説明

記録装置

【課題】単票紙を傾斜姿勢に積載する給送装置を備えた記録装置において、トレイ格納スペースを確保しても装置の大型化を最小限に抑える。
【解決手段】インクジェットプリンター1は、記録用紙を傾斜姿勢で支持する支持部材5を備え、当該支持部材5上の記録用紙を下流側へ送り出す給送装置2と、給送装置2の下流側に設けられた、媒体に記録を行うインクジェット記録ヘッド22と、プレート状の被記録媒体としての光ディスクをセット可能なセット部を備え、給送装置2の下部に格納される格納位置と、セット部を装置外部に露呈させる、装置前方側に進出した進出位置と、の間を変位可能に設けられたトレイ30と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレート状の被記録媒体をセット可能なトレイを内蔵する記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
記録装置の一例としてのインクジェットプリンターには、プレート状を成す光ディスクを被記録媒体とし、そのラベル面に直接インク滴を吐出することによって記録を実行可能に構成されたものがある。この様なインクジェットプリンターにおいては、特許文献1に示されるように、光ディスクはトレイにセットされ、当該トレイにセットされた状態でインクジェットプリンター内の搬送経路を搬送(副走査送り)され、そしてラベル面にインクジェット記録が実行される様になっている。
【0003】
ここで、トレイは特許文献1に開示されるようにインクジェットプリンターの装置本体とは別体に構成されるもののほか、特許文献2、3に示されるようにインクジェットプリンターに内蔵されたものもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−104136号公報
【特許文献2】特開2005−96410号公報
【特許文献3】特開2009−262356号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、インクジェットプリンターには通常、単票紙を積載状態で収容可能であるとともに単票紙を一枚ずつ下流側へと送り出す給送装置が設けられている。給送装置には、特許文献2に示す様に水平に収容された単票紙を一段高い位置に向けて略水平に送り出して記録を行い、排出するものや、特許文献3に示される様に水平に収容された単票紙を湾曲反転させて記録を行い、排出するものがあるほか、単票紙を傾斜姿勢に積載し、緩やかに湾曲させながら送り出すものがある。
【0006】
従来、この様に単票紙を傾斜姿勢に積載する給送装置を備えた記録装置において、トレイ内蔵型のものは考案されておらず、特にトレイ格納スペースを確保しても装置の大型化を最小限に抑えることのできる記録装置の開発が望まれていた。
【0007】
加えて、トレイ内蔵型の記録装置において、トレイに光ディスク等の被記録媒体がセットされたまま格納位置に格納されてしまうと、その後トレイが進出する際に被記録媒体が搬送経路に引っ掛かり、ジャムが発生してしまう虞がある。そして一旦この様なジャムが生じると、その状態を解消することは非常に困難となる。
【0008】
そこで本発明はこの様な状況に鑑みなされたものであり、その目的は、単票紙を傾斜姿勢に積載する給送装置を備えた記録装置において、トレイ格納スペースを確保しても装置の大型化を最小限に抑えることができ、また更には、トレイに被記録媒体がセットされたままトレイが格納位置に戻ってしまったという好ましくない状態が生じても、その状態を容易に解消出来るようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する為に、本発明の第1の態様に係る記録装置は、被記録媒体を傾斜姿勢で支持する支持部材を備え、当該支持部材上の被記録媒体を下流側へ送り出す被記録媒体給送部と、前記被記録媒体給送部の下流側に設けられた、被記録媒体に記録を行う記録手段と、プレート状の被記録媒体をセット可能なセット部を備え、前記被記録媒体給送部の下部に格納される格納位置と、前記セット部を装置外部に露呈させる露呈位置と、の間を変位可能に設けられたトレイと、を備えたことを特徴とする。
