説明

豆乳含有冷菓

【課題】匙通りが良好で、すっきりとした豆乳独自の呈味が引き立てられた、濃厚感のある風味となめらかな食感を有し、特殊な製造工程を必要としない豆乳含有冷菓を提供する。
【解決手段】ポリデキストロース及び難消化性デキストリンを含有することを特徴とする豆乳含有冷菓によって達成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、匙通りが良好で、すっきりとした豆乳独自の呈味を引き立てながらも、濃厚感のある風味となめらかな食感を有する豆乳含有冷菓に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、豆乳含有冷菓に関する技術として、牛乳等の乳製品を一切使用しないで、豆乳のみを主原料とした豆乳アイスクリームの製造方法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
しかしながら、豆乳を主原料にしているため大豆を豆乳に加工した時に生じる大豆臭(青臭み、酵素由来の変質臭、加熱臭等)があり、また乳製品を主体とした乳脂肪分10%以上、乳固形分20%以上のアイスクリーム規格品と比べると、濃厚感が顕著に不足していた。
【0003】
また、本発明者らは、特定炭水化物含有量であり、炭水化物と蛋白質が特定重量比に設定されている濃縮豆乳を用いた豆乳含有冷菓を既に出願しており、この冷菓によると、バランスのよい豆乳特有の濃厚感及び豆乳本来のうまみやコクを有する冷菓が得られるというものである(特許文献2参照。)。
しかしながら、この豆乳含有冷菓は、−20℃の品温では硬いため、匙が通りにくく、食べにくいという欠点があった。
【0004】
その他に、乳酸菌が産生する多糖類とタマリンド種子ガムとを含有させることによって、冷凍庫から取り出した直後でもソフトスクープ性を有し、脂肪様の食感及び濃厚感を良好にする冷菓が知られている(例えば、特許文献3参照。)。
しかしながら、この冷菓は、まず多糖類を産生する乳酸菌を還元脱脂乳で培養して増殖させ、これをタマリンド種子ガムを含有する冷菓ミックスに添加し、更に該乳酸菌を発酵させて多糖類を産生させてから目的とする冷菓を製造するというもので、製造工程が複雑で、発酵時間には20時間を要し、かなり特殊な製造方法であるので製造面及び技術面両方共に容易に実現し難いという問題点を有するものであった。
【0005】
更に、ソフトスクープ性を有する冷菓として、糖類、糖アルコール類を含有する冷菓において、−20℃における硬度が6kgf以下であり、卵黄を含有することで、ソフトスクープ性を有すると共に、「喉やけ」感を感じない後味の良好な冷菓が報告されている(例えば、特許文献4参照。)。
しかしながら、この方法は、乳原料を主体とするアイスクリーム規格品において有効であり、乳原料不使用もしくは乳原料低含有の豆乳含有冷菓では、糖類、糖アルコール類の後味として喉がひりひりとする喉やけ感や、卵黄臭が感じられるという問題点を有するものであった。
【0006】
【特許文献1】特開2004−73154号公報
【特許文献2】特願2004−331164号
【特許文献3】特開2001−258478号公報
【特許文献4】特開2001−204392号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであって、その目的とするところは、匙通りが良好で、すっきりとした豆乳独自の呈味が引き立てられた、濃厚感のある風味とな
めらかな食感を有し、従来の製造装置を用いて特殊な製造工程を必要としない豆乳含有冷菓を提供するにある。
