説明

記録装置、記録装置の制御方法、及び、プログラム

【課題】ドットインパクト方式の記録ヘッドを備える記録装置において、伝票刺しへ容易に刺すことが可能な紙片を発行可能とする。
【解決手段】プリンター1は、ドットインパクト方式の記録ヘッド16を備え、記録ヘッド16により記録媒体に記録を行うものであり、記録ヘッド16の記録ワイヤ17により、記録媒体の所定の位置に、穴部を形成する穴部形成部15aを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドットインパクト方式の記録ヘッドを備える記録装置、記録装置の制御方法、及び、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ドットインパクト方式の記録ヘッドを備える記録装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
そして、小売店等の店舗において、この種の記録装置を用いて、以下のように使用されることが想定された紙片が発行されることがある。
すなわち、クーポンや、伝票等、何らかのタイミングで店舗側が受け取る紙片であって、いわゆる伝票刺し(土台に、紙片を刺すための垂直に延びるピンが設けられ、このピンに対して重ねるようにして紙片を刺していくもの)に刺すことが想定された紙片が発行されることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−200999号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、伝票刺しに紙片を刺す作業について、連続して複数回行う場合がある等の理由により、できるだけ容易に行えるようにしたいとするニーズがある。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、ドットインパクト方式の記録ヘッドを備える記録装置において、伝票刺しへ容易に刺すことが可能な紙片を発行可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明は、ドットインパクト方式の記録ヘッドを備え、前記記録ヘッドにより記録媒体に記録を行う記録装置であって、前記記録ヘッドの記録ワイヤにより、前記記録媒体の所定の位置に、穴部を形成する穴部形成部を備えることを特徴とする。
ここで、記録媒体に係る紙片に、凹みや貫通孔等の穴部が形成されていれば、この穴部に対して伝票刺しのピンを刺すことにより、スムーズに、ピンが穴部を貫通することになるため、紙片を伝票刺しに刺す作業が容易化する。また、ドットインパクト方式の記録ヘッドは、記録ヘッドに設けられた記録ワイヤを、インクリボンを介して、記録媒体に向けて打ち当てることにより画素を記録する構造であるため、打ち当てる際の動作や、記録ワイヤの構造によって、記録媒体に穴部を形成することが可能である。
以上を踏まえ、上記構成によれば、記録ヘッドの記録ワイヤを利用して、記録媒体の所定の位置に穴部が形成されるため、伝票刺しへ容易に刺すことが可能な紙片を発行することが可能となる。
【0006】
また、上記発明の記録装置であって、本発明は、前記穴部形成部は、前記記録ワイヤを、前記記録媒体の所定の位置に複数回打ち当てることにより、凹みが形成された前記穴部を形成することを特徴とする。
この構成によれば、記録ワイヤを、所定の位置に、複数回突き当てることによって凹みが形成された穴部を形成するため、既存の記録ヘッドを利用して、伝票刺しのピンを貫通させる上で適した穴部を形成可能である。
【0007】
また、上記発明の記録装置であって、本発明は、前記穴部形成部は、前記記録ワイヤを、前記記録媒体の所定の位置に通常の動作時よりも強い力で打ち当てることにより、凹みが形成された前記穴部を形成することを特徴とする。
この構成によれば、記録ワイヤを、所定の位置に、通常の動作時よりも強い力で突き当てることにより、凹みが形成された穴部を形成するため、既存の記録ヘッドを利用して、伝票刺しのピンを貫通させる上で適した穴部を形成可能である。
【0008】
また、上記発明の記録装置であって、本発明は、前記穴部形成部は、複数の前記記録ワイヤのそれぞれについて、前記穴部の形成に使用する回数を平準化することを特徴とする。
この構成によれば、記録ヘッドが備える記録ワイヤのそれぞれについて、穴部の形成に使用される記録ワイヤに偏りが生じることを防止でき、穴部を形成することに起因した記録ヘッドの劣化を抑制できる。
【0009】
