記録装置
【課題】 筐体に設けられた軸受孔にハンドルが回動可能に軸支されている記録装置において、ハンドルの操作性の低下や耳障りな摺動音を生じさせることなく、筐体の外周面にインクミストが付着して筐体が汚れてしまう虞を低減させる。
【解決手段】 遮断装置30は、ハンドル20を立位姿勢となる回動位置へ回動させた状態では、遮断部311、411がハンドル20の回動軸21から離間した状態となる。この状態では、遮断部311、411の内周面が回動軸21の外周面と摺接係合しない。他方、ハンドル20をインクジェットプリンタ50の後方側へ回動させた状態では、遮断部311、411の内周面がハンドル20の回動軸21の外周面に当接して密着した状態となる。遮断部311、411によって、プリンタ本体1の軸受孔9とハンドル20の回動軸21との間の隙間によるプリンタ本体1の内側と外側との連通Eが遮断される。
【解決手段】 遮断装置30は、ハンドル20を立位姿勢となる回動位置へ回動させた状態では、遮断部311、411がハンドル20の回動軸21から離間した状態となる。この状態では、遮断部311、411の内周面が回動軸21の外周面と摺接係合しない。他方、ハンドル20をインクジェットプリンタ50の後方側へ回動させた状態では、遮断部311、411の内周面がハンドル20の回動軸21の外周面に当接して密着した状態となる。遮断部311、411によって、プリンタ本体1の軸受孔9とハンドル20の回動軸21との間の隙間によるプリンタ本体1の内側と外側との連通Eが遮断される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筐体に設けられた軸受孔にハンドルが回動可能に軸支されている記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
持ち運びを容易にするために、回動可能に軸支されたハンドルを備えた記録装置が公知である。このようなハンドルを設けることによって、記録装置の持ち運び、輸送、保管等における取扱性を向上させることができる(例えば、特許文献1を参照)。
【特許文献1】特開2004−82455号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、インクジェットプリンタ等の記録装置においては、被記録材に噴射されるインクの一部がミスト化して記録装置の筐体内部の空間を浮遊する、いわゆるインクミストが発生する。そのため、特許文献1に記載されたような回動可能に軸支されたハンドルを備えた記録装置においては、記録装置の筐体内部で発生したインクミストが、記録装置の筐体に設けられた軸受孔とハンドルの回動軸との間の隙間を通じて筐体外に漏れ出てしまい、筐体の外周面にインクミストが付着して筐体が汚れてしまう虞があった。
【0004】
この場合、例えば、筐体に設けられた軸受孔とハンドルの回動軸との嵌合をきつくして、軸受孔と回動軸との間に隙間がほとんど生じないようにすれば、軸受孔と回動軸との間の隙間を通じてインクミストが筐体外に漏れ出てしまう虞を低減させることができる。しかし、筐体に設けられた軸受孔とハンドルの回動軸との嵌合をきつくすると、ハンドルを回動させる際に、軸受孔と回動軸との間に強い摩擦力が作用することになる。それによって、ハンドルを回動させる際に、大きな回動抵抗が生じて操作性が低下してしまうとともに、耳障りな摺動音が発生しやすくなってしまう。つまり、筐体に設けられた軸受孔とハンドルの回動軸との嵌合をきつくすると、インクミストが筐体外に漏れ出てしまう虞を低減させることはできるものの、ハンドルの操作性の低下や耳障りな摺動音の発生という弊害が生じてしまうことになる。
【0005】
また、ハンドルの操作性は、例えば軸受孔と回動軸との摺接係合部分に潤滑剤を付加することによって向上させることができる。しかし、潤滑剤は、経年変化によって劣化することに加えて、特にハンドルの回動による摩擦によって劣化し、剥がれ落ちてしまう。そのため、従来は、長期間の使用によって潤滑剤が不足した状態になり、ハンドルの回動抵抗が増加して上記弊害が生じてしまう虞があった。他方、例えば、潤滑剤による効果を長期間維持するために、軸受孔と回動軸との摺接係合部分に潤滑剤を過剰に付加してしまうと、ハンドルの回動に伴って潤滑剤がプリンタの筐体外に漏れ出てしまい、筐体の外周面が潤滑剤で汚れてしまう虞があった。
【0006】
本発明は、このような状況に鑑み成されたものであり、その課題は、筐体に設けられた軸受孔にハンドルが回動可能に軸支されている記録装置において、ハンドルの操作性の低下や耳障りな摺動音を生じさせることなく、筐体の外周面にインクミストが付着して筐体が汚れてしまう虞を低減させることにある。
【0007】
また、本発明の課題は、筐体に設けられた軸受孔にハンドルが回動可能に軸支されている記録装置において、軸受孔と回動軸との摺接係合部分に潤滑剤を過不足なく適切に供給することを実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を達成するため、本発明の第1の態様は、筐体に設けられた軸受孔にハンドルが回動可能に軸支されている記録装置において、少なくとも被記録材への記録実行中は、前記軸受孔と前記ハンドルの回動軸との間の隙間による前記筐体の内側と外側との連通を遮断可能な遮断装置を備えている、ことを特徴とした記録装置である。
【0009】
いわゆるインクミストは、記録ヘッドから被記録材の記録面にインクが噴射される際、つまり被記録材への記録実行中に発生する。そして、発生したインクミストは、発生直後は記録装置内部の空間を浮遊するが、やがて記録装置内部のインク吸収材等に吸収されていく。したがって、記録装置の筐体内部の空間をインクミストが浮遊するのは、被記録材への記録実行中であり、被記録材への記録終了後には、記録装置の筐体内部の空間を浮遊するインクミストはほとんど存在しない状態になる。
【0010】
また、一般的に、被記録材への記録実行中は、ハンドルを使用してその記録装置を持ち運ぶことは行われない。つまり、ハンドルを使用してその記録装置を持ち運ぶためにユーザがハンドルの回動操作を行うのは、通常の使用態様であれば、被記録材への記録を実行していない状態、特に記録装置を使用していない状態のときであると考えられる。
【0011】
本発明の第1の態様に記載の記録装置は、遮断装置によって、少なくとも被記録材への記録実行中は、記録装置の筐体に設けられた軸受孔とハンドルの回動軸との間の隙間による筐体の内側と外側との連通を遮断することができる。したがって、被記録材への記録実行中に記録装置の筐体内で生ずるインクミストが、その軸受孔とハンドルの回動軸との間の隙間を通じて筐体外へ漏れ出てしまう虞を低減させることができる。
【0012】
また、本発明の第1の態様に記載の記録装置は、このような遮断装置を設けることによって、筐体に設けられた軸受孔とハンドルの回動軸との嵌合をきつくすることなく、軸受孔と回動軸との間の隙間を通じてインクミストが筐体外に漏れ出てしまう虞を低減させることができる。したがって、ハンドルを回動させる際に大きな回動抵抗が生じてしまうことを防止することができる。それによって、ハンドルの操作性が低下してしまうことを防止することができるとともに、ハンドル操作時に耳障りな摺動音が発生してしまうことも防止することができる。
【0013】
さらに、本発明の第1の態様に記載の記録装置は、被記録材への記録を実行していないときには、遮断装置で軸受孔とハンドルの回動軸との間の隙間による筐体の内側と外側との連通を遮断しない状態、つまり遮断装置をハンドルの回動軸に摺接係合させない状態にすることができる。それによって、被記録材への記録を実行していないときには、遮断装置とハンドルの回動軸とが摺接係合することによるハンドルの回動抵抗の増加が生じないようにすることができる。したがって、被記録材への記録を実行していない状態、つまりユーザがハンドルを使用してその記録装置を持ち運ぶ可能性がある状態において、ハンドルの操作性が低下してしまうことを防止することができるとともに、ハンドル操作時に耳障りな摺動音が発生してしまうことも防止することができる。
【0014】
これにより、本発明の第1の態様に記載の記録装置によれば、筐体に設けられた軸受孔にハンドルが回動可能に軸支されている記録装置において、ハンドルの操作性の低下や耳障りな摺動音を生じさせることなく、筐体の外周面にインクミストが付着して筐体が汚れてしまう虞を低減させることができるという作用効果が得られる。
【0015】
本発明の第2の態様は、前述した第1の態様に記載の記録装置において、前記遮断装置は、前記ハンドルの回動に連動して動作し、前記ハンドルの回動位置が所定の回動位置にある状態で、前記軸受孔と前記ハンドルの回動軸との間の隙間による前記筐体の内側と外側との連通が遮断される、ことを特徴とした記録装置である。
【0016】
ハンドルが回動可能に軸支されている記録装置において、被記録材への記録を実行する際にユーザは、記録装置内部への被記録材の給送、記録実行後の被記録材の排出、さらには記録装置の操作パネルの操作や液晶表示部の視認等が妨げられない回動位置に、ハンドルを回動させた状態にすると考えられる。例えば、被記録材への記録を実行時には、記録装置の後方側へ隠れる位置までハンドルを回動させた状態にするのが一般的と考えられる。
【0017】
そこで、記録装置の構成等に応じて、被記録材の給送や排出、ユーザによる操作等がハンドルで妨げられることのない所定の回動位置へハンドルを回動させた状態で、軸受孔とハンドルの回動軸との間の隙間による筐体の内側と外側との連通が遮断されるようにする。それによって、被記録材への記録実行中は、軸受孔とハンドルの回動軸との間の隙間による筐体の内側と外側との連通を遮断することができる。
【0018】
また、被記録材への記録を実行していないときには、その所定の回動位置からハンドルを回動させる操作によって、遮断装置で軸受孔とハンドルの回動軸との間の隙間による筐体の内側と外側との連通を遮断しない状態、つまり遮断装置をハンドルの回動軸に摺接係合させない状態にすることができる。したがって、被記録材への記録を実行していない状態において、ハンドルの操作性が低下してしまうことを防止することができるとともに、ハンドル操作時に耳障りな摺動音が発生してしまうことも防止することができる。
【0019】
本発明の第3の態様は、前述した第1の態様に記載の記録装置において、被記録材の給送口を開閉可能に軸支された開閉蓋を備え、前記遮断装置は、前記開閉蓋の開閉に連動して動作し、前記開閉蓋が開いた状態で、前記軸受孔と前記ハンドルの回動軸との間の隙間による前記筐体の内側と外側との連通が遮断される、ことを特徴とした記録装置である。
【0020】
被記録材の給送口を開閉可能に軸支された開閉蓋は、被記録材へ記録を実行する際には必ず開いた状態にする必要がある。また、被記録材への記録を実行していない状態、特に記録装置を使用していない状態では、被記録材の給送口に埃や異物等が進入しないように、開閉蓋を閉じた状態にするのが望ましい。
【0021】
