説明

試験装置

【課題】被試験装置のソフトウェア動作環境に影響を与えることのない試験装置を提供する。
【解決手段】被試験装置1の表示部3に対応してそれぞれ設置されたカメラ11と、カメラ11によって撮影された画面の画像を記憶して画像遷移シナリオを生成するとともに、撮影した画像と記憶した画像とを照合判定する画面キャプチャ照合判定部12と、データ入力部2が出力したデータを記録して操作シナリオを生成するとともに、操作シナリオのデータを再生して被試験装置1に送り出すデータ入力シミュレータ部13とを備えている。データ入力シミュレータ部13は、再生時に、一時中断データがあると、再生を中断して画面キャプチャ照合判定部12に画面確認を指示し、すべての画面キャプチャ照合判定部12から確認終了の通知を受けて操作シナリオの再生を再開する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は試験装置に関し、特にキーボード、マウス、タッチパネル、磁気カードリーダ等のデータ入力部と、これらデータ入力部から入力されたデータによって遷移する画面を持つ装置のアプリケーションソフトウェア検証用の試験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
開発された機器が異常なく正常に機能することを検査する試験装置が知られている。たとえば、被試験装置に対するキーボード打鍵、キーの押下、タッチパネルの操作をロボットに行わせ、その操作の結果として遷移する画面を確認することで正しい動作をしたかの確認をすることが行われている(たとえば、特許文献1参照)。画面の確認は、被試験装置の画面をカメラで撮影し、期待される画面と照合することで判定している。この試験装置は、被試験装置に対する操作をロボットが行い、画面の確認をカメラで撮影したデータを使用しているので、非常に操作の精度がよくて再現性が高く、被試験装置のソフトウェア動作環境に影響を与えることなく試験をすることができる。
【0003】
この他にも、被試験装置において、データ入力機能および画面照合機能を有する試験プログラムを実行させることで、データ入力に対する動作および画面の確認をソフトウェア的に行う方法も存在している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−268202号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、被試験装置に対する操作をロボットが行う方法では、データ入力のためのロボットアプリケーションを開発しなければならず、その開発に多くの時間と費用がかかるという問題点がある。特に、ロボットは、キーボード打鍵のような単純な操作に対しては比較的簡単かつ容易に対応できるが、表示画面を確認しながらマウスを操作して所定値でクリックするというような複雑な操作に対しては、対応が非常に難しくなる。しかも、場合によっては、画面に対して2本の指でズーム操作を行うような場合に、人による複雑な操作をシミュレートさせるために、ロボット自身のハードウェア開発も必要になることがある。
【0006】
一方、試験プログラムによる方法では、そのプログラム自身が、被試験装置のソフトウェア動作環境(たとえば、CPU(Central Processing Unit)占有率、メモリ消費等)に影響を与えてしまうという問題点がある。このため、CPU能力が非力で小容量のメモリしか搭載しない被試験装置では、CPUパワーと大量のメモリを必要とする画面確認のための画像処理は不可能であり、場合によっては、被試験装置の本来のアプリケーションソフトウェアが正しく動作しなくなることがある。しかも、被試験装置がある程度正しく動作するという前提が必要であるため、試験の正確性を欠くことがある。
【0007】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、被試験装置のソフトウェア動作環境に影響を与えることのない試験装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明では上記の課題を解決するために、入力されたデータによって遷移する画面を持つアプリケーションソフトウェアの検証を行う試験装置において、被試験装置の表示部の画面を撮影する少なくとも一つのカメラと、前記カメラが撮影した画像をキャプチャして画像遷移シナリオとして記憶し、試験時には、撮影した画像を前記画像遷移シナリオの該当画像と照合して一致するかどうかを判定する少なくとも一つの画面キャプチャ照合判定部と、前記被試験装置に入力されるデータを取り込んで操作シナリオとして記憶し、試験時には、前記操作シナリオに従って再生した再生データを前記被試験装置に入力するデータ入力シミュレータ部と、を備え、前記データ入力シミュレータ部は、試験時に、少なくとも一つの前記再生データを前記被試験装置に入力することによって画面が遷移するタイミングで前記画面キャプチャ照合判定部に画像キャプチャおよび照合判定を指示し、すべての前記画面キャプチャ照合判定部から判定終了の通知が来た段階で前記操作シナリオの再生を再開することを特徴とする試験装置が提供される。
