説明

記録装置

【課題】切断位置近傍において、記録媒体の紙浮きが発生しても、ロール紙のカットラインを直線にすることが可能な記録装置を提供する。
【解決手段】記録装置は、記録媒体の搬送方向に対して直交する方向に延びる刃先31aを有する固定刃31と、固定刃31の刃先31aに斜めに当接する回転刃21と、を有し、回転刃21を固定刃31の刃先31aに沿って移動させることにより記録媒体を切断する切断装置8と、切断装置8を二つ以上設けられた切断位置のいずれかに移動させる昇降手段40と、を有し、切断装置8の少なくとも一つの切断位置は、記録媒体の搬送面より上方に突出した上方突出位置にあり、昇降手段40は切断位置近傍における記録媒体の搬送面からの浮き量がある閾値より大きいときに切断装置8の切断位置を上方突出位置に移動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロール状の記録媒体をシート状に切断するための切断装置を備えた記録装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポスターなどを印刷する大判系のインクジェット式プリンタ等の記録装置においては、A0判やB0判等といった大判サイズの記録媒体が普及し、プリンタサイズが大型化することに伴い、幅の広いロール紙をシート状に切断することが要求されてきている。また、使用される記録媒体の種類も、フィルムや紙、厚紙、布、不織布、粘着紙、ラベル紙等、またこれらにコーティングやラミネートを施したもの、さらにこれらの中で厚さが異なるものまで多種多様になってきている。このために、ユーザの利便性を考慮して、多種多様なロール紙に対応可能な切断装置の構成が開示されている(特許文献1及び特許文献2参照)。
【0003】
特許文献1において、インクジェットプリンタは、ロール紙の搬送路の下面にプラテンを設け、プラテンの搬送方向下流側には切断装置が設けられている。切断装置は、丸刃と固定刃とを有する。固定刃はロール紙の搬送路の下面全幅に渡り搬送方向と直交する方向に配され、その固定刃に沿って丸刃を移動させることでロール紙を切断する。また、丸刃を保持している丸刃ユニットには、固定刃上面からロール紙が浮くことを防止するように浮き規制部材が設けられている。ロール紙の切断時には、切断位置近傍に配されたプラテンにおいてロール紙を吸引することにより紙浮きを制限し、且つ、浮き規制部材がある一定の隙間で浮きを規制することで、ロール紙の切断不良を防止することを可能にしている。
【0004】
切断装置はロール紙の搬送方向と直交する方向に刃先を設けた固定刃と、固定刃の刃先に所定の角度を設けて、回転可能に当接する丸刃とから構成される。丸刃はロール紙の搬送方向に対し角度を有することにより、ロール紙の切断時、丸刃は搬送方向上流側に喰い込もうとする。そのため、丸刃の切断方向への移動に伴い、ロール紙は搬送方向上流側から下流側に引っ張られながら切断される。
【0005】
また、特許文献2において、記録装置は、記録実行部のロール紙の搬送路下面にプラテンを設け、ロール紙をプラテン側に吸引するために、プラテンの搬送方向下流側にはエア吸引手段が設けられている。更にエア吸引手段の搬送方向下流側には切断部が設けられている。切断部は、2つの丸刃を保持するカッタユニットを有する。カッタユニットはロール紙の搬送路の上面全幅に渡り搬送方向と直交する方向に配されたガイドレールに沿って移動させられることでロール紙を切断する。また、ロール紙の搬送路の上面において、切断部の搬送方向上流側及び下流側には、それぞれロール紙の浮き上がりを制限することができるように上流側補助ローラ及び下流側補助ローラが設けられている。ロール紙の切断時には、エア吸引手段、上流側補助ローラ及び下流側補助ローラによって、ロール紙の浮きを制限することで、ロール紙の切断不良を防止することを可能にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−268225
【特許文献2】特開2009−214237
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1のような構成においては、切断装置の搬送方向上流側にプラテンを配したり、丸刃ユニットに浮き規制部材を設けたりしているため、切断装置の搬送方向上流側に紙浮きが発生し難い構成である。しかしながら、多種多様なロール紙を使用するに至っては、プラテンと浮き規制部材との僅かな隙間においてもロール紙がカールすることにより、紙浮きが発生する場合がある。切断開始前に、切断装置の搬送方向上流側に紙浮きが発生していると、丸刃の移動に伴い、ロール紙は紙浮きによるたるみ分だけ搬送方向下流側に引っ張られた状態となるため、切断動作の過程でロール紙の位置が変位するおそれがある。ロール紙は、固定刃の刃先に沿って切断されるため、ロール紙の位置が切断動作の過程で変位すれば、カットラインが直線にならず、切断開始側にて曲がるおそれがある。