また、上記発明の記録装置であって、本発明は、前記穴部形成部は、前記穴部に対応する位置に印となる画像を記録することを特徴とする。
この構成によれば、記録媒体において穴部が形成された位置が容易に把握可能となる。
【0010】
また、上記発明の記録装置であって、本発明は、前記記録ヘッドは、画素形成用の前記記録ワイヤとは別に、前記穴部を形成するためのワイヤを備え、前記穴部形成部は、前記ワイヤを、前記記録媒体の所定の位置に貫通させることにより、貫通孔が形成された前記穴部を形成することを特徴とする。
この構成によれば、記録ヘッドのワイヤにより、記録媒体に貫通孔が形成された穴部が形成されるため、記録媒体に係る紙片について、伝票刺しのピンを穴部に貫通させることがよりスムーズとなり、より容易に伝票刺しに刺すことが可能となる。
特に、貫通孔を形成するためのワイヤは、記録ヘッドの記録ワイヤと同一の機構で駆動する構成とすることが可能であり、このような構成とすることにより、既存の構造を利用して記録ヘッドにワイヤを設けることができ、貫通孔を形成するための機構を別に設ける場合と比較して、製造容易性の向上、及び、製造コストの削減を実現可能である。
【0011】
また、上記目的を達成するために、本発明は、ドットインパクト方式の記録ヘッドを備え、前記記録ヘッドにより記録媒体に記録を行う記録装置の制御方法であって、前記記録媒体の所定の位置に前記記録ヘッドの記録ワイヤを打ち当て、前記記録媒体の所定の位置に穴部を形成することを特徴とする。
ここで、記録媒体に係る紙片に、凹みや貫通孔等の穴部が形成されていれば、この穴部に対して伝票刺しのピンを刺すことにより、スムーズに、ピンが穴部を貫通することになるため、紙片を伝票刺しに刺す作業が容易化する。また、ドットインパクト方式の記録ヘッドは、記録ヘッドに設けられた記録ワイヤを、インクリボンを介して、記録媒体に向けて打ち当てることにより画素を記録する構造であるため、打ち当てる際の動作や、記録ワイヤの構造によって、記録媒体に穴部を形成することが可能である。
以上を踏まえ、上記制御方法によれば、記録ヘッドの記録ワイヤを利用して、記録媒体の所定の位置に穴部が形成されるため、伝票刺しへ容易に刺すことが可能な紙片を発行することが可能となる。
【0012】
また、上記目的を達成するために、本発明は、ドットインパクト方式の記録ヘッドを備え、前記記録ヘッドにより記録媒体に記録を行う記録装置を制御する制御部により実行されるプログラムであって、前記制御部を、前記記録ヘッドの記録ワイヤにより、前記記録媒体の所定の位置に、穴部を形成する穴部形成部として機能させることを特徴とする。
ここで、記録媒体に係る紙片に、凹みや貫通孔等の穴部が形成されていれば、この穴部に対して伝票刺しのピンを刺すことにより、スムーズに、ピンが穴部を貫通することになるため、紙片を伝票刺しに刺す作業が容易化する。また、ドットインパクト方式の記録ヘッドは、記録ヘッドに設けられた記録ワイヤを、インクリボンを介して、記録媒体に向けて打ち当てることにより画素を記録する構造であるため、打ち当てる際の動作や、記録ワイヤの構造によって、記録媒体に穴部を形成することが可能である。
以上を踏まえ、上記プログラムを実行すれば、記録ヘッドの記録ワイヤを利用して、記録媒体の所定の位置に穴部が形成されるため、伝票刺しへ容易に刺すことが可能な紙片を発行することが可能となる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ドットインパクト方式の記録ヘッドを備える記録装置において、伝票刺しへ容易に刺すことが可能な紙片を発行することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】第1実施形態に係るプリンターを模式的に示す図である。
【図2】プリンターの機能的構成を示すブロック図である。
【図3】プリンターによって発行されるクーポンを模式的に示す図である。
【図4】プリンターの動作を示すフローチャートである。
【図5】位置指定ウインドウを模式的に示す図である。
【図6】第2実施形態に係るプリンターの要部を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
<第1実施形態>
図1は、本実施形態に係るプリンター1(記録装置)を模式的に示す図である。
本実施形態に係るプリンター1は、ドットインパクト方式の記録装置であり、図1に示すように、記録媒体が搬送される搬送経路10が設けられ、この搬送経路10には、搬送経路10内で記録媒体を搬送方向へ搬送する一対の搬送ローラー11が設けられている。
