説明

記録装置

【課題】ローラ及び幅ガイド部材のメンテナンス作業の作業性を向上することが可能な記録装置を提供する。
【解決手段】インクジェット式プリンタは、連続紙12の搬送経路の途中位置に設定される支持プレート27に対して着脱自在とされ、支持プレート27に対する装着状態において連続紙12を巻き掛け可能な中継ローラ28と、連続紙12の幅方向となる中継ローラ28の軸方向に沿って移動自在に設けられたスライダ64と、中継ローラ28に対して中継ローラ28の軸方向への移動自在に支持されると共に、中継ローラ28に支持された状態で中継ローラ28が支持プレート27に装着された場合には、スライダ64に対して中継ローラ28の軸方向において係止可能とされると共に、スライダ64との係止状態で連続紙12における搬送方向の両側縁をガイドするガイドリング67とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばインクジェット式プリンタなどの記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、上流側から下流側へ搬送される長尺状のターゲットに記録処理を施す記録装置が知られている。こうした記録装置では、ターゲットが搬送方向の上流側から下流側に向けて複数本のローラに順次に巻き掛けられて搬送されるので、その搬送途中に該ターゲットが幅方向に蛇行してしまうことがある。このため、従来は、特許文献1に記載されるように、ローラによって搬送される印画紙(ターゲット)の幅方向の両側縁を摺動させつつ、該印画紙の幅方向の位置合わせを行うガイド(幅ガイド部材)を備えた写真感光材料処理装置(記録装置)が提案されている。
【0003】
こうした写真感光材料処理装置では、長く使用していると、ローラやガイドに該印画紙からの汚れが付着することがあるため、そうした場合には写真感光材料処理装置からローラ及びガイドを取り外して清掃する必要がある。
【特許文献1】特開平8−95219号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1の写真感光材料処理装置では、ローラとガイドとを別々に取り外す構成であるので、これらの清掃などのメンテナンス作業には多くの手間がかかってしまい、作業性が悪いという問題があった。
【0005】
本発明は、このような従来技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的とするところは、ローラ及び幅ガイド部材のメンテナンス作業の作業性を向上することが可能な記録装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の記録装置は、上流側から下流側に搬送される長尺状のターゲットに対して記録処理を施す記録装置において、前記ターゲットの搬送経路の途中位置に設定される装着部に対して着脱自在とされ、該装着部に対する装着状態において前記ターゲットを巻き掛け可能なローラと、前記装着部付近に前記ターゲットの幅方向となる前記ローラの軸方向に沿って移動自在に設けられた幅調整部材と、前記ローラに対して該ローラの軸方向への移動自在に支持されると共に、前記ローラに支持された状態で該ローラが前記装着部に装着された場合には、前記幅調整部材に対して前記ローラの軸方向において係止可能とされると共に、該幅調整部材との係止状態で前記ターゲットにおける搬送方向の両側縁をガイドする幅ガイド部材とを備えた。
【0007】
この発明によれば、ローラとともに幅ガイド部材を取り外すことができるので、例えばローラや幅ガイド部材にターゲットからの汚れが付着した場合に、これらを円滑に取り外して清掃することができる。すなわち、ローラ及び幅ガイド部材のメンテナンス作業の作業性を向上することが可能となる。
【0008】
本発明の記録装置において、前記ローラは、該ローラの軸方向と直交する方向が前記装着部に対する着脱方向とされ、前記幅ガイド部材は、前記ローラに支持された状態で該ローラが前記装着部に対して着脱されるときに前記幅調整部材に対して係脱される。
【0009】
この発明によれば、ローラの装着部に対する着脱にともなって幅ガイド部材が幅調整部材に対して係脱されるので、ローラ及び幅ガイド部材の取り外し作業及び取り付け作業を迅速に行うことが可能となる。
【0010】
本発明の記録装置において、前記装着部には、前記ローラの軸方向両端から突出した軸部を支持するための内面断面形状が略U字状をなす軸受け部が前記装着部に対する前記ローラの着脱方向の一方側に開口を有するように設けられ、前記ターゲットは、前記軸受け部に前記軸部を支持された前記ローラに対して前記軸部から見て前記軸受け部とは反対側から巻き掛けられる。
