説明

誘電体フィルタ

【目的】 複数個の並列枝に誘電体共振器を有し、そしてコンデンサを結合素子とする誘電体フィルタ回路において、誘電体共振器の少なくとも一つにコンデンサを直列に接続し、且つ誘電体共振器の少なくとも一つにインダクタを直列に接続することによって、通過帯域の低域側と高域側とに深い減衰極を作った誘電体フィルタを提供する。
【構成】 複数個の並列枝に誘電体共振器1を有し、そしてこの誘電体共振器間をコンデンサCで結合してなる誘電体フィルタにおいて、一つの誘電体共振器にコンデンサCを直列に接続した並列枝と、一つの誘電体共振器にインダクタLを直列に接続した並列枝とを少なくとも含んでいる誘電体フィルタ。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、通過帯域の低域側と高域側とに減衰極を設けた誘電体フィルタに関する。
【0002】
【従来の技術】従来、この種の誘電体フィルタとして、フィルタ特性の通過帯域の低域側に深い減衰極を作るために、例えば、図3(A)に示すように、誘電体共振器3段により構成される誘電体フィルタ回路がある。同図(A)において、1はそれぞれ誘電体共振器で、結合容量C2を介して並列に接続されている。そのうちの1つの誘電体共振器1に直列に接続されているC4は、通過帯域の低域側に減衰極を作るためのコンデンサである。なお、C1は入力結合容量、C3は出力結合容量である。
【0003】誘電体共振器は、等価的にはLとCの並列回路として表されるので、このコンデンサC4と誘電体共振器1との直列枝は、そのインピ−ダンス特性が図3(B)のようになる。なお、同図(B)において、frは共振周波数、faは反共振周波数である。そして、図3R>3(A)に示す誘電体フィルタ回路の周波数減衰特性は、図3(C)のようになり、通過帯域の低域側に減衰極G6が形成されている。 また、フィルタ特性の通過帯域の高域側に深い減衰極を作るために、例えば、図4(A)に示すような誘電体フィルタ回路もある。これは、誘電体共振器1の一つに直列にインダクタL5を接続したものである。このインダクタL5と誘電体共振器1との直列枝は、そのインピ−ダンス特性が図4(B)のようになる。そして、図4(A)に示す誘電体フィルタ回路の周波数減衰特性は、図4(C)のようになり、通過帯域の高域側に減衰極G6が形成されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の誘電体フィルタ回路には、上述のように、通過帯域の低域側あるいは高域側に単独に減衰極を設けたものはあったが、これらの両方、即ち、通過帯域の低域側と高域側との両方に、減衰極を設けたものはなかった。
【0005】したがって、本発明の目的は、複数個の並列枝に誘電体共振器を有し、コンデンサを結合素子とする誘電体フィルタにおいて、誘電体共振器の少なくとも一つにコンデンサを直列に接続し、且つ誘電体共振器の少なくとも一つにインダクタを直列に接続することによって、通過帯域の低域側と高域側とに深い減衰極を設けた誘電体フィルタを提供するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】したがって、本発明は、上記の目的を達成するために、複数個の並列枝に誘電体共振器を有し、そしてこの誘電体共振器間をコンデンサで結合してなる誘電体フィルタにおいて、一つの誘電体共振器にコンデンサを直列に接続した並列枝と、一つの誘電体共振器にインダクタを直列に接続した並列枝とを少なくとも含んでいる誘電体フィルタとしたものである。
【0007】
【作用】本発明は、コンデンサで結合されている複数個の誘電体共振器に、コンデンサとインダクタをそれぞれ直列に接続しているので、通過帯域の低域側と高域側とに、深い減衰極を作ることができる。、
【0008】
【実施例】図1は、本発明の一実施例に係る2段の誘電体共振器より構成される誘電体フィルタを示すもので、同図(A)に示す誘電体フィルタ回路において、1は誘電体共振器、C1は入力結合容量、C2は誘電体共振器1の結合容量、C3は出力結合容量、C4は一つの誘電体共振器1に直列に接続された低域側減衰極形成用のコンデンサ、L5はもう一方の誘電体共振器1に直列に接続された高域側減衰極形成用のインダクタである。そして図1(A)に示す誘電体フィルタ回路の周波数減衰特性は図1(B)のようになり、通過帯域の低域側と高域側とに減衰極G6がそれぞれ形成される。
【0009】また、図2は、本発明の他の実施例に係る4段の誘電体共振器より構成される誘電体フィルタを示すものである。同図(A)に示す誘電体フィルタ回路においては、2つの誘電体共振器1にコンデンサC4をそれぞれ接続した直列枝と、また2つの誘電体共振器1にインダクタL5をそれぞれ接続した直列枝とを、並列に接続したものである。そして図2(A)に示す誘電体フィルタ回路の周波数減衰特性は図2(B)のようになり、通過帯域の低域側と高域側とに、それぞれ2つずつ減衰極が形成される。
【0010】なお、上記実施例では、誘電体共振器にコンデンサC4あるいはインダクタL5がそれぞれ接続された直列枝を、対称的に配置しているが、この配置は低域側と高域側に要求される振幅特性によっては非対称であってもかまわないし、またコンデンサC4とインダクタL5の接続されていない誘電体共振器だけの並列枝を含むことも可能である。
【0011】
【発明の効果】本発明は、コンデンサで結合されている複数個の誘電体共振器に、コンデンサとインダクタをそれぞれ直列に接続しているので、通過帯域の低域側と高域側とに、深い減衰極を作ることができる。また、この低域側減衰極形成用コンデンサと高域側減衰極形成用インダクタを数段重ねることにより、減衰特性を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施例に係る2段の誘電体共振器より構成される誘電体フィルタを示すもので、そのうち(A)は誘電体フィルタ回路図、(B)は同図(A)に示す誘電体フィルタ回路の周波数減衰特性図
【図2】 本発明の他の実施例に係る4段の誘電体共振器より構成される誘電体フィルタを示すもので、そのうち(A)は誘電体フィルタ回路図、(B)は同図(A)に示す誘電体フィルタ回路の周波数減衰特性図
【図3】 従来の誘電体フィルタを示すもので、そのうち(A)は誘電体フィルタ回路図、(B)はコンデンサ直列接続共振器回路のインピ−ダンス特性図、(C)は同図(A)に示す誘電体フィルタ回路の周波数減衰特性図
【図4】 従来の誘電体フィルタを示すもので、そのうち(A)は誘電体フィルタ回路図、(B)はインダクタ直列接続共振器回路のインピ−ダンス特性図、(C)は同図(A)に示す誘電体フィルタ回路の周波数減衰特性図
【符号の説明】
1 誘電体共振器
C1 入力結合容量
C2 結合容量
C3 出力結合容量
C4 低域側減衰極形成用コンデンサ
L5 高域側減衰極形成用インダクタ
G6 減衰極

【特許請求の範囲】
複数個の並列枝に誘電体共振器を有し、そしてこの誘電体共振器間をコンデンサで結合してなる誘電体フィルタにおいて、一つの誘電体共振器にコンデンサを直列に接続した並列枝と、一つの誘電体共振器にインダクタを直列に接続した並列枝とを少なくとも含んでいる誘電体フィルタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開平6−296104
【公開日】平成6年(1994)10月21日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平5−82918
【出願日】平成5年(1993)4月9日
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)