搬送ローラー11は、搬送モーター12(図2)に接続されており、搬送モーター12の駆動に応じて回転し、搬送経路10内で記録媒体を搬送する。搬送ローラー11は、正逆回転可能に構成されており、搬送方向(図1の矢印Y1で示す方向)、及び、搬送方向と逆方向(図1の矢印Y2で示す方向)のいずれの方向にも記録媒体を搬送可能である。
搬送ローラー11の搬送方向の下流側には、媒体検出センサー13が設けられている。媒体検出センサー13は、透過型もしくは反射型のフォトセンサーであり、搬送経路10上の対応する位置P1における記録媒体の有無を非接触で検出する。後述する制御部15(図2)は、媒体検出センサー13の検出値に基づいて、記録媒体の先端が、位置P1に位置していることを検出可能である。
【0016】
媒体検出センサー13の搬送方向の下流側には、記録ヘッド16が設けられている。
記録ヘッド16は、シリアル・インパクト・ドット・マトリクス(SIDM)プリンターヘッドとして構成されたドットインパクト方式のヘッドであり、電磁石コイルが巻き回されたコアと、この電磁石コイルへの所定通電幅(通電時間)の通電によってコアに吸着される複数のワイヤレバーと、各ワイヤレバーの先端に連結され、ワイヤレバーがコアに吸着されたときに突出動作する複数の記録ワイヤ17(図2)とを備えて構成されており、これらの記録ワイヤ17を突出動作させてインクリボンに打ち当て、インクリボンのインクを記録媒体に付着させて、この記録媒体に画素を形成することによって画像を記録する。
【0017】
記録ヘッド16は、キャリッジに搭載されている。キャリッジは、キャリッジ駆動モーター18(図2)の駆動に応じて、搬送方向と直交する主走査方向に往復移動可能に構成されている。
記録ヘッド16に対向する位置には、プラテン19が設けられている。
【0018】
図2は、プリンター1と、このプリンター1を制御するホストコンピューター21とを備える記録システム22の機能的構成を示すブロック図である。
図2に示すように、プリンター1は、制御部15を備えている。
制御部15は、演算処理ユニットとしてのCPUや、このCPUのワークエリアとして機能して演算結果や各種データを一時記憶するRAM、CPUが実行するファームウェア等のプログラムを記憶するROM、その他周辺回路等を備え、プリンター1の各部を中枢的に制御する。制御部15は、穴部形成部15aを備えているが、これについては後述する。
制御部15には、上述した媒体検出センサー13が接続されており、媒体検出センサー13の検出値に基づいて、位置P1における記録媒体の有無、特に、位置P1に記録媒体の先頭が位置していることを検出する。また、制御部15は、媒体検出センサー13の検出値、及び、搬送ローラー11による記録媒体の移動量に基づいて、記録媒体の位置を管理する。
また、制御部15には、ヘッド駆動回路24が接続されている。ヘッド駆動回路24は、制御部15の制御の下、記録媒体に記録すべき画像に応じた所定の態様で、記録ヘッド16の電磁石コイルに通電して記録ワイヤ17を突出させることにより、記録媒体に画像を記録する。
また、制御部15には、モータードライバー25が接続されている。モータードライバー25は、制御部15の制御の下、ステッピングモーターとして構成された搬送モーター12、及び、キャリッジ駆動モーター18に対し駆動パルスを出力し、これらモーターを駆動する。
また、制御部15には、記憶部26が接続されている。記憶部26は、EEPROMや、ハードディスク等の記憶媒体を備え、各種データを書き換え可能に不揮発的に記憶する。
また、制御部15には、インターフェイス部(I/F)27が接続されている。インターフェイス部27は、制御部15の制御の下、ホストコンピューター21との間で所定の規格に準拠した通信を行う。
【0019】
ホストコンピューター21は、プリンター1に制御コマンドを出力して、プリンター1を制御するものであり、ホスト側制御部29と、入力部30と、表示部31と、インターフェイス部(I/F)32と、を備えている。
ホスト側制御部29は、ホストコンピューター21を中枢的に制御するものであり、上述した制御部15と同様、CPUや、ROM、RAM、その他の周辺回路を備えている。
入力部30は、マウスやキーボード等の各種入力デバイスに接続され、入力デバイスに対する操作を検出して、ホスト側制御部29に出力する。
表示部31は、液晶表示パネルや、有機ELパネル等の表示パネル33を備え、ホスト側制御部29の制御の下、表示パネル33に各種情報を標示する。
インターフェイス部32は、ホスト側制御部29の制御の下、プリンター1との間で通信規格に準拠した通信を行う。
【0020】
