステルに非相溶性の熱可塑性樹脂を添加し、かくはん分散して得たチップを溶融押出して固化する方法などによっても得られる。固化して得られた未延伸シートは通常、無配向もしくは弱い配向状態のものである。また、ポリエステルに非相溶性の熱可塑性樹脂はポリエステル中に、球状もしくは楕円球状、もしくは糸状など様々な形状で分散した形態をとって存在する。
【0024】
ポリエステルに混合されるポリエステルに非相溶性の熱可塑性樹脂の量は、目的とする空洞の量によって異なるが、混合物全体に対して3質量%〜39質量%が好ましく、特に6〜35質量%が好ましい。3質量%未満では、空洞の生成量を多くすることに限界があり、目的の柔軟性や軽量性や描画性が得られない。逆に、40質量%以上では、ポリエステルフィルムの持つ耐熱性や強度、特に腰の強さが著しく損なわれる。
【0025】
フィルムには、必要に応じて隠ぺい性や描画性を向上させるため無機粒子を含有することができる。このための無機粒子としは二酸化チタン、二酸化珪素、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化アルミニウム、カオリン、タルクなどが挙げられるが特に限定されるものではない。
【0026】
重合体混合物には、用途に応じて着色材、紫外線吸収剤、蛍光剤、帯電防止剤、減粘剤、酸化防止剤などを添加することも可能である。
【0027】
本発明においては、表層と中心層を積層したいわゆる複合フィルムとすることにしてもよい。その方法は特に限定されるものではない。しかし生産性を考慮すると、表層と中心層の原料は別々の押出機から押出し、1つのダイスに導き未延伸シートを得た後、少なくとも1軸に配向させる、いわゆる共押出法による積層がもっとも好ましい。
【0028】
本発明の空洞含有フィルムは、単層フィルムであっても、2層以上の複合フィルムであってもかまわない。
【0029】
延伸方法としては、チューブラ法延伸、同時二軸延伸、逐次二軸延伸等が挙げられるが、平面性、寸法安定性、厚みムラ等から逐次二軸延伸が好ましい。逐次二軸による延伸の具体例としては、長手方向にポリエステルのガラス転移温度の+0〜30℃で、2.0〜5.0倍にロール延伸し、引き続き、120〜150℃で倍率を1.2〜5.0倍にテンター延伸する。さらに、延伸後に220℃以上で3〜8%緩和させながら熱固定を行なう方法が挙げられる。
【0030】
カラーL値とは色調において明度を示す尺度であり、数値が高いほど黒ずみが少なく明度が高いことを意味する。また、カラーb値は黄色味を示す尺度であり、数値が高いほど黄色が強く、マイナスに数値が高くなるほど青色が強くなる。さらに、カラーa値は赤味を示す尺度であり、数値が高いほど赤色が強く、マイナスに数値が高くなるほど緑色が強くなる。基材としては、白色であることが好ましく、好ましい範囲はL≧80、−5≦a≦5、−5≦b≦5である。
【0031】
本発明において、このような基材上にインク受容層を設けることにより記録材が得られるが、基材とインク受容層の間にアンカー層を設けても良い。
【0032】
アンカー層は、基材とインク受容層の密着性を向上させる為の層である。層を構成する樹脂としては、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステルウレタン樹脂、アクリル系樹脂、メラミン樹種などの化合物及びそれらの混合物等が適用可能である。
【0033】
アンカー層中には、滑り性の改善、インク受容層との密着力向上を目的に各種の粒子を添加しても良い。例えば、シリカ、カオリナイト、タルク、炭酸カルシウム、ゼオライト、アルミナ、硫酸バリウム、カーボンブラック、酸化亜鉛、酸化チタン、等の無機粒子、アクリル、ナイロン、スチレン、ポリエステル、ベンゾグアナミン・ホルマリン縮合物、等の有機粒子が挙げられる。更に、アンカー層には各種の目的で、界面活性剤、帯電防止剤、蛍光染料、蛍光増白剤、紫外線吸収剤等を添加しても良い。
【0034】
