説明

記録装置およびロール紙給紙装置

【課題】ロール紙の給紙において、比較的簡易な構成で、記録部に対して一定の角度でロール紙を進入させることを可能とする。
【解決手段】記録によってロールシートSの消費が進んでロールシートSの外径が小さくなる。この際、ロール回転軸30は、ロールリフター12を介したリフトサスペンション13の付勢力によって上方に付勢される。その結果、ロールシートSは、ロールシートSが消費されない状態と同様、ロックされた状態のロールカバー14に支持された給紙アシストローラ15に突き当たる。すなわち、この位置でシートSがロールシートSから繰り出される、記録装置に対する相対位置は、ロールシートSが消費されない状態と同じであり、従って、記録部に対する給紙角度は変わらない。すなわち、ロールシートの消費量に係らず記録部に対して一定の角度でロール紙を進入させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録装置およびロール紙給紙装置に関し、詳しくは、ロール紙が記録部の記録媒体搬送路に対して一定の角度で進入するようロール紙を供給するための給紙機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の装置は、特に、記録部において記録媒体としてのロール紙の搬送を安定的に行うために重要なものである。この安定した記録媒体の搬送によって高精度な記録が可能となる。例えば、ロール紙を用いる記録装置では、一般に、図1(a)に示すように、ロール紙51、搬送ローラセット52、記録部53が配置されている。図1(a)に示すロール紙51は、ロール紙の記録による消費量が比較的少ない状態を示している。この状態から、ロール紙が消費されていくと、図1(b)のような状態になる。これらの図1(a)に示す状態と図1(b)に示す状態を比較すると、搬送ローラ52に対するロール紙51の進入角度が異なっている。すなわち、図1(a)に示す進入角度θ1から図1(b)に示す進入角度θ2に変化する。
【0003】
記録装置では、記録動作中にロール紙が連続的または間欠的に搬送されるが、そうした状況下での高精度な記録には比較的高い搬送精度(所定の紙送り量に対して例えば数〜数十μm程度のばらつき)が求められる。これに対し、図1(a)および図1(b)に示すようなロール紙の進入角度の変化は、搬送ローラ対に対するロール紙の巻き付け角度の変化をもたらし、その結果、ロール紙搬送のための摩擦力変化を引き起こす。これによって、例えば、ロール紙51と搬送ローラ対52の滑り量が変化し、高精度な記録媒体搬送が実現できなくなる。
【0004】
これに対し、特許文献1に記載されるように、ロール紙の給紙装置と記録部との間の記録媒体搬送路に、ピンチローラを設け、記録部に対して常に一定の角度でロール紙を進入させる構成が知られている。これによれば、搬送ローラ対に対するロール紙の巻き付け角度の変化を防止することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−026350号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載のピンチローラには、記録部に対する高い位置精度や、ロール紙の張力にも撓まないような高い強度が求められる。そして、こうした条件が損なわれる場合には、ピンチローラより下流側におけるロール紙の搬送精度が低下し、高精度な記録ができなくなるばかりでなく、ロール紙の斜行やしわを引き起こすこともある。換言すれば、特許文献1に記載の、記録部に対して常に一定の角度でロール紙を進入させる構成は、ピンチローラについて、位置精度を高くしたり高強度としたりするために、装置のコストが高くなるなどの問題がある。
【0007】
本発明は、このような問題を解決し、比較的簡易な構成で、記録部に対して一定の角度でロール紙を進入させることを可能とする記録装置およびロール紙給紙装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そのために本発明では、ロール記録媒体をロール回転軸によって支持することにより当該ロール記録媒体を回転させて、記録部にロール記録媒体を給紙し、該ロール記録媒体に記録を行う記録装置であって、前記ロール回転軸を所定方向に移動可能に保持する保持手段と、前記保持手段によって保持されるロール回転軸を上記所定方向に付勢する付勢手段と、前記付勢手段による付勢力によってロール回転軸を介して前記所定方向に付勢されるロール記録媒体と、前記記録部に対して固定された位置で、当該ロール記録媒体が回転可能に当接する当接部を備えた当接手段と、を具えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