図3は、本実施形態に係るプリンター1によって発行されるクーポン35の一例を模式的に示す図である。なお、この図3は、後に記録ヘッド16の動きを説明する際に援用する。
本実施形態に係るプリンター1は、所定サイズの単票紙に画像を記録することにより、以下のような態様で使用されることが想定されたクーポン35を発行可能である。
すなわち、クーポン35は、当該クーポン35を所持する顧客によって、所定の店舗のレジにおいて会計を行う際に、レジの担当者に引き渡される。そして、レジの担当者は、受け取ったクーポン35を、いわゆる伝票刺し(土台に、紙片を刺すための垂直に延びるピンが設けられ、このピンに対して重ねるようにして紙片を刺していくもの)に刺すことによって、当該クーポン35を一時的に保管する。
そして、上記のような使用態様が想定されたクーポン35に関し、クーポン35を連続して伝票刺しに刺す場合もあり、また、顧客の快適性を向上するという観点からレジ担当者が会計に係る作業を短時間で行う必要があるため、クーポン35を伝票刺しに刺すという作業をできるだけ容易に行えるようにしたい、とするニーズがあった。
ここで、クーポン35において、伝票刺しのピンを貫通させるべき所定の位置に凹みを形成し、この凹みに、伝票刺しのピンを貫通させるようにすれば、凹みがない場合と比較して弱い力でピンを貫通させることが可能となり、また、伝票刺しのピンを刺すべき場所を迷うことなく確信的にピンを刺すことができるため、よりスムーズに伝票刺しに伝票を刺すことが可能となり、上記作業が容易化することとなる。
これを踏まえ、本実施形態に係るプリンター1では、クーポン35の発行にあたり、既存の機構を利用して、クーポン35の所定の位置に凹みが形成された穴部36を形成可能な構成となっている。
【0021】
図4は、本実施形態に係るプリンター1の動作、特に、記録媒体たる単票紙に画像を記録することによりクーポン35を発行する際のプリンター1の動作を示すフローチャートである。
以下の説明において、穴部形成部15aの機能は、CPUがプログラムを実行する等、ハードウェアとソフトウェアとの協働により実現される。
また、図4のフローチャートが示す動作に先だって、ユーザーによって、クーポン35の元となる単票紙において穴部36が形成される位置が、以下のようにして指定される。
すなわち、ホストコンピューター21には、プリンター1制御用のプリンタードライバーがインストールされており、ホスト側制御部29は、プリンタードライバーの機能により、表示パネル33に、穴部36が形成される位置を指定するためのユーザーインターフェイスである位置指定ウインドウ40を表示可能である。穴部36の位置の指定に際し、ユーザーは、ホストコンピューター21の入力デバイスを利用して、位置指定ウインドウ40を表示パネル33に表示する。
【0022】
図5は、位置指定ウインドウ40を模式的に示す図である。
図5に示すように、位置指定ウインドウ40には、位置指定エリア41と、目印画像選択エリア42と、が形成されている。
位置指定エリア41には、単票紙全体を模した単票紙画像44が描画され、この単票紙画像44上に、ポイント46が描画されている。ポイント46は、単票紙において穴部36が形成される位置を指定するものであり、マウス等の入力デバイスを利用して単票紙画像44内でドラッグ可能である。
ユーザーは、単票紙と穴部36との位置関係が、単票紙画像44とポイント46との位置関係となるように、単票紙画像44内でポイント46をドラッグして、単票紙における穴部36の位置を指示する。
目印画像選択エリア42は、穴部36の目印となる画像(以下、「目印画像」という)を選択するエリアである。
本実施形態では、単票紙において、穴部36に対応させて、穴部36が形成されていることの目印となる目印画像が記録される構成となっており、目印画像選択エリア42では、目印画像をどのような形状とするかについて、ラジオボタン47が用いられて選択される。
なお、詳細は後述するが、本実施形態では、目印画像を構成する画素のそれぞれによって、穴部36が形成される構成となっており、穴部36の位置と目印画像の位置は完全に対応した状態となる。
【0023】
位置指定エリア41での穴部36の位置指定、及び、目印画像選択エリア42での目印画像の選択を行ったユーザーは、確定スイッチ48を操作することにより入力を確定する。
入力が確定すると、ホスト側制御部29は、単票紙において目印画像を記録すべき位置(=穴部36の位置)を示す情報、及び、目印画像の形状を示す情報を含むデータ(以下、「穴部情報データ」という)をプリンター1の制御部15に出力する。
