記録装置及び同装置における記録方法
【課題】記録媒体の未記録部分に付着した切断粉が記録処理に及ぼす悪影響を好適に回避することのできる記録装置及び同装置における記録方法を提供する。
【解決手段】このプリンター10は、長尺状の印刷用紙Sを搬送経路Tに沿って搬送する搬送機構30と、上流側から下流側に順搬送される印刷用紙Sに対し搬送経路T上の記録位置PAで印刷処理を施す記録部80と、記録位置PAより下流側の切断位置PCで印刷用紙Sを切断して記録部分SBをその部分よりも上流側の未記録部分SAから分離する切断部90と、未記録部分の先端部STが切断位置の下流側に位置するように印刷用紙が順搬送された際にその未記録部分に付着している紙粉を切断位置の下流側の除去位置PRにて除去する搬送用ローラー61とを備え、印刷用紙を記録位置に向けて逆搬送し搬送用ローラーにより紙粉が除去された未記録部分に対して記録部による印刷処理を施す。
【解決手段】このプリンター10は、長尺状の印刷用紙Sを搬送経路Tに沿って搬送する搬送機構30と、上流側から下流側に順搬送される印刷用紙Sに対し搬送経路T上の記録位置PAで印刷処理を施す記録部80と、記録位置PAより下流側の切断位置PCで印刷用紙Sを切断して記録部分SBをその部分よりも上流側の未記録部分SAから分離する切断部90と、未記録部分の先端部STが切断位置の下流側に位置するように印刷用紙が順搬送された際にその未記録部分に付着している紙粉を切断位置の下流側の除去位置PRにて除去する搬送用ローラー61とを備え、印刷用紙を記録位置に向けて逆搬送し搬送用ローラーにより紙粉が除去された未記録部分に対して記録部による印刷処理を施す。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えばインクジェット式プリンター等の記録装置及び同装置における記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット式プリンターに用いられる印刷用紙としては、種々の規格より予め定められた定型状のものが一般に用いられる。例えば業務用のインクジェット式プリンター等では、ロール状に巻かれた長尺状の用紙を用い、これに印刷処理を施すとともに同処理がなされた部分を下流側に順搬送して切断することによりその印刷処理がなされた部分を印刷用紙の未印刷部分から分離するようにしている。そして、こうしたインクジェット式プリンターでは印刷用紙の未印刷部分が印刷位置まで逆搬送されることに伴い、これに再び記録処理がなされる。
【0003】
このように長尺状の印刷用紙を印刷処理の都度に切断するようにした場合には、その切断の際に紙粉が発生することがある。この場合、印刷用紙を印刷位置まで逆搬送した際に、この紙粉が印刷用紙の表面に残留したまま印刷がなされたり、逆搬送中に舞い上がった紙粉がインクジェット式プリンターの記録ヘッドに付着したりすることに起因して、正常な印刷が行えなくなったり、印刷精度の低下を招いたりするおそれがある。このため、例えば特許文献1に記載のインクジェット式プリンターでは、印刷位置の近傍に吸引孔を設け、同吸引孔により紙粉を吸引して除去するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−39757号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に記載されるような従来のインクジェット式プリンターでは、吸引孔により紙粉を吸引して除去することができるとしても、紙粉の付着した未記録部分が一旦は印刷位置近傍まで逆搬送されることになる。そのため、吸引される前或いは吸引されなかった紙粉が印刷位置の付近に散点して後の印刷処理において印刷用紙や記録ヘッドに再付着するなどのおそれがあり、この点でなお改善の余地を残すものとなっていた。
【0006】
またこうした問題は、インクジェット式のプリンターに限らず、電子写真方式や熱転写方式等、印刷態様の異なるプリンターにあっても同様に発生する。更に、例えば布、樹脂フィルム、樹脂シート或いは金属シート等々に記録処理を施した後に切断し、更にその未記録部分に再度記録処理を施す他の記録装置にあっても概ね共通した問題となっている。
【0007】
この発明は、こうした従来の実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、記録媒体の未記録部分に付着した切断粉が記録処理に及ぼす悪影響を好適に回避することのできる記録装置及び同装置における記録方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の記録装置は、長尺状の記録媒体を搬送経路に沿って搬送する搬送手段と、前記搬送手段により上流側から下流側に順搬送される前記記録媒体に対し前記搬送経路上の記録位置で記録処理を施す記録手段と、前記記録位置より下流側の切断位置で前記記録媒体を切断して前記記録処理が施された部分をその部分よりも上流側の未記録部分から分離する切断手段と、前記搬送手段により前記未記録部分の下流側端部が前記切断位置の下流側に位置するように前記記録媒体が順搬送された際に前記未記録部分に付着している切断粉を前記切断位置の下流側の除去位置にて除去する除去手段とを備え、前記記録媒体を前記記録位置に向けて逆搬送し前記除去手段により切断粉が除去された前記未記録部分に対して前記記録手段による記録処理を施す。
【0009】
この発明では、搬送経路上の記録位置で記録手段により記録処理が施された記録媒体は、搬送経路の下流側に順搬送されるとともに記録位置より下流側の切断位置で切断される。これにより、記録媒体は記録処理が施された部分がその未記録部分から分離される。こうして記録処理が施された部分が分離された記録媒体は、搬送経路の記録位置に向けてその上流側に逆搬送され、その未記録部分に記録処理が施される。ここで、上述したように記録媒体が切断される際、その切断部分から切断粉が生じてこれが切断部分近傍に付着することがある。このため、未記録部分に記録処理を施すのに先立ち、同未記録部分の下流側端部が切断位置の下流側に位置するように記録媒体を順搬送し、この未記録部分、特にその下流側端部近傍に付着した切断粉を除去するようにしている。
【0010】
ここで、この発明によれば、こうした切断粉の除去を記録媒体の切断位置よりも下流側の除去位置にて行うようにしているため、記録媒体を切断した後にこれを逆搬送して未記録部分に記録処理を施す際に、その記録処理を施す領域に切断粉が付着した未記録部分が逆搬送されてしまうことを抑制することができる。したがって、正常な記録ができなくなったり、その記録精度が低下したりする等、記録媒体の未記録部分に付着した切断粉が記録処理に及ぼす悪影響を回避することができる。
【0011】
また、本発明の記録装置において、前記除去手段は、前記切断手段により切断された前記記録媒体の前記未記録部分に記録処理を施すべく前記搬送手段により前記記録媒体が上流側に逆搬送される際に前記除去位置で前記未記録部分を挟持する一対の挟持体を含む。
【0012】
この発明によれば、記録媒体の未記録部分に付着した切断粉を除去するに際して、未記録部分を一対の挟持体によって挟持した状態で記録媒体を逆搬送させるため、各挟持体によって未記録部分に付着している切断粉を同未記録部分から払拭する態様にて好適に除去することができる。更に、未記録部分に記録処理を施すべく記録位置に向けて記録媒体を逆搬送するのに併せて切断粉の除去を行うことができるため、一旦、記録処理が終了した後に切断粉を除去して記録処理を再開するまでの時間を短縮することができるようにもなる。
【0013】
また、本発明の記録装置において、前記一対の挟持体は、その少なくとも一方が弾性変形した状態で前記未記録部分を挟持するものである。
ところで、このように一対の挟持体によって未記録部分に付着した切断粉を払拭する態様で除去するためには、記録媒体の未記録部分と各挟持体との密着性を高めた状態で、換言すれば両者の接触圧を高めた状態で記録媒体を逆搬送することが望ましい。この点、この発明によれば、挟持体の一方或いは双方を弾性変形させた状態で記録媒体の未記録部分を挟持することになるため、その弾性変形した挟持体が元の形状に戻ろうとする際に生じる弾性力により挟持体と未記録部分との接触圧を高めることができ、挟持体における切断粉の除去能力を向上させることができる。
【0014】
また、本発明の記録装置において、前記除去手段は、前記一対の挟持体のうち少なくとも一方を前記未記録部分に対して近接及び離間させる態様にて変位させる駆動部を含む。
挟持体を弾性変形させた状態で未記録部分を挟持させることで切断粉の除去能力を高めることは可能であるものの、挟持体により未記録部分を挟持すべく、未記録部分の下流側端部が切断位置の下流側に位置するように記録媒体を順搬送して挟持体の間に未記録部分を通過させることが困難となる懸念がある。この点、この発明によれば、挟持体の一方或いは双方を未記録部分に対して近接及び離間させる態様にて変位させる駆動部を備えているため、挟持体の間に未記録部分を通過させる際には、挟持体が未記録部分から離間するようにこれを変位させて挟持体の間に未記録部分を円滑に通過させることができる。その一方、未記録部分に付着している切断粉を除去する際には、挟持体が未記録部分に近接するようにこれを変位させて接触圧を高めた状態で同未記録部分を挟持体により挟持することができるようになる。
【0015】
また、本発明の記録装置において、前記切断手段は前記記録媒体の一端部から他端部に向けてこれを順次切断するものであり、前記一対の挟持体は少なくとも前記記録媒体の他端部を挟持可能な態様で設けられる。
【0016】
ここで、記録媒体の切断態様としては、記録処理が施された記録部分と未記録部分との分離部分を一刀両断に切断する切断態様、その分離部分を切断方向の一端部から他端部に向けて順次切断する切断態様、等を挙げることができる。そして、後者の切断態様にあっては、切断によって生じる切断粉が切断方向の基端側となる一端部側から先端側となる他端部側に移動して他端部側に偏在する傾向がある。この点、この発明によれば、この他端部を一対の挟持体により挟持した状態で切断粉を除去することにより、より効率的に切断粉の除去を行うことができる。
【0017】
また、本発明の記録装置において、前記一対の挟持体は前記搬送手段の一部を構成する一対の搬送用ローラーである。
切断粉の除去機能を有する一対の挟持体はこれを別途設けるようにしてもよいが、この発明におけるように、記録媒体を搬送するために設けられている一対の搬送用ローラーにこの除去機能を持たせるようにすることもできる。このように搬送用ローラーを挟持体として流用すれば、切断粉を除去するための部材を別途設ける必要がなく、記録装置の構成についてその簡略化を図ることができる。
【0018】
また、本発明の記録装置において、前記除去手段は、前記一対の搬送用ローラーにより前記未記録部分を挟持した状態で前記記録媒体を逆搬送して切断粉を除去するに際して前記一対の搬送用ローラーのうち少なくとも一方の回転を規制する回転規制部を備える。
【0019】
搬送用ローラーを挟持体として流用する場合には、搬送用ローラーにより未記録部分を挟持しつつ記録媒体を逆搬送して切断粉を除去する際に搬送用ローラーの一方或いは双方の回転を規制する構成を採用することが望ましい。この点、この発明によれば、搬送用ローラーの回転を回転規制部が規制するため、回転が規制された搬送用ローラーと未記録部分との間には滑り摩擦力が発生するようになる。そしてこの滑り摩擦力は、搬送用ローラーの回転を規制しない場合に同搬送用ローラーと未記録部分との間に発生する転がり摩擦力と比較して極めて大きい。従って、上記構成を採用することにより、搬送用ローラーと未記録部分との間により大きな摩擦力が発生した状態で切断粉を除去することができるようになり、その除去能力の更なる向上を図ることができる。なお、こうした搬送用ローラーの回転の規制を具現化するうえで、その回転を強制的に規制するための機構を別途設けるようにしてもよいし、搬送用ローラーが記録媒体の搬送に際してモーターを通じて回転駆動されるものであれば、そのモーターの回転を停止することで搬送用ローラーの回転を規制するようにしてもよい。