そこで、開閉蓋を開いた状態では、軸受孔とハンドルの回動軸との間の隙間による筐体の内側と外側との連通が遮断されるようにする。それによって、被記録材への記録実行中は、給送口を通じて被記録材が給送されることを妨げることなく、軸受孔とハンドルの回動軸との間の隙間による筐体の内側と外側との連通を遮断することができる。また、開閉蓋を閉じた状態では、遮断装置で軸受孔とハンドルの回動軸との間の隙間による筐体の内側と外側との連通を遮断しない状態、つまり遮断装置をハンドルの回動軸に摺接係合させない状態にすることができる。したがって、被記録材への記録を実行していない状態において、ハンドルの操作性が低下してしまうことを防止することができるとともに、ハンドル操作時に耳障りな摺動音が発生してしまうことも防止することができる。
【0022】
本発明の第4の態様は、前述した第1の態様に記載の記録装置において、被記録材の排出口を開閉可能に軸支された排出用トレイを備え、前記遮断装置は、前記排出用トレイの開閉に連動して動作し、前記排出用トレイが開いた状態で、前記軸受孔と前記ハンドルの回動軸との間の隙間による前記筐体の内側と外側との連通が遮断される、ことを特徴とした記録装置である。
【0023】
被記録材の排出口を開閉可能に軸支された排出用トレイは、被記録材へ記録を実行する際には必ず開いた状態にする必要がある。また、被記録材への記録を実行していない状態、特に記録装置を使用していない状態では、被記録材の排出口に埃や異物等が進入しないように、排出用トレイを閉じた状態にするのが望ましい。
【0024】
そこで、排出用トレイを開いた状態では、軸受孔とハンドルの回動軸との間の隙間による筐体の内側と外側との連通が遮断されるようにする。それによって、被記録材への記録実行中は、排出口を通じて記録実行後の被記録材が排出されることを妨げることなく、軸受孔とハンドルの回動軸との間の隙間による筐体の内側と外側との連通を遮断することができる。また、排出用トレイを閉じた状態では、遮断装置で軸受孔とハンドルの回動軸との間の隙間による筐体の内側と外側との連通を遮断しない状態、つまり遮断装置をハンドルの回動軸に摺接係合させない状態にすることができる。したがって、被記録材への記録を実行していない状態において、ハンドルの操作性が低下してしまうことを防止することができるとともに、ハンドル操作時に耳障りな摺動音が発生してしまうことも防止することができる。
【0025】
本発明の第5の態様は、前述した第1の態様に記載の記録装置において、被記録材の記録面にインクを噴射する記録ヘッドと、前記記録ヘッドへインクを供給するインク供給路と、前記インク供給路の開閉弁とを備え、前記遮断装置は、前記開閉弁の開閉に連動して動作し、前記開閉弁が開いた状態で、前記軸受孔と前記ハンドルの回動軸との間の隙間による前記筐体の内側と外側との連通が遮断される、ことを特徴とした記録装置である。
【0026】
記録ヘッドへインクを供給するインク供給路の開閉弁は、被記録材へ記録を実行する際には必ず開いた状態にする必要がある。また、インク供給路の開閉弁は、被記録材への記録を実行していない状態、特に記録装置を使用していない状態では、インク供給路に発生した気泡がインクタンク等に流入してインク詰まり等の原因となることを防止するために、閉じた状態にするのが望ましい。
【0027】
そこで、インク供給路の開閉弁が開いた状態では、軸受孔とハンドルの回動軸との間の隙間による筐体の内側と外側との連通が遮断されるようにする。それによって、被記録材への記録実行中は、軸受孔とハンドルの回動軸との間の隙間による筐体の内側と外側との連通を遮断することができる。また、インク供給路の開閉弁が閉じた状態では、遮断装置で軸受孔とハンドルの回動軸との間の隙間による筐体の内側と外側との連通を遮断しない状態、つまり遮断装置をハンドルの回動軸に摺接係合させない状態にすることができる。したがって、被記録材への記録を実行していない状態において、ハンドルの操作性が低下してしまうことを防止することができるとともに、ハンドル操作時に耳障りな摺動音が発生してしまうことも防止することができる。
【0028】
本発明の第6の態様は、前述した第1の態様に記載の記録装置において、前記遮断装置を駆動する駆動力源と、前記駆動力源を制御する制御装置とを備えている、ことを特徴とした記録装置である。
【0029】
制御装置は、記録装置の各構成要素の動作状態等に基づいて、少なくとも被記録材への記録実行中は、遮断装置で軸受孔とハンドルの回動軸との間の隙間による筐体の内側と外側との連通を遮断する。それによって、被記録材への記録実行中は、軸受孔とハンドルの回動軸との間の隙間による筐体の内側と外側との連通を遮断することができる。また、制御装置は、被記録材への記録を実行していない状態では、遮断装置で軸受孔とハンドルの回動軸との間の隙間による筐体の内側と外側との連通を遮断しない状態、つまり遮断装置をハンドルの回動軸に摺接係合させない状態にする。それによって、被記録材への記録を実行していない状態において、ハンドルの操作性が低下してしまうことを防止することができるとともに、ハンドル操作時に耳障りな摺動音が発生してしまうことも防止することができる。
【0030】
本発明の第7の態様は、前述した第6の態様に記載の記録装置において、前記制御装置は、ユーザによる記録実行操作を検出して前記遮断装置を制御する、ことを特徴とした記録装置である。
このように、ユーザによる記録実行操作を検出して遮断装置を制御することによって、少なくとも被記録材への記録実行中は、遮断装置で軸受孔とハンドルの回動軸との間の隙間による筐体の内側と外側との連通を遮断することができる。
【0031】
本発明の第8の態様は、前述した第1〜第7の態様のいずれかに記載の記録装置において、前記遮断装置は、前記軸受孔と前記ハンドルの回動軸との間の隙間による前記筐体の内側と外側との連通を遮断した状態で、前記ハンドルの回動軸に潤滑剤を供給する、ことを特徴とした記録装置である。
【0032】
このように、軸受孔とハンドルの回動軸との間の隙間による筐体の内側と外側との連通を遮断装置で遮断したときに、ハンドルの回動軸に潤滑剤を供給することによって、被記録材への記録を実行する度に、ハンドルの回動軸に潤滑剤を供給することができる。それによって、ハンドルの回動軸に潤滑剤を定期的に供給することができるので、軸受孔と回動軸との摺接係合部分に潤滑剤を過不足なく適切に供給することが可能になる。したがって、経年変化等により潤滑剤が不足してハンドルの操作性が低下すること及びハンドル操作時に耳障りな摺動音が発生してしまうこと並びに潤滑剤の過剰供給により潤滑剤が筐体外に漏れ出て筐体の外周面が潤滑剤で汚れてしまうことを未然に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。尚、本発明は以下説明する実施例に限定されることなく、特許請求の範囲に記載した発明の範囲内で、種々の変形が可能であり、それらも本発明の範囲内に含まれるものであることは言うまでもない。
【0034】
<インクジェットプリンタの概略構成>
まず、本発明に係る「記録装置」の一例であるインクジェットプリンタ50の概略構成について、図1及び図2を参照しながら説明する。
図1は、インクジェットプリンタ50の斜視図である。図2は、インクジェットプリンタ50の要部側断面図である。
【0035】
「筐体」としてのプリンタ本体1の上面には、給送用開口部2、操作パネル4及び液晶パネル10が設けられている。「給送口」としての給送用開口部2は、後述する自動給送装置70で「被記録材」としての記録紙Pを供給するための開口である。操作パネル4は、ユーザが記録紙Pへの記録実行操作を行うための記録実行ボタン8及び各種操作ボタン類を有する。液晶パネル10は、符号Cで示した揺動方向へ揺動可能に軸部101で軸支されている。また、プリンタ本体1の両側面には、インクジェットプリンタ50を持ち運びする際に使用するハンドル20が軸支されている。
【0036】
プリンタ本体1には、プリンタ本体1の上面を開閉可能に開閉蓋5が配設されている。開閉蓋5は、回動可能にプリンタ本体1に軸部6で軸支されている。インクジェットプリンタ50を使用しないときには、開閉蓋5を閉じた状態とすることによって、給送用開口部2、操作パネル4及び液晶パネル10が開閉蓋5で覆い隠された状態となる。また、インクジェットプリンタ50を使用するときには、符号Bで示した方向へ開閉蓋5を開いた状態とすることによって、図示の如く、給送用開口部2から給送する記録紙Pを載置して積重することができる(図2)。
【0037】
プリンタ本体1の前面には、記録実行後の記録紙Pが排出される排出口7を開閉可能に排出用トレイ3が配設されている。排出用トレイ3は、回動可能にプリンタ本体1に軸支されている。インクジェットプリンタ50を使用しないときには、排出用トレイ3を閉じた状態とすることによって、排出口7が排出用トレイ3で覆い隠された状態となる。また、インクジェットプリンタ50を使用するときには、符号Aで示した方向へ排出用トレイ3を開いた状態とすることによって、排出口7から排出される記録実行後の記録紙Pが排出用トレイ3に積重される。
【0038】
インクジェットプリンタ50は、「記録実行手段」へ向けて記録紙Pを一ずつ自動給送する自動給送装置70を備えている。自動給送装置70は、ホッパ71、エッジガイド72、給送用ローラ73及びリタードローラ74を備えている。
【0039】
ホッパ71は、開いた状態の開閉蓋5に積重された記録紙Pを給送用ローラ73の外周面に押圧する部材である。ホッパ71は、給送用ローラ73の外周面へ向けて揺動可能に支持されており、図示していないホッパばねにより給送用ローラ73へ向けて付勢されている。エッジガイド72は、開いた状態の開閉蓋5に載置された記録紙Pの両側端位置を規制して、記録紙Pの載置位置を規制するための部材である。給送用ローラ73は、図示していない給送用モータの回転駆動力が伝達されて回転する。リタードローラ74は、公知の分離手段である。開いた状態の開閉蓋5に積重された記録紙Pは、ホッパ71により給送用ローラ73の外周面に押圧され、給送用ローラ73の駆動回転により、搬送駆動ローラ51へ向けて給送される。このとき、リタードローラ74の従動回転抵抗によって、最上位の記録紙Pから他の記録紙Pが分離され、記録紙Pの重送が防止される。
【0040】
また、インクジェットプリンタ50は、記録紙Pに記録を実行する手段として、搬送駆動ローラ51、搬送従動ローラ52、プラテン53、排出駆動ローラ54、排出従動ローラ55、キャリッジ61及び記録ヘッド62をプリンタ本体1内に備えている。
【0041】
搬送駆動ローラ51は、プラテン53より搬送方向Yの上流側に配設されており、図示していない搬送用モータの回転駆動力が伝達されて回転する。搬送従動ローラ52は、従動回転可能に軸支された状態で、搬送駆動ローラ51の外周面に付勢されている。自動給送装置70から給送された記録紙Pは、搬送駆動ローラ51と搬送従動ローラ52とで挟持され、搬送駆動ローラ51の駆動回転により搬送方向Yへ所定の搬送量でプラテン53上を搬送される。プラテン53は、記録ヘッド62による記録実行領域において記録紙Pを裏面側から支持する部材である。