【0009】
このような試験装置によれば、被試験装置にデータを入力するときに、そのデータを操作シナリオとして記憶し、試験時には、その操作シナリオを再生して被試験装置に送出することで、被試験装置へのデータ入力操作をそのままシミュレートすることができる。データ入力により遷移する画面の確認は、カメラが撮影した画面の画像を画面キャプチャ照合判定部が行うので、被試験装置に対して何ら影響を与えることがない。また、再生の途中で画面キャプチャ照合判定部による照合判定が必要なときは、すべての画面キャプチャ照合判定部からのすべての判定終了の通知を待って、再生を再開するようにしている。このため、照合のための画像処理が長引くようなことがあっても操作シナリオの再生動作に何ら影響されることがない。
【発明の効果】
【0010】
上記構成の試験装置は、データ入力により遷移する画面の確認をカメラで撮影した画像の照合で行っているので、被試験装置のソフトウェア動作環境にまったく影響を与えることはないという利点がある。
【0011】
また、試験員が行った入力操作をそのまま記録することで操作シナリオを生成しているので、操作シナリオの作成が容易であり、入力操作を忠実に再現することができる。さらに、データの入力にロボットを使用しないので、ロボットおよびロボットアプリケーションソフトウェアの開発が不要であることから、試験装置のコストを大幅に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明による試験装置の概要を示すシステム構成図である。
【図2】試験装置をPOSシステムの試験に適用したときのシステム構成図である。
【図3】データ入力シミュレータ部のハードウェア構成例を示す図である。
【図4】操作シナリオとして記録されるデータのフォーマット例を示す図である。
【図5】試験用のアプリケーションプログラムの処理機能切り換えの流れを示すフローチャートである。
【図6】記録処理の流れを示すフローチャートである。
【図7】再生処理の流れを示すフローチャートである。
【図8】同期制御の例を説明した図である。
【図9】ダウンロード処理の流れを示すフローチャートである。
【図10】アップロード処理の流れを示すフローチャートである。
【図11】試験装置を操作スイッチが一体となっている被試験装置の試験に適用したときのシステム構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図1は本発明による試験装置の概要を示すシステム構成図である。
試験対象の被試験装置1は、この被試験装置1にデータを入力するデータ入力部2およびこのデータ入力部2による動作結果を表示する表示部3を有している。ここで、データ入力部2は、たとえば、被試験装置1に接続されるキーボード、マウス、バーコードリーダ、スキャナ、磁気カードリーダ、表示部3に設置されたタッチパネル等とすることができる。また、被試験装置1に設置されているボタンや、各種操作スイッチとすることができる。なお、ここでは、表示部3は、1台の被試験装置1に複数接続されているとして示しているが、被試験装置1がそれぞれネットワーク等によって相互に接続された複数の装置から構成されていて、それぞれの装置に表示部3が接続されているような形態でもよい。
【0014】
試験装置10は、被試験装置1の表示部3の画面を撮影するカメラ11と、このカメラ11が撮影した画像の処理を行う画面キャプチャ照合判定部12と、データ入力部2と被試験装置1との間に設置されたデータ入力シミュレータ部13とを備えている。
【0015】
画面キャプチャ照合判定部12は、カメラ11が撮影した画像を取り込む画面キャプチャ部12aと、画面キャプチャ部12aがキャプチャした画像を記憶する画像記憶部12bとを有している。画面キャプチャ照合判定部12は、また、画像記憶部12bの画像と画面キャプチャ部12aがキャプチャした画像とを照合して一致しているか否かを判定する照合判定部12cと、データ入力シミュレータ部13との通信を行う通信制御部12dとを有している。
【0016】
画像記憶部12bは、データ入力部2からのデータ入力に従って順次遷移する表示部3の画像がデータ入力シミュレータ部13からの指示に従って順次記憶され、これによって画像遷移シナリオが生成される。この画像遷移シナリオの画像は、照合判定部12cが試験時にカメラ11で撮影した画像と照合され、正しい画面表示がなされているかの画面確認に使用される。通信制御部12dは、データ入力シミュレータ部13から、画像遷移シナリオの生成のタイミングおよび画面確認のタイミングを何時にするかの指示を受けるのに使用される。
【0017】
