説明

試料の検出に先立ってガスを除去するイオンクロマトグラフィー装置及び方法

【課題】試料の検出に先立ってガスを除去する、サプレッサー方式イオンクロマトグラフィーの方法及び装置を提供すること。
【解決手段】本発明の一つの観点では、移動相のサプレッションから生じる副生物のガスを、検出器における検体イオンの検出に先立って除去する。他の観点では、二酸化炭素ガスの除去によって、サプレッションを受けたカーボネート/バイカーボネート移動相中の溶解した炭酸の量が減少する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、1999年8月2日に出願の出願番号09/365,496の一部継続出願である。出願番号09/365,496のすべての開示を参考として本明細書に取り込む。
本発明は、イオンクロマトグラフィー(IC)の分野、特に試料イオンを検出する前に気体を除去するイオンクロマトグラフィーの装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
サプレッサー方式イオンクロマトグラフィー(SIC)は一般に行われるイオンクロマトグラフィーの方法であり、通常二つのイオン交換カラムを直列に使用し、この次に流れが試料イオンを検出する伝導度検出器を通る。第一のカラムは分析カラム、クロマトグラフィーカラム又は分離カラムと呼ばれ、カラムを通過する検体イオンの溶離によって試料中の検体イオン(例えば試料イオン)を分離する。検体イオンは電解質を含む移動相を経由し分析カラムを通過して流れる。通常、移動相として脱イオン化水中の希薄酸又は塩基を使用する。分離された検体イオン及び移動相は分析カラムから出て、次いでサプレッサー又はストリッパーと呼ばれる第二のカラムに流れる。サプレッサーは二つの主な目的を果たす:(1)移動相の電解質を保持(例えばサプレッション)して移動相のバックグウランドの伝導度を低下させること、及び(2)検体イオンをより伝導性の高い酸(アニオン分析において)又は塩基(カチオン分析において)に変換して検体イオンの伝導度を増強すること。これらの二つの機能の組合せは雑音に対する信号の比率を増強し、従って検出器における検体イオンの検出を改良する。その結果、検体イオン及びサプレッションを受けた移動相がサプレッサーを出ると、次いで検体イオンを検出する検出器に流れる。多くの異なるタイプのサプレッサー装置及び方法が米国特許第3,897,213号;3,920,397号;3,925,019;3,926,559号明細書;及び米国特許出願第08/911,847号で論じられている。出願人はこれらの特許出願及び特許を参考として本明細書に取り込む。
【0003】
当業者が理解するように、移動相と試料の両者は検体イオンの対イオンを含んでいる。サプレッサー中に存在しているサプレッサーイオンと(1)移動相電解質の対イオン及び(2)試料の対イオンの両者とがイオン交換してサプレッサーが作動する。例えばアニオン分析では、サプレッサー中のイオンは通常ヒドロニウムイオンを含みかつ移動相は電解質、例えば水酸化ナトリウム又は炭酸ナトリウムと炭酸水素ナトリウムの混合物を含む。カチオン分析では、サプレッサー中のイオンは通常ヒドロキシドイオンを含み、移動相は電解質、例えば塩酸又はメタンスルホン酸を含む。サプレッサー中のイオンはイオン交換膜又は樹脂又は両者であってよい固定相上に位置している。移動相及び試料(検体イオンと検体イオンの対イオンの両者を含む)がサプレッサーの固定相中を流れると、移動相中の電解質の対イオン及び試料の対イオンは、サプレッサー中のイオンとイオン交換して固定相上に保持される。サプレッサー中のイオンがヒドロニウム又はヒドロキシドである場合、電解質中の対イオンとサプレッサー中のイオンとのイオン交換によって、移動相は水又は炭酸に変換され、これは相対的に非−伝導性である。一方で、試料の対イオンとサプレッサー中のイオン(即ちヒドロニウム又はヒドロキシドイオン)とのイオン交換により、検体イオンは相対的に伝導性の高いその酸(アニオン分析の場合)又は塩基(カチオン分析の場合)に変換される。従って、すでにより伝導性の高いその酸又は塩基の形となっている検体イオンは、移動相のより伝導性の低いバックグラウンドに対して検出感度がより高くなっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、サプレッション工程においてサプレッサーイオンを連続的に補充しない限り、固定相のサプレッサー中のイオン濃度は低下する。最終的にサプレッサーは使い尽くされてそのサプレッション容量を完全に失うか大幅に減少させる。従って、サプレッサーを置換するか又は再生しなければならない。サプレッサーを置換又は再生しなければならないのは不便であり、このために試料分析を中断することが必要となり、又は当技術分野で公知の複雑なバルブ操作又は再生技術が必要となる。少なくとも部分的に使い尽くされたサプレッサーを電気化学的に再生する方法は本技術分野で公知である。例えば米国特許第5,633,171号及び5,773,615号明細書は間欠的な電解充填床サプレッサーを指向しており、これを参照されたい。この出願の譲受人は例えば、米国特許第5,759,405号明細書にサプレッサーの間欠的な電気化学的再生方法を開示している。サプレッサーの間欠的な、しかし“頻繁な”化学的再生方法が米国特許第5,597,734号明細書に開示されている。サプレッサーを電気化学的に再生するこれらの“間欠的な”方法に伴う問題点の一つは、サプレッサーを“オフ−ライン”で再生しなければならないこと、すなわちサプレッサーを再生しいている間それを試料又は分析の実施に使用できないことである。サプレッサー中のイオンを連続的に補充してサプレッサーを連続的に再生する公知の技術は米国特許第5,352,360号明細書に開示されている。
【0005】
SICに伴う他の問題点は、分離したサプレッサーユニットが常に必要であり、その結果、従来のICシステムよりシステムにおける構成装置の数が多いことである。従来のICシステムは通常移動相源、ポンプ、試料注入器、分析カラム及び試料イオンを検出する検出器を含んでいる。SICでは、分離したサプレッサーユニットがこのシステムに加わる。これは順次システムの複雑さを増加させ、また余分のカラム容量を増加させ、これによってクロマトグラフィーの分解能及び感度が減少する。従って、従来のSICシステムにおけるシステム構成装置の数が少ないイオンサプレッションクロマトグラフィーのシステムを有することは有利である。
先行技術のSICシステムに伴う他の問題点は、移動相が弱くイオン化した形に変換され、移動相を再使用するときにそれが不安定になることである。従って、サプレッションの後、移動相が強くイオン化した形に変換され、かつ、従って、再使用できるSICのシステムが開発されれば有利である。
