説明

診療支援情報提供方法、診療支援情報提供システム、及びコンピュータシステムに診療支援情報を提供するための処理を実行させるコンピュータプログラム。

【課題】特定の患者を特定できる個人情報を伴わずに、この患者の生体サンプルの分析結果に対する専門家の診療支援情報を担当医師に提供する。
【解決手段】通信ネットワークを介して、医療機関4の医療機関システム5から患者3の基礎診療データを取得して診療支援情報の提供申込みを受け付ける手段と、医療機関4で採取された患者3の核酸を含む生体サンプルX1について、核酸分析装置16が分析した結果を取得する手段と、取得した核酸分析結果及び前記基礎診療データを専門家6の端末7に送信して当該分析結果に対する診療補助情報の作成を依頼する手段と、専門家端末7から核酸分析結果に対する診療補助情報を受信する手段と、受信した診療補助情報及び前記核酸分析結果を含む診療支援情報を作成し、通信ネットワークを介して医療機関システム5に送信する手段とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者に医療サービスを提供する医療機関のコンピュータシステム(医療機関システム)と、特定の疾病の治療方法や投与する医薬及び/若しくは生体サンプルの分子生物学的解析について高度な専門的知識を有する専門家の通信端末(専門家端末)と、が通信ネットワークを介して夫々接続可能な診療支援情報提供システム、このシステムによって実行される診療支援情報提供方法、及びこのコンピュータシステムに診療支援情報提供方法を実行させるためのコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近時の分子生物学的情報に基づく医療技術の発達により、DNAにコードされたヒトの個性や、RNAの転写頻度や蛋白質の存在に反映される疾患の状態を医療行為の選択に役立てることが実現されつつある。そうした医療補助情報を利用する医療行為においては、診察、検査、診断、処置・処方等の各ステージで、個人情報の本質であるDNA自体の情報を始めとする、生体的特性、生活習慣、既往歴などの各種の個人情報を利用することが必須となる。
【0003】
また、日本では、患者の個人情報を幅広く収集して医療行為に利用したいという医療機関のニーズに応える形で、電子カルテシステムの普及が急速に進んでいる。
【0004】
一方で、このような患者の個人情報は本人の同意を得ない限り他人(他の医療機関を含む)に伝達しないように、電子カルテシステムやこれを含む/統括する医療機関の各種システムにおいては、厳重なセキュリティーシステムを構築して、医療に関連する患者の個人情報を保護している。
【0005】
このような状況下においても、患者の身体の状態を知るために従来から行われている血液学的検査、生化学的検査、免疫学的検査、尿検査等の患者の生体サンプルを測定・検査する作業の多くは、匿名化された患者の生体サンプルを受け付けて、測定を実行し、報告書を返す方式が採用されている。このような方式では、患者の個人情報が流出する心配はないため、医療機関と独立した外部機関での委託作業が可能となっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、患者のDNAやRNAの状態から医療行為を補助する情報(診療補助情報)を生成する作業においては、情報の生成にあたって、患者の生体的特徴や、生活習慣、既往歴、DNAの多型情報などの個人情報の参照を必要とする場合がある。
【0007】
また、上記した医療補助情報を使用する医療行為は先進の技能分野であり、診療補助情報を生成する能力を有する人的リソースが限られている。そのため、こうした診療補助情報を生成する仕組みを医療機関内で保有・維持することは困難であり、当該作業を専門に行う技術および専門医師を擁する外部委託機関の構築が要望されている。すなわち、分子生物学を応用した解析サービスのニーズが高まっており、その実現のためには、分子生物学的なデータ解析手段の提供に加えて、医療機関が管理する患者の個人情報を、セキュリティを維持しながら利用して、医療行為を補助する情報を提供することを可能とする仕組みが必要である。
【0008】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたもので、特定の患者を特定できる個人情報を伴わずに、この患者の生体サンプルの分析結果に対する専門家の診療支援情報を担当医師に提供できる診療支援情報提供方法、システム及びコンピュータプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を解決するために、本発明は、患者に医療サービスを提供する医療機関のコンピュータシステム(医療機関システム)と、特定の疾病の治療方法や投与する医薬及び/若しくは生体サンプルの分子生物学的解析について高度な専門的知識を有する専門家の通信端末(専門家端末)と、が通信ネットワークを介して夫々接続可能な診療支援情報提供システムによって実行される方法であって、通信ネットワークを介して、前記医療機関システムから患者の基礎診療データを取得して診療支援情報の提供申込みを受け付ける申込受付工程と、医療機関で採取された患者の核酸を含む生体サンプルについて、核酸分析装置が核酸の情報を分析した結果を取得する核酸分析結果取得工程と、取得した核酸分析結果及び前記基礎診療データを前記専門家端末に送信して当該分析結果に対する診療補助情報の作成を依頼する診療補助情報作成依頼工程と、専門家端末から核酸分析結果に対する診療補助情報を受信する診療補助情報受信工程と、受信した診療補助情報及び前記核酸分析結果を含む診療支援情報を作成し、通信ネットワークを介して医療機関システムに送信する診療支援情報送信工程とを備えたことを特徴とする方法、この方法を好適に実行できるシステム及びコンピュータにこの方法を実行させるコンピュータプログラムを提供する。
【0010】
ここで、本発明における「個人情報」は、経済産業省、第6回ライフサイエンス研究におけるヒト遺伝情報の取扱い等に関する小委員会、第5回医学研究における個人情報の取扱いの在り方に関する専門委員会、第6回個人遺伝情報保護小委員会における「ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針」における個人情報保護に関する見直し概要について」(http:// www.meti.go.jp/ feedback/ downloadfiles/ i41022cj.pdf)における記述、「連結可能匿名化されていて対応表を保有しておらず個人の識別が不可能な状態にある情報」に従うものとする。このような個人情報を有効に保護するため、本発明の診療支援情報提供システムは、患者と診療基礎情報等との対応表や、暗号化コードを保有しない構成とする。
【0011】
本発明の好ましい実施形態では、は、核酸分析装置としての核酸解析装置が特定の疾病、薬剤、若しくは治療の種別との関係で解析した核酸解析結果を核酸分析結果として取得する。
【0012】
本発明の好ましい他の実施形態では、前記核酸分析結果取得工程は、核酸解析装置が、疾病、症状、薬剤、若しくは治療の種別ごとの核酸分析データと患者の診療データとが関連付けて格納された核酸解析データベース(核酸解析DB)を参照すると共に、この核酸解析DBに格納されたデータを解析することで得られる解析パラメータを利用した解析ソフトウェアを利用して、患者の生体サンプルの核酸の状態を解析した結果を取得するものである。ここで、前記診療支援情報を送信した後に、当該医療機関システムから、診療支援情報の対象者である患者に対して医療機関が診療した診療データを取得して前記核酸解析DBに格納する診療データ取得工程を備えることが好ましい。