【0008】
また、特許文献2のような構成においては、切断部の搬送方向上流側にエア吸引手段を配したり、上流側補助ローラ及び下流側補助ローラを設けたりしているため、切断装置の搬送方向上流側に紙浮きが発生し難い構成である。しかしながら、本構成においても、上流側補助ローラはロール紙の紙浮きを完全に拘束するようには設けられていない。そのため、多種多様なロール紙を使用するに至っては、エア吸引手段と上流側補助ローラとの隙間や、上流側補助ローラとカッタユニットとの隙間においてロール紙がカールすることにより、紙浮きが発生する場合がある。特許文献1と同様に、切断装置の搬送方向上流側に紙浮きが発生していると、カッタユニットの移動に伴い、ロール紙は紙浮きによるたるみ分だけ搬送方向下流側に引っ張られた状態となるため、切断動作の過程でロール紙の位置が変位するおそれがある。ロール紙は、カッタユニットの移動経路に沿って切断されるため、ロール紙の位置が切断動作の過程で変位すれば、カットラインが直線にならず、切断開始側にて曲がるおそれがある。
【0009】
本発明では、切断位置近傍において、記録媒体の紙浮きが発生しても、ロール紙のカットラインを直線にすることが可能な記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の記録装置は、記録媒体の搬送方向に対して直交する方向に延びる刃先を有する固定刃と、前記固定刃の前記刃先に斜めに当接する回転刃と、を有し、前記回転刃を前記固定刃の前記刃先に沿って移動させることにより前記記録媒体を切断する切断装置と、前記切断装置を二つ以上設けられた切断位置のいずれかに移動させる昇降手段と、を有し、前記切断装置の少なくとも一つの前記切断位置は、前記記録媒体の搬送面より上方に突出した上方突出位置にあり、前記昇降手段は切断位置近傍における前記記録媒体の前記搬送面からの浮き量がある閾値より大きいときに前記切断装置の前記切断位置を前記上方突出位置に移動させる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の記録装置では、2つ以上の切断位置を設け、切断位置近傍における記録媒体の浮き量に応じて切断装置の位置を切り換えることにより、紙浮きによる記録媒体のたるみの影響を低減させた状態で、切断装置が記録媒体を切断することができる。
【0012】
本発明では、切断位置近傍において、記録媒体の紙浮きが発生しても、ロール紙のカットラインを直線にすることが可能な記録装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第1の実施形態に係る記録装置の模式的縦断面図である。
【図2】切断装置と昇降手段を示す斜視図である。
【図3】回転刃と固定刃との位置関係を示す上面図である。
【図4】従来の記録装置においてロール紙を切断した場合の模式的縦断面図である。
【図5】従来の記録装置においてロール紙を切断した場合の切断状態を示す上面図である。
【図6】切断装置が切断位置から退避した位置にある状態を示す模式的縦断面図である。
【図7】切断装置が第1の切断位置にある状態を示す模式的縦断面図である。
【図8】切断装置が第2の切断位置にある状態を示す模式的縦断面図である。
【図9】浮き量検出手段が紙浮き量を検出する状態を示す模式的縦断面図である。
【図10】浮き量検出手段の検出方法を示す説明図である。
【図11】第1の実施形態に係る記録装置の記録動作を示すフローチャートである。
【図12】第2の実施形態に係る浮き量推測手段の推測方法の一例を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、各図面を通して、同一符号は同一または対応部分を示すものである。
【0015】