炭酸ナトリウム/炭酸水素ナトリウムの移動相を使用するSICシステムが有する他の問題点は移動相のサプレッションによって炭酸が生じ、これが試料イオンの検出に干渉することである。特に炭酸ナトリウム/炭酸水素ナトリウム溶出液を使用する場合、ナトリウム電解質をサプレッションするときに炭酸が形成されることである。炭酸は水より伝導度が高く、“バックグラウンドノイズ”が発生してこれが試料イオンの検出に干渉する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
多くの観点の中で、本発明はSICに伴う前記の問題点の一つ又は複数に向いている。
本発明の一つの観点において、連続して電気化学的にサプレッションを受けたイオンクロマトグラフィーの方法が提供される。電解質を含む移動相中の検体イオンをクロマトグラフィーカラムで分離して、電解質及び分離した検体イオンを含むクロマトグラフィー流出液を得る。クロマトグラフィー流出液を次いで第一のクロマトグラフィー流出液の流れと第二のクロマトグラフィー流出液の流れに分ける。水を電気分解して、ヒドロニウムイオン及びヒドロキシドイオンから成る群から選択する電気分解イオンを発生させる。電解質と同じ電荷を有する電気分解イオン並びに電解質及び検体イオンを含む第二のクロマトグラフィー流出液の流れを同時に固定相に流し、これによって第二のクロマトグラフィー流出液の流れの中の電解質をサプレッションする。本発明の好ましい観点では、電気分解イオンが第二のクロマトグラフィー流出液の流れから電解質を取り去って第一のクロマトグラフィー流出流に移動させ、これによって第二のクロマトグラフィー流出液の流れを効果的にサプレッションする。サプレッションを受けた第二のクロマトグラフィー流出液の流れの中の検体イオンを次いで検出する。
【0007】
本発明の他の観点では、連続して電気化学的にサプレッションを受けたクロマトグラフィーの方法で使用するのに適するサプレッサーが提供される。このサプレッサーは入口、第一の出口、第二の出口及び第三の出口を含む。イオン交換樹脂を含む第一の固定相を、入口から第三の出口にサプレッサーを通って流体が流れる通路に配置する。イオン交換樹脂を含む第二の固定相を、入口から第一の出口にサプレッサーを通って流体が流れる通路に配置する。第一の再生電極を第三の出口に配置し、第二の再生電極を第二の出口に配置する。
本発明のさらに他の観点では、サプレッサー中の検体イオンを検出する第二の固定相に配置したセンサー電極をサプレッサーはさらに含む。
本発明のさらに他の観点では、サプレッションの後でサプレッションを受けたクロマトグラフィー流出液をその強くイオン化した状態に転換する、サプレッションを受けたクロマトグラフィーの方法を提供する。従って、固定相を再循環して次の試料分析に再使用することができる。
【0008】
本発明のさらなる観点では、連続して電気化学的にサプレッションを受けたイオンクロマトグラフィーの方法が提供され、この方法では分離した検体イオンと電解質を含む分析カラムの流出液がサプレッサーの第一の入口に流れる。サプレッサーは固定相を含む。クロマトグラフィー流出液が固定相の少なくとも一部を流れてクロマトグラフィー流出液をサプレッションする。サプレッションを受けたクロマトグラフィー流出液が検体イオンを検出する検出器に流れる。検出器の流出液は次いで第二の入口を通ってサプレッサーに逆流し、第二の出口から出て廃棄される。
本発明の他の観点では、同じサプレッサーがカチオン分析及びアニオン分析の両者で使用することができるサプレッサーが提供される。このサプレッサーは第一の入口、第一の出口及び第二の出口を有する。第一の固定相を、第一の入口から第一の出口にサプレッサーを通って流れる流体の通路に配置する。第二の固定相を、第一の入口から第二の出口にサプレッサーを通って流れる流体の通路に配置する。一対の再生電極がさらに提供され、ここでは第一と第二の固定相に電位が供給できるように第一と第二の固定相が両電極の間に配置されている。第一と第二の固定相はさらに反対に荷電したイオン交換樹脂を含む。
【0009】
本発明の他の観点では、炭酸ナトリウム/炭酸水素ナトリウムの移動相を使用するSICの方法が提供される。炭酸ナトリウム/炭酸水素ナトリウムを含む移動相中の検体イオンをクロマトグラフィーで分離して、分離した検体イオン及び炭酸ナトリウム/炭酸水素ナトリウム移動相を含むクロマトグラフィー溶出液を得る。炭酸ナトリウム/炭酸水素ナトリウム移動相を次いでサプレッションして、炭酸、二酸化炭素ガス及び分離した検体イオンを含む、サプレッションしたクロマトグラフィー溶出液を得る。検体イオンを検出する前に二酸化炭素ガスを除去する。
本発明の他の観点では、電解質を含む水性移動相中の検体イオンをクロマトグラフィーで分離して、分離した検体イオン及び電解質を含む水性クロマトグラフィー溶出液を形成する。水の電気分解で発生するヒドロニウムイオン及びヒドロキシドイオンよりなる群から選択する電気分解イオンでイオン交換することによって電解質をサプレッションするが;水の電気分解はさらに気体の副生物を生じる。気体の副生物を次いで分離した検体イオンから除去し、分離した検体イオンを引き続き検出する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】連続して電気化学的にサプレッションを受けたイオンクロマトグラフィーの方法に使用するのに適したサプレッサーを使用する本発明に従うシステムの模式図である。
【図2】連続して電気化学的にサプレッションを受けたイオンクロマトグラフィーの方法に使用するのに適したサプレッサーを使用する本発明に従うシステムの模式図である。
【図3】本発明の連続して電気化学的にサプレッションを受けたイオンクロマトグラフィーの方法に使用するのに適したサプレッサーの操作方法を示す模式図である。
【図4】本発明の一つの観点に従う連続して電気化学的にサプレッションを受けたイオンクロマトグラフィーの方法に使用するのに適したサプレッサーの展開斜視図である。
【図4A】図4で示したサプレッサーのA−Aの線に沿う断面図である。
【図5】本発明の連続して電気化学的にサプレッションを受けたイオンクロマトグラフィーの方法に使用するのに適したサプレッサーの操作方法を示す模式図であり、ここでサプレッサーは検体イオンを検出するセンサー電極を含んでいる。
【図6】本発明の他の観点に従って使用することができる統合したサプレッサーと検出器の展開図である。
【図7】本発明の他の観点に従うサプレッサーの操作を示したものである。
【図8】本発明に従う他のサプレッサーの構成を示したものである。
【図9】実施例1に述べた試料分析で生じたクロマトグラムである。
【図10】実施例2に述べた試料分析で生じたクロマトグラムである。
【図11】実施例3に述べた試料分析で生じたクロマトグラムである。
【図12】実施例3に述べた試料分析で生じたクロマトグラムである。
