説明

試料中のタンパク質の測定方法及び測定キット

【課題】 測定に当たり高価な装置や器具を必要とせず、測定の操作が簡便であり、測定に要する時間が極めて短く、かつ試料中に微量に含まれるタンパク質をも測定することができる高感度な試料中のタンパク質の測定方法及び測定キットを提供する。
【解決手段】 試料中のタンパク質を測定するのに、次の各工程を含む測定方法により測定を行う。
1)試料、及びタンパク質と会合し凝集体を形成する色素を、接触させ、これにより、試料に含まれていたタンパク質と当該色素とを会合させ、これらの凝集体を形成させる凝集体形成工程;
2)当該凝集体の形成後、当該凝集体を含む溶液の一定量をガラス繊維よりなる多孔性担体に通す通流工程;及び
3)当該多孔性担体表面の色を測定する色測定工程。
また、試料中のタンパク質の測定キットであって、タンパク質と会合し凝集体を形成する色素を含有する試薬、及びガラス繊維よりなる多孔性担体を含むものよりなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料中に微量に含まれるタンパク質を、高感度かつ簡便に測定することができる測定方法及び測定キットに関する。
本発明は、分析化学、生命科学及び医療の分野において有用であり、特に臨床検査分野において有用なものである。
【背景技術】
【0002】
血清又は血漿のタンパク質濃度は、脱水、網内系疾患又は慢性感染症等において高値となる。
また、血漿タンパクの漏出、栄養不良又は肝機能障害等において低値となる。
このように血清又は血漿のタンパク質濃度は、各種疾患又は各種病態に伴って変化するので、その測定は疾患の診断及び治療において重視されている。
【0003】
また、尿中のタンパク質は、腎疾患、心疾患、血液疾患、黄だん又は高熱等において出現する。
この尿中のタンパク質を測定することも、前記疾患の診断及び治療にとって重要である。
特に、尿中の微量のアルブミンを測定することは、糖尿病性腎症などの早期発見等において、大変重要である。
【0004】
従来の試料中のタンパク質の測定方法(測定キット)としては、まず、タンパク質と結合するとその色調を変える色素を担体に含浸させた試験片を用いる方法がある。
しかし、この試験片を用いる方法は、測定限界が10〜20mg/dLであり、試料中に微量に含まれるタンパク質を測定することができないものであった。
また、この測定方法(測定キット)は、試料中の他の物質や非結合態色素の影響を受けて、測定誤差が生じる場合もあった。
【0005】
また、タンパク質中の4個のペプチド結合がアルカリ溶液中で2価の銅イオンとキレート結合して紫色に発色する反応を利用するBiuret法(ビュレット法)は、測定限界は10mg/dLであるが、測定の操作は煩雑であり、測定に時間が掛かるものであった。
【0006】
そして、2価の銅イオンとフェノール試薬を用いるLowry法(ローリー法)は、測定限界が2.5mg/dLと感度は高いが、やはり測定の操作は煩雑であり、測定に時間を要するものであった。
【0007】
また、ピロガロールレッド・モリブデン錯体が酸性条件下でタンパク質と結合することにより青紫色に変色する反応を利用するピロガロールレッド・モリブデン錯体発色法は、測定限界が2mg/dLと感度は高いが、やはり測定の操作は煩雑なものであり測定に時間が掛かるものであった。
【0008】
また、木下らは、試料中のタンパク質をメンブランフィルタ上に濃縮し、その後フィルタをフルオレセインイソチオシアネート(FITC)で蛍光染色し、洗浄後にスポットの蛍光強度を測定する方法を報告している。
しかしながら、この方法においては、タンパク質とFITCとの反応に30分も要し、また妨害物質を除去するために染色後には洗浄を必要とするという煩雑なものであった(非特許文献1参照。)。
【0009】
そして、藤田らは、タンパク質と色素−金属錯体との沈殿会合体をフィルタで物理的に補集した後、水酸化ナトリウム水溶液で再溶解し、この溶液の吸光度を測定する方法を報告している。
しかしながら、この方法においては、沈殿物の目詰まりのため定量性が決して良好とは言えず、またフィルタ上の着色を観察するものではなく、再溶解液を測定するものであるため、簡易迅速な分析に適さないものであった(非特許文献2参照。)。
【0010】
なお、尿中の微量アルブミンを測定する方法(測定試薬)として、免疫比濁法又はラテックス比濁法を測定原理とするものがある。
この方法は高感度であるが、その測定に高価な分析装置を必要とするものであり、かつ測定試薬のコストも高いものであった。
【0011】
また、最近、タンパク質と結合するとその色調を変える色素を担体に含浸させた試験片において、測定限界が2〜3mg/dLのものが出てきたが、試験片は試料を希釈することなく、直接試料を試験片に接触させ測定を行うものであるので、試料中に含まれる種々の干渉物質の影響を受け易く、特に試料が尿である場合には尿に含まれる緩衝能を有する物質によりpHが変動し、このpHの変動により色素の色調の変化が影響を受け、試料中のタンパク質の測定に誤差が生じてしまうことがあった。
【0012】
上述した従来のタンパク質の測定方法及び測定キットは、測定限界が高くすなわち測定の感度が低いものであったり、測定の操作が煩雑であったり、測定に時間を要したり、測定に高価な分析装置を必要とするものであったり、測定試薬のコストが高いものであったり、又は試料中の干渉物質による測定結果への影響を受け易いものであった。
【0013】
なお、本発明者らは、先に、a)タンパク質を含有する可能性がある試料と、タンパク質とイオン会合体を形成する色素を混合し、前記イオン会合体を沈殿させずにイオン会合体溶液を形成させる工程;b)前記イオン会合体溶液を疎水性フィルタに通すことにより、前記イオン会合体溶液中に溶解した前記会合体を前記フィルタに吸着させる工程;及び、c)前記フィルタ上の前記会合体を定性・定量的に分析する工程を順次行う、試料中のタンパク質の分析方法及び分析キットを開発した(特許文献1参照。)。
【0014】
また、本発明者らは、先に、試料、タンパク質と会合体を形成する色素、及び界面活性物質を接触させる工程;前記接触後その一定量を多孔性膜上に添加する工程;並びに前記多孔性膜上の着色域を測定する工程を含む、試料中のタンパク質の測定方法及び測定キットを開発した(特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開平11−304803号公報
【特許文献2】特開2005−55417号公報
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】「分析化学」、第23巻、第1543頁〜第1544頁、1974年
【非特許文献2】「分析化学」、第44巻、第733頁〜第738頁、1995年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明の課題は、測定に当たり高価な装置、器具又は測定試薬を必要とせず、測定の操作が簡便であり、測定に要する時間が極めて短く、試料中の干渉物質による測定結果への影響を受けにくいものであり、かつ試料中に微量に含まれるタンパク質をも測定することができる高感度な試料中のタンパク質の測定方法及び測定キットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明者らは、本出願人が独立行政法人科学技術振興機構から開発委託を受けたことに基づき、種々検討を行ない、本発明を完成させた。
本発明は、以下の発明を包含するものである。
(1) 1)試料、及びタンパク質と会合し凝集体を形成する色素を、接触させ、これにより、試料に含まれていたタンパク質と当該色素とを会合させ、これらの凝集体を形成させる凝集体形成工程;
2)当該凝集体の形成後、当該凝集体を含む溶液の一定量をガラス繊維よりなる多孔性担体に通す通流工程;及び
3)当該多孔性担体表面の色を測定する色測定工程、を含む試料中のタンパク質の測定方法。
(2) 凝集体形成工程において、界面活性物質を共存させる、前記(1)記載の試料中のタンパク質の測定方法。
(3) タンパク質と会合し凝集体を形成する色素を含有する試薬、及びガラス繊維よりなる多孔性担体を含む、試料中のタンパク質の測定キット。
(4) 界面活性物質を更に含む、前記(3)記載の試料中のタンパク質の測定キット。
(5) 前記(1)記載の測定方法に使用されるものである、前記(3)記載の試料中のタンパク質の測定キット。
【発明の効果】
【0019】
本発明の試料中のタンパク質の測定方法及び測定キットは、測定に当たり高価な装置、器具又は測定試薬を必要とせず、測定の操作が簡便であり、測定に要する時間が極めて短く、かつ試料中に微量に含まれるタンパク質をも測定することができる高感度な試料中のタンパク質の測定方法及び測定キットである。
また、本発明の試料中のタンパク質の測定方法及び測定キットは、試料と、タンパク質と会合し凝集体を形成する色素を接触させるものであり、これにより試料は希釈され、すなわち試料中の干渉物質も希釈され、当該干渉物質の濃度は低いものとなるので、本発明の試料中のタンパク質の測定方法及び測定キットは、試料中の干渉物質による測定結果への影響を受けにくいものである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】試料中のタンパク質の測定方法及び測定キットにおける、ガラス繊維よりなる多孔性担体を用いることの効果を示した図である。
【0021】
【図2】本発明の試料中のタンパク質の測定方法及び測定キットにおける、試料中のタンパク質の測定結果を示した図である。
【0022】
【図3】本発明の試料中のタンパク質の測定方法及び測定キットにおける、試料中のタンパク質の測定結果を示した図である。
【0023】
【図4】本発明の試料中のタンパク質の測定方法及び測定キットにおいて、タンパク質と会合し凝集体を形成する色素(5種類)をそれぞれ用いた場合の測定結果を示した図である。
【0024】
【図5】本発明の試料中のタンパク質の測定方法及び測定キットにおいて、タンパク質と会合し凝集体を形成する色素(5種類)をそれぞれ用いた場合の測定結果を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
I.試料中のタンパク質の測定方法
1.試料
本発明における試料としては、タンパク質を含む可能性がある試料であれば特に限定されない。
この試料としては、例えば、ヒト若しくは動物に由来する試料、植物に由来する試料、微生物に由来する試料、食物、飲料、飲料水、薬剤、試薬、又は環境試料等を挙げることができる。
【0026】
ヒト若しくは動物に由来する試料は、特に限定されず、例えば、ヒト或いは動物の、血液、血清、血漿、尿、精液、髄液、唾液、汗、涙、腹水、若しくは羊水などの体液;大便などの排泄物;脳、心臓、腎臓、若しくは肝臓などの臓器;毛髪、皮膚、爪、筋肉、若しくは神経などの組織;又は細胞等を挙げることができる。
【0027】
食物は、特に限定されず、例えば、食肉、野菜、穀物、果物、卵、水産物、又は加工食品等を挙げることができる。
【0028】
飲料は、特に限定されず、例えば、ジュース、牛乳、茶、コーヒー、又は酒類等を挙げることができる。
【0029】
薬剤は、特に限定されず、例えば、輸液、注射液、散剤、又は錠剤等を挙げることができる。
【0030】
なお、本発明において測定に用いる試料は、液体である必要があるので、もし試料が液体でない場合には、抽出処理又は可溶化処理等の前処理を既知の方法に従って行い、液体試料とすればよい。
また、試料は、必要に応じて、希釈又は濃縮処理等を行ってもよい。
【0031】
2.タンパク質と会合し凝集体を形成する色素
本発明における、タンパク質と会合し凝集体を形成する色素は、静電気的引力又は疎水相互作用等によってタンパク質と会合することが可能であり、かつ、この色素と会合したタンパク質同士が凝集体を形成することが可能なものである。
このような色素であれば、特に限定されずに用いることができる。
【0032】
このタンパク質と会合し凝集体を形成する色素としては、例えば、エリスロシンB、エオシンB、エオシンY、フロキシンB、若しくはローズベンガルなどのキサンテン系色素;クマシブリリアントブルー(CBB)、ブロモクロロフェノールブルー、テトラブロモフェノールブルー、ブロモフェノールブルー、若しくはブロモクレゾールパープルなどのトリフェニルメタン系色素;又はバッファローブラック、アシドオレンジ12、メチルオレンジ、オレンジG、若しくはアゾスルファチアゾールなどのアゾ色素等を挙げることができる。
【0033】
このタンパク質と会合し凝集体を形成する色素としては、疎水性が高いものが好ましい。
また、このタンパク質と会合し凝集体を形成する色素としては、その酸解離定数(pKa)の値が測定を行おうとするタンパク質の等電点(pI)の値よりも低いものが好ましい。
【0034】
このように、タンパク質と会合し凝集体を形成する色素の酸解離定数(pKa)の値が、測定を行おうとするタンパク質の等電点の値よりも低い場合、前記の凝集体形成工程において当該凝集体を形成させる際のpHを、測定しようとするタンパク質の等電点未満のpHとしたときは、測定しようとするタンパク質の電荷がプラス側となり、また前記色素のマイナス電荷を保つことができ、これにより試料に含まれるタンパク質と前記色素とが会合し易くなり、これによりこのタンパク質測定の感度を高めることができるので、好ましい。
【0035】
このタンパク質と会合し凝集体を形成する色素としては、キサンテン系色素であることが好ましく、エリスロシンB、エオシンB、エオシンY、フロキシンB若しくはローズベンガルであることがより好ましく、エリスロシンBであることが特に好ましい。
【0036】
