説明

負帯電性電子写真用トナー

【課題】高い帯電量であって帯電の立ち上がりが速く、かつ環境安定性のよい負帯電性トナーを提供すること。
【解決手段】下記一般式(1)で表される2:1型鉄錯塩化合物を電荷制御剤としてα質量%含有するトナーであって、該鉄錯塩化合物中に不純物としてβ質量%含有されている配位子であるモノアゾ化合物を、α×β≦10に設定管理して製造された負帯電性電子写真用トナー。
【化1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真、静電記録等のような画像形成方法における静電荷像を現像するためのトナーに関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真法等に適用される現像方法としては、大別して乾式現像法と湿式現像法とがある。前者は、更に2成分現像剤を用いる方法と1成分現像剤を用いる方法に分けられる。
これらの現像法に使用できるトナーとしては、従来、天然あるいは合成樹脂中に染料または顔料を分散させた微粉体が使用されている。例えばポリスチレン等の結着樹脂中に着色剤を分散させたものを5〜15μm程度に微粉砕した粒子がトナーとして用いられている。また、磁性トナーとしては、マグネタイト等の磁性体粒子を含有させたものが用いられている。
【0003】
いずれのトナーも、現像される静電荷像潜像の極性に応じて、正または負の電荷を有する必要がある。トナーの電荷を保有せしめるためには、トナーの成分である樹脂の摩擦帯電性を利用することができるが、この方式では帯電不足により、得られる画像のカブリ、画像濃度の低下など十分な現像性が得られないことがある。そこで、所望の摩擦帯電性をトナーに付与するために、電荷制御剤を添加することが行われている。
【0004】
電荷制御剤を含有するトナーは、結着樹脂の種類と電荷制御剤の種類の組み合わせにより帯電特性が異なる。このような電荷制御剤の中で、モノアゾ金属錯塩化合物を用いることが知られている。しかしながら、これらの電荷制御剤は、トナーの結着樹脂に対する親和性や摩擦帯電付与効果が不十分なために、初期の複写画像の品質が変動し易いという欠点があった。又温度、湿度の影響を受けやすく、高湿度での環境下において、帯電量の低下という欠点も有していた。モノアゾクロム錯塩化合物の中には、これらの問題を解決しているものがあるが、燃焼廃棄時に有害な6価クロムがごく微量生成する可能性が完全には否定できず、環境や人体に与える影響が懸念される。従って、より安全な金属を使用し、且つ性能面において十分に満足できる電荷制御剤が望まれていた。
【0005】
いくつかの性能の良好なモノアゾ鉄錯塩化合物が開示されているが(例えば、特許文献1参照)、性能の良好なものは全てニトロ基を複数有するアゾ錯体であることから、化合物の合成中に発火・爆発の危険を伴う。特に中心金属が鉄の場合は、発火・爆発の危険が著しく、乾燥及び粉砕工程が極めて危険な作業となる。また粉砕型のトナーは、押し出し混練機等により混練され、且つそれを粉砕し製造することが一般的であることから、トナー製造時における粉体爆発の可能性も少なくない。中心金属をクロムとした場合は鉄より発火・爆発の危険性は低下するが、この場合においても得られたニトロ基を有するモノアゾクロム錯塩化合物は、自己反応性物質(第5類危険物)に該当し取り扱いに制限を受ける。
中心金属が鉄であるモノアゾ鉄錯塩化合物を電荷制御剤として使用したトナーが開示され(例えば、特許文献2参照)、中心金属としてクロムを使用しない負帯電性の電荷制御剤としては、実用的な帯電量を有しているものもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表平8−500912号公報
【特許文献2】特開昭61−155464号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年、電子写真法を応用したプリンターや複写機が普及し、年々印字の速度が高速化しており、従来の複写機以上に瞬時に適正帯電を保持する(帯電の立ち上がりが良好な)トナーが要求されるようになってきている。すなわち、休止状態から出力状態に入った時に瞬時に適性帯電を保持することが、鉄錯塩化合物を含有するトナーに対しても、従来のトナー以上に求められている。本発明は、高い帯電量を有し、帯電の立ち上がりが著しく良好であり、温度や湿度の影響を受けることなく安定した帯電量を維持することのできる、負帯電性電子写真用トナーを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは研究の結果、鉄錯塩化合物を用いて、かつ鉄錯塩化合物中の特定の中間体である化合物含量をトナー中のある一定の範囲以下にすることにより、高い帯電量を有し、帯電の立ち上がりが著しく良好であり、温度や湿度の影響を受けることなく安定した帯電量を維持することを見出した。すなわち、本発明は下記一般式(1)
【0009】
【化1】

【0010】
(式中、A、Bはそれぞれ独立して水素原子またはハロゲン原子を表し、Xは炭素数1〜8のアルキル基を表し、Yは無置換の芳香族環基もしくはハロゲン原子で置換された芳香族環基を表す。Jは、水素イオン、アルカリ金属イオン、アンモニウムイオン、またはアルキルアンモニウムイオンを表し、Jにおいてこれらのイオンは2種以上が混合されていてもよい。)で表される2:1型鉄錯塩化合物を電荷制御剤としてα質量%含有するトナーであって、該鉄錯塩化合物中に不純物としてβ質量%含有されている下記一般式(2)
【0011】
【化2】