【図13】実施例3に述べた試料分析で生じたクロマトグラムである。
【図14】実施例3に述べた試料分析で生じたクロマトグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、本発明の一つの観点に従う連続して電気化学的にサプレッションを受けたイオンクロマトグラフィーのシステムを示している。このシステムは、電解質を含む移動相源10、ポンプ11,試料注入器12及びクロマトグラフィーカラム14を含みすべて流体的に連絡している。ポンプ11、試料注入器12及びクロマトグラフィーカラム14を、当業者が公知の種々の型から選択することができる。例えば、好ましいポンプはALLTECH ASSOCIATES, INC.(Deerfield, IL)から入手可能なALLTECH 526ポンプを含む。好ましいクロマトグラフィーカラムはALLTECH ALLSEP又はUNUVERSAL CATION COLUMNSを含む。好ましい試料注入器はRHEODYNE 7725注入バルブを含む。
クロマトグラフィーカラム14と流体的に連絡しているサプレッサー15がさらに提供される。電極(示していない)を含むサプレッサー15を以下でさらに詳細に述べる。サプレッサー15は動力源18と結合している。好ましい動力源はKENWOOD PR36−1.2Aを含む。このシステムは好ましくは、サプレッサー15及び検出器21と流体的に連絡している、気体透過性の管又は膜も含む。気体透過性管は好ましくはSan Diego, CAのBIOGENERALから入手可能なTEFLON(登録商標) AF 2400(DUPONT)管である。検出器による検出に先立って移動相及び試料イオンを管17を通って流すことにより、検出器の前に気体を除去することができ、これによって試料イオンの検出を改善する。本発明で使用する好ましい検出器はALLTECH MODEL 550 CONDUCTIVITY DETECTORである。本発明で使用する他の適切な検出器は電気化学的検出器である。検出器21は検出器で検出した検体イオンを測定し又は記録する。最後に、システムにおける操作圧力を制御するために逆圧源21a、21b及び21cが好ましくは含まれる。操作圧力を操作することによって電気分解からの気体の泡を制御することができる。
【0012】
操作における流体の流れの方向は以下のとおりである。移動相は、ポンプ11によって移動相源10から注入バルブ12を通ってクロマトグラフィーカラム14、サプレッサー15、次いで検出器21に流れる。検出器21を出た後、移動相は逆圧源21aによって21bを通り、次いで廃棄又は以下に述べるように移動相源10への戻しのいずれかに方向付ける循環バルブ19に流れる。循環バルブ19は好ましくは三方向バルブである。
図2は、本発明に従う、連続する電気化学的にサプレッションを受けたイオンクロマトグラフィーの方法に使用する他のシステムを示している。このシステムが図1のシステムと異なるのは、サプレッサーと検出器を統合して統合したサプレッサーと検出器16となっていることである。統合したサプレッサーと検出器は、検体イオンを検出するセンサー電極(示していない)を有しており、これについては以下で詳細に述べる。さらに、計測装置20は、検体(又は試料)のイオンを記録する統合したサプレッサーと検出器16と電気的に連絡している。好ましい計測装置はOAKTON 1/4DIN CONDUCTIVITY AND RESISTIVITY CONTROLLER (OAKTON 100 SERIES)である。統合したサプレッサーと検出器16は動力源18とも電気的に連絡している。
【0013】
図2のシステムにおける流体の流れる通路は以下のとおりである。流体は移動相源10からポンプ11によって注入バルブ12を通り、クロマトグラフィーカラム14から統合したサプレッサーと検出器16へ流れる。統合したサプレッサーと検出器16を出た後、移動相は逆圧源21aによって21bを通り、次いで廃棄又は以下に述べるように移動相源10への戻しのいずれかに方向付ける循環バルブ19に流れる。循環バルブ19は好ましくは三方向バルブである。
本発明の一つの観点に従いかつ図1を参照すると、電解質及び検体イオン(例えば検出すべき試料イオン)を含む移動相は、検体イオンが分離されるクロマトグラフィーカラム14に流れる。分離された検体イオンと電解質は、クロマトグラフィー流出液としてクロマトグラフィーカラム14を出て、電解質がサプレッションを受けるサプレッサー15に流れる。サプレッサー15の操作を、水酸化ナトリウムの水溶液より成る移動相によるアニオン分析に関する図3を参照して説明する。当業者であれば早急に理解できるように、本発明は容易にカチオン分析及び/又は異なる電解質の分析に適用できる。
【0014】
図3を参照すると、サプレッサー15は第一の固定相31及び第二の固定相31aを含む。固定相は、遊離の樹脂の形又は液体の流れが可能な膜マトリックス中に封入された形のイオン交換樹脂を含むクロマトグラフィー充填材料を意味している。固定相は好ましくは強カチオン交換体、例えばスルホン酸カチオン交換体、例えばBIORAD AMINEX 50WX8である。固定相は、中に液体が流れることが可能な固形ポリマー構造も含むことができる。サプレッサーは末端フィルター26a及び26bも含むことができ、これらはサプレッサー15の両端に配置したTEFLON(登録商標)フィルターメッシュ中に封入されている強カチオン交換樹脂を含む。末端のフィルターは、電気分解において再生電極で発生する気体が、電気分解中にサプレッサー15に入る量を制限する。好ましい末端フィルターは、ALLTECH NOVO−CLEAN IC−H Membranesである。サプレッサー15はさらに第一の再生電極22及び第二の再生電極23を含む。この態様では、第一の再生電極22はカソードであり、第二の再生電極23はアノードである。第一及び第二の再生電極は好ましくは、動力源18(示していない)に結合している貫流型の(flow−through)電極である。好ましい電極は貫流型のチタンフリット26c及び26dを有するチタンのハウジングから製造される。電極を白金でメッキして不活性の電気伝導性表面とする。サプレッサー15はさらに、クロマトグラフィーのカラムの流出液を受け取る入口24及びサプレッションを受けたクロマトグラフィーの流出液(検体イオンを含む)を検出器21へ流す出口25を含む。サプレッサーは、再生電極23及び22をそれぞれ通過するそれぞれ第二の出口28及び第三の出口30も含む。
【0015】