【0010】
本態様によれば、プレート状の被記録媒体をセット可能なトレイは、被記録媒体を傾斜姿勢でセットする被記録媒体給送部の下部に格納位置が設定されており、即ち被記録媒体給送部の下側空間を利用することで大きなトレイ格納スペースを確保する必要がなく、装置の大型化を最小限に抑えることができる。
【0011】
本発明の第2の態様は、第1の態様において、前記トレイが前記格納位置にあるときの前記セット部の上方に位置する構成部材が、前記セット部を覆う状態と、前記セット部の少なくとも一部を露呈させる状態と、をとり得る様に開閉可能に設けられ、前記被記録媒体給送部の背面側には、前記支持部材が傾斜姿勢に設けられたことにより、前記構成部材の上側に空きスペースが形成されており、前記構成部材を開放することにより、前記空きスペースを介して前記セット部にセットされたプレート状の被記録媒体を取り出し可能に構成されていることを特徴とする。
【0012】
本態様によれば、トレイが格納位置にあるときでも、トレイに形成されたセット部の少なくとも一部を露呈させることができ、そしてセット部にセットされたプレート状の被記録媒体を取り出し可能である。従ってトレイに被記録媒体がセットされたまま格納位置に格納され、その状態のままトレイが進出する際に生じるジャムを防止することができる。
【0013】
本発明の第3の態様は、第1のまたは第2の態様において、被記録媒体搬送経路において前記記録手段の上流側に、被記録媒体を下流側へ搬送する搬送手段を備え、前記トレイの先端は、前記被記録媒体給送部から送り出された被記録媒体の先端を前記搬送手段へと案内する案内面を構成しており、前記トレイが変位動作することにより、被記録媒体搬送経路における前記搬送手段上流側空間の大きさが調整可能に構成されていることを特徴とする。
【0014】
本態様によれば、トレイの先端は、被記録媒体給送部から送り出された被記録媒体の先端を前記搬送手段へと案内する案内面を構成しており、トレイが変位動作することにより被記録媒体搬送経路における前記搬送手段上流側空間の大きさが調整可能に構成されているので、前記搬送手段上流側空間での被記録媒体の撓み量を調整することができる。従って例えば、被記録媒体を撓ませてスキュー取りを行う際には、前記搬送手段上流側空間を大きめに設定することで適切にスキューを除去することができる。またスキュー取りを行わない場合には、前記搬送手段上流側空間を小さめに設定することで、左右の経路差を無くし、スキュー取りを実行しなくても被記録媒体に生じるスキューを抑えることができ、或いはスキューの発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係るプリンターの媒体搬送経路の側断面図。
【図2】本発明に係るプリンターの媒体搬送経路の側断面図。
【図3】本発明に係るプリンターの装置本体の外観斜視図。
【図4】トレイの平面図(格納位置にある状態)。
【図5】トレイの平面図(格納位置から所定量送り出された状態)。
【図6】トレイの平面図(格納位置から所定量送り出された状態)。
【図7】本発明に係るプリンターの装置本体を後方側から見た外観斜視図。
【図8】本発明に係るプリンターの装置本体を後方側から見た外観斜視図。
【図9】(A)、(B)は図1の搬送駆動ローラー上流側近傍の拡大図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら本発明の一実施形態について説明する。図1及び図2は本発明に係る記録装置の一実施形態であるインクジェットプリンター1における媒体搬送経路の側断面図であり、図1はトレイ30が格納位置にある状態を、図2はトレイ30が露呈位置にある状態を、それぞれ示している。尚、「媒体搬送経路」の「媒体」とは、給送装置2から送り出される記録用紙及び後述するトレイ30の双方を含む概念である。
【0017】
また、図3はインクジェットプリンター1の装置本体の外観斜視図(トレイ30が露呈位置にある状態)、図4乃至図6はトレイ30の平面図であり、図4はトレイ30が格納位置にある状態を、図5及び図6はトレイ30が格納位置から所定量下流側に送り出された状態を、それぞれ示している。