なお、本発明における匙通りとは、品温−20℃以下の冷菓に対するアイスクリームスクープやスプーン等の匙の通りを意味するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的は、ポリデキストロース及び難消化性デキストリンを含有することを特徴とする豆乳含有冷菓より達成される。
【0009】
すなわち、本発明者らは、上記課題を解決するために、種々冷菓原料に着目した結果、ポリデキストロースと難消化性デキストリンを組合せると、驚くべきことに、品温−20℃以下であっても匙通りが良好で、豆乳独自の呈味を保持し、濃厚感のある風味となめらかな食感を有することを見出した。また、更に好適には、イヌリンを併用することにより、よりすっきりとした豆乳独自の呈味を引き立てるより優れた風味とすることができることを見出し、本発明に到達した。
【発明の効果】
【0010】
本発明の豆乳含有冷菓によれば、匙通りが良好で、品温が−20℃以下の冷菓であっても、なめらかでもっちりとした感触ですっと匙が冷菓に入り込み、容易に冷菓をすくいとり食することができる。
また、本発明の豆乳含有冷菓は、乳脂肪分10%以上、乳固形分20%以上含有するアイスクリーム規格品に相当する乳原料を十分に含有しない場合や、もしくは乳原料不使用の場合であっても、豆乳原料由来の大豆臭さを抑制し、すっきりとした豆乳独自の呈味を引き立てながらも、濃厚感のある風味となめらかな食感を有する。
更に、本発明によれば、ポリデキストロースと難消化性デキストリンを油脂代替品として用いることができるため、油脂原料の含有量を減らすことが可能であり、豆乳含有冷菓のカロリーを抑えることができる。
その他に、本発明の豆乳含有冷菓は、量産時の充填ノズル切れが良い点、温度耐久性があるため製品充填後直後から凍結工程までの保存状態が良好となる点から、操業適性が向上すると共に、煩雑な製造工程や特殊な製造装置を必要とせず、従来の製造装置で製造することができる。
更には、乳化剤や安定剤無添加の冷菓よりも、長期保存時の微妙な温度変化耐性に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を詳しく説明する。
本発明の豆乳含有冷菓は、ポリデキストロースと難消化性デキストリンを含有する。
【0012】
上記ポリデキストロースは、グルコースとソルビトールを、クエン酸を触媒にして減圧下で加熱溶融し、縮重合して得られる平均分子量が1,500の水溶性難消化性多糖類である。
製品例としては、例えば「ライテス」、「ライテス2(正しくはローマ数字)」、「ライテス3(正しくはローマ数字)シロップ」(ダニスコ ジャパン(株)製)等が挙げられる。
【0013】
上記ポリデキストロースの含有量は、豆乳含有冷菓全体重量中、好ましくは
2〜20重量%、更に好ましくは3〜15重量%であることが、匙通りを良好とし、濃厚感のある風味、緩やかな口溶け及びコク付与の点で好適である。
【0014】
また、上記難消化性デキストリンは、コーンスターチ由来の澱粉を加水分解して得られ
た、平均分子量1,600の水溶性食物繊維である。
製品例としては、「ファイバーソル2」、「パインファイバー」(松谷化学工業(株)製)等が挙げられる。
【0015】
上記難消化性デキストリンの含有量は、豆乳含有冷菓全体重量中、好ましくは1〜10重量%、更に好ましくは1.5〜5重量%であることが、匙通りを良好とし、濃厚感と共になめらかな食感を付与する点、及び豆乳由来の大豆臭さ、苦味及び渋みを抑制し、豆乳独自の好ましい風味に整える点で好適である。
【0016】
本発明の豆乳含有冷菓における上記ポリデキストロースと難消化デキストリンとの重量比は、好ましくは1:0.05〜5、更に好ましくは1:0.3〜0.8であることが、匙通りを良好とすると共に、油脂代替品として用いることができカロリーを抑えることができる点で好適である。
