説明

貝の選別方法

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は真珠貝養殖あるいは食用貝養殖における貝の優劣を選別する選別方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、養殖業務の労働時間短縮と収入安定のために、優良貝の選択的養殖及び高付加価値化を目指した選別方法の開発が行われている。以下に従来の技術について説明する。
【0003】一般的に真珠養殖では、まず母貝養殖業者が、稚貝採苗し母貝を養殖する。真珠養殖業者は、その母貝を購入し、母貝養成、母貝仕立て、核入れ手術、珠貝養成、浜上げなどの工程を経て真珠養殖を行う。この時、真珠良品率とその母貝の元気さすなわち健康状態との間には高い相関があることが分かっている。母貝養殖業者はなるべく元気な貝を育てそれを高い価格で販売したい。真珠養殖業者はなるべく元気のない貝は安い価格で購入したい。しかし、現状の選別では、目視による有害寄生虫の有無などの個人的感覚に頼るところが大きい。そのため、両業者間の統一的評価方法を確立し、貝の選別等級を明らかにした上での取引の実現が要望されている。また、真珠養殖業者は、購入した貝の養成と抑制をうまく制御し、最適条件での核入れと珠貝養成を行う必要がある。そのため、貝の活力を常に診断しながらの飼育漁場、餌料量、抑制方法などの調整を望んでいる。
【0004】この貝の健康状態は、活力あるいは体力、元気さなどと呼ばれており、ここでは活力と呼ぶことにする。最近、貝肉中の化学成分分析にて、この活力測定の指標の開発が行われつつある。良く知られている貝の活力指標として、貝肉中の血清タンパク量、脂質量、貝殻内容積に対する乾燥貝肉重量の比などがある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら上記の従来の指標による貝の活力測定では、分析方法に手間がかかるため現場作業では普及していない。そのため、取引及び良品真珠獲得を効率化する等級選別は行われておらず、従来通りの目視に頼っている。
【0006】本発明は上記従来の問題点を解決し、養殖貝の活力の優劣を、迅速かつ簡単操作にて選別する方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】この目的を解決するために本発明の選別方法では、貝の活力測定の指標として閉殻筋(貝柱)の硬さを用いる。ゴムやプラスチックのような比較的柔らかい物質の硬さ測定においては、従来より日本工業規格(JIS,K,7215)に準拠したデュロメーター硬さ試験が用いられ、迅速簡易計測法が確立されている。
【0008】
【作用】貝柱の硬さと貝の活力には強い相関があることが実験的に確かめられ、元気な貝ほど硬い貝柱を持っている。この方法によれば、従来の脂質、血清タンパクを指標とする場合と比べ、迅速かつ簡易に貝の活力が測定でき、現場において貝の優劣を選別することができる。そのため母貝取引あるいは母貝養成と抑制作業用母貝評価診断方法として有効である。
【0009】
【実施例】以下本発明の一実施例について、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明に使用される装置の一例を示す斜視図、図2は選別手順を示すフローチャートである。
【0010】貝の活力は養殖漁場あるいは業者(母集団)に強く依存する。そこで、それぞれの母集団より適当数の貝をサンプリングすることにより、各母集団間の評価が可能である。貝を割き貝柱のみを取り出す。本装置は、貝柱を収納する部分、硬さを測定する部分、データを解析する部分の大きく3つの部分より構成されている。図1において、12は貝柱11を収納するホルダー部、13は硬さ測定用のスプリング式押針部、14は押針の押込み深さを測定するための位置センサー部、15はセンサー信号より硬さを計算し、等級判別を表示する電子回路部、16は貝別あるいは母集団別の活力データを記憶及び統計処理するコンピュータ部である。17は測定結果印刷用プリンター部である。
【0011】以上のように構成された貝の活力選別装置について、図2を用いてその動作を説明する。貝の試料名をコンピュータに入力し、貝柱11をホルダー12内に入れる。次にスプリング式押針13をスプリング力で貝柱表面に押しつけ変形を与え、その時試料が押針を押し戻す力とスプリング力が釣り合った位置をセンサー部14で読み取る。この押針の押込み深さは、貝柱の硬さに換算される。これは従来からのジュロメーター硬さ試験器と同じ原理によるものである。得られた硬さは、予め設定された変換式を用いて貝の活力値に換算され表示される。予め貝の活力別による等級判別式を入力しておけば、得られた硬さに対応した等級判別も同時に表示される。ここまでの測定時間は1分以内である。通常の活力を持つあこや貝の貝柱の平均的硬さは、およそ350gfであったが、抑制中の貝は300gf以下であった。貝別あるいは養殖漁場別、業者別に得られた活力値はすぐに統計処理され、各種項目別結果がグラフあるいは表にて出力される。この時、データ記憶部までを現場で作業し、別場所に設置されたコンピュータにて統計処理を行うことも可能である。
【0012】
【発明の効果】以上のように本発明は、養殖貝の閉殻筋(貝柱)の硬さを測定することにより、迅速かつ正確に貝の活力を判別できる、優れた養殖貝の選別を実現できるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の貝の選別方法に使用される選別装置の一実施例を示す構成図
【図2】選別装置の動作説明のためのフローチャート
【符号の説明】
11 貝柱
12 貝柱ホルダー
13 スプリング式押針
14 押針の位置センサー
15 センサー信号処理電子回路
16 統計処理コンピュータ
17 結果印刷用プリンター

【特許請求の範囲】
【請求項1】 貝を割き貝柱を取り出した後、貝柱の表面をスプリング式押針にて押しつけ、前記貝柱が前記押針を押し戻す力と前記押針のスプリング力が平衡した時の、前記押針の押し込み深さを計測し、この押し込み深さに基づいて貝の優劣を選別することを特徴とする貝の選別方法。

【図1】
image rotate


【図2】
image rotate


【特許番号】特許第3232927号(P3232927)
【登録日】平成13年9月21日(2001.9.21)
【発行日】平成13年11月26日(2001.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平7−1236
【出願日】平成7年1月9日(1995.1.9)
【公開番号】特開平8−182447
【公開日】平成8年7月16日(1996.7.16)
【審査請求日】平成11年10月13日(1999.10.13)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【参考文献】
【文献】実開 平4−53532(JP,U)