【0018】
また、図7及び図8はインクジェットプリンター1の装置本体を後方側から見た外観斜視図であり、図7は開閉部7cが閉じた状態を、図8は開閉部7cが開いた状態を、それぞれ示している。更に図9(A)、図9(B)は図1の搬送手段15の上流側近傍を拡大して示した図である。尚、以下では単に「下流側」という場合は媒体搬送経路の下流側(図1及び図2において右側)を意味するものとし、同様に「上流側」という場合は媒体搬送経路の上流側(図1及び図2において左側)を意味するものとする。
【0019】
以下、インクジェットプリンター1の媒体搬送経路の構成について説明する。インクジェットプリンター1は、装置後方側に被記録媒体の一例としての記録用紙を傾斜姿勢で支持し、そして一枚ずつ送り出す給送装置2を備えている。
【0020】
給送装置2は、装置の基体を構成するフレーム6と、記録用紙を傾斜姿勢で支持する支持部材5と、記録用紙を送り出す給送ローラー4と、を備えて構成されている。
支持部材5は、上部の揺動支点(不図示)を中心に揺動可能に設けられ、揺動することにより、支持部材5上に傾斜姿勢に支持された記録用紙を給送ローラー4に圧接させる圧接姿勢(不図示)と、給送ローラー4から離間させる離間姿勢(図1及び図2)と、を切り換える様になっている。
【0021】
図示しないモーターにより回転駆動される給送ローラー4は円形状を成し、支持部材5上に積載された記録用紙のうち最上位のものと接した状態で回転することにより、当該最上位の記録用紙を下流側へ送り出す。
【0022】
尚、図1において符号Pは、給送装置2から送り出される記録用紙の軌跡を示している。また、給送ローラー4と対向する位置には図示を省略するリタードローラーが所定の回転負荷が与えられた状態で設けられており、記録用紙がこのリタードローラーと給送ローラー4とでニップされることで、給送されるべき最上位の記録用紙と次位以降の記録用紙との分離が行われる様になっている。
【0023】
そして支持部材5上から送り出された記録用紙の先端は、給送ローラー4と対向する位置に形成されたガイド面6aによってガイドされながら下流側の搬送手段15に向かって進む。尚、後述するトレイ30の先端30aと、搬送従動ローラー17を支持するローラー支持部材10は、搬送手段15の上流側近傍の用紙搬送経路を構成する。また、ローラー支持部材10の上流側端部には自由回転可能なガイドローラー9が設けられ、記録用紙はこのガイドローラー9に接することで搬送負荷が軽減される様になっている。
【0024】
次に、媒体を下流側へ搬送する搬送手段15は、搬送駆動ローラー16と搬送従動ローラー17とを備えて構成されている。搬送駆動ローラー16は、図示しないモーターにより回転駆動され、搬送従動ローラー17は搬送駆動ローラー16(或いは記録用紙)に接して従動回転する様、ローラー支持部材10において自由回転可能に軸支されている。
【0025】
ローラー支持部材10は、インクジェットプリンター1の装置本体の基体を構成するメインフレーム14に、回転軸11を介して回動可能に設けられているとともに、コイルばね12によって搬送従動ローラー17が搬送駆動ローラー16に圧接する方向に付勢されている。
【0026】
このローラー支持部材10は、図示を省略するカム部材と係合しており、搬送従動ローラー17を搬送駆動ローラー16に圧接させる状態(図1)と、前記カム部材の回転によってコイルばね12の付勢力に抗して搬送従動ローラー17を搬送駆動ローラー16から離間させる状態(図2)と、を切り換え可能になっている。そしてローラー支持部材10は、給送装置2から単票紙を給送して記録を行う際には、図1の状態に設定され、後述するトレイ30を利用して記録を行う場合には、図2の状態に設定される。
【0027】
次に、媒体搬送経路において搬送駆動ローラー16及び搬送従動ローラー17の下流側には、インクジェット記録ヘッド22と案内部材19とが対向配置されている。インクジェット記録ヘッド22はキャリッジ20の底部に設けられ、当該キャリッジ20は主走査方向(図1及び図2の紙面表裏方向)に延びるキャリッジガイド軸21にガイドされながら、図示しない駆動モーターによって主走査方向に往復動する様に駆動される。尚、このキャリッジ20は、複数の色毎に独立したインクカートリッジ(図示せず)を搭載し、このインクカートリッジからインクジェット記録ヘッド22へとインクが供給される様になっている。