【0017】
本発明の豆乳含有冷菓には、上記成分と共にイヌリンを含有することが、より豆乳由来のすっきりとした豆乳独自の呈味を引き立てると共に、大豆特有の青臭さを抑制する点で好適である。
上記イヌリンは、キクイモ、ダリアなどキク科植物の根茎に含まれる貯蔵多糖類で、水溶性の難消化性多糖類である。製品例としては、「フジFF」(フジ日本精糖(株)製)等が挙げられる。
【0018】
上記イヌリンの含有量は、豆乳含有冷菓全体重量中、好ましくは1〜5重量%、更に好ましくは1〜3重量%であることが、イヌリン特有の苦味が生じることなく、豆乳由来のすっきりとした豆乳独自の呈味を引き立てると共に大豆特有の青臭さを抑制する点で好適である。
【0019】
上記豆乳含有冷菓に用いる豆乳は、特に限定されるものではなく、市販や業務用豆乳等から適宜選択すればよい。
上記豆乳は、公知の製造方法で製造されたものでよく、例えば、大豆を水に浸漬して膨潤大豆とし、これを微粉砕して懸濁液を得、適宜この懸濁液を加熱した後、これを遠心分離機等によって固液分離を行ない、おからに相当する不溶性残渣を除去することにより豆乳を調製すればよい。
上記豆乳には、各種副原料が含有されていてもよい。また、得られた豆乳又は豆乳調製工程中の大豆原料に、適宜蛋白質架橋酵素を作用させ、滅菌処理を行なってもよい。
【0020】
また、上記豆乳は、通常のストレート豆乳であっても、濃縮豆乳であってもよく、また両者を混合して用いてもよく、適宜選択して用いればよい。この中でも、濃縮豆乳は、濃厚感およびコクの点で好適である。
濃縮豆乳を用いる場合、その濃縮率は特に限定するものではないが、好ましくは1.5倍以上、更に好ましくは1.7倍以上であることが濃厚感、豆乳本来のうまみやコクを付与し得る点で好適である。
【0021】
上記豆乳は、豆乳全体重量中の大豆固形分が、ストレート豆乳、濃縮豆乳に拘わらず、好ましくは8〜30重量%であることが、より濃厚感を付与し得、操業性の点で望ましい。濃縮豆乳とした場合には、更に好ましくは豆乳全体重量中の大豆固形分が10〜25重量%、より好ましくは15〜25重量%であることが望ましい。本発明においては、単独の豆乳であっても、それぞれ大豆固形分の異なる2種以上の豆乳を組み合わせて用いてもよい。
なお、上記豆乳は、原料の保存性の観点から、加糖されていてもよい。
【0022】
また、上記豆乳は、炭水化物を豆乳全体重量中2重量%以上含有し、かつ重量比で蛋白質1に対し炭水化物0.4以上に設定されることが、大豆臭がなく、豆乳本来の好ましい濃厚感及びうまみやコク付与の点で好適である。更に好ましくは、濃縮豆乳の場合には、炭水化物を濃縮豆乳全体重量中4重量%以上含有することが好適である。
上記炭水化物及び蛋白質は、豆乳由来のもの単独であっても、豆乳以外の原料由来のものとの混合であってもよいが、好ましくは、豆乳由来のもの単独で上記特定含有量及び比率を満たすことが、豆乳特有の濃厚感及び豆乳本来のうまみやコクを付与し得る点で望ましい。
【0023】
上記濃縮豆乳は、真空蒸発濃縮、凍結濃縮、膜濃縮など、公知の方法を用いて濃縮されればよい。
上記真空蒸発濃縮の装置としては、例えば、エバポレーター、遠心薄膜真空蒸発装置((株)大川原製作所)、プレート式濃縮試験機REV−T2型((株)日阪製作所)、品川式真空濃縮機((株)品川工業所)、多機能型氷温濃縮機(大青工業(株))、大型ロータリーエバポレータN−21NS型(東京理化器械(株))、遠心式濃縮装置(CEHシリーズ)((株)アルバック)等が挙げられる。
上記凍結濃縮の装置としては、例えば、凍結濃縮装置NFC(ニロジャパン(株))、凍結濃縮システムFREECIS(新日本空調(株))、前進凍結濃縮装置((株)前川製作所)等が挙げられる。
