説明

誘電体共振器装置、誘電体フィルタおよびそれらの製造方法

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、誘電体基板または誘電体ブロックに複数の共振電極を形成してなる誘電体共振器装置およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】誘電体ブロックの内部に複数の共振電極(内部電極)を形成し、誘電体ブロックの外面にアース電極を形成した多段の誘電体共振器や、誘電体基板の表面に複数の共振電極を形成し、対向面にアース電極を形成したストリップライン型の多段誘電体共振器が、たとえばマイクロ波帯における帯域通過フィルタ等として用いられている。
【0003】誘電体ブロック内に複数の内部電極を形成した誘電体共振器では、各共振器間の結合をとるために、結合孔を形成し、その結合孔の大きさによって結合量を設定している。しかし、この結合孔を設けるタイプでは、生産性が低く、結合量の調整も困難であった。
【0004】そこで、図4に示すように内部電極の形成範囲を調整することによって共振器特性を調整するようにすることが考えられる。図4の(B)は誘電体共振器の正面図、(A)は(B)に示すX−Xにおける水平断面図である。図4において1は誘電体ブロックであり、その内部に4つの貫通孔を形成し、その内面に内部電極2a,2b,2c,2dを形成する。ここでは対称4段帯域通過フィルタを例としている。この誘電体共振器の等価回路は図5のように示される。図5においてR1,R2,R3,R4は図4に示した内部電極2a,2b,2c,2dによる共振器であり、K1,K2は隣接する各共振器間の結合量を示す。図4に示した構造の誘電体共振器では、たとえば2段目の内部電極2bの長さL2によって共振器R2の共振周波数が定まり、内部電極の形成されていない領域の長さS2と、内部電極2b−2cの間隔P2とによって結合量K2が定まる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】図4に示した誘電体共振器を対称4段帯域通過フィルタとして構成し、図5に示した等価回路において共振器R1,R4の共振周波数をf1、共振器R2,R3の共振周波数をf2として、f1>f2,K1>K2の関係でフィルタを設計するとすれば次のような手順となる。
【0006】1 共振周波数f2に応じて内部電極2b,2cの長さL2を定める。
【0007】2 結合量K2に応じて内部電極非形成領域の長さS2および/または内部電極2b−2cの間隔P2を定める。したがってこれにより軸長Lが決定される。
【0008】3 共振周波数f1に応じて内部電極2a,2dの長さL1を決定(したがってS1も決定)する。
【0009】4 結合量K1に応じて内部電極2a−2b間の間隔および2c−2d間の間隔P1を決定する。
【0010】このようにして対称4段帯域通過フィルタを設計することができるが、目的のフィルタ特性に応じて内部電極間の間隔P1,P2が一定しないため、フィルタの種類ごとに異なった成形金型を必要とする。そのため製造コストが嵩むという問題が生じる。
【0011】この発明の目的は、上述の問題を解消して、隣接する共振電極間の間隔を変えることなく所定の特性を得られるようにした誘電体共振器装置およびその製造方法を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】この発明の請求項1に係る誘電体共振器装置は、略平行な第1面と第2面との間に連続する側面を有し、内部に第1面と第2面間を全長にわたって断面形状が略同一形状の貫通孔を少なくとも1つ形成した誘電体ブロックを備え、この誘電体ブロックの第1面、第2面および前記側面に外部電極を形成し、前記各貫通孔の内周面に、少なくとも一方の開口部付近に間隙をおいて第1・第2の内部電極をそれぞれ形成したことを特徴とする。