【0020】
また、上記目的を達成するために、本発明の記録装置における記録方法は、長尺状の記録媒体を搬送経路に沿って上流側から下流側に順搬送して同搬送経路上の記録位置で前記記録媒体に対し記録処理を施す工程と、前記記録媒体を順搬送して前記記録位置より下流側の切断位置で前記記録媒体を切断し前記記録処理が施された部分をその部分よりも上流側の未記録部分から分離する工程と、前記未記録部分の下流側端部が前記切断位置の下流側に位置するように前記記録媒体を順搬送してその未記録部分に付着した切断粉を前記切断位置の下流側の除去位置にて除去した後、同記録媒体を前記記録位置に向けて逆搬送する工程と、前記記録位置に逆搬送された前記記録媒体における前記未記録部分に対して記録処理を施す工程とを含む。
【0021】
また、本発明の記録装置における記録方法において、前記記録媒体を逆搬送する工程では、一対の挟持体を用いて前記除去位置で前記記録媒体の前記未記録部分を挟持した状態で同記録媒体を前記記録位置に向けて逆搬送する。
【0022】
こうした記録装置における記録方法に係る発明によれば、上記構成の記録装置に係る発明と同様の作用効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本実施形態のプリンターの概略構成を示す概略構成図。
【図2】同プリンターの従動ローラーの正面構造を模式的に示す模式正面図。
【図3】同プリンターの電気的構成を示すブロック図。
【図4】同プリンターの平面構造を模式的に示す模式平面図。
【図5】同プリンターにおいて第1搬送機構から第3搬送機構までの間の側面構造を模式的に示す模式側面図。
【図6】同プリンターにおいて第1搬送機構から第3搬送機構までの間の側面構造を模式的に示す模式側面図。
【図7】同プリンターにおいて第1搬送機構から第3搬送機構までの間の側面構造を模式的に示す模式側面図。
【図8】同プリンターにおいて第1搬送機構から第3搬送機構までの間の側面構造を模式的に示す模式側面図。
【図9】同プリンターにおいて第1搬送機構から第3搬送機構までの間の側面構造を模式的に示す模式側面図。
【図10】同プリンターにおいて第1搬送機構から第3搬送機構までの間の側面構造を模式的に示す模式側面図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明にかかる記録装置をインクジェット式のプリンターに具体化した一実施形態について説明する。
図1に示すように、プリンター10には、長尺状の記録媒体としての印刷用紙Sをロール状に巻き重ねたロール体Rを回転させて印刷用紙Sを順次繰り出す機能を有する繰出部20と、その繰り出された印刷用紙Sを搬送する搬送機構30と、印刷用紙Sにインクを噴射して記録処理としての印刷処理を施す記録部80と、印刷処理が施された印刷用紙Sを切断する切断部90とが設けられている。また、繰出部20,搬送機構30,記録部80及び切断部90の動作を制御する制御装置100が設けられている。
【0025】
繰出部20には、ロール体Rを支持するロール軸21と、ロール軸21を回転させるための繰出用モーター22とが設けられている。
搬送手段として機能する搬送機構30には、繰出部20によってロール体Rから繰り出された印刷用紙Sがその周面に巻き掛けられる回動自在の中継ローラー31と、印刷用紙Sをこの中継ローラー31から記録部80を経て切断部90に搬送する第1〜第4搬送機構40,50,60,70とがそれぞれ設けられている。以下の説明では、ロール体Rから繰り出された印刷用紙Sが中継ローラー31、第1搬送機構40から記録部80を経て第2搬送機構50に搬送され、更に同第2搬送機構50から切断部90を経由して第3搬送機構60、第4搬送機構70と順に搬送される場合、即ち印刷用紙Sがロール体Rを最上流部としてその上流側から下流側に搬送される場合を「順搬送」とする。その逆に印刷用紙Sが下流側から上流側に搬送される場合を「逆搬送」とする。そして、印刷用紙Sの搬送経路Tは、これらロール体Rの支持位置、及び中継ローラー31、第1〜第4搬送機構40,50,60,70の各配設態様によって決定されている。
【0026】
第1及び第3及び第4搬送機構40,60,70には、印刷用紙Sを挟持しつつ、順搬送または逆搬送するそれぞれ一対の挟持体としての搬送用ローラー41,61,71が設けられている。これら各搬送用ローラー41,61,71には、搬送用モーター45,65,75に対して動力伝達可能に連結された各駆動ローラー42,62,72と、これら駆動ローラー42,62,72と印刷用紙Sを挟んで対向するように配置された従動ローラー43,63,73とを備えている。
【0027】
各搬送用モーター45,65,75は、各駆動ローラー42,62,72を正回転させて印刷用紙Sを順搬送する。一方、各駆動ローラー42,62,72を逆回転させて印刷用紙Sを逆搬送する。また、各搬送用モーター45,65,75はそれらの回転を停止することにより、各駆動ローラー42,62,72の回転を規制する回転規制部として機能する。なお、各搬送用モーター45,65,75の出力軸には、その回転速度、回転位置及び回転方向を検出するためのロータリーエンコーダー45A,65A,75A(図3参照)がそれぞれ設けられている。
【0028】
一方、各従動ローラー43,63,73の各回動軸43A,63A,73Aには、それら各従動ローラー43,63,73を対応する駆動ローラー42,62,72に近接する方向に付勢するためのスプリング44,64,74がそれぞれ取り付けられている。そして、各搬送用ローラー41,61,71は、これらスプリング44,64,74の付勢力により各駆動ローラー42,62,72及び各従動ローラー43,63,73を印刷用紙Sに密着させてこれを挟持する状態とし、印刷用紙Sを順搬送または逆搬送させるための摩擦力を付与する。
【0029】
第2搬送機構50には、印刷用紙Sの幅方向Wにおける位置をガイドするためのガイド部材51と、このガイド部材51に対して印刷用紙Sを挟んで対向するように配置された従動ローラー53とが設けられている。従動ローラー53の回動軸53Aには、同従動ローラー53をガイド部材51と近接する方向に付勢するスプリング54が設けられている。このように従動ローラー53がガイド部材51に接近する方向に付勢されることにより、印刷用紙Sはガイド部材51及び従動ローラー53に密着した状態で挟持される。
【0030】
第3搬送機構60及び第4搬送機構70において、各搬送用ローラー61,71の下流側には、印刷用紙Sの有無を検出するセンサー66,76がそれぞれ設けられている。そして、制御装置100は、これらセンサー66,76から出力される検出信号に基づいて、印刷用紙Sの下流側端部が第3搬送機構60或いは第4搬送機構70に達したことを検出する。
【0031】
ここで、搬送用ローラー41は、その従動ローラー43がスプリング44の付勢力によって常に印刷用紙Sに接触している。その一方で、各搬送用ローラー61,71は、それらの従動ローラー63、73を印刷用紙Sから近接離間する態様にて変位させる駆動部として機能する各カム機構67,77によって昇降可能に構成されている。従って、従動ローラー63、73は、各スプリング64,74の付勢力によって印刷用紙Sに対して密着しているが、この各カム機構67,77により印刷用紙Sから離間する方向に変位させられると、従動ローラー63、73は印刷用紙Sに対して非接触状態となる。
【0032】
すなわち、各搬送用ローラー61,71は、各従動ローラー63,73を印刷用紙Sに近接するようにこれを変位させて各従動ローラー63,73と各駆動ローラー62,72との間に隙間がないようにそれらが配置されることにより、印刷用紙Sに対して挟持力を作用させる状態となる。また、各従動ローラー63,73の周面の底部が印刷用紙Sから上方に離間するようにこれを変位させて各従動ローラー63,73と各駆動ローラー62,72との間に隙間ができるようにそれらが配置されることにより、印刷用紙Sに対して挟持力を作用させない状態となる。このように、各搬送用ローラー61,71は、印刷用紙Sに対して挟持力を作用させる状態と挟持力を作用させない状態との間で切り替え可能となっている。
【0033】
記録手段として機能する記録部80は、搬送経路Tの他方側(図1では上側)に配置されたガイド軸81と、ガイド軸81に支持されたキャリッジ82と、キャリッジ82に支持された記録ヘッド83とを備えている。ガイド軸81は、幅方向Wに沿って延びるように設けられている。キャリッジ82はガイド軸81に案内されつつ幅方向Wに往復移動する。
【0034】
また記録部80は、搬送経路Tを挟んだ一方側(図1では下側)に配置された支持部材84を備えている。支持部材84は、上面側に設けられた支持面84Aで搬送される印刷用紙Sを支持する。支持部材84は、その上面側に複数の吸引孔(図示略)が形成されるとともに、この吸引孔を通じて印刷用紙Sを吸着するための吸引機構85が内蔵されている。
【0035】
記録ヘッド83には、インクを噴射する複数のノズル(図示略)が設けられている。そして、支持部材84に支持された印刷用紙Sの表面(図1では上面)に記録ヘッド83のノズルからインクが噴射されて印刷が施される。なお、以降では、記録ヘッド83のノズルからインクが噴射される部分を「記録位置PA」とする。
【0036】
切断手段として機能する切断部90は、第2搬送機構50と第3搬送機構60との間に設けられて、搬送経路Tの他方側(図1では上側)に配置される回転刃91と、搬送経路Tを挟んだ一方側(図1では下側)に配置される固定刃92と、カッターモーター93とを備えている。回転刃91は、カッターモーター93の駆動により回転しつつ幅方向Wに沿って移動することにより、印刷用紙Sを切断する。
【0037】
なお、以下では、切断部90により印刷用紙Sにおいてこれが切断される部分を「切断位置PC」とする。また、回転刃91が印刷用紙Sの一端部から他端部に向けて移動して印刷用紙Sを順次切断する方向を「切断方向Z」とする。また、回転刃91により切断された印刷用紙Sのうち、記録が施された部分を「記録部分SB」とし、印刷が施されていない部分を「未記録部分SA」とする。
【0038】
図2を参照して、搬送用ローラー61のうちの従動ローラー63の詳細な構造について説明する。
従動ローラー63は、その回動軸63Aの幅方向Wにおける中間位置PMを基準として、それぞれ対称となる位置に3つのローラーが設けられている。幅方向において中間位置PMから最も近い位置には、第1ローラー63Bが設けられている。また、この第1ローラー63Bよりも中間位置PMから離間した位置には、第2ローラー63Cが設けられている。また、この第2ローラー63Cよりも中間位置PMから離間した位置には、第3ローラー63Dが配置されている。
【0039】
ここで、対称なそれぞれの第1ローラー63Bの間の距離を「L1」とし、対称なそれぞれの第2ローラー63Cの間の距離を「L2」とし、対称なそれぞれの第3ローラー63Dの間の距離を「L3」とする。
【0040】
第1ローラー63Bは、幅方向Wの長さがL1の印刷用紙Sの端部を挟持して搬送する。また、第2ローラー63Cは、幅方向Wの長さがL2の印刷用紙Sの端部を挟持して搬送する。また、第3ローラー63Dは、幅方向Wの長さがL3の印刷用紙Sの端部を挟持して搬送する。
【0041】
すなわち、搬送用ローラー61は、幅方向Wの長さが異なる各印刷用紙Sの幅方向Wの長さに合わせた位置に配置されている。これにより、そのときどきの印刷処理に応じて、幅方向Wの長さが異なる印刷用紙Sの端部を挟持しつつ搬送する。
【0042】