【0028】
インクジェット記録ヘッド22と対向配置された案内部材19は、媒体を支持することにより、インクジェット記録ヘッド22と媒体との間のギャップを規定する。尚、キャリッジ20は図示を省略する昇降機構によって図1及び図2の上下方向に移動可能に構成されており、これによりインクジェット記録ヘッド22と媒体との間のギャップを調整可能となっている。
【0029】
続いて、インクジェット記録ヘッド22の下流側には、記録用紙の浮き上がりを防止する補助ローラー24が設けられ、更にその下流側には、図示しないモーターによって回転駆動される排出駆動ローラー25と、当該排出駆動ローラー25に接して従動回転する排出従動ローラー26と、が設けられている。
【0030】
補助ローラー24と排出従動ローラー26は、外周に複数の歯を有する歯付きローラによって成されるとともに、主走査方向に長い形状を成すフレーム27に、主走査方向に適宜の間隔で複数配置された排出駆動ローラー25に対応するよう複数設けられる。そして記録の行われた記録用紙は、排出駆動ローラー25と排出従動ローラー26とによってニップされた状態で排出駆動ローラー25が回転駆動されることにより、装置前方側に設けられた図示しないスタッカへ向けて排出される。
【0031】
尚、補助ローラー24と排出従動ローラー26を支持するフレーム27は、図示を省略する駆動機構によって、排出従動ローラー26を排出駆動ローラー25に接触させる状態(図1)と、排出従動ローラー26を排出駆動ローラー25から離間させる状態(図2)と、を切り換え可能に構成されている。そしてフレーム27は、給送装置2から単票紙を給送して記録を行う際には、図1の状態に設定され、後述するトレイ30を利用して記録を行う場合には、図2の状態に設定される。
【0032】
以上がインクジェットプリンター1の概要であり、続いてトレイ30について説明する。トレイ30は、本実施形態では円盤形状を成すとともに樹脂材料によって形成された、剛性の高い光ディスク(図4乃至図6において仮想線Dで示す)をセット可能なセット部30c(図3)を備えている。そしてこのトレイ30に光ディスクDがセットされた状態において当該トレイ30がインクジェット記録ヘッド22の下を搬送されることにより、被記録媒体としての光ディスクDのラベル面に直接インクジェット記録が実行可能となっている。
【0033】
このトレイ30は、通常時、特に給送装置2から単票紙としての記録用紙を送り出し、そして記録を行う際には、給送装置2の下部に格納された状態に置かれている(図1)。
そしてトレイ30を利用した記録を実行する場合には、ユーザーが図示を省略するトレイセットボタンを押下することで、トレイ30が図2及び図3に示す様に装置前方側の露呈位置に進出し、トレイ30において光ディスクをセットするセット部30cが装置外部に露呈する様になっている。
【0034】
この状態でユーザーは光ディスクをトレイ30にセットし、上記トレイセットボタンを再度押下すると、トレイ30は装置内部に引き込まれ、記録待機位置に位置決めされる。その後、記録実行指令が出されると、トレイ30にセットされた光ディスクのラベル面へのインクジェット記録が行われ、トレイ30は再び図2及び図3に示す様に露呈位置まで送られる。ユーザーは記録済みの光ディスクを取り出し、再度上記トレイセットボタンを押下すると、トレイ30は装置内部に引き込まれ、そして格納位置(図1)にまで戻される。
【0035】
以下、上記の様なトレイ30の動作を実現する具体的構成について説明する。図4乃至図6は、トレイ30を裏側(図1及び図2において下側)から見た図であり、同図において下側がトレイ先端側(図1及び図2においては右側)となっている。尚、図3において符号30cで示すセット部は図4乃至図6の紙面裏側に形成されており、従って符号Dで示す光ディスクも実際には紙面裏側にセットされる。また、図4乃至図6は、説明に必要な構成のみを示しており、その他の構成要素は図示していない。
【0036】