【0013】請求項2に係る誘電体共振器装置は、略平行な第1面と第2面との間に連続する側面を有し、内部に第1面と第2面間を全長にわたって断面形状が略同一形状の貫通孔を少なくとも1つ形成した誘電体ブロックを備え、この誘電体ブロックの第1面、第2面および前記側面に外部電極を形成し、前記各貫通孔の内周面に、第1面の開口部付近に間隙をおいて第1・第2の内部電極をそれぞれ形成したことを特徴とする。
【0014】請求項3に係る誘電体共振器装置の製造方法は、略平行な第1面と第2面との間に連続する側面を有し、内部に第1面と第2面間を全長にわたって断面形状が略同一形状の貫通孔を少なくとも1つ有する誘電体ブロックを形成し、この誘電体ブロックの第1面、第2面および前記側面に外導体膜を被着形成し、少なくとも一方の開口部付近に間隙をおいて第1・第2の内導体膜を前記各貫通孔の内周面にそれぞれ被着形成することを特徴とする。
【0015】請求項4に係る誘電体共振器装置の製造方法は、略平行な第1面と第2面との間に連続する側面を有し、内部に第1面と第2面間を全長にわたって断面形状が略同一形状の貫通孔を少なくとも1つ有する誘電体ブロックを形成し、この誘電体ブロックの第1面、第2面および前記側面に外導体膜を被着形成し、第1面の開口部付近に間隙をおいて第1・第2の内導体膜を前記各貫通孔の内周面に被着形成することを特徴とする。
【0016】請求項5に係る誘電体共振器装置の製造方法は、請求項3または請求項4に記載の誘電体共振器装置の製造方法において、形金型を用いて前記誘電体ブロックを形成し、回転砥石を用いて前記内導体膜を切削することにより前記間隙の位置および幅を定める
【0017】
【0018】
【0019】
【0020】
【0021】
【0022】
【0023】
【0024】
【0025】
【0026】請求項6に係る誘電体フィルタは、請求項1または請求項2に記載の誘電体共振器装置を用いて構成する。
【0027】請求項7に係る誘電体フィルタの製造方法は、請求項3、請求項4または請求項5に記載の誘電体共振器装置を誘電体フィルタとして製造する。
【0028】
【作用】この発明の請求項1に係る誘電体共振装置では、誘電体ブロックが略平行な第1面と第2面およびその第1面と第2面との間に連続する側面を有し、内部に第1面と第2面間を全長にわたって断面形状が略同一形状の貫通孔が少なくとも1つ形成されている。また、この誘電体ブロックの第1面、第2面および側面には外部電極が形成されていて、各貫通孔の内周面には、少なくとも一方の開口部付近に間隙をおいて第1・第2の内部電極が形成されている。このように誘電体ブロック内の貫通孔の内周面に形成された第1・第2の内部電極のうち少なくとも一方が共振電極として作用し、全体に1段または複数段のTEMモード誘電体共振器装置として作用する。しかも、前記貫通孔は第1面と第2面間の全長にわたって断面形状が略同一形状であるため、間隙部の位置や幅を任意に変更できるので、任意の中心周波数および任意の通過帯域幅を有する通過帯域フィルタを共通の成形金型で形成した誘電体ブロックで構成することができる。
【0029】請求項2に係る誘電体共振器装置では、誘電体ブロックが略平行な第1面と第2面およびその第1面と第2面との間に連続する側面を有し、内部に第1面と第2面間を全長にわたって断面形状が略同一形状の貫通孔が少なくとも1つ形成されている。貫通孔が形成されている。また、この誘電体ブロックの第1面、第2面および側面には外部電極が形成されていて、各貫通孔の内周面には、第1面の開口部付近に間隙をおいて第1・第2の内部電極が形成されている。このように誘電体ブロック内の貫通孔の内周面に形成された第1・第2の内部電極のうち、通常は第2面の外部電極に連続する一方の内部電極が(1/4)波長で共振するコムライン型のTEMモード誘電体共振器として作用する。しかも、前記貫通孔は第1面と第2面間の全長にわたって断面形状が略同一形状であるため、間隙部の位置や幅を任意に変更できるので、任意の中心周波数および任意の通過帯域幅を有する通過帯域フィルタを共通の成形金型で形成した誘電体ブロックで構成することができる。