データ入力シミュレータ部13は、データ入力部2の出力と被試験装置1のデータ入力とに接続される入出力インタフェース部13aと、データ入力部2によって出力されたデータを記録する入力データ記録部13bとを有している。データ入力シミュレータ部13は、また、入力データ記録部13bに記録されているデータを再生して被試験装置1に送り込む入力データ再生部13cと、画面キャプチャ照合判定部12との通信を行う同期制御部13dとを有している。
【0018】
入力データ記録部13bは、試験員がデータ入力部2を操作して所定の順序かつ所定の時間間隔で入力したデータを順次記録し、これによって操作シナリオが生成される。この操作シナリオ生成のとき、データ入力によって表示部3の画面が遷移するタイミングで、一時中断を表すデータを埋め込んでいくとよい。
【0019】
入力データ再生部13cは、試験時に操作シナリオの再生に使用される。すなわち、入力データ再生部13cは、入力データ記録部13bに記録された操作シナリオのデータを順に読み出し、試験員が入力したときと同じ時間間隔で入出力インタフェース部13aを介して被試験装置1に供給される。これにより、試験員が操作したときと同じ入力操作が再現されることになる。
【0020】
操作シナリオの再生途中で一時中断を表すデータが再生されると、入力データ再生部13cは、再生を中断し、同期制御部13dは、すべての画面キャプチャ照合判定部12に対して画面照合をするよう指示する。同期制御部13dがすべての画面キャプチャ照合判定部12から判定完了を表す信号を受けると、入力データ再生部13cは、操作シナリオの再生を再開する。
【0021】
このようにして、この試験装置は、シナリオ作成時には、試験員が実際にデータ入力操作をしたときのデータがそのまま記録されるので、マウスのような複雑な操作でも、シナリオ再生時に忠実に再現することができる。つまり、この試験装置10では、シナリオ作成が非常に簡単になる。また、データ入力にロボットを使用しないので、ロボットおよびこれを制御するためにロボットアプリケーションの開発が不要になり、試験装置10を低コストで構成することができる。
【0022】
次に、この試験装置10を、たとえばスーパーマーケットの会計場に設置されるPOS(Point Of Sale)システムに適用して、そこに搭載されたアプリケーションソフトウェアを検証する場合について説明する。
【0023】
図2は試験装置をPOSシステムの試験に適用したときのシステム構成図である。
POSシステムには、会計をスムーズに行うために、お客が購入する商品の情報を入力するチェッカと呼ばれる人と、その後の精算をもっぱら担当するキャッシャと呼ばれる人の二人で処理できるようにしたものがある。したがって、このようなPOSシステムでは、チェッカ側とキャッシャ側とにそれぞれタッチパネル付表示部21,22を備えている。
【0024】
このPOSシステムのデータ入力部としては、タッチパネル付表示部21,22のタッチパネル、チェッカ側の固定スキャナ23およびバーコードリーダ24、キャッシャ側のキーボード25および磁気カードリーダ26の周辺機器を有している。タッチパネル付表示部21,22のタッチパネルは、画面上に表示されたソフトスイッチに指を接触させることでその接触位置に対応するデータを出力する。固定スキャナ23は、バーコードが付された商品をかざすことでバーコードを読み取り、そのバーコードに対応するデータを出力する。バーコードリーダ24は、これを商品に付されたバーコードにかざすことでバーコードを読み取り、そのバーコードに対応するデータを出力する。キーボード25は、キーの打鍵が行われるとそのキーに対応するデータを出力する。磁気カードリーダ26は、これにスーパーマーケット等の会員カードを通すことで、会員カード情報を読み取り、その情報のデータを出力する。
【0025】
これら周辺機器は、データ入力シミュレータ部13を介してPOS制御部27に接続されている。これら周辺機器とPOS制御部27とは、USB(Universal Serial Bus)規格のケーブルによって接続されている。したがって、試験時には、周辺機器とデータ入力シミュレータ部13との間、データ入力シミュレータ部13とPOS制御部27との間も、USBケーブルによって接続されている。
【0026】
タッチパネル付表示部21,22には、その画面を撮影するようカメラ11がそれぞれ設置され、各カメラ11には、画面キャプチャ照合判定部12が接続されている。これら二つの画面キャプチャ照合判定部12およびデータ入力シミュレータ部13は、ここでは、LAN(Local Area Network)ケーブルによって相互に接続されている。
【0027】
図3はデータ入力シミュレータ部のハードウェア構成例を示す図である。
データ入力シミュレータ部13は、主制御部30と、入出力接続部40と、操作パネル部50とを有している。ここで、入出力接続部40は、図1の入出力インタフェース部13aに相当する。
【0028】
主制御部30は、CPU(Central Processing Unit)31と、ROM(Read Only Memory)32と、RAM(Random Access Memory)33と、タイマ34と、通信制御部35とを有し、互いにバス36によって接続されている。