上記膜濃縮としては、日本ポール(株)、日本ガイシ(株)等で販売される、一般的な膜を用いて行なえばよい。
上記の濃縮方法の中でも、(株)大川原製作所製の遠心薄膜真空蒸発装置(エバポール(登録商標)等)を用いた真空蒸発濃縮は、大豆の臭みがなく、短時間で所定の比率に濃縮できる点で好適である。
【0024】
豆乳含有冷菓中の豆乳の含有量は、特に限定されないが、冷菓全体重量中、好ましくは20〜80重量%、更に好ましくは40〜70重量%であることが、風味、濃厚感及びなめらかな食感の点で好適である。
【0025】
また、本発明の豆乳含有冷菓の原料は、上記成分以外は、適宜選択して用いればよい。
本発明の豆乳含有冷菓に用いる油脂としては、好ましくは、ジグリセリドを油脂全体重量中5.5重量%以上、更に好ましくは6〜15重量%含有することが、乳脂肪様の濃厚感、食感及び口溶けを付与する点、豆乳由来の大豆臭さを抑制する点、更には親水性に優れるため、豆乳原料と良く混ざり合う点で好適である。
【0026】
上記ジグリセリドとは、グリセリンに2分子の脂肪酸がエステル結合したものである。
上記ジグリセリドの脂肪酸組成は、特に限定されない。後述するオレイン酸やエイコセン酸を含有してもよく、その他の脂肪酸で構成されてもよい。その他の脂肪酸としては、例えば、炭素数6〜20の脂肪酸等が挙げられる。
【0027】
上記油脂には、オレイン酸を含有することが、濃厚感、なめらかな組織及びコク付与の点で好適である。
上記オレイン酸は炭素数18の不飽和脂肪酸で、油脂の脂肪酸残基全体重量中、好ましくは30重量%以上、更に好ましくは30〜50重量%含有することが、上記理由の点で好適である。
なお、上記オレイン酸は、上記ジグリセリドの構成脂肪酸であってもよく、例えば、トリグリセリドの構成脂肪酸であってもよい。
【0028】
また、上記油脂には、更に好ましくは、脂肪酸残基に上記オレイン酸と共に、エイコセン酸を含有することが、緩やかな口溶け、濃厚感を付与し、なめらかな食感を有する点で
好適である。
上記エイコセン酸は、炭素数20の不飽和脂肪酸であり、油脂の脂肪酸残基全体における含有量は、特に限定するものではない。
なお、エイコセン酸は上記ジグリセリドの構成脂肪酸であってもよく、例えば、トリグリセリドの構成脂肪酸であってもよい。また、オレイン酸とは同じグリセリンに結合していてもよく、別のグリセリンに結合していてもよい。
【0029】
本発明の豆乳含有冷菓用油脂は、更に好ましくは、温度(℃)をx、SFC値(%)をyとするSFC曲線において、x座標が10≦x≦20となる任意の点Pにおける接線の傾き(°)の最大値aがa≧−3であることが、緩やかな口溶けを呈すると共に、濃厚感を付与し、乳原料低含有の場合、特に乳原料不使用の場合であっても、乳脂肪分10%以上、乳固形分20%以上含有したアイスクリーム規格品と比べて嗜好的に劣らない点で好適である。
【0030】
SFC値とはsolid fat content(固体脂含量)の略称で、一定の温度下で油脂中に存在する固体脂の割合(%)を示した値であり、例えば、核磁気共鳴(NMR)装置等によって求められる。例えば、SFC値が40%とは、固体脂が40%で液体脂が60%含有されることを意味する。上記SFC値は油脂原料固有のものである。そして、各温度下でのSFC値を求め、その値をグラフ上にプロットし繋いだ曲線が、図1の符号1に示すようなSFC曲線である。
【0031】
上記SFC曲線を、図1を用いて説明する。図1の符号1は上述したようにSFC曲線であり、符号2は上記SFC曲線の任意の点Pにおける接線である。なお、この図1においては、x軸が温度(℃)、y軸がSFC値(%)を示している。本発明では、油脂の各温度におけるSFC値をプロットし繋いだ曲線y=f(x)について、10≦x≦20となる任意の点Pにおける接線y=f’(x)=Ax+Bを描き、接線(符号2)の傾きAの最大値をaとする。