以上の構成によれば、ロール回転軸を介して前記所定方向に付勢されるロール記録媒体と、当接部が前記記録部に対して固定された位置で、当該ロール記録媒体が回転可能に当接する。これにより、ロール記録媒体の記録部に対する相対位置は、ロール記録媒体の消費量に係らず、つまり、ロール記録媒体の外径に係らず一定とすることができる。すなわち、ロール記録媒体の外径に係らず記録部に対して一定の角度で記録媒体を進入させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】(a)および(b)は、従来のロール紙供給装置を説明する図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係るインクジェット記録装置を模式的に示す断面図である。
【図3】記録によって図2に示す状態からロールシートSの消費が進んだ状態を示す図である。
【図4】ロールシートSを着脱する際の操作を説明する図である。
【図5】同じく、ロールシートSを着脱する際の操作を説明する図である。
【図6】本発明の第2の実施形態に係る、巻き戻し機構を備えた記録装置示す図である。
【図7】図6に示す機構において、巻き戻しを行う状態を示す図である。
【図8】図6に示す機構において、ロール紙残量が中程度で、ロール巻き戻し中の状態を示す図である。
【図9】図6に示す機構において、ロール紙残量が少なく、ロール巻き戻し中の状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
(第1実施形態)
図2は、本発明の第1の実施形態に係るインクジェット記録装置を模式的に示す断面図である。図2において、記録部を構成する記録ヘッド1は、不図示のキャリッジに搭載され、図2の紙面に垂直な方向におけるキャリッジの移動によって、搬送されるロール紙などのロール記録媒体に対する走査を行う。そして、この走査の間に記録媒体に対して記録ヘッド1からインクを吐出して記録を行う。この記録動作において、搬送される記録媒体はプラテン2によってその記録面が平坦に規制される。所定量の記録を行ったなど、所定条件が満たされると、記録ヘッド1は、記録媒体から退避した位置にある回復部(不図示)上に移動する。そして、そこで、記録ヘッドの、インク吐出ノズルを配列した面のワイピングやノズルを介したインク吸引動作を行い、記録ヘッドの安定したインク吐出性能を維持する。
【0012】
本実施形態で用いるロールシートSは、幅が一定サイズで、長さが例えば数十〜数百メートルのシート(以下では、特に、記録装置内で搬送される、ロール状態を解かれたものを単に「シート」と呼び、同じ符号Sで参照する)がロール状に巻かれたものである。このシートSはロール回転軸30の周りに巻かれた状態で取り扱うことができ、記録装置に装着されたときに、ロール回転軸30を回転軸として回転し、上述した記録部へ給紙、搬送されることが可能となる。詳しくは、巻かれた状態のロールシートSはロールホルダ部6に装着される。このロール回転軸30はロール芯部と係合しており、シートSの搬送に伴って芯部とともに連れ回りロールシートSの回転軸として機能する。
【0013】
シートSは給紙ガイド3に案内されつつ搬送され、給紙ローラ対4によって挟持される。この状態で給紙ローラセット4が回転すると、シートSは、給紙ガイド3に案内されながら図中矢印A方向に搬送される。シートSの先端が紙検知センサ8の検知位置に達すると、制御部19がこれを検知する。そして、所定時間経過後(ロールシートS先端部が記録ヘッド1の直下のプラテン2に達する時間)にシートSへの記録を開始する。
【0014】
この記録動作では、制御部19は、本装置に対する記録出力の指令を外部のコンピュータなどのホスト装置(不図示)からデータとともに受け取って処理する。そのデータには記録画像情報のほかに、使用されているロールシートSの材質・サイズ・記録枚数などのデータも含まれており、それら総てのデータを記録終了まで制御部19内に保持・記憶している。また、制御部19はロールシートSが何ページまで記録されたか、何ページのどこまで記録されたか、排紙口7からロールシートSの先端がどのくらい排出されているか、などの記録途中の状態をも検知している。
【0015】
1ページ分などの所定の領域の記録動作が終了すると、シートSにおける記録済み領域の先端及び後端をカッター5によって、所定のサイズ(A3サイズ、A2サイズ等)となるように切断し、排紙口7から排出する。なおカッター5の切断刃はロールシートSを切断する場合のみロールシートSの搬送経路内を横断し、ロールシートSが搬送されている時にはそれを妨げない位置に退避している。
【0016】
以上のように構成される本実施形態の記録装置における、ロールホルダ部6の構造の詳細を以下に説明する。
【0017】