【0042】
記録紙Pの記録面にインクを噴射してドットを形成する記録ヘッド62は、キャリッジ61の底部に配設されている。キャリッジ61は、記録ヘッド62のヘッド面とプラテン53上の記録紙Pの記録面とが略平行で一定の間隔となる状態を維持しながら、搬送方向Yと略直交する方向(符号Xで示した方向。以下、「幅方向X」という。)へ往復動可能に支持されている。排出駆動ローラ54は、プラテン53より搬送方向Yの下流側に配設されており、図示していない搬送用モータの回転駆動力が伝達されて回転する。排出従動ローラ55は、いわゆる歯付きギザローラであり、従動回転可能に軸支された状態で、排出駆動ローラ54の外周面に付勢されている。
【0043】
プラテン53上を搬送される記録紙Pは、キャリッジ61が幅方向Xへ往復動しながら記録ヘッド62のヘッド面から記録紙Pの記録面へインクを噴射してドットを形成する動作と、搬送駆動ローラ51の駆動回転により所定の搬送量で記録紙Pを搬送方向Yへ搬送する動作とが交互に繰り返されることによって、記録面に記録が実行される。インク噴射後の記録紙Pは、排出駆動ローラ54と排出従動ローラ55とで挟持され、排出駆動ローラ54の駆動回転により搬送方向Yへ搬送される。記録実行後の記録紙Pは、排出口7から排出され、開いた状態の排出用トレイ3に積重される。これらの一連の記録制御は、図示していない制御装置によって実行される。
【0044】
<第1実施例>
つづいて、本発明に係るインクジェットプリンタ50の第1実施例について、図3〜図8を参照しながら説明する。
【0045】
図3は、ハンドル20の斜視図である。図4は、ハンドル20の回動を図示した側面図である。図5及び図7は、ハンドル20の支持構造を図示した側断面図である。図6及び図8は、ハンドル20の支持構造を図示した正面図であり、プリンタ本体1の内側から観た状態を図示したものである。
【0046】
ハンドル20の両端の内側には、それぞれ回動軸21が設けられている。回動軸21には、凸部22、23が突設されている。ハンドル20は、両端の回動軸21がプリンタ本体1の側面に設けられた軸受孔9に嵌合した状態で、プリンタ本体1に回動可能に軸支される。凸部22、23は、軸受孔9の周囲の内壁面に係合してハンドル20がプリンタ本体1から脱落するのを防止する。ユーザは、ハンドル20を立位姿勢となる回動位置へ回動させた状態で(図4(a))、ハンドル20を把持してインクジェットプリンタ50を持ち運ぶことができる。また、記録紙Pへの記録を実行する際には、ハンドル20を符号Dで示した方向へ回動させて、ハンドル20をインクジェットプリンタ50の後方側へ回動させた状態とする(図4(b))。それによって、開閉蓋5を開くことが可能な状態になり、開いた状態の開閉蓋5に記録紙Pを載置することができる(図2)。したがって、自動給送装置70で記録紙Pを自動給送して記録を実行することが可能な状態となる。
【0047】
インクジェットプリンタ50は、プリンタ本体1の軸受孔9とハンドル20の回動軸21との間の隙間によるプリンタ本体1の内側と外側との連通(図5の符号E)を遮断可能な遮断装置30を備えている。当該実施例の遮断装置30は、ハンドル20の回動に連動して動作する。遮断装置30は、第1遮断部材31、第2遮断部材41、第1回転体32、第2回転体42、第1腕部24及び第2腕部25を有している。
【0048】
第1腕部24及び第2腕部25は、ハンドル20の回動軸21に一体に形成されている。したがって、回動軸21で軸受孔8に軸支されているハンドル20が回動することによって、第1腕部24及び第2腕部25も回動軸21を中心として回動する。第1腕部24の先端には、凸部241が形成されている。同様に、第2腕部25の先端には、凸部251が形成されている。
【0049】
第1遮断部材31及び第2遮断部材41は、図示の如くハンドル20の回動軸21を中心として対称配置されている。第1遮断部材31は、遮断部311、スライド部312、案内溝313及び凸部314を有している。同様に、第2遮断部材41は、遮断部411、スライド部412、案内溝413及び凸部414を有している。遮断部311、411は、図示の如く半円弧形状に形成されており、内周面形状がハンドル20の回動軸21の外周面形状と略一致している。スライド部312には、案内溝313が、スライド部412には、案内溝413が、それぞれ形成されている。
【0050】
第1遮断部材31は、プリンタ本体1の内壁面に形成された案内凸部12に案内溝313が係合した状態で、スライド変位可能にプリンタ本体1に支持されている。同様に、第2遮断部材41は、プリンタ本体1の内壁面に形成された案内凸部14に案内溝413が係合した状態で、スライド変位可能にプリンタ本体1に支持されている。
【0051】
第1回転体32は、プリンタ本体1の内壁面に形成された軸部11に軸支されている。第1回転体32は、一端側に長孔321が形成されており、他端側にリンク孔322が形成されている。長孔321には、第1腕部24の凸部241が係合している。リンク孔322には、第1遮断部材31の凸部314が係合している。同様に、第2回転体42は、プリンタ本体1の内壁面に形成された軸部13に軸支されている。第2回転体42は、一端側に長孔421が形成されており、他端側にリンク孔422が形成されている。長孔421には、第2腕部25の凸部251が係合している。リンク孔422には、第2遮断部材41の凸部414が係合している。
【0052】
このような構成の遮断装置30は、ハンドル20を立位姿勢となる回動位置へ回動させた状態(図4(a))、つまり、ユーザがハンドル20を把持してインクジェットプリンタ50を持ち運ぶことが可能な状態では、遮断部311、411がハンドル20の回動軸21から離間した状態となる(図5、図6)。この状態では、遮断部311、411の内周面が回動軸21の外周面と摺接係合しないため、ハンドル20の回動抵抗の増加が生じないようにすることができる。
【0053】
他方、ハンドル20を符号Dで示した方向へ回動させて、ハンドル20をインクジェットプリンタ50の後方側へ回動させた状態(図4(b))、つまり、ユーザが記録紙Pへの記録を実行することが可能な状態では、遮断部311、411の内周面がハンドル20の回動軸21の外周面に当接した状態となる(図7、図8)。より具体的には、ハンドル20を符号Dで示した方向へ回動させると、ハンドル20の回動軸21も符号Dで示した方向へ回動し、回動軸21に一体に形成されている第1腕部24及び第2腕部25が符号Dで示した方向へ回動する。それによって、第1回転体32及び第2回転体42は、符号Fで示した方向へそれぞれ回転する。それによって、第1遮断部材31及び第2遮断部材41は、符号Gで示した方向へそれぞれスライドし、遮断部311、411の内周面がハンドル20の回動軸21の外周面に当接して密着した状態となる。この状態においては、遮断部311、411によって、プリンタ本体1の軸受孔9とハンドル20の回動軸21との間の隙間によるプリンタ本体1の内側と外側との連通Eが遮断される(図7)。
【0054】
以上説明したように、本発明に係るインクジェットプリンタ50は、少なくとも記録紙Pへの記録実行中は、遮断装置30の遮断部311、411によって、内部で発生したインクミストがプリンタ本体1の軸受孔9とハンドル20の回動軸21との間の隙間を通じて外部へ漏れ出てしまう虞を低減させることができる。
【0055】
また、このような遮断装置30を設けることによって、プリンタ本体1に設けられた軸受孔9とハンドル20の回動軸21との嵌合をきつくすることなく、軸受孔9と回動軸21との間の隙間を通じてインクミストがプリンタ本体1の外に漏れ出てしまう虞を低減させることができる。それによって、ハンドル20の操作性が低下してしまうことを防止することができるとともに、ハンドル20の操作時に耳障りな摺動音が発生してしまうことも防止することができる。
【0056】
さらに、このような遮断装置30を設けることによって、ユーザがハンドル20を使用してインクジェットプリンタ50を持ち運ぶ可能性がある状態においては、遮断装置30の遮断部311、411をハンドル20の回動軸21に摺接係合させない状態にすることができる。それによって、ユーザがハンドル20を使用してインクジェットプリンタ50を持ち運ぶ可能性がある状態において、ハンドル20の操作性が低下してしまうことを防止することができるとともに、ハンドル20の操作時に耳障りな摺動音が発生してしまうことも防止することができる。
【0057】
このようにして、本発明に係るインクジェットプリンタ50によれば、ハンドル20の操作性の低下や耳障りな摺動音を生じさせることなく、プリンタ本体1の外周面にインクミストが付着してプリンタ本体1を汚してしまう虞を低減させることができる。
【0058】
また、遮断装置30は、軸受孔9とハンドル20の回動軸21との間の隙間によるプリンタ本体1の内側と外側との連通を遮断した状態で、ハンドル20の回動軸21に潤滑剤を供給する手段を設けるのが好ましい。より具体的には、例えば、遮断部311、411の内周面にグリス等の潤滑剤を含有させた部材を配設すれば良い。遮断部311、411の内周面がハンドル20の回転軸21に当接して密着する度に、そのハンドル20の回転軸21にグリス等を供給することができる。
【0059】
それによって、ハンドル20の回転軸21にグリス等を定期的に供給することができるので、軸受孔9と回動軸21との摺接係合部分に潤滑剤を過不足なく適切に供給することが可能になる。したがって、経年変化等により潤滑剤が不足してハンドル20の操作性が低下すること及びハンドル20の操作時に耳障りな摺動音が発生してしまうこと並びに潤滑剤の過剰供給により潤滑剤がプリンタ本体1の外に漏れ出てプリンタ本体1の外周面が潤滑剤で汚れてしまうことを未然に防止することができる。
【0060】
<第2実施例>
つづいて、本発明に係るインクジェットプリンタ50の第2実施例について、図9〜図11を参照しながら説明する。
【0061】
図9は、第2実施例におけるインクジェットプリンタ50の側面図であり、排出用トレイ3の開閉を図示したものである。図10及び図11は、第2実施例におけるハンドル20の支持構造を図示した正面図であり、プリンタ本体1の内側から観た状態を図示したものである。
第2実施例のインクジェットプリンタ50は、遮断装置30が排出用トレイ3の開閉に連動して動作する。尚、それ以外の構成は、第1実施例と同様であるため、共通する部分の説明は省略する。
【0062】
第2実施例における遮断装置30は、第1遮断部材31、第2遮断部材41、歯車33、ピニオン34及びラック35を有している。第2実施例の第1遮断部材31は、遮断部311及びラック部315を有している。同様に、第2実施例の第2遮断部材41は、遮断部411及びラック部415を有している。遮断部311、411の形状は、第1実施例と同様である。第1遮断部材31及び第2遮断部材41は、第1実施例と同様に、スライド変位可能にプリンタ本体1に支持されている。