【0029】
CPU31は、この試験装置10のアプリケーションプログラムに従って、装置全体を制御する。ROM32には、OS(Operating System)のプログラムやこの試験装置10のアプリケーションプログラムが格納されている。RAM33には、CPU31に実行させるOSのプログラムやアプリケーションプログラムの少なくとも一部が一時的に記憶される。また、RAM33には、データ入力部2によって入力されたデータが操作シナリオとして記憶され、CPU31による処理に必要な各種データが記憶される。タイマ34は、RAM33に操作シナリオを記憶させるときに各データに付するためのタイムスタンプを生成する。また、タイマ34は、シナリオ再生時における時間間隔の計算に用いられる。通信制御部35は、図1の同期制御部13dに対応するLANコントローラであって、すべての画面キャプチャ照合判定部12と、RAM33に記憶されたデータを待避させるために設けた外部装置としてのパソコン60とに接続されている。パソコン60は、RAM33に記憶された操作シナリオのデータを保存していつでもRAM33に書き戻すことができるだけでなく、データを編集することもできる。
【0030】
入出力接続部40は、USB接続用の入出力信号処理部41を複数備えており、主制御部30のバス36に接続されている。それぞれの入出力信号処理部41は、マスタコントローラMCおよびデバイスコントローラDCを有し、マスタコントローラMCは、POSシステムのデータ入力部が接続され、データ入力部に対する親機としてプロトコル制御を行う。デバイスコントローラDCは、POS制御部27が接続され、POS制御部27に対する子機としてプロトコル制御を行う。
【0031】
操作パネル部50は、操作スイッチと表示ランプとを有している。操作スイッチとしては、操作シナリオの記録データをパソコン60に待避させる「UPLOAD」スイッチ、パソコン60に保存された操作シナリオのデータをRAM33に書き戻す「DOWNLOAD」スイッチが設けられている。また、処理の開始・終了を指示する「START」・「STOP」スイッチ、操作シナリオの記録・再生を指示する「記録」・「再生」スイッチがある。さらに、操作シナリオの生成時に、一時的に再生を中断させるための一時中断データの記録を指示する「PAUSE」スイッチ、操作シナリオの再生回数を指示する「カウンタ」スイッチ等がある。この「カウンタ」スイッチは、たとえば数個のデジタルスイッチによって構成され、数桁の再生回数を設定できるようにしている。
【0032】
表示ランプとしては、操作シナリオのデータのアップロード・ダウンロード処理のときに点灯する「UPLOAD」・「DOWNLOAD」、操作シナリオのデータの再生時に点灯する「RUN」がある。また、回数を指定して操作シナリオを再生したときの回数を表示するカウンタ表示器がある。このカウンタ表示器の表示は、再生のときに「カウンタ」スイッチに設定された回数を初期値とし、操作シナリオのデータ再生が一回終わるたびに「1」ずつ減算した値となる。
【0033】
図4は操作シナリオとして記録されるデータのフォーマット例を示す図である。
操作シナリオのデータ記録フォーマットは、CH−NO(チャネルナンバー)、記録時間および操作データを有している。CH−NOは、データ入力部がどの入出力信号処理部41に接続されているかを管理している番号である。ここでは、CH−NOの「1」にキーボード25、「2」に固定スキャナ23、「3」にチェッカ側のタッチパネル、「4」にバーコードリーダ24、「5」に磁気カードリーダ26、そして、「6」にキャッシャ側のタッチパネルを割り付けている。
【0034】
操作例として、たとえば、キーボード25を操作し、「A」および「B」のキーを打鍵した場合、CH−NOの「1」、記録時間、および、「A」および「B」のデータがRAM33に記録される。記録時間は、タイマ34によって生成された時間データが記録される。固定スキャナ23およびバーコードリーダ24の場合の操作データは、バーコードのデータであり、タッチパネルの場合は、座標データ、そして磁気カードリーダ26の場合は、磁気カードに記録されたデータになる。
【0035】
操作データの中には、「PAUSE」というデータがある。これは、データを順次入力していき、その結果、別の画面に遷移したという場合に、その画面をあらかじめ記録しておいた画面と照合して正しい画面かどうかを確認したいときに一時中断データとして記録される。このデータは、「PAUSE」という操作スイッチを押すことによって操作シナリオに挿入される。また、この「PAUSE」スイッチの押下は、画面キャプチャ照合判定部12に対してそのときの画面をキャプチャして記憶する指示にもなる。
【0036】
この試験装置10は、ROM32に格納されている試験用のアプリケーションプログラムに従って動作するが、ここでは、その動作例をフローチャート等を参照しながら説明する。