【0030】請求項3に係る誘電体共振器装置の製造方法では、略平行な第1面と第2面との間に連続する側面を有し、内部に第1面と第2面間を全長にわたって断面形状が略同一形状の貫通孔を少なくとも1つ有する誘電体ブロックが形成され、この誘電体ブロックの第1面、第2面および側面に外導体膜が被着形成され、少なくとも一方の開口部付近に間隙をおいて第1・第2の内導体膜が各貫通孔の内周面にそれぞれ被着形成される。このようにして製造されることにより、誘電体ブロックの第1面、第2面および側面に被着形成された外導体膜は外部電極として作用し、各貫通孔の内周面に被着形成された第1・第2の内導体膜のうち少なくとも一方の内導体膜が共振電極として作用し、1段または複数段の誘電体共振器装置が得られる。しかも、前記貫通孔は第1面と第2面間の全長にわたって断面形状が略同一形状であるため、間隙部の位置や幅を任意に変更できるので、任意の中心周波数および任意の通過帯域幅を有する通過帯域フィルタを共通の成形金型で形成した誘電体ブロックで構成することができる。
【0031】請求項4に係る誘電体共振器装置の製造方法では、略平行な第1面と第2面との間に連続する側面を有し、内部に第1面と第2面間を全長にわたって断面形状が略同一形状の貫通孔が少なくとも1つ形成され、この誘電体ブロックの第1面、第2面および側面に外導体膜が被着形成され、第1面の開口部付近に間隙をおいて第1・第2の内導体膜が各貫通孔の内周面にそれぞれ被着形成される。このようにして製造されることにより、誘電体ブロックの第1面、第2面および側面に被着形成された外導体膜は外部電極として作用し、各貫通孔の内周面に被着形成された第1・第2の内導体膜のうち第2面の開口部から連続する内導体膜が共振電極として作用する、(1/4)波長の共振器長を有する1段または複数段の誘電体共振器装置が得られる。しかも、前記貫通孔は第1面と第2面間の全長にわたって断面形状が略同一形状であるため、間隙部の位置や幅を任意に変更できるので、任意の中心周波数および任意の通過帯域幅を有する通過帯域フィルタを共通の成形金型で形成した誘電体ブロックで構成することができる。
【0032】請求項5に係る誘電体共振器装置の製造方法では、誘電体ブロックが金型により形成され、内導体膜の間隙は、内導体膜が回転砥石により切削されることにより形成されるため、切削位置および切削幅により間隙の位置および幅が定められ、共通の金型から形成された同一形状の誘電体ブロックを用いるにも拘らず、所定の特性を有する誘電体共振器装置が得られる。
【0033】
【0034】
【0035】
【0036】
【0037】
【0038】
【0039】
【0040】
【0041】
【0042】請求項6に係る誘電体フィルタは、請求項1または2に記載の誘電体共振器装が、例えば帯域通過フィルタとして用いられる。
【0043】請求項7に係る誘電体フィルタの製造方法では、例えば帯域通過フィルタとして用いられる誘電体フィルタが得られる。
【0044】
【実施例】この発明の第1の実施例に係る誘電体共振器装置の構造を図1および図2に示す。図1(B)は誘電体共振器装置の正面図、(A)は(B)に示すX−Xにおける水平断面図である。また図2は全体の斜視図である。
【0045】図2において1は誘電体ブロックである。この誘電体ブロック1はA,Bで示す平行な第1面と第2面およびこの第1面と第2面との間にC,D,E,Fで示す連続する側面を有する六面体形状をなす。そして、この誘電体ブロック1の第1面Aと第2面B間を貫通する4つの貫通孔Ha,Hb,Hc,Hdを内部に設けていて、各貫通孔の内周面に第1・第2の内部電極をそれぞれ形成している。また、誘電体ブロック1の第1面A、第2面Bおよび側面C,D,E,Fに外部電極3を形成している。