穴部情報データが入力された制御部15は、当該データを記憶部26に記憶する。
なお、以下の説明する図4のフローチャートの動作では、前提として、ユーザーが位置指定ウインドウ40に対する入力を行っており、当該入力に基づいて、上述した穴部情報データが、プリンター1の記憶部26に既に記憶されているものとする。
【0024】
図4を参照して、穴部形成処理のフローを説明する。
クーポン35の発行にあたり、まず、制御部15は、ユーザーによって穴部36を形成することが指示されているか否かを判別する(ステップSA1)。当該指示は、ホストコンピューター21を利用して、又は、プリンター1に設けられた操作スイッチを利用して行うことが可能であり、ユーザーは、クーポン35の発行に際し、事前に当該指示を行う。
穴部36の形成が指示されていない場合(ステップSA1:NO)、制御部15は、通常の動作により単票紙に画像を記録することによりクーポン35を発行し、処理を終了する(ステップSA2)。
一方、穴部36の形成が指示されている場合(ステップSA1:YES)、制御部15は、穴部形成処理を実行する(ステップSA3)。以下、穴部形成処理について図3を援用して詳述する。
【0025】
ステップSA3の穴部形成処理において、制御部15の穴部形成部15aは、記憶部26に記憶された穴部情報データを参照し、穴部情報データに含まれる情報に基づいて、モータードライバー25を制御して、記録ヘッド16によって目印画像の記録が可能な位置に至るまで、単票紙を搬送する。搬送中の単票紙の位置は、媒体検出センサー13の出力値、及び、搬送モーター12に出力された駆動パルス数によって管理される。
以下の例では、搬送後の単票紙の位置と、記録ヘッド16との位置関係が図3の状態であるものとし、記録ヘッド16はホームポジションHPに位置しているものとする。また、図3において、単票紙の位置X1に穴部36が形成されること(=目印画像が形成されること)が指示されているものとする。
【0026】
ここで、穴部形成部15aの動作に先んじて、図3を用いて、通常動作にて画像を記録する際の記録ヘッド16の動き、及び、単票紙の動きについて簡単に説明する。
通常動作では、ホームポジションHPに位置している記録ヘッド16が、主走査正方向(図3において矢印Y3が示す方向)へ向かって、折り返し位置OPに至るまで移動される。この移動中、記録ヘッド16が駆動され、記録ヘッド16により画像が記録される。
記録ヘッド16が折り返し位置OPに至ると、単票紙が搬送方向に所定量だけ移動され、その後、記録ヘッド16が、折り返し位置OPから、ホームポジションHPに至るまで、主走査逆方向(図3において矢印Y4が示す方向)へ向かって移動される。この移動中、記録ヘッド16が駆動され、主走査正方向へ移動中に記録された領域と連続した領域において記録ヘッド16により画像が記録される。
このように、通常動作時は、記録ヘッド16の主走査方向における移動と、単票紙の搬送方向への搬送が交互に繰り返されて、単票紙に画像が記録される。
【0027】
さて、ステップSA3の穴部形成処理において、記録ヘッド16による目印画像の記録が可能な位置に至るまで単票紙が搬送され、搬送後の単票紙の位置と、記録ヘッド16の位置関係が図3の状態となった後、制御部15の穴部形成部15aは、キャリッジ駆動モーター18、及び、記録ヘッド16を制御して、記録ヘッド16を折り返し位置OPに至るまで主走査正方向へ移動させつつ、位置X1に、目印画像を記録する。上述したように、目印画像は、単票紙にインクリボンを介して記録ワイヤ17が打ち当てられ、目印画像を構成する画素が形成されることによって記録される。
次いで、穴部形成部15aは、通常動作と異なり、単票紙を搬送方向へ搬送させることなくその位置を維持したまま、キャリッジ駆動モーター18、及び、記録ヘッド16を制御して、記録ヘッド16をホームポジションHPに至るまで主走査逆方向へ移動させつつ、位置X1に、目印画像を記録する。つまり、穴部形成部15aは、単票紙の位置を維持したまま、ホームポジションHPと折り返し位置OPとの間で記録ヘッド16を往復移動さて、位置X1に対する目印画像の記録を2回実行する。
さらに、穴部形成部15aは、上記往復動作を、もう1度、繰り返す。すなわち、目印画像の記録に係る動作が、計4回行われることとなる。
【0028】
ここで、上述したように、目印画像は、単票紙にインクリボンを介して記録ワイヤ17が打ち当てられ、目印画像を構成する画素が形成されることによって記録される。従って、同一の画素に、複数回、記録ワイヤ17を打ち当てることにより、通常動作時のように1回、記録ワイヤ17を打ち当てる場合と比較して、画素により深い凹みが形成されると言える。