なお、従動ローラー63は、弾性変形可能であり、例えばスポンジ等の多孔質材料により構成されている。従って、搬送用ローラー61により印刷用紙Sを挟持するときには、従動ローラー63が駆動ローラー62に接近する方向に押しつけられて弾性変形した状態で印刷用紙Sを挟持する。一方、駆動ローラー62は、金属材料により構成されているため、印刷用紙Sを挟持するときにも変形することはない。
【0043】
次に、プリンター10の電気的構成について説明する。
図3に示すように、制御装置100は、コンピューター110と、ヘッド駆動回路120と、モーター駆動回路131,132,133とを備えている。コンピューター110は、バス140を介して、ヘッド駆動回路120及びモーター駆動回路131,132,133に電気的に接続されている。
【0044】
コンピューター110は、ASIC(AppliCAtion SpECiFiC IC(特定用途向けIC))111、CPU112、ROM113、RAM114、不揮発性メモリー115を備えている。
【0045】
ROM113には、各種制御プログラム及び各種データなどが記憶されている。不揮発性メモリー115には、ファームウェアプログラムを始めとする各種プログラム及び印刷処理に必要な各種データなどが記憶されている。RAM114には、CPU112によって実行されるプログラムデータや、CPU112による演算結果及び処理結果である各種データ、並びにASIC111で処理された各種データなどが一時記憶される。
【0046】
コンピューター110は、CPU112がROM113等に記憶されたプログラムを実行することで、各種の制御を行う。例えば、コンピューター110は、ヘッド駆動回路120を介して記録ヘッド83を制御するとともに、モーター駆動回路131,132,133を介してそれぞれ繰出用モーター22、カッターモーター93、各搬送用モーター45,65,75を制御する。
【0047】
なお、コンピューター110は、各ロータリーエンコーダー45A,65A,75Aからの検出信号やセンサー66,76の検出結果に基づいて、記録ヘッド83、繰出用モーター22、各搬送用モーター45,65,75及びカッターモーター93の駆動を制御する。
【0048】
次に、プリンター10の作用について説明する。
印刷処理が実行されると、繰出用モーター22が駆動されてロール軸21が回転される。その後、搬送用モーター45,65,75が駆動されて各搬送用ローラー41,61,71が正回転することにより、印刷用紙Sが搬送経路Tに沿って順搬送される。そして、印刷用紙Sは、その幅方向Wの位置を支持部材84や図示しないガイド部材によりガイドされつつ、搬送経路T上の記録位置PAまで搬送される。記録位置PAにおいては、第1の工程(順搬送後の記録処理工程)として、記録部80により印刷用紙Sに対して印刷処理が施される。
【0049】
なお、プリンター10では、1つの印刷処理に含まれる印刷データを複数に分割し、分割された各印刷データに基づく印刷処理をキャリッジ82の走査毎に行うとともに、各印刷処理の合間に、印刷用紙Sの印刷が施された部分が間欠的に搬送されるようになっている。すなわち、記録部80では、幅方向Wが長手方向となる帯状の画像の形成と紙送りとが交互に繰り返されることで、1つの印刷処理に基づく画像が形成される。
【0050】
次に、第2の工程(分離工程)として、印刷が施された印刷用紙Sは、記録位置PAの下流側となる切断位置PCにおいて、切断部90により切断される。これにより、切断部90よりも上流側に位置する未記録部分SAと切断部90よりも下流側に位置する記録部分SBとが分離される。印刷用紙Sは、搬送機構30による印刷用紙Sの搬送を停止させ、上流側を支持部材84の吸引機構85で保持する一方、下流側を搬送用ローラー61で挟持することにより保持した状態で切断される。なお以降では、未記録部分SAの下流側端部を「先端部ST」とする。
【0051】
また、プリンター10は、切断位置PCよりも上流側の部分に対して印刷を行うため、印刷用紙Sの搬送を停止するタイミングに合わせて、印刷用紙Sが切断される。具体的には、センサー66からの信号を検出したときの駆動ローラー62の回転速度及び検出後の経過時間に基づいて、印刷用紙Sがセンサー66から下流側に搬送された距離を算出し、その算出結果に基づいて駆動ローラー62の駆動を停止したときに印刷用紙Sが切断される。そして、切断されてカットシートとなった記録部分SBは、搬送機構30によって停止されることなく連続的に搬送され、図示しない排紙部に排紙される。
【0052】
なお、プリンター10では、記録部80において、長尺状の印刷用紙Sの表面に対して余白となる間隔をあけつつ複数の画像を印刷するとともに、余白部分で印刷用紙Sの先端側を順次切断していくことで、例えば所定のプリントサイズの写真印刷を行うようになっている。
【0053】
印刷用紙Sの切断が実行された後、印刷用紙Sに対して再び印刷処理を施す際には、その印刷処理に先立ち、第3工程(逆搬送工程)として、各駆動ローラー42,62,72を逆回転させることにより印刷用紙Sの先端部STが逆搬送される。すなわち、記録ヘッド83を通過しても印刷されていない印刷用紙Sの部分を記録ヘッド83と対向する領域内の最も下流側の位置まで戻す作業が実行される。
【0054】
ところで、プリンター10では、印刷用紙Sを切断する際に先端部STの近傍に切断粉としての紙粉が発生することがあり、特にこの紙粉は切断方向Zに偏在する傾向がある。そして、印刷用紙Sを記録位置PAまで逆搬送する際のこの印刷用紙Sに付着した紙粉に起因する印刷への悪影響については上述したとおりである。
【0055】
これに対して、プリンター10では、切断位置PCよりも下流側に配置された搬送用ローラー61の下流側に位置するように切断位置PCにて切断された未記録部分SAの先端部STを順搬送した後に、未記録部分SAを搬送用ローラー61で挟持した状態で、記録位置PAまで逆搬送する。
【0056】
図4〜図8を参照して、第1の工程後にプリンター10により実行される一連の工程について説明する。なお、ここでは、第1搬送機構40から第3搬送機構60までの間に配置される構成の動作について説明し、その他の構成の動作については省略する。
【0057】
図5に示すように、第1の工程後に印刷用紙Sは順搬送される。
すなわち、制御装置100は、搬送用ローラー41の駆動ローラー42を搬送用モーター45を通じて正回転させる。これにより、搬送用ローラー41は、印刷用紙Sを挟持した状態で印刷用紙Sに対して搬送力を付与して印刷用紙Sを順搬送する。そして、印刷用紙Sの下流側の先端部は、切断部90の配設位置を下流側に向けて通過した後に、第3搬送機構60の配設位置に進入する。なおこのとき、カム機構67により従動ローラー63が印刷用紙Sに対して上方に離間して配置されると、搬送用ローラー61が印刷用紙Sに対して挟持力を作用させない状態となる。
【0058】
図6に示すように、第1の工程後に実行される第2の工程として、センサー66からの信号に基づいて、印刷用紙Sは、切断部90により切断位置PCにて切断される。
すなわち、制御装置100は、センサー66が印刷用紙Sを検出した時点から印刷用紙Sが搬送される距離を算出し、その算出結果に基づいて、例えば図4における位置P1まで印刷用紙Sの先端部が順搬送されたときに、駆動ローラー42,62の回転駆動を搬送用モーター45,65の駆動を停止させることにより停止させる。なおこのとき、従動ローラー63が印刷用紙Sに対して近接して配置されることにより、搬送用ローラー61が印刷用紙Sに対して挟持力を付与する状態となる。
【0059】
そして、制御装置100は、印刷用紙Sが搬送用ローラー41,61に挟持された状態のもと、カッターモーター93を駆動させることにより回転刃91が回転駆動されて、印刷用紙Sが未記録部分SAと記録部分SBとに分離される。
【0060】
このとき、未記録部分SAの下流側の先端部ST及び記録部分SBの上流側の先端部の近傍、すなわち図6の一点鎖線にて囲まれる部分Aに紙粉が発生し、その中でも特に切断方向Zの端部(図4の一点鎖線にて囲まれる部分A)に紙粉が偏在する状態となる。
【0061】
図7に示すように、第2の工程後に実行される排紙工程として、切断された記録部分SBが下流側の排紙部に向けて搬送される。
すなわち、制御装置100は、搬送用ローラー61の駆動ローラー62を搬送用モーター65の駆動を通じて正回転させる。これにより、搬送用ローラー61は、記録部分SBを挟持した状態で同部分SBに対して搬送力を付与することにより印刷用紙Sを順搬送して排紙部に排出する。なおこのとき、制御装置100は、搬送用モーター45の駆動を停止させることにより、駆動ローラー42の回転を停止させる。
【0062】
図8に示すように、排紙工程後に実行される第3の工程中の前工程として、未記録部分SAの先端部STが搬送用ローラー61よりも下流側まで順搬送される。
すなわち、制御装置100は、搬送用ローラー41の駆動ローラー42を搬送用モーター45の駆動を通じて正回転させる。これにより、搬送用ローラー41は、未記録部分SAを切断位置PCの下流側まで順搬送する。なおこのとき、従動ローラー63が印刷用紙Sに対して上方に離間して配置されることにより、搬送用ローラー61が印刷用紙Sに対して挟持力を作用させない状態となる。
【0063】
図9に示すように、第3の工程中の前工程後に実行される第3の工程中の中工程として、紙粉が付着した未記録部分SAの先端部STよりも上流側の部分が搬送用ローラー61により挟持される。
【0064】
すなわち、制御装置100は、センサー66が未記録部分SAの先端部STを検出したことに基づいて、図4における位置P2まで先端部STが搬送された旨判断したときに、搬送用モーター45,65の駆動を停止させることにより駆動ローラー42,62の回転を停止させる。なおこのとき、従動ローラー63が印刷用紙Sに対して近接して配置されることにより、同ローラー63が弾性変形した状態で搬送用ローラー61が印刷用紙Sに対して挟持力を付与する状態となる。
【0065】
図10に示すように、第3の工程中の中工程後に実行される第3の工程中の後工程として、搬送用ローラー61における下流側端部(以下、「除去位置PR」)にて紙粉が除去された後、未記録部分SAが記録位置PAに向けて逆搬送される。
【0066】
すなわち、制御装置100は、搬送用ローラー61の回転を停止した状態のままで搬送用ローラー41の駆動ローラー42を搬送用モーター45を通じて逆回転させる。これにより、搬送用ローラー41は、印刷用紙Sを挟持した状態で印刷用紙Sに対して搬送力を付与して印刷用紙Sを逆搬送する。このとき、搬送用ローラー61により未記録部分SAの先端部STに付着した紙粉が除去位置PRにて同先端部STから払拭される。
【0067】
そして、未記録部分SAの先端部STは、切断部90及び第2搬送機構50の配設位置を下流側に向けて通過した後に、記録位置PAにおける最下流側(図4の位置P3)に進入する。
【0068】
そして、第3の工程の後工程後に実行される第4の工程(逆搬送後の記録処理工程)として、記録位置PAにおいて、記録部80により未記録部分SAに印刷処理が施される。
以上のように、未記録部分SAは、その先端部STに紙粉が付着した状態にて、先端部STよりも上流側の部分が搬送用ローラー61により挟持された状態で、記録位置PAにおける下流側の位置(図4の位置P3)まで逆搬送される。このとき、先端部STに付着した紙粉は、搬送用ローラー61を通過することなく、除去位置PRにおいて搬送用ローラー61により印刷用紙Sから払拭されるようにして除去される。すなわち、紙粉は、従動ローラー63が弾性変形して印刷用紙Sに密着する部分にて除去される。このように、搬送用ローラー61が除去手段として機能する。
【0069】
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)未記録部分SAに印刷処理を施すのに先立ち、同未記録部分SAの先端部STが切断位置PCの下流側に位置するように印刷用紙Sを順搬送し、搬送用ローラー61により未記録部分SAを挟持した状態で印刷用紙Sを逆搬送して紙粉を除去している。このため、紙粉が付着した未記録部分SAが記録位置PAに逆搬送されることを抑制することができる。