図1は本発明の第1の実施形態に係る記録装置の模式的縦断面図である。図1を参照して、記録装置にロール紙が給紙され、切断装置により切断されるまでの一連の動作について説明する。図1において、インクジェットプリンタ1は、シリアルタイプの走査方式で画像を記録する記録装置である。ロール紙給紙ローラ2は、搬送手段としての一対のローラからなり、ロール紙101を搬送ローラ3に搬送する。搬送ローラ3は、搬送手段としての一対のローラからなり、画像記録部にロール紙101を搬送する。キャリッジ4は、画像記録手段である記録ヘッドを搭載し、走査ガイドとしてのキャリッジシャフト5に沿って往復移動可能に案内支持されている。プラテン6は、画像記録部においてロール紙101を裏面から案内支持し、記録ヘッドとロール紙101とのギャップを保証している。排紙ローラ7と拍車7aとは、対をなして、画像記録部から送られてきたロール紙101を排紙部材9に案内するための搬送手段である。なお、ロール紙101の画像記録面側には、インクが転写しないように拍車7aを用いている。切断装置8は、排紙ローラ7と排紙口との間に設けられ、回転刃21と固定刃31とを備え、ロール紙101を所定のサイズに切り分ける。また、切断装置8は、ロール紙101の搬送面に対して昇降移動可能である。なお、ロール紙101は、連続したロール状の記録紙やプラスチックシートからなる記録媒体であり、その材質は紙に限定されるものではない。
【0016】
ロール紙101に画像を記録する際、ロール紙101は、ロール紙給紙ローラ2により搬送ローラ3に導かれる。ロール紙101が搬送ローラ3に導かれると、ロール紙給紙ローラ2はニップを開放した状態となる。搬送ローラ3に導かれたロール紙101は、搬送ローラ3により画像記録部に搬送される。画像記録部において、キャリッジ4の往動または復動による1ライン分のスキャンにより画像を記録すると、ロール紙101を搬送ローラ3により矢印Aの方向(搬送方向)に所定ピッチだけ送り、キャリッジ4を再び移動させて次のラインの画像記録を行う。これを繰り返してページ全体に画像が記録される。ロール紙101の画像記録済み部は、装置本体の外部にある排紙部材9へ向けて搬送される。画像記録が終了すると、ロール紙101は搬送ローラ3により所定の切断位置まで搬送される。ロール紙101の切断位置までの搬送が終了すると、排紙ローラ7と拍車7aとでロール紙101を挟持する。そして、切断動作の信号により、切断装置8は所定の切断位置に移動させられ、画像記録後のロール紙101は、切断位置にある切断装置8である回転刃21と固定刃31とによって切断される。切断動作前に排紙ローラ7と拍車7aとでロール紙101を挟持することにより、切断時におけるロール紙101の浮き上がりを防止することができ、正確にロール紙101を切断することができる。また、切断装置8は排紙ローラ7と排紙口との間に設けられているため、切断されたロール紙101は、その自重により排紙部材9に排紙される。なお、画像記録中において、プラテン6の通紙面と、固定刃31の上面の関係は、固定刃31の上面の方が低い。また、切断動作中において、固定刃31の上面と、排紙部材9の上面の関係は、排紙部材9の上面の方が低い。
【0017】
次に図2、図3、図4及び図5を参照して、切断装置8について説明する。図2は切断装置と昇降手段を示す斜視図である。図3は回転刃と固定刃との位置関係を示す上面図である。図4は従来の記録装置において、切断装置の搬送方向上流側にてロール紙の紙浮きが発生した状態でロール紙を切断した場合のロール紙の挙動を示す模式的縦断面図である。図5は従来の記録装置において、ロール紙の紙浮きが発生した状態でロール紙を切断した場合の切断状態を示す上面図である。図2、図3、図4及び図5において、切断装置8は、カッタキャリッジ20と、固定刃レールユニット30とを有する。カッタキャリッジ20は、回転刃21と、回転刃ホルダ22とを有する。固定刃レールユニット30は、固定刃31と、ガイドレール32と、スライダ33と、プーリ34と、ベルト35とを有する。回転刃21は、固定刃31の搬送方向下流側に配され、角度αを設けて、固定刃の刃先31aに回転可能に当接するよう回転刃ホルダ22に保持されている。ガイドレール32は、カッタキャリッジ20をロール紙101の搬送方向に対して直交する方向B及び方向Cに案内するように構成されており、ロール紙101の通紙面と平行な平面部を有する。その平面部の上面には、直線状の固定刃31が長手方向に沿って、両面テープまたはスポット溶接などの手段によって固定されている。固定刃31は、ロール紙101の搬送方向に対して直交する方向に固定刃の刃先31aが設けられている。スライダ33は、カッタキャリッジ20を保持し、ガイドレール32の内側を摺動するように設けられており、プーリ34に掛け渡されたベルト35を介して、不図示のモータによりロール紙101の搬送方向に対して直交する方向B及び方向Cに移動可能である。カッタキャリッジ20の切断待機位置と切断終了位置は、最大幅のロール紙101を搬送した場合でも、ロール紙101の搬送を妨害しないように、ロール紙101の搬送面の更に外側に設けられている。ここで、回転刃21と固定刃31とは、協働してロール紙101を切断するように設けられており、ロール紙101のカットラインは固定刃の刃先31aに略一致する。
