説明

豚舎における敷料のリサイクルシステム

【課題】本発明は、豚房の床面に積層されたおが屑、わら、籾殻、パーク又は間伐材のチップなどの敷料に堆肥化促進機能を有する微生物を接種することにより敷料のリサイクルを可能とする豚舎における敷料のリサイクルシステムを提供することを目的とするものである。
【解決手段】本発明は、豚舎1内にて仕切られた豚房5の床面2に、少なくとも消臭機能を有する微生物と堆肥化促進機能を有する微生物が接種された敷料を積層し、前記豚房5内で子豚を飼育し、出荷するまでの一次処理工程と、前記出荷後の豚房5の敷料を回収し、醗酵装置により堆肥化する二次処理工程と、前記二次処理工程により堆肥化した敷料を、新たに飼育される豚房の敷料として再使用する工程とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、豚舎における敷料のリサイクルシステムに関する。詳しくは豚舎での敷料を堆肥化させて再び敷料として再利用する豚舎における敷料のリサイクルシステムに係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来より豚舎では、床がコンクリートで形成され、かつ仕切壁によって複数の収容房が設けられた構成とされている。そこで収容房のコンクリート床面におが屑、わら、籾殻、パーク又は間伐材のチップなどの敷料が敷かれて子豚から出荷するまでの飼育が行われている。
【0003】
しかしおが屑などの敷料に糞尿を吸着させているため、糞尿と敷料とが混練されて汚泥化するにつれ悪臭がひどく、衛生状態も悪化する。また、豚の出荷後に撤去される敷料は敷地内で堆肥化処理されて農作物の肥料とされているが、おが屑などの敷料が混ざっているために肥料として適さない問題がある。
【0004】
ここで、敷料の維持方法として、例えば特許文献1に記載されるような発明が提案されている。具体的には、図2に示すように、豚房101の床部102を、コンクリート床103と、豚の糞尿を堆肥化した豚舎用敷料の敷料床104とで構成し、母豚の分娩の際には、豚房101のコンクリート床103を仕切り部材105によって囲繞して小収容室106を形成すると共に、出産した子豚を飼育する際には、豚房101の床部102を仕切り材105によって囲繞して大収容室107を形成し、さらに、豚房101の敷料床104の豚舎用敷料を攪拌する攪拌移送機108を設け、豚を小収容室に収容した後、攪拌移送機108によって敷料床104の豚舎用敷料を往復動して攪拌移送することにより豚舎用敷料中の水分を蒸散させて豚舎用敷料を良好な状態に維持する構成とされている。
【0005】
【特許文献1】特開2006−271399号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら特許文献1における発明では、豚舎用敷料は醗酵菌の添加された豚の糞を、堆肥化装置に投入し10日間程度攪拌して醗酵させて製造するものであり、豚の糞尿を集めて堆肥化処理する手間が生ずる。
【0007】
また、豚舎用敷料上に排泄される糞尿によって豚舎用敷料に含まれる水分を蒸散させるために、豚舎内に設置された攪拌移送機により攪拌するに際して豚舎用敷料の移動や豚の移動などの手間がかかる問題が生ずる。
【0008】
本発明は、以上の点に鑑みて創案されたものであって、豚房の床面に積層されたおが屑、わら、籾殻、パーク又は間伐材のチップなどの敷料に堆肥化促進機能を有する微生物を接種することにより敷料のリサイクルを可能とする豚舎における敷料のリサイクルシステムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明に係る豚舎における敷料のリサイクルシステムは、豚舎内にて仕切られた豚房の床面に、少なくとも消臭機能を有する微生物と堆肥化促進機能を有する微生物が接種された敷料を積層し、前記豚房内で子豚を飼育し、出荷するまでの一次処理工程と、前記出荷後の豚房の敷料を回収し、醗酵装置により堆肥化する二次処理工程と、前記二次処理工程により堆肥化した敷料を、新たに飼育される豚房の敷料として再使用する。
【0010】
ここで、少なくとも消臭機能を有する微生物と堆肥化促進機能を有する微生物が接種された敷料を豚房の床面に積層し、子豚から出荷まで飼育することにより、敷料上に排泄される糞尿は醗酵、分解されて臭いの発生および汚泥化を抑制し、かつ豚の出荷後に回収された敷料は醗酵槽により高温領域で醗酵、分解されることで再度敷料として活用することが可能となる。
【0011】
また、消臭機能を有する微生物としては枯草菌が特に好ましく、堆肥化促進機能を有する微生物としては放線菌が特に好ましく、豚房内では枯草菌の機能を発揮させて30〜60℃の中温度域内での醗酵および醗酵槽内では放線菌の機能を発揮させて70〜85℃の高温度域内での醗酵が可能となる。
【0012】
また、敷料が、おが屑、ワラ、籾殻、木チップ、バカス、あるいはバークのいずれか、またはこれらの混合により形成されることにより適度の水分調整が容易に行うことができ、かつ微生物を死滅させることなく増殖させることが可能となる。
【0013】
また、敷料の積層厚さを30cm以上とすることにより、敷料上に排泄された尿は豚房の床面に達するまでに、敷料内の30〜60℃の中温度域内での発酵により蒸散されることにより床面に尿が溜まることなく敷料の汚泥化を防止することが可能となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の豚舎における敷料のリサイクルシステムでは、子豚を飼育して出荷するまでに排泄された糞尿は消臭しながら醗酵、分解され、かつ出荷後に回収された敷料を高温度域内で醗酵処理することにより、再度敷料として活用することが可能となるために、新たな敷料の補充を著しく抑えて、半永久的にリサイクルすることができ、経済的効果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面を参酌しながら説明し、本発明の理解に供する。
図1は、本発明を適用した豚舎における敷料のリサイクルシステムの豚舎の一例を示す説明図である。
【0016】
ここで示す豚舎1は、その床面2がコンクリートにより形成されると共に、高さが約1mのコンクリート等の仕切壁3と、その仕切壁3上に立設される金網や木板等より形成される仕切部材4によって複数の豚房5、5・・に区切られている。
【0017】
そして豚房5内に子豚(25〜50kg)1頭に対して、0.6m の敷料(おが屑)を床面2上に30cm〜60cmの高さとなるように敷設するものである。
【0018】
次に、おが屑表面に枯草菌および放射菌を含んだ菌体を散布し、子豚を豚房に導入する。
【0019】
このようにして豚房5内で飼育される子豚は約90〜120日間で成育して出荷される。この間は敷料を取り替えることなく、敷料(おが屑)上に糞尿の排泄を繰り返しながら飼育される。
【0020】
ここで、試験頭数200頭、敷料(おが屑)、接種菌体として商品名ビオグリーン特を使用して子豚の導入から出荷までの豚房の床面のアンモニア濃度の測定結果を下記表1に示す。
測定単位はppmとする。
【0021】
【表1】

