説明

試料の密度の正確な測定方法

【課題】密度計セルを用いた試料密度の正確な測定方法
【解決手段】接地され、試料で満たされ、強磁性体部材がついたUチューブと、キャパシタを規定するためにUチューブと相対的に電位をもって維持される絶縁された伝導性読み取り板と、電磁励磁巻き線とを備えた測定セルがついた密度計を用いた試料の密度の正確な測定方法は、同期された矩形励磁信号がUチューブに連続的に伝送され、それに共振周波数で正弦波共振信号によって表わされる振動を引き起こし、共振周波数はキャパシタの端子での電圧の変動から決定され、試料の密度の近似値がそれから推論され、矩形励磁信号のパルス幅は、共振信号の予め規定された一定振幅を維持するように制御され、試料の粘性に依存する補正率がそれから推論される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料の密度の正確な測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
工業プロセスの状況において果たされるべき物理的な測定の、最も頻繁に必要なものは密度の数値である。
【0003】
この目的のために、製造業者らは、種々の原理に基づくさまざまな密度計を市販しており、それらの全てに、利点(長所)と不利点(欠点)がある。
【0004】
試料の密度を測定するために満足の行く方法で使用され得る密度計は、次の要素を有する測定セルを備えている。
【0005】
非常に良好な熱伝導性を持ち、その内側の部分でストッパによって閉じられた測定チャンバを規定する実質的な筺体と、
接地され、ストッパに固定されて、分析される試料で満たされ、測定チャンバの内部に延在するUチューブと、
Uチューブに相対的に電位差をもって維持され、キャパシタを規定するためにチューブと面する位置にストッパに固定された、絶縁された伝導性読み取り板と、
強磁性体部材と直角に筺体のハウジング内に取り付けられた電磁励磁巻き線と、
巻き線を動作するための手段と、キャパシタの端子での電圧を読み取るための手段。
【0006】
この型の密度計のセルのUチューブは、一方では、その中間部で強磁性体部材がついている中央肢と、他方では、測定チャンバから外側へ突出して、Uチューブ内に分析される試料の注入と、その試料の排出とを可能にする2つの側方肢とを有する。
【0007】
そのような密度計を用いて試料の密度を測定する原理は、Uチューブを共振周波数で振動させることと、キャパシタの端子での電圧の変動から周波数を決定することとから成る。
【0008】
共振周波数は、分析される試料の密度として、それ自体知られている標準方程式に基づいて、密度計の予備キャリブレーションから第1の近似値を計算するのを可能にする。
【0009】
しかしながら、そのような計算は、e−4g/mlより大きい精度が要求されないときにのみに許容できる。何故なら、この計算は、試料の粘性によってもたらされる減衰効果を考慮に入れていないからである。
【0010】
種々のアルゴリズムが、既に、その粘性パラメータを考慮に入れるために提案されているが、それらはすべて、時間がかかったりわずらわしい、幾つかの測定を必要とするという不利点がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、そのような不利点を克服するために好適な、上記型の密度計セルを用いて試料の密度の正確な測定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によれば、この方法の第1のステップは、セルのUチューブの中に分析される試料を注入することから成る。
【0013】
次のステップは、Uチューブに連続的に同期をとった矩形励磁信号を伝達して、チューブを共振周波数で振動させるために、巻き線を駆動するための手段を動作することから成る。
【0014】
その振動は、キャパシタの端子での電圧に一定の変動をもたらし、その変動は、オシオグラフ上に、正弦波共振信号V=f(t)によって表わされる。
【0015】
励磁信号は、共振信号の零に相対的に集中される。
【0016】
より具体的に言うと、流体の密度dは、近似的に、共振信号から、従ってキャパシタの端子での電圧の変動から、決定され得る、共振周期Tの自乗の線形関数であることが知られている。
【0017】
与えられた密度計に対して、この直線d=f(Tは、密度が即知の製品から2つの基準点を得ることから成る、予備キャリブレーションステップにおいて作成され得る。
【0018】
キャリブレーションは、一般的に、Uチューブの中に純水と乾燥空気を注入することによって果たされる。
【0019】