【0013】
本発明の好ましい実施形態では、前記診療データ取得工程は、医療機関システムに格納された診療データのうち、特定の患者を識別できる個人情報を含まない匿名化された診療データ(匿名化診療データ)を取得し、この匿名化診療データを前記核酸解析DBに格納する。
【0014】
本発明の好ましい実施形態では、前記診療データ取得工程は、医療機関システムから、対象患者の身体情報、既往歴、血液学的検査・生化学的検査・免疫学的検査・尿検査・X線検査の結果、患者に投与した薬の量、頻度、回数、投与後の患者の症状などを含む診療データを、医療機関システムによって暗号化された患者IDと共に取得する。
【0015】
本発明の好ましい実施形態では、前記診療データ取得工程は、医療機関システムから、診療データを核酸解析DBに登録することに対する患者の同意を示す同意情報を取得した場合に当該診療データを核酸解析DBに登録する。
【0016】
本発明の好ましい他の実施形態では、前記申込受付工程は、前記医療機関システムから、対象患者を診療する医療機関及び/若しくは担当医師の電話番号、FAX番号、電子メールアドレスなどの連絡先の情報を基礎診療データと共に取得するものであり、前記診療補助情報作成依頼工程は、医療機関システムから取得した医療機関及び/若しくは担当医師の連絡先の情報も専門家端末に送信する。
【0017】
本発明の好ましい実施形態では、前記申込受付工程は、基礎診療データとして、特定の患者を識別できる個人情報を含まない匿名化されたデータ(匿名化基礎診療データ)を取得するものであり、前記診療補助情報作成依頼工程は、匿名化基礎診療データを専門家端末に送信するものであり、前記診療補助情報受信工程は、専門家端末から入力・送信された診療補助情報に特定の患者を識別できる個人情報が含まれるかを所定のタイミングで判別する個人情報判別工程と、個人情報が含まれていると判別された場合に、専門家端末に警告を発する警告工程とを備えた。
【0018】
本発明の好ましい実施形態では、前記診療補助情報受信工程は、専門家端末に対して、患者の個人情報を含まない匿名化診療補助情報を入力するためのユーザインターフェース(I/F)を提供して匿名化診療補助情報を取得するものであり、前記診療支援情報送信工程は、匿名化診療補助情報及び前記核酸分析結果を含む診療支援情報を作成して医療機関システムに送信する。ここで、前記診療補助情報受信工程は、匿名化診療補助情報入力用のI/Fと患者の個人情報を含む個人情報入り診療補助情報を入力するためのI/Fとを独立して提供して、これらの診療補助情報を分離して取得するものであり、前記診療補助情報受信工程は、個人情報入り診療補助情報I/Fから入力された診療補助情報を取得した場合に、その情報を予め医療機関から取得しておいた暗号鍵で暗号化して医療機関システムに転送することがさらに好ましい。
【0019】
また、本発明の好ましい実施形態では、前記診療補助情報受信工程は、匿名化診療補助情報入力用のI/Fとして、複数の入力項目毎に予め設定された定形の記号、数値、用語、若しくは文章からなる選択肢から選択して入力させ個人情報は入力できないI/Fを提供する。
【0020】
また、本発明の好ましい実施形態では、さらに、前記匿名化診療補助情報入力用のI/Fから入力された匿名化診療補助情報を患者の匿名化された識別情報に関連付けて匿名化診療補助情報データベース(DB)に登録すると共に、個人情報入り診療補助情報I/Fから入力された診療補助情報を登録しない診療補助情報格納工程を備えた。
【0021】
また、本発明の好ましい実施形態では、前記医療機関は、複数の医療機関の何れかで受診した患者の診療データを前記医療機関システムを介して他の医療機関でも共有するグループに所属しており、前記申込受付工程は、患者が受診した医療機関か、その医療機関が属するグループの他の医療機関のシステムから申込みを受け付ける。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、特定の患者を特定できる個人情報を伴わずに、この患者の生体サンプルの分析結果に対する専門家の診療支援情報を担当医師に提供できる診療支援情報提供方法、システム及びコンピュータプログラムを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態の一つを、図面を参照して具体的に説明する。
本実施形態に係る診療支援情報提供システムは、患者の個人情報を含む基礎診療情報や診療情報、生体サンプルなどを医療機関から取得する際に特定の個人を特定できないように匿名化することで、患者の個人情報を医療機関や医師以外の第三者に知徳させることなく、分子生物学的分析の結果や専門家の診療補助情報を得ることを可能にするものである。
【0024】
(全体構成)
まず、図1を参照して、本発明によって実現される診療情報提供スキームの概要を説明する。
【0025】
図1に符号1で示す診療支援情報提供システムは、分子生物学的解析センター2に設置された1又は2以上のコンピュータシステムによって構成されている。このシステム1は、患者3に医療サービスを提供する医療機関4のコンピュータシステム(医療機関システム)5や、特定の疾病の治療方法や投与する医薬や生体サンプルの分子生物学的解析について高度な専門的知識を有する専門家6である医師の端末(専門家端末)7と専用回線や公衆回線などの通信ネットワークによって電子的に接続されている。分子生物学的解析センター2を運営する図示しない事業者は、本システム1によるサービスを提供するために必要な契約を医療機関4及び専門家6と予め締結しているものとする。以下においては、専門家6である医師を「専門医師6」と表記する。
【0026】
また、診療支援情報提供システム1は、医療機関システム5から匿名化患者情報を取得して登録する匿名化情報蓄積論理システム8、専門家端末7に対して診療補助情報の入力インターフェースを提供して診療補助情報を取得する診療補助情報生成論理システム9、及び専門家端末7から取得した診療補助情報に患者3の個人情報が含まれていないかを監視する個人情報確認装置10を備えている。
【0027】
前記医療機関システム5は、基礎診療データを管理する従来周知の電子カルテシステム12と、医療機関4内で患者3を管理するために付与された患者IDを匿名化する患者ID匿名化装置13と、前記基礎診療データや患者IDなどを匿名化して外部に提供する匿名化患者情報入出力装置14とを備えている。ここで、基礎診療データには、患者3の年齢、性別、既往歴、血液学的検査、生化学的検査、免疫学的検査、尿検査、X線検査等の情報、担当医師11の情報が含まれる。
【0028】
医療機関4に所属する担当医師11は、分子診断検査用RNA採血管等で患者3から採取した核酸を含む生体サンプルX1に患者ID匿名化装置13によって生成される匿名化患者IDを付して、外部の医療分析機関15に送付し、核酸分析装置16による核酸分析を依頼する。医療分析機関15は、生体サンプルX1についてマイクロアレイ法、PCR法、ボディーマップ法等の核酸分析を行って、転写物頻度情報、特定転写物存在情報、特定転写構造情報等の核酸分析結果X2を得る。この核酸分析結果X2は、前記匿名化患者IDと共に、分子生物学的解析センター2の分子生物学的解析論理システム17に送付される。