トレイ30の後端側の両サイドにはアーム31、32がそれぞれ回動軸31a、32aを介してトレイ30に回動可能に連結されており、トレイ30とアーム31、32とのこれらが一体となって媒体搬送方向に移動可能となっている。
【0037】
アーム31、32の先端には、それぞれボス31b、32bが形成されており、このボス31b、32bが、それぞれガイド溝7a、8a内に遊挿され、ガイド溝7a、8aに沿って移動可能となっている。
【0038】
より詳しくは、図1及び図2に示す様にトレイ30の下側には下フレーム部材8が設けられており、またトレイ30の上側には上フレーム部材7が設けられている。従ってトレイ30は、格納位置では下フレーム部材8によって支持されているとともに、上フレーム部材7と、給送装置2のフレーム6とによって上方が覆われた状態となっている。
【0039】
そして上フレーム部材7には、上記のガイド溝7aが形成されている。従って上フレーム部材7に形成されたガイド溝7aに遊挿されるボス31bは、鉛直上方(図4乃至図6において紙面裏方向)に突出する様に、アーム31に形成されている。また、下フレーム部材8には、上記のガイド溝8aが形成されており、従って下フレーム部材8に形成されたガイド溝8aに遊挿されるボス32bは、鉛直下方(図4乃至図6において紙面表方向)に突出する様に、アーム32に形成されている。
【0040】
尚、図4乃至図6においてガイド溝8aは、同図においては表れない下フレーム部材8(図4乃至図6において紙面表側に設けられている)に形成されているので、仮想線で示している。また、図4乃至図6においてガイド溝7a、8aは、ともに左右対称の形状を成しているが、両者の重なり部分については図の煩雑化を避けるため、ガイド溝8aの一部は図示を省略している。
【0041】
図4はトレイ30が格納位置にある状態を示しており、図示するようにこの状態ではアーム31、32が折り畳まれた状態となっている。この状態では、トレイ30の先端30aは、図1に示すように搬送駆動ローラー16と搬送従動ローラー17とによってニップされておらず、搬送手段15によっては搬送できない状態となっている。
【0042】
ここで、トレイ30の上面にはラック部30bがトレイ搬送方向(図4乃至図6の上下方向)に沿って形成されており、このラック部30bに、ピニオン歯車34(図1、図2参照)が噛合している。このピニオン歯車34は、図示しないモーターにより駆動されるものであり、ピニオン歯車34が回転することで、トレイ30が搬送される様になっている。即ち、トレイ30の先端30aが搬送駆動ローラー16と搬送従動ローラー17とによってニップされていない状態では、ピニオン歯車34とラック部30bとがトレイ30を搬送する搬送手段を構成する。
【0043】
次に、トレイ30の駆動指令が出されると、搬送従動ローラー17を支持するローラー支持部材11と、補助ローラー24及び排出従動ローラー26を支持するフレーム27は、図1の状態から図2の状態に切り換えられ、またキャリッジ20が上昇し、トレイ30が搬送される直線状の搬送経路が開放された状態となる(図2)。
【0044】
そしてピニオン歯車34が駆動され、トレイ30が格納位置(図1)から露呈位置(図2)に向けて搬送される。このとき、トレイ30に連結されたアーム31、32は、それぞれボス31b、32bがガイド溝7b、8b内を移動することで、図4→図5→図6への変化に示すように回転によって折り畳み状態から伸長状態へと変化するとともに、トレイ30と一体に下流側へ移動する。
【0045】
そしてトレイ30の先端30aが搬送駆動ローラー16と搬送従動ローラー17との間に入り込んだ後、ローラー支持部材11の下降が行われ、トレイ30は搬送駆動ローラー16と搬送従動ローラー17とによってニップされた状態となる。従ってこれ以降は、トレイ30は搬送手段15によって搬送されることとなる。尚、トレイ30が格納位置(図1)に戻される場合には、上記とは逆にトレイ30を搬送手段15によって、ピニオン歯車34とラック部30bとが噛合する位置に至るまで送り、その後はピニオン歯車34の回転によってトレイ30が格納位置に戻される。
【0046】