試料を分析している間、サプレッサー15に水を供給する一方で、動力を連続的に供給して再生電極22及び23を活性化する。水の供給源はクロマトグラフィーの流出液であってもよく、又は別の水源から提供してもよい。いずれの場合も、水の電気分解が再生電極で生じ、ヒドロニウムイオン及びヒドロキシドイオンからなる群から選択する電気分解イオンが発生する。本態様では、ヒドロニウムイオンがアノード(第二の再生電極23)で発生し、ヒドロキシドイオンがカソード(第一の再生電極22)で発生する。ヒドロニウムイオンは第二の再生電極23から第二の固定相31a及び第一の固定相31を通って第一の再生電極22へ流れる。ヒドロニウムイオンは実際、第一の再生電極22で発生したヒドロキシドイオンと結合して水を形成し、この水は第三の出口30でサプレッサーを出る。
【0016】
操作では、クロマトグラフィー流出液を入口24でサプレッサー15に導入する。この態様では、クロマトグラフィー流出液は水性水酸化ナトリウム溶離液中の分離したアニオンを含む。入口24でサプレッサーに入る場合、クロマトグラフィー流出液は二つのクロマトグラフィー流出液の流れに分かれる;すなわち、第一のクロマトグラフィー流出液の流れ及び第二のクロマトグラフィー流出液の流れである。第一のクロマトグラフィー流出液の流れが、入口24から第一のクロマトグラフィー流出液の流路に、入口24と第一の再生電極22との間に配置した第一の固定相31を通って流れる。従って、第一のクロマトグラフィー流出液の流路が、入口24から第一の再生電極22へ流れる第一のクロマトグラフィー流出液の流れによって定まる。第一のクロマトグラフィー流出液の流れは、第一の再生電極22及び第三の出口30を通って流れてサプレッサー15を出ることができる。第二のクロマトグラフィー流出液の流れが、入口24と第二の再生電極23との間に配置した第二の固定相31aを通って、入口24から第二の再生電極23へ、第二のクロマトグラフィー流出液の流路を流れる。好ましくは、第二のクロマトグラフィー流出液の一部が第一の出口25でサプレッサー15を出て、かつ他の部分が第二の電極23を通って第二の出口28でサプレッサーを出る。第一の出口25で出る第二のクロマトグラフィー流出液の流れは検出器に流れ、そこで検体イオンが検出される。
【0017】
サプレッサーでは、第二の再生電極23から第一の再生電極22へのヒドロニウムイオンの流れ及び第一の再生電極22における負の荷電の作用の組み合わせによって、第二のクロマトグラフィー流出液の流れから第一のクロマトグラフィー流出液の流れへ、クロマトグラフィー流出液中のナトリウムイオン電解質が移動することが好ましい。第二のクロマトグラフィー流出液の流れはこの結果分離したアニオンを含み、これはヒドロニウム電気分解イオンと結合して検体アニオンの高い伝導度の酸を生成する。第二のクロマトグラフィー流出液の流れはさらに水を含み、その少なくとも一部は水酸化ナトリウムからのヒドロキシドイオンをヒドロニウム電気分解イオンと結合させて生成したものである。
【0018】
第二のクロマトグラフィー流出液の流れの一部はサプレッサーを第二の出口28及び第一の出口25で出る。サプレッションを受けた第二のクロマトグラフィー流出液は、酸の形にある分離した検体アニオンの水溶液であって水の電気分解から第二の再生電極において生成した酸素気体を伴う水溶液を含む。検出器における検体アニオンの分析に酸素気体がある程度干渉するので、第一の出口25を出るサプレッションを受けた第二のクロマトグラフィー流出液は、気体透過性の膜、例えば気体透過性の管17を通って検体イオンを検出する前に酸素気体を除去することが好ましい。この点で、酸素気体を気体透過性管17を通して第一のサプレッサー流出液の外に排出するのに十分な背圧を生成するために、本システムが背圧源21a(図1参照)を含むこともできる。同様に、本システムにおける圧力制御を提供するために、背圧源21b及び21cが同様に提供される(図1参照)。図3から分かるように、出口25で出るサプレッションを受けた第二のクロマトグラフィー流出液の流れにおける背圧を増加すると、サプレッサー15中の流体の流れを妨げる可能性がある。従って、第二の出口28で出る第二のクロマトグラフィー流出液の流れ及び第三の出口30で出る第一のクロマトグラフィー流出液の流れにおいて釣り合う圧力をかけることが好ましい。サプレッサー15を出口25で出るサプレッションを受けた第二のクロマトグラフィー流出液の流れは、次いで気体透過性管17を通り、検体イオンが検出される検出器に流れる。
【0019】
検体イオンがサプレッサー15を流れている間動力が供給されているので、すなわち、再生電極が連続して活性化されかつ第一の固定相31と第二の固定相31aの間に電位が供給されているので、第二の再生電極23から第一の再生電極22へヒドロニウムイオンの連続した流れが存在する。この連続したヒドロニウムイオンの流れによって、第二のクロマトグラフィー流出液の流路における第二の固定相31aが実質的に使い尽くしていない形で連続して保持可能となると考えられる。従って、本態様において、ヒドロニウム型のイオン交換樹脂が使い尽くしていない形又はヒドロニウムの形で第二のクロマトグラフィー流出液の流れに実質的に残っており、それはナトリウムイオンが第二のクロマトグラフィー流出液の流れに入ることが実質的に妨げられ(従って第二の固定相31aを使い尽くすのにナトリウムイオンが利用できず)、かつ第一のクロマトグラフィー流出液の流れにナトリウムイオンが入るように強制されるからである。さらに、第一のクロマトグラフィー流出液の流路における第一の固定相31がナトリウムイオンのヒドロニウムイオンによるイオン交換によって少なくとも部分的に使い尽くされても、ヒドロニウムイオンを連続的に供給して保持したナトリウムイオンによるイオン交換によって第一の固定相31を連続的に再生することが可能である。
【0020】
第一のクロマトグラフィー流出液の流れは第三のサプレッサー流出液として第三の出口30でサプレッサー15を出て、試料の対イオンのヒドロオキシド及び水酸化ナトリウム溶液を含み、この水溶液は、第二の再生電極23で発生したナトリウムイオン電解質及びヒドロニウム電気分解イオンをそれぞれ結合して、第一の再生電極22で発生したヒドロキシドイオンから形成される。第三のサプレッサー流出液の流れはさらに、第一の再生電極22で水を電気分解して発生した水素ガスを含む。第三のサプレッサー流出液は、本態様では、検体アニオンの一部も含む。本技術分野で公知の方法で(例えば気体透過性管によって)水素ガスを除去し、公知の方法で検体アニオンを除去して、水酸化ナトリウムの水溶液を溶離液源10に戻してそれを再使用することができ、またそれを次の試料分析で移動相として使用することができる。その代わりに、サプレッサーを出口30で出る第三のサプレッサー流出液の流れを廃棄へ流すことができる。
【0021】