このタンパク質と会合し凝集体を形成する色素は、このタンパク質と会合し凝集体を形成する色素を含有する試薬として、より好ましくは、このタンパク質と会合し凝集体を形成する色素を含有する溶液の試薬として、試料と混合し、接触させることが好ましい。
【0037】
なお、このタンパク質と会合し凝集体を形成する色素の濃度は、低すぎると測定の感度が得られず試料中のタンパク質を測定することができないので、通常、試料中のタンパク質と接触させるときの濃度で、1μM以上であることが好ましく、10μM以上であることがより好ましく、20μM以上であることが特に好ましい。
【0038】
また、このタンパク質と会合し凝集体を形成する色素の濃度は、高すぎると試料中にタンパク質が存在しなくとも当該多孔性担体の表面に発色が生じてしまい、試料中にタンパク質が存在するときとの判別が難しくなるので、通常、試料中のタンパク質と接触させるときの濃度で、500μM以下であることが好ましく、100μM以下であることがより好ましく、50μM以下であることが特に好ましい。
【0039】
3.ガラス繊維よりなる多孔性担体
本発明におけるガラス繊維よりなる多孔性担体は、ガラス繊維よりなる多数の微細な孔を有する担体であって、この担体に溶液を添加したときにその溶液を通すことができるものであれば、特に制限なく用いることができる。
【0040】
このガラス繊維よりなる多孔性担体におけるガラス繊維であるが、例えば、ホウケイ酸ガラス(硬質ガラス)、軟質ガラス、又は石英ガラス(ケイ酸ガラス、若しくはケイ酸塩ガラス)等のガラスからなるガラス繊維であれば、特に制限なく用いることができる。
【0041】
このガラス繊維よりなる多孔性担体の孔径(又は粒子保持能、若しくは保留粒子径等)は、特に制限はなく、種々の孔径のものを用いることができる。
なお、特に挙げるならば、孔径が0.1μm以上のものが好ましく、0.3μm以上のものがより好ましく、0.5μm以上のものが特に好ましい。
また、これも特に挙げるならば、孔径が10μm以下のものが好ましく、5μm以下のものがより好ましく、2.7μm以下のものが特に好ましい。
【0042】
なお、本発明におけるガラス繊維よりなる多孔性担体は、ガラス繊維のろ紙若しくはフィルタ等よりなるものであっても良く、又はこれらのガラス繊維のろ紙若しくはフィルタ等がろ過(フィルタ)用の器具にセットされたものであっても良く、あるいはこれらのガラス繊維のろ紙若しくはフィルタ等がハウジングに収められたものであっても良く、更には、これらのガラス繊維のろ紙若しくはフィルタ等がガラス繊維若しくは他の材質よりなるプレフィルタ等と組み合わされたものであってもよい。
【0043】
このガラス繊維よりなる多孔性担体の内、ガラス繊維のろ紙若しくはフィルタ等よりなるものとしては、例えば、ワットマンジャパン社の「ガラス繊維ろ紙(結合剤フリー)」のグレードGF/A(粒子保持能:1.6μm、厚さ:260μm)、グレードGF/B(粒子保持能:1.0μm、厚さ:675μm)、グレードGF/C(粒子保持能:1.2μm、厚さ:260μm)、グレードGF/D(粒子保持能:2.7μm、厚さ:675μm)、グレードGF/F(粒子保持能:0.7μm、厚さ:420μm)、グレード934−AH(粒子保持能:1.5μm、厚さ:435μm)、石英繊維ろ紙QM−A(粒子保持能:2.2μm、厚さ:450μm)、石英繊維ろ紙QM−B(粒子保持能:2.8μm、厚さ:950μm)、若しくはEPM2000(粒子保持能:2.0μm、厚さ:450μm)、又はワットマンジャパン社の「マルチグレードGMF150」のGMF150−1μm(粒子保持能:1.2μm、厚さ:730μm)、若しくはGMF150−2μm(粒子保持能:2.4μm、厚さ:750μm)、又はワットマンジャパン社の「ガラス繊維ろ紙(結合剤使用)」のグレードGF6〔無機結合剤〕(厚さ:350μm)、グレードGF8〔無機結合剤〕(厚さ:350μm)、グレードGF9〔無機結合剤〕(厚さ:350μm)、グレードGF10〔有機結合剤〕(厚さ:350μm)、グレードGF92〔無機結合剤〕(厚さ:350μm)、若しくはグレードGF3362〔無機結合剤〕(厚さ:500μm)、又はワットマンジャパン社のTCLPろ紙〔酸処理・低金属〕(粒子保持能:0.6μm〜0.8μm)、又はアドバンテック東洋社の「ガラスろ紙」のGA−55(保留粒子径:0.6μm、厚さ:210μm、バインダー:なし)、GA−100(保留粒子径:1.0μm、厚さ:440μm、バインダー:なし)、GA−200(保留粒子径:0.8μm、厚さ:740μm、バインダー:なし)、GB−100R(保留粒子径:0.6μm、厚さ:380μm、バインダー:なし)、GB−140(保留粒子径:0.4μm、厚さ:560μm、バインダー:なし)、GC−50(保留粒子径:0.5μm、厚さ:190μm、バインダー:なし)、GC−50H(保留粒子径:0.5μm、厚さ:190μm、バインダー:なし)、GD−120(保留粒子径:0.9μm、厚さ:510μm、バインダー:なし)、GF−75(保留粒子径:0.3μm、厚さ:350μm、バインダー:なし)、GS−25(保留粒子径:0.6μm、厚さ:210μm、バインダー:あり)、GC−90(保留粒子径:0.5μm、厚さ:300μm、バインダー:あり)、若しくはDP−70(保留粒子径:0.6μm、厚さ:520μm、バインダー:あり)等を挙げることができる。
【0044】
また、ガラス繊維よりなる多孔性担体の内、ガラス繊維のろ紙若しくはフィルタ等がハウジングに収められたものとしては、例えば、ワットマンジャパン社の「GD/X シリンジフィルタ」のメンブレン:GF/A(粒子保持能:1.6μm)、メンブレン:GF/B(粒子保持能:1.0μm)、メンブレン:GF/C(粒子保持能:1.2μm)、メンブレン:GF/D(粒子保持能:2.7μm)、メンブレン:GF/F(粒子保持能:0.7μm)、メンブレン:934−AH(粒子保持能:1.5μm)、若しくはメンブレン:GMF(粒子保持能:0.45μm)、又はワットマンジャパン社の「プラディスク シリンジフィルタ」の「プラディスク13」のメンブレン:GF/A(粒子保持能:1.6μm)、メンブレン:GF/B(粒子保持能:1.0μm)、メンブレン:GF/C(粒子保持能:1.2μm)、メンブレン:GF/D(粒子保持能:2.7μm)、メンブレン:GF/F(粒子保持能:0.7μm)、メンブレン:934−AH(粒子保持能:1.5μm)、若しくはメンブレン:GMF(粒子保持能:0.45μm)、又はワットマンジャパン社の「プラディスク シリンジフィルタ」の「プラディスク25」のメンブレン:GF/F(粒子保持能:0.7μm)、メンブレン:GD1(粒子保持能:1.0μm)、若しくはメンブレン:GD2(粒子保持能:2.0μm)等を挙げることができる。
【0045】
4.界面活性物質
本発明においては、前記の凝集体形成工程において、界面活性物質を共存させることが、前記の色測定工程においてタンパク質を含有する試料における多孔性担体表面の色の発色度(濃さ)が高くなって高感度に測定が行えるようになり、かつタンパク質を含有しない試料の測定(陰性対照;又は試薬ブランク)において前記の多孔性担体表面の色の発色が無いか又はごく薄い発色にとどまり、前記の色の測定におけるタンパク質を含有する試料とタンパク質を含有しない試料との判別が容易になるという効果を生じるので、界面活性物質を共存させることが好ましい。
【0046】
この界面活性物質としては、界面活性物質であれば、特に限定されずに用いることができる。
この界面活性物質は、天然の界面活性物質であってもよく、合成等により製造された界面活性物質であってもよい。
【0047】
この界面活性物質としては、例えば、界面活性剤、多糖類若しくはその誘導体、又はその他の界面活性物質等を挙げることができる。
【0048】
界面活性剤としては、例えば、非イオン性界面活性剤、両イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、及び陽イオン性界面活性剤等を挙げることができる。
【0049】
なお、この界面活性剤をより具体的に例示すると、例えば、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、デカグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンフィトステロール、フィトスタノール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンヒマシ油、硬化ヒマシ油若しくはポリオキシエチレンラノリンなどの非イオン性界面活性剤;酢酸ベタインなどの両性界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩若しくはポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩などの陰イオン性界面活性剤;アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩若しくは塩化ベンザルコニウムなどの陽イオン性界面活性剤等を挙げることができる。
【0050】
前記の非イオン性界面活性剤の具体例として、例えば、Triton X−100、Triton X−405、又はTween20等を挙げることができる。
【0051】
多糖類としては、単糖が数個以上脱水縮合して生じた糖質を挙げることができ、例えば、シクロデキストリン(CD)、デキストラン、又はヘパリン等を挙げることができる。
【0052】
多糖類の誘導体としては、前記多糖類の水素若しくは水酸基などの官能基が、ヒドロキシプロピル基、ヒドロキシブチル基、グルコシル基、マルトシル基、ジエチルアミノエチル基、メチル基若しくはエチリデン基などの脂肪族炭化水素基、シクロプロピル基などの脂環式炭化水素基、フェニル基、ベンジル基若しくはベンジリデン基などの芳香族炭化水素基、メトキシ基若しくはフェノキシ基などのエーテル基、アセトキシ基若しくはベンゾイロキシ基などのエステル基、アセチル基、プロピオニル基若しくはベンゾイル基などのアシル基、スルフヒドリル基、スルホ基、スルホニル基、カルボキシル基、アミノ基、イミノ基、ニトリル基、カルボニル基、オキソ基、水酸基、又はニトロ基等で置換されたもの等を挙げることができる。
更に、多糖類の誘導体としては、前記多糖類又は前記置換体の架橋物等を挙げることができる。
【0053】
シクロデキストリンとしては、α−シクロデキストリン(α−CD)、β−シクロデキストリン(β−CD)、γ−シクロデキストリン(γ−CD)等を挙げることができる。
また、シクロデキストリン誘導体としては、例えば、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン又はγ−シクロデキストリン等の水酸基が、ヒドロキシプロピル基、ヒドロキシブチル基、グルコシル基、マルトシル基、ベンジル基、若しくはスルホニル基などで置換されたもの、又はこれらのシクロデキストリン若しくはその誘導体の架橋物等を挙げることができる。
【0054】
シクロデキストリンとしては、β−シクロデキストリン又はγ−シクロデキストリンが好ましく、シクロデキストリン誘導体としては、β−シクロデキストリン若しくはγ−シクロデキストリンの水酸基などが置換されたもの、又はβ−シクロデキストリン若しくはγ−シクロデキストリンの架橋物が好ましい。
【0055】
デキストランサルフェイト若しくはその誘導体は、分子量が1,000〜5,000,000の範囲のものが好ましく、分子量が5,000〜1,000,000の範囲のものが特に好ましい。
【0056】
その他の界面活性物質としては、例えば、ポリエチレングリコール又はポリプロピレングリコールなどのポリアルキレングリコール等を挙げることができる。
このポリエチレングリコール又はポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコールとしては、例えば、分子量200〜4,000,000のものを用いることができる。分子量1,000〜400,000のものがより好ましく、分子量2,000〜40,000のものが特に好ましい。
【0057】
界面活性物質としては、Triton X−100、Triton X−405若しくはTween20等の非イオン性界面活性剤、又はポリエチレングリコール若しくはポリプロピレングリコールなどのポリアルキレングリコール等が好ましく、Triton X−100がより好ましい。
【0058】
なお、この界面活性物質の濃度は、低すぎるとその共存の効果が得られないので、通常は、前記凝集体形成工程において共存させるときの濃度で、0.0001%(W/V)以上であることが好ましく、0.001%(W/V)以上であることがより好ましく、0.005%(W/V)以上であることが特に好ましい。
【0059】
また、この界面活性物質の濃度は、高すぎるとそれを含む溶液の粘性が上昇する可能性があり、そうなると前記通流工程におけるガラス繊維よりなる多孔性担体への添加等の量に誤差が生じることにもなるので、通常は、前記凝集体形成工程において共存させるときの濃度で、5%(W/V)以下であることが好ましく、1%(W/V)以下であることがより好ましく、0.1%(W/V)以下であることが特に好ましい。
【0060】
前記の凝集体形成工程において、界面活性物質は、複数種類のものを組み合わせて共存させても良い。
【0061】
5.pH
本発明では、前記の凝集体形成工程において、試料に含まれていたタンパク質と、タンパク質と会合し凝集体を形成する色素とを会合させ、これらの凝集体を形成させる際のpHは、測定しようとするタンパク質の等電点(pI)の値未満のpHであることが好ましい。
このように、測定しようとするタンパク質の等電点の値未満のpHとした場合には、
測定しようとするタンパク質の電荷がプラス側となり、前記の色素と会合し易くなり、これによりこのタンパク質測定の感度を高めることができるので、好ましい。