【0011】
この発明によれば、軸受け部に軸部を支持されたローラに対して軸部から見て軸受け部とは反対側からターゲットが巻き掛けられるため、軸受け部の開口からローラの軸部が脱落することをローラに巻き掛けられたターゲットの張力によって抑制することが可能となる。
【0012】
本発明の記録装置において、前記幅ガイド部材は、前記ローラの外径に対応した内径を有する円環状の部材であり、該幅ガイド部材の外周縁に対して前記幅調整部材は係脱する。
【0013】
この発明によれば、幅調整部材に対して幅ガイド部材を円滑に係脱することが可能となる。
本発明の記録装置において、前記幅調整部材は、前記幅ガイド部材の外周縁と対応した曲率半径であって180度以下の角度をなす円弧状の内周縁を有し、該内周縁が前記幅ガイド部材の外周縁に係脱可能とされている。
【0014】
この発明によれば、幅調整部材の内周縁を180度の角度をなす円弧状にした場合には、幅調整部材に対して幅ガイド部材を係脱可能にしつつ、幅調整部材によって幅ガイド部材が係止された状態では幅ガイド部材を最大限に安定させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の記録装置をインクジェット式プリンタに具体化した一実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明において、「前後方向」、「左右方向」、「上下方向」をいう場合は、図1に矢印で示した方向を基準として示すものとする。
【0016】
図1に示すように、記録装置としてのインクジェット式プリンタ11は、長尺状のターゲットとしての連続紙12を繰り出す繰り出し部13と、該繰り出し部13から繰り出された連続紙12に順次印刷を行って乾燥する本体部14と、該本体部14で印刷が行われて乾燥された連続紙12を巻き取る巻き取り部15とを備えている。すなわち、本体部14は直方体状の本体ケース16を備えており、連続紙12の搬送方向において上流側となる本体ケース16の左側に繰り出し部13が配設されるとともに下流側となる本体ケース16の右側に巻き取り部15が配設されている。
【0017】
繰り出し部13は本体ケース16の左面下端部から鉛直面に沿って左方に延びる前後一対の支持板17を備えている。両支持板17の上面左端部には支持凹部(図示略)がそれぞれ形成されており、該両支持凹部には中央部にロール状の連続紙12が支持された巻き軸18の両端部がそれぞれ回転可能に支持されている。したがって、両支持板17間にロール状の連続紙12が配置されている。なお、本実施形態の連続紙12には、被印刷面となる表面が光沢を有するとともに貼着用の糊が塗布された裏面が剥離紙で保護された粘着ラベルシートが用いられている。
【0018】
繰り出し部13は本体ケース16の左面中央部から左方に向かって水平に延びる平板状の繰り出し台19を備えており、該繰り出し台19の先端部には巻き軸18から繰り出される連続紙12を巻き掛けて繰り出し台19の上面に導くための中継ローラ20が回転可能に設けられている。
【0019】
本体部14の本体ケース16内における上下方向の中央部よりもやや上寄りの位置には、本体ケース16内を上下に区画する矩形状のフレーム21が設けられており、本体ケース16内におけるフレーム21よりも上側の領域は連続紙12に印刷を行うための印刷室22とされている。一方、本体ケース16内におけるフレーム21よりも下側の領域には、左右方向に並ぶように区画された3つの区画室23,24,25が形成されている。これら3つの区画室は、左から順に第1区画室23、第2区画室24、第3区画室25とされている。
【0020】
本体ケース16の左壁には繰り出し台19の上面から第1区画室23内に連続紙12を搬入するための搬入口(図示略)が設けられており、第1区画室23には該搬入口と近接位置で対向するように引き込み駆動ローラ26が回転駆動可能に設けられている。そして、この引き込み駆動ローラ26を駆動することで、連続紙12が上記搬入口を介して第1区画室23内へ引き込まれるようになっている。
【0021】
第1区画室23内におけるフレーム21の下面には装着部としての前後一対の支持プレート27が所定間隔を置いて垂設されており、該両支持プレート27は引き込み駆動ローラ26よりも右側に位置している。両支持プレート27の下端部間にはローラとしての円柱状の中継ローラ28が回転可能に支持されている。
【0022】