本発明に用いる油脂は、この接線の傾き(°)の最大値aがa≧−3であることが、緩やかな口溶けを呈すると共に、濃厚感を付与し、乳原料低含有の場合、特に乳原料不使用の場合であっても、乳脂肪分10%以上、乳固形分20%以上含有したアイスクリーム規格品と比べて嗜好的に劣らない点で好適である。
【0032】
本発明の油脂の原料としては、例えば、大豆油、菜種油、パーム油、パーム核油、ヤシ油、コーン油、ひまわり油、綿実油、米油、オリーブ油、ぺカン油、サフラワー油等の植物性油脂や、乳脂、豚脂、牛脂、魚脂等の動物性油脂等が挙げられるが、これらの中でも、特に植物性油脂は、濃厚感及びなめらかな食感を得る点で好適である。
上記油脂は、未加工油であってもよく、または硬化、分別、ウィンタリング、エステル交換等の処理を施した加工油脂であってもよい。更にこれらの油脂は単独もしくは混合調製しても何ら構わない。
【0033】
また、上記油脂の融点は、好ましくは25〜37℃、更に好ましくは28〜35℃であることが、緩やかな口溶けを呈し、濃厚感が強調される点で好適である。
上記油脂の含有量は、豆乳含有冷菓全体重量中、好ましくは5〜15重量%、更に好ましくは7〜10重量%であることが、ポリデキストロース及び難消化性デキストリンを含有することとの相乗効果から、アイスクリーム規格品と同等な濃厚感、なめらかな食感である点で望ましい。
【0034】
更に他の原料としては、例えば、糖質甘味料(砂糖、水あめ、果糖、ぶどう糖、糖アルコール、トレハロース等)や、スクラロース等の高甘味度甘味料や、安定剤(グアーガム、ローカストビーンガム、キサンタンガム、アラビアガム、カラギナン、アルギン酸ナト
リウム、カルボキシメチルセルロース、水溶性セルロース、ゼラチン、ペクチン等)や、乳化剤(レシチン、ショ糖脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、また、酢酸モノグリセリド、酢酸酒石酸混合モノグリセリド、クエン酸モノグリセリド、ジアセチル酒石酸モノグリセリド、乳酸モノグリセリド、コハク酸モノグリセリド、りんご酸モノグリセリド等の各種有機酸モノグリセリド等)や、澱粉(イネ・小麦・米等の穀類由来の澱粉や、トウモロコシ由来の澱粉や、馬鈴薯・タピオカ等のいも類由来の澱粉等、もしくはこれらの加工澱粉や化工澱粉等)や、食塩や、着香料や、着色料や、酸味料や、風味原料(コーヒー、ココア、茶類、チョコレート原料、果汁、果肉、種実類、蜂蜜、メープルシロップ、酒類等)や、各種栄養素(蛋白質や、アミノ酸や、ビタミン類や、ミネラル類等)や、卵、卵加工品や、ヨーグルト、脱塩ホエー、チーズ等の乳製品等が挙げられる。特に、果汁、中でもメロン果汁を用いると、豆乳の濃厚感を高める点で好適である。更に好ましくは、澱粉を用いることが、特に分子量2,000〜10,000のコーンスターチを用いることが、冷菓ミックスをフリージングするときに粘度を加えることができ、冷菓の濃厚感や増量感を付与する点で好適である。
【0035】
本発明の冷菓とは、冷凍状態で喫食可能な食品である。上記冷菓は、乳固形分含有量や乳脂肪分含有量によって、アイスクリーム、アイスミルク、ラクトアイス、氷菓に分類されているが、これらの何れであってもよい。これら冷菓の中でも、乳脂肪分10%未満、乳固形分が20%未満の冷菓は、濃厚感が劣る傾向にあることから、濃厚感を付与するという本発明の効果を顕著に得られる点で好適に用いることができる。特にラクトアイス、氷菓、この中でも特に氷菓は、乳原料由来の濃厚感を殆ど若しくは全く期待できない点で本発明の効果を顕著に得ることができる。