【0062】
なお、このタンパク質の等電点の値の例を示すと、ヒトのアルブミンはpH4.8、α1−グロブリンはpH2.0、γ1−グロブリンはpH5.8、γ2−グロブリンはpH7.4、ハプトグロブリンはpH4.1、卵白アルブミンはpH4.6等を挙げることができる。
よって、例えば、ヒトのアルブミンを測定しようとする場合は、前記の凝集体形成工程におけるpHをpH4.8未満とすることが好ましい。
【0063】
また、本発明では、前記の凝集体形成工程において、試料に含まれていたタンパク質と、タンパク質と会合し凝集体を形成する色素とを会合させ、これらの凝集体を形成させる際のpHは、このタンパク質と会合し凝集体を形成する色素の酸解離定数(pKa)の値のpH付近にあることが好ましい。
これは、より好ましくは前記の凝集体形成工程においてタンパク質と会合し凝集体を形成する色素の酸解離定数(pKa)の値の±2の範囲内のpHとすることであり、特に好ましくはタンパク質と会合し凝集体を形成する色素の酸解離定数(pKa)の値の±1.5の範囲内のpHとすることであり、更に好ましくはこのタンパク質と会合し凝集体を形成する色素の酸解離定数(pKa)の値の±1の範囲内のpHとすることである。
【0064】
このように、前記の凝集体形成工程において、pHを前記のようにタンパク質と会合し凝集体を形成する色素の酸解離定数(pKa)の値のpH付近にすることにより、前記色素のマイナス電荷を保つことができ、これにより試料に含まれるタンパク質と会合し易くなり、これによりこのタンパク質測定の感度を高めることができるので、好ましい。
【0065】
なお、このタンパク質と会合し凝集体を形成する色素の酸解離定数(pKa)の例を示すと、エリスロシンBはpKa3.2、エオシンBはpKa2.2、エオシンYはpKa2.8、及びローズベンガルはpKa3.51等である。
【0066】
よって、例えば、タンパク質と会合し凝集体を形成する色素としてエリスロシンBを用いる場合には、前記の凝集体形成工程におけるpHを、エリスロシンBの酸解離定数(pKa)3.2の付近のpHとすることが好ましく、pH1.2〜pH5.2の範囲内のpHとすることがより好ましく、pH1.7〜pH4.7の範囲内のpHとすることが特に好ましく、pH2.2〜pH4.2の範囲内のpHとすることが更に好ましい。
【0067】
また、例えば、タンパク質と会合し凝集体を形成する色素としてエオシンBを用いる場合には、前記の凝集体形成工程におけるpHを、エオシンBの酸解離定数(pKa)2.2の付近のpHとすることが好ましく、pH1.2〜pH4.2の範囲内のpHとすることがより好ましく、pH1.4〜pH3.7の範囲内のpHとすることが特に好ましく、pH1.7〜pH3.2の範囲内のpHとすることが更に好ましい。
【0068】
そして、例えば、タンパク質と会合し凝集体を形成する色素としてエオシンYを用いる場合には、前記の凝集体形成工程におけるpHを、エオシンYの酸解離定数(pKa)2.8の付近のpHとすることが好ましく、pH1.2〜pH4.8の範囲内のpHとすることがより好ましく、pH1.5〜pH4.3の範囲内のpHとすることが特に好ましく、pH1.8〜pH3.8の範囲内のpHとすることが更に好ましい。
【0069】
そして、例えば、タンパク質と会合し凝集体を形成する色素としてローズベンガルを用いる場合には、前記の凝集体形成工程におけるpHを、ローズベンガルの酸解離定数(pKa)3.51の付近のpHとすることが好ましく、pH1.5〜pH5.5の範囲内のpHとすることがより好ましく、pH2.0〜pH5.0の範囲内のpHとすることが特に好ましく、pH2.5〜pH4.5の範囲内のpHとすることが更に好ましい。
【0070】
以上のことより、前記の凝集体形成工程においては、pHを、測定しようとするタンパク質の等電点の値未満のpHとし、かつタンパク質と会合し凝集体を形成する色素の酸解離定数(pKa)の値のpH付近のpHとすることが特に好ましい。
【0071】
例えば、タンパク質と会合し凝集体を形成する色素としてエリスロシンBを用い、試料中のヒトのアルブミンを測定しようとする場合は、前記の凝集体形成工程において、ヒトのアルブミンの等電点であるpH4.8未満のpHであって、かつエリスロシンBの酸解離定数(pKa)3.2の付近のpHとすることが好ましく、pH1.2以上かつpH4.8未満の範囲内のpHとすることがより好ましく、pH1.7〜pH4.5の範囲内のpHとすることが特に好ましく、pH2.2〜pH4.2の範囲内のpHとすることが更に好ましい。
【0072】
また、例えば、タンパク質と会合し凝集体を形成する色素としてエオシンBを用い、試料中のヒトのアルブミンを測定しようとする場合は、前記の凝集体形成工程において、ヒトのアルブミンの等電点であるpH4.8未満のpHであって、かつエオシンBの酸解離定数(pKa)2.2の付近のpHとすることが好ましく、pH1.2〜pH4.2の範囲内のpHとすることがより好ましく、pH1.4〜pH3.7の範囲内のpHとすることが特に好ましく、pH1.7〜pH3.2の範囲内のpHとすることが更に好ましい。
【0073】
そして、例えば、タンパク質と会合し凝集体を形成する色素としてエオシンYを用い、試料中のヒトのアルブミンを測定しようとする場合は、前記の凝集体形成工程において、ヒトのアルブミンの等電点であるpH4.8未満のpHであって、かつエオシンYの酸解離定数(pKa)2.8の付近のpHとすることが好ましく、pH1.2以上かつpH4.8未満の範囲内のpHとすることがより好ましく、pH1.5〜pH4.3の範囲内のpHとすることが特に好ましく、pH1.8〜pH3.8の範囲内のpHとすることが更に好ましい。
【0074】
そして、例えば、タンパク質と会合し凝集体を形成する色素としてローズベンガルを用い、試料中のヒトのアルブミンを測定しようとする場合は、前記の凝集体形成工程において、ヒトのアルブミンの等電点であるpH4.8未満のpHであって、かつローズベンガルの酸解離定数(pKa)3.51の付近のpHとすることが好ましく、pH1.5以上かつpH4.8未満の範囲内のpHとすることがより好ましく、pH2.0〜pH4.65の範囲内のpHとすることが特に好ましく、pH2.5〜pH4.5の範囲内のpHとすることが更に好ましい。
【0075】
なお、前記の凝集体形成工程においては、そのpHが低すぎると、例えばpH1未満であると、タンパク質が変性や不溶化されるので好ましくない。
【0076】
そして、前記の凝集体形成工程において、試料に含まれていたタンパク質と、タンパク質と会合し凝集体を形成する色素とを会合させ、これらの凝集体を形成させる際のpHを前記の通りのpHとするには、このpHとなるような緩衝剤(これらのpH域に緩衝能がある緩衝剤)を用いることが好ましい。
この緩衝剤としては、既知の緩衝剤を用いることができる。
【0077】
例えば、緩衝剤として、グリシン(pKa1:2.35)、リン酸(pKa1:2.15)、フタル酸(pKa1:2.95、pKa2:5.41)、クエン酸(pKa1:3.13、pKa2:4.76)、バルビツール酸(pKa1:4.04)、コハク酸(pKa1:4.21、pKa2:5.64)、酢酸(pKa2:4.76)、及び種々のグッド緩衝剤等を挙げることができる。
【0078】
6.測定操作
本発明における試料中のタンパク質の測定方法の測定操作について、以下説明を行う。
(1)凝集体形成工程
試料、及びタンパク質と会合し凝集体を形成する色素を、接触させ、これにより、試料に含まれていたタンパク質と当該色素とを会合させ、これらの凝集体を形成させる凝集体形成工程であるが、前記の試料と、前記のタンパク質と会合し凝集体を形成する色素を、接触させることができれば、どのような方法でもよい。
この接触により、試料中に含まれるタンパク質と、タンパク質と会合し凝集体を形成する色素とを、会合させ、これら会合した「タンパク質−タンパク質と会合し凝集体を形成する色素」の凝集体が形成される。
このときの濃度については、前記の通りである。
【0079】
なお、前記の通り、この凝集体形成工程においては、界面活性物質を共存させることが好ましい。
【0080】
この凝集体形成工程において、前記の凝集体を形成させるために、試料、及びタンパク質と会合し凝集体を形成する色素を接触させる時間であるが、これは特には限定はなく、適宜設定すれば良い。
【0081】
なお、通常は、この凝集体形成工程において、試料と、タンパク質と会合し凝集体を形成する色素とを接触させて、直ちに、次の通流工程を実施することができるが、この試料と、タンパク質と会合し凝集体を形成する色素を接触させる時間としては、 2秒間以上接触させることが好ましく、5秒間以上であることがより好ましく、10秒間以上であることが特に好ましく、20秒間以上であることが更に好ましい。
【0082】
なお、この凝集体形成工程において、前記の凝集体を形成させるために、試料、及びタンパク質と会合し凝集体を形成する色素を接触させる際の温度であるが、特に限定はない。
但し、温度が高すぎるとタンパク質が変性する可能性があるので、60℃以下が好ましく、50℃以下がより好ましく、40℃以下が特に好ましく、30℃以下が更に好ましい。
【0083】
また、この凝集体形成工程において、試料、及びタンパク質と会合し凝集体を形成する色素を接触させる際の温度が低すぎると、タンパク質が変性したり、タンパク質と当該色素との会合及び凝集体形成の反応に時間が掛かる可能性があるので、5℃以上が好ましく、10℃以上がより好ましく、15℃以上が特に好ましく、20℃以上が更に好ましい。
【0084】
なお、試料、及びタンパク質と会合し凝集体を形成する色素を、接触させ、これにより、試料に含まれていたタンパク質と当該色素とを会合させ、これらの凝集体を形成させる凝集体形成工程は1段階で行ってもよいが、2段階以上の複数段階で行ってもよい。
【0085】
この凝集体形成工程を1段階で行う場合、例えば、次の態様により実施することができる。
【0086】
(a) 「タンパク質と会合し凝集体を形成する色素」を含有する試薬と、試料とを混合し、接触させ、これにより、試料に含まれていたタンパク質と当該色素とを会合させ、これらの凝集体を形成させる。
【0087】
(b) 「タンパク質と会合し凝集体を形成する色素」を含有し、そのpHが「測定しようとするタンパク質の等電点の値未満のpHであって、かつタンパク質と会合し凝集体を形成する色素の酸解離定数(pKa)の値のpH付近のpH」である試薬と、試料とを混合し、接触させ、これにより、測定しようとするタンパク質の等電点の値未満のpHであって、かつタンパク質と会合し凝集体を形成する色素の酸解離定数(pKa)の値のpH付近のpHにおいて、試料に含まれていたタンパク質と当該色素とを会合させ、これらの凝集体を形成させる。
【0088】
(c) 「タンパク質と会合し凝集体を形成する色素」及び「界面活性物質」を含有する試薬と、試料とを混合し、接触させ、これにより、試料に含まれていたタンパク質と当該色素とを会合させ、これらの凝集体を形成させる。又は、
【0089】
(d) 「タンパク質と会合し凝集体を形成する色素」及び「界面活性物質」を含有し、そのpHが「測定しようとするタンパク質の等電点の値未満のpHであって、かつタンパク質と会合し凝集体を形成する色素の酸解離定数(pKa)の値のpH付近のpH」である試薬と、試料とを混合し、接触させ、これにより、測定しようとするタンパク質の等電点の値未満のpHであって、かつタンパク質と会合し凝集体を形成する色素の酸解離定数(pKa)の値のpH付近のpHにおいて、試料に含まれていたタンパク質と当該色素とを会合させ、これらの凝集体を形成させる。
【0090】
また、この凝集体形成工程を2段階以上の複数段階で行う場合、例えば、次の態様により実施することができる。
【0091】
(A) 第1段階: 「タンパク質と会合し凝集体を形成する色素」を含有する試薬と、試料とを混合し、接触させる。
第2段階: 第1段階の混合液に、「緩衝剤」を含有する試薬〔そのpHが測定しようとするタンパク質の等電点の値未満のpHであって、かつタンパク質と会合し凝集体を形成する色素の酸解離定数(pKa)の値のpH付近のpHであるもの〕を混合し、この混合液のpHを「測定しようとするタンパク質の等電点の値未満のpHであって、かつタンパク質と会合し凝集体を形成する色素の酸解離定数(pKa)の値のpH付近のpH」とし、このpHにおいて、試料に含まれていたタンパク質と当該色素とを会合させ、これらの凝集体を形成させる。
【0092】
(B) 第1段階: 「タンパク質と会合し凝集体を形成する色素」及び「界面活性物質」を含有する試薬と、試料とを混合し、接触させる。
第2段階: 第1段階の混合液に、「緩衝剤」を含有する試薬〔そのpHが測定しようとするタンパク質の等電点の値未満のpHであって、かつタンパク質と会合し凝集体を形成する色素の酸解離定数(pKa)の値のpH付近のpHであるもの〕を混合し、この混合液のpHを「測定しようとするタンパク質の等電点の値未満のpHであって、かつタンパク質と会合し凝集体を形成する色素の酸解離定数(pKa)の値のpH付近のpH」とし、このpHにおいて、試料に含まれていたタンパク質と当該色素とを会合させ、これらの凝集体を形成させる。
【0093】
(C) 第1段階: 「タンパク質と会合し凝集体を形成する色素」を含有する試薬と、試料とを混合し、接触させる。
第2段階: 第1段階の混合液に、「界面活性物質」及び「緩衝剤」を含有する試薬〔そのpHが測定しようとするタンパク質の等電点の値未満のpHであって、かつタンパク質と会合し凝集体を形成する色素の酸解離定数(pKa)の値のpH付近のpHであるもの〕を混合し、この混合液のpHを「測定しようとするタンパク質の等電点の値未満のpHであって、かつタンパク質と会合し凝集体を形成する色素の酸解離定数(pKa)の値のpH付近のpH」とし、このpHにおいて、試料に含まれていたタンパク質と当該色素とを会合させ、これらの凝集体を形成させる。