また、アンカー層を設ける方法としては、グラビアコート方式、キスコート方式、ディップ方式、スプレイコート方式、カーテンコート方式、エアナイフコート方式、ブレードコート方式、リバースロールコート方式など通常用いられている方法が適用でき、フィルムの成膜工程でアンカー層を設けるインラインコート方式、成膜後にアンカー層を設けるオフラインコート方式により設けることができる。好ましくは、コスト的に有利であるインラインコート方式である。
【0035】
本発明では、基材上に直接或いはアンカー層を介して多孔質構造のインク受容層を設ける必要がある。
【0036】
インク受容層としては、粒子と非水溶性樹脂からなる多孔質構造を形成する必要がある。多孔質構造を形成する方法は特に限定される訳ではないが、粒子と樹脂から主に構成し、樹脂に対して粒子を多く含有する塗液を作成し、基材上に塗布し乾燥する方法が挙げられる。
【0037】
粒子としては、シリカ、カオリナイト、タルク、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、ゼオライト、アルミナ、硫酸バリウム、カーボンブラック、酸化亜鉛、硫酸亜鉛、炭酸亜鉛、二酸化チタン、サチンホワイト、珪酸アルミニウム、ケイソウ土、珪酸カルシウム、水酸化アルミニウム、加水ハロイサイト、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、等の無機粒子、アクリル或いはメタアクリル系、塩化ビニル系、酢酸ビニル系、ナイロン、スチレン/アクリル系、スチレン/ブタジエン系、ポリスチレン/アクリル系、ポリスチレン/イソプレン系、ポリスチレン/イソプレン系、メチルメタアクリレート/ブチルメタアクリレート系、メラミン系、ポリカーボネート系、尿素系、エポキシ系、ウレタン系、フェノール系、ジアリルフタレート系、ポリエステル系等の樹脂粒子が挙げられる。これらの中で、表面に細孔を有している合成非晶質シリカが好ましい。
【0038】
シリカの特性としては、平均粒径が1〜20μm、細孔容積が0.2〜3.0ml/gのものが好適に使用可能である。好ましくは、細孔容積が1.0ml/g以上で、平均粒径が1〜8μmと平均粒径8〜20μmの2種類のシリカを混合することである。細孔容積の大きい粒子を用いることによりインク吸収容量を大きくすることができ、2種混合することによりインク受容層が嵩高いものとなり、同一塗工量でもインクの吸収容量を大きくすることができる。2種混合の質量比率は、10/90〜90/10の範囲が好ましく、より好ましくは30/70〜70/30である。また、必要に応じて表面改質されたものでも良い。表面処理としては、有機シラン、有機チタネートなどを用いた化学処理、パラフィンワックスやグリコール系を表面に付着させる物理処理などがある。
【0039】
このようなシリカとしては、市販物を好適に選択できる。例えば、水沢化学製ミズカシル、徳山ソーダ製トクシール、ファインシール、シオノギ製薬製カープレックス、富士シリシア製サイリシア、グレースデビソン製サイロイド、サイロジェット、日本シリカ製ニップジェル等が挙げられる。
【0040】
特に、溶剤型インクによる印刷に適するインク受容層につて、研究開発をしているにおいて、インク受容層を構成する樹脂として、エチレン酢酸ビニル共重合体を主成分とするものが、インクジェット記録方法に適していることを見出した。しかし、このエチレン酢酸ビニル共重合体について詳細に研究したところ、通常の共重合体は、平均分子量が5000〜500000程度の、密度0.940〜0.954程度、酢酸ビニル含量が1〜45%程度、好ましくは酢酸ビニル含量が20〜29%程度のエチレン酢酸ビニル共重合体等が市販されている。
【0041】