【0018】
ロール紙101の切断時には、回転刃21の切断方向Bへの移動の際、回転刃21は角度αを有することにより、搬送方向上流側に喰い込もうとする。すなわち、回転刃21はロール紙101に対して、搬送方向上流側から下流側に引き出す力を作用させて切断することとなる。したがって、図4に示すように、従来の記録装置において、切断装置の搬送方向上流側にてロール紙の紙浮きが発生した場合、実線で示した切断開始前のロール紙101は、切断時、紙浮きによるたるみ分だけ搬送方向下流側に引っ張られ、矢印Dの方向に変位する。すなわち、回転刃21の切断方向Bへの移動に伴い、実線で示した切断開始前のロール紙101は、点線で示した切断途中のロール紙102に寸法yだけ搬送方向下流側に変位した状態となる。そのため、ロール紙101のカットライン101aは切断開始側にて寸法yだけ曲がった状態となり、図5に示すような切断状態となる。
【0019】
次に、図2、図6、図7及び図8を参照して、昇降手段40による切断装置8の昇降移動について説明する。図6は切断装置が切断位置から退避した位置にある状態を示す模式的縦断面図である。図7は切断装置がロール紙の搬送面にある第1の切断位置にある状態を示す模式的縦断面図である。図8は切断装置がロール紙の搬送面より上方に突出した第2の切断位置にある状態を示す模式的縦断面図である。図2、図6、図7及び図8において、昇降手段40は、昇降カム41と、昇降カム軸42と、昇降バネ43とを有する。昇降カム41は、切断装置8のロール紙101の幅方向外側の両端部に配され、不図示のモータにより切断装置8を矢印Eの方向に押し付けるように構成されている。昇降カム軸42は、両端部に設けられた昇降カム41のうちの一方に不図示のモータにより動力が伝えられた際、同位相で両端部に設けられた昇降カム41を回転させる。昇降バネ43は、切断装置8のロール紙101の幅方向外側の両端部に配され、切断装置8を矢印Fの方向に押し付けるように構成されており、昇降カム41と対をなして、切断装置8を矢印E及び矢印Fの方向に昇降移動させる。
【0020】
昇降手段40により、図6に示すように、切断装置8を切断位置から退避した位置に昇降移動させる際、昇降カム41を所定の位置まで回動させることにより、切断装置8は昇降カム41により矢印Eの方向に最も押し込まれた状態となる。切断装置8を、図7に示す第1の切断位置や、図8に示す第2の切断位置に昇降移動させる際も、切断装置8は昇降カム41の回動位置により昇降位置が決められる。
【0021】
また、切断装置8が、図7に示す第1の切断位置に配された状態において、切断装置8の搬送方向上流側にロール紙101の紙浮きが発生していた場合、切断装置8が、昇降手段40により、図8に示す第2の切断位置に昇降移動させられる。この際、切断装置8がロール紙101の搬送面より上方に突出させられるため、ロール紙101の紙浮きを吸収することができる。したがって、切断装置8の搬送方向上流側のロール紙101のたるみを減少させることができる。
【0022】
次に、図9及び図10を参照して、浮き量検出手段50について説明する。図9は浮き量検出手段が紙浮き量を検出する状態を示す模式的縦断面図である。図10は浮き量検出手段の検出方法を示す説明図である。図9及び図10において、浮き量検出手段50は、駆動回路51aと、光源51bと、投光レンズ51cと、受光レンズ51dと、位置検出素子(PSD)51eと、アンプ51fとを有する。浮き量検出手段50は、切断装置8の搬送方向上流側におけるロール紙101の紙浮き量zを検出するためのものであり、切断装置8の上方に配されている。
【0023】
駆動回路51aによって駆動された光源51bから発せられた光が、投光レンズ51cで集光されて対象物体であるロール紙101の表面に照射される。ロール紙101から反射された反射光は、受光レンズ51dによって、位置検出素子(PSD)51e上に集光される。ロール紙101に紙浮きが生じていると、光源51bからロール紙101までの距離が変化し、位置検出素子(PSD)51eの2つのアンプ51fからの出力X1、X2の比が変化する。これによって、ロール紙101の紙浮き量zを検出することができる。ここで、検出された紙浮き量zが、予め設定している閾値hと比較して大か小かにより、紙浮き量大か紙浮き量小かを判別する。
【0024】