【0022】
以上の結果から、子豚の飼育開始日より7日後ではアンモニア濃度がA豚房では6ppm、B豚房では8ppmであり、13日後はA豚房では18ppm、B豚房では35ppm、又22日後はA豚房では40ppm、B豚房では60ppmであったが、開始日より7日以後においては2〜9ppmと非常にアンモニア濃度の低い数値の測定結果となっている。
【0023】
前記表1の測定結果におけるアンモニア濃度では殆んど臭気を感じない値であり、また尿により敷料が汚泥化されることなく、良好な豚の飼育環境を確保することができた。これは、枯草菌および放線菌を含んだ菌体を接種した敷料により30〜60℃の中温度域内にて醗酵を行うことにより、中温度域内での好気的条件下における枯草菌の増殖により糞尿からの臭気、例えばアンモニアが分解されると共に、尿や糞に含まれる水分が30〜60℃の中温度域内において蒸散されることが判明した。
【0024】
次に、飼育した豚を出荷した後の豚房5内の床面2上に敷設された敷料を回収して、攪拌醗酵槽(図示せず。)によって最終醗酵を行うものであり、この攪拌醗酵槽は、全長約30mのコンクリート製の醗酵槽の始端より投入される敷料を攪拌機によって約20日間かけて醗酵槽の終端まで攪拌しながら移動させる間に完全発酵を行うものである。
【0025】
ここで、豚を出荷した後のおが屑から成る敷料を1日ごとに醗酵槽の始端より順次投入し、9月12日から10月1までの約20日間をかけて醗酵した過程における醗酵温度を午前9時に測定した結果を下記表2−1および表2−2に示す。
測定温度は、℃とする。測定日は、9月12日〜9月27日とする。表中では9月は省略し、測定日のみ記載する。
【0026】
【表2−1】