第1区画室23内における引き込み駆動ローラ26と中継ローラ28との間には昇降機構(図示略)の駆動に基づき昇降移動する昇降ローラ29が設けられている。この昇降ローラ29に対しては、引き込み駆動ローラ26側から搬送される連続紙12が下側から巻き掛けられる。
【0023】
ここで、引き込み駆動ローラ26と中継ローラ28との間に位置する連続紙12の長さは、昇降ローラ29が下降するほど長くなるとともに、昇降ローラ29が上昇するほど短くなるようになっている。すなわち、昇降ローラ29が下側に位置するほど引き込み駆動ローラ26と中継ローラ28との間の連続紙12の搬送距離が長くなるとともに、昇降ローラ29が上側に位置するほど引き込み駆動ローラ26と中継ローラ28との間の連続紙12の搬送距離が短くなるようになっている。そして、昇降ローラ29側から搬送される連続紙12は、印刷室22の左端部寄りの位置に向かうように中継ローラ28に巻き掛けられる。
【0024】
図1に示すように、フレーム21を挟んで中継ローラ28と対向する印刷室22内の位置には中継ローラ30が設けられている。そして、中継ローラ28側からフレーム21内を通り抜けて搬送される連続紙12は、中継ローラ30に左下方から巻き掛けられて右方向に向かって水平に搬送されるようになっている。
【0025】
印刷室22内における中継ローラ30よりも右側の領域のフレーム21上には、直方体状のプラテンユニット31が設けられている。印刷室22内におけるプラテンユニット31の右側には、該プラテンユニット31を挟んで中継ローラ30と対向するように転換ローラ32が設けられている。この場合、中継ローラ30の上面、プラテンユニット31の上面、及び転換ローラ32の上面は、互いに面一になっている。
【0026】
中継ローラ30からプラテンユニット31の上面に沿って水平右方向に搬送される連続紙12は、転換ローラ32に左上方から巻き掛けられてその搬送方向が水平右方向から鉛直下方向に転換される。そして、転換ローラ32によって搬送方向が鉛直下方向に転換された連続紙12は、フレーム21内を通り抜けて第3区画室25内に搬送される。
【0027】
印刷室22内におけるプラテンユニット31の前後両側には左右方向に延びるガイドレール40(図1では二点鎖線で示す)が対をなすように設けられており、該ガイドレール40の上面はプラテンユニット31の上面よりも高くなっている。両ガイドレール40の上面には、矩形板状のキャリッジ41が該両ガイドレール40に沿って左右方向へ往復移動可能な状態で支持されている。そして、キャリッジ41は、駆動機構(図示略)の駆動に基づき両ガイドレール40上を左右方向に移動するようになっている。
【0028】
キャリッジ41の下面には矩形板状のスライド板42が該キャリッジ41に対して前後方向にスライド移動可能に設けられており、該スライド板42の下面には記録ヘッド43が支持されている。また、印刷室22内の上端部にはインクを一時貯留するための複数のバルブユニット44が設けられている。各バルブユニット44には互いに色の異なるインクが一時貯留されている。
【0029】
各バルブユニット44は、記録ヘッド43とそれぞれインク供給チューブ(図示略)を介して接続されており、該各インク供給チューブを介して記録ヘッド43に各インクを供給するようになっている。記録ヘッド43の下面には複数のノズル開口(図示略)が設けられており、各バルブユニット44から供給されたインクを該各ノズル開口からプラテンユニット31上に搬送されて停止された状態の連続紙12に向かって噴射することで記録処理としての印刷が行われるようになっている。
【0030】
また、本体ケース16内には、互いに色の異なるインクを収容した複数のインクカートリッジ(図示略)が着脱自在に装着されており、該各インクカートリッジはインク供給チューブ(図示略)を介して各バルブユニット44とインク供給可能な状態でそれぞれ接続されている。
【0031】
さらに、本体ケース16内には、各インクカートリッジ(図示略)内のインクを加圧するための加圧ポンプ(図示略)が設けられており、該加圧ポンプの駆動により各インクカートリッジ内のインクがインク供給チューブ(図示略)を介して各バルブユニット44にそれぞれ加圧供給されるようになっている。なお、印刷室22内のフレーム21上における転換ローラ32の右側には、記録ヘッド43のクリーニング等のメンテナンスを行うためのメンテナンスユニット45が設けられている。
【0032】