一方、平均分子量(数平均)が2000〜10000程度の、酢酸ビニル含量が1〜25%超低分子量のエチレン酢酸ビニル共重合体が市販されている。さらに共重合体を表示する要件も、密度は0.91〜0.99、好ましくは0.929〜0.935、軟化点は84〜110℃、融点74〜120℃のように、そのグレードの特性は多岐にわたり、これらの共重合体をインク受容層に供するには、物性に関して吟味しなければならない。これらの汎用の各種共重合体の一般的な特性として、エチレン含量が80%以上に、例えば90%、95%、99%のように多くなると、ポリエチレンの特性が顕著に現われてくる。一方で、酢酸ビニル含量の30%から、20%、18%、5%、3%のように低下するということは、強度、接着性、加工性、顔料、フイラーの分散性などの不良に微妙に影響するので、インク受容層に供する共重合体の、エチレン含量の適正値を決めることが求められている。
【0042】
さらに、インク受容層という特定の用途にすれば、そのインク受容層の印刷特性、耐候、強度などの機能を向上させる為、或いはエチレン酢酸ビニル共重合体の特性を補足する為に、例えば、ポリウレタン樹脂のような各種ポリマーをブレンドした複合材料である場合が多いこと、および、シリカのような充填剤を多量に配合するという事情からすると、インク受容層を構成するエチレン酢酸ビニル共重合体の選定には、それらの事情を考慮しなければならい。そうすると、単に市販のエチレン酢酸ビニル共重合体の特徴を端的に表す、例えばエチレン含量が、80%以上とか、95%、98%にように、エチレン含量にだけに専ら依存して、市販の各種グレードの共重合体の内から,その最適な共重合体を決めることに自ずと限界がある。そこで、本発明者らは、インク受容層という特定の用途に供する最適なエチレン共重合体の性質を追求したところ、赤外吸収スペクトルの、特定の波長に付近でピーク(Ha、Hb)を測定し、かつ(Ha/Hb)で算定される特定の範囲の共重合体が、インク受容層に適しているという知見に基づくものである。
【0043】
本発明において、粒子を結着する樹脂として、エチレン酢酸ビニル共重合体を含有させる必要があり、かつ、エチレン酢酸ビニル共重合体の赤外吸収スペクトルで認められるC=Oによる波長1740cm−1付近の吸収ピーク高さ(Ha)とC−Hによる波長1460cm−1付近の吸収ピーク高さ(Hb)の比(Ha/Hb)を0より大きく3.0以下の範囲内である必要がある。
【0044】
上記の値は、エチレン酢酸ビニル共重合体のエチレンの含有量を特定するものであり、エチレン酢酸ビニル共重合体中のエチレンの共重合比率が高くなると、C=Oによる吸収ピーク強度が低下し、逆にC−Hによる吸収ピーク強度が増大する。しかし、測定時のサンプルの粗さ、ATR法でのサンプルの押し付け条件により吸収ピークの高さが変化する為、規格化を目的に、C=Oによる吸収ピーク高さとC−Hによる吸収ピーク高さの比を計算し、エチレン酢酸ビニル共重合体中のエチレンの比率を定量的に表現している。
【0045】
本発明において、赤外吸収スペクトルは、測定するエチレン酢酸ビニル共重合体の被膜を作成し、水平型ATR装置(ZnSe)、解像度4cm−1、積算回数40回、アポダイズ関数Happ−Genzel、検出器がDLATGSで測定し、1740cm−1付近に現れる吸収ピークの高さと1460cm−1付近に現れる吸収ピークの高さを測定している。
【0046】
本発明において、Ha/Hbの比率を特定することにより、エチレン酢酸ビニル共重合体のエチレン比率を定量化しており、エチレンの比率の高いエチレン酢酸ビニル共重合体を樹脂中に含有させる必要があることを示している。エチレンの比率が高くなることにより、溶剤インク中の溶剤で溶解され難くなり、発色性を良好にすることが可能になる。
【0047】
本発明において、上記のエチレン酢酸ビニル共重合体を樹脂の主体としても良いが、エチレンの比率が高くなるにつれて粒子の結着能力が低下する為、他の樹脂を混合することが好ましい。混合する樹脂としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンオキシド、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリカーボネート、アルキッド、ポリウレタン、メチルメタアクリレート、セルロース、酢酸ビニルなどが好適に使用できるが、耐水性を低下させない非水溶性のものを用いる必要があり、アクリル系、ウレタン系の樹脂が好ましい。