図11は本実施形態に係る記録装置の記録動作を示すフローチャートである。図11において、まず、ステップS1で、ホストコンピュータより送出された印刷画像データ(画像情報)を記録装置の制御基板で受信すると、ステップS2で、切断装置8は図7に示したロール紙101の搬送面にある第1の切断位置に移動させられる。そして、ステップS3で、印刷画像データがフチなし印刷か否かを判別する。印刷画像データがフチあり印刷の場合、画像データを印刷する(ステップS12)。印刷画像データがフチなし印刷の場合、ステップS4で、画像データを印刷する。
【0025】
ステップS5でロール紙101の画像記録部先端切断位置が切断装置8による切断位置まで搬送されたか否かを判別する。ロール紙101の画像記録部先端切断位置が切断装置8による切断位置まで搬送されるまで、このステップS4からステップS5の処理を繰り返す。ロール紙101の画像記録部先端切断位置が切断装置8による切断位置まで搬送されると、ステップS6で、浮き量検出手段50により切断装置8の搬送方向上流側の紙浮き量zを検出する。検出された紙浮き量zが、紙浮き量が大か小かを算出する閾値hと比較されることにより、紙浮き量大か否かを判別する。ステップS6で、紙浮き量が大であると判別されると、切断装置8を図8に示したロール紙101の搬送面より上方に突出した第2の切断位置に移動させる(ステップS7)。ステップS6で、紙浮き量が小であると判別される、もしくは、ステップS7で、切断装置8が第2の切断位置に移動させられると、カッタキャリッジ20による切断動作が行われる(ステップS8)。このように、カッタキャリッジ20による切断動作前に、切断装置8が切断位置を変化させられることにより、切断装置8の搬送方向上流側に発生するロール紙101の紙浮きによるたるみを防止することができ、カットラインを直線にすることが可能となる。そして、ステップS9で、切断装置8は図6に示した切断位置から退避した位置に移動させられた後、カッタキャリッジ20が切断待機位置まで移動させられる(ステップS10)。そして、ステップS11で、切断装置8は再び図7に示したロール紙101の搬送面にある第1の切断位置に移動させられる。このように、カッタキャリッジ20が切断待機位置まで移動させられる前に、切断装置8は図6に示した切断位置から退避した位置に移動させられる。これにより、ロール紙101を切断するカッタキャリッジ20の往路の移動と、カッタキャリッジ20を切断待機位置に戻す復路の移動とでロール紙101に対する切断装置8の位置関係を変化させている。そのため、復路の移動の際、カッタキャリッジ20とロール紙101との接触を防止することができ、ロール紙101の画像記録面に発生する傷を防止することができる。
【0026】
ステップS12で、画像データを印刷し、ステップS13で、画像データの印刷終了を判別すると、ロール紙101の画像記録部後端切断位置が切断装置8による切断位置まで搬送される(ステップS14)。そして、ステップS15で、ステップS6と同様に切断装置8の搬送方向上流側の紙浮き量を判別して、紙浮き量が大であると判別されると、切断装置8を図8に示したロール紙101の搬送面より上方に突出した第2の切断位置に移動させる(ステップS16)。ステップS15で、紙浮き量が小であると判別される、もしくは、ステップS16で、切断装置8が第2の切断位置に移動させられると、カッタキャリッジ20による切断動作が行われる(ステップS17)。ここでもまた、カッタキャリッジ20による切断動作前に、切断装置8が切断位置を変化させられることにより、切断装置8の搬送方向上流側に発生するロール紙101の紙浮きによるたるみを防止することができ、カットラインを直線にすることが可能となる。そして、ステップS18で、切断装置8は図6に示した切断位置から退避した位置に移動させられた後、ステップ19でカッタキャリッジ20が切断待機位置まで移動させられ、画像記録動作が終了する。
【0027】
なお、本実施形態において、切断位置はロール紙101の搬送面にある第1の切断位置と、ロール紙101の搬送面より上方に突出した第2の切断位置との2つしか設けていないが、2つ以上であれば任意の数だけ切断位置を設定することができる。これにより、ロール紙101に多様な紙浮きが発生したとしても対応可能となる。
【0028】
また、画像データを印刷している際、切断装置8はロール紙101の搬送面にある第1の切断位置に配されているが、ロール紙101の搬送面より上方に突出していなければ良く、例えば、切断装置8は切断位置から退避した位置に配されても良い。これにより、多種多様なロール紙101に画像データを印刷している際、カール等による搬送ジャムを防止することができる。
【0029】