以上の様に折り畳み可能なアーム31、32によって、トレイ30が格納位置にあるときに、搬送方向に大きな占有スペースを必要とせず、またトレイ30を搬送する際にはアーム31、32が伸長することでトレイ30の全体的な長さを確保でき、トレイ30の搬送範囲を充分に確保できる様になっている。
【0047】
ところでキャリッジ20の底部には光学センサー(不図示)が設けられており、この光学センサーによりトレイ30に光ディスクDがセットされているか否かを検出できる様になっている。
そしてトレイ30に光ディスクDがセットされていると判断できる場合、トレイ30は格納位置(図1)には戻されない。トレイ30に光ディスクDがセットされたまま当該トレイ30が格納位置に戻されると、その後にトレイ30が露呈位置に移動する際に、トレイ30にセットされた光ディスクDが搬送経路に引っ掛かり、ジャムとなる虞があるからである。
【0048】
しかし光学式センサーの場合、トレイ30と光ディスクDの反射率差をうまく検出できない場合もあり、その場合トレイ30に光ディスクDがセットされたまま、当該トレイ30が格納位置に格納されてしまう場合もある。そこで本実施形態では、格納位置にあるトレイ30の上部に位置する上フレーム部材7の一部を開放することで、トレイ30にセットされた光ディスクDを取り出すことができる様になっている。
【0049】
詳しくは、トレイ30の上方に位置するフレーム部材7は、基部7bと、「トレイ30が格納位置にあるときのセット部30cの上方に位置する構成部材」としての開閉部7cと、を備えて構成されている。基部7cは、固定的に設けられる構成部材であるが、開閉部7cは回動軸7d(図1、図2)を介して基部7bに回動可能に連結されており、回動することによりトレイ30(セット部30c)を覆う状態(図7)と、トレイ30(セット部30c)の少なくとも一部を露呈させる開放状態(図8)と、をとり得る様に開閉可能に設けられている。
【0050】
給送装置2の背面側には、図1及び図2に示す様に支持部材5が傾斜姿勢に設けられたことにより、上フレーム部材7の上側に空きスペースRが形成されており、そして開閉部7cを図8に示す様に開放することにより、空きスペースRを介してセット部30cにセットされた光ディスクDを取り出すことが可能となっている。これにより、トレイ30に光ディスクDがセットされたまま格納位置に格納されても、トレイ30から光ディスクDを取り出すことができる。
【0051】
そして以上説明した様に、インクジェットプリンター1は、プレート状の被記録媒体としての光ディスクをセット可能なセット部30cを備えたトレイ30が、被記録媒体給送部としての給送装置2の下部に格納される格納位置(図1)と、セット部30cを装置外部に露呈させる露呈位置(図3)と、の間を変位可能に設けられている。即ちトレイ30の格納領域として給送装置2の下側空間を利用すれば、トレイ30をそのまま真っ直ぐに送り出すことで記録手段としての記録ヘッド22の下へとトレイ30を送ることができ、これによって大きなトレイ格納スペースを確保する必要がなく、装置の大型化を最小限に抑えることができる。
【0052】
ところで、上述した様にトレイ30の先端30aは、トレイ30が格納位置にあるときに、搬送手段15の上流側近傍の用紙搬送経路を構成する。従って格納位置にあるトレイ30を変位動作させることで、媒体搬送経路における搬送手段15の上流側空間(図9において符号Q、Q’で示す)の大きさを調整することができる。
【0053】
図9(A)は、トレイ30が格納位置にあるときの状態を示しており、この状態では比較的大きめの上流側空間Qが確保されている。この状態から、ピニオン歯車34を回転させてトレイ30を若干下流側へ移動させると、図9(B)に示すように小さめの上流側空間Q’が形成される。
【0054】
従って例えば、給送装置2から単票紙を給紙する際、用紙先端を搬送手段15に食い付かせた後、搬送駆動ローラー16を逆転駆動して用紙先端を搬送手段15の上流側に吐き出すことでスキュー取りを行う、所謂食い付き吐き出し方式のスキュー取りにおいては、図9(A)のように大きめの上流側空間Qとすることで、用紙を充分に撓ませることができ、その結果適切にスキューを除去することができる。