【0048】
樹脂中のエチレン酢酸ビニル共重合体の混合量の下限は30質量%以上である。少ない場合には、本発明の溶剤インク特性を良好にする効果が得られない。また、樹脂中のエチレン酢酸ビニル共重合体の混合量の上限は、100質量%であるが、好ましくは90質量%以上である。90質量%を越える場合には、溶剤インクでの印刷特性は良好であるが、多孔質構造の強度が低下しやすくなる問題がある。
【0049】
本発明で非吸水性樹脂とは、常温の水に対して溶解せず、かつ、常温の水を樹脂固体に対して10質量%以上吸水しない樹脂のことであり、より好ましくは5質量%以上吸収しない樹脂のことである。吸水性の評価としては、樹脂の固体を常温で24時間浸漬したときの体積の変化で測定することができる、具体的には実質的に非吸水性の支持体、例えばアルミ箔、ガラス等の上に樹脂層を数十μの厚みで塗布、乾燥し、18℃のイオン交換水中に24時間浸漬した後の厚みの変化から測定できる。
【0050】
粒子と非水溶性樹脂の混合比率は、表面強度、印刷特性との兼ね合いから調節する必要がある。粒子の細孔容積が高い場合や粒子の粒径が小さい場合には、非水溶性樹脂の比率を上げる必要があり、逆に、粒子の細孔容積が低い場合や粒子の粒径が大きい場合には、非水溶性樹脂の比率を低くする必要がある。
【0051】
細孔容積が0.3〜1.0ml/gの粒子を用いる場合には、粒子と非水溶性樹脂の質量比率は、5/1〜15/1が好ましく、細孔容積が1.0〜3.0の粒子を用いる場合には、粒子と非水溶性樹脂の質量比率は、1.1/1〜3.0/1が好ましい。粒子が少ない場合には印刷特性が不良となり、逆に粒子が多い場合には多孔質層の強度が低下する問題がある。
【0052】
本発明において多孔質構造とは内部に多数の空隙が存在し、表面から内部にかけて連通していることである。
【0053】
インク受容層にはコート時のレベリング性の向上、コート液の脱泡を目的に界面活性剤を添加することもできる。界面活性剤はカチオン系、アニオン系、ノニオン系および非イオン性などいずれのものでも構わない。しかし、好ましくはシリコーン系またはフッソ系界面活性剤が好ましい。シリコーン系界面活性剤としてはジメチルシリコン、アミノシラン、アクリルシラン、ビニルベンジルシラン、ビニルベンジシルアミノシラン、グリシドシラン、メルカプトシラン、ジメチルシラン、ポリジメチルシロキサン、ポリアルコキシシロキサン、ハイドロジエン変性シロキサン、ビニル変性シロキサン、ビトロキシ変性シロキサン、アミノ変性シロキサン、カルボキシル変性シロキサン、ハロゲン化変性シロキサン、エポキシ変性シロキサン、メタクリロキシ変性シロキサン、メルカプト変性シロキサン、フッ素変性シロキサン、アルキル基変性シロキサン、フェニル変性シロキサン、アルキレンオキシド変性シロキサンなどが挙げられる。フッ素系界面活性剤としては、4フッ化エチレン、パーフルオロアルキルアンモニウム塩、パーフルオロアルキルスルホン酸アミド、パーフルオロアルキルスルホン酸ナトリウム、パーフルオロアルキルカリウム塩、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、パーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物、パーフルオロアルキルトリメチルアンモニウム塩、パーフルオロアルキルアミノスルホン酸塩、パーフルオロアルキルりん酸エステル、パーフルオロアルキルアルキル化合物、パーフルオロアルキルアルキルベタイン、パーフルオロアルキルハロゲン化物などが挙げられる。これらの界面活性剤はインク受容層のインク吸収性能が極度の低下しない程度に添加するのが好ましい。
【0054】
インク受容層には各種の添加剤をインク吸収能力及び他の物性を損なわない程度に加えても構わない。例えば、蛍光染料、蛍光増白剤、可塑剤、紫外線吸収剤、顔料分散剤、抑泡剤、消泡剤、防腐剤、等が挙げられる。
【0055】