【0027】
【表2−2】

【0028】
以上の結果から、攪拌層に投入してから5日までの間では醗酵温度が70℃から80℃の高温域内での好気的条件下における特に放線菌の働きにより醗酵を促進させて出荷後における敷料の未醗酵部分を短期間で完全に醗酵し、分解することを可能とする。
【0029】
また、攪拌層の終端における堆肥化された敷料の水分比率、アンモニア濃度、豚回虫などの寄生虫の有無を調べた結果、水分比率:58.4%、アンモニア濃度:10ppm、寄生虫の存在は零であった。
【0030】
ここで、試験頭数400頭(A豚房、B豚房)、堆肥化された敷料と敷料(おが屑)との混合、接種菌体として商品名ビオグリーン特を使用して子豚の導入から出荷までの豚房の床面のアンモニア濃度の測定結果を下記表3に示す。
測定単位はppmとし、測定個所は、豚房の手間側とする。
なお、A豚房では堆肥化された敷料と新たな敷料との割合を50:50とし、B豚房では、80:20の割合とする。
【0031】
【表3】

【0032】
以上の結果から、飼育開始から出荷までのアンモニア濃度は10ppm未満であり、殆んど悪臭を感じない程度であり、著しく臭気の発生を抑えることが可能となった。
【0033】
また、前記表3における諸条件で、A豚房およびB豚房での堆肥化された敷料の割合を100とした場合のアンモニア濃度の測定結果を下記表4に示す。
【0034】
【表4】

【0035】
以上の結果から、飼育開始から出荷までのアンモニア濃度は10ppm未満であり、殆んど悪臭を感じない程度であり、著しく臭気の発生を抑えることが可能となった。これは、堆肥化された敷料には、枯草菌および放線菌を含んだ微生物が蔓延しているために排泄された糞尿は好気的条件下での醗酵、あるいは分解を促進させることが推測される。
【0036】
なお、出荷後の敷料の堆肥化に際しては、酒粕や焼酎粕等を添加して醗酵を促進させるようにすることが望ましい。また、堆肥化された敷料は当初の敷料より2割程度目減りするために、再度豚房に戻す際には目減り分を新たな敷料によって補充することが望ましい。
【0037】
本発明の豚舎における敷料のリサイクルシステムでは、豚房の床面上に敷かれたおが屑、わら、籾殻、パーク又は間伐材のチップなどの敷料に、枯草菌および放線菌を含んだ微生物を接種することにより、敷料上に排斥された糞尿は通気性の優れた敷料によって空気暴露されると共に、微生物によるアンモニア臭の発生を抑えながら好気的条件下での糞尿の醗酵、あるいは分解による一次醗酵を促進させる。
【0038】
また、敷料の積層高さを30cm以上とすることにより尿などの水分は床面に達するまでに敷料内の30〜60℃の中温度域内にて蒸散され、尿等による敷料の汚泥化を防止して飼育開始から出荷まで良好な飼育環境を維持することが可能となる。
【0039】
次に、豚が出荷された後の一次醗酵した敷料を攪拌式醗酵槽において70〜85℃の高温域内での好気的条件下において病原菌や寄生虫卵が死滅し、更に放線菌の働きにより醗酵を促進させてさらさらした粒状の敷料となる。
【0040】
この堆肥化された敷料を、再び豚房に戻し、醗酵の際の目減り分を新たな敷料として補充した上で、敷料として再利用することができるために、新たな敷料を必要とせずに半永久的に敷料の再利用が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明を適用した豚舎における敷料のリサイクルシステムの豚舎の一例を示す説明図である。
【図2】従来の豚舎構造の一例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0042】
1 豚舎
2 床面
3 仕切壁
4 仕切部材
5 豚房

【特許請求の範囲】
【請求項1】
豚舎内にて仕切られた豚房の床面に、少なくとも消臭機能を有する微生物と堆肥化促進機能を有する微生物が接種された敷料を積層し、前記豚房内で子豚を飼育し、出荷するまでの一次処理工程と、
前記出荷後の豚房の敷料を回収し、醗酵装置により堆肥化する二次処理工程と、
前記二次処理工程で堆肥化した敷料を、新たに飼育される豚房の敷料として再使用する工程とを備える
豚舎における敷料のリサイクルシステム。
【請求項2】
前記消臭機能を有する微生物が枯草菌で、前記堆肥化促進機能を有する微生物が放線菌である
請求項1に記載の豚舎における敷料のリサイクルシステム。
【請求項3】
前記敷料の積層厚さを30cm以上とする
請求項1、または2に記載の豚舎における敷料のリサイクルシステム。
【請求項4】
前記敷料は、おが屑、ワラ、籾殻、木チップ、バカス、あるいはパークのいずれか、またはこれらの混合により形成される
請求項1、2または3に記載の豚舎における敷料のリサイクルシステム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−136705(P2010−136705A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−318650(P2008−318650)
【出願日】平成20年12月15日(2008.12.15)
【出願人】(595134858)豊栄物産株式会社 (6)
【出願人】(598123312)南国興産株式会社 (8)
【Fターム(参考)】