これを踏まえ、ステップSA3の穴部形成処理において、穴部形成部15aは、目印画像の記録に係る動作を複数回(4回)実行させ、目印画像を構成する各画素に、通常動作時における画素よりも深い凹みを形成し、これにより、単票紙に穴部36を形成している。
ここで、穴部36の形成に際し、例えば、記録ヘッド16を目印画像が記録可能な位置に留まらせた上で、連続して複数回、記録ワイヤ17を打ち当てて穴部36を形成することも可能であるが、本実施形態では、このような動作を行っていない。これは、以下の理由による。
すなわち、目印画像の記録(画素の形成)に係る処理について、できるだけ通常動作時と同一の動作により当該処理を実行できるようにし、通常動作時と異なる態様の動作を実行することによる悪影響が及ぶことを極力防止するためである。通常動作時と異なる態様の動作を実行することによる悪影響とは、例えば、記録ヘッド16を滞留させた状態で連続して複数回記録ワイヤ17を作動させることによる各種部品の発熱に起因した悪影響等がある。また、当該悪影響を緩和するための特別の機構を設ける必要が無く、製造コストが低減するというメリットもある。
【0029】
さらに、穴部形成部15aは、単票紙への穴部36の形成に際し、以下のような処理を行う。
すなわち、記録ワイヤ17のそれぞれについて、穴部36の形成に使用する回数ができるだけ同じとなるようにし、当該使用回数の平準化を図る。
詳述すると、記憶部26には、記録ワイヤ17のそれぞれについて、穴部36の形成、つまり、目印画像を構成する画素の形成のために単票紙へ打ち当てられた回数を示す情報が記憶されており、穴部形成部15aは、打ち当ての状況に応じて当該情報を随時更新する。そして、目印画像を構成する画素の形成に際し、穴部形成部15aは、上記情報を参照した上で、画素の形成のために単票紙に打ち当てる記録ワイヤ17を調整し、これにより、上記使用回数の平準化を図る。
これは、以下の理由による。
すなわち、ステップSA3における穴部形成処理は、通常の画像の記録とは別の付加的な処理である。このような付加的な処理について、使用する記録ワイヤ17に偏りが生じたのでは、記録ワイヤ17の劣化を早める結果となる可能性がある。これを踏まえ、穴部形成部15aは、記録ワイヤ17のそれぞれについて、穴部36の形成に使用する回数ができるだけ同じとなるようにし、当該使用回数の平準化を図っている。
【0030】
さて、前掲図4に戻り、ステップSA3において穴部形成処理を実行した後、制御部15は、媒体検出センサー13の検出値を監視しつつ、搬送モーター12を制御して、単票紙を、当該単票紙の先頭が位置P1に位置するまで、搬送方向の逆方向へ移動させる(ステップSA4)。
次いで、制御部15は、通常の動作により、単票紙にクーポン35に係る画像を記録し、クーポン35を発行する(ステップSA5)。
ここで、クーポン35に係る画像の記録と並行して、穴部形成処理を実行することも可能である。しかしながら、この場合、処理が複雑となってしまうため、本実施形態では、クーポンに係る画像の記録と、穴部形成処理とを別個独立した処理とし、処理効率の向上を図っている。
【0031】
次いで、上記動作により穴部36が形成されて発行されたクーポン35が、伝票刺しに刺される際の態様について説明する。
クーポン35には、穴部36に対応して目印画像が記録されている。そして、顧客からクーポン35を受け取ったレジ担当者は、目印画像を目印として、当該目印画像に対応する位置に、伝票刺しのピンが貫通するように、クーポン35を伝票刺しに刺す。このように、ピンを貫通させる場所が明示的に表示されているので、レジ担当者は、ピンを貫通させる場所を迷うことなく、確信的に、クーポン35を伝票刺しに刺すことが可能である。さらに、目印画像に対応する位置に形成された穴部36は、凹んだ状態となっており、その分強度が弱く、ピンを刺し易い状態となっており、レジ担当者は、スムーズにクーポン35を伝票刺しに刺すことが可能である。
また、本実施形態では、プリンター1によって発行するクーポン35のそれぞれについて、穴部36が形成される位置を統一することができる。従って、当該プリンター1によって発行されたクーポン35のみを伝票刺しに刺すものとした場合、複数のクーポン35が伝票刺しに刺さった状態において、それぞれのクーポン35について伝票刺しのピンが刺さっている場所が略同一となり、伝票刺しにバラバラにクーポン35が刺さっている場合と比較して、見た目がよくなる。
【0032】