【0029】
分子生物学的解析センター2では、取得した拡散分析結果X2を核酸解析情報生成プログラムによって核酸解析に必要な情報に加工する。そして、この解析結果と前記基礎診療データとを専門家端末7に送信して診療補助情報の作成を依頼する。
【0030】
(システム構成)
次に、図2の機能ブロック図を参照して、上記した診療支援情報提供システム1の構成を説明する。
このシステム1は、分子生物学的解析センター2のコンピュータシステムに内蔵されたCPU21にシステムバス22を介してRAM23、ROMやHDD、半導体ディスクなどの外部記憶装置24及び入出力インターフェース(I/F)25が接続されて構成される。入出力I/F25には、キーボードやマウスなどの入力装置26、ディスプレイなどの出力装置27、及びNICなどの通信デバイス28が夫々接続されている。外部記憶装置24は、匿名化解析情報データベース(DB)30とプログラム格納部31とを備えている。何れも、記憶装置24内に確保された一定の記憶領域である。
【0031】
このようなハードウェア構成において、分子生物学的解析センター2のオペレータが入力装置26を操作して各種の指令(コマンド)を入力したり、通信I/Fや通信デバイス28等を介して医療機関システム5や分子生物学的解析論理システム17、専門家端末7などから各種の指令を受信することで、この記憶装置24にインストールされたソフトウェアプログラムがCPU21によってRAM23上に呼び出されて実行されることで、OS(オペレーションシステム)と協働してこの発明の機能を奏するようになっている。
【0032】
匿名化解析情報DB30は、契約締結時に登録される情報や、後述するソフトウェアによって演算された結果、若しくは通信デバイス28等を介して医療機関システム5や分子生物学的解析論理システム17、専門家端末7等から取得した情報が随時書き込まれ、更新される。具体的には、この匿名化解析情報DB30は、図3に示すように、提携する医療機関4の情報を格納する医療機関マスタテーブル30a、この医療機関4に所属する担当医師11の情報を格納する担当医師マスタテーブル30b、及び診療補助情報の生成を依頼する提携の専門医師6の情報を格納する専門医師マスタテーブル30cを備えている。医療機関4、担当医師11及び専門医師6の情報を各マスタテーブルで管理することにより、診療補助情報を新たに登録(入力)する際に、関連する医療機関4や担当医師11、専門医師6を各マスタテーブルにおいて定義されたID(31a〜31c)により記述することが可能となる。
【0033】
この匿名化解析情報DB30には、診療補助情報のエントリー情報として、医療機関ID31a、担当医師ID31b、匿名化患者ID33、匿名化患者情報34、匿名化分析情報35、匿名化解析情報36、専門医師ID31c、及び匿名化コメント37が診療補助情報依頼IDに関連付けて格納される。ここで、匿名化患者ID33及び匿名化患者情報34は、前記医療機関システム5の患者ID匿名化装置13若しくは匿名化患者情報入出力装置14によって夫々暗号化された患者IDや基礎診療データの情報である。また、匿名化分析情報35は、図1では図示を省略したが、核酸分析装置16から直接受信した匿名化分析結果X2を登録すると共に、この匿名化分析結果X2に対して分子生物学的解析論理システム17が実行した分子生物学的解析(図7参照)の結果X3を匿名化解析情報36として登録している。さらに、匿名化コメント37は、専門医師6が診療補助情報入力インタフェース(図10参照)に記入した診療補助情報である。
【0034】
また、プログラム格納部31に格納されるコンピュータプログラムは、コンピュータを上記した匿名化情報蓄積論理システム8、診療補助情報生成論理システム9、及び個人情報確認装置10として構成するものであり、具体的には以下の各機能を備えている。
【0035】
すなわち、匿名化情報蓄積論理システム8は、申込受付機能40、核酸分析結果取得機能41及び診療データ取得機能42を、診療補助情報生成論理システム9は、診療補助情報作成依頼機能43、診療補助情報受信機能44、及び診療支援情報送信機能45を、個人情報確認装置10は、個人情報監視機能46を夫々備えている。これらの各機能は、夫々が独立したコンピュータプログラムやそのモジュール、ルーチンなどであり、上記CPU21によって実行されることでコンピュータを各システムや装置として構成させるものである。
【0036】
匿名化情報蓄積論理システム8の申込受付機能40は、通信ネットワークを介して、前記医療機関システム5から患者3の診療基礎データを取得して診療支援情報の提供申込みを受け付けるものである。この時、対象患者3を診療する医療機関4や担当医師11の電話番号、FAX番号、電子メールアドレスなどの連絡先の情報やアクセス可能時間などのアクセス情報を基礎診療データと共に取得する。この基礎診療データは、医療機関システム5の患者ID匿名化装置13や匿名化患者情報入出力装置14によって特定の患者3を識別できる個人情報を含まないように匿名化されたデータ(匿名化基礎診療データ)である。
【0037】
この申込受付機能40は、医療機関システム5からの依頼を受け付けた場合に、診療補助情報依頼エントリーをあらかじめ専門医師マスタ30cに登録された専門医師6に割り当てる。これにより、専門医師6は、専門家端末7で匿名化情報蓄積論理システム8からの通知を受けとり、診療支援情報提供システム1の診療補助情報生成論理システム9に接続することが可能になる。専門医師6は、ID、パスワード等のセキュリティが確保された環境で、診療補助情報生成論理システム9を通じて、自らのIDに関連付けられた診療補助情報依頼エントリーを参照する。
【0038】
核酸分析結果取得機能41は、前記核酸分析装置16が核酸の情報を分析した結果について、分子生物学的解析論理システム17が特定の疾病、薬剤、若しくは治療の種別との関係で解析した核酸解析結果を取得するものである。具体的には、分子生物学的解析論理システム17が、疾病、症状、薬剤、若しくは治療の種別ごとの核酸分析データと患者の診療データとが関連付けて格納された核酸解析データベース(核酸解析DB)を参照すると共に、この核酸解析DBに格納されたデータを解析することで得られる解析パラメータを利用した解析ソフトウェアを利用して、患者の生体サンプルの核酸の状態を解析した結果を取得する。なお、核酸解析結果ではなく、核酸分析装置16による核酸分析結果を取得するようにしてもよい。
【0039】
診療データ取得機能42は、医療機関システム5に対して診療支援情報を送信した後に、当該医療機関システム5から、診療支援情報の対象者である患者3に対して医療機関4や担当医師11が診療した診療情報を定期/不定期で取得して前記匿名化情報蓄積論理システム8に格納するものである。これにより、提供した診療支援情報の効果を検証し、必要に応じて専門医師6にフィードバックするなどして、診療支援情報の精度を向上させることができる。
【0040】