【0036】
本発明において、冷菓ミックスの凝固点は、好ましくは−3.2〜−3.7℃、更に好ましくは−3.4〜−3.7℃であることが、良好な匙通りと共に緩やかな口溶けを呈する点で好適である。更には、量産時の充填ノズル切れや製品充填後直後から凍結工程までの温度耐久性が良好となるため、操業適性の点でも好ましい。
なお、凝固点とは液体が固体に変わるときの温度をいう。
【0037】
上記原料を用いた豆乳含有冷菓は、例えば、以下のようにして調製することができる。
まず、(1)香味料(香料、風味原料、酸味料等の加熱による変質・飛散の可能性がある原料)以外の原料を配合する。次いで、(2)各原料を混合、溶解して冷菓ミックスを調整する。この場合、大豆固形分が比較的高い豆乳を使用する場合は、泡立ちやすいので、特に投入方法に注意して混合する。温度は、あまり高くするのは好ましくなく、通常は50〜70℃程度である。
このようにして調製した冷菓ミックスを、(3)均質化する。均質化圧などの条件は、均質機により一概に規定できないが、通常、2段式では合計4.9〜14.7Mpaがよい。均質化温度は、50〜70℃程度が一般的である。
次いで、均質化したミックスを、(4)殺菌する。殺菌は、例えばプレート式、チューブ式熱交換機等で実施すればよく、特にその方式や装置を特定するものではない。
次に、殺菌したミックスを、(5)エージングする。即ち、0〜5℃に冷却後3〜84時間一時的に貯蔵する。ついで、ミックスを攪拌しながら、(6)香味料を添加する。
しかる後、(7)フリージングする。この工程は、ミックスをフリーザーにより急激に冷却させて水分を凍結させながら適当量の空気を混入させ、ミックス中に微細な空気の泡と氷の結晶粒、脂肪粒子を分散させ、半流動状のソフトクリーム状にする工程である。どの程度の空気を含んでいるかを、オーバーランで表現するが、本発明では、10〜50%程度が、食感の点から望ましい。
この後、所定の容器やコーンカップ、クッキー生地、モナカの皮等の焼成食品やシート状食品等に(8)充填・成形・包装した後、−20〜−40℃に急冷却し、一定の形を保
持し凍結させ(9)硬化を行い、出荷される迄貯蔵しておく。
なお、フリージング工程は、ミックスを直接モールドに充填・凍結する等の凍結方法に置換してもよい。
【実施例】
【0038】
以下、本発明の実施例及び比較例を例示する。
【0039】
≪油脂の分析≫
(ジグリセリドの定量分析)
表1に記載の植物性油脂(パーム油及びパーム核油の混合油脂)を4.0g採取し、各油脂をクロロホルム-メタノール混合溶液(2:1V/V)150mlで溶解した。その後、加熱還流で完全に溶解させ、クロロホルム転溶、定容・分取の後、内標準としてジパルミチンを1mg添加し、シリカゲルカラムによる処理を行った。シリカゲルカラムの溶出は、ジエチルエーテル−ヘキサン−酢酸溶液(10:90:0.5V/V/V)200mlで洗浄した後、ジエチルエーテル−ヘキサン溶液(50:50V/V)150mlで目的のジグリセリドを溶出させて試料溶液を得た。この試料溶液の溶媒を留去後、アセチル化し、ガスクロマトグラフで分析した。なお、ブランクとして、上記油脂及び内標準を添加しない他は、同様に操作し、内標準の面積を補正した。また、ジグリセリド量は、ブランクを用いて算出した。
【0040】
(脂肪酸の定量及び脂肪酸組成分析)
表1に記載の植物性油脂を2.0g採取し、各油脂をクロロホルム-メタノール混合溶液(2:1V/V)150mlで溶解した。その後、加熱還流で完全に溶解させ、クロロホルム転溶、定容・分取の後、内標準として3mg/mlのペプタデカン酸ヘキサン溶液を2.0ml加えた。次いで、けん化、メチルエステル化して誘導体化した後、ガスクロマトグラフで分析した。なお、ブランクとして、上記油脂及び内標準を添加しない他は、同様に操作し、内標準の面積を補正した。また、脂肪酸組成は、ブランクを用いて算出した。