図1に示すように、第3区画室25内における左寄りの位置には印刷後の連続紙12を強制的に乾燥させるための直方体状の強制乾燥装置46が設けられている。そして、転換ローラ32に巻き掛けられて鉛直下方に搬送された連続紙12は、強制乾燥装置46内を通って該強制乾燥装置46の下側に回転可能に設けられた反転ローラ47に左上方から巻き掛けられてやや右斜め上方に向かって搬送されるようになっている。
【0033】
反転ローラ47から右斜め上方に向かって搬送された連続紙12は、第3区画室25内における右下部に回転可能に設けられた中継ローラ48に左下方から巻き掛けられ、第3区画室25内を本体ケース16の右壁に沿うように上方に向かって搬送されるようになっている。第3区画室25内における反転ローラ47と中継ローラ48との間の位置には、強制乾燥装置46によって強制乾燥された後の連続紙12に張力を付与するように該連続紙12を下側から押圧するダンサーローラ49が設けられている。
【0034】
また、本体ケース16の右壁における第3区画室25の上端部と対応する位置には連続紙12を巻き取り部15側へ搬出するための搬出口(図示略)が設けられており、第3区画室25には上記搬出口と近接位置で対向するように送り出し駆動ローラ50が回転駆動可能に設けられている。そして、この送り出し駆動ローラ50を駆動することで、連続紙12が上記搬出口を介して巻き取り部15側へ送り出されるようになっている。
【0035】
巻き取り部15は直方体状の巻き取りフレーム51を備えており、該巻き取りフレーム51の高さは送り出し駆動ローラ50の高さとほぼ同じになっている。巻き取りフレーム51の前面における上端部には中継ローラ52が回転可能に設けられている。そして、上記搬出口(図示略)から送り出される連続紙12は、中継ローラ52に左上方から巻き掛けられ、真下に向かって搬送されるようになっている。
【0036】
巻き取りフレーム51の前面における中継ローラ52の下側の位置には中継ローラ53が回転可能に設けられている。そして、中継ローラ52側から搬送される連続紙12は、中継ローラ53に左側から巻き掛けられて右斜め下方に向かって搬送されるようになっている。巻き取りフレーム51の前面における中継ローラ53の右斜め下方には前方に向かって延びる巻き取り駆動軸54が巻き取りフレーム51に対して回転駆動可能に支持されている。巻き取り駆動軸54には、中継ローラ53側から搬送される連続紙12が巻き付けられており、該巻き取り駆動軸54の回転駆動により連続紙12が順次巻き取られるようになっている。
【0037】
次に、支持プレート27による中継ローラ28の支持機構について詳述する。
図2及び図4に示すように、両支持プレート27の右面下端部には軸受け部としての切欠凹部60がそれぞれ設けられている。両切欠凹部60は、その内面断面形状が略U字状をなしており、右側が開口している。両切欠凹部60は、その下面が水平な支持面60aになっているとともに、その上面が右方に向かって上昇するように傾斜した案内面60bになっている。
【0038】
両切欠凹部60には、中継ローラ28の軸方向(前後方向)両端から突出した軸部28aが該両切欠凹部60の開口側から挿入されてそれぞれ回転可能に支持されている。すなわち、中継ローラ28は両支持プレート27に着脱可能に装着されており、中継ローラ28の両支持プレート27に対する着脱方向は中継ローラ28の軸方向と直交する左右方向と一致している。そして、連続紙12は、両切欠凹部60に軸部28aを支持された中継ローラ28に対して軸部28aから見て両切欠凹部60とは反対側である右側から巻き掛けられている。
【0039】
両支持プレート27間における中継ローラ28の上下両側には、上側ガイド軸61及び下側ガイド軸62が対をなすように架設されている。すなわち、上側ガイド軸61及び下側ガイド軸62は、中継ローラ28の軸方向に沿って延びているとともに、該中継ローラ28を挟んで互いに対向している。
【0040】
上側ガイド軸61の前後両端部は両支持プレート27を貫通して該両支持プレート27の外側へ若干突出しており、両支持プレート27には上側ガイド軸61を回転可能に支持
している。下側ガイド軸62の前後両端部は、両支持プレート27にそれぞれ固定されている。両支持プレート27の外側の面上には上下に長い矩形板状の係止板63がそれぞれ配置され、該両係止板63の上端部には上側ガイド軸61の前後両端部がそれぞれ固定されている。
【0041】
したがって、両係止板63は、同期して上側ガイド軸61を中心として該上側ガイド軸61と一体回転可能になっている。両係止板63の左面下部には左側が開口した切欠凹部63aがそれぞれ形成されている。そして、両係止板63は、両切欠凹部63aが中継ローラ28の軸部28aに右側からそれぞれ当接することで、中継ローラ28が支持プレート27の切欠凹部60から脱落しないように該中継ローラ28を係止するようになっている。なお、前側の係止板63の前面における切欠凹部63aの下側には、ユーザが両係止板63を同期して正逆両方向に回動する際に摘むためのつまみ63bが突設されている。