この診療情報は、対象患者3の身体情報、既往歴、血液学的検査・生化学的検査・免疫学的検査・尿検査・X線検査の結果、患者3に投与した薬の量、頻度、回数、投与後の患者3の症状などを含むデータであり、医療機関システム5の電子カルテシステム12等に格納された診療データについて、前記匿名化患者情報入出力装置14が、特定の患者3を識別できる個人情報を含まない匿名化されたデータ(匿名化診療データ)である。また、この診療データ取得機能42は、匿名化診療データを医療機関システム5の患者ID匿名化装置13によって暗号化された患者IDと共に取得する。ここで、患者3によっては、診療情報を医療機関4以外の第三者に開示することを拒否する場合も考えられるため、診療情報を取得する際に、分子生物学的解析センター2に提供すること(匿名化情報蓄積論理システム8に登録すること)に対する患者3の同意を示す情報を含めるのが好ましい。
【0041】
次に、診療補助情報生成論理システム9の診療補助情報作成依頼機能43は、医療機関システム5から取得した匿名化基礎診療データ及び分子生物学的解析論理システム17から取得した核酸解析結果を前記専門家端末7に送信して、当該解析結果に対する診療補助情報の作成を依頼するものである。この基礎診療データには、上記したように、担当の医療機関4や担当医師11の連絡先等の情報も含まれる。
【0042】
ここで、診療補助情報の作成に必要な情報のうち、患者3の個人情報を含む基礎診療データは、診療補助情報を依頼する度に、前記匿名化患者情報入出力装置14によって医療機関システム5の電子カルテシステム12から抽出され、匿名化された状態で診療支援情報提供システム1に送信される。そして、診療補助情報依頼エントリーとして、これらの必要情報が診療補助情報依頼IDや匿名化患者IDに関連付けられて、匿名化情報蓄積論理システム8に登録される(図3参照)。
【0043】
診療補助情報受信機能44は、図10に示すように、専門家端末7に対して、患者3の個人情報を含まない匿名化診療補助情報を入力するためのユーザインターフェース(I/F)50aと、患者の個人情報を含む個人情報入り診療補助情報を入力するためのユーザI/F50bとを独立して提供して、これらの診療補助情報を分離して取得するものである。これは、以下の理由による。
【0044】
すなわち、診療補助情報の生成に際しては、分子生物学的解析結果が患者の年齢や性別、特定の疾病などとの関連で異常値と認められる可能性がある場合等には、匿名化情報蓄積論理システム8に格納された情報だけでは十分な診療補助情報を生成できない。そのため、本実施形態の診療補助情報生成論理システム9は、診療補助情報依頼エントリー(依頼時に取得した基礎診療情報)に含まれる医療機関IDや担当医師IDを参照して、担当医師11と直接情報交換できる方法を提供する。具体的には、上記したように、医療機関マスタ30aや担当医師マスタ30bに定義された方法によるアクセス方法を専門家端末7に提示する。アクセス方法は、メールアドレス、電話番号(内線番号)及びアクセス可能時間等であり、医療機関マスタ30aに記載された優先連絡手段及び優先連絡先の定義情報に従って提示される。
【0045】
一方で、このように、専門医師6が医療機関4や担当医師11と直接情報交換することによって知徳した患者3の個人情報をそのまま診療補助情報に含めてしまうと、医師や医療機関以外の第三者である分子生物学的解析センター2が個人情報を取得することになり、個人情報保護の観点で好ましくない。
【0046】
そこで、本実施形態では、専門医師6が、担当医師11などに直接コンタクトして患者3の個人情報を知徳した場合でも、診療補助情報にその個人情報がむやみに混入しないように、個人情報を含まない匿名化診療補助情報を入力するためのユーザI/F50aと、患者の個人情報を含む個人情報入り診療補助情報を入力するためのユーザI/F50bとを独立して提供し、専門医師6が入力した情報を匿名化情報蓄積論理システム8に格納するかを容易に判別できることにした。そのため、前記匿名化診療補助情報入力用のユーザI/F50aとしては、ラジオボタンやプルダウンメニューのように、複数の入力項目毎に予め設定された定形の記号、数値、用語、若しくは文章からなる選択肢から選択して入力させ個人情報は入力できない設定にするのが好ましい。
【0047】
さらに、何れの入力欄50a、50bに入力された情報も、個人情報確認装置10が患者3の個人情報が含まれているかを確認した上で、受付番号などの患者3を特定できない識別情報に関連付けて匿名化情報蓄積論理システム8に格納するようにしている。個人情報が含まれていると判別された診療補助情報は、匿名化情報蓄積論理システム8には格納せず、医療機関システム5に報告する診療支援情報にも含めないようにするか、若しくは予め医療機関4から取得しておいた暗号鍵で暗号化した上で医療機関システム5に転送するようにするのが好ましい。また、診療支援情報とは別に担当医師11に直接通知したり、専門家端末7に「個人情報が含まれている」旨を通知するようにしてもよい。
【0048】
診療支援情報送信機能45は、専門家端末7から受信した匿名化診療補助情報及び分子生物学的解析論理システム17から取得した核酸解析結果を含む診療支援情報を所定のフォーマットに合成してレポートを作成し、通信ネットワークを介して医療機関システム5に送信するものである。このレポートを受信した医療機関システム5は、匿名化患者情報入出力装置14や患者ID匿名化装置13が電子カルテシステム12等を参照して対象の患者3や担当医師11などを特定し、電子カルテシステム12に格納する。なお、専門家端末7から個人情報入り診療補助情報I/F50bに入力された診療補助情報を取得した場合には、その情報を予め医療機関4から取得しておいた暗号鍵で暗号化して医療機関システム5に転送するようにしてもよい。
【0049】
個人情報確認装置10の個人情報監視機能46は、専門家端末7から入力・送信された診療補助情報に特定の患者3を識別できる個人情報が含まれるかをリアルタイムで監視するものである。具体的には、この個人情報監視機能46は、個人情報を含むと考えられる語句(人名等)を辞書マッチによってチェックし、個人情報の可能性があるテキスト情報が入力された場合に、専門家端末7に警告を発して専門医師6に注意を促す機能を提供する。また、個人情報を含む診療補助情報の受信を全て拒否したり、個人情報の種別や診療補助情報との関係等を考慮して選択的に受信することもできる。さらに、匿名化情報蓄積論理システム8に診療補助情報を登録する前に、診療支援情報提供システム1に登録された解析センター2内の個人情報管理責任者の端末(図示せず)に、登録内容に問題が無いことを確認するプロセスを提供するようにしてもよい。この個人情報管理責任者としては、専門医師マスタ30cに個人情報管理責任者を有することが登録された特定の専門医師6とすることも可能である。
【0050】
(フローチャート)
次に、図4〜図9のフローチャートを参照して、各システムや装置の具体的な動作を説明する。
【0051】
まず、図4は、医療機関システム5の患者ID匿名化装置13における匿名化患者ID生成の動作の例を説明したフローチャートである。
【0052】
この匿名化患者ID生成の動作は、医療機関システムが用いている患者IDの入力を受けて(S1)、患者ID匿名化プログラムが動作し(S2)、この患者ID匿名化プログラムが返す値を匿名化患者IDとして出力するものである(S3)。ここで、S2の患者IDの匿名化の方法としては、例えば、利用する匿名化患者IDのフォーマットに合う形式の乱数表を発生させる乱数表生成プログラムを実行し(S21)、生成した乱数表から匿名化患者IDを採番する(S22)。この乱数表生成プログラムの処理としては、例えば、メルセンヌ・ツイスターを用いる方法がある(Mersenne Twister with improved initialization (2002)、http://www.math.sci.hiroshima-u.ac.jp/~m-mat/MT/MT2002/mt19937ar.html)。