【0063】
歯車33は、回転自在にプリンタ本体1に軸支されており、ラック部315、415と噛合している。ピニオン34は、回転自在にプリンタ本体1に軸支されており、ラック35は、スライド変位可能にプリンタ本体1に支持されている。ラック35は、歯車33及びピニオン34と噛合している。また、排出用トレイ3の軸部の近傍には、歯車36が回転自在に軸支されている。排出用トレイ3は、軸部に歯車が形成されており、歯車36と噛合している。歯車36は、無端ベルト37を介してピニオン34に回転伝達可能に連結されている。
【0064】
排出用トレイ3を閉じた状態(図9(a))、つまり、記録紙Pへの記録を実行していない状態では、遮断部311、411がハンドル20の回動軸21から離間した状態となる(図10)。この状態では、遮断部311、411の内周面が回動軸21の外周面と摺接係合しないため、ハンドル20の回動抵抗の増加が生じないようにすることができる。
【0065】
他方、排出用トレイ3を開いた状態(図9(b))、つまり、ユーザが記録紙Pへの記録を実行することが可能な状態では、遮断部311、411の内周面がハンドル20の回動軸21の外周面に当接した状態となる(図11)。
【0066】
より具体的には、排出用トレイ3を符号Aで示した方向へ回動させて開いた状態にすると、排出用トレイ3の軸部に噛合している歯車36が回転し、無端ベルト37を介してピニオン34が符号Hで示した回転方向へ回転する(図9(b))。それによって、ピニオン34に噛合しているラック35が符号Jで示した方向へスライドし、ラック35に噛合している歯車33が符号Kで示した回転方向へ回転する。それによって、第1遮断部材31が符号Mで示した方向へスライドし、第2遮断部材41が符号Lで示した方向へスライドし、遮断部311、411の内周面がハンドル20の回動軸21の外周面に当接して密着した状態となる(図11)。この状態では、第1実施例と同様に、遮断部311、411によって、プリンタ本体1の軸受孔9とハンドル20の回動軸21との間の隙間によるプリンタ本体1の内側と外側との連通Eが遮断される。
【0067】
<第3実施例>
つづいて、本発明に係るインクジェットプリンタ50の第3実施例について、図12を参照しながら説明する。
【0068】
図12は、第3実施例におけるインクジェットプリンタ50の側面図であり、開閉蓋5の開閉を図示したものである。
【0069】
第3実施例のインクジェットプリンタ50は、遮断装置30が開閉蓋5の開閉に連動して動作する。尚、それ以外の構成は、第1実施例と同様であるため、共通する部分の説明は省略する。また、第3実施例における遮断装置30の構成は、第2実施例の遮断装置30と同じであるため、詳細な説明は省略する。
【0070】
第3実施例のインクジェットプリンタ50は、開閉蓋5の軸部に歯車36が配設されており、歯車36は、無端ベルト37を介してピニオン34に回転伝達可能に連結されている。開閉蓋5を閉じた状態(図12(a))、つまり、記録紙Pへの記録を実行していない状態では、遮断部311、411がハンドル20の回動軸21から離間した状態となる(図10)。この状態では、遮断部311、411の内周面が回動軸21の外周面と摺接係合しないため、ハンドル20の回動抵抗の増加が生じないようにすることができる。
【0071】
他方、開閉蓋5を開いた状態(図12(b))、つまり、ユーザが記録紙Pへの記録を実行することが可能な状態では、遮断部311、411の内周面がハンドル20の回動軸21の外周面に当接して密着した状態となる(図11)。この状態では、第1実施例及び第2実施例と同様に、遮断部311、411によって、プリンタ本体1の軸受孔9とハンドル20の回動軸21との間の隙間によるプリンタ本体1の内側と外側との連通Eが遮断される。
【0072】
<第4実施例>
つづいて、本発明に係るインクジェットプリンタ50の第4実施例について、図13及び図14を参照しながら説明する。
【0073】
図13及び図14は、第4実施例におけるハンドル20の支持構造を図示した正面図であり、プリンタ本体1の内側から観た状態を図示したものである。
第4実施例における遮断装置30は、第1遮断部材31、第2遮断部材41、歯車33及び遮断用モータ38を有している。第1遮断部材31、第2遮断部材41及び歯車33は、第2実施例と同様なので説明は省略する。そして、遮断装置30の「駆動力源」としての遮断用モータ38の回転軸には、駆動プーリ381が配設されており、駆動プーリ381は、歯車33と噛合している。また、第4実施例のインクジェットプリンタ50は、「制御装置」としての記録制御部100を備えている。遮断用モータ38は、この記録制御部100によって制御される。
【0074】
記録制御部100は、ROM101、RAM102、ASIC(特定用途向け集積回路)103、CPU(中央処理装置)104及び不揮発性メモリ105を備えている。これらは、記録制御部100のシステムバスに接続されている。ROM101は、CPU104によるインクジェットプリンタ50の制御に必要な記録制御プログラム(ファームウェア)等が格納される。RAM102は、CPU104の作業領域や記録データ等の格納領域として用いられる。ASIC103は、インクジェットプリンタ50のエンコーダ等の各種センサからの信号を入力するとともに、モータドライバ等の各種ドライバに制御信号を出力する。CPU104は、インクジェットプリンタ50の記録制御を実行する為の演算処理やその他必要な演算処理を行う。不揮発性メモリ105は、記録制御プログラムの処理に必要な各種データ等が記憶されている。
【0075】
記録制御部100は、インクジェットプリンタ50の動作状態等に基づいて、少なくとも記録紙Pへの記録実行中は、遮断装置30で軸受孔9とハンドル20の回動軸21との間の隙間によるプリンタ本体1の内側と外側との連通Eを遮断する。例えば、記録制御部100は、ユーザによる記録実行ボタン8の押下を検出して遮断装置30を制御する。
【0076】
より具体的には、記録制御部100は、記録実行ボタン8の押下を検出したことを条件に、遮断用モータ38を符号Nで示した回転方向へ回転させる。それによって、歯車33が符号Kで示した回転方向へ回転する。それによって、第1遮断部材31が符号Mで示した方向へスライドし、第2遮断部材41が符号Lで示した方向へスライドし、遮断部311、411の内周面がハンドル20の回動軸21の外周面に当接して密着した状態となる(図14)。この状態では、第1〜第3実施例と同様に、遮断部311、411によって、プリンタ本体1の軸受孔9とハンドル20の回動軸21との間の隙間によるプリンタ本体1の内側と外側との連通Eが遮断される。
【0077】
また、インクタンク(図示せず)からインクチューブ(図示せず)を介して記録ヘッド62へインクを供給する、いわゆるオフキャリッジのインクジェットプリンタ50においては、例えば、インクチューブの開閉弁(図示せず)の開閉に連動して遮断装置30を動作させることもできる。この場合、記録制御部100は、インクチューブの開閉弁が開制御されたことを条件に、遮断用モータ38を符号Nで示した回転方向へ回転させる。それによって、インクジェットプリンタ50は、遮断部311、411によって、プリンタ本体1の軸受孔9とハンドル20の回動軸21との間の隙間によるプリンタ本体1の内側と外側との連通Eが遮断される。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】インクジェットプリンタの斜視図。
【図2】インクジェットプリンタの要部側断面図。
【図3】ハンドルの斜視図。
【図4】ハンドルの回動を図示した側面図。
【図5】ハンドルの支持構造を図示した側断面図(第1実施例)。
【図6】ハンドルの支持構造を図示した正面図(第1実施例)。
【図7】ハンドルの支持構造を図示した側断面図(第1実施例)。
【図8】ハンドルの支持構造を図示した正面図(第1実施例)。
【図9】排出用トレイの開閉を図示した側面図(第2実施例)。
【図10】ハンドルの支持構造を図示した正面図(第2実施例)。
【図11】ハンドルの支持構造を図示した正面図(第2実施例)。
【図12】開閉蓋の開閉を図示した側面図(第3実施例)。
【図13】ハンドルの支持構造及び記録制御部等を図示した正面図(第4実施例)。
【図14】ハンドルの支持構造及び記録制御部等を図示した正面図(第4実施例)。
【符号の説明】
【0079】
8 記録実行ボタン、20 ハンドル、21 回動軸、24 第1腕部、25 第2腕部、30 遮断装置、31 第1遮断部材、32 第1回転体、33 歯車、34 ピニオン、35 ラック、36 歯車、37 無端ベルト、38 遮断用モータ、41 第2遮断部材、42 第2回転体、50 インクジェットプリンタ、51 搬送駆動ローラ、52 搬送従動ローラ、53 プラテン、54 排出駆動ローラ、55 排出従動ローラ、61 キャリッジ、62 記録ヘッド、70 自動給送装置、100 記録制御部、311、411 遮断部
【技術分野】
【0001】
本発明は、筐体に設けられた軸受孔にハンドルが回動可能に軸支されている記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
持ち運びを容易にするために、回動可能に軸支されたハンドルを備えた記録装置が公知である。このようなハンドルを設けることによって、記録装置の持ち運び、輸送、保管等における取扱性を向上させることができる(例えば、特許文献1を参照)。
【特許文献1】特開2004−82455号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、インクジェットプリンタ等の記録装置においては、被記録材に噴射されるインクの一部がミスト化して記録装置の筐体内部の空間を浮遊する、いわゆるインクミストが発生する。そのため、特許文献1に記載されたような回動可能に軸支されたハンドルを備えた記録装置においては、記録装置の筐体内部で発生したインクミストが、記録装置の筐体に設けられた軸受孔とハンドルの回動軸との間の隙間を通じて筐体外に漏れ出てしまい、筐体の外周面にインクミストが付着して筐体が汚れてしまう虞があった。
【0004】
この場合、例えば、筐体に設けられた軸受孔とハンドルの回動軸との嵌合をきつくして、軸受孔と回動軸との間に隙間がほとんど生じないようにすれば、軸受孔と回動軸との間の隙間を通じてインクミストが筐体外に漏れ出てしまう虞を低減させることができる。しかし、筐体に設けられた軸受孔とハンドルの回動軸との嵌合をきつくすると、ハンドルを回動させる際に、軸受孔と回動軸との間に強い摩擦力が作用することになる。それによって、ハンドルを回動させる際に、大きな回動抵抗が生じて操作性が低下してしまうとともに、耳障りな摺動音が発生しやすくなってしまう。つまり、筐体に設けられた軸受孔とハンドルの回動軸との嵌合をきつくすると、インクミストが筐体外に漏れ出てしまう虞を低減させることはできるものの、ハンドルの操作性の低下や耳障りな摺動音の発生という弊害が生じてしまうことになる。
【0005】