インク受容層には各種の架橋剤を本発明の目的を阻害しない範囲で添加しても良い。架橋剤としては、尿素系、エポキシ系、メラミン系、イソシアネート系等が挙げられる。
【0056】
本発明において、粒子と非水溶性樹脂を含有する塗液は、固形分濃度の下限は40質量%、上限は60質量%、粘度の下限が50cps、上限が300cpsである。この様な物性の塗液を作成する為には、粒子の細孔、粒径、粒子と樹脂の比率を調節することにより達成できる。受容層の塗工量が多い場合には、固形分濃度が低い、粘度が低いことにより乾燥時に樹脂が基材側に移動し表面強度の弱くなる問題がある。逆に、固形分濃度が高い、粘度が高いときには、塗工直後や初期乾燥時のレベリング性の不良や脱泡性の不良によりコート外観が不良になる。
【0057】
インク受容層を設ける方法は特に限定されるものではないが、グラビアコート方式、キスコート方式、ディップ方式、スプレイコート方式、カーテンコート方式、エアナイフコート方式、ブレードコート方式、リバースロールコート方式、バーコート方式、リップコート方式など通常用いられている方法が適用できる。これらのなかで、粒子を含有した塗液を均一に塗工できるグラビアコート方式、特に、マイクログラビアコート方式が好ましい。
【0058】
コート量は特に限定されないが10g/mから50g/mであることが好ましい。コート量が少ない場合にはニジミの問題があり、多い場合にはカット時に端面から粉落ちが発生する等の問題がある。
【0059】
本発明において、粒子と樹脂を含有する塗液を不透明基材上に塗布した後に乾燥する必要があるが、初期の乾燥条件により多孔質構造が変化する為、注意が必要である。好ましい塗工、乾燥条件は、塗液を60g/m以上200g/m以下で不透明基材上に塗布し、100℃以上160℃以下で5m/秒以上30m/秒以下の熱風で初期乾燥する方法である。初期乾燥が強すぎる場合には多孔質構造に大きなクラックが発生しやすくなり、逆に初期乾燥が弱い場合には、多孔質膜の強度が弱くなりやすいばかりか印刷特性も不良となりやすい。
【0060】
インク受容層を設けた反対面には必要に応じて各種の加工を行っても構わない。帯電防止層、粘着層、筆記層等が挙げられる。
【0061】
本発明の記録材に対して使用されるインクは溶剤インクであれば如何なるものでも良く、染料或いは顔料を溶剤に溶解或いは分散したものが好適に使用できる。
【0062】
溶剤インクに使用させる染料としては、ナフトール染料、アゾ染料、金属錯塩染料、シアニン染料、キノリン染料、ニトロ染料、アントラキノン染料、キノイミン染料、インジゴ染料、ニトロソ染料、ベンゾキノン染料、カーボニウム染料、ナフトキノン染料、ナフタルイミド染料、フタロシアニン染料、ペリニン染料などの油溶性染料が挙げられる。
【0063】
溶剤インクに使用される顔料としては、アルミニウム粉、ブロンズ粉、カーボンブラック、酸化チタン、酸化鉄、亜鉛華、アルミナホワイト、べんがら、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、クレー、群青、黄鉛、コバルトブルー、紺青等の無機顔料、ファストエローG、ファストエロー10G、ジスアゾエローAAA、ジスアゾエローAAMX、ジスアゾエローAAOT、ジスアゾエローAAOA、オルトニトロアニリンオレンジ、ジニトロアニリンオレンジ、ジスアゾオレンジ、ジスアゾオレンジ、ジスアゾオレンジPMP、バルカンオレンジ、トルイジンレッド、塩素化パラレッド、ナフトールカーミンFB、ナフトールレッドM、ブリリアントファストスカーレッド、ナフトールレッド23、ピラゾロンレッド、バリウムレッド2B、カルシウムレッド2B、ストロンチウムレッド2B、マンガンレッド2B、バリウムリソールレッド、レーキレッドC、ブリリアントカーミン6B、ピグメントスカーレット3Bレート、レーキボルドー10B、アンソシン3Bレーキ、アンソシン5Bレーキ、ローダミン6Gレーキ、エオシンレーキ、ナフトールレッドFGR、ローダミンBレーキ、メチルバイオレットレーキ、キナクリドンレッドk、ジオキサジンバイオレット、ビクトリアピュアブルーBOレーキ、ベーシックブルー5Bレーキ、ベーシックブルー6Gレーキ、フタロシアンブルー、ファストスカイブルー、アルカリブルーGトーナー、アルカリブルーRトーナー、ピーコックブルーレーキ、レフレックスブルー2G、レフレックスブルーR、ブリリアントグリーンレーキ、ダイヤモンドグリーンチオフラビンレーキ、フタロシアニングリーンG、グリーンゴールド、フタロシアニングリーンY、アニリンブラック、ボーンブラック、昼光蛍光顔料、パール顔料等が挙げられる。