【0037】
図5は試験用のアプリケーションプログラムの処理機能切り換えの流れを示すフローチャート、図6は記録処理の流れを示すフローチャート、図7は再生処理の流れを示すフローチャート、図8は同期制御の例を説明した図、図9はダウンロード処理の流れを示すフローチャート、図10はアップロード処理の流れを示すフローチャートである。
【0038】
試験装置10に搭載された試験用のアプリケーションプログラムは、図5に示したように、データ入力シミュレータ部13の操作パネル部50に設けられたスイッチの状態によって、処理内容が選択される。すなわち、CPU31は、「記録」スイッチ、「再生」スイッチ、「DOWNLOAD」スイッチおよび「UPLOAD」スイッチが押下されてオンしたかどうかを判断し、押下されずにオフのままでは、何れかのスイッチがオンするまで待つ。
【0039】
まず、CPU31は、「記録」スイッチのオン状態を判断すると(ステップS1)、記録処理を開始する(ステップS2)。次に、CPU31は、「再生」スイッチのオン状態を判断すると(ステップS3)、再生処理を開始する(ステップS4)。次に、CPU31は、「DOWNLOAD」スイッチのオン状態を判断すると(ステップS5)、ダウンロード処理を開始する(ステップS6)。そして、CPU31は、「UPLOAD」スイッチのオン状態を判断すると(ステップS7)、アップロード処理を開始する(ステップS8)。
【0040】
記録処理では、図6に示したように、まず、CPU31は、「START」スイッチを監視していて、何ら操作がなくオフの状態のままだと、この記録処理をパスして終了する(ステップS11)。
【0041】
CPU31は、「START」スイッチのオン状態を判断すると、入出力接続部40の入出力信号処理部41を記録モードに設定する(ステップS12)。次に、CPU31は、「PAUSE」スイッチがオンかどうかを判断し(ステップS13)、「PAUSE」スイッチがオン状態にあると判断されると、「PAUSE」のデータをRAM33に書き込み、RAMアドレスを更新する(ステップS14)。このとき、CPU31は、通信制御部35を使い、画面キャプチャ照合判定部12に対して画面をキャプチャして記憶する指示を出す。これにより、画面キャプチャ照合判定部12においても、遷移画面の画像遷移シナリオを生成することができる。ステップS13の判断において、「PAUSE」スイッチがオフ状態にあると判断されると、ステップS14の処理はパスされる。
【0042】
次に、CPU31は、データ受信ありかどうかを判断する(ステップS15)。たとえば、図3において、タッチパネル付表示部21のタッチパネルが操作されると、その入力データは、所定のプロトコル付きで入出力信号処理部41のマスタコントローラMCに送られる。
【0043】
ここで、CPU31がデータ受信ありを判断すると、マスタコントローラMCの中でプロトコルが除去され、純データだけがバス36を介して主制御部30のRAM33に送られる。このとき、RAM33には、タイマ34が生成したタイムスタンプと、データ受信のあった入出力信号処理部41のCH−NOとがデータとともに書き込まれ、RAMアドレスを更新する(ステップS16)。また、入出力信号処理部41では、RAM33に送られたデータと同じデータがデバイスコントローラDCでプロトコルを付けてPOS制御部27に送られる。なお、ステップS15の判断で、データ受信がないと判断されると、ステップS13に戻る。
【0044】
次に、CPU31は、「STOP」スイッチがオンにされたかどうかを判断し(ステップS17)、「STOP」スイッチがオフの場合、ステップS13に戻り、「STOP」スイッチがオンの場合、この記録処理は終了することになる。
【0045】
以上のように、データ入力シミュレータ部13の記録処理では、データが入力されると、そのデータに、タイムスタンプおよびCH−NOを付加してRAM33に書き込んでいくことによって、操作シナリオのデータが生成される。途中で、データの入力によって画面遷移がある場合には、再生時に再生の一時中断と画面確認の指示のための「PAUSE」データを埋め込むことができるようにしている。
【0046】
再生処理では、図7に示したように、まず、CPU31は、「START」スイッチを監視していて、何ら操作がなくオフの状態のままだと、この再生処理をパスして終了する(ステップS21)。
【0047】
CPU31は、「START」スイッチのオン状態を判断すると、入出力接続部40の入出力信号処理部41を再生モードに設定する(ステップS22)。次に、CPU31は、再生回数を設定する「カウンタ」スイッチの値を読み込み、内部カウンタを設定し、操作パネル部50にカウンタ表示器に再生回数を表示させる(ステップS23)。なお、「カウンタ」スイッチの値は、「0」が指定されると「STOP」スイッチがオン操作されるまで無限に再生を繰返す。「0」以外の値が指定されると、その値の回数分または、STOPスイッチが操作されるまで再生を繰り返すことができる。