【0042】
図2及び図3に示すように、両支持プレート27間には右側が開口した左右一対の半円弧状をなす幅調整部材としてのスライダ64が間隔を置いて配置されており、両スライダ64の上下両端部は上側ガイド軸61及び下側ガイド軸62にそれぞれ前後方向にスライド移動可能に支持されている。すなわち、両スライダ64の上下両端部にはこれらを左右に貫通する上側貫通孔64a及び下側貫通孔64bがそれぞれ形成されており、両上側貫通孔64a及び両下側貫通孔64bに上側ガイド軸61及び下側ガイド軸62がそれぞれ挿通されている。
【0043】
両支持プレート27間における中継ローラ28の左側近傍には、該中継ローラ28の軸方向に沿って延びる棒ねじ65が正逆両方向に回転可能に架設されている。棒ねじ65の前端部は前側の支持プレート27を貫通して該支持プレート27の前面から若干突出している。棒ねじ65における支持プレート27の前面から突出した部分の先端にはユーザが棒ねじ65を正逆両方向に回転する際に摘むためのダイヤル部材66が設けられている。
【0044】
棒ねじ65は、前後方向の中央部及び両端部にねじ山が形成されておらず、中央部を挟んだ前後両側のねじ山の巻き方向が互いに逆方向になっている。すなわち、棒ねじ65は、前後方向の中央部と後端部との間の部分に順ねじ部65aが形成されており、前後方向の中央部と前端部との間の部分に逆ねじ部65bが形成されている。
【0045】
また、両スライダ64における左端部には円筒状のナット部64cが設けられている。後側のスライダ64のナット部64cは棒ねじ65の順ねじ部65aと螺合しており、前側のスライダ64のナット部64cは棒ねじ65の逆ねじ部65bと螺合している。そして、ユーザがダイヤル部材66を正方向に回転した場合には両スライダ64が互いに近づくように移動し、ユーザがダイヤル部材66を逆方向に回転した場合には両スライダ64が互いに離れるように移動する。この場合、両スライダ64は、棒ねじ65の中央部からの前後方向の距離が常に互いに同じになるように設定されている。なお、図3では、理解を容易にするため、両支持プレート27を省略して描いている。
【0046】
図2に示すように、中継ローラ28は、幅ガイド部材としての前後一対の円環状のガイドリング67を支持している。すなわち、両ガイドリング67は該両ガイドリング67内に中継ローラ28が挿通された状態で支持されている。両ガイドリング67の内径は中継ローラ28の外径と対応しており、該両ガイドリング67は中継ローラ28の外周面に沿って摺動可能になっている。すなわち、両ガイドリング67の内径は中継ローラ28の外径よりも極僅かに大きくなるように設定されており、両ガイドリング67は中継ローラ28の軸方向への摺動及び中継ローラ28の周方向への回動(周回移動)が可能になっている。
【0047】
図2及び図6に示すように、ガイドリング67の外周縁全体には断面視略V字状をなす係止溝68が形成されている。係止溝68は、該係止溝68の開口に向かうほど溝幅が徐々に広くなるように内側面がテーパー状になっているとともに、内底面が平坦になっている。また、図5及び図6に示すように、スライダ64は、ガイドリング67の外周縁と対応した曲率半径であって前後方向から見て180度の角度をなす円弧状の内周縁を有している。
【0048】
スライダ64の内周縁全体には、ガイドリング67の係止溝68と対応する形状をなす係止凸条69が形成されている。したがって、スライダ64の係止凸条69はガイドリング67の係止溝68に対して係脱可能になっている。そして、両ガイドリング67を支持した中継ローラ28を両支持プレート27に装着した場合には、両スライダ64の係止凸条69が両ガイドリング67の係止溝68にそれぞれ挿入され、中継ローラ28の軸方向において両ガイドリング67が両スライダ64によって係止されるようになっている。この場合、両ガイドリング67の内側面は、中継ローラ28に巻き掛けられた連続紙12の搬送方向の両側縁との摺動が可能になっている。すなわち、両ガイドリング67は、その内側面が中継ローラ28に巻き掛けられた連続紙12の搬送方向の両側縁に摺接することで、該連続紙12の両端縁をガイドするようになっている。
【0049】
次に、インクジェット式プリンタ11の作用について説明する。