当業者が認識するように、先に述べたサプレッサーをアニオンとカチオンの両者を分析する連続して電気化学的にサプレッションを受けたクロマトグラフィーの方法に使用することができる。さらに、種々の溶離液、例えばカチオン分析に塩酸又はメタンスルホン酸、アニオン分析に炭酸ナトリウム/炭酸水素ナトリウム、水酸化ナトリウム又は石炭酸ナトリウムを使用することができる。第一の固定相31と第二の固定相31aは異なっても同一でもよい。さらに、第一又は第二のクロマトグラフィー流出液の流路において、固定相は同一であるか遊離のイオン交換樹脂、膜マトリックス中に封入したイオン交換樹脂又は固形のポリマー構造の組み合わせであることができる。しかしながら固定相は上記したように流体を十分に流しイオンを流さなければならない。アニオン分析用の好ましい固定相はDOWEX 50WX8及びJORDIGEL SO3を含む。カチオン分析用の好ましい固定相はAMINEX AG−X8及びZIRCHROM RHINO PHASE SAXを含む。
【0022】
図3に示したように、入口24を好ましくは水平軸に沿って第二の再生電極23より第一の再生電極22に近接して配置する。従って、第一のクロマトグラフィー流出液の流れが入口24から第一の再生電極22に移動する距離は、第二のクロマトグラフィー流出液の流れが入口24から第二の再生電極23に移動する距離より短いのが好ましい。最も好ましくは、入口24の中心と第二の再生電極23との間の水平距離X”は約2.3622〜3.0607cm(0.930〜1.205インチ)であり、入口24の中心と第一の再生電極22との間の水平距離X’は約1.18364〜1.88214cm(0.466〜0.741インチ)である。好ましくは、入口24と第一の出口の中心軸の間の距離Yは約0.58928〜1.17856cm(0.232〜0.464インチ)である。第一の出口と第二の電極との間の距離Zは約1.18364〜1.88214cm(0.466〜0.741インチ)である。第一の出口と第一の電極22との間の距離Z’は約2.3622〜2.6035cm(0.930〜1.025インチ)である。
【0023】
図4及び4Aは、図1に関して記載したシステムのサプレッサー15をさらに示している。サプレッサーは末端キャップ302及び310を含んでいる。サプレッサーはさらに第一の再生電極304及び第二の再生電極308を含む。第一の再生電極(図4には示していない)と第二の再生電極の中にフリット313及び311をそれぞれ配置している。フリット313と311は好ましくは、多孔性、非−伝導性、非−電気活性材料、例えばポリオレフィン、又はPAT(登録商標、テフロン(登録商標)でピーク(peek)が合金化されている)、又は表面が酸化されたチタンから構成される。又はフリットは好ましくは、不活性、電子−活性材料、例えば白金を被覆したチタンから構成されている。サプレッサーはO−リング305及び310aも含んで、サプレッサーのハウジング306と再生電極304及び308との間に流体密閉性のシールを提供する。サプレッサー15はさらに入口307、第一の出口309、第二の出口323及び第三の出口321を含む。
好ましくは、電気分解で形成された気体の泡(酸素及び水素のガス)を検出器から離れて流すことが望ましい。別の方法として、検出器の前にシステムから気体の泡を除去することが望ましい。このことが望ましいのは、気体の泡が検出器での検体イオンの検出に干渉する可能性があるからである。種々の方法で、気体の泡を検出器から離して流し又は検出器の前に除去することが可能である。検出器の前に気体の泡を除去する一つの方法を、検出器の前に気体透過性管17を使用することによって以前に示した。
【0024】
いかなる場合でも、当業者が理解するように、検出器で試料イオンを検出するのに先立って気体の泡を除去することが望ましいすべてのイオン分析方法において気体透過性の管17を使用することができる。例えば、電気溶出(erectroelution)クロマトグラフィーの方法及び米国特許第5,259,405号に開示された高優先度溶出液(high priority eluant)を発生する方法(この特許のすべての開示を参考として本明細書に取り込む)において、水の電気分解の気体副生物である酸素及び水素を試料イオンの検出に先立って除去することができる。同様に、例えば本出願及び同時係属の出願番号09/075,652で開示したサプレッションされたイオンクロマトグラフィーの方法において、気体透過性の管をサプレッサーと検出器の間に配置して検出器の前で水の電気分解から生じる気体副生物である酸素及び水素を除去することができる。出願番号09/075,652のすべての開示を同様に参考として本明細書に取り込む。背圧源21aを使用してシステムの背圧を増加させることによって、検出器21の前の気体透過性管17を通して気体の泡をシステムから強制的に排出することができる。背圧源21aで発生した背圧を平衡させることが望ましいのは当然であり、そうしないと試料分析に影響が生じる。従って、システムの有効な操作を許容するために、背圧源21b及び21cを提供して背圧源21aで発生した背圧に対抗することが好ましい。
【0025】
背圧源21a、21b及び21cは、2−10μmのプラスチック又は金属の多孔性フリットを含む直列したフィルターから構成されていることが好ましい。二つの背圧源21b及び21cの代わりに、管17a及び17b中の流体の流れが合わさってT−形の一つの背圧源(示していない)になる一つの背圧源を使用することができる。そうでない場合は、背圧源21b及び21cの代わりに、管17a及び17bの長さを変えることによって背圧源21aによって生じた背圧の均衡を取ることができる。管の長さが増加すると、サプレッションを受けたクロマトグラフィー流出液がそこを流れることによって生じる背圧が増加する。
本発明の他の観点では、センサー電極をサプレッサー15の中に置くことができ、その結果統合したサプレッサーと検出器が得られる。統合したサプレッサーと検出器を使用する連続して電気化学的にサプレッションを受けたイオンクロマトグラフィーのシステムが図2に示されている。この態様では、図1、3、4及び4Aを参照して記載したサプレッサーを、第二のクロマトグラフィー流出液の流路にセンサー電極をおいて適合させることができる。センサー電極を記録装置に結合して、サプレッサー内の第二のクロマトグラフィー流出液の流路において、分離した検体イオンを検出する。
【0026】
統合したサプレッサーと検出器の他の適用が図5に示されている。クロマトグラフィー流出液を好ましくは統合したサプレッサーと検出器416に入口417で導入する。統合したサプレッサーと検出器に入ると、クロマトグラフィー流出液は二つの流路に分かれる;すなわち前に述べたのとほぼ同様に第一のクロマトグラフィー流出液の流れ及び第二のクロマトグラフィー流出液の流れである。第一のクロマトグラフィー流出液の流れは第一の再生電極422に向かって流れ、第二のクロマトグラフィー流出液の流れは第二の再生電極424に向かって流れる。第一及び第二の再生電極は好ましくは先に述べたように貫流型の電極である。当業者が理解するように、クロマトグラフィー流出液の流路及び再生電極をこのように構成することにより、水の電気分解によって発生した酸素及び水素の気体の泡はセンサー電極426及び428から離れて流れ、従ってセンサー電極426と428における検体イオンの検出に干渉しない。