【0048】
次に、CPU31は、操作パネル部50の「RUN」ランプを点灯させ(ステップS24)、RAM33から操作シナリオの再生データを読み出し、そのデータをバス36を介して入出力信号処理部41に送り、RAMアドレスを更新する(ステップS25)。
【0049】
次に、CPU31は、入出力信号処理部41に送った再生データが「PAUSE」であるかどうかを判断する(ステップS26)。「PAUSE」でなければ、再生データのタイムスタンプ、CH−NOが参照され、対応するCH−NOの入出力信号処理部41のデバイスコントローラDCからPOS制御部27へ再生データが送信される(ステップS27)。
【0050】
次に、CPU31は、POS制御部27へ操作シナリオの最後のデータを送信したかどうかを判断し(ステップS28)、一つのシナリオが終了した場合は、内部カウンタおよびカウンタ表示器のカウンタ表示を1ずつデクリメントする(ステップS29)。
【0051】
次に、CPU31は、内部カウンタの値が「0」かどうかを判断し(ステップS30)、「0」でなければ、RAMアドレスを元に戻し(ステップS31)、同じシナリオの繰り返しのためにステップS25の処理に進む。内部カウンタの値が「0」であれば、「カウンタ」スイッチの値が「0」かどうかを判断し(ステップS32)、「0」でなければ、「RUN」ランプを滅灯させて(ステップS33)、この再生処理を終了する。「カウンタ」スイッチの値が「0」であれば、CPU31は、再生回数が無制限に設定されているので、同じシナリオの繰り返しのためにステップS31の処理に進む。
【0052】
ステップS28の判断において、すべてのデータ送信が終了していない場合に、「STOP」スイッチがオンになると(ステップS34)、CPU31は、「RUN」ランプを滅灯させ(ステップS35)、この再生処理を強制的に終了させる。「STOP」スイッチがオフのままであれば、CPU31は、次のデータの読み出しのためにステップS25の処理に進む。
【0053】
ステップS26の判断において、再生データが一時中断の「PAUSE」であれば、CPU31は、画面キャプチャ照合判定部12に、画面確認依頼の信号「OK2」を送信する(ステップS36)。たとえば、図4に示したように、操作データをPOS制御部27に順次送信していて、途中に「PAUSE」データがあれば、CPU31は、図8に示したように、「OK2」を通信制御部35を介して二つの画面キャプチャ照合判定部12に送信する。
【0054】
画面キャプチャ照合判定部12は、「OK2」を受けて実際の画面とあらかじめ記録しておいた期待画面とを照合し、一致するかどうかを判定する。この処理が終了すると、画面キャプチャ照合判定部12は、判定結果とともに照合判定が終了したことを表す信号「CYCLE_END」をデータ入力シミュレータ部13へ送信する。画面キャプチャ照合判定部12による判定結果は、データ入力シミュレータ部13のRAM33に蓄積され、アプリケーションソフトウェアの不具合解析に使用される。
【0055】
データ入力シミュレータ部13が「OK2」を送信した後、CPU31は、「CYCLE_END」の受信を待っている(ステップS37)。「CYCLE_END」を受信した場合、CPU31は、すべての画面キャプチャ照合判定部12から「CYCLE_END」を受信したかどうかを判断する(ステップS38)。二つの画面キャプチャ照合判定部12から「CYCLE_END」を受信していない場合は、ステップS37に戻る。これは、二つの画面キャプチャ照合判定部12で照合判定処理にかかる時間が異なるので、両方の「CYCLE_END」が受信されるのを待ち合わせてから、再生を再開させるためである。
【0056】
二つの画面キャプチャ照合判定部12から「CYCLE_END」を受信した場合、CPU31は、二つの画面キャプチャ照合判定部12に対してすべての画面確認が完了したことを表す「OK1」信号を送信する(ステップS39)。次に、CPU31は、画面キャプチャ照合判定部12による画面確認処理の時間だけ、データ記録時に記録されたタイムスタンプの時間経過と異なることになるので、タイムスタンプの値を補正して(ステップS40)、ステップS25に進む。
【0057】
以上のように、データ入力シミュレータ部13の再生処理では、操作シナリオのデータを先頭から順次読み出し、そのデータを、記録された順序で、かつ記録した時間間隔をおいて被試験装置であるPOS制御部27へ送信する。再生の途中で、一時中断の「PAUSE」データが再生されると、再生を中断して画面キャプチャ照合判定部12に画面確認をさせ、すべての画面キャプチャ照合判定部12の画面確認が終了するのを待って、再生を再開する。再生再開に当たっては、画面キャプチャ照合判定部12の画面確認に要した時間が考慮され、タイムスタンプの時刻をずらして再生する。操作シナリオの再生回数は、任意に設定することができ、そして、再生処理は、「STOP」スイッチを押下することによっていつでも強制終了させることができる。
