説明

記録紙

【課題】 印画時の切断線(ミシン目)による段差の影響を避ける。
【解決手段】 切断線(ミシン目)を主走査方向に対し全領域で傾きをもって形成させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱転写式プリンタ装置に用いる記録紙に関する、特に、印刷範囲と印刷範囲外(いわゆるタブの領域)に分けるミシン目などの切断線を有する記録紙に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンピュータの出力装置やデジタル映像の出力装置としてのプリンタ装置は、記録方式に応じて、熱転写式プリンタ装置、インクジェットプリンタ装置、レーザープリンタ装置、ワイヤードットプリンタ装置などに分類できる。そのうち、熱転写式プリンタ装置は、インクシートおよび記録紙を用い、主走査方向に配列された複数個の発熱体を選択的に駆動して、インクシートと記録紙とを副走査方向に搬送することにより、記録紙にドットライン状に印画を行うものである。
【0003】
近年、入力側であるデジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、スキャナ等の画像を扱う入力機器の進歩に伴い、熱転写式プリンタ装置に対する注目度が高くなっている。熱転写式プリンタ装置は、静止画を記録するスチルカメラやビデオカメラなどによって撮像された電子画像情報を、コンピュータまたは記録媒体を介してプリント出力するのに好適なプリンタ装置だからである。
【0004】
例えば、インクジェットプリンタ装置などの他の方式のプリンタ装置では、ドットを形成するか否かの2値の選択しかないために、小さなドットを記録紙に形成しながら誤差拡散等の手法でみかけの解像度と階調性を得ようとしている。一方で、熱転写式プリンタ装置の場合には、1つの画素の濃度を制御する熱の量を容易に変更できるため、1つの画素に対し比較的容易に多階調性を得ることができる。この違いにより、インクジェットプリンタ装置等の他のプリンタ装置に比べ、熱転写式プリンタ装置の方が滑らかで高画質な画像を得ることができるという利点がある。また、近年の熱転写式プリンタ装置においては、記録手段としてのサーマルヘッドの性能や記録紙材料の性能も向上し、仕上がり品位でも銀塩写真に見劣りしない画像プリントを得ることができるようになってきており、特に自然画像用のプリンタとして注目されてきている。
【0005】
以上のような熱転写式プリンタ装置において、フルカラー印刷を行うためには、複数色のインクを繰り返し重ねて転写する必要があり、これを実現させるための従来の一般的な熱転写式プリンタ装置の構成の一例を図7〜13に示し、プリンタ装置の動作を説明する。
【0006】
図7はカセット1をプリンタ20に装填された印刷前の待機位置を示している。24は加圧板であり、給紙を行う際に記録紙11を給紙ローラ23側へ押圧するものである。図7の状態は待機位置であるため、加圧板24は記録紙11から離間した位置にある。この状態から加圧板24が図下方向へ移動し、記録紙11へ所定圧力を持って押圧され、給紙ローラ23が反時計方向へ回転すると給紙ローラ23に接している記録紙11が一枚のみ図左方向へ移動していき、爪分離が行われ、排出口30より記録紙11が排出される。
【0007】
図8は排出された記録紙11がカセット1から所定量送り出された状態を示している。記録紙11が所定量送りだされた後、図9に示すよう記録紙11はローラ板27により第一ローラ28へ押し付けられ、第一ローラ28の回転により更にカセット1より引き抜かれていく。
【0008】
図10は記録紙11がカセット1より引き抜かれ、所定量送られた状態を示している。この状態から記録紙11を記録紙11の面に垂直方向の軸を中心に回転させる。
【0009】
図11は回転途中の状態を示している。記録紙11の回転駆動は2つ有る第一ローラ28を双方逆回転刺さることで行う。第一ローラ28aを記録紙11をプリンタ20内へ引き込む方向、第一ローラ28bをプリンタ20外へ送り出す方向へ回転させる。
【0010】
図12は回転が完了した状態を示している。この状態から第一ローラ28a、28bにより記録紙11をプリンタ20内へ送り込み印刷動作へ移行する。
【0011】
図13は印刷状態を示している。印刷動作はインクシート12と記録紙11をサーマルヘッド21とプラテンローラ22とで圧接し、サーマルヘッド21の発熱によりインクシート12上のインクを記録紙11上に熱転写させながら、印画方向下流に設けた1対のグリップローラ25とピンチローラ26で記録紙11を搬送させて行う。一色目の印刷が終わるとサーマルヘッド21の圧接を開放し、グリップローラ25とピンチローラ26を印刷動作時とは逆方向に回転させて印刷開始位置まで記録紙11を戻し、1色目と同様の動作で2色目以降を印画する。このようにしてイエロー・マゼンタ・シアンの3色を重ねてフルカラー印刷を行う。印刷が完了すると記録紙11はプリンタ20の右側外部へ排出される。
【0012】
以上のような熱転写式プリンタ装置に用いる記録紙には、印刷領域とは別に、それ以外の領域(いわゆる、タブ)も設けられている。このタブは以下のような理由により設けられている。
【0013】