【0046】図2に示した誘電体ブロック1は、ある標準となる成型金型を用いて作成する。一つの金型によって得られる誘電体ブロックは貫通孔の位置も含めて全体に同一形状同一寸法となるが、後述するように、貫通孔Ha,Hb,Hc,Hdの各内周面に形成する第1・第2の内部電極の長さによって異なった共振器装置特性を有する共振器装置を得る。例えば中心周波数や帯域幅の異なる複数種の帯域通過フィルタを共通の成型金型により作成された誘電体ブロックを用いて構成することが可能となる。
【0047】ここで、図6に示す一般的な二段のコムライン型フィルタの等価回路図を参照して、中心周波数や帯域幅がどのような要素によって定まるかを説明する。
【0048】まず、中心周波数foは、共振条件より次式で表される。
【0049】
【数1】
2πfoCs=Ya・cot θo
【0050】
【数2】
θo={√(εr)/C}・2πfoLここで、εrは共振器周囲物質の比誘電率、Csはストレー容量、Lは共振器長、Yaは共振器のアドミタンス、Cは光速である。また、結合係数kは次式で表され、各アドミタンスとθで決定される。
【0051】
【数3】k={(Yo−Ye)/Ya}{(1+θo/(sin θo・cos θo)}-1ここでYoは奇モードにおけるアドミタンス、Yeは偶モードにおけるアドミタンスである。以下、図1を参照して具体例を示す。
【0052】図1において2a,2b,2c,2dは各貫通孔の内周面にそれぞれ形成した第1の内部電極、8a,8b,8c,8dは同じく各貫通孔の内周面にそれぞれ形成した第2の内部電極であり、それぞれの一端側が外部電極3と導通している。7a,7b,7c,7dはそれぞれ電極非形成領域であり、第1の内部電極2a〜2dと第2の内部電極8a〜8d間の間隙である。第1の内部電極2a,2b,2c,2dは誘電体ブロックの第1面Aを短絡面として共振電極として作用する。第1の内部電極2a,2b,2c,2dの長さはそれぞれL1,L2,L3,L4、間隙7a,7b,7c,7dの幅はそれぞれS1,S2,S3,S4である。また、誘電体ブロック1の各辺の寸法はLa,Lb,Lcであり、内部電極間の間隔は、2a−2b間がP1、2b−2c間がP2、2c−2d間がP3である。ここでP1=P2=P3としてもよいし、P1≠P2≠P3≠P1としてもよい。
【0053】各共振器の共振周波数は種々の要素から決定されるが、図1に示した例では、第1の内部電極2aによる共振器の共振周波数はL1およびS1により定まり、第1の内部電極2bによる第2の共振器の共振周波数はL2およびS2で定まり、第1の内部電極2cによる第3の共振器の共振周波数はL3およびS3で定まり、さらに第1の内部電極2dによる第4の共振器の共振周波数はL4およびS4で定まる。また、隣接する共振器間の結合量はP1、P2、P3とS1、S2、S3、S4によって定まるが、この場合、内部電極の間隔P1、P2およびP3は金型寸法により定まり、固定である。
【0054】図1に示した誘電体共振器装置は中心周波数がf1で帯域幅がBW1の帯域通過フィルタ“F1”として作用するが、同じ金型を用いて誘電体ブロックを作成し、各貫通孔内の第1・第2の内部電極の寸法によって特性の異なる帯域通過フィルタを量産するためには以下に述べるように設計してから行えばよい。
【0055】まず、帯域幅がBW1に等しく、中心周波数がf1より高いf2(f2>f1)である帯域通過フィルタ“F2”を量産する場合、第1の内部電極2aの長さをL1より短いL12とし、第1の内部電極2bの長さをL2より短いL22とし、第1の内部電極2cの長さをL3より短いL32とし、さらに第1の内部電極2dの長さをL4より短いL42とする。第1の内部電極と第2の内部電極間の間隙の幅S1,S2,S3,S4は原則として中心周波数がf1の時と同じにし、したがって第2の内部電極8a,8b,8c,8dの長さは帯域通過フィルタ“F1”の場合より長くする。このように中心周波数が高くなれば第2の内部電極8a,8b,8c,8dの各長さは一般に長くなる。但し、このフィルタ“F2”の中心周波数f2がフィルタ“F1”の中心周波数f1よりあまりにも遠ざかって、通過帯域幅の変化が無視できなくなる場合には、間隙の幅S1,S2,S3,S4を微増させ且つ、第1の内部電極の長さL12,L22,L32,L42もそれぞれ微増させた設計にして製造を行う。