また、ハンドルの操作性は、例えば軸受孔と回動軸との摺接係合部分に潤滑剤を付加することによって向上させることができる。しかし、潤滑剤は、経年変化によって劣化することに加えて、特にハンドルの回動による摩擦によって劣化し、剥がれ落ちてしまう。そのため、従来は、長期間の使用によって潤滑剤が不足した状態になり、ハンドルの回動抵抗が増加して上記弊害が生じてしまう虞があった。他方、例えば、潤滑剤による効果を長期間維持するために、軸受孔と回動軸との摺接係合部分に潤滑剤を過剰に付加してしまうと、ハンドルの回動に伴って潤滑剤がプリンタの筐体外に漏れ出てしまい、筐体の外周面が潤滑剤で汚れてしまう虞があった。
【0006】
本発明は、このような状況に鑑み成されたものであり、その課題は、筐体に設けられた軸受孔にハンドルが回動可能に軸支されている記録装置において、ハンドルの操作性の低下や耳障りな摺動音を生じさせることなく、筐体の外周面にインクミストが付着して筐体が汚れてしまう虞を低減させることにある。
【0007】
また、本発明の課題は、筐体に設けられた軸受孔にハンドルが回動可能に軸支されている記録装置において、軸受孔と回動軸との摺接係合部分に潤滑剤を過不足なく適切に供給することを実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を達成するため、本発明の第1の態様は、筐体に設けられた軸受孔にハンドルが回動可能に軸支されている記録装置において、少なくとも被記録材への記録実行中は、前記軸受孔と前記ハンドルの回動軸との間の隙間による前記筐体の内側と外側との連通を遮断可能な遮断装置を備えている、ことを特徴とした記録装置である。
【0009】
いわゆるインクミストは、記録ヘッドから被記録材の記録面にインクが噴射される際、つまり被記録材への記録実行中に発生する。そして、発生したインクミストは、発生直後は記録装置内部の空間を浮遊するが、やがて記録装置内部のインク吸収材等に吸収されていく。したがって、記録装置の筐体内部の空間をインクミストが浮遊するのは、被記録材への記録実行中であり、被記録材への記録終了後には、記録装置の筐体内部の空間を浮遊するインクミストはほとんど存在しない状態になる。
【0010】
また、一般的に、被記録材への記録実行中は、ハンドルを使用してその記録装置を持ち運ぶことは行われない。つまり、ハンドルを使用してその記録装置を持ち運ぶためにユーザがハンドルの回動操作を行うのは、通常の使用態様であれば、被記録材への記録を実行していない状態、特に記録装置を使用していない状態のときであると考えられる。
【0011】
本発明の第1の態様に記載の記録装置は、遮断装置によって、少なくとも被記録材への記録実行中は、記録装置の筐体に設けられた軸受孔とハンドルの回動軸との間の隙間による筐体の内側と外側との連通を遮断することができる。したがって、被記録材への記録実行中に記録装置の筐体内で生ずるインクミストが、その軸受孔とハンドルの回動軸との間の隙間を通じて筐体外へ漏れ出てしまう虞を低減させることができる。
【0012】
また、本発明の第1の態様に記載の記録装置は、このような遮断装置を設けることによって、筐体に設けられた軸受孔とハンドルの回動軸との嵌合をきつくすることなく、軸受孔と回動軸との間の隙間を通じてインクミストが筐体外に漏れ出てしまう虞を低減させることができる。したがって、ハンドルを回動させる際に大きな回動抵抗が生じてしまうことを防止することができる。それによって、ハンドルの操作性が低下してしまうことを防止することができるとともに、ハンドル操作時に耳障りな摺動音が発生してしまうことも防止することができる。
【0013】
さらに、本発明の第1の態様に記載の記録装置は、被記録材への記録を実行していないときには、遮断装置で軸受孔とハンドルの回動軸との間の隙間による筐体の内側と外側との連通を遮断しない状態、つまり遮断装置をハンドルの回動軸に摺接係合させない状態にすることができる。それによって、被記録材への記録を実行していないときには、遮断装置とハンドルの回動軸とが摺接係合することによるハンドルの回動抵抗の増加が生じないようにすることができる。したがって、被記録材への記録を実行していない状態、つまりユーザがハンドルを使用してその記録装置を持ち運ぶ可能性がある状態において、ハンドルの操作性が低下してしまうことを防止することができるとともに、ハンドル操作時に耳障りな摺動音が発生してしまうことも防止することができる。
【0014】
これにより、本発明の第1の態様に記載の記録装置によれば、筐体に設けられた軸受孔にハンドルが回動可能に軸支されている記録装置において、ハンドルの操作性の低下や耳障りな摺動音を生じさせることなく、筐体の外周面にインクミストが付着して筐体が汚れてしまう虞を低減させることができるという作用効果が得られる。
【0015】
本発明の第2の態様は、前述した第1の態様に記載の記録装置において、前記遮断装置は、前記ハンドルの回動に連動して動作し、前記ハンドルの回動位置が所定の回動位置にある状態で、前記軸受孔と前記ハンドルの回動軸との間の隙間による前記筐体の内側と外側との連通が遮断される、ことを特徴とした記録装置である。
【0016】
ハンドルが回動可能に軸支されている記録装置において、被記録材への記録を実行する際にユーザは、記録装置内部への被記録材の給送、記録実行後の被記録材の排出、さらには記録装置の操作パネルの操作や液晶表示部の視認等が妨げられない回動位置に、ハンドルを回動させた状態にすると考えられる。例えば、被記録材への記録を実行時には、記録装置の後方側へ隠れる位置までハンドルを回動させた状態にするのが一般的と考えられる。
【0017】
そこで、記録装置の構成等に応じて、被記録材の給送や排出、ユーザによる操作等がハンドルで妨げられることのない所定の回動位置へハンドルを回動させた状態で、軸受孔とハンドルの回動軸との間の隙間による筐体の内側と外側との連通が遮断されるようにする。それによって、被記録材への記録実行中は、軸受孔とハンドルの回動軸との間の隙間による筐体の内側と外側との連通を遮断することができる。
【0018】
また、被記録材への記録を実行していないときには、その所定の回動位置からハンドルを回動させる操作によって、遮断装置で軸受孔とハンドルの回動軸との間の隙間による筐体の内側と外側との連通を遮断しない状態、つまり遮断装置をハンドルの回動軸に摺接係合させない状態にすることができる。したがって、被記録材への記録を実行していない状態において、ハンドルの操作性が低下してしまうことを防止することができるとともに、ハンドル操作時に耳障りな摺動音が発生してしまうことも防止することができる。
【0019】
本発明の第3の態様は、前述した第1の態様に記載の記録装置において、被記録材の給送口を開閉可能に軸支された開閉蓋を備え、前記遮断装置は、前記開閉蓋の開閉に連動して動作し、前記開閉蓋が開いた状態で、前記軸受孔と前記ハンドルの回動軸との間の隙間による前記筐体の内側と外側との連通が遮断される、ことを特徴とした記録装置である。
【0020】
被記録材の給送口を開閉可能に軸支された開閉蓋は、被記録材へ記録を実行する際には必ず開いた状態にする必要がある。また、被記録材への記録を実行していない状態、特に記録装置を使用していない状態では、被記録材の給送口に埃や異物等が進入しないように、開閉蓋を閉じた状態にするのが望ましい。
【0021】
そこで、開閉蓋を開いた状態では、軸受孔とハンドルの回動軸との間の隙間による筐体の内側と外側との連通が遮断されるようにする。それによって、被記録材への記録実行中は、給送口を通じて被記録材が給送されることを妨げることなく、軸受孔とハンドルの回動軸との間の隙間による筐体の内側と外側との連通を遮断することができる。また、開閉蓋を閉じた状態では、遮断装置で軸受孔とハンドルの回動軸との間の隙間による筐体の内側と外側との連通を遮断しない状態、つまり遮断装置をハンドルの回動軸に摺接係合させない状態にすることができる。したがって、被記録材への記録を実行していない状態において、ハンドルの操作性が低下してしまうことを防止することができるとともに、ハンドル操作時に耳障りな摺動音が発生してしまうことも防止することができる。
【0022】
本発明の第4の態様は、前述した第1の態様に記載の記録装置において、被記録材の排出口を開閉可能に軸支された排出用トレイを備え、前記遮断装置は、前記排出用トレイの開閉に連動して動作し、前記排出用トレイが開いた状態で、前記軸受孔と前記ハンドルの回動軸との間の隙間による前記筐体の内側と外側との連通が遮断される、ことを特徴とした記録装置である。
【0023】
被記録材の排出口を開閉可能に軸支された排出用トレイは、被記録材へ記録を実行する際には必ず開いた状態にする必要がある。また、被記録材への記録を実行していない状態、特に記録装置を使用していない状態では、被記録材の排出口に埃や異物等が進入しないように、排出用トレイを閉じた状態にするのが望ましい。
【0024】
そこで、排出用トレイを開いた状態では、軸受孔とハンドルの回動軸との間の隙間による筐体の内側と外側との連通が遮断されるようにする。それによって、被記録材への記録実行中は、排出口を通じて記録実行後の被記録材が排出されることを妨げることなく、軸受孔とハンドルの回動軸との間の隙間による筐体の内側と外側との連通を遮断することができる。また、排出用トレイを閉じた状態では、遮断装置で軸受孔とハンドルの回動軸との間の隙間による筐体の内側と外側との連通を遮断しない状態、つまり遮断装置をハンドルの回動軸に摺接係合させない状態にすることができる。したがって、被記録材への記録を実行していない状態において、ハンドルの操作性が低下してしまうことを防止することができるとともに、ハンドル操作時に耳障りな摺動音が発生してしまうことも防止することができる。
【0025】
本発明の第5の態様は、前述した第1の態様に記載の記録装置において、被記録材の記録面にインクを噴射する記録ヘッドと、前記記録ヘッドへインクを供給するインク供給路と、前記インク供給路の開閉弁とを備え、前記遮断装置は、前記開閉弁の開閉に連動して動作し、前記開閉弁が開いた状態で、前記軸受孔と前記ハンドルの回動軸との間の隙間による前記筐体の内側と外側との連通が遮断される、ことを特徴とした記録装置である。
【0026】
記録ヘッドへインクを供給するインク供給路の開閉弁は、被記録材へ記録を実行する際には必ず開いた状態にする必要がある。また、インク供給路の開閉弁は、被記録材への記録を実行していない状態、特に記録装置を使用していない状態では、インク供給路に発生した気泡がインクタンク等に流入してインク詰まり等の原因となることを防止するために、閉じた状態にするのが望ましい。
【0027】
そこで、インク供給路の開閉弁が開いた状態では、軸受孔とハンドルの回動軸との間の隙間による筐体の内側と外側との連通が遮断されるようにする。それによって、被記録材への記録実行中は、軸受孔とハンドルの回動軸との間の隙間による筐体の内側と外側との連通を遮断することができる。また、インク供給路の開閉弁が閉じた状態では、遮断装置で軸受孔とハンドルの回動軸との間の隙間による筐体の内側と外側との連通を遮断しない状態、つまり遮断装置をハンドルの回動軸に摺接係合させない状態にすることができる。したがって、被記録材への記録を実行していない状態において、ハンドルの操作性が低下してしまうことを防止することができるとともに、ハンドル操作時に耳障りな摺動音が発生してしまうことも防止することができる。