【0053】
メルセンヌ・ツイスターによる乱数表生成処理は、例えば、まず、seedとなる整数を設定して、100万個のメルセンヌ・ツイスターによる乱数を生成し(S210)、100万個の乱数をSHA(Federal Infromation Processing Standeards Publication 180-2 2002 August 1 Announcing the SECURE HASH STANDARD http://csrc.nist.gov/ publications/ fips/ fips180-2/ fips180-2.pdf)によりダイジェストに圧縮し(S211)、ダイジェストから整数を切り出し(S212)、得られた整数を100万以下にまとめる(S213)、という方法を採用できる。ここで、100万個の乱数をSHAによりダイジェストに圧縮する工程(S211)は、SHA-1の場合、160ビットのダイジェストを生成するので5個の乱数(合計5 x 5 [byte] x 8[bits] = 160 bits)から1つのダイジェストを生成する。また、ダイジェストからの整数の切り出し工程(S212)では、1つのダイジェストを20ビットごとに区切り、8個の整数を生成する。さらに、得られた整数を100万以下にまとめる工程(S213)は、前記生成した整数の最大値が1,048,576であるため、100万以下の値を使って1-100万の整数をシャッフルする。ここで、20ビット整数は160万個生成されることになるが、途中までしか使用しない。
【0054】
図5は、医療機関システム5の患者ID匿名化装置13が匿名化患者IDと患者IDとを照合する処理のフローチャートである。この処理を説明する前に、まず、匿名化患者IDの管理方法について説明する。
【0055】
専門医師6が診療補助情報を作成(入力)する際に、患者3の症状などを担当医師11に直接問い合わせる場合において、この専門医師6からは、医療機関システム5の患者ID匿名化装置13によって匿名化された患者IDしか取得できないため、医療機関システム5側で、匿名化患者IDから問い合わせ対象の患者3を特定する必要がある。
【0056】
そのための方法として、例えば、患者ID匿名化装置13が生成した匿名化患者IDをカルテ情報の一部として電子カルテシステム12等に保存しておいてこれを参照する第1の方法や、カルテ情報とは別に医療機関システム5で匿名化患者IDと患者IDとの対応表を保存してこれを参照する第2の方法、若しくは患者ID匿名化装置13において連結可能匿名化アルゴリズムを用いて一連の候補患者IDを匿名化して複数の匿名化患者IDを生成し、これらの中から問い合わせ対象の匿名化患者IDと一致するものを探索する第3の方法、などが考えられる。
【0057】
第1の方法は、匿名化患者IDを、患者IDやこれに関連付けて保存される他の個人情報と同等のセキュリティにおいて管理できるため、個人情報保護の観点では好ましいと言える。しかし、医療機関システム5内に当該匿名化患者IDを患者IDに連結して保存し、利用可能に管理する仕組みを別途構築する必要があり、システムの設計変更が必要になり導入コストやセキュリティ維持のランニングコストが嵩むという問題がある。
【0058】
また、第2の方法は、電子カルテシステム12等の既存の医療機関4内のシステムと独立して管理できるため、導入時の問題は解消する。しかし、個人情報の厳重な管理というランニングコストの問題は依然として残る。
【0059】
一方、第3の方法では、医療機関システム5から独立して導入・管理でき、また患者ID匿名化装置13自体や、この患者ID匿名化装置13において利用する匿名化パラメータを管理するだけで個人情報のセキュリティを容易に維持できるため、ランニングコストも低く抑えることが可能である。
【0060】
図5は、このような連結可能匿名化アルゴリズムを用いた管理手法の処理を示している。 この方法においては、匿名化患者IDを取得した後(S40)、医療機関システム5が候補となる対象患者IDの集合を抽出する(S41)。例えば、専門医師6からの問い合わせに対して、基礎診療情報に含まれる担当医師11のID等に基づいて、その医師11が担当した全ての患者3のIDの集合を電子カルテシステム12等から取得する。抽出された候補患者のIDを一件ずつ取り出して(S42)、患者ID匿名化装置13の匿名化プログラムによって処理し(S43)、匿名化患者IDを取得する(S44)。得られた匿名化患者IDが、最初に与えられた匿名化患者ID(問い合わせ対象のID)と不一致であれば次の患者IDを処理し(S45のNo)、一致すれば(S45のYes)、処理中の患者IDを回答(出力)する(S46)。
【0061】
図6は、医療機関システム5の匿名化患者情報入出力装置14の動作を示すフローチャートである。
この匿名化患者情報入出力装置14は、担当する患者3について医療支援情報を取得したい担当医師11が医療機関システム5に接続可能な端末から入力した当該患者3のIDを受け付けると(S50)、前記患者ID匿名化装置13に患者IDを渡して匿名化患者IDを得る(S51)。続いて、医療機関システム5(電子カルテシステム12)からこの患者IDに対応した患者の基礎診療情報等を取得し(S52)、この情報に匿名化患者ID及び診療補助情報依頼IDを付して匿名化患者情報を生成し(S53)、診療支援情報提供システム1の匿名化情報蓄積論理システム8に送信する(S54)。
【0062】
図7は、分子生物学的解析論理システム17の動作を示すフローチャートである。以下の例では、図1と異なり、医療分析機関15の核酸分析装置16から送信された核酸分析結果を、まず診療支援情報提供システム1の匿名化情報蓄積論理システム8が受信して格納し、この匿名化情報蓄積論理システム8から分子生物学的解析論理システム17に対して解析を依頼する場合を説明する。
【0063】
まず匿名化情報蓄積論理システム8が診療補助情報依頼エントリーを受信すると、核酸解析依頼レコードとして、診療補助情報依頼ID32と匿名化分析情報35(分析結果X2)とを含む情報(図3参照)を分子生物学的解析論理システム17に送付する。分子生物学的解析論理システム17は、この核酸解析依頼レコードを受信すると(S60)、核酸解析依頼レコードから核酸分析結果を取り出し(S61)、核酸解析装置によって核酸解析データベース60を利用して解析を実行し(S62)、得られた核酸解析結果を匿名化情報蓄積論理システム8に返送する(S63)。
【0064】
ここで、核酸解析としては、例えば、転写物頻度情報、特定転写物存在情報、特定転写構造情報等に基づく薬剤効果予測、疾患可能性調査、健康・疾患状態調査、疾患リスク調査、再発可能性調査等がある。
【0065】
例えば、薬剤効果予測の1つの例においては、事前に収集されて核酸解析データベース60に格納された薬剤効果が既知の患者の生体サンプルにおける転写物頻度情報と薬の効果情報とに基づいて、統計学的解析によって生成した判別器をこの核酸解析装置として構成でき、診療補助情報の依頼に係る対象患者3の生体サンプルにおける転写物頻度から、薬剤投与における効果の予測として、有効、無効、判別不能の判定を行うものである。