【0070】
(2)印刷用紙Sの未記録部分SAに付着した紙粉を除去するに際し、搬送用ローラー61により未記録部分SAを挟持した状態で印刷用紙Sを逆搬送している。このため、駆動ローラー62及び従動ローラー63により未記録部分SAに付着した紙粉を除去位置PRにて同未記録部分SAから払拭する態様にて好適に除去することができる。
【0071】
(3)未記録部分SAに印刷処理を施すべく記録位置PAに向けて印刷用紙Sを逆搬送するのに併せて除去位置PRにて紙粉の除去を行うようにしている。このため、一旦、印刷処理が終了した後に紙粉を除去して印刷処理を再開するまでの時間を短縮することができるようにもなる。
【0072】
(4)従動ローラー63を弾性変形させた状態で印刷用紙Sの未記録部分SAを挟持させるようにしている。このため、弾性変形した従動ローラー63が元の形状に戻ろうとする際に生じる弾性力により搬送用ローラー61と未記録部分SAとの接触圧を高めることができ、搬送用ローラー61における紙粉の除去能力を向上させることができる。
【0073】
(5)従動ローラー63を未記録部分SAから近接及び離間させる態様にて変位させるカム機構67を備える構成を採用している。このため、搬送用ローラー61の間に未記録部分SAを通過させる際には、従動ローラー63が未記録部分SAから離間するようにこれを変位させて搬送用ローラー61の間に未記録部分SAを円滑に通過させることができる。その一方、未記録部分SAに付着した紙粉を除去する際には、従動ローラー63が未記録部分SAに近接するようにこれを変位させて接触圧を高めた状態で同未記録部分SAを搬送用ローラー61により挟持することができるようになる。
【0074】
(6)従動ローラー63を多孔質材料にて形成している。このため、除去した紙粉をその細孔の内部に捕捉しておくことができ、搬送用ローラー61により除去された紙粉が未記録部分SAに再付着することを抑制することができる。
【0075】
(7)印刷用紙Sにおける切断方向Zの一端部及び他端部のうち紙粉が偏在する切断方向Zの先端側となる端部(本実施形態では他端部)を搬送用ローラー61により挟持した状態で、印刷用紙Sを逆搬送している。このため、より効率的に紙粉の除去を行うことができる。
【0076】
(8)印刷用紙Sを搬送するために設けられている搬送用ローラー61に紙粉を除去する機能を持たせるようにしている。このため、紙粉を除去するための部材を別途設ける必要がなく、プリンター10の構成についてその簡略化を図ることができる。
【0077】
(9)搬送用ローラー61により未記録部分SAを挟持しつつ印刷用紙Sを逆搬送して紙粉を除去する際に駆動ローラー62の回転を停止させるようにしている。このため、回転が停止された駆動ローラー62と未記録部分SAとの間には滑り摩擦力が発生するようになる。そしてこの滑り摩擦力は、搬送用ローラー61の回転を停止しない場合に同搬送用ローラー61と未記録部分SAとの間に発生する転がり摩擦力と比較して極めて大きい。従って、上記構成を採用することにより、搬送用ローラー61と未記録部分SAとの間により大きな摩擦力が発生した状態で紙粉を除去することができるようになり、その除去能力の更なる向上を図ることができる。
【0078】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・切断位置PCよりも下流側に印刷用紙Sの幅方向Wに沿って延びるガイド軸を設け、このガイド軸に印刷用紙Sが接触するブラシを設けるようにして紙粉を除去するようにしてもよい。
【0079】
・切断位置PCよりも下流側に紙粉を吹き飛ばすことのできる機構を設けるようにしてもよい。また、回転することなく、印刷用紙Sを挟持する挟持部材を設けるようにしてもよい。
【0080】
・従動ローラー63は、粘着性を有する材料により形成してもよい。この構成によれば、除去した紙粉をその粘着力により捕捉しておくことができるため、搬送用ローラー61により除去された紙粉が未記録部分SAに再付着することを抑制することができる。また、多孔質材料且つ粘着性を有する材料により形成することもできる。
【0081】
・第2の工程後に搬送用ローラー61よりも下流側に未記録部分SAを搬送した後、駆動ローラー62を正回転させつつ、未記録部分SAを逆搬送することにより紙粉を除去してもよい。この場合には、搬送用ローラー61の回転方向と印刷用紙Sが引き戻される方向が逆方向となるため、印刷用紙Sの表面に付着した紙粉を払拭して下流側に押し出すことができ、紙粉を除去する効果が高まる。
【0082】
・上記変形例において、駆動ローラー62を正回転させることに代えて、従動ローラー63を駆動させるための駆動モーターを設けることにより、従動ローラーを正回転させるようにしてもよい。また、従動ローラー63の回転を停止させるためのストッパーを設けるようにすることにより、駆動ローラー62を正回転させる一方、従動ローラー63の回転は停止させるようにしてもよい。
【0083】
・駆動ローラー62が弾性変形可能なスポンジ等により形成され、従動ローラー63が金属等の弾性変形不能な材料により形成されるようにしてもよい。また、いずれのローラー62,63も弾性変形可能な材料により形成されるようにしてもよい。
【0084】
・切断方向Zとは反対方向の端部の搬送用ローラー61を省略してもよい。
・第1及び第2及び第3ローラー63B,63C,63Dといった複数のローラーに代えて回動軸63Aの周囲で且つその延伸方向全体において同径のローラーにしてもよい。
【0085】
・切断部90は、切断位置PCにて未記録部分SAと記録部分SBとが分離される部分を同時に切断する構成としてもよい。
・センサー66からの信号に基づいて、切断部90により印刷用紙Sを切断することに代えて、印刷処理終了後に搬送用ローラー41を回転させた時間及び駆動ローラー42の回転数を把握することにより、印刷用紙Sが搬送された距離を算出して切断するようにしてもよい。
【0086】
・記録媒体は、印刷用紙Sに限定されず、布や樹脂フィルム、樹脂シート、金属シートなどでもよい。
・記録方式としてインクジェット方式を採用したが、この限りではなく、電子写真方式や熱転写方式など、任意の方式を採用することができる。また、記録装置はプリンターに限らず、FAX装置、コピー装置、あるいはこれら複数機能を備えた複合機等に具体化してもよい。さらに、インクジェット方式においても、インク以外の他の液体を噴射したり吐出したりする液体噴射装置を採用してもよく、微小量の液滴を吐出させる液体噴射ヘッド等を備える各種の液体噴射装置に流用可能である。なお、液滴とは、上記液体噴射装置から吐出される液体の状態をいい、粒状、涙状、糸状に尾を引くものを含むものとする。また、ここでいう液体とは、液体噴射装置から噴射可能な材料であればよい。例えば、物質が液相であるときの状態のものであれば、粘性の高い又は低い液状体、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)のような流状態であればよい。また物質の一状態としての液体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散又は混合されたものなども含む。また、液体の代表的な例としては上記実施形態で説明したようなインクや液晶等が挙げられる。ここで、インクとは一般的な水性インク及び油性インク並びにジェルインク、ホットメルトインク等の各種液体組成物を包含するものとする。液体噴射装置の具体例としては、例えば液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ、面発光ディスプレイ、カラーフィルタの製造などに用いられる電極材や色材などの材料を分散又は溶解のかたちで含む液体を噴射する液体噴射装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する液体噴射装置、精密ピペットとして用いられ試料となる液体を噴射する液体噴射装置、捺染装置やマイクロディスペンサ等であってもよい。さらに、時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する液体噴射装置、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に噴射する液体噴射装置、基板などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング液を噴射する液体噴射装置を採用してもよい。そして、これらのうちいずれか一種の液体噴射装置に本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0087】
10…記録装置として機能するプリンター、30…搬送手段として機能する搬送機構、61…除去手段及び挟持体として機能する搬送用ローラー、62…駆動ローラー、63…従動ローラー、65…回転規制部として機能する搬送用モーター、80…記録手段として機能する記録部、90…切断手段として機能する切断部、S…長尺状の記録媒体としての印刷用紙、ST…先端部、SA…未記録部分、T…搬送経路、Z…切断方向、W…幅方向、PA…記録位置、PC…切断位置、PR…除去位置。
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えばインクジェット式プリンター等の記録装置及び同装置における記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット式プリンターに用いられる印刷用紙としては、種々の規格より予め定められた定型状のものが一般に用いられる。例えば業務用のインクジェット式プリンター等では、ロール状に巻かれた長尺状の用紙を用い、これに印刷処理を施すとともに同処理がなされた部分を下流側に順搬送して切断することによりその印刷処理がなされた部分を印刷用紙の未印刷部分から分離するようにしている。そして、こうしたインクジェット式プリンターでは印刷用紙の未印刷部分が印刷位置まで逆搬送されることに伴い、これに再び記録処理がなされる。
【0003】
このように長尺状の印刷用紙を印刷処理の都度に切断するようにした場合には、その切断の際に紙粉が発生することがある。この場合、印刷用紙を印刷位置まで逆搬送した際に、この紙粉が印刷用紙の表面に残留したまま印刷がなされたり、逆搬送中に舞い上がった紙粉がインクジェット式プリンターの記録ヘッドに付着したりすることに起因して、正常な印刷が行えなくなったり、印刷精度の低下を招いたりするおそれがある。このため、例えば特許文献1に記載のインクジェット式プリンターでは、印刷位置の近傍に吸引孔を設け、同吸引孔により紙粉を吸引して除去するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−39757号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に記載されるような従来のインクジェット式プリンターでは、吸引孔により紙粉を吸引して除去することができるとしても、紙粉の付着した未記録部分が一旦は印刷位置近傍まで逆搬送されることになる。そのため、吸引される前或いは吸引されなかった紙粉が印刷位置の付近に散点して後の印刷処理において印刷用紙や記録ヘッドに再付着するなどのおそれがあり、この点でなお改善の余地を残すものとなっていた。
【0006】
またこうした問題は、インクジェット式のプリンターに限らず、電子写真方式や熱転写方式等、印刷態様の異なるプリンターにあっても同様に発生する。更に、例えば布、樹脂フィルム、樹脂シート或いは金属シート等々に記録処理を施した後に切断し、更にその未記録部分に再度記録処理を施す他の記録装置にあっても概ね共通した問題となっている。
【0007】