【0028】
本発明の第6の態様は、前述した第1の態様に記載の記録装置において、前記遮断装置を駆動する駆動力源と、前記駆動力源を制御する制御装置とを備えている、ことを特徴とした記録装置である。
【0029】
制御装置は、記録装置の各構成要素の動作状態等に基づいて、少なくとも被記録材への記録実行中は、遮断装置で軸受孔とハンドルの回動軸との間の隙間による筐体の内側と外側との連通を遮断する。それによって、被記録材への記録実行中は、軸受孔とハンドルの回動軸との間の隙間による筐体の内側と外側との連通を遮断することができる。また、制御装置は、被記録材への記録を実行していない状態では、遮断装置で軸受孔とハンドルの回動軸との間の隙間による筐体の内側と外側との連通を遮断しない状態、つまり遮断装置をハンドルの回動軸に摺接係合させない状態にする。それによって、被記録材への記録を実行していない状態において、ハンドルの操作性が低下してしまうことを防止することができるとともに、ハンドル操作時に耳障りな摺動音が発生してしまうことも防止することができる。
【0030】
本発明の第7の態様は、前述した第6の態様に記載の記録装置において、前記制御装置は、ユーザによる記録実行操作を検出して前記遮断装置を制御する、ことを特徴とした記録装置である。
このように、ユーザによる記録実行操作を検出して遮断装置を制御することによって、少なくとも被記録材への記録実行中は、遮断装置で軸受孔とハンドルの回動軸との間の隙間による筐体の内側と外側との連通を遮断することができる。
【0031】
本発明の第8の態様は、前述した第1〜第7の態様のいずれかに記載の記録装置において、前記遮断装置は、前記軸受孔と前記ハンドルの回動軸との間の隙間による前記筐体の内側と外側との連通を遮断した状態で、前記ハンドルの回動軸に潤滑剤を供給する、ことを特徴とした記録装置である。
【0032】
このように、軸受孔とハンドルの回動軸との間の隙間による筐体の内側と外側との連通を遮断装置で遮断したときに、ハンドルの回動軸に潤滑剤を供給することによって、被記録材への記録を実行する度に、ハンドルの回動軸に潤滑剤を供給することができる。それによって、ハンドルの回動軸に潤滑剤を定期的に供給することができるので、軸受孔と回動軸との摺接係合部分に潤滑剤を過不足なく適切に供給することが可能になる。したがって、経年変化等により潤滑剤が不足してハンドルの操作性が低下すること及びハンドル操作時に耳障りな摺動音が発生してしまうこと並びに潤滑剤の過剰供給により潤滑剤が筐体外に漏れ出て筐体の外周面が潤滑剤で汚れてしまうことを未然に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。尚、本発明は以下説明する実施例に限定されることなく、特許請求の範囲に記載した発明の範囲内で、種々の変形が可能であり、それらも本発明の範囲内に含まれるものであることは言うまでもない。
【0034】
<インクジェットプリンタの概略構成>
まず、本発明に係る「記録装置」の一例であるインクジェットプリンタ50の概略構成について、図1及び図2を参照しながら説明する。
図1は、インクジェットプリンタ50の斜視図である。図2は、インクジェットプリンタ50の要部側断面図である。
【0035】
「筐体」としてのプリンタ本体1の上面には、給送用開口部2、操作パネル4及び液晶パネル10が設けられている。「給送口」としての給送用開口部2は、後述する自動給送装置70で「被記録材」としての記録紙Pを供給するための開口である。操作パネル4は、ユーザが記録紙Pへの記録実行操作を行うための記録実行ボタン8及び各種操作ボタン類を有する。液晶パネル10は、符号Cで示した揺動方向へ揺動可能に軸部101で軸支されている。また、プリンタ本体1の両側面には、インクジェットプリンタ50を持ち運びする際に使用するハンドル20が軸支されている。
【0036】
プリンタ本体1には、プリンタ本体1の上面を開閉可能に開閉蓋5が配設されている。開閉蓋5は、回動可能にプリンタ本体1に軸部6で軸支されている。インクジェットプリンタ50を使用しないときには、開閉蓋5を閉じた状態とすることによって、給送用開口部2、操作パネル4及び液晶パネル10が開閉蓋5で覆い隠された状態となる。また、インクジェットプリンタ50を使用するときには、符号Bで示した方向へ開閉蓋5を開いた状態とすることによって、図示の如く、給送用開口部2から給送する記録紙Pを載置して積重することができる(図2)。
【0037】
プリンタ本体1の前面には、記録実行後の記録紙Pが排出される排出口7を開閉可能に排出用トレイ3が配設されている。排出用トレイ3は、回動可能にプリンタ本体1に軸支されている。インクジェットプリンタ50を使用しないときには、排出用トレイ3を閉じた状態とすることによって、排出口7が排出用トレイ3で覆い隠された状態となる。また、インクジェットプリンタ50を使用するときには、符号Aで示した方向へ排出用トレイ3を開いた状態とすることによって、排出口7から排出される記録実行後の記録紙Pが排出用トレイ3に積重される。
【0038】
インクジェットプリンタ50は、「記録実行手段」へ向けて記録紙Pを一ずつ自動給送する自動給送装置70を備えている。自動給送装置70は、ホッパ71、エッジガイド72、給送用ローラ73及びリタードローラ74を備えている。
【0039】
ホッパ71は、開いた状態の開閉蓋5に積重された記録紙Pを給送用ローラ73の外周面に押圧する部材である。ホッパ71は、給送用ローラ73の外周面へ向けて揺動可能に支持されており、図示していないホッパばねにより給送用ローラ73へ向けて付勢されている。エッジガイド72は、開いた状態の開閉蓋5に載置された記録紙Pの両側端位置を規制して、記録紙Pの載置位置を規制するための部材である。給送用ローラ73は、図示していない給送用モータの回転駆動力が伝達されて回転する。リタードローラ74は、公知の分離手段である。開いた状態の開閉蓋5に積重された記録紙Pは、ホッパ71により給送用ローラ73の外周面に押圧され、給送用ローラ73の駆動回転により、搬送駆動ローラ51へ向けて給送される。このとき、リタードローラ74の従動回転抵抗によって、最上位の記録紙Pから他の記録紙Pが分離され、記録紙Pの重送が防止される。
【0040】
また、インクジェットプリンタ50は、記録紙Pに記録を実行する手段として、搬送駆動ローラ51、搬送従動ローラ52、プラテン53、排出駆動ローラ54、排出従動ローラ55、キャリッジ61及び記録ヘッド62をプリンタ本体1内に備えている。
【0041】
搬送駆動ローラ51は、プラテン53より搬送方向Yの上流側に配設されており、図示していない搬送用モータの回転駆動力が伝達されて回転する。搬送従動ローラ52は、従動回転可能に軸支された状態で、搬送駆動ローラ51の外周面に付勢されている。自動給送装置70から給送された記録紙Pは、搬送駆動ローラ51と搬送従動ローラ52とで挟持され、搬送駆動ローラ51の駆動回転により搬送方向Yへ所定の搬送量でプラテン53上を搬送される。プラテン53は、記録ヘッド62による記録実行領域において記録紙Pを裏面側から支持する部材である。
【0042】
記録紙Pの記録面にインクを噴射してドットを形成する記録ヘッド62は、キャリッジ61の底部に配設されている。キャリッジ61は、記録ヘッド62のヘッド面とプラテン53上の記録紙Pの記録面とが略平行で一定の間隔となる状態を維持しながら、搬送方向Yと略直交する方向(符号Xで示した方向。以下、「幅方向X」という。)へ往復動可能に支持されている。排出駆動ローラ54は、プラテン53より搬送方向Yの下流側に配設されており、図示していない搬送用モータの回転駆動力が伝達されて回転する。排出従動ローラ55は、いわゆる歯付きギザローラであり、従動回転可能に軸支された状態で、排出駆動ローラ54の外周面に付勢されている。
【0043】
プラテン53上を搬送される記録紙Pは、キャリッジ61が幅方向Xへ往復動しながら記録ヘッド62のヘッド面から記録紙Pの記録面へインクを噴射してドットを形成する動作と、搬送駆動ローラ51の駆動回転により所定の搬送量で記録紙Pを搬送方向Yへ搬送する動作とが交互に繰り返されることによって、記録面に記録が実行される。インク噴射後の記録紙Pは、排出駆動ローラ54と排出従動ローラ55とで挟持され、排出駆動ローラ54の駆動回転により搬送方向Yへ搬送される。記録実行後の記録紙Pは、排出口7から排出され、開いた状態の排出用トレイ3に積重される。これらの一連の記録制御は、図示していない制御装置によって実行される。
【0044】
<第1実施例>
つづいて、本発明に係るインクジェットプリンタ50の第1実施例について、図3〜図8を参照しながら説明する。
【0045】
図3は、ハンドル20の斜視図である。図4は、ハンドル20の回動を図示した側面図である。図5及び図7は、ハンドル20の支持構造を図示した側断面図である。図6及び図8は、ハンドル20の支持構造を図示した正面図であり、プリンタ本体1の内側から観た状態を図示したものである。
【0046】
ハンドル20の両端の内側には、それぞれ回動軸21が設けられている。回動軸21には、凸部22、23が突設されている。ハンドル20は、両端の回動軸21がプリンタ本体1の側面に設けられた軸受孔9に嵌合した状態で、プリンタ本体1に回動可能に軸支される。凸部22、23は、軸受孔9の周囲の内壁面に係合してハンドル20がプリンタ本体1から脱落するのを防止する。ユーザは、ハンドル20を立位姿勢となる回動位置へ回動させた状態で(図4(a))、ハンドル20を把持してインクジェットプリンタ50を持ち運ぶことができる。また、記録紙Pへの記録を実行する際には、ハンドル20を符号Dで示した方向へ回動させて、ハンドル20をインクジェットプリンタ50の後方側へ回動させた状態とする(図4(b))。それによって、開閉蓋5を開くことが可能な状態になり、開いた状態の開閉蓋5に記録紙Pを載置することができる(図2)。したがって、自動給送装置70で記録紙Pを自動給送して記録を実行することが可能な状態となる。
【0047】
インクジェットプリンタ50は、プリンタ本体1の軸受孔9とハンドル20の回動軸21との間の隙間によるプリンタ本体1の内側と外側との連通(図5の符号E)を遮断可能な遮断装置30を備えている。当該実施例の遮断装置30は、ハンドル20の回動に連動して動作する。遮断装置30は、第1遮断部材31、第2遮断部材41、第1回転体32、第2回転体42、第1腕部24及び第2腕部25を有している。
【0048】
第1腕部24及び第2腕部25は、ハンドル20の回動軸21に一体に形成されている。したがって、回動軸21で軸受孔8に軸支されているハンドル20が回動することによって、第1腕部24及び第2腕部25も回動軸21を中心として回動する。第1腕部24の先端には、凸部241が形成されている。同様に、第2腕部25の先端には、凸部251が形成されている。