【0056】次に、中心周波数をf2として、通過帯域幅をBW1より狭いものを量産する場合には、設計段階でS1,S2,S3,S4の各寸法をそれぞれ大きくする。この場合、S1,S2,S3,S4の値を変えたために各共振器の共振周波数への影響が無視できない場合には、各第1の内部電極の長さL12,L22,L32,L42の値を変更して、L12→L1、L22→L2、L32→L3、L42→L4の方向へそれぞれ近づけ、L12,L22,L32,L42をそれぞれ長くした分、同時に第2の内部電極8a,8b,8c,8dの長さを短くした設計とする。
【0057】逆に、中心周波数をf2とし、通過帯域幅をBW1より広いものを量産する場合には、設計段階でS1,S2,S3,S4の各寸法をそれぞれ小さくする。この場合、S1,S2,S3,S4の値を変えたために各共振器の共振周波数への影響が無視できない場合には、各第1の内部電極の長さL12,L22,L32,L42の値を更に短くし、同時に第2の内部電極8a,8b,8c,8dの長さを長くする。
【0058】このように第1・第2の内部電極の長さおよび間隙の幅を設計段階で決定して、種々の所望のフィルタを量産する。なお、上述した各電極の長さすなわち間隙の位置および間隙の幅は、回転砥石を用いて間隙部の内部電極を切削することによって所定の値にすることができる。
【0059】もし、逆に帯域幅がBW1に等しく、中心周波数がf1より低いf3(f3<f1)である帯域通過フィルタ“F3”を量産する場合、第1の内部電極2aの長さをL1より長いL13とし、第1の内部電極2bの長さをL2より長いL23とし、第1の内部電極2cの長さをL3より長いL33とし、さらに第1の内部電極2dの長さをL4より長いL43とする。第1の内部電極と第2の内部電極間の間隙の幅S1,S2,S3,S4は原則として中心周波数がf1の時と同じにし、したがって第2の内部電極8a,8b,8c,8dの長さは帯域通過フィルタ“F1”の場合より短くする。このように中心周波数が低くなれば第2の内部電極8a,8b,8c,8dの各長さは一般に短くなる。但し、このフィルタ“F3”の中心周波数f3がフィルタ“F1”の中心周波数f1よりあまりにも遠ざかって、通過帯域幅の変化が無視できなくなる場合には、間隙の幅S1,S2,S3,S4を微減させ且つ、第1の内部電極の長さL13,L23,L33,L43もそれぞれ微減させた設計にして製造を行う。
【0060】次に、中心周波数をf3として、通過帯域幅をBW1より狭いものを量産する場合には、設計段階でS1,S2,S3,S4の各寸法をそれぞれ大きくする。この場合、S1,S2,S3,S4の値を変えたために各共振器の共振周波数への影響が無視できない場合には、各第1の内部電極の長さL13,L23,L33,L43を更に長くし、同時に第2の内部電極8a,8b,8c,8dの長さを短くした設計にする。
【0061】逆に、中心周波数をf3とし、通過帯域幅をBW1より広いものを量産する場合には、設計段階でS1,S2,S3,S4の各寸法をそれぞれ小さくする。この場合、S1,S2,S3,S4の値を変えたために各共振器の共振周波数への影響が無視できない場合には、各第1の内部電極の長さL13,L23,L33,L43の値を変更して、L13→L1、L23→L2、L33→L3、L43→L4の方向へそれぞれ近づけ、L12,L22,L32,L42をそれぞれ短くした分、同時に第2の内部電極8a,8b,8c,8dの長さを長くする。