この発明は、こうした従来の実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、記録媒体の未記録部分に付着した切断粉が記録処理に及ぼす悪影響を好適に回避することのできる記録装置及び同装置における記録方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の記録装置は、長尺状の記録媒体を搬送経路に沿って搬送する搬送手段と、前記搬送手段により上流側から下流側に順搬送される前記記録媒体に対し前記搬送経路上の記録位置で記録処理を施す記録手段と、前記記録位置より下流側の切断位置で前記記録媒体を切断して前記記録処理が施された部分をその部分よりも上流側の未記録部分から分離する切断手段と、前記搬送手段により前記未記録部分の下流側端部が前記切断位置の下流側に位置するように前記記録媒体が順搬送された際に前記未記録部分に付着している切断粉を前記切断位置の下流側の除去位置にて除去する除去手段とを備え、前記記録媒体を前記記録位置に向けて逆搬送し前記除去手段により切断粉が除去された前記未記録部分に対して前記記録手段による記録処理を施す。
【0009】
この発明では、搬送経路上の記録位置で記録手段により記録処理が施された記録媒体は、搬送経路の下流側に順搬送されるとともに記録位置より下流側の切断位置で切断される。これにより、記録媒体は記録処理が施された部分がその未記録部分から分離される。こうして記録処理が施された部分が分離された記録媒体は、搬送経路の記録位置に向けてその上流側に逆搬送され、その未記録部分に記録処理が施される。ここで、上述したように記録媒体が切断される際、その切断部分から切断粉が生じてこれが切断部分近傍に付着することがある。このため、未記録部分に記録処理を施すのに先立ち、同未記録部分の下流側端部が切断位置の下流側に位置するように記録媒体を順搬送し、この未記録部分、特にその下流側端部近傍に付着した切断粉を除去するようにしている。
【0010】
ここで、この発明によれば、こうした切断粉の除去を記録媒体の切断位置よりも下流側の除去位置にて行うようにしているため、記録媒体を切断した後にこれを逆搬送して未記録部分に記録処理を施す際に、その記録処理を施す領域に切断粉が付着した未記録部分が逆搬送されてしまうことを抑制することができる。したがって、正常な記録ができなくなったり、その記録精度が低下したりする等、記録媒体の未記録部分に付着した切断粉が記録処理に及ぼす悪影響を回避することができる。
【0011】
また、本発明の記録装置において、前記除去手段は、前記切断手段により切断された前記記録媒体の前記未記録部分に記録処理を施すべく前記搬送手段により前記記録媒体が上流側に逆搬送される際に前記除去位置で前記未記録部分を挟持する一対の挟持体を含む。
【0012】
この発明によれば、記録媒体の未記録部分に付着した切断粉を除去するに際して、未記録部分を一対の挟持体によって挟持した状態で記録媒体を逆搬送させるため、各挟持体によって未記録部分に付着している切断粉を同未記録部分から払拭する態様にて好適に除去することができる。更に、未記録部分に記録処理を施すべく記録位置に向けて記録媒体を逆搬送するのに併せて切断粉の除去を行うことができるため、一旦、記録処理が終了した後に切断粉を除去して記録処理を再開するまでの時間を短縮することができるようにもなる。
【0013】
また、本発明の記録装置において、前記一対の挟持体は、その少なくとも一方が弾性変形した状態で前記未記録部分を挟持するものである。
ところで、このように一対の挟持体によって未記録部分に付着した切断粉を払拭する態様で除去するためには、記録媒体の未記録部分と各挟持体との密着性を高めた状態で、換言すれば両者の接触圧を高めた状態で記録媒体を逆搬送することが望ましい。この点、この発明によれば、挟持体の一方或いは双方を弾性変形させた状態で記録媒体の未記録部分を挟持することになるため、その弾性変形した挟持体が元の形状に戻ろうとする際に生じる弾性力により挟持体と未記録部分との接触圧を高めることができ、挟持体における切断粉の除去能力を向上させることができる。
【0014】
また、本発明の記録装置において、前記除去手段は、前記一対の挟持体のうち少なくとも一方を前記未記録部分に対して近接及び離間させる態様にて変位させる駆動部を含む。
挟持体を弾性変形させた状態で未記録部分を挟持させることで切断粉の除去能力を高めることは可能であるものの、挟持体により未記録部分を挟持すべく、未記録部分の下流側端部が切断位置の下流側に位置するように記録媒体を順搬送して挟持体の間に未記録部分を通過させることが困難となる懸念がある。この点、この発明によれば、挟持体の一方或いは双方を未記録部分に対して近接及び離間させる態様にて変位させる駆動部を備えているため、挟持体の間に未記録部分を通過させる際には、挟持体が未記録部分から離間するようにこれを変位させて挟持体の間に未記録部分を円滑に通過させることができる。その一方、未記録部分に付着している切断粉を除去する際には、挟持体が未記録部分に近接するようにこれを変位させて接触圧を高めた状態で同未記録部分を挟持体により挟持することができるようになる。
【0015】
また、本発明の記録装置において、前記切断手段は前記記録媒体の一端部から他端部に向けてこれを順次切断するものであり、前記一対の挟持体は少なくとも前記記録媒体の他端部を挟持可能な態様で設けられる。
【0016】
ここで、記録媒体の切断態様としては、記録処理が施された記録部分と未記録部分との分離部分を一刀両断に切断する切断態様、その分離部分を切断方向の一端部から他端部に向けて順次切断する切断態様、等を挙げることができる。そして、後者の切断態様にあっては、切断によって生じる切断粉が切断方向の基端側となる一端部側から先端側となる他端部側に移動して他端部側に偏在する傾向がある。この点、この発明によれば、この他端部を一対の挟持体により挟持した状態で切断粉を除去することにより、より効率的に切断粉の除去を行うことができる。
【0017】
また、本発明の記録装置において、前記一対の挟持体は前記搬送手段の一部を構成する一対の搬送用ローラーである。
切断粉の除去機能を有する一対の挟持体はこれを別途設けるようにしてもよいが、この発明におけるように、記録媒体を搬送するために設けられている一対の搬送用ローラーにこの除去機能を持たせるようにすることもできる。このように搬送用ローラーを挟持体として流用すれば、切断粉を除去するための部材を別途設ける必要がなく、記録装置の構成についてその簡略化を図ることができる。
【0018】
また、本発明の記録装置において、前記除去手段は、前記一対の搬送用ローラーにより前記未記録部分を挟持した状態で前記記録媒体を逆搬送して切断粉を除去するに際して前記一対の搬送用ローラーのうち少なくとも一方の回転を規制する回転規制部を備える。
【0019】
搬送用ローラーを挟持体として流用する場合には、搬送用ローラーにより未記録部分を挟持しつつ記録媒体を逆搬送して切断粉を除去する際に搬送用ローラーの一方或いは双方の回転を規制する構成を採用することが望ましい。この点、この発明によれば、搬送用ローラーの回転を回転規制部が規制するため、回転が規制された搬送用ローラーと未記録部分との間には滑り摩擦力が発生するようになる。そしてこの滑り摩擦力は、搬送用ローラーの回転を規制しない場合に同搬送用ローラーと未記録部分との間に発生する転がり摩擦力と比較して極めて大きい。従って、上記構成を採用することにより、搬送用ローラーと未記録部分との間により大きな摩擦力が発生した状態で切断粉を除去することができるようになり、その除去能力の更なる向上を図ることができる。なお、こうした搬送用ローラーの回転の規制を具現化するうえで、その回転を強制的に規制するための機構を別途設けるようにしてもよいし、搬送用ローラーが記録媒体の搬送に際してモーターを通じて回転駆動されるものであれば、そのモーターの回転を停止することで搬送用ローラーの回転を規制するようにしてもよい。
【0020】
また、上記目的を達成するために、本発明の記録装置における記録方法は、長尺状の記録媒体を搬送経路に沿って上流側から下流側に順搬送して同搬送経路上の記録位置で前記記録媒体に対し記録処理を施す工程と、前記記録媒体を順搬送して前記記録位置より下流側の切断位置で前記記録媒体を切断し前記記録処理が施された部分をその部分よりも上流側の未記録部分から分離する工程と、前記未記録部分の下流側端部が前記切断位置の下流側に位置するように前記記録媒体を順搬送してその未記録部分に付着した切断粉を前記切断位置の下流側の除去位置にて除去した後、同記録媒体を前記記録位置に向けて逆搬送する工程と、前記記録位置に逆搬送された前記記録媒体における前記未記録部分に対して記録処理を施す工程とを含む。
【0021】
また、本発明の記録装置における記録方法において、前記記録媒体を逆搬送する工程では、一対の挟持体を用いて前記除去位置で前記記録媒体の前記未記録部分を挟持した状態で同記録媒体を前記記録位置に向けて逆搬送する。
【0022】
こうした記録装置における記録方法に係る発明によれば、上記構成の記録装置に係る発明と同様の作用効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本実施形態のプリンターの概略構成を示す概略構成図。
【図2】同プリンターの従動ローラーの正面構造を模式的に示す模式正面図。
【図3】同プリンターの電気的構成を示すブロック図。
【図4】同プリンターの平面構造を模式的に示す模式平面図。
【図5】同プリンターにおいて第1搬送機構から第3搬送機構までの間の側面構造を模式的に示す模式側面図。
【図6】同プリンターにおいて第1搬送機構から第3搬送機構までの間の側面構造を模式的に示す模式側面図。
【図7】同プリンターにおいて第1搬送機構から第3搬送機構までの間の側面構造を模式的に示す模式側面図。
【図8】同プリンターにおいて第1搬送機構から第3搬送機構までの間の側面構造を模式的に示す模式側面図。
【図9】同プリンターにおいて第1搬送機構から第3搬送機構までの間の側面構造を模式的に示す模式側面図。
【図10】同プリンターにおいて第1搬送機構から第3搬送機構までの間の側面構造を模式的に示す模式側面図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明にかかる記録装置をインクジェット式のプリンターに具体化した一実施形態について説明する。
図1に示すように、プリンター10には、長尺状の記録媒体としての印刷用紙Sをロール状に巻き重ねたロール体Rを回転させて印刷用紙Sを順次繰り出す機能を有する繰出部20と、その繰り出された印刷用紙Sを搬送する搬送機構30と、印刷用紙Sにインクを噴射して記録処理としての印刷処理を施す記録部80と、印刷処理が施された印刷用紙Sを切断する切断部90とが設けられている。また、繰出部20,搬送機構30,記録部80及び切断部90の動作を制御する制御装置100が設けられている。
【0025】
繰出部20には、ロール体Rを支持するロール軸21と、ロール軸21を回転させるための繰出用モーター22とが設けられている。
搬送手段として機能する搬送機構30には、繰出部20によってロール体Rから繰り出された印刷用紙Sがその周面に巻き掛けられる回動自在の中継ローラー31と、印刷用紙Sをこの中継ローラー31から記録部80を経て切断部90に搬送する第1〜第4搬送機構40,50,60,70とがそれぞれ設けられている。以下の説明では、ロール体Rから繰り出された印刷用紙Sが中継ローラー31、第1搬送機構40から記録部80を経て第2搬送機構50に搬送され、更に同第2搬送機構50から切断部90を経由して第3搬送機構60、第4搬送機構70と順に搬送される場合、即ち印刷用紙Sがロール体Rを最上流部としてその上流側から下流側に搬送される場合を「順搬送」とする。その逆に印刷用紙Sが下流側から上流側に搬送される場合を「逆搬送」とする。そして、印刷用紙Sの搬送経路Tは、これらロール体Rの支持位置、及び中継ローラー31、第1〜第4搬送機構40,50,60,70の各配設態様によって決定されている。
【0026】