図2は、比較的新品(残量が多い状態)のロールシートSが装着された状態を示している。ロールホルダ部6において、給紙ローラ対4の回転によってシートSが給紙されることによりロール回転軸30が回転するとき、ロール回転軸30は、ロールガイド11とロールリフター12と摺動することができる。すなわち、ロール回転軸30はこれらロールガイド11とロールリフター12とによって支持されている。このように、ロール回転軸30は、ロールガイド11とロールリフター12とによって、所定方向(本実施形態では、図の上下方向)において移動可能に保持される。
【0018】
また、ロール回転軸30が回転するとき、ロールカバー14に回動自在に取り付けられている給紙アシストローラ15は、図中矢印C方向に連れ回ることができる。ロールリフター12は、バネとダンパーで構成されるリフトサスペンション13によって図中矢印B方向に付勢されるとともに、ロールガイドに沿ったロール回転軸30の位置に応じて移動することができる。これにより、ロールシートSは図中矢印B方向に付勢されるが、給紙アシストローラ15に突き当たることによってロールシートSの位置が定まる。すなわち、給紙アシストローラ15は、ロールシートSに回転可能に当接する当接部を構成する。この給紙アシストローラを支持するロールカバー14は、ロールカバー軸16を中心に矢印Dおよびその反対方向に回動することができるが、カバーロック18によってロックされているときは、上記反対方向への回動をすることができない。この結果、ロールカバー14は、ロールシートSが装着されている状態では、リフトサスペンション13によるロールシートSに対する上方への付勢と上記カバーロック18によるロックによって、図2に示す位置に定まる。このように、ロールカバー14(の給紙アシストローラ15)は、解除可能なロック機構によって固定されてその位置が定まる。なお、アシストローラは、上記の例では1つであるが、複数の回転ローラであってもよい。
【0019】
図3は、記録によって図2に示す状態からロールシートSの消費が進んだ状態を示す図である。記録動作によって、ロールシートSの消費が進むとロールシートSの外径が小さくなる。この際、ロール回転軸30は、ロールリフター12を介したリフトサスペンション13の付勢力によって図中上方に付勢される。その結果、ロールシートSは図2に示す場合と同様、ロックされた状態のロールカバー14に支持された給紙アシストローラ15に突き当たる。すなわち、この位置でシートSがロールシートSから繰り出される、記録装置に対する相対位置は、図2に示す場合と同じであり、従って、記録部に対する給紙角度は図2に示す場合と変わらない。
【0020】
このように、本実施形態によれば、ロールシートの消費量に係らず記録部に対して一定の角度でロール紙を進入させることができ、しかもそれをロールリフター12などの比較的簡易な構成で実現することができる。
【0021】
図4および図5は、ロールシートSを着脱する際の操作を説明する図である。ロールシートSを着脱するときは、図4に示すように、先ず、カバーロック18を、カバーロック軸17を中心に矢印E方向に回動させる。これにより、ロールカバー14はロールカバー軸16を中心に矢印D方向に回動できるようになり、図5に示すように、ロールカバー14が開放された状態になってロールシートSの交換作業が可能となる。このとき、ロールシートSはリフトサスペンション13によって図中矢印B方向に付勢されるが、リフトサスペンション13のダンパーの作用によって急激に上昇することはない。また、リフトサスペンション13は可動範囲の上死点が決まっているため、リフトサスペンション13に付勢されてロール回転軸30を矢印B方向に押し上げているロールリフター12は、ロールガイド11からロール回転軸30を脱落させてしまうことはない。
【0022】
(第2実施形態)
上述の第1実施形態では、ロールシートSが給紙ローラ対4による回転駆動力よって受動的に引き出される形態であるが、本発明の第2の実施形態は、シートSをロールホルダ部6内に巻き戻す機構を備えた形態に関する。
【0023】
図6は、巻き戻し機構が作動する前で、かつロールシートSの残量が多い状態を示す図である。図6に示すように、ロールホルダー部6にはモータ20が固定された状態で取り付けられており、駆動源としてのモータ20が作動すると、モータギア21は矢印Fまたはその反対方向に回転する。これにより、このモータギア21と係合し、かつ、ロールホルダ部6に固定されて取り付けられているドライブギア回転軸23に対して回動自在に取り付けられているドライブギア22がモーターギア21の回転方向とは反対方向に回転する。
【0024】
スイングアーム24はドライブギア回転軸23に回動自在に取り付けられていると同時に、ドライブギア22とは所定の摩擦力で接している。これにより、スイングアーム24はドライブギア22と同じ方向に連れ回ることができるが、スイングアーム24に一定の負荷がかかるとドライブギア22が回転していても圧接部分が滑ることにより停止することができる。
【0025】