【0066】
図8は、前記核酸解析データベース60の情報を取得する際のフローチャートである。
上記した核酸解析データベース60に格納される転写物頻度情報と薬の効果情報とは、患者3に対する診療補助情報の生成とは独立したプロセスで生成されるものである。
【0067】
典型的な例としては、核酸解析データベース60用の情報も医療機関システム5の電子カルテシステム12などに格納されたデータを利用でき、不特定の患者の情報や核酸分析情報に加えて、本システム1によって提供された診療支援情報に基いて行われた診療結果の情報も含む。すなわち、過去に核酸分析を行った患者の情報を現在の診療に利用するものであり、情報の提供に関しては、患者の了解(インフォームドコンセント)があることが前提となる。そのため、核酸解析データベース用の情報取得においては、対象患者IDの入力(S70)の後、対象患者3の同意書の有無を確認するプロセスを用意する(S71)。また、情報提供に同意した患者3に関しても個人情報の匿名化は必要であるため、匿名化患者IDの取得(S72)、患者情報の取得(S73)、診療結果情報の取得(S74)の後、診療支援情報の依頼時と同様に、匿名化患者情報を生成した上で(S74)、前記分子生物学的解析論理システム17に送付する。
【0068】
分子生物学的解析論理システム17に送付された匿名化患者情報は、核酸解析データベース60に蓄積され、定期的にあるいは所定のスケジュールに従って、核酸解析情報生成プログラム61によって、判別分析等の統計解析やその他の手法によって、核酸解析に必要な情報に加工される。
【0069】
図9は、診療補助情報生成論理システム9の動作を示すフローチャートである。
専門医師6は、専門家端末7から、特定IPアドレス又はドメインからのユーザIDやパスワード入力によるログイン等、セキュリティが確保された状況下で、前記診療補助情報生成論理システム9にアクセスする。
【0070】
この診療補助情報生成論理システム9は、専門家端末7からのアクセスを受けると、匿名化情報蓄積論理システム8から、当該専門医師6に割り当てられた診療補助情報依頼エントリーを取得する(S80)。これにより、専門医師6は、専門家端末7において診療補助情報依頼エントリーをディスプレイで閲覧でき(S81)、匿名化患者情報、匿名化解析情報を参照して専門的見地からの考察を行う。考察の結果は、まず、図10に示す診療補助情報生成論理システム9の提供する定型コメント入力ボックス等に入力し(S82)、さらに、定型コメントのみで説明可能であるかどうかを判断し(S83)、定型コメントのみで説明可能でない場合には(S83のNo)、担当医師11との協議が必要であるかどうかを判断する(S84)。
【0071】
担当医師11との協議が必要な場合は(S84のYes)、診療補助情報生成論理システム9の提供するユーザインターフェースに従い、電子メールもしくは電話等により、担当医師11との協議を行う(S85)。担当医師11との協議が必要でない場合は(S84のNo)専門医師6の判断だけを、また担当医師11と協議した場合はその協議を踏まえた判断結果を、図10に示す診療補助情報生成論理システム9の提供するユーザインターフェースの提供する自由コメント入力欄に入力する(S86)。自由コメントが入力された場合は、専門医師6が担当医師11との協議の過程で知り得た患者3の個人情報がコメント中に混入することが想定される。そのため、このような自由コメントが診療補助情報生成論理システム9から匿名化情報蓄積論理システム8に送信される間に、前記個人情報確認装置10によって、患者3の個人情報が入っていないことを確認する(S87)。問題なければ、匿名化コメントとして、前記匿名化情報蓄積論理システム8に診療補助情報依頼エントリーに関連付けて登録する(S88)。
【0072】
(診療補助情報生成ユーザI/F)
最後に、図10を参照して、診療補助情報生成ユーザI/Fの例を説明する。この診療補助情報生成ユーザI/F70は、主として、定型コメント入力欄71、匿名化自由コメント入力欄72、非匿名化自由コメント入力欄73、診療補助情報依頼エントリー情報表示欄74、診療補助情報生成論理システム情報表示欄75、送信ボタン76、及びキャンセルボタン77で構成される。
【0073】
定型コメント入力欄71は、診療補助情報生成論理システム9が提供する定型コメントを入力するユーザインターフェースを提供する。定型コメントの中には、診療補助情報生成論理システム9が予め値を設定して、専門医師6に確認を求めたりデフォルト値とするものがある。図中の質問項目1では、匿名化解析情報を元に、診療補助情報生成論理システム9が規定値を設定して表示している。予めラジオボタンに値をセットするほか、専門医師6が値を変更した場合にも診療補助情報生成論理システム9が設定した規定値がどれであったかが識別できるように、アスタリスク等により明示されることが望ましい。
【0074】
専門医師6に入力をもとめる項目に関しては、図中の質問項目2の例の様に、デフォルト値をセットせず、何れかの選択肢(値)が選択されるまで送信ができない状態とすることが望ましい。
【0075】
匿名化自由コメント入力欄72及び非匿名化自由コメント入力欄73には、夫々匿名化自由コメント入力欄50a及び非匿名化自由コメント入力欄50bを用意し、専門医師6が自由コメントを入力することを可能とする。このように、自由コメント入力欄を匿名化と非匿名化とに明示的に分けることにより、専門医師6に匿名化情報と非匿名化情報の扱いを認識させることができる。非匿名化自由コメント入力欄73にはさらに、情報種別選択入力メニュー78および情報送付先選択メニュー79が設けられている。情報種別選択入力メニュー78は、非匿名化情報がどのような内容の個人情報を含むかの選択を可能とする。例えば、非匿名化情報を担当医師11の端末や医療機関システム5に電子メールで送付する場合は、情報種別選択入力メニュー78で選択した情報の種別を元に、電子メールのサブジェクトを自動生成することが望ましい。情報送付先選択メニュー79では匿名化情報蓄積論理システム8の医療機関マスタ30a及び担当医師マスタ30bに定義された情報にもとづいて、非匿名化情報の送付先を選択可能とする。
【0076】
診療補助情報依頼エントリー情報表示欄74は、現在処理中の診療補助情報依頼エントリーに関する情報を表示する。
【0077】
診療補助情報生成論理システム情報表示欄75は、匿名化情報蓄積論理システム8が管理するログイン中の専門医師6の情報や、診療支援情報提供システム1に関するシステム管理情報を表示する。
【0078】
上記ユーザI/F70により入力した情報は、送信ボタン76によって送信したり、キャンセルボタン77によりキャンセルすることができる。
【0079】
(変形例)
なお、本発明は上記した実施形態に限定されず、種々の変形が可能である。
【0080】
例えば、上記した実施形態では、専門家として疾病ごとの専門医師6を例示したが、分子情報の分析や解析を専門とする、大学や研究機関などの医師以外の研究者や技術者などでもよい。また、複数の専門家に診療補助情報を依頼してもよい。この場合は、同一分野の複数の専門家に依頼して「セカンドオピニオン」を得たり、異なる分野の複数の専門家から夫々の立場でコメントを得ることができる。さらに、専門家6が大学や研究機関等に所属していて分子生物学的解析システムで解析できる環境にある場合には、専門家端末7に基礎診療情報と核酸分析結果とを送信して、専門家6の方で必要に応じて解析結果を取得してこれに基づいて診療補助情報を生成させることもできる。