【0058】
ダウンロード処理は、パソコン60に保存していた操作シナリオのデータをデータ入力シミュレータ部13に取り込むときに使用される。このダウンロード処理では、図9に示したように、CPU31は、操作パネル部50の「DOWNLOAD」ランプを点灯させ(ステップS41)、続いて、「DOWNLOAD」を実行する(ステップS42)。
【0059】
すなわち、パソコン60に保存していた、または、編集して保存していた操作シナリオのデータが通信制御部35によって受けられ、バス36を介してRAM33に格納される。その後、CPU31は、「DOWNLOAD」ランプを滅灯させ(ステップS43)、このダウンロード処理を終了する。
【0060】
アップロード処理は、記録した操作シナリオのデータをパソコン60に待避させるとき、または、記録した操作シナリオのデータをパソコン60で編集したいときに使用される。このアップロード処理では、図10に示したように、CPU31は、操作パネル部50の「UPLOAD」ランプを点灯させ(ステップS51)、続いて、「UPLOAD」を実行する(ステップS52)。
【0061】
すなわち、RAM33に保存されている操作シナリオのデータは、バス36を介して通信制御部35に送られ、通信制御部35がLANを経由してパソコン60に転送し、そこに保存する。そして、CPU31は、「UPLOAD」ランプを滅灯させ(ステップS53)、このアップロード処理を終了する。
【0062】
図11は試験装置を操作スイッチが一体となっている被試験装置の試験に適用したときのシステム構成図である。この例では、被試験装置71,72は、データ入力部73,74および表示部75,76が本体に一体に構成されていて、そのデータ入力部によって入力されたデータを入出力できるインタフェースを備えた制御部77,78を備えている。したがって、データ入力シミュレータ部13においても、その入出力接続部40は、制御部77,78との接続に対応したインタフェースを有するものが使用される。また、二つの被試験装置71,72は、インターネット、無線または有線のLAN等によって相互に接続されており、データ入力によって双方の表示部75,76の画面が遷移するものとしている。このような被試験装置71,72の例としては、たとえば、通信による多人数プレイが可能なゲーム機等がある。
【0063】
この被試験装置71,72の試験を行うときは、まず、データ入力シミュレータ部13が制御部77,78に対してデータ入力部73,74を操作して入力したデータを外部に取り出すことができるモードに設定し、記録処理を行う。記録方法は、上記の適用例と同じであり、データ入力部73,74で入力されたデータを、タイムスタンプおよびCH−NOとともに順次記録し、必要に応じて、一時中断の「PAUSE」データを挿入することで操作シナリオを生成する。また、「PAUSE」の挿入の際には、データ入力シミュレータ部13が画面キャプチャ照合判定部12に指示して、そのときの遷移画像を記録して、画像遷移シナリオを生成する。
【0064】
再生処理のときは、データ入力シミュレータ部13が制御部77,78に対して外部入力が可能なモードに設定し、制御部77,78がデータ入力シミュレータ部13からのデータ入力を受け付けることができるようにする。再生処理は、上記の適用例と同じであり、操作シナリオに従ってデータ入力シミュレータ部13の再生データが被試験装置71,72に入力される。再生データが一時中断の「PAUSE」であるときには、再生を中断して、画面キャプチャ照合判定部12による画面確認を行い、すべての画面確認が終了した段階で、操作シナリオの再生を再開する。
【0065】
上記の実施の形態では、複数画面を有するPOSシステム、ネット対戦ゲーム機への適用に対して説明したが、本試験装置は、これらに限定されるものではない。たとえば、ネットワークに接続しているパソコンにアクセスしてGUI(Graphical User Interface)を遠隔操作できるリモートデスクトップシステムへの適用も可能である。また、別のパソコンの画面と同じ画面を手元のパソコンの画面に表示させるリモートアシスタンスを搭載したシステムへの適用も可能である。このような場合、確認画面の表示部は、同じ場所にはないので、カメラ11および画面キャプチャ照合判定部12は、表示部のある場所に設置され、それぞれネットワークによってデータ入力シミュレータ部13と接続することになる。
【0066】
なお、上記の実施の形態では、複数画面を有する被試験装置について説明したが、当然ながら、表示部が1台しかない被試験装置でも同じように適用できることはもちろんである。
【符号の説明】
【0067】
1 被試験装置
2 データ入力部
3 表示部
10 試験装置
11 カメラ
12 画面キャプチャ照合判定部
12a 画面キャプチャ部
12b 画像記憶部
12c 照合判定部
12d 通信制御部
13 データ入力シミュレータ部