第1及び第3及び第4搬送機構40,60,70には、印刷用紙Sを挟持しつつ、順搬送または逆搬送するそれぞれ一対の挟持体としての搬送用ローラー41,61,71が設けられている。これら各搬送用ローラー41,61,71には、搬送用モーター45,65,75に対して動力伝達可能に連結された各駆動ローラー42,62,72と、これら駆動ローラー42,62,72と印刷用紙Sを挟んで対向するように配置された従動ローラー43,63,73とを備えている。
【0027】
各搬送用モーター45,65,75は、各駆動ローラー42,62,72を正回転させて印刷用紙Sを順搬送する。一方、各駆動ローラー42,62,72を逆回転させて印刷用紙Sを逆搬送する。また、各搬送用モーター45,65,75はそれらの回転を停止することにより、各駆動ローラー42,62,72の回転を規制する回転規制部として機能する。なお、各搬送用モーター45,65,75の出力軸には、その回転速度、回転位置及び回転方向を検出するためのロータリーエンコーダー45A,65A,75A(図3参照)がそれぞれ設けられている。
【0028】
一方、各従動ローラー43,63,73の各回動軸43A,63A,73Aには、それら各従動ローラー43,63,73を対応する駆動ローラー42,62,72に近接する方向に付勢するためのスプリング44,64,74がそれぞれ取り付けられている。そして、各搬送用ローラー41,61,71は、これらスプリング44,64,74の付勢力により各駆動ローラー42,62,72及び各従動ローラー43,63,73を印刷用紙Sに密着させてこれを挟持する状態とし、印刷用紙Sを順搬送または逆搬送させるための摩擦力を付与する。
【0029】
第2搬送機構50には、印刷用紙Sの幅方向Wにおける位置をガイドするためのガイド部材51と、このガイド部材51に対して印刷用紙Sを挟んで対向するように配置された従動ローラー53とが設けられている。従動ローラー53の回動軸53Aには、同従動ローラー53をガイド部材51と近接する方向に付勢するスプリング54が設けられている。このように従動ローラー53がガイド部材51に接近する方向に付勢されることにより、印刷用紙Sはガイド部材51及び従動ローラー53に密着した状態で挟持される。
【0030】
第3搬送機構60及び第4搬送機構70において、各搬送用ローラー61,71の下流側には、印刷用紙Sの有無を検出するセンサー66,76がそれぞれ設けられている。そして、制御装置100は、これらセンサー66,76から出力される検出信号に基づいて、印刷用紙Sの下流側端部が第3搬送機構60或いは第4搬送機構70に達したことを検出する。
【0031】
ここで、搬送用ローラー41は、その従動ローラー43がスプリング44の付勢力によって常に印刷用紙Sに接触している。その一方で、各搬送用ローラー61,71は、それらの従動ローラー63、73を印刷用紙Sから近接離間する態様にて変位させる駆動部として機能する各カム機構67,77によって昇降可能に構成されている。従って、従動ローラー63、73は、各スプリング64,74の付勢力によって印刷用紙Sに対して密着しているが、この各カム機構67,77により印刷用紙Sから離間する方向に変位させられると、従動ローラー63、73は印刷用紙Sに対して非接触状態となる。
【0032】
すなわち、各搬送用ローラー61,71は、各従動ローラー63,73を印刷用紙Sに近接するようにこれを変位させて各従動ローラー63,73と各駆動ローラー62,72との間に隙間がないようにそれらが配置されることにより、印刷用紙Sに対して挟持力を作用させる状態となる。また、各従動ローラー63,73の周面の底部が印刷用紙Sから上方に離間するようにこれを変位させて各従動ローラー63,73と各駆動ローラー62,72との間に隙間ができるようにそれらが配置されることにより、印刷用紙Sに対して挟持力を作用させない状態となる。このように、各搬送用ローラー61,71は、印刷用紙Sに対して挟持力を作用させる状態と挟持力を作用させない状態との間で切り替え可能となっている。
【0033】
記録手段として機能する記録部80は、搬送経路Tの他方側(図1では上側)に配置されたガイド軸81と、ガイド軸81に支持されたキャリッジ82と、キャリッジ82に支持された記録ヘッド83とを備えている。ガイド軸81は、幅方向Wに沿って延びるように設けられている。キャリッジ82はガイド軸81に案内されつつ幅方向Wに往復移動する。
【0034】
また記録部80は、搬送経路Tを挟んだ一方側(図1では下側)に配置された支持部材84を備えている。支持部材84は、上面側に設けられた支持面84Aで搬送される印刷用紙Sを支持する。支持部材84は、その上面側に複数の吸引孔(図示略)が形成されるとともに、この吸引孔を通じて印刷用紙Sを吸着するための吸引機構85が内蔵されている。
【0035】
記録ヘッド83には、インクを噴射する複数のノズル(図示略)が設けられている。そして、支持部材84に支持された印刷用紙Sの表面(図1では上面)に記録ヘッド83のノズルからインクが噴射されて印刷が施される。なお、以降では、記録ヘッド83のノズルからインクが噴射される部分を「記録位置PA」とする。
【0036】
切断手段として機能する切断部90は、第2搬送機構50と第3搬送機構60との間に設けられて、搬送経路Tの他方側(図1では上側)に配置される回転刃91と、搬送経路Tを挟んだ一方側(図1では下側)に配置される固定刃92と、カッターモーター93とを備えている。回転刃91は、カッターモーター93の駆動により回転しつつ幅方向Wに沿って移動することにより、印刷用紙Sを切断する。
【0037】
なお、以下では、切断部90により印刷用紙Sにおいてこれが切断される部分を「切断位置PC」とする。また、回転刃91が印刷用紙Sの一端部から他端部に向けて移動して印刷用紙Sを順次切断する方向を「切断方向Z」とする。また、回転刃91により切断された印刷用紙Sのうち、記録が施された部分を「記録部分SB」とし、印刷が施されていない部分を「未記録部分SA」とする。
【0038】
図2を参照して、搬送用ローラー61のうちの従動ローラー63の詳細な構造について説明する。
従動ローラー63は、その回動軸63Aの幅方向Wにおける中間位置PMを基準として、それぞれ対称となる位置に3つのローラーが設けられている。幅方向において中間位置PMから最も近い位置には、第1ローラー63Bが設けられている。また、この第1ローラー63Bよりも中間位置PMから離間した位置には、第2ローラー63Cが設けられている。また、この第2ローラー63Cよりも中間位置PMから離間した位置には、第3ローラー63Dが配置されている。
【0039】
ここで、対称なそれぞれの第1ローラー63Bの間の距離を「L1」とし、対称なそれぞれの第2ローラー63Cの間の距離を「L2」とし、対称なそれぞれの第3ローラー63Dの間の距離を「L3」とする。
【0040】
第1ローラー63Bは、幅方向Wの長さがL1の印刷用紙Sの端部を挟持して搬送する。また、第2ローラー63Cは、幅方向Wの長さがL2の印刷用紙Sの端部を挟持して搬送する。また、第3ローラー63Dは、幅方向Wの長さがL3の印刷用紙Sの端部を挟持して搬送する。
【0041】
すなわち、搬送用ローラー61は、幅方向Wの長さが異なる各印刷用紙Sの幅方向Wの長さに合わせた位置に配置されている。これにより、そのときどきの印刷処理に応じて、幅方向Wの長さが異なる印刷用紙Sの端部を挟持しつつ搬送する。
【0042】
なお、従動ローラー63は、弾性変形可能であり、例えばスポンジ等の多孔質材料により構成されている。従って、搬送用ローラー61により印刷用紙Sを挟持するときには、従動ローラー63が駆動ローラー62に接近する方向に押しつけられて弾性変形した状態で印刷用紙Sを挟持する。一方、駆動ローラー62は、金属材料により構成されているため、印刷用紙Sを挟持するときにも変形することはない。
【0043】
次に、プリンター10の電気的構成について説明する。
図3に示すように、制御装置100は、コンピューター110と、ヘッド駆動回路120と、モーター駆動回路131,132,133とを備えている。コンピューター110は、バス140を介して、ヘッド駆動回路120及びモーター駆動回路131,132,133に電気的に接続されている。
【0044】
コンピューター110は、ASIC(AppliCAtion SpECiFiC IC(特定用途向けIC))111、CPU112、ROM113、RAM114、不揮発性メモリー115を備えている。
【0045】
ROM113には、各種制御プログラム及び各種データなどが記憶されている。不揮発性メモリー115には、ファームウェアプログラムを始めとする各種プログラム及び印刷処理に必要な各種データなどが記憶されている。RAM114には、CPU112によって実行されるプログラムデータや、CPU112による演算結果及び処理結果である各種データ、並びにASIC111で処理された各種データなどが一時記憶される。
【0046】
コンピューター110は、CPU112がROM113等に記憶されたプログラムを実行することで、各種の制御を行う。例えば、コンピューター110は、ヘッド駆動回路120を介して記録ヘッド83を制御するとともに、モーター駆動回路131,132,133を介してそれぞれ繰出用モーター22、カッターモーター93、各搬送用モーター45,65,75を制御する。
【0047】
なお、コンピューター110は、各ロータリーエンコーダー45A,65A,75Aからの検出信号やセンサー66,76の検出結果に基づいて、記録ヘッド83、繰出用モーター22、各搬送用モーター45,65,75及びカッターモーター93の駆動を制御する。
【0048】
次に、プリンター10の作用について説明する。
印刷処理が実行されると、繰出用モーター22が駆動されてロール軸21が回転される。その後、搬送用モーター45,65,75が駆動されて各搬送用ローラー41,61,71が正回転することにより、印刷用紙Sが搬送経路Tに沿って順搬送される。そして、印刷用紙Sは、その幅方向Wの位置を支持部材84や図示しないガイド部材によりガイドされつつ、搬送経路T上の記録位置PAまで搬送される。記録位置PAにおいては、第1の工程(順搬送後の記録処理工程)として、記録部80により印刷用紙Sに対して印刷処理が施される。
【0049】
なお、プリンター10では、1つの印刷処理に含まれる印刷データを複数に分割し、分割された各印刷データに基づく印刷処理をキャリッジ82の走査毎に行うとともに、各印刷処理の合間に、印刷用紙Sの印刷が施された部分が間欠的に搬送されるようになっている。すなわち、記録部80では、幅方向Wが長手方向となる帯状の画像の形成と紙送りとが交互に繰り返されることで、1つの印刷処理に基づく画像が形成される。
【0050】
次に、第2の工程(分離工程)として、印刷が施された印刷用紙Sは、記録位置PAの下流側となる切断位置PCにおいて、切断部90により切断される。これにより、切断部90よりも上流側に位置する未記録部分SAと切断部90よりも下流側に位置する記録部分SBとが分離される。印刷用紙Sは、搬送機構30による印刷用紙Sの搬送を停止させ、上流側を支持部材84の吸引機構85で保持する一方、下流側を搬送用ローラー61で挟持することにより保持した状態で切断される。なお以降では、未記録部分SAの下流側端部を「先端部ST」とする。
【0051】
また、プリンター10は、切断位置PCよりも上流側の部分に対して印刷を行うため、印刷用紙Sの搬送を停止するタイミングに合わせて、印刷用紙Sが切断される。具体的には、センサー66からの信号を検出したときの駆動ローラー62の回転速度及び検出後の経過時間に基づいて、印刷用紙Sがセンサー66から下流側に搬送された距離を算出し、その算出結果に基づいて駆動ローラー62の駆動を停止したときに印刷用紙Sが切断される。そして、切断されてカットシートとなった記録部分SBは、搬送機構30によって停止されることなく連続的に搬送され、図示しない排紙部に排紙される。
【0052】