【0041】
上記の結果、表1に記載の植物性油脂は、油脂全体重量中ジグリセリドを6.5重量%含有し、油脂の脂肪酸残基全体重量中オレイン酸を31.7重量%、エイコセン酸を0.1重量%含有していた。
【0042】
(SFC曲線の最大傾きの測定)
NMR ANALYZER NMS120(BRUKER社製)にて、各油脂を80℃で30分間、60℃で30分間、0℃で60分間順次エージングした後に、測定温度(10、20、25、30、35℃)におけるSFC値を測定し、得られたSFC曲線から最大傾きを算出した結果、−2、8°であった。
【0043】
<実施例1〜8、比較例1〜3>
表1に示される配合に従い、先に示した一般的な公知の製造方法で下記の通り調製することにより豆乳含有冷菓を得た。また、以下文章の前に付した符号は、先に示した製造方法の符号と整合させている。
すなわち、(1)豆乳、温めて液状にした油脂、砂糖等の表1に記載した香料以外の原料を計量し、冷菓ミックスを調製する。(2)冷菓ミックスの品温を60℃となるように混合する。(3)2段式手段(合計14.7Mpa、60℃)で均質化する。(4)チューブ式殺菌方法(88℃15秒以上)で殺菌を行なう。(5)5℃24時間の条件でエージングを行なう。(6)エージングされたミックスを攪拌しながらバニラ香料を添加する。(7)オーバーラン20%となるようにフリージングする。(8)120ml/個の条件でカップに充填、ヒートシールして蓋をする。(9)−35℃以下で硬化させる。
【0044】
【表1】

【0045】
上記のようにして得られた各実施例及び比較例の豆乳含有冷菓について、製造適性を評価し(表1には記載せず)、匙通り(品温−20℃以下で一昼夜保管後、冷凍庫から取り出し直後の品温−20℃の冷菓の匙通り)、風味(豆乳感と濃厚感)、口溶け感及び食感のなめらかさ度合いについて、専門パネラー10名の官能評価を実施した。
その結果を表1に合わせて示す。
【0046】
表1に記載のとおり、実施例1〜8では、匙通り、製造適性、風味(豆乳感と濃厚感)、口溶け感、食感共に、アイスクリーム規格品と同等の官能評価であり、乳原料不使用であるにも拘わらず、高級感のある、良好な豆乳含有冷菓であった。特に大豆特有の青臭さが抑制され、さわやな豆乳風味が感じられ、豆乳含有冷菓として良好な風味であった。特に実施例1は、全ての評価において特に優れていた。
一方、比較例1は、硬くて匙通りが悪く、シャープな冷感の強いシャーベット様の口溶けであった。更に、大豆臭がして、食べにくいものであった。また、比較例2は、匙はすぐに入るが軟らかすぎてボディ感に乏しい食感で、匙が入る際のなめらかでもっちりとした感触がないと共に、濃厚感がなく、豆乳の風味が損なわれた冷菓であった。比較例3は、やや硬めの匙の通りにくい冷菓で、口溶け、濃厚感が損なわれていた。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】SFC曲線と接線の説明図
【符号の説明】
【0048】
1 y=f(x)
2 y=f’(x)=Ax+B

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリデキストロース及び難消化性デキストリンを含有することを特徴とする豆乳含有冷菓。
【請求項2】
更に、イヌリンを含有する請求項1記載の豆乳含有冷菓。


【図1】
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