【0094】
(D) 第1段階: 「緩衝剤」を含有する試薬〔そのpHが測定しようとするタンパク質の等電点の値未満のpHであって、かつタンパク質と会合し凝集体を形成する色素の酸解離定数(pKa)の値のpH付近のpHであるもの〕と、試料とを混合する。
第2段階: 第1段階の混合液に、「タンパク質と会合し凝集体を形成する色素」を含有する試薬を混合し、この混合液において、「測定しようとするタンパク質の等電点の値未満のpHであって、かつタンパク質と会合し凝集体を形成する色素の酸解離定数(pKa)の値のpH付近のpH」で、試料及び「タンパク質と会合し凝集体を形成する色素」を接触させ、これにより、試料に含まれていたタンパク質と当該色素とを会合させ、これらの凝集体を形成させる。
【0095】
(E) 第1段階: 「緩衝剤」及び「界面活性物質」を含有する試薬〔そのpHが測定しようとするタンパク質の等電点の値未満のpHであって、かつタンパク質と会合し凝集体を形成する色素の酸解離定数(pKa)の値のpH付近のpHであるもの〕と、試料とを混合する。
第2段階: 第1段階の混合液に、「タンパク質と会合し凝集体を形成する色素」を含有する試薬を混合し、この混合液において、「測定しようとするタンパク質の等電点の値未満のpHであって、かつタンパク質と会合し凝集体を形成する色素の酸解離定数(pKa)の値のpH付近のpH」で、試料及び「タンパク質と会合し凝集体を形成する色素」を接触させ、これにより、試料に含まれていたタンパク質と当該色素とを会合させ、これらの凝集体を形成させる。
【0096】
(F) 第1段階: 「緩衝剤」を含有する試薬〔そのpHが測定しようとするタンパク質の等電点の値未満のpHであって、かつタンパク質と会合し凝集体を形成する色素の酸解離定数(pKa)の値のpH付近のpHであるもの〕と、試料とを混合する。
第2段階: 第1段階の混合液に、「タンパク質と会合し凝集体を形成する色素」及び「界面活性物質」を含有する試薬を混合し、この混合液において、「測定しようとするタンパク質の等電点の値未満のpHであって、かつタンパク質と会合し凝集体を形成する色素の酸解離定数(pKa)の値のpH付近のpH」で、試料及び「タンパク質と会合し凝集体を形成する色素」を接触させ、これにより、試料に含まれていたタンパク質と当該色素とを会合させ、これらの凝集体を形成させる。
【0097】
(G) 第1段階: 「タンパク質と会合し凝集体を形成する色素」を含有する試薬と、試料とを混合し、接触させる。
第2段階: 第1段階の混合液に、「界面活性物質」を含有する試薬を混合する。
第3段階: 第2段階の混合液に、「緩衝剤」を含有する試薬〔そのpHが測定しようとするタンパク質の等電点の値未満のpHであって、かつタンパク質と会合し凝集体を形成する色素の酸解離定数(pKa)の値のpH付近のpHであるもの〕を混合し、この混合液のpHを「測定しようとするタンパク質の等電点の値未満のpHであって、かつタンパク質と会合し凝集体を形成する色素の酸解離定数(pKa)の値のpH付近のpH」とし、このpHにおいて、試料に含まれていたタンパク質と当該色素とを会合させ、これらの凝集体を形成させる。
【0098】
(H) 第1段階: 「タンパク質と会合し凝集体を形成する色素」を含有する試薬と、試料とを混合し、接触させる。
第2段階: 第1段階の混合液に、「緩衝剤」を含有する試薬〔そのpHが測定しようとするタンパク質の等電点の値未満のpHであって、かつタンパク質と会合し凝集体を形成する色素の酸解離定数(pKa)の値のpH付近のpHであるもの〕を混合する。
第3段階: 第2段階の混合液に、「界面活性物質」を含有する試薬を混合し、この混合液において、「測定しようとするタンパク質の等電点の値未満のpHであって、かつタンパク質と会合し凝集体を形成する色素の酸解離定数(pKa)の値のpH付近のpH」で、試料に含まれていたタンパク質と当該色素とを会合させ、これらの凝集体を形成させる。
【0099】
(I) 第1段階: 「界面活性物質」を含有する試薬と、試料とを混合する。
第2段階: 第1段階の混合液に、「タンパク質と会合し凝集体を形成する色素」を含有する試薬を混合し、接触させる。
第3段階: 第2段階の混合液に、「緩衝剤」を含有する試薬〔そのpHが測定しようとするタンパク質の等電点の値未満のpHであって、かつタンパク質と会合し凝集体を形成する色素の酸解離定数(pKa)の値のpH付近のpHであるもの〕を混合し、この混合液のpHを「測定しようとするタンパク質の等電点の値未満のpHであって、かつタンパク質と会合し凝集体を形成する色素の酸解離定数(pKa)の値のpH付近のpH」とし、このpHにおいて、試料に含まれていたタンパク質と当該色素とを会合させ、これらの凝集体を形成させる。
【0100】
(J) 第1段階: 「界面活性物質」を含有する試薬と、試料とを混合する。
第2段階: 第1段階の混合液に、「緩衝剤」を含有する試薬〔そのpHが測定しようとするタンパク質の等電点の値未満のpHであって、かつタンパク質と会合し凝集体を形成する色素の酸解離定数(pKa)の値のpH付近のpHであるもの〕を混合する。
第3段階: 第2段階の混合液に、「タンパク質と会合し凝集体を形成する色素」を含有する試薬を混合し、接触させ、この混合液において、「測定しようとするタンパク質の等電点の値未満のpHであって、かつタンパク質と会合し凝集体を形成する色素の酸解離定数(pKa)の値のpH付近のpH」で、試料に含まれていたタンパク質と当該色素とを会合させ、これらの凝集体を形成させる。
【0101】
(K) 第1段階: 「緩衝剤」を含有する試薬〔そのpHが測定しようとするタンパク質の等電点の値未満のpHであって、かつタンパク質と会合し凝集体を形成する色素の酸解離定数(pKa)の値のpH付近のpHであるもの〕と、試料とを混合する。
第2段階: 第1段階の混合液に、「タンパク質と会合し凝集体を形成する色素」を含有する試薬を混合し、接触させる。
第3段階: 第2段階の混合液に、「界面活性物質」を含有する試薬を混合し、この混合液において、「測定しようとするタンパク質の等電点の値未満のpHであって、かつタンパク質と会合し凝集体を形成する色素の酸解離定数(pKa)の値のpH付近のpH」で、試料に含まれていたタンパク質と当該色素とを会合させ、これらの凝集体を形成させる。
【0102】
(L) 第1段階: 「緩衝剤」を含有する試薬〔そのpHが測定しようとするタンパク質の等電点の値未満のpHであって、かつタンパク質と会合し凝集体を形成する色素の酸解離定数(pKa)の値のpH付近のpHであるもの〕と、試料とを混合する。
第2段階: 第1段階の混合液に、「界面活性物質」を含有する試薬を混合する。
第3段階: 第2段階の混合液に、「タンパク質と会合し凝集体を形成する色素」を含有する試薬を混合し、接触させ、この混合液において、「測定しようとするタンパク質の等電点の値未満のpHであって、かつタンパク質と会合し凝集体を形成する色素の酸解離定数(pKa)の値のpH付近のpH」で、試料に含まれていたタンパク質と当該色素とを会合させ、これらの凝集体を形成させる。
【0103】
(M) 第1段階: 「タンパク質と会合し凝集体を形成する色素」を含有する試薬と、「界面活性物質」を含有する試薬とを混合する。
第2段階: 第1段階の混合液に、試料を混合し、接触させる。
第3段階: 第2段階の混合液に、「緩衝剤」を含有する試薬〔そのpHが測定しようとするタンパク質の等電点の値未満のpHであって、かつタンパク質と会合し凝集体を形成する色素の酸解離定数(pKa)の値のpH付近のpHであるもの〕を混合し、この混合液のpHを「測定しようとするタンパク質の等電点の値未満のpHであって、かつタンパク質と会合し凝集体を形成する色素の酸解離定数(pKa)の値のpH付近のpH」とし、このpHにおいて、試料に含まれていたタンパク質と当該色素とを会合させ、これらの凝集体を形成させる。
【0104】
(N) 第1段階: 「タンパク質と会合し凝集体を形成する色素」を含有する試薬と、「緩衝剤」を含有する試薬〔そのpHが測定しようとするタンパク質の等電点の値未満のpHであって、かつタンパク質と会合し凝集体を形成する色素の酸解離定数(pKa)の値のpH付近のpHであるもの〕を混合する。
第2段階: 第1段階の混合液に、試料を混合し、接触させる。
第3段階: 第2段階の混合液に、「界面活性物質」を含有する試薬を混合し、この混合液において、「測定しようとするタンパク質の等電点の値未満のpHであって、かつタンパク質と会合し凝集体を形成する色素の酸解離定数(pKa)の値のpH付近のpH」で、試料に含まれていたタンパク質と当該色素とを会合させ、これらの凝集体を形成させる。
【0105】
(O) 第1段階: 「界面活性物質」を含有する試薬と、「緩衝剤」を含有する試薬〔そのpHが測定しようとするタンパク質の等電点の値未満のpHであって、かつタンパク質と会合し凝集体を形成する色素の酸解離定数(pKa)の値のpH付近のpHであるもの〕を混合する。
第2段階: 第1段階の混合液に、試料を混合する。
第3段階: 第2段階の混合液に、「タンパク質と会合し凝集体を形成する色素」を含有する試薬を混合し、接触させ、この混合液において、「測定しようとするタンパク質の等電点の値未満のpHであって、かつタンパク質と会合し凝集体を形成する色素の酸解離定数(pKa)の値のpH付近のpH」で、試料に含まれていたタンパク質と当該色素とを会合させ、これらの凝集体を形成させる。
【0106】
(P) 第1段階: 「タンパク質と会合し凝集体を形成する色素」を含有する試薬と、「界面活性物質」を含有する試薬とを混合する。
第2段階: 第1段階の混合液に、「緩衝剤」を含有する試薬〔そのpHが測定しようとするタンパク質の等電点の値未満のpHであって、かつタンパク質と会合し凝集体を形成する色素の酸解離定数(pKa)の値のpH付近のpHであるもの〕を混合する。
第3段階: 第2段階の混合液に、試料を混合し、接触させ、この混合液において、「測定しようとするタンパク質の等電点の値未満のpHであって、かつタンパク質と会合し凝集体を形成する色素の酸解離定数(pKa)の値のpH付近のpH」で、試料に含まれていたタンパク質と当該色素とを会合させ、これらの凝集体を形成させる。
【0107】
(Q) 第1段階: 「タンパク質と会合し凝集体を形成する色素」を含有する試薬と、「緩衝剤」を含有する試薬〔そのpHが測定しようとするタンパク質の等電点の値未満のpHであって、かつタンパク質と会合し凝集体を形成する色素の酸解離定数(pKa)の値のpH付近のpHであるもの〕を混合する。
第2段階: 第1段階の混合液に、「界面活性物質」を含有する試薬を混合する。
第3段階: 第2段階の混合液に、試料を混合し、接触させ、この混合液において、「測定しようとするタンパク質の等電点の値未満のpHであって、かつタンパク質と会合し凝集体を形成する色素の酸解離定数(pKa)の値のpH付近のpH」で、試料に含まれていたタンパク質と当該色素とを会合させ、これらの凝集体を形成させる。
【0108】
(R) 第1段階: 「界面活性物質」を含有する試薬と、「緩衝剤」を含有する試薬〔そのpHが測定しようとするタンパク質の等電点の値未満のpHであって、かつタンパク質と会合し凝集体を形成する色素の酸解離定数(pKa)の値のpH付近のpHであるもの〕を混合する。
第2段階: 第1段階の混合液に、「タンパク質と会合し凝集体を形成する色素」を含有する試薬を混合する。
第3段階: 第2段階の混合液に、試料を混合し、接触させ、この混合液において、「測定しようとするタンパク質の等電点の値未満のpHであって、かつタンパク質と会合し凝集体を形成する色素の酸解離定数(pKa)の値のpH付近のpH」で、試料に含まれていたタンパク質と当該色素とを会合させ、これらの凝集体を形成させる。
【0109】
なお、前記の凝集体形成工程を2段階以上の複数段階で行う場合、最後の段階で、混合液のpHを「測定しようとするタンパク質の等電点の値未満のpHであって、かつタンパク質と会合し凝集体を形成する色素の酸解離定数(pKa)の値のpH付近のpH」とすることが好ましい。
【0110】
(2)通流工程
前記の凝集体形成工程における当該凝集体の形成後、当該凝集体を含む溶液の一定量をガラス繊維よりなる多孔性担体に通す通流工程であるが、当該凝集体を含む溶液の一定量を、前記のガラス繊維よりなる多孔性担体に通すことができれば、特に限定はなく、どのような方法でもよい。
この当該凝集体を含む溶液を通すことにより、当該凝集体がガラス繊維よりなる多孔性担体に捕捉される。
【0111】
なお、前記の当該凝集体を含む溶液の一定量をガラス繊維よりなる多孔性担体に通すとき、当該一定量がごく微量の場合は、このガラス繊維よりなる多孔性担体の内部に保持されるが、この保持の最大量を超えた場合は、このガラス繊維よりなる多孔性担体の内部を通り、添加した側の反対側より流れ出る。
【0112】
ところで、前記のガラス繊維よりなる多孔性担体に通す前記の当該凝集体を含む溶液の一定量であるが、この添加量は、量が多い程、前記のガラス繊維よりなる多孔性担体に捕捉される前記の当該凝集体の量が多くなり、その結果、より低い濃度のタンパク質までも測定できるようになり、測定が高感度となるので好ましい。
【0113】
前記の一定量は、通常は、0.1mL以上であることが好ましく、0.5mL以上であることがより好ましく、2mL以上であることが特に好ましく、5mL以上であることが更に好ましい。
【0114】
なお、前記の一定量の上限は特にはないが、強いて言えば、用いるガラス繊維よりなる多孔性担体に捕捉される物質の捕捉最大量(上限)に達するまでの量である。
【0115】
この通流工程において、当該凝集体を含む溶液の一定量をガラス繊維よりなる多孔性担体に通すことであるが、これには特に限定はない。
【0116】