なお、プリンター10では、記録部80において、長尺状の印刷用紙Sの表面に対して余白となる間隔をあけつつ複数の画像を印刷するとともに、余白部分で印刷用紙Sの先端側を順次切断していくことで、例えば所定のプリントサイズの写真印刷を行うようになっている。
【0053】
印刷用紙Sの切断が実行された後、印刷用紙Sに対して再び印刷処理を施す際には、その印刷処理に先立ち、第3工程(逆搬送工程)として、各駆動ローラー42,62,72を逆回転させることにより印刷用紙Sの先端部STが逆搬送される。すなわち、記録ヘッド83を通過しても印刷されていない印刷用紙Sの部分を記録ヘッド83と対向する領域内の最も下流側の位置まで戻す作業が実行される。
【0054】
ところで、プリンター10では、印刷用紙Sを切断する際に先端部STの近傍に切断粉としての紙粉が発生することがあり、特にこの紙粉は切断方向Zに偏在する傾向がある。そして、印刷用紙Sを記録位置PAまで逆搬送する際のこの印刷用紙Sに付着した紙粉に起因する印刷への悪影響については上述したとおりである。
【0055】
これに対して、プリンター10では、切断位置PCよりも下流側に配置された搬送用ローラー61の下流側に位置するように切断位置PCにて切断された未記録部分SAの先端部STを順搬送した後に、未記録部分SAを搬送用ローラー61で挟持した状態で、記録位置PAまで逆搬送する。
【0056】
図4〜図8を参照して、第1の工程後にプリンター10により実行される一連の工程について説明する。なお、ここでは、第1搬送機構40から第3搬送機構60までの間に配置される構成の動作について説明し、その他の構成の動作については省略する。
【0057】
図5に示すように、第1の工程後に印刷用紙Sは順搬送される。
すなわち、制御装置100は、搬送用ローラー41の駆動ローラー42を搬送用モーター45を通じて正回転させる。これにより、搬送用ローラー41は、印刷用紙Sを挟持した状態で印刷用紙Sに対して搬送力を付与して印刷用紙Sを順搬送する。そして、印刷用紙Sの下流側の先端部は、切断部90の配設位置を下流側に向けて通過した後に、第3搬送機構60の配設位置に進入する。なおこのとき、カム機構67により従動ローラー63が印刷用紙Sに対して上方に離間して配置されると、搬送用ローラー61が印刷用紙Sに対して挟持力を作用させない状態となる。
【0058】
図6に示すように、第1の工程後に実行される第2の工程として、センサー66からの信号に基づいて、印刷用紙Sは、切断部90により切断位置PCにて切断される。
すなわち、制御装置100は、センサー66が印刷用紙Sを検出した時点から印刷用紙Sが搬送される距離を算出し、その算出結果に基づいて、例えば図4における位置P1まで印刷用紙Sの先端部が順搬送されたときに、駆動ローラー42,62の回転駆動を搬送用モーター45,65の駆動を停止させることにより停止させる。なおこのとき、従動ローラー63が印刷用紙Sに対して近接して配置されることにより、搬送用ローラー61が印刷用紙Sに対して挟持力を付与する状態となる。
【0059】
そして、制御装置100は、印刷用紙Sが搬送用ローラー41,61に挟持された状態のもと、カッターモーター93を駆動させることにより回転刃91が回転駆動されて、印刷用紙Sが未記録部分SAと記録部分SBとに分離される。
【0060】
このとき、未記録部分SAの下流側の先端部ST及び記録部分SBの上流側の先端部の近傍、すなわち図6の一点鎖線にて囲まれる部分Aに紙粉が発生し、その中でも特に切断方向Zの端部(図4の一点鎖線にて囲まれる部分A)に紙粉が偏在する状態となる。
【0061】
図7に示すように、第2の工程後に実行される排紙工程として、切断された記録部分SBが下流側の排紙部に向けて搬送される。
すなわち、制御装置100は、搬送用ローラー61の駆動ローラー62を搬送用モーター65の駆動を通じて正回転させる。これにより、搬送用ローラー61は、記録部分SBを挟持した状態で同部分SBに対して搬送力を付与することにより印刷用紙Sを順搬送して排紙部に排出する。なおこのとき、制御装置100は、搬送用モーター45の駆動を停止させることにより、駆動ローラー42の回転を停止させる。
【0062】
図8に示すように、排紙工程後に実行される第3の工程中の前工程として、未記録部分SAの先端部STが搬送用ローラー61よりも下流側まで順搬送される。
すなわち、制御装置100は、搬送用ローラー41の駆動ローラー42を搬送用モーター45の駆動を通じて正回転させる。これにより、搬送用ローラー41は、未記録部分SAを切断位置PCの下流側まで順搬送する。なおこのとき、従動ローラー63が印刷用紙Sに対して上方に離間して配置されることにより、搬送用ローラー61が印刷用紙Sに対して挟持力を作用させない状態となる。
【0063】
図9に示すように、第3の工程中の前工程後に実行される第3の工程中の中工程として、紙粉が付着した未記録部分SAの先端部STよりも上流側の部分が搬送用ローラー61により挟持される。
【0064】
すなわち、制御装置100は、センサー66が未記録部分SAの先端部STを検出したことに基づいて、図4における位置P2まで先端部STが搬送された旨判断したときに、搬送用モーター45,65の駆動を停止させることにより駆動ローラー42,62の回転を停止させる。なおこのとき、従動ローラー63が印刷用紙Sに対して近接して配置されることにより、同ローラー63が弾性変形した状態で搬送用ローラー61が印刷用紙Sに対して挟持力を付与する状態となる。
【0065】
図10に示すように、第3の工程中の中工程後に実行される第3の工程中の後工程として、搬送用ローラー61における下流側端部(以下、「除去位置PR」)にて紙粉が除去された後、未記録部分SAが記録位置PAに向けて逆搬送される。
【0066】
すなわち、制御装置100は、搬送用ローラー61の回転を停止した状態のままで搬送用ローラー41の駆動ローラー42を搬送用モーター45を通じて逆回転させる。これにより、搬送用ローラー41は、印刷用紙Sを挟持した状態で印刷用紙Sに対して搬送力を付与して印刷用紙Sを逆搬送する。このとき、搬送用ローラー61により未記録部分SAの先端部STに付着した紙粉が除去位置PRにて同先端部STから払拭される。
【0067】
そして、未記録部分SAの先端部STは、切断部90及び第2搬送機構50の配設位置を下流側に向けて通過した後に、記録位置PAにおける最下流側(図4の位置P3)に進入する。
【0068】
そして、第3の工程の後工程後に実行される第4の工程(逆搬送後の記録処理工程)として、記録位置PAにおいて、記録部80により未記録部分SAに印刷処理が施される。
以上のように、未記録部分SAは、その先端部STに紙粉が付着した状態にて、先端部STよりも上流側の部分が搬送用ローラー61により挟持された状態で、記録位置PAにおける下流側の位置(図4の位置P3)まで逆搬送される。このとき、先端部STに付着した紙粉は、搬送用ローラー61を通過することなく、除去位置PRにおいて搬送用ローラー61により印刷用紙Sから払拭されるようにして除去される。すなわち、紙粉は、従動ローラー63が弾性変形して印刷用紙Sに密着する部分にて除去される。このように、搬送用ローラー61が除去手段として機能する。
【0069】
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)未記録部分SAに印刷処理を施すのに先立ち、同未記録部分SAの先端部STが切断位置PCの下流側に位置するように印刷用紙Sを順搬送し、搬送用ローラー61により未記録部分SAを挟持した状態で印刷用紙Sを逆搬送して紙粉を除去している。このため、紙粉が付着した未記録部分SAが記録位置PAに逆搬送されることを抑制することができる。
【0070】
(2)印刷用紙Sの未記録部分SAに付着した紙粉を除去するに際し、搬送用ローラー61により未記録部分SAを挟持した状態で印刷用紙Sを逆搬送している。このため、駆動ローラー62及び従動ローラー63により未記録部分SAに付着した紙粉を除去位置PRにて同未記録部分SAから払拭する態様にて好適に除去することができる。
【0071】
(3)未記録部分SAに印刷処理を施すべく記録位置PAに向けて印刷用紙Sを逆搬送するのに併せて除去位置PRにて紙粉の除去を行うようにしている。このため、一旦、印刷処理が終了した後に紙粉を除去して印刷処理を再開するまでの時間を短縮することができるようにもなる。
【0072】
(4)従動ローラー63を弾性変形させた状態で印刷用紙Sの未記録部分SAを挟持させるようにしている。このため、弾性変形した従動ローラー63が元の形状に戻ろうとする際に生じる弾性力により搬送用ローラー61と未記録部分SAとの接触圧を高めることができ、搬送用ローラー61における紙粉の除去能力を向上させることができる。
【0073】
(5)従動ローラー63を未記録部分SAから近接及び離間させる態様にて変位させるカム機構67を備える構成を採用している。このため、搬送用ローラー61の間に未記録部分SAを通過させる際には、従動ローラー63が未記録部分SAから離間するようにこれを変位させて搬送用ローラー61の間に未記録部分SAを円滑に通過させることができる。その一方、未記録部分SAに付着した紙粉を除去する際には、従動ローラー63が未記録部分SAに近接するようにこれを変位させて接触圧を高めた状態で同未記録部分SAを搬送用ローラー61により挟持することができるようになる。
【0074】
(6)従動ローラー63を多孔質材料にて形成している。このため、除去した紙粉をその細孔の内部に捕捉しておくことができ、搬送用ローラー61により除去された紙粉が未記録部分SAに再付着することを抑制することができる。
【0075】
(7)印刷用紙Sにおける切断方向Zの一端部及び他端部のうち紙粉が偏在する切断方向Zの先端側となる端部(本実施形態では他端部)を搬送用ローラー61により挟持した状態で、印刷用紙Sを逆搬送している。このため、より効率的に紙粉の除去を行うことができる。
【0076】
(8)印刷用紙Sを搬送するために設けられている搬送用ローラー61に紙粉を除去する機能を持たせるようにしている。このため、紙粉を除去するための部材を別途設ける必要がなく、プリンター10の構成についてその簡略化を図ることができる。
【0077】
(9)搬送用ローラー61により未記録部分SAを挟持しつつ印刷用紙Sを逆搬送して紙粉を除去する際に駆動ローラー62の回転を停止させるようにしている。このため、回転が停止された駆動ローラー62と未記録部分SAとの間には滑り摩擦力が発生するようになる。そしてこの滑り摩擦力は、搬送用ローラー61の回転を停止しない場合に同搬送用ローラー61と未記録部分SAとの間に発生する転がり摩擦力と比較して極めて大きい。従って、上記構成を採用することにより、搬送用ローラー61と未記録部分SAとの間により大きな摩擦力が発生した状態で紙粉を除去することができるようになり、その除去能力の更なる向上を図ることができる。
【0078】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・切断位置PCよりも下流側に印刷用紙Sの幅方向Wに沿って延びるガイド軸を設け、このガイド軸に印刷用紙Sが接触するブラシを設けるようにして紙粉を除去するようにしてもよい。
【0079】
・切断位置PCよりも下流側に紙粉を吹き飛ばすことのできる機構を設けるようにしてもよい。また、回転することなく、印刷用紙Sを挟持する挟持部材を設けるようにしてもよい。
【0080】
・従動ローラー63は、粘着性を有する材料により形成してもよい。この構成によれば、除去した紙粉をその粘着力により捕捉しておくことができるため、搬送用ローラー61により除去された紙粉が未記録部分SAに再付着することを抑制することができる。また、多孔質材料且つ粘着性を有する材料により形成することもできる。
【0081】