【0027】
イオン分析において、統合したサプレッサーと検出器は以下のように作動する。水性水酸化ナトリウムと分離した検体アニオンを含むクロマトグラフィー流出液がクロマトグラフィーカラムから統合したサプレッサーと検出器416に流れる。クロマトグラフィー流出液をサプレッサーと検出器に入口417で導入し、ここでクロマトグラフィー流出液の流路が分かれる。クロマトグラフィー流出液の一部−第一のクロマトグラフィー流出液の流れ−が第一の再生電極422に流れ、かつクロマトグラフィー流出液の第二の部分−第二のクロマトグラフィー流出液の流れ−が第二の再生電極424に流れる。第二の再生電極424から第一の再生電極422へのヒドロニウムイオンの流れがナトリウムイオン及び試料の対カチオンを第一の再生電極422(カソード)に移動させ、第二のクロマトグラフィー流出液の流路に配置したセンサー電極426及び428から遠ざける。さらに、ナトリウムイオン、試料の対カチオン及びヒドロニウムイオンが第一の再生電極422で発生したヒドロキシドイオンと結合して、移動相として再使用可能な水酸化ナトリウム水溶液及び試料の対カチオンのヒドロキシド溶液を形成する。
【0028】
従って、ナトリウムイオンが第一の再生電極422に向かって移動しかつセンサー電極426及び428から離れるので、センサー電極426及び428周辺の領域におけるヒドロニウムイオンの濃度がナトリウムイオンの濃度を大きく上回る。検体アニオンはヒドロニウムイオンと結合してセンサー電極の周囲の領域において検体イオンの相対的により伝導性の酸を形成し、これがセンサー電極の周囲における検出に対する検体イオンの感受性を増加させる。検出後、検体イオンの酸は第二の再生電極424を通って流れ、統合したサプレッサーと検出器416から離れる。さらに、水の電気分解は再生電極424でヒドロニウムイオンを連続的に供給し、これは固定相420を通って第一の再生電極422に流れる。電気分解用の水の供給源は水性クロマトグラフィー流出液又は分離した水性再生液源から得ることができる。
【0029】
すでに述べた態様にはいくつかの利点がある。例えば、水の電気分解で生じた気体の泡はセンサー電極から離れて流れ、これらの泡が検体イオンの検出に与える干渉の程度を減少させる。さらに、検体イオンは、センサー電極で検出する前に、再生電極を通り抜ける必要はなく、又はそれと結合する必要はない。このことは、検体イオンが再生電極と接触して化学的に変化する可能性を低くする。センサー電極の領域における検体イオンの望ましくない対イオンの濃度が減少し、このことはシステムの感度を増大させる。この点において、先に述べたT−セルの態様が従来のサプレッサーシステムを越える大きな感度を生じることが見出されたが、これは予期されないことであった。理論に制限されることなく、この増大した感度の理由は、センサー電極の領域で検体イオンを濃縮する、反対に荷電した再生電極へ検体イオンが優先的に移動することであると現在のところ考えられ、ただし、当然のことながら図5に示されるように反対に荷電した再生電極の近くにセンサー電極を配置する。
さらに図5を参照すると、第一の再生電極と入口417との間の水平距離Aは好ましくは約1.03124〜1.29286cm(0.406〜0.509インチ)である。入口417とセンサー電極426及び428との間の水平距離Bは好ましくは約1.13538〜1.32588cm(0.447〜0.522インチ)である。センサー電極426及び428と第二の再生電極424との間の水平距離Cは好ましくは約0.99314〜2.3241cm(0.391〜0.915インチ)である。
【0030】
図6は本発明の一つの観点に従う統合したサプレッサーと検出器500の展開図である。第一と第二の末端キャップ502及び504が示されている。第一の末端キャップ502と第一のメスセル506の間に配置されているのは第一の再生電極507である。第二の末端キャップ504とオスセル508の間に配置されているのは第二の再生電極509である。再生電極が前述のようになっているのが好ましい。さらに第一及び第二のセンサー電極521及び513がそれぞれ含まれる。センサー電極は好ましくは不活性な伝導性材料、例えば白金、金、又は白金若しくは金でメッキしたステンレス鋼若しくはチタンで製造する。電極はサプレッサーの入口から再生電極へ流体が流れることを可能にしなければならず、従って、それらの周囲又は内部を流れることを可能にしなければならない。O−リング506a及び509aが、第一の再生電極507とメスセル506の間及び第二の再生電極509とオスセル508の間にそれぞれ流体を密閉するために示されている。スペーサー517並びに密閉ガスケット519及び515をセンサー電極513と521の間に配置する。スペーサーはセンサー電極513及び521の間の距離を再現可能なように定めるように作用し、ガスケットは流体を密閉するために提供される。密閉ガスケット523及び511はさらに、メスセル506とセンサー電極521との間及びオスセル508とセンサー電極513との間をそれぞれ流体密閉性とするために配備される。アダプター508aがクロマトグラフィー流出液を入口508bで受けるように配備される。好ましくは、末端キャップ502及び504、メスセル506、オスセル508及びアダプター508aを電気非−伝導性の材料、例えばPEEK、ポリオレフィン、アクリル系、ポリスルホン又はガラスから構成する。
【0031】
図7は、多孔性電極のないサプレッサーを使用する本発明のさらに他の観点を示している。この態様において、サプレッサー600は第一及び第二の再生電極602及び604をそれぞれ含む。第一の再生電極602はアノードであり、ここで水の加水分解によってヒドロニウムイオンが発生する。ヒドロキシドイオンはカソード、すなわち第二の再生電極604で発生する。サプレッサーはさらに、流れ制限体120で分離された第一の固定相608及び第二の固定相610を含む。アニオン分析の場合、第一及び第二の固定相は先に述べたようにカチオン交換性の充填材料である。
【0032】