例えば、当該凝集体を含む溶液をガラス繊維よりなる多孔性担体に添加等して、圧力又は吸引力を加えずに重力により当該凝集体を含む溶液をこの多孔性担体に通してもよい。
【0117】
また、当該凝集体を含む溶液をガラス繊維よりなる多孔性担体に添加、注入又は吸い込む等し、加圧したり、又は吸引して、当該凝集体を含む溶液をこの多孔性担体に通してもよい。
【0118】
あるいは、ガラス繊維よりなる多孔性担体がシリンジに接続できるハウジングに収められたシリンジフィルタである場合(例えば、ワットマンジャパン社の「GD/X シリンジフィルタ」等の場合)、当該凝集体を含む溶液をシリンジの中に入れ、このシリンジと前記シリンジフィルタとを接続し、このシリンジのピストン部分を押すことにより、当該凝集体を含む溶液が押し出されて、このシリンジフィルタのガラス繊維よりなる多孔性担体に当該凝集体を含む溶液を通すことができる。
【0119】
また、ガラス繊維よりなる多孔性担体がシリンジに接続できるハウジングに収められたシリンジフィルタである場合(例えば、ワットマンジャパン社の「GD/X シリンジフィルタ」等の場合)、シリンジと前記シリンジフィルタとを接続し、前記シリンジフィルタのこのシリンジを接続した側とは反対側のもう一方の口部を、当該凝集体を含む溶液に接触させ、そして、このシリンジのピストン部分を引くことにより、当該凝集体を含む溶液をこのシリンジ内に吸引し、これによりこのシリンジフィルタのガラス繊維よりなる多孔性担体に当該凝集体を含む溶液を通すことができる。
【0120】
(3)色測定工程
前記の通流工程において当該凝集体を含む溶液の一定量を通したガラス繊維よりなる多孔性担体の表面の色、すなわち当該多孔性担体の表面の色をこの色測定工程において測定することは、当該多孔性担体表面の色を測定することができれば、特に限定はなく、どのような方法でもよい。
【0121】
この当該多孔性担体表面の色の測定であるが、前記の通流工程において当該凝集体を含む溶液の一定量を通したガラス繊維よりなる多孔性担体の表面に生じる色は、試料中にタンパク質が存在しない場合には、着色が無いか、又は着色が薄いものである。
【0122】
これに対して、試料中にタンパク質が存在する場合には、ガラス繊維よりなる多孔性担体の表面の着色が濃いものとなるので、この当該多孔性担体表面の色を測定することにより、試料中にタンパク質が存在するか否かを判別することができる。
すなわち、この色測定工程において、当該多孔性担体表面の色を測定し、着色が無いか、又は着色が薄いものである場合は、試料中にタンパク質が存在しない又は一定濃度(カットオフ値)未満であると判定する。(すなわち、「陰性」と判定する。)
また、当該多孔性担体表面の色を測定し、着色が濃いものである場合は、試料中にタンパク質が存在する又は一定濃度(カットオフ値)以上であると判定する。(すなわち、「陽性」と判定する。)
【0123】
そして、前記の当該多孔性担体表面の色の測定であるが、これは目視により行ってもよく、又は、デンシトメーター、スポットメーター、若しくはCCD装置等の装置を用いて測定を行ってもよい。
【0124】
また、タンパク質を含まない試料(陰性対照試料又は試薬ブランク試料)及び/又はタンパク質を含む試料(陽性対照試料)を測定して得られた前記の当該多孔性担体表面の色の濃さと、試料を測定して得られた前記の当該多孔性担体表面の色の濃さとを比較して、試料中のタンパク質の存在の判定を行ってもよい。
【0125】
なお、試料中に含まれていたタンパク質の濃度を定量測定する場合は、タンパク質を含まない試料(陰性対照試料又は試薬ブランク試料)及び/又はタンパク質濃度が既知の試料(標準試料)の一濃度又は複数濃度のものを測定して得られた前記の当該多孔性担体表面の色の濃さと、タンパク質濃度が未知の試料を測定して得られた前記の当該多孔性担体表面の色の濃さとを比較(又は比例計算等して算出)すること等により定量値を求めることができる。
【0126】
前記の通流工程において当該凝集体を含む溶液の一定量をガラス繊維よりなる多孔性担体に通した後、この色測定工程において当該多孔性担体表面の色を測定するまでの時間は、用いるガラス繊維よりなる多孔性担体の種類、面積及び厚さ、当該凝集体を含む溶液の当該一定量の量若しくは粘度、又は加圧若しくは吸引の有無等の条件により異なるので一概に言うことは出来ない。
【0127】
しかしながら、通常は、前記の当該凝集体を含む溶液の一定量をガラス繊維よりなる多孔性担体に通して、時間を置かず直ちに当該多孔性担体表面の色を測定することができる。
【0128】
なお、この当該多孔性担体表面の色は安定ではあるが、当該凝集体を含む溶液の一定量をガラス繊維よりなる多孔性担体に通した後6時間以内に当該多孔性担体表面の色を測定することが好ましい。
【0129】
II.試料中のタンパク質の測定キット
本発明の試料中のタンパク質の測定キットは、少なくとも、「タンパク質と会合し凝集体を形成する色素を含有する試薬」、及び「ガラス繊維よりなる多孔性担体」を含むものである。
【0130】
1.試薬
本発明の試料中のタンパク質の測定キットは、タンパク質と会合し凝集体を形成する色素を含有する試薬を含む。
【0131】
(1)タンパク質と会合し凝集体を形成する色素
本発明の試料中のタンパク質の測定キットにおける、タンパク質と会合し凝集体を形成する色素を含有する試薬において、タンパク質と会合し凝集体を形成する色素は、前記「I.試料中のタンパク質の測定方法」の「2.タンパク質と会合し凝集体を形成する色素」等において詳述した通りである。
【0132】
このタンパク質と会合し凝集体を形成する色素を前記試薬に含有させる濃度は、低すぎると測定の感度が得られず試料中のタンパク質を測定することができないので、通常、試料中のタンパク質と接触させるときの濃度が1μM以上となるように前記試薬に含有させることが好ましく、試料中のタンパク質と接触させるときの濃度が10μM以上となるように前記試薬に含有させることがより好ましく、試料中のタンパク質と接触させるときの濃度が20μM以上となるように前記試薬に含有させることが特に好ましい。
【0133】
また、このタンパク質と会合し凝集体を形成する色素を前記試薬に含有させる濃度は、高すぎると試料中にタンパク質が存在しなくとも前記の当該多孔性担体の表面に発色が生じてしまい、試料中にタンパク質が存在するときとの判別が難しくなるので、通常、試料中のタンパク質と接触させるときの濃度が500μM以下となるように前記試薬に含有させることが好ましく、試料中のタンパク質と接触させるときの濃度が100μM以下となるように前記試薬に含有させることがより好ましく、試料中のタンパク質と接触させるときの濃度が50μM以下となるように前記試薬に含有させることが特に好ましい。
【0134】
(2)界面活性物質
本発明の試料中のタンパク質の測定キットに含まれる、タンパク質と会合し凝集体を形成する色素を含有する試薬又は他の試薬に、界面活性物質を含有させてもよい。
タンパク質と会合し凝集体を形成する色素を含有する試薬又は他の試薬に、界面活性物質を含有させることにより、タンパク質と会合し凝集体を形成する色素を含有する試薬(及び当該他の試薬)と試料との混合液をガラス繊維よりなる多孔性担体に通した後のこの多孔性担体表面の色の発色度(濃さ)が、タンパク質を含む試料においては、この発色度(濃さ)が高くなって高感度に測定が行えるようになり、かつタンパク質を含有しない試料の測定(陰性対照;又は試薬ブランク)において前記の多孔性担体表面の色の発色が無いか又はごく薄い発色にとどまり、前記の色の測定におけるタンパク質を含有する試料とタンパク質を含有しない試料との判別が容易になるという効果を生じるので、本発明の試料中のタンパク質の測定キットに含まれる「タンパク質と会合し凝集体を形成する色素を含有する試薬」又は「その他の試薬」に、界面活性物質を含有させることが好ましい。
なお、この界面活性物質については、前記「I.試料中のタンパク質の測定方法」の「4.界面活性物質」等において詳述した通りである。
【0135】
この界面活性物質の濃度は低すぎると、これを含有させることの効果が得られないので、通常は、界面活性物質、タンパク質と会合し凝集体を形成する色素、及び試料中のタンパク質を接触させる時の濃度が0.0001%(W/V)以上となるように前記試薬に含有させることが好ましく、当該接触時の濃度が0.001%(W/V)以上となるように前記試薬に含有させることがより好ましく、当該接触時の濃度が0.005%(W/V)以上となるように前記試薬に含有させることが特に好ましい。
【0136】
また、この界面活性物質の濃度は、高すぎるとそれを含む溶液の粘性が上昇する可能性があり、そうなるとガラス繊維よりなる多孔性担体への、タンパク質と会合し凝集体を形成する色素を含有する試薬等と試料との混合液の添加等の量に誤差が生じることにもなるので、通常は、界面活性物質、タンパク質と会合し凝集体を形成する色素、及び試料中のタンパク質を接触させる時の濃度が5%(W/V)以下となるように前記試薬に含有させることが好ましく、当該接触時の濃度が1%(W/V)以下となるように前記試薬に含有させることがより好ましく、当該接触時の濃度が0.1%(W/V)以下となるように前記試薬に含有させることが特に好ましい。
【0137】
(3)pH
本発明では、試料に含まれていたタンパク質と、タンパク質と会合し凝集体を形成する色素とを会合させ、これらの凝集体を形成させる際のpHは、測定しようとするタンパク質の等電点の値未満のpHであることが好ましい。
このように、測定しようとするタンパク質の等電点の値未満のpHとした場合には、
測定しようとするタンパク質の電荷がプラス側となり、前記の色素と会合し易くなり、これによりこのタンパク質測定の感度を高めることができるので、好ましい。
【0138】
よって、試料に含まれていたタンパク質と、タンパク質と会合し凝集体を形成する色素とを会合させ、これらの凝集体を形成させる際のpHが、測定しようとするタンパク質の等電点の値未満のpHとなるように、本発明の試料中のタンパク質の測定キットに含まれる試薬のpHを設定することが好ましい。
【0139】
また、本発明では、試料に含まれていたタンパク質と、タンパク質と会合し凝集体を形成する色素とを会合させ、これらの凝集体を形成させる際のpHは、このタンパク質と会合し凝集体を形成する色素の酸解離定数(pKa)の値のpH付近にあることが好ましい。
これは、より好ましくは前記の凝集体形成時において、タンパク質と会合し凝集体を形成する色素の酸解離定数(pKa)の値の±2の範囲内のpHとすることであり、特に好ましくはタンパク質と会合し凝集体を形成する色素の酸解離定数(pKa)の値の±1.5の範囲内のpHとすることであり、更に好ましくはこのタンパク質と会合し凝集体を形成する色素の酸解離定数(pKa)の値の±1の範囲内のpHとすることである。
【0140】
このように、前記の凝集体形成時において、pHを前記のようにタンパク質と会合し凝集体を形成する色素の酸解離定数(pKa)の値のpH付近にすることにより、前記色素のマイナス電荷を保つことができ、これにより試料に含まれるタンパク質と会合し易くなり、これによりこのタンパク質測定の感度を高めることができるので、好ましい。
【0141】
よって、前記の凝集体形成時において、pHを前記のようにタンパク質と会合し凝集体を形成する色素の酸解離定数(pKa)の値のpH付近となるように、本発明の試料中のタンパク質の測定キットに含まれる試薬のpHを設定することが好ましい。
【0142】
以上のことより、前記の凝集体形成時においては、pHを、測定しようとするタンパク質の等電点の値未満のpHとし、かつタンパク質と会合し凝集体を形成する色素の酸解離定数(pKa)の値のpH付近のpHとすることが特に好ましい。
【0143】
よって、前記の凝集体形成時において、pHを、測定しようとするタンパク質の等電点の値未満のpHとし、かつタンパク質と会合し凝集体を形成する色素の酸解離定数(pKa)の値のpH付近のpHとなるように、本発明の試料中のタンパク質の測定キットに含まれる試薬のpHを設定することが特に好ましい。
【0144】
なお、前記の凝集体形成時においては、そのpHが低すぎると、例えばpH1未満であると、タンパク質が変性や不溶化されるので好ましくない。
【0145】
よって、前記の凝集体形成時において、pHを、低くなりすぎないように、例えばpH1未満とならないように、本発明の試料中のタンパク質の測定キットに含まれる試薬のpHを設定することが好ましい。
【0146】
なお、前記の凝集体形成時において、試料に含まれていたタンパク質と、タンパク質と会合し凝集体を形成する色素とを会合させ、これらの凝集体を形成させる際のpHを前記の通りのpHとするには、このpHとなるような緩衝剤(これらのpH域に緩衝能がある緩衝剤)を用いることが好ましい。
【0147】
この緩衝剤としては、既知の緩衝剤を用いることができる。
例えば、緩衝剤として、グリシン(pKa1:2.35)、リン酸(pKa1:2.15)、フタル酸(pKa1:2.95、pKa2:5.41)、クエン酸(pKa1:3.13、pKa2:4.76)、バルビツール酸(pKa1:4.04)、コハク酸(pKa1:4.21、pKa2:5.64)、酢酸(pKa2:4.76)、及び種々のグッド緩衝剤等を挙げることができる。
【0148】
よって、前記の凝集体形成時において、pHを前記の通りとするため、当該pHとなるような緩衝剤(これらのpH域に緩衝能がある緩衝剤)を、本発明の試料中のタンパク質の測定キットに含まれる試薬に含有させることが好ましい。
【0149】
なお、このpHの他の事項については、前記「I.試料中のタンパク質の測定方法」の「5.pH」等において詳述した通りである。
【0150】
(4)試薬の構成
本発明の試料中のタンパク質の測定キットは、一つの試薬を含むものであってもよいし、又は二つ以上の複数の試薬を含むものであってもよい。