連続紙12の印刷を行う場合には、まず、連続紙12をインクジェット式プリンタ11の搬送経路に沿って引き渡す。そして、中継ローラ28に巻き掛けられた連続紙12の搬送方向の両側縁と両ガイドリング67の内側面との間に隙間がある場合には、ダイヤル部材66を正方向に回転して両スライダ64を互いに近づくように移動させる。すると、中継ローラ28の軸方向において両ガイドリング67が両スライダ64によって係止されているため、この両スライダ64の移動に伴って両ガイドリング67も互いに近づくように移動される。
【0050】
そして、連続紙12の搬送方向の両側縁に両ガイドリング67の内側面がそれぞれ当接した時点でダイヤル部材66の回転を止めると、連続紙12の間欠搬送時における幅方向(前後方向)の位置決めがなされる。これにより、プラテンユニット31上に搬送されて停止された状態の連続紙12の前後方向(連続紙12の幅方向)の位置ずれが抑制される。このため、記録ヘッド43から噴射されたインクがプラテンユニット31上の連続紙12に対して精度よく着弾するため、連続紙12の印刷品質が向上する。
【0051】
プラテンユニット31上の連続紙12の印刷が完了すると、連続紙12を所定距離だけ下流側へ搬送し、プラテンユニット31上に未印刷部分の連続紙12を搬送して停止させ、該連続紙12に印刷を行う。このように、連続紙12は間欠搬送されながら順次印刷されていく。そして、連続紙12の搬送時には両ガイドリング67の内側面上を連続紙12の搬送方向の両側縁が摺動するため、連続紙12の印刷を繰り返し行っていると、両ガイドリング67の内側面や中継ローラ28に連続紙12からの糊が付着して両ガイドリング67及び中継ローラ28が汚れてしまうことがある。
【0052】
このような場合には、両ガイドリング67及び中継ローラ28を清掃(メンテナンス)する必要がある。
そこで、次に両ガイドリング67及び中継ローラ28の清掃時の作用について説明する。
【0053】
両ガイドリング67及び中継ローラ28の清掃を行う場合にはこれらを両支持プレート27から取り外す必要があるため、まず、ダイヤル部材66を逆方向に回転して両スライダ64を互いに離れるように移動させる。すると、中継ローラ28の軸方向において両ガイドリング67が両スライダ64によって係止されているため、この両スライダ64の移動に伴って両ガイドリング67も互いに離れるように移動される。
【0054】
そして、連続紙12の搬送方向の両側縁から両ガイドリング67の内側面がそれぞれ適度に離間した時点でダイヤル部材66の回転を止め、中継ローラ28に巻き掛けられている連続紙12を該中継ローラ28から離間させる。引き続き、前側の係止板63のつまみ63bを摘んで、上側ガイド軸61を中心として該係止板63を図4における半時計方向に回動させる。すると、前側の係止板63の回動に同期して後側の係止板63も図4における半時計方向に回動された状態(図4の2点鎖線で示す状態)となり、両係止板63による中継ローラ28の軸部28aの係止状態が解除される。
【0055】
引き続き、中継ローラ28を水平右方向へ引き出すと、これにともなって両支持プレート27の切欠凹部60から軸部28aが引き出される。このとき、図4の2点鎖線で示すように中継ローラ28とともに両ガイドリング67も引き出される。すなわち、両支持プレート27から中継ローラ28を取り外すことで、同時に両ガイドリング67も両スライダ64から脱離される。その後、取り外した中継ローラ28及び両ガイドリング67の清掃を行う。このように、中継ローラ28及び両ガイドリング67は、取り外した状態で清掃されるので、清掃作業を容易に行うことができる。
【0056】
中継ローラ28及び両ガイドリング67の清掃後、再び、これらを両支持プレート27及び両スライダ64に装着する場合には、両ガイドリング67に中継ローラ28を挿通するとともに該両ガイドリング67を両スライダ64と対応する位置に位置させた状態で、両支持プレート27の切欠凹部60の開口から中継ローラ28の軸部28aを水平左方向に向かって挿入する。すると、中継ローラ28が両支持プレート27間に配置されるとともに、該中継ローラ28の軸部28aが両支持プレート27の切欠凹部60の左面(底面)に当接する。
【0057】
これと同時に、両スライダ64の係止凸条69が両ガイドリング67の係止溝68にそれぞれ挿入され、中継ローラ28の軸方向において両ガイドリング67が両スライダ64によって係止される。引き続き、前側の係止板63のつまみ63bを摘んで、上側ガイド軸61を中心として該係止板63を図4における2点鎖線で示す位置から図4における時計方向に回動させると、前側の係止板63の回動に同期して後側の係止板63も図4における2点鎖線で示す位置から図4における時計方向に回動される。