【0055】
また、スループットを考慮してスキュー取りを行わないで給紙を行いたい場合もあり、この場合には、図9(B)に示すように小さめの上流側空間Q’とすることで、用紙左右の経路差を無くし、スキュー取りを実行しなくても用紙に生じるスキューを抑えることができ、或いはスキューの発生を防止することができる。
【0056】
以上説明した実施形態は一例であり、これに限られないことは言うまでもない。例えば、本実施形態に係るインクジェットプリンター1は、インクジェット記録ヘッド22が主走査方向に移動しながら記録を行う所謂シリアル型の記録装置であるが、記録領域全幅をカバーする幅を有する記録ヘッドが固定的に設けられた記録装置にも適用可能であることは言うまでもない。
また本実施形態では、トレイ30が記録装置前方側に進出した位置を、記録装置外部にセット部30cを露呈させる露呈位置としているが、トレイ30を記録装置後方側に突出可能に構成し、当該突出した位置を、記録装置外部にセット部30cを露呈させる露呈位置としても良い。
【符号の説明】
【0057】
1 インクジェットプリンター、2 給送装置、4 給送ローラー、5 支持部材、6 フレーム、6a ガイド面、7 上フレーム部材、7a ガイド溝、7b 基部、7c 開閉部、7d 連結軸、8 下フレーム部材、8a ガイド溝、9 ガイドローラー、10 ローラー支持部材、11 回転軸、12 コイルばね、14 メインフレーム、15 搬送手段、16 搬送駆動ローラー、17 搬送従動ローラー、19 案内部材、20 キャリッジ、21 キャリッジガイド軸、22 インクジェット記録ヘッド、24 補助ローラー、25 排出駆動ローラー、26 排出従動ローラー、27 フレーム、30 トレイ、30a トレイ先端、30b ラック部、30c セット部、31 第1アーム、31a 回動軸、31b ボス、32 第2アーム、32a 回動軸、32b ボス、34 ピニオン歯車、D 光ディスク、P 記録用紙、Q、Q’ (搬送手段の)上流側空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被記録媒体を傾斜姿勢で支持する支持部材を備え、当該支持部材上の被記録媒体を下流側へ送り出す被記録媒体給送部と、
前記被記録媒体給送部の下流側に設けられた、被記録媒体に記録を行う記録手段と、
プレート状の被記録媒体をセット可能なセット部を備え、前記被記録媒体給送部の下部に格納される格納位置と、前記セット部を装置外部に露呈させる露呈位置と、の間を変位可能に設けられたトレイと、
を備えた記録装置。
【請求項2】
請求項1に記載の記録装置において、前記トレイが前記格納位置にあるときの前記セット部の上方に位置する構成部材が、前記セット部を覆う状態と、前記セット部の少なくとも一部を露呈させる状態と、をとり得る様に開閉可能に設けられ、
前記被記録媒体給送部の背面側には、前記支持部材が傾斜姿勢に設けられたことにより、前記構成部材の上側に空きスペースが形成されており、
前記構成部材を開放することにより、前記空きスペースを介して前記セット部にセットされたプレート状の被記録媒体を取り出し可能に構成されている、
ことを特徴とする記録装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の記録装置において、被記録媒体搬送経路において前記記録手段の上流側に、被記録媒体を下流側へ搬送する搬送手段を備え、
前記トレイの先端は、前記被記録媒体給送部から送り出された被記録媒体の先端を前記搬送手段へと案内する案内面を構成しており、
前記トレイが変位動作することにより、被記録媒体搬送経路における前記搬送手段上流側空間の大きさが調整可能に構成されている、
ことを特徴とする記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−166377(P2012−166377A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−27254(P2011−27254)
【出願日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】