分析される試料の密度の近似値は、予備キャリブレーションステップにおいて作成された直線d=f(Tから読まれ得る。
【0020】
しかしながら、この近似密度値は、試料の粘性を考慮に入れていないので、間違っている。
【0021】
Uチューブの振動を表わす正弦波共振信号を出来るだけ「きれい」にするため、かつ、その振幅を時間とともに減少させないために、矩形励磁信号、これはその振幅を維持するために供給されるエネルギを伝送する、は、分析される試料の粘性が強くなるほど、大きくなる幅を持たなければならない。
【0022】
その要件を考慮に入れるために、本発明によれば、共振信号の振幅を予め規定された一定値に維持するように、矩形励磁信号のパルス幅を監視し制御することを提案する。
【0023】
そのように調整されたパルス幅は、本発明による方法の他のステップにおいて、分析される試料の粘性に依存する補正率を決定するのを可能にする。
【0024】
それから、試料の実際の密度は、前に決定された密度の近似値と補正率に基づいて計算され得る。
【発明の効果】
【0025】
従って、本発明による方法は、一方では、分析される試料の密度の近似値と、他方では、その試料の粘性に依存する補正率とを同時に得ることを可能するので、直接的に使用され得、それらの値と率とは、試料の実際の密度を最終のステップにおいて正確に計算するのを可能にする、という利点ある。
【0026】
本発明に関する方法の特徴を、添付の制限されない図面を参照して以下にさらに詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明に従って使用される密度計の測定セルの構成を示す図である。
【図2】本発明による方法が乾燥空気によって形成された試料の分析の場合に使用されるときに、そのような密度計から得られたオシオグラムの一例を示す。
【図3】本発明による方法が密度d=0.9g/mlの弱い粘り気のある試料の分析の場合に使用されるときに、そのような密度計から得られたオシオグラムの一例を示す。
【図4】本発明による方法が密度d=0.9g/mlの比較的強い粘り気のある試料の分析の場合に使用されるときに、そのような密度計から得られたオシオグラムの一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1によると、密度計の測定セルは、非常に良好な熱伝導性を持つ実質的な筺体を備え、その筺体は、破線によって図表で示され、その内側の部分で、温度自動調節のチャンバ1を規定する。
【0029】
温度自動調節のチャンバ1は、その上側の部分で、ストッパ11によって閉じられている。
【0030】
温度自動調節のチャンバ1は、その内側の部分で、Uチューブ2を含み、Uチューブは、接地され、中央肢2と、2つの側方肢2,2とを備え、側方リムは、中央肢2から垂直に上方へ延在している。
【0031】
2つの側方肢2,2は、それらの自由端でストッパ11に固定され、矢印Aの方向に注入口4を介して分析される試料の注入を可能にし、かつ、矢印Bの方向に排出口5を介してその試料の排出を可能にするために、温度自動調節のチャンバ1から外側へ突出している。
【0032】
Uチューブ2の中央肢2は、その中間部で、強磁性体部材3が備えられており、この部材の機能は、後で説明する。
【0033】
温度自動調節のチャンバ1は、また、その内側の部分で、絶縁された伝導性読み取り板6を含む。
【0034】
同様に、Uチューブ2と面する位置でストッパ11に固定された、読み取り板6は、絶えずチューブと相対的に電位差をもって維持され、キャパシタを規定するように、高電圧源7に接続されている。
【0035】
電磁励磁巻き線8は、強磁性体部材3と直角に、Uチューブ2の中央リム2と面して取り付けられている。
【0036】
励磁巻き線8は、コントローラ10によって、それが連続的にUチューブ2に、より詳しくは、強磁性体部材3に、チューブを共振周波数で振動させる同期をとった矩形励磁信号を伝送するように、駆動される。
【0037】
振動は、キャパシタ2,6の端子に、正弦波共振信号V=f(t)によって表わされる電圧において一定の変動をもたらす。
【0038】
共振信号は、その周期が分析される試料の密度の関数であるが、増幅器9に伝送され、それがオシオグラム上で読み取るのを可能にするために、制御点aで取られる。
【0039】
正弦波共振信号は、また、コントローラ10に連続的に伝送され、コントローラは、正弦波共振信号の振幅を予め規定した一定値に維持するために、励磁巻き線8へ伝送される矩形励磁信号のパルス幅を制御する。
【0040】
そのように調整された矩形励磁信号は、その幅は分析される試料の粘性の関数であるが、それをオシオグラム上で読み取るのを可能にするために、制御点bで取られる。