【0058】
これにより、両係止板63の切欠凹部63aが中継ローラ28の軸部28aに右側から当接した状態(図4の実線で示す状態)となり、両係止板63によって中継ローラ28の軸部28aが係止される。そして、再び中継ローラ28に右側から連続紙12を巻き掛けた後、ダイヤル部材66を正方向に回転して両スライダ64とともに両ガイドリング67を互いに近づくように移動させて、連続紙12の搬送方向の両側縁に両ガイドリング67の内側面をそれぞれ当接させる。その後、再び、連続紙12の印刷が行われる。
【0059】
このように、中継ローラ28及び両ガイドリング67は、インクジェット式プリンタ11に対して同時に着脱することができるので、これらの着脱作業及び清掃作業を含んだメンテナンス作業を迅速且つ容易に行うことができる。
【0060】
以上、詳述した実施形態によれば以下の効果を得ることができる。
(1)中継ローラ28の両支持プレート27に対する着脱にともなって両ガイドリング67が両スライダ64に対して係脱されるので、これらの着脱作業及び清掃作業を含んだメンテナンス作業を迅速且つ容易に行うことができる。すなわち、中継ローラ28及び両ガイドリング67のメンテナンス作業の作業性を向上することができる。
【0061】
(2)両支持プレート27に装着された中継ローラ28に対して連続紙12が右側から巻き掛けられているため、中継ローラ28には連続紙12の張力が右側から左側に向かって作用する。このため、両係止板63によって中継ローラ28の軸部28aが係止されていなくても、中継ローラ28の軸部28aが両支持プレート27の切欠凹部60の右側開口から脱落することを効果的に抑制することができる。
【0062】
(3)ガイドリング67は中継ローラ28の外径に対応した内径を有する円環状をなしているとともにスライダ64はガイドリング67の外周縁に対して係脱する構成であるため、スライダ64に対してガイドリング67を円滑に係脱することができる。
【0063】
(4)スライダ64は、ガイドリング67の外周縁と対応した曲率半径であって180度の角度をなす円弧状の内周縁を有し、該内周縁がガイドリング67の外周縁に係脱可能な構成になっている。このため、スライダ64に対してガイドリング67を係脱可能にしつつ、スライダ64によってガイドリング67を最大限に安定して係止させることができる。因みに、スライダ64の内周縁を180度よりも大きい角度の円弧状にすると、スライダ64の開口がガイドリング67の外径よりも小さくなるため、スライダ64によってガイドリング67を係止することができなくなってしまう。
【0064】
(変更例)
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・スライダ64の内周縁は、ガイドリング67を係止することができるのであれば、180度よりも小さい任意の角度の円弧状にしてもよい。
【0065】
・ガイドリング67の外周縁全体に係止凸条69を設けるとともにスライダ64の内周縁全体に係止溝68を設けるようにしてもよい。
・両係止板63のうち少なくとも一方を省略してもよい。
【0066】
・両係止板63は同期することなく別々に回動するように構成してもよい。
・ダイヤル部材66は、電動モータによって正逆両方向に回転されるように構成してもよい。
【0067】
・連続紙12の代わりに、長尺状のプラスチックフィルムなどをターゲットとして用いてもよい。
・上記実施形態では、記録装置としてインクジェット式プリンタ11が採用されているが、インク以外の他の流体を噴射したり吐出したりする流体噴射装置を採用してもよい。また、微小量の液滴を吐出させる液体噴射ヘッド等を備える各種の液体噴射装置に流用可能である。この場合、液滴とは、上記液体噴射装置から吐出される液体の状態を言い、粒状、涙状、糸状に尾を引くものも含むものとする。また、ここでいう液体とは、液体噴射装置が噴射させることができるような材料であればよい。例えば、物質が液相であるときの状態のものであればよく、粘性の高い又は低い液状体、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)のような流状体、また物質の一状態としての液体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散または混合されたものなどを含む。また、液体の代表的な例としては上記実施形態で説明したようなインクや液晶等が挙げられる。