一つの試薬のみを含むものである場合、当該試薬は、タンパク質と会合し凝集体を形成する色素を含有する試薬である。
また、二つ以上の複数の試薬を含むものである場合、当該複数の試薬は、その一つ又は二つ以上の試薬がタンパク質と会合し凝集体を形成する色素を含有するものである。
【0151】
更に、本発明の試料中のタンパク質の測定キットは、タンパク質と会合し凝集体を形成する色素以外の成分を含有する試薬を含むものであってもよい。
本発明の試料中のタンパク質の測定キットは、例えば、タンパク質と会合し凝集体を形成する色素を含有する試薬、タンパク質と会合し凝集体を形成する色素及び界面活性物質を含有する試薬、タンパク質と会合し凝集体を形成する色素及び緩衝剤を含有する試薬、タンパク質と会合し凝集体を形成する色素、界面活性物質及び緩衝剤を含有する試薬、界面活性物質を含有する試薬、緩衝剤を含有する試薬、界面活性物質及び緩衝剤を含有する試薬、又は試料希釈液よりなる試薬等を含むものであってもよい。
なお、本発明の試料中のタンパク質の測定キットに含まれる試薬の態様は、前記「I.試料中のタンパク質の測定方法」の「6.測定操作」の「(1)凝集体形成工程」等に記載した通りのもの等である。
【0152】
(5)その他の試薬成分
本発明における、本発明の試料中のタンパク質の測定キットに含まれる試薬には、必要に応じて、例えば、塩;アジ化ナトリウム、抗生物質若しくは合成抗菌剤などの防腐剤;糖類などの安定化剤;反応活性化剤;試料中に含まれる測定妨害物質の消去若しくは影響抑制に関わる物質;又は他の試薬成分等を適宜含有させることができる。
【0153】
なお、前記の塩としては、例えば、陽イオン及び陰イオンよりなる化合物等を挙げることができる。
【0154】
この陽イオンとしては、正の電荷を有するイオンであれば、特に限定されず用いることができる。
この陽イオンとしては、1価の陽イオンであってもよく、又は2価以上の多価の陽イオンであってもよい。
そして、この陽イオンとしては、例えば、金属イオン、アンモニウムイオン、又はその他の陽イオン等を挙げることができる。
【0155】
この金属イオンとしては、例えば、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、遷移金属イオン、又はその他の金属イオン等を挙げることができる。
【0156】
アルカリ金属イオンとしては、例えば、リチウムイオン、ナトリウムイオン、又はカリウムイオン等を挙げることができる。
【0157】
アルカリ土類金属イオンとしては、例えば、ベリリウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、又はバリウムイオン等を挙げることができる。
【0158】
遷移金属イオンとしては、例えば、マンガンイオン、鉄イオン、コバルトイオン、ニッケルイオン、又は銅イオン等を挙げることができる。
【0159】
その他の金属イオンとしては、例えば、亜鉛イオン、又はアルミニウムイオン等を挙げることができる。
【0160】
アンモニウムイオンとしては、例えば、一級のアンモニウムイオン、二級のアンモニウムイオン、三級のアンモニウムイオン、又は四級のアンモニウムイオン等を挙げることができる。
【0161】
その他の陽イオンとしては、例えば、炭素原子、ケイ素原子、ホウ素原子、窒素原子(アンモニウムイオン以外の場合において)、リン原子、若しくは硫黄原子などが正の電荷を帯びている原子、又は原子団等を挙げることができる。
【0162】
この具体的な例としては、炭素原子が正の電荷を帯びているコリンイオン等を挙げることができる。
【0163】
なお、この陽イオンとしては、1価の陽イオンが好ましい。
【0164】
そして、この1価の陽イオンとしては、アルカリ金属イオンが好ましい。特に、ナトリウムイオンが好ましい。
【0165】
なお、この陽イオンとしては、1種類のものだけを用いてもよいし、又は複数種類のものを同時に用いてもよい。
【0166】
また、陰イオンとしては、負の電荷を有するイオンであれば、特に限定されず用いることができる。
【0167】
この陰イオンとしては、1価の陰イオンであってもよく、又は2価以上の多価の陰イオンであってもよい。
【0168】
そして、この陰イオンとしては、例えば、ハロゲンイオン、有機化合物よりなる酸基、又はその他の無機化合物よりなる酸基等を挙げることができる。
【0169】
ハロゲンイオンとしては、例えば、フッ素イオン、塩素イオン、臭素イオン、又はヨウ素イオン等を挙げることができる。
【0170】
有機化合物よりなる酸基としては、例えば、酢酸イオン、クエン酸イオン、グルコン酸イオン、又はシュウ酸イオン等を挙げることができる。
【0171】
その他の無機化合物よりなる酸基としては、例えば、硫酸イオン、亜硫酸イオン、二亜硫酸イオン、亜二チオン酸イオン、チオ亜硫酸イオン、硝酸イオン、亜硝酸イオン、次亜硝酸イオン、ペルオキソ亜硝酸イオン、リン酸イオン、亜リン酸イオン、二亜リン酸イオン、次亜リン酸イオン、二リン酸イオン、ホウ酸イオン、炭酸イオン、シアン酸イオン、イソシアン酸イオン、又はケイ酸イオン等を挙げることができる。
【0172】
なお、この陰イオンとしては、1価の陰イオンが好ましい。
【0173】
そして、この1価の陰イオンとしては、ハロゲンイオンが好ましい。特に、塩素イオンが好ましい。
【0174】
また、この陰イオンとしては、1種類のものだけを用いてもよいし、又は複数種類のものを同時に用いてもよい。
【0175】
2.多孔性担体
本発明の試料中のタンパク質の測定キットにおける「ガラス繊維よりなる多孔性担体」は、ガラス繊維よりなる多数の微細な孔を有する担体であって、この担体に溶液を添加、注入又は吸引等したときにその溶液を通すことができるものであれば、特に制限なく用いることができる。
なお、この「ガラス繊維よりなる多孔性担体」については、前記「I.試料中のタンパク質の測定方法」の「3.ガラス繊維よりなる多孔性担体」等において詳述した通りである。
【0176】
3.他の物
本発明の試料中のタンパク質の測定キットには、必要に応じて、「タンパク質と会合し凝集体を形成する色素を含有する試薬」、及び「ガラス繊維よりなる多孔性担体」以外の物を含めることができる。
【0177】
この物としては、例えば、「陰性対照試料(試薬ブランク試料)」、「陽性対照試料」、「標準物質(標準試料)」、「測定結果(当該多孔性担体表面の色)の対照表」等を挙げることができる。
【0178】
4.試料中のタンパク質の測定
本発明の試料中のタンパク質の測定キットは、前記の本発明の「試料中のタンパク質の測定方法」に適したものである。
本発明の試料中のタンパク質の測定キットを用いて、本発明の「試料中のタンパク質の測定方法」に従い、試料中のタンパク質の測定を行うことについては、前記「I.試料中のタンパク質の測定方法」に記載した通りである。
【実施例】
【0179】
以下、実施例により本発明をより具体的に詳述するが、本発明はこの実施例の記載により限定されるものではない。
【0180】
〔実施例1〕(ガラス繊維よりなる多孔性担体を用いることの効果の確認)
本発明の試料中のタンパク質の測定方法及び測定キットにおける、ガラス繊維よりなる多孔性担体を用いることの効果を確認した。
【0181】
1.試薬
(1)試薬A
タンパク質と会合し凝集体を形成する色素としてのエリスロシンBを40μMの濃度で含有し、かつ界面活性物質としてのTriton X−100を0.01%(W/V)の濃度で含有する水溶液を調製し、試薬Aとした。
【0182】
(2)試薬B
0.2Mクエン酸−水酸化カリウム緩衝液〔pH2.3(20℃)〕を調製し、試薬Bとした。
【0183】
2.多孔性担体
多孔性担体として、下記の多孔性担体をそれぞれ用いた。
(1)ガラス繊維よりなる多孔性担体−A
ガラス繊維よりなる多孔性担体である、「ガラスろ紙 GC−90」〔保留粒子径:0.5μm、厚さ:300μm、バインダー:あり、アドバンテック東洋社〕を、ガラス繊維よりなる多孔性担体−Aとした。
【0184】
(2)ガラス繊維よりなる多孔性担体−B
ガラス繊維よりなる多孔性担体である、「ガラス繊維ろ紙(結合剤フリー)のグレードGF/D」〔粒子保持能:2.7μm、厚さ:675μm、ワットマンジャパン社〕」を、ガラス繊維よりなる多孔性担体−Bとした。
【0185】
(3)セルロース混合エステルよりなる多孔性担体
セルロース混合エステルよりなる多孔性担体である、「セルロース混合エステルタイプメンブレンフィルター A010A025A」〔孔径:0.1μm、厚さ:110μm、アドバンテック東洋社〕を、セルロース混合エステルよりなる多孔性担体とした。
【0186】
(4)セルロースアセテートよりなる多孔性担体
セルロースアセテートよりなる多孔性担体である、「セルロースアセテートタイプメンブレンフィルター C020A025A」〔孔径:0.2μm、厚さ:125μm、アドバンテック東洋社〕を、セルロースアセテートよりなる多孔性担体とした。
【0187】
3.試料
(1)タンパク質含有試料
タンパク質含有試料として、30mg/L、すなわち3mg/dLのヒト血清アルブミン(HSA)を含む水溶液を調製した。
【0188】
(2)タンパク質不含試料
タンパク質を含まない試料、すなわちタンパク質不含試料として、純水を用意した。
【0189】
4.測定
(1) 前記1の(1)の試薬Aの5,000μLに、前記1の(2)の試薬Bの500μLを添加し、混合した。
【0190】
(2) 次に、前記(1)の混合液に、前記3の(1)のタンパク質含有試料の150μLを添加し、混合して、接触させた。
【0191】
(3) その後、20秒間室温にて放置した。
【0192】
(4) 次に、前記2の(1)のガラス繊維よりなる多孔性担体−Aを、ろ過用の器具にセットし、このガラス繊維よりなる多孔性担体−Aの上側の面に、前記(3)の放置後の混合液の全量(5,650μL)を添加し、通した。
【0193】
(5) 前記(4)における混合液の添加後、直ちに前記のガラス繊維よりなる多孔性担体−Aの表面の色を目視にて測定した。
【0194】
なお、前記の多孔性担体表面の着色が濃いものである場合には試料中にタンパク質が存在すると判定し、前記多孔性担体表面の着色が無いか又は着色が薄いものである場合には試料中にタンパク質が存在しないと判定した。
【0195】
(6) また、試料を前記3の(1)のタンパク質含有試料から(2)のタンパク質不含試料に変える以外は、前記(1)〜(5)の通りに操作を行い、測定を行った。
【0196】
(7) 更に、多孔性担体を、前記2の(1)のガラス繊維よりなる多孔性担体−Aから(2)のガラス繊維よりなる多孔性担体−Bに変える以外は、前記(1)〜(6)の通りに操作を行い、測定を行った。
【0197】
(8) また、多孔性担体を、前記2の(1)のガラス繊維よりなる多孔性担体−Aから(3)のセルロース混合エステルよりなる多孔性担体に変える以外は、前記(1)〜(6)の通りに操作を行い、測定を行った。
【0198】
(9) 更に、多孔性担体を、前記2の(1)のガラス繊維よりなる多孔性担体−Aから(4)のセルロースアセテートよりなる多孔性担体に変える以外は、前記(1)〜(6)の通りに操作を行い、測定を行った。
【0199】
5.測定結果
前記の測定の結果を、図1に示した。
【0200】
この図より、以下のことが分かる。
まず、多孔性担体として、ガラス繊維よりなる多孔性担体−Aを用いた場合には、タンパク質(30mg/L、すなわち3mg/dLのヒト血清アルブミン)を含む試料を測定したときの多孔性担体の表面の着色は濃いものであり、試料中にタンパク質が存在する、と判定することができる。
【0201】
また、このガラス繊維よりなる多孔性担体−Aを用いた場合、タンパク質を含まない試料(純水)を測定したときの多孔性担体の表面の着色はごく薄いものであり、試料中にタンパク質が存在しない、と判定することができる。
【0202】
すなわち、多孔性担体として、ガラス繊維よりなる多孔性担体−Aを用いた場合には、試料中にタンパク質が存在することと、試料中にタンパク質が存在しないことを、それぞれ正しく判定できていることが分かる。
【0203】
よって、多孔性担体としてガラス繊維よりなる多孔性担体を用いる、本発明の試料中のタンパク質の測定方法及び測定キットにおいては、試料中のタンパク質を正確に測定できることが確かめられた。
【0204】
次に、多孔性担体として、ガラス繊維よりなる多孔性担体−Bを用いた場合には、タンパク質(30mg/L、すなわち3mg/dLのヒト血清アルブミン)を含む試料を測定したときの多孔性担体の表面の着色は濃いものであり、試料中にタンパク質が存在する、と判定することができる。
【0205】
また、このガラス繊維よりなる多孔性担体−Bを用いた場合、タンパク質を含まない試料(純水)を測定したときの多孔性担体の表面の着色は無く、試料中にタンパク質が存在しない、と判定することができる。
【0206】
すなわち、多孔性担体として、ガラス繊維よりなる多孔性担体−Bを用いた場合にも、試料中にタンパク質が存在することと、試料中にタンパク質が存在しないことを、それぞれ正しく判定できていることが分かる。
【0207】
よって、多孔性担体としてガラス繊維よりなる多孔性担体を用いる、本発明の試料中のタンパク質の測定方法及び測定キットにおいては、試料中のタンパク質を正確に測定できることが、この場合においても確かめられた。
【0208】
次に、多孔性担体として、セルロース混合エステルよりなる多孔性担体を用いた場合には、タンパク質(30mg/L、すなわち3mg/dLのヒト血清アルブミン)を含む試料を測定したときの多孔性担体の表面の着色は濃いものであり、試料中にタンパク質が存在する、と判定することができる。
【0209】