【0064】
溶剤インクで使用される溶剤としては、ヘッドノズルの特性への適合性、安全性、乾燥性の観点から種々の溶剤が選択され、必要に応じて複数の溶剤を混合して用いる。このような溶剤としては、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、トリデシルアルコール、シクロヘキシルアルコール、2−メチルシクロヘキシルアルコール等のアルコール類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン等のグリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチレンエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルアセテート、エチレングリコールモノブチルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルアセテート等のグリコールエーテル類、酢酸エチル、酢酸イソプロピレン、酢酸n−ブチル等のエステル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン、ジアセトンアルコール等のケトン類、等が挙げられる。
【0065】
溶剤インクには、保存安定性、耐擦過性等を挙げる目的で、例えば、ポリアクリル酸エステル、アマニ油変性アルキッド樹脂、ポリスチレン、ロジン系樹脂、テンペンフェノール系樹脂、アルキルフェノール変性キシレン系樹脂などの樹脂を添加したり、可塑剤、ワックス、ドライヤー、分散剤、増粘剤、ゲル化剤、チキソトロピー付与剤、消泡剤、抑泡剤、沈降防止剤、皮張り防止剤、乾燥抑制剤、酸化防止剤、平滑剤、防カビ剤、紫外線吸収剤、つや消し剤、帯電防止剤、安定剤、難燃剤、表面張力調節剤、界面活性剤、粘度調節剤などの添加剤を添加することもできる。
【0066】
かくして得られた記録材は、溶剤インクを用いたインクジェット記録方式において、画像濃度が高く、発色性に優れた高画質な記録が可能であり、かつ耐候性が良好なものである。
【実施例】
【0067】
以下に本発明を実施例と比較例により詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものでは無い。また、実施例において「部」又は「%」は、特に明示しない限り質量部及び質量%を示す。なお、本発明で塗布液、記録材、及び記録物の物性評価に用いた測定方法は以下のとおりである。
【0068】
(1)印刷特性
ローランド.ディー.ジー.製インクジェットプリンターSC−500およびその純正の溶剤インク(SL−BK、SL−CY、SL−MG、SL−YE、SL−LC、SL−LM)を用いて、Superの条件で、写真調の画像とイラストを印刷し目視で観察した。
◎:鮮やかで、発色性に非常に優れた記録である
○:鮮やかで、発色性に優れた記録である
△:若干発色性が劣るが問題無いレベルの記録である
×:くすみのある記録、或いは、発色性の乏しい記録
【0069】
(2)黒ベタ部の反射の光学濃度(反射濃度)
ローランド.ディー.ジー.製インクプリンターSC−500およびその純正の溶剤インクを用いて、Superの条件で、黒ベタ(K100%)の画像を色補正なしで印刷し、24時間自然乾燥させた後、マクベス濃度計TR−927を用いて黒ベタ部の反射の光学濃度を測定した。
【0070】
(3)耐候性
(1)で印刷した記録物を野外で3カ月間放置して、変化を目視で比較した。