・第2の工程後に搬送用ローラー61よりも下流側に未記録部分SAを搬送した後、駆動ローラー62を正回転させつつ、未記録部分SAを逆搬送することにより紙粉を除去してもよい。この場合には、搬送用ローラー61の回転方向と印刷用紙Sが引き戻される方向が逆方向となるため、印刷用紙Sの表面に付着した紙粉を払拭して下流側に押し出すことができ、紙粉を除去する効果が高まる。
【0082】
・上記変形例において、駆動ローラー62を正回転させることに代えて、従動ローラー63を駆動させるための駆動モーターを設けることにより、従動ローラーを正回転させるようにしてもよい。また、従動ローラー63の回転を停止させるためのストッパーを設けるようにすることにより、駆動ローラー62を正回転させる一方、従動ローラー63の回転は停止させるようにしてもよい。
【0083】
・駆動ローラー62が弾性変形可能なスポンジ等により形成され、従動ローラー63が金属等の弾性変形不能な材料により形成されるようにしてもよい。また、いずれのローラー62,63も弾性変形可能な材料により形成されるようにしてもよい。
【0084】
・切断方向Zとは反対方向の端部の搬送用ローラー61を省略してもよい。
・第1及び第2及び第3ローラー63B,63C,63Dといった複数のローラーに代えて回動軸63Aの周囲で且つその延伸方向全体において同径のローラーにしてもよい。
【0085】
・切断部90は、切断位置PCにて未記録部分SAと記録部分SBとが分離される部分を同時に切断する構成としてもよい。
・センサー66からの信号に基づいて、切断部90により印刷用紙Sを切断することに代えて、印刷処理終了後に搬送用ローラー41を回転させた時間及び駆動ローラー42の回転数を把握することにより、印刷用紙Sが搬送された距離を算出して切断するようにしてもよい。
【0086】
・記録媒体は、印刷用紙Sに限定されず、布や樹脂フィルム、樹脂シート、金属シートなどでもよい。
・記録方式としてインクジェット方式を採用したが、この限りではなく、電子写真方式や熱転写方式など、任意の方式を採用することができる。また、記録装置はプリンターに限らず、FAX装置、コピー装置、あるいはこれら複数機能を備えた複合機等に具体化してもよい。さらに、インクジェット方式においても、インク以外の他の液体を噴射したり吐出したりする液体噴射装置を採用してもよく、微小量の液滴を吐出させる液体噴射ヘッド等を備える各種の液体噴射装置に流用可能である。なお、液滴とは、上記液体噴射装置から吐出される液体の状態をいい、粒状、涙状、糸状に尾を引くものを含むものとする。また、ここでいう液体とは、液体噴射装置から噴射可能な材料であればよい。例えば、物質が液相であるときの状態のものであれば、粘性の高い又は低い液状体、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)のような流状態であればよい。また物質の一状態としての液体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散又は混合されたものなども含む。また、液体の代表的な例としては上記実施形態で説明したようなインクや液晶等が挙げられる。ここで、インクとは一般的な水性インク及び油性インク並びにジェルインク、ホットメルトインク等の各種液体組成物を包含するものとする。液体噴射装置の具体例としては、例えば液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ、面発光ディスプレイ、カラーフィルタの製造などに用いられる電極材や色材などの材料を分散又は溶解のかたちで含む液体を噴射する液体噴射装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する液体噴射装置、精密ピペットとして用いられ試料となる液体を噴射する液体噴射装置、捺染装置やマイクロディスペンサ等であってもよい。さらに、時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する液体噴射装置、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に噴射する液体噴射装置、基板などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング液を噴射する液体噴射装置を採用してもよい。そして、これらのうちいずれか一種の液体噴射装置に本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0087】
10…記録装置として機能するプリンター、30…搬送手段として機能する搬送機構、61…除去手段及び挟持体として機能する搬送用ローラー、62…駆動ローラー、63…従動ローラー、65…回転規制部として機能する搬送用モーター、80…記録手段として機能する記録部、90…切断手段として機能する切断部、S…長尺状の記録媒体としての印刷用紙、ST…先端部、SA…未記録部分、T…搬送経路、Z…切断方向、W…幅方向、PA…記録位置、PC…切断位置、PR…除去位置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺状の記録媒体を搬送経路に沿って搬送する搬送手段と、
前記搬送手段により上流側から下流側に順搬送される前記記録媒体に対し前記搬送経路上の記録位置で記録処理を施す記録手段と、
前記記録位置より下流側の切断位置で前記記録媒体を切断して前記記録処理が施された部分をその部分よりも上流側の未記録部分から分離する切断手段と、
前記搬送手段により前記未記録部分の下流側端部が前記切断位置の下流側に位置するように前記記録媒体が順搬送された際に前記未記録部分に付着している切断粉を前記切断位置の下流側の除去位置にて除去する除去手段とを備え、
前記記録媒体を前記記録位置に向けて逆搬送し前記除去手段により切断粉が除去された前記未記録部分に対して前記記録手段による記録処理を施す記録装置。
【請求項2】
前記除去手段は、前記切断手段により切断された前記記録媒体の前記未記録部分に記録処理を施すべく前記搬送手段により前記記録媒体が上流側に逆搬送される際に、前記除去位置で前記未記録部分を挟持する一対の挟持体を含む請求項1に記載の記録装置。
【請求項3】
前記一対の挟持体は、その少なくとも一方が弾性変形した状態で前記未記録部分を挟持するものである
請求項2に記載の記録装置。
【請求項4】
前記除去手段は、前記一対の挟持体のうち少なくとも一方を前記未記録部分に対して近接及び離間させる態様にて変位させる駆動部を含む
請求項2または請求項3に記載の記録装置。
【請求項5】
前記切断手段は前記記録媒体の一端部から他端部に向けてこれを順次切断するものであり、
前記一対の挟持体は少なくとも前記記録媒体の他端部を挟持可能な態様で設けられる
請求項2〜4のいずれか一項に記載の記録装置。
【請求項6】
前記一対の挟持体は前記搬送手段の一部を構成する一対の搬送用ローラーである
請求項2〜5のいずれか一項に記載の記録装置。
【請求項7】
前記除去手段は前記一対の搬送用ローラーにより前記未記録部分を挟持した状態で前記記録媒体を逆搬送して切断粉を除去するに際して前記一対の搬送用ローラーのうち少なくとも一方の回転を規制する回転規制部を備える
請求項6に記載の記録装置。
【請求項8】
長尺状の記録媒体を搬送経路に沿って上流側から下流側に順搬送して同搬送経路上の記録位置で前記記録媒体に対し記録処理を施す工程と、
前記記録媒体を順搬送して前記記録位置より下流側の切断位置で前記記録媒体を切断し前記記録処理が施された部分をその部分よりも上流側の未記録部分から分離する工程と、
前記未記録部分の下流側端部が前記切断位置の下流側に位置するように前記記録媒体を順搬送してその未記録部分に付着した切断粉を前記切断位置の下流側の除去位置にて除去した後、同記録媒体を前記記録位置に向けて逆搬送する工程と、
前記記録位置に逆搬送された前記記録媒体における前記未記録部分に対して記録処理を施す工程とを含む
記録装置における記録方法。
【請求項9】
前記記録媒体を逆搬送する工程では、一対の挟持体を用いて前記除去位置で前記記録媒体の前記未記録部分を挟持した状態で同記録媒体を前記記録位置に向けて逆搬送する
請求項8に記載の記録装置における記録方法。
【請求項1】
長尺状の記録媒体を搬送経路に沿って搬送する搬送手段と、
前記搬送手段により上流側から下流側に順搬送される前記記録媒体に対し前記搬送経路上の記録位置で記録処理を施す記録手段と、
前記記録位置より下流側の切断位置で前記記録媒体を切断して前記記録処理が施された部分をその部分よりも上流側の未記録部分から分離する切断手段と、
前記搬送手段により前記未記録部分の下流側端部が前記切断位置の下流側に位置するように前記記録媒体が順搬送された際に前記未記録部分に付着している切断粉を前記切断位置の下流側の除去位置にて除去する除去手段とを備え、
前記記録媒体を前記記録位置に向けて逆搬送し前記除去手段により切断粉が除去された前記未記録部分に対して前記記録手段による記録処理を施す記録装置。
【請求項2】
前記除去手段は、前記切断手段により切断された前記記録媒体の前記未記録部分に記録処理を施すべく前記搬送手段により前記記録媒体が上流側に逆搬送される際に、前記除去位置で前記未記録部分を挟持する一対の挟持体を含む請求項1に記載の記録装置。
【請求項3】
前記一対の挟持体は、その少なくとも一方が弾性変形した状態で前記未記録部分を挟持するものである
請求項2に記載の記録装置。
【請求項4】
前記除去手段は、前記一対の挟持体のうち少なくとも一方を前記未記録部分に対して近接及び離間させる態様にて変位させる駆動部を含む
請求項2または請求項3に記載の記録装置。
【請求項5】
前記切断手段は前記記録媒体の一端部から他端部に向けてこれを順次切断するものであり、
前記一対の挟持体は少なくとも前記記録媒体の他端部を挟持可能な態様で設けられる
請求項2〜4のいずれか一項に記載の記録装置。
【請求項6】
前記一対の挟持体は前記搬送手段の一部を構成する一対の搬送用ローラーである
請求項2〜5のいずれか一項に記載の記録装置。
【請求項7】
前記除去手段は前記一対の搬送用ローラーにより前記未記録部分を挟持した状態で前記記録媒体を逆搬送して切断粉を除去するに際して前記一対の搬送用ローラーのうち少なくとも一方の回転を規制する回転規制部を備える
請求項6に記載の記録装置。
【請求項8】
長尺状の記録媒体を搬送経路に沿って上流側から下流側に順搬送して同搬送経路上の記録位置で前記記録媒体に対し記録処理を施す工程と、
前記記録媒体を順搬送して前記記録位置より下流側の切断位置で前記記録媒体を切断し前記記録処理が施された部分をその部分よりも上流側の未記録部分から分離する工程と、
前記未記録部分の下流側端部が前記切断位置の下流側に位置するように前記記録媒体を順搬送してその未記録部分に付着した切断粉を前記切断位置の下流側の除去位置にて除去した後、同記録媒体を前記記録位置に向けて逆搬送する工程と、
前記記録位置に逆搬送された前記記録媒体における前記未記録部分に対して記録処理を施す工程とを含む
記録装置における記録方法。
【請求項9】
前記記録媒体を逆搬送する工程では、一対の挟持体を用いて前記除去位置で前記記録媒体の前記未記録部分を挟持した状態で同記録媒体を前記記録位置に向けて逆搬送する
請求項8に記載の記録装置における記録方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2012−61632(P2012−61632A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−205746(P2010−205746)
【出願日】平成22年9月14日(2010.9.14)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月14日(2010.9.14)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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