【0081】
また、前記医療機関4は、複数の医療機関の何れかで受診した患者の診療データを前記医療機関システムを介して他の医療機関でも共有するグループに所属していてもよい。この場合は、本システム1の申込受付機能40は、患者3が受診した医療機関4か、その医療機関4が属するグループの他の医療機関のシステムから申込みを受け付けるようにする。
【0082】
さらに、各施設内の設備やコスト負担、責任分担、業務形態やビジネス展開などに応じて、分子生物学的解析センター2、医療機関システム5、及び医療分析機関15で行う処理を以下のように変更することもできる。
1)医療機関システム5内に核酸分析装置16を設置し、核酸分析結果と患者の基礎診療データの両方を、医療機関システム5から診療支援情報提供システム1に送信する。
2)分子生物学的解析センター2内に核酸分析装置16を設置し、医療機関4で採取された患者3の生体サンプルX1をオフラインで取得して、分子生物学的解析センター2で核酸分析を実行する。
3)医療機関4の内部に、本システム1の匿名化情報蓄積論理システム8、診療補助情報生成論理システム9、及び個人情報確認装置10を設置し、分子生物学的解析センター2には分子生物学的解析論理システム17だけを設置する。この場合も、医療機関システム5から本システム1に対しては、匿名化された患者IDや患者情報だけが送信されるようにする。
4)上記した実施形態と同様に、外部の医療分析機関15が核酸分析を実行するが、分析結果を一旦医療機関システム5に返送し、核酸分析結果と患者の基礎診療データの両方を、医療機関システム5から診療支援情報提供システム1に送信する。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】図1は、本発明の実施形態に係るネットワーク構成を示す図である。
【図2】図2は、同、診療支援情報提供システムの概略構成を示すブロック図である。
【図3】図3は、同、匿名化解析情報DBに格納されるデータの構成を模式的に示す図である。
【図4】図4は、同、患者ID匿名化装置の動作フローを示す図である。
【図5】図5は、同、匿名化患者IDと患者IDとの照合処理の工程を示す図である。
【図6】図6は、同、匿名化患者情報入出力装置の動作フローを示す図である。
【図7】図7は、同、分子生物学解析論理システムの動作フローを示す図である。
【図8】図8は、同、核酸解析データベース構築フローを示す図である。
【図9】図9は、同、診療補助情報生成論理システムの動作フローを示す図である。
【図10】図10は、同、診療補助情報生成論理システムのユーザインターフェースの例を示す図である。
【符号の説明】
【0084】
1…診療支援情報提供システム
2…分子生物学的解析センター
3…患者
4…医療機関
5…医療機関システム
6…専門家(専門医師)
7…専門家端末
8…匿名化情報蓄積論理システム
9…診療補助情報生成論理システム
10…個人情報確認装置
11…担当医師
12…電子カルテシステム
13…ID匿名化装置
14…匿名化患者情報入出力装置
15…医療分析機関
16…核酸分析装置
17…分子生物学的解析論理システム
21…CPU
22…システムバス
23…RAM
24…外部記憶装置
25…入出力インターフェース
26…入力装置
27…出力装置
28…通信デバイス
30…匿名化解析情報データベース(DB)
30a…医療機関マスタテーブル
30b…担当医師マスタテーブル
30c…専門医師マスタテーブル
31…プログラム格納部
31a…医療機関ID
31b…担当医師ID
31c…専門医師ID
32…診療補助情報依頼ID
33…匿名化患者ID
34…匿名化患者情報
35…匿名化分析情報
36…匿名化解析情報
37…匿名化コメント
40…申込受付機能
41…核酸分析結果取得機能
42…診療データ取得機能
43…診療補助情報作成依頼機能
44…診療補助情報受信機能
45…診療支援情報送信機能
46…個人情報監視機能
50a…匿名化自由コメント入力欄
50b…非匿名化自由コメント入力欄
60…核酸解析データベース
61…核酸解析情報生成プログラム
71…定型コメント入力欄
72…匿名化自由コメント入力欄
73…非匿名化自由コメント入力欄
74…診療補助情報依頼エントリー情報表示欄
75…診療補助情報生成論理システム情報表示欄
76…送信ボタン
77…キャンセルボタン
78…情報種別選択入力メニュー
79…情報送付先選択メニュー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者に医療サービスを提供する医療機関のコンピュータシステム(医療機関システム)と、特定の疾病の治療方法や投与する医薬及び/若しくは生体サンプルの分子生物学的解析について高度な専門的知識を有する専門家の通信端末(専門家端末)と、が通信ネットワークを介して夫々接続可能な診療支援情報提供システムによって実行される方法であって、
通信ネットワークを介して、前記医療機関システムから患者の基礎診療データを取得して診療支援情報の提供申込みを受け付ける申込受付工程と、
医療機関で採取された患者の核酸を含む生体サンプルについて、核酸分析装置が核酸の情報を分析した結果を取得する核酸分析結果取得工程と、
取得した核酸分析結果及び前記基礎診療データを前記専門家端末に送信して当該分析結果に対する診療補助情報の作成を依頼する診療補助情報作成依頼工程と、
専門家端末から核酸分析結果に対する診療補助情報を受信する診療補助情報受信工程と、
受信した診療補助情報及び前記核酸分析結果を含む診療支援情報を作成し、通信ネットワークを介して医療機関システムに送信する診療支援情報送信工程と
を備えたことを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、
前記核酸分析結果取得工程は、核酸分析装置としての核酸解析装置が特定の疾病、薬剤、若しくは治療の種別との関係で解析した核酸解析結果を核酸分析結果として取得するものであることを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法であって、
前記核酸分析結果取得工程は、核酸解析装置が、疾病、症状、薬剤、若しくは治療の種別ごとの核酸分析データと患者の診療データとが関連付けて格納された核酸解析データベース(核酸解析DB)を参照すると共に、この核酸解析DBに格納されたデータを解析することで得られる解析パラメータを利用した解析ソフトウェアを利用して、患者の生体サンプルの核酸の状態を解析した結果を取得するものであることを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項3に記載の方法であって、
さらに、前記診療支援情報を送信した後に、当該医療機関システムから、診療支援情報の対象者である患者に対して医療機関が診療した診療データを取得して前記核酸解析DBに格納する診療データ取得工程を備えた
ことを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項4に記載の方法であって、
前記診療データ取得工程は、医療機関システムに格納された診療データのうち、特定の患者を識別できる個人情報を含まない匿名化された診療データ(匿名化診療データ)を取得し、この匿名化診療データを前記核酸解析DBに格納することを特報とする方法。