○:差がない
△:若干の変化あるが、問題ないレベル
×:明白に差がある
【0071】
(6)表面強度
東洋インキ製ラミネートフィルム(S−124K)を受容層側に貼り付け、5kgfの荷重のローラーを3往復させた後に24時間放置して測定サンプルを作成。次いで、300mm/minの条件で180度剥離で剥離力を測定した。
【0072】
(7)赤外吸収スペクトル
ポリエステルフィルム上に30μ以上になる様に塗工、乾燥してエチレン酢酸ビニル共重合体の被膜を積層し、島津製作所製FT−IR(FTIR−8400)、水平型ATR装置(ATR−8200H)、固体用プリズムZnSe45°を用いて、解像度4cm−1、積算回数40回、アポダイズ関数Happ−Genzel、検出器DLATGSで測定し、1740cm−1付近に現れる吸収ピークの高さと1460cm−1付近に現れる吸収ピークの高さを測定した。
【0073】
実施例1
下記の塗液を調液し、空洞含有白色ポリエステルフィルム(東洋紡績製K232−100μm)に100g/m(乾燥後の塗布量で30g/m)になるように塗工し、120℃で10m/秒の熱風を30秒、160℃で10m/秒の熱風を30秒間吹き付けて乾燥し、記録材を得た。下記シリカは、細孔容積が1.25ml/gで、平均粒径が5.2μと12.0μである。下記エチレン酢酸ビニル共重合体のHa/Hbは2.0である。
水 56.08質量%
シリカ 9.41質量%
(富士シリシア製サイリシア450)
シリカ 9.41質量%
(富士シリシア製サイリシア470)
エチレン酢酸ビニル共重合体 15.50質量%
(中央理化工業製EC−1700、固形分濃度50%)
ウレタン樹脂 9.49質量%
(三井武田化学製W−635)
フッ素系界面活性剤 0.10質量%
(DIC製F−142D)
【0074】
実施例2
塗液を下記にしたこと以外は実施例1と同様にして記録材を得た。
水 54.18質量%
シリカ 9.41質量%
(富士シリシア製サイリシア450)
シリカ 9.41質量%
(富士シリシア製サイリシア470)
エチレン酢酸ビニル共重合体 11.07質量%
(中央理化工業製EC−1700、固形分濃度50%)
ウレタン樹脂 15.92質量%
(三井武田化学製W−635)
フッ素系界面活性剤 0.10質量%
(DIC製F−142D)
【0075】
実施例3
塗液を下記にしたこと以外は実施例1と同様にして記録材を得た。
水 52.28質量%
シリカ 9.41質量%
(富士シリシア製サイリシア450)
シリカ 9.41質量%
(富士シリシア製サイリシア470)
エチレン酢酸ビニル共重合体 6.64質量%
(中央理化工業製EC−1700、固形分濃度50%)
ウレタン樹脂 22.51質量%
(三井武田化学製W−635)
フッ素系界面活性剤 0.10質量%
(DIC製F−142D)
【0076】
実施例4
実施例1において、乾燥後の塗工量を20g/mとしたこと以外は実施例1と同様にして記録材を得た。
【0077】
実施例5
実施例1において、乾燥後の塗工量を40g/mとしたこと以外は実施例1と同様にして記録材を得た。
【0078】
実施例6
塗液を下記にしたこと以外は実施例1と同様にして記録材を得た。
水 58.93質量%
シリカ 9.41質量%
(富士シリシア製サイリシア450)
シリカ 9.41質量%
(富士シリシア製サイリシア470)
エチレン酢酸ビニル共重合体 22.15質量%
(中央理化工業製EC−1700、固形分濃度50%)
フッ素系界面活性剤 0.10質量%
(DIC製F−142D)
【0079】
実施例7
実施例1で用いたエチレン酢酸ビニル共重合体の製造時にエチレン比率を小さく、Ha/Hbを0.7としたエチレン酢酸ビニル共重合体を用いたこと以外は実施例1と同様にして記録材を得た。
【0080】
実施例8
実施例1で用いたエチレン酢酸ビニル共重合体の製造時にエチレン比率を大きくし、Ha/Hbを2.7としたエチレン酢酸ビニル共重合体を用いたこと以外は実施例1と同様にして記録材を得た。
【0081】