しかし、このセルロース混合エステルよりなる多孔性担体を用いた場合、タンパク質を含まない試料(純水)を測定したときの多孔性担体の表面の着色は、これもまた濃いものであり、試料中にタンパク質が存在する、と判定することとなった。
【0210】
すなわち、多孔性担体として、セルロース混合エステルよりなる多孔性担体を用いた場合には、試料中にタンパク質が存在しないことを、正しく判定することができないことが分かる。
【0211】
よって、多孔性担体としてセルロース混合エステルよりなる多孔性担体を用いる、試料中のタンパク質の測定方法及び測定キットにおいては、試料中のタンパク質を測定することができないことが確かめられた。
【0212】
次に、多孔性担体として、セルロースアセテートよりなる多孔性担体を用いた場合には、タンパク質(30mg/L、すなわち3mg/dLのヒト血清アルブミン)を含む試料を測定したときの多孔性担体の表面の着色は濃いものであり、試料中にタンパク質が存在する、と判定することができる。
【0213】
しかし、このセルロースアセテートよりなる多孔性担体を用いた場合、タンパク質を含まない試料(純水)を測定したときの多孔性担体の表面の着色は、これもまた濃いものであり、試料中にタンパク質が存在する、と判定することとなった。
【0214】
すなわち、多孔性担体として、セルロースアセテートよりなる多孔性担体を用いた場合には、試料中にタンパク質が存在しないことを、正しく判定することができないことが分かる。
【0215】
よって、多孔性担体としてセルロースアセテートよりなる多孔性担体を用いる、試料中のタンパク質の測定方法及び測定キットにおいては、試料中のタンパク質を測定することができないことが確かめられた。
【0216】
以上記載したように、ガラス繊維よりなる多孔性担体を用いる本発明の試料中のタンパク質の測定方法及び測定キットは、試料中のタンパク質を正確に測定することができるのに対して、セルロース混合エステルやセルロースアセテートなどのガラス繊維以外の材質よりなる多孔性担体を用いる場合には、試料中のタンパク質を正確に測定することができないことが確認された。
【0217】
〔実施例2〕(ガラス繊維よりなる多孔性担体を用いての試料中のタンパク質の測定−1)
本発明の試料中のタンパク質の測定方法及び測定キットにより、試料中のタンパク質の測定を行った。
【0218】
1.試薬
(1)試薬a
タンパク質と会合し凝集体を形成する色素としてのエリスロシンBを500μMの濃度で含有する水溶液を調製し、試薬aとした。
【0219】
(2)試薬b
界面活性物質としてのTriton X−100を1%(W/V)の濃度で含有する水溶液を調製し、試薬bとした。
【0220】
(3)試薬c
1Mクエン酸−水酸化カリウム緩衝液〔pH2.3(20℃)〕を調製し、試薬cとした。
【0221】
2.多孔性担体
多孔性担体として、下記の多孔性担体をそれぞれ用いた。
(1)ガラス繊維よりなる多孔性担体−a
ガラス繊維よりなる多孔性担体である、「GD/Xシリンジフィルタ」の「メンブレン:GF/A」〔粒子保持能:1.6μm、ワットマンジャパン社〕を、ガラス繊維よりなる多孔性担体−aとした。
【0222】
(2)ガラス繊維よりなる多孔性担体−b
ガラス繊維よりなる多孔性担体である、「GD/Xシリンジフィルタ」の「メンブレン:GF/B」〔粒子保持能:1.0μm、ワットマンジャパン社〕を、ガラス繊維よりなる多孔性担体−bとした。
【0223】
(3)ガラス繊維よりなる多孔性担体−c
ガラス繊維よりなる多孔性担体である、「GD/Xシリンジフィルタ」の「メンブレン:GF/C」〔粒子保持能:1.2μm、ワットマンジャパン社〕を、ガラス繊維よりなる多孔性担体−cとした。
【0224】
(4)ガラス繊維よりなる多孔性担体−d
ガラス繊維よりなる多孔性担体である、「GD/Xシリンジフィルタ」の「メンブレン:GF/D」〔粒子保持能:2.7μm、ワットマンジャパン社〕を、ガラス繊維よりなる多孔性担体−dとした。
【0225】
(5)ガラス繊維よりなる多孔性担体−e
ガラス繊維よりなる多孔性担体である、「GD/Xシリンジフィルタ」の「メンブレン:GF/F」〔粒子保持能:0.7μm、ワットマンジャパン社〕を、ガラス繊維よりなる多孔性担体−eとした。
【0226】
3.試料
(1)タンパク質含有試料−a
タンパク質含有試料として、10mg/L、すなわち1mg/dLのヒト血清アルブミン(HSA)を含む水溶液を調製し、タンパク質含有試料−aとした。
【0227】
(2)タンパク質含有試料−b
タンパク質含有試料として、20mg/L、すなわち2mg/dLのヒト血清アルブミン(HSA)を含む水溶液を調製し、タンパク質含有試料−bとした。
【0228】
(3)タンパク質含有試料−c
タンパク質含有試料として、30mg/L、すなわち3mg/dLのヒト血清アルブミン(HSA)を含む水溶液を調製し、タンパク質含有試料−cとした。
【0229】
4.測定
(1) 前記3の(1)のタンパク質含有試料−aの125μLに、前記1の(1)の試薬aの2,000μLを添加し、混合して、接触させた。
【0230】
(2) 次に、前記(1)の混合液に、前記1の(2)の試薬bの250μLを添加し、混合した。
【0231】
(3) 次に、前記(2)の混合液に、前記1の(3)の試薬cの2,500μLを添加し、混合した。
【0232】
(4) 次に、前記(3)の混合液に、純水を20.125mL添加し、混合した。
【0233】
(5) 次に、前記2の(1)のガラス繊維よりなる多孔性担体−aを接続したシリンジの当該多孔性担体のもう一方の口部を、前記(4)の混合液に接触させ、そして、このシリンジのピストン部分を引くことにより、前記(4)の混合液の3mLを、このシリンジ内に吸引した。
これによって、このガラス繊維よりなる多孔性担体−aに、前記(4)の混合液の3mLを通した。
【0234】
(6) 前記(5)における混合液の吸引後、直ちに前記のガラス繊維よりなる多孔性担体−aの表面の色を目視にて測定した。
【0235】
なお、前記の多孔性担体表面の着色が濃いものである場合には試料中にタンパク質が存在すると判定し、前記多孔性担体表面の着色が無いか又は着色が薄いものである場合には試料中にタンパク質が存在しないと判定した。
【0236】
(7) また、試料を前記3の(1)のタンパク質含有試料−aから(2)のタンパク質含有試料−bに変える以外は、前記(1)〜(6)の通りに操作を行い、測定を行った。
【0237】
(8) 更に、試料を前記3の(1)のタンパク質含有試料−aから(3)のタンパク質含有試料−cに変える以外は、前記(1)〜(6)の通りに操作を行い、測定を行った。
【0238】
(9) また、多孔性担体を、前記2の(1)のガラス繊維よりなる多孔性担体−aから(2)のガラス繊維よりなる多孔性担体−bに変える以外は、前記(1)〜(8)の通りに操作を行い、測定を行った。
【0239】
(10) 更に、多孔性担体を、前記2の(1)のガラス繊維よりなる多孔性担体−aから(3)のガラス繊維よりなる多孔性担体−cに変える以外は、前記(1)〜(8)の通りに操作を行い、測定を行った。
【0240】
(11) また、多孔性担体を、前記2の(1)のガラス繊維よりなる多孔性担体−aから(4)のガラス繊維よりなる多孔性担体−dに変える以外は、前記(1)〜(8)の通りに操作を行い、測定を行った。
【0241】
(12) 更に、多孔性担体を、前記2の(1)のガラス繊維よりなる多孔性担体−aから(5)のガラス繊維よりなる多孔性担体−eに変える以外は、前記(1)〜(8)の通りに操作を行い、測定を行った。
【0242】
5.測定結果
前記の測定の結果を、図2に示した。
【0243】
この図より、以下のことが分かる。
多孔性担体として、ガラス繊維よりなる多孔性担体を用いた場合には、ガラス繊維よりなる多孔性担体−a(粒子保持能:1.6μm)、ガラス繊維よりなる多孔性担体−b(粒子保持能:1.0μm)、ガラス繊維よりなる多孔性担体−c(粒子保持能:1.2μm)、ガラス繊維よりなる多孔性担体−d(粒子保持能:2.7μm)、及びガラス繊維よりなる多孔性担体−e(粒子保持能:0.7μm)のいずれの場合でも、タンパク質(ヒト血清アルブミン)を20mg/L(すなわち2mg/dL)又はそれ以上含む試料を測定したときの多孔性担体の表面の着色は濃いものであり、試料中にタンパク質が存在する、と判定することができることが分かる。
【0244】
すなわち、多孔性担体として、ガラス繊維よりなる多孔性担体を用いた場合には、その粒子保持能(又は孔径、若しくは保留粒子径等)の値により限定を受けることなく、試料中の微量濃度のタンパク質を高感度かつ正確に測定できることが確かめられた。
【0245】
〔実施例3〕(ガラス繊維よりなる多孔性担体を用いての試料中のタンパク質の測定−2)
本発明の試料中のタンパク質の測定方法及び測定キットにより、試料中のタンパク質の測定を行った。
【0246】
1.試薬
(1)試薬1
タンパク質と会合し凝集体を形成する色素としてのエリスロシンBを40μMの濃度で含有し、かつ界面活性物質としてのTriton X−100を0.01%(W/V)の濃度で含有する水溶液を調製し、試薬1とした。
【0247】
(2)試薬2
1Mクエン酸−水酸化カリウム緩衝液〔pH2.3(20℃)〕を調製し、試薬2とした。
【0248】
2.多孔性担体
多孔性担体として、下記の多孔性担体をそれぞれ用いた。
(1)ガラス繊維よりなる多孔性担体−1
ガラス繊維よりなる多孔性担体である、「GD/Xシリンジフィルタ」の「メンブレン:GF/F」〔粒子保持能:0.7μm、ワットマンジャパン社〕を、ガラス繊維よりなる多孔性担体−1とした。
【0249】
(2)ガラス繊維よりなる多孔性担体−2
ガラス繊維よりなる多孔性担体である、「GD/Xシリンジフィルタ」の「メンブレン:GF/B」〔粒子保持能:1.0μm、ワットマンジャパン社〕を、ガラス繊維よりなる多孔性担体−2とした。
【0250】
(3)ガラス繊維よりなる多孔性担体−3
ガラス繊維よりなる多孔性担体である、「GD/Xシリンジフィルタ」の「メンブレン:GF/C」〔粒子保持能:1.2μm、ワットマンジャパン社〕を、ガラス繊維よりなる多孔性担体−3とした。
【0251】
(4)ガラス繊維よりなる多孔性担体−4
ガラス繊維よりなる多孔性担体である、「GD/Xシリンジフィルタ」の「メンブレン:GF/D」〔粒子保持能:2.7μm、ワットマンジャパン社〕を、ガラス繊維よりなる多孔性担体−4とした。
【0252】
3.試料
(1)タンパク質含有試料−1
タンパク質含有試料として、10mg/L、すなわち1mg/dLのヒト血清アルブミン(HSA)を含む水溶液を調製し、タンパク質含有試料−1とした。
【0253】
(2)タンパク質含有試料−2
タンパク質含有試料として、15mg/L、すなわち1.5mg/dLのヒト血清アルブミン(HSA)を含む水溶液を調製し、タンパク質含有試料−2とした。
【0254】
(3)タンパク質含有試料−3
タンパク質含有試料として、20mg/L、すなわち2mg/dLのヒト血清アルブミン(HSA)を含む水溶液を調製し、タンパク質含有試料−3とした。
【0255】
(4)タンパク質含有試料−4
タンパク質含有試料として、30mg/L、すなわち3mg/dLのヒト血清アルブミン(HSA)を含む水溶液を調製し、タンパク質含有試料−4とした。
【0256】
4.測定
(1) 前記3の(1)のタンパク質含有試料−1の150μLに、前記1の(1)の試薬1の5,000μLを添加し、混合して、接触させた。
【0257】
(2) 次に、前記(1)の混合液に、前記1の(2)の試薬2の500μLを添加し、混合した。
【0258】
(3) 次に、前記(2)の混合液の全量をシリンジで吸引した後、このシリンジに前記2の(1)のガラス繊維よりなる多孔性担体−1を接続した。
【0259】
(4) 次に、このシリンジのピストン部分を押すことにより、前記(2)の混合液の全量を、前記2の(1)のガラス繊維よりなる多孔性担体−1に注入し、通した。
なお、この注入は、前記(2)における添加、混合の20秒後に行った。
【0260】
(5) 前記(4)における注入の後、直ちに、前記のガラス繊維よりなる多孔性担体−1の表面の色を目視にて測定した。
【0261】
なお、前記の多孔性担体表面の着色が濃いものである場合には試料中にタンパク質が存在すると判定し、前記多孔性担体表面の着色が無いか又は着色が薄いものである場合には試料中にタンパク質が存在しないと判定した。
【0262】
(6) また、試料を前記3の(1)のタンパク質含有試料−1から(2)のタンパク質含有試料−2に変える以外は、前記(1)〜(5)の通りに操作を行い、測定を行った。
【0263】
(7) 更に、試料を前記3の(1)のタンパク質含有試料−1から(3)のタンパク質含有試料−3に変える以外は、前記(1)〜(5)の通りに操作を行い、測定を行った。
【0264】
(8) そして、試料を前記3の(1)のタンパク質含有試料−1から(4)のタンパク質含有試料−4に変える以外は、前記(1)〜(5)の通りに操作を行い、測定を行った。
【0265】
(9) また、多孔性担体を、前記2の(1)のガラス繊維よりなる多孔性担体−1から(2)のガラス繊維よりなる多孔性担体−2に変える以外は、前記(1)〜(8)の通りに操作を行い、測定を行った。
【0266】
(10) 更に、多孔性担体を、前記2の(1)のガラス繊維よりなる多孔性担体−1から(3)のガラス繊維よりなる多孔性担体−3に変える以外は、前記(1)〜(8)の通りに操作を行い、測定を行った。
【0267】
(11) また、多孔性担体を、前記2の(1)のガラス繊維よりなる多孔性担体−1から(4)のガラス繊維よりなる多孔性担体−4に変える以外は、前記(1)〜(8)の通りに操作を行い、測定を行った。
【0268】
5.測定結果
前記の測定の結果を、図3に示した。
【0269】
この図より、以下のことが分かる。