ここで、上述した例では、目印画像を記録する動作を複数回実行することにより穴部36を形成する構成であったが、穴部36の形成方法は、以下であってもよい。
すなわち、目印画像を記録する際に、電磁石コイルへの通電時間を通常動作時よりも長いものとし、これにより、記録ワイヤ17が打ち当てられる時間を長くすると共に、打ち当てられる力を強くし、これにより、より深い凹みを有する画素により目印画像を構成して穴部36を形成するようにしてもよい。
また、このように通電時間の長期化により、記録ワイヤ17がより強い力で打ち当てられるようにすると共に、上述した実施形態のように目印画像を記録する動作を複数回実行する構成としてもよい。
これら構成であっても、既存の機構を利用して、単票紙に穴部36を形成することができる。
【0033】
以上説明したように、本実施形態に係るプリンター1は、記録ヘッド16の記録ワイヤ17により、記録媒体たる単票紙の所定の位置に、穴部36を形成する穴部形成部15aを備えることを特徴とする。
これによれば、記録ヘッド16の記録ワイヤ17を利用して、単票紙の所定の位置に穴部36が形成されるため、伝票刺しへ容易に刺すことが可能なクーポン35を発行することが可能となる。
【0034】
また、本実施形態では、穴部形成部15aは、記録ヘッド16の記録ワイヤ17を、単票紙の所定の位置に複数回突き当てることにより、凹みが形成された穴部36を形成する。
これによれば、記録ワイヤ17を、所定の位置に、複数回突き当てることによって凹みが形成された穴部36を形成するため、既存の記録ヘッド16を利用して、伝票刺しのピンを貫通させる上で適した穴部36を形成可能である。
【0035】
また、本実施形態では、穴部形成部15aは、記録ヘッド16の記録ワイヤ17を、単票紙の所定の位置に通常の動作時よりも強い力で突き当てることにより、凹みが形成された穴部36を形成する。
これによれば、記録ワイヤ17を、所定の位置に、通常の動作時よりも強い力で突き当てることにより、凹みが形成された穴部36を形成するため、既存の記録ヘッド16を利用して、伝票刺しのピンを貫通させる上で適した穴部36を形成可能である。
【0036】
また、本実施形態では、穴部形成部15aは、記録ヘッド16が備える複数の記録ワイヤ17のそれぞれについて、穴部36の形成に使用する回数を平準化する。
これによれば、記録ヘッド16が備える記録ワイヤ17のそれぞれについて、穴部36の形成に使用される記録ワイヤ17に偏りが生じることを防止でき、穴部36を形成することに起因した記録ヘッド16の劣化を抑制できる。
【0037】
また、本実施形態では、穴部形成部15aは、穴部36に対応する位置に印となる目印画像を記録する。
これによれば、単票紙(クーポン35)において穴部36が形成された位置が容易に把握可能となる。
【0038】
<第2実施形態>
次いで、第2実施形態について説明する。
【0039】
図6は、第2実施形態に係るプリンター1の要部を模式的に示す図である。
本実施形態に係るプリンター1は、記録ワイヤ17とは別に、単票紙に対して貫通孔を形成するための専用の貫通用ワイヤ50(ワイヤ)が記録ヘッド16に設けられている。
この貫通用ワイヤ50は、記録ワイヤ17と同様の機構により突出動作を行う構成となっている。貫通用ワイヤ50は、記録ヘッド16が所定の位置に位置している場合のみ、突出動作が実行される構成となっており、当該所定の位置に記録ヘッド16が位置している場合における貫通用ワイヤ50と対向する位置には、切り欠かれて形成されたワイヤ受け51が設けられている。このワイヤ受け51は、プラテン19を避けた位置に形成されている。
図6に示すように、貫通用ワイヤ50が、ワイヤ受け51に向かって打ち当てられた場合、貫通用ワイヤ50の先端が搬送経路10を超えて、ワイヤ受け51に延出する構成となっている。
【0040】
このような構成の下、本実施形態では、貫通用ワイヤ50により単票紙の所定の位置に貫通孔からなる穴部36が形成される。
すなわち、穴部形成処理において、穴部形成部15aは、穴部36を形成すべき位置に、貫通用ワイヤ50が対向するように、単票紙を搬送する。そして、穴部形成部15aは、貫通用ワイヤ50を、その先端がワイヤ受け51に延出するまで突出させ、これにより、単票紙に貫通孔を形成する。
【0041】
このように、本実施形態に係る穴部形成部15aは、貫通用ワイヤ50を、単票紙の所定の位置に貫通させることにより、貫通孔が形成された穴部36を形成する。
これによれば、単票紙に貫通孔が形成された穴部36が形成されるため、クーポン35について、伝票刺しのピンを穴部36に貫通させることがよりスムーズとなり、より容易に伝票刺しに刺すことが可能となる。