アイドラギア25は、スイングアーム24に設けられているアイドラ回転軸26に回動自在に取り付けられていると同時に、ドライブギア22とも係合しており、ドライブギア22と反対方向に回転することができる。
【0026】
以上のように構成される、駆動力を伝達する部材を備えた巻き戻し機構において、モータ20の作動によってモータギア21が矢印F方向に回転すると、ドライブギアとスイングアーム24は矢印G方向に、アイドラギア25は矢印H方向に回転する。このスイングアーム24の回転にともなってアイドラギア25は、自身がアイドラギア回転軸26を中心に回転しながら、ドライブギア回転軸23を中心に矢印G方向に移動していく。そして、図7に示すように、アイドラギア25が、ロール回転軸30に固定して備えられているロールギア27に当接・係合したときに、スイングアーム24に対して一定の負荷がかかりスイングアーム24の移動が停止する。この状態でもアイドラギア25にはモータ20からの回転伝達が継続されており、最終的にロールギア27を矢印J方向に回転させてロールシートSの巻き戻しを行うことができる。
【0027】
本実施形態では、第1実施形態でも説明したように、ロールシートSの残量によってロール回転軸30の位置が変化する。しかしながら、スイングアーム24の回転移動の自由度により、図8および図9に示すようにロールシートSの残量がどのような状態であってもロール回転軸30に駆動力が伝達されてロールシートSの巻き戻しを行うことができる。
【0028】
(他の実施形態)
なお、上述した実施形態はインクジェット方式の記録装置におけるロール紙給紙機構の形態であるが、本発明の適用がインクジェット方式の記録装置に限られないことは以上の説明からも明らかである。例えば、熱転写方式の記録装置におけるロール紙給紙機構にも本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0029】
S ロールシート
1 記録ヘッド
3 給紙ガイド
4 給紙ローラ対
6 ロールホルダ部
11 ロールガイド
12 ロールリフター
13 リフトサスペンション
14 ロールカバー
15 給紙アシストローラ
18 カバーロック
19 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロール記録媒体をロール回転軸によって支持することにより当該ロール記録媒体を回転させて、記録部にロール記録媒体を給紙し、該ロール記録媒体に記録を行う記録装置であって、
前記ロール回転軸を所定方向において移動可能に保持する保持手段と、
前記保持手段によって保持されるロール回転軸を前記所定方向に付勢する付勢手段と、
前記付勢手段による付勢力によってロール回転軸を介して前記所定方向に付勢されるロール記録媒体と、前記記録部に対して固定された位置で、当該ロール記録媒体が回転可能に当接する当接部を備えた当接手段と、
を具えたことを特徴とする記録装置。
【請求項2】
ロール記録媒体を前記給紙の方向と反対方向に移動させる巻き戻し手段であって、
駆動源と、
前記駆動源の駆動力を前記ロール記録媒体とともに回転する部材に伝達する伝達手段であって、前記所定方向に付勢されるロール記録媒体の位置に応じて前記駆動力を前記部材に伝達する伝達手段と、
を備えた巻き戻し手段
をさらに具えたことを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項3】
前記付勢手段は、バネとダンパーを有して構成されることを特徴とする請求項1または2に記載の記録装置。
【請求項4】
前記当接手段は、前記固定された位置において、解除可能なロック機構によって固定され、ロック機構が解除されることにより、ロール記録媒体の着脱が可能となることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の記録装置。
【請求項5】
ロール記録媒体をロール回転軸によって支持することにより当該ロール記録媒体を回転させて、記録装置にロール記録媒体を給紙するロール紙給紙装置であって、
前記ロール回転軸を所定方向において移動可能に保持する保持手段と、
前記保持手段によって保持されるロール回転軸を前記所定方向に付勢する付勢手段と、
前記付勢手段による付勢力によってロール回転軸を介して前記所定方向に付勢されるロール記録媒体と、前記記録装置に対して固定された位置で、当該ロール記録媒体が回転可能に当接する当接部を備えた当接手段と、
を具えたことを特徴とするロール紙給紙装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−43760(P2013−43760A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−183648(P2011−183648)
【出願日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】