比較例1
実施例1で用いたエチレン酢酸ビニル共重合体の製造時にエチレン比率を大きくし、Ha/Hbを3.4としたエチレン酢酸ビニル共重合体を用いたこと以外は実施例1と同様にして記録材を得た。
【0082】
比較例2
エチレン酢酸ビニル共重合体の代わりに水溶性樹脂であるポリビニルアルコール(クラレ製GH−17R)を用いたこと以外は実施例1と同様にして記録材を得た。
【0083】
実施例1〜8及び比較例1、2で得られた記録材の特性値を表1に示す。
【0084】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明の記録材は、溶剤インクを用いたインクジェット記録方式において、画像濃度が高く、発色性に優れた高画質な記録が可能であり、かつ耐候性が良好なため、野外看板として用いた場合に特に好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
不透明基材上に粒子と非水溶性樹脂から主に構成される多孔質構造のインク受容層を設けた記録材であって、非水溶性樹脂がエチレン酢酸ビニル共重合体を含有し、かつ、エチレン酢酸ビニル共重合体の赤外吸収スペクトルで認められるC=Oによる波長1740cm−1付近の吸収ピーク高さ(Ha)とC−Hによる波長1460cm−1付近の吸収ピーク高さ(Hb)の比(Ha/Hb)が0を超え3以下であることを特徴とする記録材。
【請求項2】
前記のエチレン酢酸ビニル共重合体は、非水溶性樹脂に対し30質量%以上含有されていることを特徴とする請求項1記載の記録材。
【請求項3】
前記粒子がシリカであることを特徴とする請求項1または2記載の記録材。
【請求項4】
前記粒子が平均粒径の異なる2種を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の記録材。
【請求項5】
前記不透明基材は、全光線透過率が30%以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の記録材。
【請求項6】
前記不透明基材は、少なくとも1軸方向に延伸された、無機粒子を含有する白色ポリエステル系フィルムであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の記録材。
【請求項7】
前記不透明基材は、少なくとも1軸に延伸された微細な空洞を含有する白色ポリエステル系フィルムであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の記録材。
【請求項8】
不透明基材上に、水、粒子、及び非水溶性樹脂から主として構成される塗布液を塗布、乾燥して得られる多孔質構造のインク受容層を設けた請求項1〜6記載の記録材の製造方法であって、前記塗布液は固形分濃度が40〜60質量%であり、かつ粘度が50〜300cpsであることを特徴とする記録材の製造方法。
【請求項9】
前記塗布液の塗布量が60〜200g/mであり、前記乾燥が100〜160℃で風速5〜30m/秒の熱風下で初期乾燥する工程を含むことを特徴とする請求項8記載の記録材の製造方法。
【請求項10】
請求項1〜7のいずれかに記載の記録材のインク受容層に、アルコール、グリコール、グリコールエーテル、酢酸エステル、ケトンから選ばれた少なくとも1種の溶剤、及び染料または顔料を含有する溶剤インクを用いてインクジェット方式で記録することを特徴とする記録物の製造方法。
【請求項11】
前記溶剤がジプロピレングリコールモノメチルエーテルを含有することを特徴とする請求項10記載の記録物の製造方法。

【公開番号】特開2006−130754(P2006−130754A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−321365(P2004−321365)
【出願日】平成16年11月4日(2004.11.4)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】