以上、説明したように、本実施形態の場合、切断装置8の切断位置は2つ以上設けられており、切断位置近傍におけるロール紙101の紙浮き量に応じて切り換える構成としている。また、切断装置8の搬送方向上流側の紙浮き量を浮き量検出手段50により直接検出することができる構成としている。これらにより、切断装置8の搬送方向上流側に発生するロール紙101の紙浮きによるたるみを防止することができ、カットラインを直線にすることが可能となる。
【0030】
また、切断装置8は切断位置と切断位置から退避させた位置とに移動可能であり、ロール紙101の切断動作時か否かに応じて切り換える構成としている。これにより、ロール紙101を切断するカッタキャリッジ20の往路の移動と、カッタキャリッジ20を切断待機位置に戻す復路の移動とでロール紙101に対する切断装置8の位置関係を変化させている。そのため、復路の移動の際、カッタキャリッジ20とロール紙101との接触を防止することができ、ロール紙101の画像記録面側に発生する傷を防止することができる。
【0031】
次に、本発明の第2の実施形態について図面を参照して説明する。ここでは、記録媒体浮き量検出手段についての変形例を示すが、第1の実施形態と同じ構成要素に関しては、同一符号を用い、その説明は割愛する。
【0032】
図11及び図12を参照して、浮き量推測手段について説明する。図12は浮き量推測手段の推測方法の一例を示す表である。図11及び図12において、浮き量推測手段は、記録媒体情報と、画像情報と、環境とから切断装置8の搬送方向上流側の紙浮き量を推測している。記録媒体情報は、更に詳細には、記録媒体の種類と、巻き径とに分割される。画像情報は画像のインク打ち込み量が大か小か、ということである。環境とは例えば温度のことである。第1の実施形態とは、図11のステップS6及びステップS15における、切断装置8の搬送方向上流側の紙浮き量が大か否かを判別する手段のみが異なる。第2の実施形態においては、図11のステップS6及びステップS15の判別に図12に示す表を当てはめて行われる。
【0033】
したがって、本実施形態の場合、切断装置8の搬送方向上流側の紙浮き量を検出する浮き量検出手段50を設けなくとも、第1の実施形態と同等な効果をあげることができるため安価に課題を解決することができる。
【0034】
なお、本発明は上記実施形態に限定されることなく、切断装置が移動する構成であれば、上記各実施形態を適用することができる。
【符号の説明】
【0035】
8 切断装置
21 回転刃
31 固定刃
40 昇降手段
101 ロール紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体の搬送方向に対して直交する方向に延びる刃先を有する固定刃と、前記固定刃の前記刃先に斜めに当接する回転刃と、を有し、前記回転刃を前記固定刃の前記刃先に沿って移動させることにより前記記録媒体を切断する切断装置と、前記切断装置を二つ以上設けられた切断位置のいずれかに移動させる昇降手段と、を有し、
前記切断装置の少なくとも一つの前記切断位置は、前記記録媒体の搬送面より上方に突出した上方突出位置にあり、前記昇降手段は切断位置近傍における前記記録媒体の前記搬送面からの浮き量がある閾値より大きいときに前記切断装置の前記切断位置を前記上方突出位置に移動させる、記録装置。
【請求項2】
前記切断位置近傍における前記記録媒体の前記浮き量を検出する記録媒体浮き量検出手段を有し、前記記録媒体浮き量検出手段の検出結果に応じて前記切断装置の前記切断位置を移動させる、請求項1に記載の記録装置。
【請求項3】
前記切断位置近傍における前記記録媒体の前記浮き量を推測する記録媒体浮き量推測手段を有し、前記記録媒体浮き量推測手段の推測結果に応じて前記切断装置の前記切断位置を移動させる、請求項1に記載の記録装置。
【請求項4】
前記記録媒体浮き量推測手段は、前記記録媒体の種類と、前記記録媒体の巻き径と、画像のインク打ち込み量と、環境の温度と、に基づき前記切断位置近傍における前記記録媒体の前記浮き量を推測する、請求項3に記載の記録装置。
【請求項5】
前記昇降手段は前記回転刃の移動に伴う前記記録媒体の切断動作時には前記切断装置を前記切断位置に移動させ、前記記録媒体の前記切断動作時でないときには前記切断装置を前記切断位置から退避させた位置に移動させる、請求項1から4のいずれか1項に記載の記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−111915(P2013−111915A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−261937(P2011−261937)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】