図13で示すように、用紙をグリップローラ25とピンチローラ26で掴んで用紙搬送して印刷を行う。つまり、印画を行うサーマルヘッド21とグリップローラ25及びピンチローラ26とは、用紙搬送方向に所定の距離が必要となっており、その結果、記録紙としても、サーマルヘッドによる印画中にグリップローラ25とピンチローラ26が掴める領域として、タブが必要なのである。
【0014】
このタブと印刷領域との切断方法は、ユーザーが容易に切断できるように、一般的には記録紙にミシン目などの切断線を設けている。ユーザーは、この切断線に沿って、印刷領域とそれ以外の領域(タブ)に切り分けて、印刷物を得るのである。
【0015】
以上の記録紙の切断線に関して記されているものとして、特許文献1がある。これば、ラベル記録紙の切断線に関してであり、カードケースなどの収納物に収納しやすい切断線の形状として、四角形の記録紙の四隅を湾曲するように形成していることを特徴としている特許である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開2001−312206号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
以上のような構成の自然画像用のプリンタとして注目されている熱転写式プリンタ装置であるが、図14に示すような課題が判明した。
【0018】
図14の(c)は、ある階調の濃度一定のデータを熱転写式プリンタ装置で印刷した場合の印画物を示している。印画物右側の白線はミシン目(切断線)であり、これに平行な濃度の濃い線(以後、「切断線ジッタ」と表記)が印画物中央箇所に示されている。これは、濃度一定のデータによる画像を印刷しているにもかかわらず、本来現れることのない画像が切断線ジッタとして印画されていることを示している。この現象は、自然画像の印刷においても確認され、画質上の劣化を引き起こし、問題となっていた。
【課題を解決するための手段】
【0019】
インクシートの有するインクを転写して、画像の記録を行う熱転写記録装置に用いる記録紙において、
該記録紙には、最終的に印刷物として得られる印画領域と、印画領域以外の領域とで構成され、
上記二種類の領域の境界には二つの領域に切断できるように切断線が設けられており、
該切断線は主走査方向の全領域に対し傾きを有していることを特徴とする、熱転写記録装置に用いる記録紙である。
【0020】
図14の(a)及び(b)は、熱転写式プリンタ装置の一部及び印刷中の記録紙を模式的に表したものである。また、図14の(b)は、図14の(c)と対応した模式図となっている。
【0021】
グリップローラ25及びピンチローラ26上にミシン目が通過したときを表しており、このときに、ミシン目による段差の影響により、グリップローラ25及びピンチローラ26に負荷変動が生じ、用紙の搬送速度が一時的に低下する。その結果、このときのサーマルヘッド21直下の用紙への印刷において、搬送速度が低下した分濃度が濃く印画されてしまい、濃度の濃い線を形成して画質を劣化させてしまうということが判明した。
【0022】
そこで、本発明では、グリップローラ及びピンチローラと切断線(ミシン目)との関係を鋭意検討した結果、切断線を印刷主走査方向に対し傾きをもたせて形成することにより、画像を劣化させる切断線ジッタが改善もしくは消失するということを突き止めるに到った。
【0023】
すなわち、主走査方向に略平行なグリップローラ及びピンチローラの回転軸に対し、傾きをもたせて切断線を設けることにより、切断線上をグリップローラ及びピンチローラが通過する際の段差の影響を小さくすることができ、その結果、用紙搬送の速度変化も小さくなるため、切断線ジッタ特性が改善されるのである。
【発明の効果】
【0024】
本発明は、記録紙の切断線を主走査方向に対し、傾きをもたせて形成することにより、このような記録紙を用いて印刷したときに、切断線の段差の影響を小さくすることができ、切断線ジッタによる画質劣化を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施形態(実施例1)の模式図
【図2】本発明の一実施形態(実施例2)の模式図
【図3】本発明の一実施形態(実施例3)の模式図
【図4】本発明の一実施形態(実施例4)の模式図
【図5】本発明の一実施形態(実施例5)の模式図
【図6】本発明の一実施形態(実施例6)の模式図
【図7】プリンタ40の動作を説明した図
【図8】プリンタ40の動作を説明した図
【図9】プリンタ40の動作を説明した図
【図10】プリンタ40の動作を説明した図
【図11】プリンタ40の動作を説明した図
【図12】プリンタ40の動作を説明した図
【図13】プリンタ40の動作を説明した図
【図14】従来技術の課題を説明する模式説明図
【図15】本発明の実施例1の切断線形成用刃の模式図
【図16】本発明の実施例2及び実施例3の切断線形成用刃の模式図
【図17】本発明の実施例4の切断線形成用刃の模式図
【図18】本発明の実施例5の切断線形成用刃の模式図
【図19】本発明の実施例6の切断線形成用刃の模式図
【発明を実施するための形態】
【0026】
(実施例1)
本発明の実施形態で用いる記録紙としては、通常の熱転写式プリンタ用の記録紙でよい。通常、基材とその基材上に形成されインク等を吸収して定着させる受容層とを有する。
【0027】