【0062】このように第1・第2の内部電極の長さおよび間隙の幅を設計段階で決定して種々の所望のフィルタを量産する。
【0063】以上のようにして、設計段階または試作段階において、所望の特性が得られるような各部の寸法データを求め、それに基づいて量産を行えばよい。但し、共振周波数等が大幅に異なる誘電体共振器装置を一つの共通の誘電体ブロックで構成できない場合には、たとえば共振周波数等をランク分けして、各ランク毎に誘電体ブロックを共通化すればよい。
【0064】このようにして、任意の中心周波数および任意の通過帯域幅を有する種々の通過帯域フィルタを、共通の金型を用いて形成した誘電体ブロックにより製造できるようになる。これを可能としているのは、図1に示した誘電体ブロックの第2面Bの外部電極から連続する第2の内部電極8a,8b,8c,8dが存在しているためであり、これは図4に示したような従来の誘電体共振器装置では得られない本願発明特有の効果である。なお、図1に示した実施例では信号の入出力端子を図面上省略しているが、例えば特開昭59−51606号公報、特開昭60−114004号公報、実開昭58−54102号公報または実開昭63−181002号公報に示されている従来公知の構造を採用することができる。
【0065】以上に示した誘電体共振器装置は六面体形状の誘電体ブロックを用いたが、本願発明はこれに限定されないことは言うまでもない。また、誘電体ブロックは一体成型によるものに限らず、たとえば特公平3−15841号公報に開示されているように2枚の誘電体基板を用い、これを接合することによってその接合面に貫通孔が形成されるようにしてもよい。さらに、第1の実施例では(1/4)波長タイプの誘電体共振器装置を例としたが、各貫通孔内の両開口部付近にそれぞれ間隙を設けることによって、各共振電極が(1/2)波長に共振する誘電体共振器装置としてもよい。また、第1の実施例では貫通孔の内径(断面形状)をその軸方向に一定としたため、間隙部の位置や幅を任意に変更できるので、任意の中心周波数および任意の通過帯域幅を有する通過帯域フィルタを共通の成形金型で形成した誘電体ブロックで構成することができる。
【0066】次に、この発明の参考例としての誘電体共振器装置の構造を図3に示す。図3(A)は上面図、(B)は(A)のX−Xにおける垂直断面図である。図3R>3において4は誘電体基板であり、その第1主面に5a,5b,5c,5d,9a,9b,9c,9dで示す電極を形成している。7a,7b,7c,7dは電極非形成領域である。これらの電極の内5a,5b,5c,5dが共振電極としてのストリップラインとして作用し、9a,9b,9c,9dが補助電極として作用する。また、誘電体基板4の第2主面(裏面)から共振電極5a,5b,5c,5dの短絡端側の端縁部および補助電極9a,9b,9c,9d形成部側の端縁部にかけてアース電極6を形成している。この構造によってストリップライン形の誘電体共振器装置として作用し、4段の帯域通過フィルタとして用いることができる。この場合も、各ストリップラインの短絡端からの長さと、電極非形成領域7a,7b,7c,7dの長さによってフィルタ特性を設定することができる。
【0067】なお、第1・第2の実施例ではいずれもコムライン型のフィルタを例としたが、同様にしてインターディジタル型として構成してもよい。
【0068】
【発明の効果】この発明によれば、誘電体ブロックや誘電体基板のバリエーションを増やすことなく、特性の異なる多種類の誘電体共振器装置を容易に得ることができ、その製造コストも大幅に削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の第1の実施例に係る誘電体共振器装置の構造を示す図であり、(B)は正面図、(A)は(B)のX−Xにおける水平断面図である。
【図2】この発明の第1の実施例に係る誘電体共振器装置の斜視図である。
【図3】この発明の参考例としての誘電体共振器装置の構造を示す図である。