【請求項6】
請求項4に記載の方法であって、
前記診療データ取得工程は、医療機関システムから、対象患者の身体情報、既往歴、血液学的検査・生化学的検査・免疫学的検査・尿検査・X線検査の結果、患者に投与した薬の量、頻度、回数、投与後の患者の症状などを含む診療データを、医療機関システムによって暗号化された患者IDと共に取得することを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項4記載の方法であって、
前記診療データ取得工程は、医療機関システムから、診療データを核酸解析DBに登録することに対する患者の同意を示す同意情報を取得した場合に当該診療データを核酸解析DBに登録することを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項1に記載の方法であって、
前記申込受付工程は、前記医療機関システムから、対象患者を診療する医療機関及び/若しくは担当医師の電話番号、FAX番号、電子メールアドレスなどの連絡先の情報を基礎診療データと共に取得するものであり、
前記診療補助情報作成依頼工程は、医療機関システムから取得した医療機関及び/若しくは担当医師の連絡先の情報も専門家端末に送信する
ことを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項1に記載の方法であって、
前記申込受付工程は、基礎診療データとして、特定の患者を識別できる個人情報を含まない匿名化されたデータ(匿名化基礎診療データ)を取得するものであり、
前記診療補助情報作成依頼工程は、匿名化基礎診療データを専門家端末に送信するものであり、
前記診療補助情報受信工程は、
専門家端末から入力・送信された診療補助情報に特定の患者を識別できる個人情報が含まれるかを所定のタイミングで判別する個人情報判別工程と、
個人情報が含まれていると判別された場合に、専門家端末に警告を発する警告工程とを備えた
ことを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項1に記載の方法であって、
前記診療補助情報受信工程は、専門家端末に対して、患者の個人情報を含まない匿名化診療補助情報を入力するためのユーザインターフェース(I/F)を提供して匿名化診療補助情報を取得するものであり、
前記診療支援情報送信工程は、匿名化診療補助情報及び前記核酸分析結果を含む診療支援情報を作成して医療機関システムに送信する
ことを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項10記載の方法であって、
前記診療補助情報受信工程は、匿名化診療補助情報入力用のI/Fと患者の個人情報を含む個人情報入り診療補助情報を入力するためのI/Fとを独立して提供して、これらの診療補助情報を分離して取得するものであり、
前記診療補助情報受信工程は、個人情報入り診療補助情報I/Fから入力された診療補助情報を取得した場合に、その情報を予め医療機関から取得しておいた暗号鍵で暗号化して医療機関システムに転送する
ことを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項11記載の方法であって、
前記診療補助情報受信工程は、匿名化診療補助情報入力用のI/Fとして、複数の入力項目毎に予め設定された定形の記号、数値、用語、若しくは文章からなる選択肢から選択して入力させ個人情報は入力できないI/Fを提供することを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項10記載の方法であって、
さらに、前記匿名化診療補助情報入力用のI/Fから入力された匿名化診療補助情報を患者の匿名化された識別情報に関連付けて匿名化診療補助情報データベース(DB)に登録すると共に、個人情報入り診療補助情報I/Fから入力された診療補助情報を登録しない診療補助情報格納工程を備えたことを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項1記載の方法であって、
前記医療機関は、複数の医療機関の何れかで受診した患者の診療データを前記医療機関システムを介して他の医療機関でも共有するグループに所属しており、
前記申込受付工程は、患者が受診した医療機関か、その医療機関が属するグループの他の医療機関のシステムから申込みを受け付ける
ことを特徴とする方法。
【請求項15】
患者に医療サービスを提供する医療機関のコンピュータシステム(医療機関システム)と、特定の疾病の治療方法や投与する医薬及び/若しくは生体サンプルの分子生物学的解析について高度な専門的知識を有する専門家の通信端末(専門家端末)と、が通信ネットワークを介して夫々接続可能な診療支援情報提供システムであって、
通信ネットワークを介して、前記医療機関システムから患者の基礎診療データを取得して診療支援情報の提供申込みを受け付ける申込受付手段と、
医療機関で採取された患者の核酸を含む生体サンプルについて、核酸分析装置が核酸の情報を分析した結果を取得する核酸分析結果取得手段と、
取得した核酸分析結果及び前記基礎診療データを前記専門家端末に送信して当該分析結果に対する診療補助情報の作成を依頼する診療補助情報作成依頼手段と、
専門家端末から核酸分析結果に対する診療補助情報を受信する診療補助情報受信手段と、
受信した診療補助情報及び前記核酸分析結果を含む診療支援情報を作成し、通信ネットワークを介して医療機関システムに送信する診療支援情報送信手段と
を備えたことを特徴とするシステム。
【請求項16】
患者に医療サービスを提供する医療機関のコンピュータシステム(医療機関システム)と、特定の疾病の治療方法や投与する医薬及び/若しくは生体サンプルの分子生物学的解析について高度な専門的知識を有する専門家の通信端末(専門家端末)と、が通信ネットワークを介して夫々接続可能なコンピュータシステムの記憶装置に格納され、このコンピュータシステムに、診療支援情報を提供するための処理を実行させるコンピュータプログラムであって、
通信ネットワークを介して、前記医療機関システムから患者の基礎診療データを取得して診療支援情報の提供申込みを受け付ける申込受付工程と、
医療機関で採取された患者の核酸を含む生体サンプルについて、核酸分析装置が核酸の情報を分析した結果を取得する核酸分析結果取得工程と、
取得した核酸分析結果及び前記基礎診療データを前記専門家端末に送信して当該分析結果に対する診療補助情報の作成を依頼する診療補助情報作成依頼工程と、
専門家端末から核酸分析結果に対する診療補助情報を受信する診療補助情報受信工程と、
受信した診療補助情報及び前記核酸分析結果を含む診療支援情報を作成し、通信ネットワークを介して医療機関システムに送信する診療支援情報送信工程と
をコンピュータに実行させることを特徴とするコンピュータプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−199193(P2009−199193A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−38088(P2008−38088)
【出願日】平成20年2月19日(2008.2.19)
【出願人】(501002172)株式会社DNAチップ研究所 (33)