【0041】
そのようにして得られたオシオグラムは、図2、図3、および図4に示される。
【0042】
オシオグラムの各々において、正弦波共振信号と矩形励磁信号とは、上側の部分で、2乃至4の振動周期で表わされ、下側の部分で、10倍に拡大して表わされている。
【0043】
従って、各場合において、一方では、正弦波共振信号の周期tを、他方では、矩形励磁信号のパルス幅tを測定することが可能であった。
【0044】
図2は、乾燥空気のオシオグラムを示している。すなわち、試料は、Uチューブに注入されておらず、t=2.9e−3秒、およびt=2.5e−4秒である。
【0045】
試料を含まないUチューブの質量は、そのとき、最小であり、従って、共振周波数は最大で、継続時間t、tは、また、最小である。
【0046】
図3は、密度d=0.9g/mlの弱い粘り気のある試料のオシオグラムを示しており、t=3.8e−3秒、およびt=3.1e−4秒である。
【0047】
図2に示された場合と比較すると、チューブの質量は大きく、従って、共振周波数は低い。
【0048】
加えて、振動エネルギの放散が大きく、その結果として、コントローラ10は、振幅における低下を補償するために、矩形励磁信号のパルス幅を増加しなければならない。
【0049】
図4は、密度d=0.9g/mlのより強い粘り気の試料のオシオグラムを示しており、t=3.8e−3秒、およびt=4.8e−4秒である。
【0050】
図3および図4に対応するオシオグラムにおいて測定された共振周波数は、Uチューブに注入された試料が同じ密度を持つので、同じである。
【0051】
他方、図4によれば、注入された試料の粘性を考慮に入れて、振動エネルギの放散は最大であり、その結果として、矩形励磁信号のパルス幅は、また、振幅における減少を補償するのを可能にするために、最大である。
【符号の説明】
【0052】
1 温度自動調節のチャンバ
2 Uチューブ
中央肢
側方肢
3 強磁性体部材
4 注入口
5 排出口
6 絶縁された伝導性読み取り板
7 高電圧源
8 電磁励磁巻き線
9 増幅器
10 コントローラ
11 ストッパ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定セルがついている密度計を用いた試料の密度の正確な測定方法であって、前記測定セルは、
非常に良好な熱伝導性を持ち、その内側の部分でストッパ(11)によって閉じられた測定チャンバ(1)を規定する実質的な筺体と、
接地され、分析される前記試料で満たされ、前記測定チャンバ(1)の内部に延在するUチューブ(2)であって、該Uチューブ(2)は、その中間部で強磁性体部材(3)を備えた中央肢(2)と、それらの自由端で前記ストッパに固定され、前記測定チャンバ(1)から外側へ突出して、前記Uチューブ(2)内で分析される前記試料の注入と、該試料の排出とを可能にする2つの側方肢(2,2)とを有するUチューブと、
前記Uチューブ(2)と相対的に電位をもって維持され、キャパシタを規定するために前記チューブ(2)と面する位置で前記ストッパ(11)に固定された、絶縁された伝導性読み取り板(6)と、
前記強磁性体部材(3)と直角に前記筺体のハウジングに取り付けられた強磁性励磁巻き線(8)と、
前記巻き線を駆動するための手段と、前記キャパシタの容量を読み取るための手段と、
を備え、前記方法は、
分析される前記試料が前記Uチューブ(2)内に注入され、
前記巻き線を駆動するための手段が、前記Uチューブ(2)に連続的に同期した矩形励磁信号を伝送して、前記チューブに共振周波数で正弦波共振信号によって表わされる振動を引き起こさせるように、動作され、
前記共振周波数は、前記キャパシタ(2,6)の端子での電圧における変動から決定され、分析される前記試料の密度の近似値が、それ自体知られている標準方程式に基づいてそれから推論され、
前記矩形励磁信号のパルス幅は、前記共振信号の予め規定された一定振幅を維持するように制御され、分析される前記試料の粘性に依存する補正率がそれから推論され、
分析される前記試料の実際の密度が、前に決定された密度の近似値と前記補正率とに基づいて計算される、
試料の密度の正確な測定方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2012−13692(P2012−13692A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−139011(P2011−139011)
【出願日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(511153013)