【図4】従来技術による誘電体共振器装置の構造を示す図であり、(B)は正面図、(A)は(B)のX−Xにおける水平断面図である。
【図5】対称4段帯域通過フィルタの等価回路図である。
【図6】二段コムライン型フィルタの等価回路図である。
【符号の説明】
1−誘電体ブロック
2−第1の内部電極(共振電極)
3−外導体(アース電極)
4−誘電体基板
5−電極
6−アース電極
7−間隙
8−第2の内部電極
9−補助電極
H−貫通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】略平行な第1面と第2面との間に連続する側面を有し、内部に第1面と第2面間を全長にわたって断面形状が略同一形状の貫通孔を少なくとも1つ形成した誘電体ブロックを備え、この誘電体ブロックの第1面、第2面および前記側面に外部電極を形成し、前記各貫通孔の内周面に、少なくとも一方の開口部付近に間隙をおいて第1・第2の内部電極をそれぞれ形成したことを特徴とする誘電体共振器装置。
【請求項2】略平行な第1面と第2面との間に連続する側面を有し、内部に第1面と第2面間を全長にわたって断面形状が略同一形状の貫通孔を少なくとも1つ形成した誘電体ブロックを備え、この誘電体ブロックの第1面、第2面および前記側面に外部電極を形成し、前記各貫通孔の内周面に、第1面の開口部付近に間隙をおいて第1・第2の内部電極をそれぞれ形成したことを特徴とする誘電体共振器装置。
【請求項3】略平行な第1面と第2面との間に連続する側面を有し、内部に第1面と第2面間を全長にわたって断面形状が略同一形状の貫通孔を少なくとも1つ有する誘電体ブロックを形成し、この誘電体ブロックの第1面、第2面および前記側面に外導体膜を被着形成し、少なくとも一方の開口部付近に間隙をおいて第1・第2の内導体膜を前記各貫通孔の内周面にそれぞれ被着形成することを特徴とする誘電体共振器装置の製造方法。
【請求項4】略平行な第1面と第2面との間に連続する側面を有し、内部に第1面と第2面間を全長にわたって断面形状が略同一形状の貫通孔を少なくとも1つ有する誘電体ブロックを形成し、この誘電体ブロックの第1面、第2面および前記側面に外導体膜を被着形成し、第1面の開口部付近に間隙をおいて第1・第2の内導体膜を前記各貫通孔の内周面に被着形成することを特徴とする誘電体共振器装置の製造方法。
【請求項5】形金型を用いて前記誘電体ブロックを形成し、回転砥石を用いて前記内導体膜を切削することにより前記間隙を形成することを特徴とする請求項3または請求項4に記載の誘電体共振器装置の製造方法。
【請求項6】請求項1または請求項2に記載の誘電体共振器装置を用いた誘電体フィルタ。
【請求項7】請求項3、請求項4または請求項5に記載の誘電体共振器装置を誘電体フィルタとしたことを特徴とする誘電体フィルタの製造方法。

【図5】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【特許番号】第2910807号
【登録日】平成11年(1999)4月9日
【発行日】平成11年(1999)6月23日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平4−258153
【出願日】平成4年(1992)9月28日
【公開番号】特開平5−199013
【公開日】平成5年(1993)8月6日
【審査請求日】平成10年(1998)3月24日
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【参考文献】
【文献】特開 昭57−78201(JP,A)
【文献】特開 昭62−183603(JP,A)
【文献】特開 平3−114301(JP,A)
【文献】特開 昭63−109601(JP,A)
【文献】特開 昭62−73801(JP,A)
【文献】特開 昭62−40802(JP,A)
【文献】特表 平2−500320(JP,A)