特に、貫通孔を形成するための貫通用ワイヤ50は、記録ヘッド16の記録ワイヤ17と同一の機構で駆動する構成とすることが可能であり、このような構成とすることにより、既存の構造を利用して記録ヘッド16に貫通用ワイヤ50を設けることができ、貫通孔を形成するための機構を別に設ける場合と比較して、製造容易性の向上、及び、製造コストの削減を実現可能である。
【0042】
なお、上述した実施の形態は、あくまでも本発明の一態様を示すものであり、本発明の範囲内で任意に変形および応用が可能である。
例えば、上述した第1実施形態では、穴部36の形成にあたり、目印画像の記録に係る動作を4回行う構成であったが、回数はこれに限らず任意に設定可能である。また、ユーザーが指定する構成としてもよい。
また、上述した実施形態では、単票紙に穴部36を形成する場合を例にして説明したが、穴部36を形成する記録媒体はこれに限らず、ロール紙や、連続紙等の連続シートであってもよい。
また、上述した実施形態では、プリンター1によりクーポン35を発行する場合を例にして、発明を説明したが、本発明が適用されるのは、クーポン35を発行する場合に限られない。すなわち、伝票刺しのピン等、後に何らかの部材に刺されることが想定されるものを出力する場合に広く適用可能である。
【符号の説明】
【0043】
1…プリンター、15…制御部、15a…穴部形成部、16…記録ヘッド、17…記録ワイヤ、21…ホストコンピューター、22…記録システム、24…ヘッド駆動回路、25…モータードライバー、50…貫通用ワイヤ(ワイヤ)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドットインパクト方式の記録ヘッドを備え、前記記録ヘッドにより記録媒体に記録を行う記録装置であって、
前記記録ヘッドの記録ワイヤにより、前記記録媒体の所定の位置に、穴部を形成する穴部形成部を備えることを特徴とする記録装置。
【請求項2】
前記穴部形成部は、
前記記録ワイヤを、前記記録媒体の所定の位置に複数回打ち当てることにより、凹みが形成された前記穴部を形成することを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項3】
前記穴部形成部は、
前記記録ワイヤを、前記記録媒体の所定の位置に通常の動作時よりも強い力で打ち当てることにより、凹みが形成された前記穴部を形成することを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項4】
前記穴部形成部は、
複数の前記記録ワイヤのそれぞれについて、前記穴部の形成に使用する回数を平準化することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の記録装置。
【請求項5】
前記穴部形成部は、
前記穴部に対応する位置に印となる画像を記録することを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の記録装置。
【請求項6】
前記記録ヘッドは、画素形成用の前記記録ワイヤとは別に、前記穴部を形成するためのワイヤを備え、
前記穴部形成部は、
前記ワイヤを、前記記録媒体の所定の位置に貫通させることにより、貫通孔が形成された前記穴部を形成することを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項7】
ドットインパクト方式の記録ヘッドを備え、前記記録ヘッドにより記録媒体に記録を行う記録装置の制御方法であって、
前記記録媒体の所定の位置に前記記録ヘッドの記録ワイヤを打ち当て、前記記録媒体の所定の位置に穴部を形成することを特徴とする記録装置の制御方法。
【請求項8】
ドットインパクト方式の記録ヘッドを備え、前記記録ヘッドにより記録媒体に記録を行う記録装置を制御する制御部により実行されるプログラムであって、
前記制御部を、
前記記録ヘッドの記録ワイヤにより、前記記録媒体の所定の位置に、穴部を形成する穴部形成部として機能させることを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−162055(P2012−162055A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−25935(P2011−25935)
【出願日】平成23年2月9日(2011.2.9)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】