【0049】
第1遮断部材31及び第2遮断部材41は、図示の如くハンドル20の回動軸21を中心として対称配置されている。第1遮断部材31は、遮断部311、スライド部312、案内溝313及び凸部314を有している。同様に、第2遮断部材41は、遮断部411、スライド部412、案内溝413及び凸部414を有している。遮断部311、411は、図示の如く半円弧形状に形成されており、内周面形状がハンドル20の回動軸21の外周面形状と略一致している。スライド部312には、案内溝313が、スライド部412には、案内溝413が、それぞれ形成されている。
【0050】
第1遮断部材31は、プリンタ本体1の内壁面に形成された案内凸部12に案内溝313が係合した状態で、スライド変位可能にプリンタ本体1に支持されている。同様に、第2遮断部材41は、プリンタ本体1の内壁面に形成された案内凸部14に案内溝413が係合した状態で、スライド変位可能にプリンタ本体1に支持されている。
【0051】
第1回転体32は、プリンタ本体1の内壁面に形成された軸部11に軸支されている。第1回転体32は、一端側に長孔321が形成されており、他端側にリンク孔322が形成されている。長孔321には、第1腕部24の凸部241が係合している。リンク孔322には、第1遮断部材31の凸部314が係合している。同様に、第2回転体42は、プリンタ本体1の内壁面に形成された軸部13に軸支されている。第2回転体42は、一端側に長孔421が形成されており、他端側にリンク孔422が形成されている。長孔421には、第2腕部25の凸部251が係合している。リンク孔422には、第2遮断部材41の凸部414が係合している。
【0052】
このような構成の遮断装置30は、ハンドル20を立位姿勢となる回動位置へ回動させた状態(図4(a))、つまり、ユーザがハンドル20を把持してインクジェットプリンタ50を持ち運ぶことが可能な状態では、遮断部311、411がハンドル20の回動軸21から離間した状態となる(図5、図6)。この状態では、遮断部311、411の内周面が回動軸21の外周面と摺接係合しないため、ハンドル20の回動抵抗の増加が生じないようにすることができる。
【0053】
他方、ハンドル20を符号Dで示した方向へ回動させて、ハンドル20をインクジェットプリンタ50の後方側へ回動させた状態(図4(b))、つまり、ユーザが記録紙Pへの記録を実行することが可能な状態では、遮断部311、411の内周面がハンドル20の回動軸21の外周面に当接した状態となる(図7、図8)。より具体的には、ハンドル20を符号Dで示した方向へ回動させると、ハンドル20の回動軸21も符号Dで示した方向へ回動し、回動軸21に一体に形成されている第1腕部24及び第2腕部25が符号Dで示した方向へ回動する。それによって、第1回転体32及び第2回転体42は、符号Fで示した方向へそれぞれ回転する。それによって、第1遮断部材31及び第2遮断部材41は、符号Gで示した方向へそれぞれスライドし、遮断部311、411の内周面がハンドル20の回動軸21の外周面に当接して密着した状態となる。この状態においては、遮断部311、411によって、プリンタ本体1の軸受孔9とハンドル20の回動軸21との間の隙間によるプリンタ本体1の内側と外側との連通Eが遮断される(図7)。
【0054】
以上説明したように、本発明に係るインクジェットプリンタ50は、少なくとも記録紙Pへの記録実行中は、遮断装置30の遮断部311、411によって、内部で発生したインクミストがプリンタ本体1の軸受孔9とハンドル20の回動軸21との間の隙間を通じて外部へ漏れ出てしまう虞を低減させることができる。
【0055】
また、このような遮断装置30を設けることによって、プリンタ本体1に設けられた軸受孔9とハンドル20の回動軸21との嵌合をきつくすることなく、軸受孔9と回動軸21との間の隙間を通じてインクミストがプリンタ本体1の外に漏れ出てしまう虞を低減させることができる。それによって、ハンドル20の操作性が低下してしまうことを防止することができるとともに、ハンドル20の操作時に耳障りな摺動音が発生してしまうことも防止することができる。
【0056】
さらに、このような遮断装置30を設けることによって、ユーザがハンドル20を使用してインクジェットプリンタ50を持ち運ぶ可能性がある状態においては、遮断装置30の遮断部311、411をハンドル20の回動軸21に摺接係合させない状態にすることができる。それによって、ユーザがハンドル20を使用してインクジェットプリンタ50を持ち運ぶ可能性がある状態において、ハンドル20の操作性が低下してしまうことを防止することができるとともに、ハンドル20の操作時に耳障りな摺動音が発生してしまうことも防止することができる。
【0057】
このようにして、本発明に係るインクジェットプリンタ50によれば、ハンドル20の操作性の低下や耳障りな摺動音を生じさせることなく、プリンタ本体1の外周面にインクミストが付着してプリンタ本体1を汚してしまう虞を低減させることができる。
【0058】
また、遮断装置30は、軸受孔9とハンドル20の回動軸21との間の隙間によるプリンタ本体1の内側と外側との連通を遮断した状態で、ハンドル20の回動軸21に潤滑剤を供給する手段を設けるのが好ましい。より具体的には、例えば、遮断部311、411の内周面にグリス等の潤滑剤を含有させた部材を配設すれば良い。遮断部311、411の内周面がハンドル20の回転軸21に当接して密着する度に、そのハンドル20の回転軸21にグリス等を供給することができる。
【0059】
それによって、ハンドル20の回転軸21にグリス等を定期的に供給することができるので、軸受孔9と回動軸21との摺接係合部分に潤滑剤を過不足なく適切に供給することが可能になる。したがって、経年変化等により潤滑剤が不足してハンドル20の操作性が低下すること及びハンドル20の操作時に耳障りな摺動音が発生してしまうこと並びに潤滑剤の過剰供給により潤滑剤がプリンタ本体1の外に漏れ出てプリンタ本体1の外周面が潤滑剤で汚れてしまうことを未然に防止することができる。
【0060】
<第2実施例>
つづいて、本発明に係るインクジェットプリンタ50の第2実施例について、図9〜図11を参照しながら説明する。
【0061】
図9は、第2実施例におけるインクジェットプリンタ50の側面図であり、排出用トレイ3の開閉を図示したものである。図10及び図11は、第2実施例におけるハンドル20の支持構造を図示した正面図であり、プリンタ本体1の内側から観た状態を図示したものである。
第2実施例のインクジェットプリンタ50は、遮断装置30が排出用トレイ3の開閉に連動して動作する。尚、それ以外の構成は、第1実施例と同様であるため、共通する部分の説明は省略する。
【0062】
第2実施例における遮断装置30は、第1遮断部材31、第2遮断部材41、歯車33、ピニオン34及びラック35を有している。第2実施例の第1遮断部材31は、遮断部311及びラック部315を有している。同様に、第2実施例の第2遮断部材41は、遮断部411及びラック部415を有している。遮断部311、411の形状は、第1実施例と同様である。第1遮断部材31及び第2遮断部材41は、第1実施例と同様に、スライド変位可能にプリンタ本体1に支持されている。
【0063】
歯車33は、回転自在にプリンタ本体1に軸支されており、ラック部315、415と噛合している。ピニオン34は、回転自在にプリンタ本体1に軸支されており、ラック35は、スライド変位可能にプリンタ本体1に支持されている。ラック35は、歯車33及びピニオン34と噛合している。また、排出用トレイ3の軸部の近傍には、歯車36が回転自在に軸支されている。排出用トレイ3は、軸部に歯車が形成されており、歯車36と噛合している。歯車36は、無端ベルト37を介してピニオン34に回転伝達可能に連結されている。
【0064】
排出用トレイ3を閉じた状態(図9(a))、つまり、記録紙Pへの記録を実行していない状態では、遮断部311、411がハンドル20の回動軸21から離間した状態となる(図10)。この状態では、遮断部311、411の内周面が回動軸21の外周面と摺接係合しないため、ハンドル20の回動抵抗の増加が生じないようにすることができる。
【0065】
他方、排出用トレイ3を開いた状態(図9(b))、つまり、ユーザが記録紙Pへの記録を実行することが可能な状態では、遮断部311、411の内周面がハンドル20の回動軸21の外周面に当接した状態となる(図11)。
【0066】
より具体的には、排出用トレイ3を符号Aで示した方向へ回動させて開いた状態にすると、排出用トレイ3の軸部に噛合している歯車36が回転し、無端ベルト37を介してピニオン34が符号Hで示した回転方向へ回転する(図9(b))。それによって、ピニオン34に噛合しているラック35が符号Jで示した方向へスライドし、ラック35に噛合している歯車33が符号Kで示した回転方向へ回転する。それによって、第1遮断部材31が符号Mで示した方向へスライドし、第2遮断部材41が符号Lで示した方向へスライドし、遮断部311、411の内周面がハンドル20の回動軸21の外周面に当接して密着した状態となる(図11)。この状態では、第1実施例と同様に、遮断部311、411によって、プリンタ本体1の軸受孔9とハンドル20の回動軸21との間の隙間によるプリンタ本体1の内側と外側との連通Eが遮断される。
【0067】
<第3実施例>
つづいて、本発明に係るインクジェットプリンタ50の第3実施例について、図12を参照しながら説明する。
【0068】
図12は、第3実施例におけるインクジェットプリンタ50の側面図であり、開閉蓋5の開閉を図示したものである。
【0069】
第3実施例のインクジェットプリンタ50は、遮断装置30が開閉蓋5の開閉に連動して動作する。尚、それ以外の構成は、第1実施例と同様であるため、共通する部分の説明は省略する。また、第3実施例における遮断装置30の構成は、第2実施例の遮断装置30と同じであるため、詳細な説明は省略する。
【0070】
第3実施例のインクジェットプリンタ50は、開閉蓋5の軸部に歯車36が配設されており、歯車36は、無端ベルト37を介してピニオン34に回転伝達可能に連結されている。開閉蓋5を閉じた状態(図12(a))、つまり、記録紙Pへの記録を実行していない状態では、遮断部311、411がハンドル20の回動軸21から離間した状態となる(図10)。この状態では、遮断部311、411の内周面が回動軸21の外周面と摺接係合しないため、ハンドル20の回動抵抗の増加が生じないようにすることができる。
【0071】
他方、開閉蓋5を開いた状態(図12(b))、つまり、ユーザが記録紙Pへの記録を実行することが可能な状態では、遮断部311、411の内周面がハンドル20の回動軸21の外周面に当接して密着した状態となる(図11)。この状態では、第1実施例及び第2実施例と同様に、遮断部311、411によって、プリンタ本体1の軸受孔9とハンドル20の回動軸21との間の隙間によるプリンタ本体1の内側と外側との連通Eが遮断される。