クロマトグラフィーカラムの流出液は第一の入口116でサプレッサー115に流れる。試料の分析中は動力が提供され、これによって第一と第二の固定相の間に電位差が生じる。例えば水性水酸化ナトリウムの移動相においてアニオン分析を使用する場合、クロマトグラフィー流出液は矢印で示したようにサプレッサーを通って流れ、ここで先に述べたようにサプレッションが起こる。アノード602からカソード604へのヒドロニウムイオンの流れ及びカソード604における負の荷電の吸引力を組み合わせた作用によって、ナトリウムイオンがクロマトグラフィー流出液から動かされる。試料のアニオンは、ヒドロニウムイオンと結び付くことによってその高度に伝導性の酸に変換される。次いでサプレッションを受けた試料のイオンは第一の出口116aから管118を通って試料イオンを検出する検出器(D)へ流れる。管118は先に述べたように好ましくは気体透過性である。従って、電気分解から発生した気体を気体透過性管118を通って検出器に到達する前に除去することができるのは先に述べたとおりである。検出器の流出液は次いで第二の入口117でサプレッサーを通って逆流し、第二の出口117aを出て廃棄へ流れる。
【0033】
図8は本発明のさらに他の態様を開示しており、ここでは同じサプレッサー215をカチオン分析及びアニオン分析の両者に使用するように設計している。この態様において、カチオン交換樹脂を含む第一の固定相216及びアニオン交換樹脂を含む第二の固定相217をサプレッサーが含んでいる。好ましくは、第一の固定相と第二の固定相は入口220の縦の中心軸において出会う。クロマトグラフィーカラムの流出液はクロマトグラフィーカラムからサプレッサー215へ入口220を通って流れる。分析する試料の検体イオンがアニオンであるのかカチオンであるのかに従って、検出器を第一の出口222の下流か第二の出口224の下流に置く。別の方法として、検出器を出口222及び224の両方の下流に置くことができる。カチオン分析においては、一部のクロマトグラフィー流出液が入口220から第一の出口222へ流れる。これと反対に、アニオン分析では、一部のクロマトグラフィー流出液が入口220から第二の出口224へ流れる。従って、同じサプレッサーをカチオン分析とアニオン分析の両方に使用することができる。
【0034】
操作において、動力が連続して供給され、これによって試料の分析中は第一及び第二の固定相の間に電位が生じる。クロマトグラフィー流出液から又は分離した貯水器から水を供給し、第一の電極240及び第二の電極242で電気分解が起こる。この態様では、第一の電極240はアノードであり、第二の電極242はカソードである。ヒドロニウムイオンはアノード240で発生し、アノードからカソード242へ流れる。ヒドロキシドイオンはカソード242で発生しカソードからアノード240へ流れる。
従って、アニオン分析では、クロマトグラフィー流出液は入口220から第一の固定相216を通って流れ、ここで移動物がサプレッションを受け試料のアニオンが、ヒドロニウムイオンでイオン交換されてその伝導性の酸に変換される。移動相からのナトリウムイオンは第一の固定相216から出て第二の固定相217に流れ込む。ナトリウムイオンは次いで水酸化ナトリウムとして出口222でサプレッサー215を出る。サプレッションを受けた移動相及び試料のアニオンは出口224でサプレッサー215を出て、試料アニオンを検出する検出器へ流れる。これと反対に、移動相の電解質(ナトリウム)は第二の固定相217に移動し、水の加水分解で発生したヒドロキシドイオンと共に出口222で出る。出口222で出る流れを処理して、次回の試料の分析に移動相として再使用することができ、又は廃棄へ流れる。
【0035】
先に述べたように、水の加水分解から生じる副生物である水素ガス及び酸素ガスを、検出器で試料イオンを検出するのに先立って除去することが好ましい。これを実施するのに好ましい方法は、TEFLON(登録商標) AF管のような気体透過性の管を使用することである。
検出器で試料イオンを検出するのに先立って、気体を除去するための脱気管又は他の手段を配置することの別の利点を出願人らは見出した。カーボネート/バイカーボネート移動相をサプレッションしている間に溶解した炭酸が生成する。溶解した炭酸は水と比較して相対的に伝導性であり、このため“バックグラウンドノイズ”を発生して試料イオンの検出に干渉する。さらに、カーボネート/バイカーボネート移動相を使用する勾配溶出イオンクロマトグラフィーでは、サプレッションを受けた移動相における溶解した炭酸によって生じるバックグラウンド信号が、試料イオンの検出を極めて困難にするベースラインの変動を引き起こして揺らぐ。さらに、カーボネート/バイカーボネート移動相を使用する場合にクロマトグラフィーの開始時にウオーターディップ(water dip)が見られるが、これは試料イオンを担持する水の伝導度がサプレッションを受けたカーボネート/バイカーボネート移動相より低いからである。このウオーターディップはフッ化物のような初期に流出するピークの検出に干渉する。カーボネート/バイカーボネート移動相によるこのような問題点を、試料イオンの検出の前にサプレッションを受けた炭酸ナトリウム/炭酸水素ナトリウム移動相から二酸化炭素ガスを除去することによって、実質的に減少又は除去することができる。
【0036】
カーボネート/バイカーボネート移動相のサプレッションから生じる溶解した炭酸は以下の平衡状態で存在する:
+HCO3 ⇔ H2O+CO2(g)
この平衡状態は炭酸(HCO3)の側に傾いている。二酸化炭素を除去することにより並行は右側に移動し、溶解した炭酸が除去される。十分な量の二酸化炭素を除去することにより、先に述べた問題を実質的に排除する程度に溶解した炭酸を減少することができる。
水性カーボネート/バイカーボネート移動相を使用するサプレッションイオンクロマトグラフィーのすべての方法に、炭酸を除去する上記の方法が適用可能であることを理解すべきである。
【0037】
実施例1
本実施例では図3で示したサプレッサー及び図1のシステムを使用してクロマトグラムを作成したが、逆圧源21b及び21cの代わりにサプレッサー15の第二及び第三の出口28及び30にそれぞれ長さの長い管を結合した。以下の装置及びパラメーターを使用した。
分析カラム:ALLTECH ALLSEPカラム(四級アミン官能基を有するメタクリレートベースのイオン交換体)、100×4.6mm;粒子径7μm。
カラム温度:周囲温度
溶離液:0.85mM NaHCO3/0.90mM Na2CO3
流速:1.0ml/分
検出器:サプレッションを受けた伝導性
サプレッサー:床長=35.3mm 距離X’=11.85mm
(図3参照) 距離Y=11.8mm 距離Z=11.85mm
距離X”=23.6mm 距離Z’=23.6mm
電極:Tiフリット、40μ多孔性及びPtで被覆
定電流:18Vの電圧に対応する75mA
第三の出口30を出る管は長さ193.04cm(76インチ)、外径0.16002cm(0.063インチ)、内径0.01778cm(0.007インチ)であった。第二の出口28で出る管は長さ127cm(50インチ)、外径0.16002cm(0.063インチ)、内径0.01778cm(0.007インチ)であった。第一の出口25で10μの白金のフリットが提供され、検出器への管は内径0.07874cm(0.031インチ)、外径0.635cm(0.250インチ)であった。図9のクロマトグラムを得た。