ここで、インクとは一般的な水性インクおよび油性インク並びにジェルインク、ホットメルトインク等の各種液体組成物を包含するものとする。液体噴射装置の具体例としては、例えば液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ、面発光ディスプレイ、カラーフィルタの製造などに用いられる電極材や色材などの材料を分散または溶解のかたちで含む液体を噴射する液体噴射装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する液体噴射装置、精密ピペットとして用いられ試料となる液体を噴射する液体噴射装置、捺染装置やマイクロディスペンサ等であってもよい。さらに、時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する液体噴射装置、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に噴射する液体噴射装置、基板などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング液を噴射する液体噴射装置を採用してもよい。そして、これらのうちいずれか一種の液体噴射装置に本発明を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】実施形態のインクジェット式プリンタの概略正面図。
【図2】支持プレートに中継ローラが装着されたときの状態を示す右面斜視図。
【図3】支持プレートに中継ローラが装着されたときの状態を示す左面斜視図。
【図4】支持プレートに中継ローラが装着されたときの状態を示す正面図。
【図5】スライダにガイドリングが係止されたときの状態を示す断面図。
【図6】スライダの係止凸条とガイドリングの係止溝との係合状態を示す要部拡大図。
【符号の説明】
【0069】
11…記録装置としてのインクジェット式プリンタ、12…ターゲットとしての連続紙、27…装着部としての支持プレート、28…ローラとしての中継ローラ、28a…軸部、60…軸受け部としての切欠凹部、64…幅調整部材としてのスライダ、67…幅ガイド部材としてのガイドリング。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上流側から下流側に搬送される長尺状のターゲットに対して記録処理を施す記録装置において、
前記ターゲットの搬送経路の途中位置に設定される装着部に対して着脱自在とされ、該装着部に対する装着状態において前記ターゲットを巻き掛け可能なローラと、
前記装着部付近に前記ターゲットの幅方向となる前記ローラの軸方向に沿って移動自在に設けられた幅調整部材と、
前記ローラに対して該ローラの軸方向への移動自在に支持されると共に、前記ローラに支持された状態で該ローラが前記装着部に装着された場合には、前記幅調整部材に対して前記ローラの軸方向において係止可能とされると共に、該幅調整部材との係止状態で前記ターゲットにおける搬送方向の両側縁をガイドする幅ガイド部材と
を備えたことを特徴とする記録装置。
【請求項2】
前記ローラは、該ローラの軸方向と直交する方向が前記装着部に対する着脱方向とされ、前記幅ガイド部材は、前記ローラに支持された状態で該ローラが前記装着部に対して着脱されるときに前記幅調整部材に対して係脱されることを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項3】
前記装着部には、前記ローラの軸方向両端から突出した軸部を支持するための内面断面形状が略U字状をなす軸受け部が前記装着部に対する前記ローラの着脱方向の一方側に開口を有するように設けられ、
前記ターゲットは、前記軸受け部に前記軸部を支持された前記ローラに対して前記軸部から見て前記軸受け部とは反対側から巻き掛けられることを特徴とする請求項2に記載の記録装置。
【請求項4】
前記幅ガイド部材は、前記ローラの外径に対応した内径を有する円環状の部材であり、該幅ガイド部材の外周縁に対して前記幅調整部材は係脱することを特徴とする請求項1〜請求項3のうちいずれか一項に記載の記録装置。
【請求項5】
前記幅調整部材は、前記幅ガイド部材の外周縁と対応した曲率半径であって180度以下の角度をなす円弧状の内周縁を有し、該内周縁が前記幅ガイド部材の外周縁に係脱可能とされていることを特徴とする請求項4に記載の記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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