一般的には、基材として、塩化ビニルやポリエステル、ポリスチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリカーボネート、ノルボルネン、ビニロン、アクリル等のプラスチックフィルムまたはシートが用いられている。また、受容層としては、ポリウレタンやポリアクリル等を主成分としたものが多く用いられている。
【0028】
しかし、本発明は上述の記録紙に限定するものではなく、熱転写式プリンタに使用することができる記録紙であれば、本発明の効果を得ることができる。
【0029】
記録紙の用紙サイズは、印刷副走査方向の縦150mm、印刷主走査方向の横100mmであった。ただし、本発明は記録紙のサイズに限定するものではない。
【0030】
以上の記録紙に対し、図1のようなミシン目を形成した。プリンタ装置における、サーマルヘッド、及び、グリップローラ、ピンチローラ、プラテンローラの長手方向に略平行な主走査方向に対し、角度10だけ傾かせてミシン目(切断線)を設けた。
【0031】
本実施形態では、ミシン目は、図15のようなミシン目形成用の刃で形成している。刃の形状としては、刃が形成されている領域幅Wは105mmで、用紙横幅100mmより大きくしており、拡大図に示すような凸部幅0.5mm、凹部幅0.4mm、凸部深さ0.8mmの刃が設けられている。刃の側面からみた断面形状に関しては、刃の先端の角度は45°とした。以上のミシン目形成刃を用いて、前述の記録紙に刃を押し付けることにより、ミシン目(切断線)を設けるのである。
【0032】
本実施例では、以上のようにして記録紙にミシン目(切断線)を形成したが、本発明においては、その他のミシン目(切断線)形成用刃、もしくは、作製方法になんら限定されるものではなく、切断線を形成した結果、段差が生じるものに対しては、すべて本発明の効果を得ることができる。
【0033】
以上のようにして、ミシン目を形成し、図1における角度10を種々設定して印刷し、切断線ジッタ特性を評価した結果が表1である。表1に示される切断線ジッタ判定結果としては、「○→切断線ジッタは観測されず、△→切断線ジッタは観測されるが、濃度が薄く許容範囲内、×→濃度の濃い切断線ジッタが観測される」としている。
【0034】
表1で示されるように、主走査方向に対する切断線の角度10が大きいものほど、切断線ジッタ特性が改善している。また、0.3°以上にしてミシン目を形成することにより切断線ジッタ特性が良好(○)となっており、切断線ジッタ的には、主走査方向に対する角度として0.3°以上にして、切断線を設けることが望ましい。
【0035】
【表1】

【0036】
(実施例2)
本実施例では、図16で示すような切断線形成用刃を用いて、切断線を図2のように形成したこと以外は実施例1と同様にして、記録紙を作製した。この記録紙を用いて印刷したところ、切断線ジッタの判定結果として「○」で、良好であった。
【0037】
(実施例3)
本実施例では、図16で示すような切断線形成用刃を用いて、切断線を図3のように形成したこと以外は実施例1と同様にして、記録紙を作製した。この記録紙を用いて印刷したところ、切断線ジッタの判定結果として「○」で、良好であった。
【0038】
(実施例4)
本実施例では、図17で示すような切断線形成用刃を用いて、切断線を図4のように形成したこと以外は実施例1と同様にして、記録紙を作製した。この記録紙を用いて印刷したところ、切断線ジッタの判定結果として「○」で、良好であった。
【0039】
(実施例5)
本実施例では、図18で示すような切断線形成用刃を用いて、切断線を図5のように形成したこと以外は実施例1と同様にして、記録紙を作製した。この記録紙を用いて印刷したところ、切断線ジッタの判定結果として「○」で、良好であった。
【0040】
(実施例6)
本実施例では、図19で示すような切断線形成用刃を用いて、切断線を図6のように形成したこと以外は実施例1と同様にして、記録紙を作製した。この記録紙を用いて印刷したところ、切断線ジッタの判定結果として「○」で、良好であった。
【符号の説明】
【0041】
1 カセット
10 主走査方向に対する切断線との角度
11 記録紙
12 インクシート
20 プリンタ
21 サーマルヘッド
22 プラテンローラ
23 給紙ローラ
24 加圧板
25 グリップローラ
26 ピンチローラ
27 ローラー板
28 第一ローラ
30 排出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクシートの有するインクを転写して、画像の記録を行う熱転写記録装置に用いる記録紙において、
該記録紙には、最終的に印刷物として得られる印画領域と、印画領域以外の領域とで構成され、
上記二種類の領域の境界には二つの領域に切断できるように切断線が設けられており、
該切断線は主走査方向の全領域に対し傾きを有していることを特徴とする、熱転写記録装置に用いる記録紙。
【請求項2】
切断線と主走査方向の角度を0.3°以上とすることを特徴とする、請求項1記載の記録紙。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2011−101993(P2011−101993A)
【公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−257890(P2009−257890)
【出願日】平成21年11月11日(2009.11.11)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】