13a 入出力インタフェース部
13b 入力データ記録部
13c 入力データ再生部
13d 同期制御部
21,22 タッチパネル付表示部
23 固定スキャナ
24 バーコードリーダ
25 キーボード
26 磁気カードリーダ
27 POS制御部
30 主制御部
31 CPU
32 ROM
33 RAM
34 タイマ
35 通信制御部
36 バス
40 入出力接続部
41 入出力信号処理部
50 操作パネル部
60 パソコン
71,72 被試験装置
73,74 データ入力部
75,76 表示部
77,78 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力されたデータによって遷移する画面を持つアプリケーションソフトウェアの検証を行う試験装置において、
被試験装置の表示部の画面を撮影する少なくとも一つのカメラと、
前記カメラが撮影した画像をキャプチャして画像遷移シナリオとして記憶し、試験時には、撮影した画像を前記画像遷移シナリオの該当画像と照合して一致するかどうかを判定する少なくとも一つの画面キャプチャ照合判定部と、
前記被試験装置に入力されるデータを取り込んで操作シナリオとして記憶し、試験時には、前記操作シナリオに従って再生した再生データを前記被試験装置に入力するデータ入力シミュレータ部と、
を備え、
前記データ入力シミュレータ部は、試験時に、少なくとも一つの前記再生データを前記被試験装置に入力することによって画面が遷移するタイミングで前記画面キャプチャ照合判定部に画像キャプチャおよび照合判定を指示し、すべての前記画面キャプチャ照合判定部から判定終了の通知が来た段階で前記操作シナリオの再生を再開することを特徴とする試験装置。
【請求項2】
前記データ入力シミュレータ部は、前記被試験装置にデータを入力するためのデータ入力部から出力されたデータを記録して前記操作シナリオを生成する入力データ記録部と、前記操作シナリオのデータを再生する入力データ再生部と、前記データ入力部から出力されたデータを受けて前記入力データ記録部および前記被試験装置へ送るとともに、前記入力データ再生部が再生した前記再生データを前記被試験装置へ送る入出力インタフェース部と、前記入力データ再生部の再生時にすべての前記画面キャプチャ照合判定部と同期させる同期制御部とを有していることを特徴とする請求項1記載の試験装置。
【請求項3】
前記データ入力シミュレータ部は、前記データ入力部から出力されたデータを前記入力データ記録部に記録していく過程で前記入力データ再生部による再生を一時的に中断させる一時中断データを記録させる第1の操作スイッチを有していることを特徴とする請求項2記載の試験装置。
【請求項4】
前記データ入力シミュレータ部は、前記第1の操作スイッチが前記一時中断データを記録させたとき、前記同期制御部がすべての前記画面キャプチャ照合判定部に対して画像キャプチャおよび画像記憶を指示し、試験時に、前記入力データ再生部が前記一時中断データを再生したとき、前記同期制御部がすべての前記画面キャプチャ照合判定部に対して画像キャプチャおよび記憶しておいた画像との照合判定を指示することを特徴とする請求項3記載の試験装置。
【請求項5】
前記データ入力シミュレータ部は、前記入力データ記録部へ入力データの記録を行うときに使用される第2の操作スイッチと、前記入力データ再生部が再生を行うときに使用される第3の操作スイッチと、前記入力データ記録部に記録を開始させ、前記入力データ再生部に再生を開始させるときに使用される第4の操作スイッチと、前記入力データ記録部への記録を終了させ、前記入力データ再生部に再生を終了させるときに使用される第5の操作スイッチとを有していることを特徴とする請求項2記載の試験装置。
【請求項6】
前記データ入力シミュレータ部は、前記同期制御部が前記入力データ記録部に記録されたデータを外部装置に待避させ、前記同期制御部が前記外部装置から待避されたまたは必要に応じて編集されたデータを取り込んで前記入力データ記録部に書き戻す機能を有していることを特徴とする請求項2記載の試験装置。
【請求項7】
前記データ入力シミュレータ部は、前記操作シナリオの再生回数を設定する第6の操作スイッチを有していることを特徴とする請求項1記載の試験装置。
【請求項8】
前記データ入力シミュレータ部は、前記被試験装置に接続される前記データ入力部の規格に応じた信号処理を行う入出力信号処理部を有していることを特徴とする請求項2記載の試験装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−30969(P2013−30969A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−165478(P2011−165478)
【出願日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(000237639)富士通フロンテック株式会社 (667)
【Fターム(参考)】