多孔性担体として、ガラス繊維よりなる多孔性担体−1(粒子保持能:0.7μm)を用いた場合には、タンパク質(ヒト血清アルブミン)を15mg/L(すなわち1.5mg/dL)又はそれ以上含む試料を測定したときの多孔性担体の表面の着色は濃いものであり、試料中にタンパク質が存在する、と判定することができることが分かる。
【0270】
また、ガラス繊維よりなる多孔性担体−2(粒子保持能:1.0μm)、ガラス繊維よりなる多孔性担体−3(粒子保持能:1.2μm)、及びガラス繊維よりなる多孔性担体−4(粒子保持能:2.7μm)を用いた場合には、タンパク質(ヒト血清アルブミン)を20mg/L(すなわち2.0mg/dL)又はそれ以上含む試料を測定したときの多孔性担体の表面の着色は濃いものであり、試料中にタンパク質が存在する、と判定することができることが分かる。
【0271】
すなわち、多孔性担体として、ガラス繊維よりなる多孔性担体を用いた場合には、15mg/L(1.5mg/dL)又は20mg/L(2.0mg/dL)という微量な濃度のタンパク質までも高感度かつ正確に測定できることが改めて確かめられた。
【0272】
〔実施例4〕(タンパク質と会合し凝集体を形成する色素(5種類)をそれぞれ用いての試料中のタンパク質の測定)
タンパク質と会合し凝集体を形成する色素(5種類)をそれぞれ用いて、本発明の試料中のタンパク質の測定方法及び測定キットにより、試料中のタンパク質の測定を行った。
【0273】
1.試薬
〔1〕試薬イ
(1)試薬イ−1
タンパク質と会合し凝集体を形成する色素としてのエリスロシンBを40μMの濃度で含有する水溶液を調製し、試薬イ−1とした。
【0274】
(2)試薬イ−2
タンパク質と会合し凝集体を形成する色素としてのエオシンYを40μMの濃度で含有する水溶液を調製し、試薬イ−2とした。
【0275】
(3)試薬イ−3
タンパク質と会合し凝集体を形成する色素としてのエオシンBを40μMの濃度で含有する水溶液を調製し、試薬イ−3とした。
【0276】
(4)試薬イ−4
タンパク質と会合し凝集体を形成する色素としてのフロキシンBを40μMの濃度で含有する水溶液を調製し、試薬イ−4とした。
【0277】
(5)試薬イ−5
タンパク質と会合し凝集体を形成する色素としてのローズベンガルを40μMの濃度で含有する水溶液を調製し、試薬イ−5とした。
【0278】
〔2〕試薬ロ
(1)試薬ロ−1
0.2Mクエン酸−水酸化カリウム緩衝液〔pH2.3(20℃)〕を調製し、試薬ロ−1とした。
【0279】
(2)試薬ロ−2
1Mクエン酸−水酸化カリウム緩衝液〔pH2.3(20℃)〕を調製し、試薬ロ−2とした。
【0280】
2.多孔性担体
多孔性担体として、ガラス繊維よりなる多孔性担体である、「GD/Xシリンジフィルタ」の「メンブレン:GF/C」〔粒子保持能:1.2μm、ワットマンジャパン社〕を用いた。
【0281】
3.試料
(1)タンパク質含有試料
タンパク質含有試料として、100mg/L、すなわち10mg/dLのヒト血清アルブミン(HSA)を含む水溶液を調製した。
【0282】
(2)タンパク質不含試料
タンパク質を含まない試料、すなわちタンパク質不含試料として、純水を用意した。
【0283】
4.測定
(1) 前記3の(1)のタンパク質含有試料の150μLに、前記1の〔1〕の(1)の試薬イ−1の5,000μLを添加し、混合して、接触させた。
【0284】
(2) 次に、前記(1)の混合液に、前記1の〔2〕の(1)の試薬ロ−1の500μLを添加し、混合した。
【0285】
(3) 次に、前記2のガラス繊維よりなる多孔性担体を接続したシリンジの当該多孔性担体のもう一方の口部を、前記(2)の混合液に接触させ、そして、このシリンジのピストン部分を引くことにより、前記(2)の混合液の3mLを、このシリンジ内に吸引した。
これによって、このガラス繊維よりなる多孔性担体に、前記(2)の混合液の3mLを通した。
【0286】
(4) 前記(3)における混合液の吸引の後、直ちに、前記のガラス繊維よりなる多孔性担体の表面の色を目視にて測定した。
【0287】
なお、前記の多孔性担体表面の着色が濃いものである場合には試料中にタンパク質が存在すると判定し、前記多孔性担体表面の着色が無いか又は着色が薄いものである場合には試料中にタンパク質が存在しないと判定した。
【0288】
(5) また、試料を前記3の(1)のタンパク質含有試料から(2)のタンパク質不含試料に変える以外は、前記(1)〜(4)の通りに操作を行い、測定を行った。
【0289】
(6) 更に、試薬イを前記1の〔1〕の(1)の試薬イ−1から(2)の試薬イ−2に変える以外は、前記(1)〜(5)の通りに操作を行い、測定を行った。
【0290】
(7) また、試薬イを前記1の〔1〕の(1)の試薬イ−1から(3)の試薬イ−3に変える以外は、前記(1)〜(5)の通りに操作を行い、測定を行った。
【0291】
(8) 更に、試薬イを前記1の〔1〕の(1)の試薬イ−1から(4)の試薬イ−4に変える以外は、前記(1)〜(5)の通りに操作を行い、測定を行った。
【0292】
(9) また、試薬イを前記1の〔1〕の(1)の試薬イ−1から(5)の試薬イ−5に変える以外は、前記(1)〜(5)の通りに操作を行い、測定を行った。
【0293】
(10) 更に、試薬ロを前記1の〔2〕の(1)の試薬ロ−1から(2)の試薬ロ−2に変える以外は、前記(1)〜(9)の通りに操作を行い、測定を行った。
【0294】
5.測定結果
試薬ロとして試薬ロ−1を用いた場合の前記測定結果を図4に示し、試薬ロとして試薬ロ−2を用いた場合の前記測定結果を図5に示した。
【0295】
これらの図より、以下のことが分かる。
まず、タンパク質と会合し凝集体を形成する色素として、エリスロシンBを用いた場合には、試薬ロが試薬ロ−1又は試薬ロ−2のいずれであっても、タンパク質(100mg/L、すなわち10mg/dLのヒト血清アルブミン)を含む試料を測定したときの多孔性担体の表面の着色は濃いものであり、試料中にタンパク質が存在する、と判定することができた。
【0296】
また、このタンパク質と会合し凝集体を形成する色素としてエリスロシンBを用いた場合、試薬ロが試薬ロ−1又は試薬ロ−2のいずれであっても、タンパク質を含まない試料(純水)を測定したときの多孔性担体の表面は、着色が無いか又はごく薄いものであり、試料中にタンパク質が存在しない、と判定することができた。
【0297】
すなわち、タンパク質と会合し凝集体を形成する色素としてエリスロシンBを用いた場合には、試料中にタンパク質が存在することと、試料中にタンパク質が存在しないことを、それぞれ正しく判定できていることが分かる。
【0298】
よって、タンパク質と会合し凝集体を形成する色素としてエリスロシンBを用いた場合、本発明の試料中のタンパク質の測定方法及び測定キットにおいては、試料中のタンパク質を正確に測定できることが改めて確かめられた。
【0299】
次に、タンパク質と会合し凝集体を形成する色素として、エオシンYを用いた場合には、試薬ロが試薬ロ−1又は試薬ロ−2のいずれであっても、タンパク質(100mg/L、すなわち10mg/dLのヒト血清アルブミン)を含む試料を測定したときの多孔性担体の表面の着色は濃いものであり、試料中にタンパク質が存在する、と判定することができた。
【0300】
また、このタンパク質と会合し凝集体を形成する色素としてエオシンYを用いた場合、試薬ロが試薬ロ−1又は試薬ロ−2のいずれであっても、タンパク質を含まない試料(純水)を測定したときの多孔性担体の表面は、着色が無いか又はごく薄いものであり、試料中にタンパク質が存在しない、と判定することができた。
【0301】
すなわち、タンパク質と会合し凝集体を形成する色素としてエオシンYを用いた場合には、試料中にタンパク質が存在することと、試料中にタンパク質が存在しないことを、それぞれ正しく判定できていることが分かる。
【0302】
よって、タンパク質と会合し凝集体を形成する色素としてエオシンYを用いた場合においても、本発明の試料中のタンパク質の測定方法及び測定キットにおいては、試料中のタンパク質を正確に測定できることが確かめられた。
【0303】
次に、タンパク質と会合し凝集体を形成する色素として、エオシンBを用いた場合には、試薬ロが試薬ロ−1又は試薬ロ−2のいずれであっても、タンパク質(100mg/L、すなわち10mg/dLのヒト血清アルブミン)を含む試料を測定したときの多孔性担体の表面の着色は濃いものであり、試料中にタンパク質が存在する、と判定することができた。
【0304】
また、このタンパク質と会合し凝集体を形成する色素としてエオシンBを用いた場合、試薬ロが試薬ロ−1又は試薬ロ−2のいずれであっても、タンパク質を含まない試料(純水)を測定したときの多孔性担体の表面は、着色が無いか又はごく薄いものであり、試料中にタンパク質が存在しない、と判定することができた。
【0305】
すなわち、タンパク質と会合し凝集体を形成する色素としてエオシンBを用いた場合には、試料中にタンパク質が存在することと、試料中にタンパク質が存在しないことを、それぞれ正しく判定できていることが分かる。
【0306】
よって、タンパク質と会合し凝集体を形成する色素としてエオシンBを用いた場合においても、本発明の試料中のタンパク質の測定方法及び測定キットにおいては、試料中のタンパク質を正確に測定できることが確かめられた。
【0307】
次に、タンパク質と会合し凝集体を形成する色素として、フロキシンBを用いた場合には、試薬ロが試薬ロ−1又は試薬ロ−2のいずれであっても、タンパク質(100mg/L、すなわち10mg/dLのヒト血清アルブミン)を含む試料を測定したときの多孔性担体の表面の着色は濃いものであり、試料中にタンパク質が存在する、と判定することができた。
【0308】
また、このタンパク質と会合し凝集体を形成する色素としてフロキシンBを用いた場合、試薬ロが試薬ロ−1又は試薬ロ−2のいずれであっても、タンパク質を含まない試料(純水)を測定したときの多孔性担体の表面は、着色が無いか又はごく薄いものであり、試料中にタンパク質が存在しない、と判定することができた。
【0309】
すなわち、タンパク質と会合し凝集体を形成する色素としてフロキシンBを用いた場合には、試料中にタンパク質が存在することと、試料中にタンパク質が存在しないことを、それぞれ正しく判定できていることが分かる。
【0310】
よって、タンパク質と会合し凝集体を形成する色素としてフロキシンBを用いた場合においても、本発明の試料中のタンパク質の測定方法及び測定キットにおいては、試料中のタンパク質を正確に測定できることが確かめられた。
【0311】
次に、タンパク質と会合し凝集体を形成する色素として、ローズベンガルを用いた場合には、試薬ロが試薬ロ−1又は試薬ロ−2のいずれであっても、タンパク質(100mg/L、すなわち10mg/dLのヒト血清アルブミン)を含む試料を測定したときの多孔性担体の表面の着色は濃いものであり、試料中にタンパク質が存在する、と判定することができた。
【0312】
また、このタンパク質と会合し凝集体を形成する色素としてローズベンガルを用いた場合、試薬ロが試薬ロ−1又は試薬ロ−2のいずれであっても、タンパク質を含まない試料(純水)を測定したときの多孔性担体の表面は、着色が無いか又はごく薄いものであり、試料中にタンパク質が存在しない、と判定することができた。
【0313】
すなわち、タンパク質と会合し凝集体を形成する色素としてローズベンガルを用いた場合には、試料中にタンパク質が存在することと、試料中にタンパク質が存在しないことを、それぞれ正しく判定できていることが分かる。
【0314】
よって、タンパク質と会合し凝集体を形成する色素としてローズベンガルを用いた場合においても、本発明の試料中のタンパク質の測定方法及び測定キットにおいては、試料中のタンパク質を正確に測定できることが確かめられた。
【0315】
以上記載したように、本発明の試料中のタンパク質の測定方法及び測定キットは、タンパク質と会合し凝集体を形成する色素がいずれのものであっても、試料中のタンパク質を正確に測定することができることが確認できた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1)試料、及びタンパク質と会合し凝集体を形成する色素を、接触させ、これにより、試料に含まれていたタンパク質と当該色素とを会合させ、これらの凝集体を形成させる凝集体形成工程;
2)当該凝集体の形成後、当該凝集体を含む溶液の一定量をガラス繊維よりなる多孔性担体に通す通流工程;及び
3)当該多孔性担体表面の色を測定する色測定工程、を含む試料中のタンパク質の測定方法。
【請求項2】
凝集体形成工程において、界面活性物質を共存させる、請求項1記載の試料中のタンパク質の測定方法。
【請求項3】
タンパク質と会合し凝集体を形成する色素を含有する試薬、及びガラス繊維よりなる多孔性担体を含む、試料中のタンパク質の測定キット。
【請求項4】
界面活性物質を更に含む、請求項3記載の試料中のタンパク質の測定キット。
【請求項5】
請求項1記載の測定方法に使用されるものである、請求項3記載の試料中のタンパク質の測定キット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−223726(P2010−223726A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−70752(P2009−70752)
【出願日】平成21年3月23日(2009.3.23)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成18年度 独立行政法人科学技術振興機構 独創シーズ展開事業委託開発「尿中微量蛋白質検出キット」、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000131474)株式会社シノテスト (28)
【Fターム(参考)】