【0038】
実施例2
サプレッサー15の第二の出口23及び第三の出口30(図3参照)に結合する管に、逆流源(図1、参照番号21b及び21c参照)以外は実施例1と同様の装置及びパラメーターを使用した。逆流源をアノード及びカソードから12.7cm(5インチ)に配置した。管の内径は0.1016cm(0.040インチ)であった。逆圧源は直列に並んだ0.01μm(10ミリミクロン)のフィルターであり、ALLTECH ASSOCIATES, Deerfield, IL から部品番号no.68250として入手可能なPEEK 合金TEFLON(登録商標)であった。付加的な50.8cm(20インチ)の管を、逆圧源の下流側に置いた。さらにこの実施例では対応して24Vの電圧を発生する100mAの定電流を供給した。図10のクロマトグラムを得た。
【0039】
実施例3
水性炭酸ナトリウム/炭酸水素ナトリウム移動相を使用する場合に、検体イオンの検出に先立って二酸化炭素を除去することの利点を示すために、試料をクロマトグラフィー分析した。以下の実行条件を使用した:
クロマトグラフィーカラム:ALLSEPアニオンA−2(四級アミン官能基を有するメタクリレートベースのアニオン交換体)、100mL×4.6mm内径、粒子径7μm。
カラム温度:周囲温度(すなわち、23〜25℃)
溶離液:2.8mM炭酸水素ナトリウム、2.2mM炭酸ナトリウム水溶液
流速:1.0mL/分
検出器:サプレッションを受けた伝導性
試料:それぞれ10ppmのナイトライト、ナイトレート及びスルフェート水溶液;この順で溶出する
サプレッサーの寸法及び電極:実施例1と同一
(図3参照)
電流:100mA
【0040】
図11及び12は、サプレッサーと検出器の間に配置した一定の長さのTEFLON(登録商標) AF(気体透過性)管を有する組立システムで得られたクロマトグラフである。
検出に向かう流れの中に存在する可能性がある水の電解質から生じた副生物の酸素ガス及び水素ガス、並びに炭酸ナトリウム/炭酸水素ナトリウム移動相のサプレッションから生じた二酸化炭素ガスが、TEFLON(登録商標) AFの管を通して除去される。
図13及び14は、TEFLON(登録商標) AFの管を使用しないことを除いては同一の組立システムで得られたクロマトグラムである。その代わり、一定の長さの気体透過性でない管をサプレッサーと検出器の間に配置した。
クロマトグラムを比較すると分かるように、気体透過性の管を有するシステムで得られたクロマトグラムは、気体透過性の管を有しないシステムで得られたクロマトグラムに比べて顕著に改善されている。気体透過性の管を有するシステムのバックグラウンド伝導度は8 uSより小さく、これに対して気体透過性の管を有しないシステムのバックグラウンド伝導度は約21 uSである。バックグラウンド伝導度の低下は二酸化炭素の除去によるものである。さらに、気体透過性の管を有するシステムでは、“ウオーターディップ”が実質的に減少している。最後に、試料濃度と注入量は同一であるが、低いバックグラウンド信号に対して検体ピークが検出されているために、気体透過性の管を有するシステムの検体ピークの方が約10%高い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程を含む、検体イオンの検出に先立ってガスを除去することによってサプレッションを受けた移動相中の溶解した炭酸の量を減少させる、サプレッションを受けたイオンクロマトグラフィーの方法:
(a) カチオンカーボネート/バイカーボネートを含む水性の移動相中において検体イオンをクロマトグラフィーで分離する工程;
(b) 移動相をサプレッションして溶解した炭酸と二酸化炭素ガスを平衡状態にする工程;
(c) 二酸化炭素ガスを除去して移動相中の炭酸の量を減少する工程;及び
(d) 工程(c)の後で分離した検体イオンを検出する工程。
【請求項2】
カチオンがナトリウムイオンを含み、かつ該ナトリウムイオンを工程(b)においてヒドロニウムイオンでイオン交換してサプレッションする、請求項1の方法。
【請求項3】
気体透過性の管を通して二酸化炭素ガスを除去する、請求項1の方法。
【請求項4】
ヒドロニウムイオンを水の加水分解で生成する、請求項2の方法。
【請求項5】
水の電気分解が酸素ガス及び水素ガスを含む副生物を生じ、かつ分離した検体イオンの検出に先だって副生物の酸素ガス及び水素ガスを除去する追加の工程を含む、請求項4の方法。
【請求項6】
以下の工程を含む、検体イオンの検出に先立ってガスを除去する、サプレッションを受けたイオンクロマトグラフィーの方法:
(a) 電解質を含む水性の移動相中で検体イオンをクロマトグラフィーで分離して、分離した検体イオン及び電解質を含む水性のクロマトグラフィー流出液を形成する工程;
(b) 水の電気分解で生じる電気分解イオンであって、ヒドロニウムイオン及びヒドロキシドイオンからなる群から選択する電気分解イオンでイオン置換を行って電解質をサプレッションし;
水の電気分解が副生物のガスをさらに生成する工程;
(c) 分離した検体イオンから副生物のガスを除去する工程;及び
(d) 工程(c)の後で分離した検体イオンを検出する工程。
【請求項7】
副生物のガスを気体透過性の管を通じて除去する、請求項6の方法。
【請求項8】
副生物のガスが水素ガスを含む、請求項6の方法。
【請求項9】
副生物のガスが酸素ガスを含む、請求項6の方法。
【請求項10】
検体イオンがカチオンを含みかつ電気分解イオンがヒドロキシドイオンを含む、請求項6の方法。
【請求項11】
検体イオンがアニオンを含みかつ電気分解イオンがヒドロニウムイオンを含む、請求項6の方法。
【請求項12】
電気分解する水が水性の移動相由来である、請求項6の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図4A】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−150124(P2012−150124A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−83698(P2012−83698)
【出願日】平成24年4月2日(2012.4.2)
【分割の表示】特願2000−351939(P2000−351939)の分割
【原出願日】平成12年10月13日(2000.10.13)
【出願人】(396023214)オールテック アソシエイツ インコーポレイテッド (4)
【氏名又は名称原語表記】Alltech Associates,Inc.
【住所又は居所原語表記】2051 Waukegan Road,Deerfield,Illinois 60015,United States of America