【0072】
<第4実施例>
つづいて、本発明に係るインクジェットプリンタ50の第4実施例について、図13及び図14を参照しながら説明する。
【0073】
図13及び図14は、第4実施例におけるハンドル20の支持構造を図示した正面図であり、プリンタ本体1の内側から観た状態を図示したものである。
第4実施例における遮断装置30は、第1遮断部材31、第2遮断部材41、歯車33及び遮断用モータ38を有している。第1遮断部材31、第2遮断部材41及び歯車33は、第2実施例と同様なので説明は省略する。そして、遮断装置30の「駆動力源」としての遮断用モータ38の回転軸には、駆動プーリ381が配設されており、駆動プーリ381は、歯車33と噛合している。また、第4実施例のインクジェットプリンタ50は、「制御装置」としての記録制御部100を備えている。遮断用モータ38は、この記録制御部100によって制御される。
【0074】
記録制御部100は、ROM101、RAM102、ASIC(特定用途向け集積回路)103、CPU(中央処理装置)104及び不揮発性メモリ105を備えている。これらは、記録制御部100のシステムバスに接続されている。ROM101は、CPU104によるインクジェットプリンタ50の制御に必要な記録制御プログラム(ファームウェア)等が格納される。RAM102は、CPU104の作業領域や記録データ等の格納領域として用いられる。ASIC103は、インクジェットプリンタ50のエンコーダ等の各種センサからの信号を入力するとともに、モータドライバ等の各種ドライバに制御信号を出力する。CPU104は、インクジェットプリンタ50の記録制御を実行する為の演算処理やその他必要な演算処理を行う。不揮発性メモリ105は、記録制御プログラムの処理に必要な各種データ等が記憶されている。
【0075】
記録制御部100は、インクジェットプリンタ50の動作状態等に基づいて、少なくとも記録紙Pへの記録実行中は、遮断装置30で軸受孔9とハンドル20の回動軸21との間の隙間によるプリンタ本体1の内側と外側との連通Eを遮断する。例えば、記録制御部100は、ユーザによる記録実行ボタン8の押下を検出して遮断装置30を制御する。
【0076】
より具体的には、記録制御部100は、記録実行ボタン8の押下を検出したことを条件に、遮断用モータ38を符号Nで示した回転方向へ回転させる。それによって、歯車33が符号Kで示した回転方向へ回転する。それによって、第1遮断部材31が符号Mで示した方向へスライドし、第2遮断部材41が符号Lで示した方向へスライドし、遮断部311、411の内周面がハンドル20の回動軸21の外周面に当接して密着した状態となる(図14)。この状態では、第1〜第3実施例と同様に、遮断部311、411によって、プリンタ本体1の軸受孔9とハンドル20の回動軸21との間の隙間によるプリンタ本体1の内側と外側との連通Eが遮断される。
【0077】
また、インクタンク(図示せず)からインクチューブ(図示せず)を介して記録ヘッド62へインクを供給する、いわゆるオフキャリッジのインクジェットプリンタ50においては、例えば、インクチューブの開閉弁(図示せず)の開閉に連動して遮断装置30を動作させることもできる。この場合、記録制御部100は、インクチューブの開閉弁が開制御されたことを条件に、遮断用モータ38を符号Nで示した回転方向へ回転させる。それによって、インクジェットプリンタ50は、遮断部311、411によって、プリンタ本体1の軸受孔9とハンドル20の回動軸21との間の隙間によるプリンタ本体1の内側と外側との連通Eが遮断される。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】インクジェットプリンタの斜視図。
【図2】インクジェットプリンタの要部側断面図。
【図3】ハンドルの斜視図。
【図4】ハンドルの回動を図示した側面図。
【図5】ハンドルの支持構造を図示した側断面図(第1実施例)。
【図6】ハンドルの支持構造を図示した正面図(第1実施例)。
【図7】ハンドルの支持構造を図示した側断面図(第1実施例)。
【図8】ハンドルの支持構造を図示した正面図(第1実施例)。
【図9】排出用トレイの開閉を図示した側面図(第2実施例)。
【図10】ハンドルの支持構造を図示した正面図(第2実施例)。
【図11】ハンドルの支持構造を図示した正面図(第2実施例)。
【図12】開閉蓋の開閉を図示した側面図(第3実施例)。
【図13】ハンドルの支持構造及び記録制御部等を図示した正面図(第4実施例)。
【図14】ハンドルの支持構造及び記録制御部等を図示した正面図(第4実施例)。
【符号の説明】
【0079】
8 記録実行ボタン、20 ハンドル、21 回動軸、24 第1腕部、25 第2腕部、30 遮断装置、31 第1遮断部材、32 第1回転体、33 歯車、34 ピニオン、35 ラック、36 歯車、37 無端ベルト、38 遮断用モータ、41 第2遮断部材、42 第2回転体、50 インクジェットプリンタ、51 搬送駆動ローラ、52 搬送従動ローラ、53 プラテン、54 排出駆動ローラ、55 排出従動ローラ、61 キャリッジ、62 記録ヘッド、70 自動給送装置、100 記録制御部、311、411 遮断部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体に設けられた軸受孔にハンドルが回動可能に軸支されている記録装置において、
少なくとも被記録材への記録実行中は、前記軸受孔と前記ハンドルの回動軸との間の隙間による前記筐体の内側と外側との連通を遮断可能な遮断装置を備えている、ことを特徴とした記録装置。
【請求項2】
請求項1に記載の記録装置において、前記遮断装置は、前記ハンドルの回動に連動して動作し、前記ハンドルの回動位置が所定の回動位置にある状態で、前記軸受孔と前記ハンドルの回動軸との間の隙間による前記筐体の内側と外側との連通が遮断される、ことを特徴とした記録装置。
【請求項3】
請求項1に記載の記録装置において、被記録材の給送口を開閉可能に軸支された開閉蓋を備え、
前記遮断装置は、前記開閉蓋の開閉に連動して動作し、前記開閉蓋が開いた状態で、前記軸受孔と前記ハンドルの回動軸との間の隙間による前記筐体の内側と外側との連通が遮断される、ことを特徴とした記録装置。
【請求項4】
請求項1に記載の記録装置において、被記録材の排出口を開閉可能に軸支された排出用トレイを備え、
前記遮断装置は、前記排出用トレイの開閉に連動して動作し、前記排出用トレイが開いた状態で、前記軸受孔と前記ハンドルの回動軸との間の隙間による前記筐体の内側と外側との連通が遮断される、ことを特徴とした記録装置。
【請求項5】
請求項1に記載の記録装置において、被記録材の記録面にインクを噴射する記録ヘッドと、前記記録ヘッドへインクを供給するインク供給路と、前記インク供給路の開閉弁とを備え、
前記遮断装置は、前記開閉弁の開閉に連動して動作し、前記開閉弁が開いた状態で、前記軸受孔と前記ハンドルの回動軸との間の隙間による前記筐体の内側と外側との連通が遮断される、ことを特徴とした記録装置。
【請求項6】
請求項1に記載の記録装置において、前記遮断装置を駆動する駆動力源と、前記駆動力源を制御する制御装置とを備えている、ことを特徴とした記録装置。
【請求項7】
請求項6に記載の記録装置において、前記制御装置は、ユーザによる記録実行操作を検出して前記遮断装置を制御する、ことを特徴とした記録装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の記録装置において、前記遮断装置は、前記軸受孔と前記ハンドルの回動軸との間の隙間による前記筐体の内側と外側との連通を遮断した状態で、前記ハンドルの回動軸に潤滑剤を供給する、ことを特徴とした記録装置。
【請求項1】
筐体に設けられた軸受孔にハンドルが回動可能に軸支されている記録装置において、
少なくとも被記録材への記録実行中は、前記軸受孔と前記ハンドルの回動軸との間の隙間による前記筐体の内側と外側との連通を遮断可能な遮断装置を備えている、ことを特徴とした記録装置。
【請求項2】
請求項1に記載の記録装置において、前記遮断装置は、前記ハンドルの回動に連動して動作し、前記ハンドルの回動位置が所定の回動位置にある状態で、前記軸受孔と前記ハンドルの回動軸との間の隙間による前記筐体の内側と外側との連通が遮断される、ことを特徴とした記録装置。
【請求項3】
請求項1に記載の記録装置において、被記録材の給送口を開閉可能に軸支された開閉蓋を備え、
前記遮断装置は、前記開閉蓋の開閉に連動して動作し、前記開閉蓋が開いた状態で、前記軸受孔と前記ハンドルの回動軸との間の隙間による前記筐体の内側と外側との連通が遮断される、ことを特徴とした記録装置。
【請求項4】
請求項1に記載の記録装置において、被記録材の排出口を開閉可能に軸支された排出用トレイを備え、
前記遮断装置は、前記排出用トレイの開閉に連動して動作し、前記排出用トレイが開いた状態で、前記軸受孔と前記ハンドルの回動軸との間の隙間による前記筐体の内側と外側との連通が遮断される、ことを特徴とした記録装置。
【請求項5】
請求項1に記載の記録装置において、被記録材の記録面にインクを噴射する記録ヘッドと、前記記録ヘッドへインクを供給するインク供給路と、前記インク供給路の開閉弁とを備え、
前記遮断装置は、前記開閉弁の開閉に連動して動作し、前記開閉弁が開いた状態で、前記軸受孔と前記ハンドルの回動軸との間の隙間による前記筐体の内側と外側との連通が遮断される、ことを特徴とした記録装置。
【請求項6】
請求項1に記載の記録装置において、前記遮断装置を駆動する駆動力源と、前記駆動力源を制御する制御装置とを備えている、ことを特徴とした記録装置。
【請求項7】
請求項6に記載の記録装置において、前記制御装置は、ユーザによる記録実行操作を検出して前記遮断装置を制御する、ことを特徴とした記録装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の記録装置において、前記遮断装置は、前記軸受孔と前記ハンドルの回動軸との間の隙間による前記筐体の内側と外側との連通を遮断した状態で、前記ハンドルの回動軸に潤滑剤を供給する、ことを特徴とした記録装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2009−233861(P2009−233861A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−78953(P2008−78953)
【出願日】平成20年3月25日(2008.3.25)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年3月25日(2008.3.25)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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