【0012】
(式中、A、Bはそれぞれ独立して水素原子またはハロゲン原子を表し、Xは炭素数1〜8のアルキル基を表し、Yは無置換の芳香族環基もしくはハロゲン原子で置換された芳香族環基を表す。)で表されるモノアゾ化合物を、トナーに対する含量として1000ppm以下とするために、該電荷制御剤のトナー中における含有量αを1〜3質量%であるものとし、α×β≦10に設定管理して製造されたことを特徴とする負帯電性電子写真用トナーである。
【0013】
本発明は、好ましくは下記一般式(3)
【0014】
【化3】

【0015】
(式中、Xは炭素数1〜8のアルキル基を表し、C、Dはそれぞれ独立して水素原子またはハロゲン原子を表し、Jは、水素イオン、アルカリ金属イオン、アンモニウムイオン、またはアルキルアンモニウムイオンを表し、Jにおいてこれらのイオンは2種以上が混合されていてもよい。)で表される2:1型鉄錯塩化合物を電荷制御剤としてα質量%含有するトナーであって、該鉄錯塩化合物中に不純物としてβ質量%含有されている下記一般式(4)
【0016】
【化4】

【0017】
(式中、Xは炭素数1〜8のアルキル基を表し、C、Dはそれぞれ独立して水素原子またはハロゲン原子を表す。)で表されるモノアゾ化合物を、トナーに対する含量として1000ppm以下とするために、該電荷制御剤のトナー中における含有量αを1〜3質量%であるものとし、α×β≦10に設定管理して製造されたことを特徴とする負帯電性電子写真用トナーである。
【0018】
また本発明の別の態様は、下記一般式(1)
【0019】
【化5】

【0020】
(式中、A、Bはそれぞれ独立して水素原子またはハロゲン原子を表し、Xは炭素数1〜8のアルキル基を表し、Yは無置換の芳香族環基もしくはハロゲン原子で置換された芳香族環基を表す。Jは、水素イオン、アルカリ金属イオン、アンモニウムイオン、またはアルキルアンモニウムイオンを表し、Jにおいてこれらのイオンは2種以上が混合されていてもよい。)で表される2:1型鉄錯塩化合物を電荷制御剤としてα質量%含有するトナーであって、該鉄錯塩化合物中に不純物としてβ質量%含有されている下記一般式(2)
【0021】
【化6】

【0022】
(式中、A、Bはそれぞれ独立して水素原子またはハロゲン原子を表し、Xは炭素数1〜8のアルキル基を表し、Yは無置換の芳香族環基もしくはハロゲン原子で置換された芳香族環基を表す。)で表されるモノアゾ化合物を、トナーに対する含量として1000ppm以下とするために、該電荷制御剤のトナー中における含有量αを1〜3質量%であるものとし、α×β≦10に設定管理することを特徴とする、負帯電性電子写真用トナー製造時の不純物抑制管理方法である。
【0023】
本発明の別の態様においても、好ましいのは下記一般式(3)
【0024】
【化7】

【0025】
(式中、Xは炭素数1〜8のアルキル基を表し、C、Dはそれぞれ独立して水素原子またはハロゲン原子を表し、Jは、水素イオン、アルカリ金属イオン、アンモニウムイオン、またはアルキルアンモニウムイオンを表し、Jにおいてこれらのイオンは2種以上が混合されていてもよい。)で表される2:1型鉄錯塩化合物を電荷制御剤としてα質量%含有するトナーであって、該鉄錯塩化合物中に不純物としてβ質量%含有されている下記一般式(4)
【0026】
【化8】

【0027】
(式中、Xは炭素数1〜8のアルキル基を表し、C、Dはそれぞれ独立して水素原子またはハロゲン原子を表す。)で表されるモノアゾ化合物を、トナーに対する含量として1000ppm以下とするために、該電荷制御剤のトナー中における含有量αを1〜3質量%であるものとし、α×β≦10に設定管理することを特徴とする、負帯電性電子写真用トナー製造時の不純物抑制管理方法である。
【0028】
本発明の負帯電性電子写真用トナーの中でも、性能の優れているものとしては、一般式(3)式中において、Xがメチル基で、CおよびDが水素原子であるもの、Xがメチル基で、Cが水素原子、Dが4−クロロ基であるもの、Xがメチル基で、Cが3−クロロ基、Dが4−クロロ基であるものが挙げられる。また、これらの2:1型鉄錯塩化合物の場合には、本発明の負帯電性電子写真用トナー製造時の不純物抑制管理方法においても、その方法が良好に適用されるものである。
【発明の効果】
【0029】
本発明の負帯電性電子写真用トナーは、トナー製造時の不純物抑制管理方法によって特定の不純物含量が抑制されているので、高い帯電量を有し、帯電の立ち上がりが速く、かつ環境安定性に優れている。また、本発明の負帯電性電子写真用トナーは、トナー中の2:1型鉄錯塩化合物が、構造式中にニトロ基を有していないのでトナー製造時における粉体爆発を起こすことがなく、クロム等の金属を含まないために、燃焼又は酸化しても有害な物質が生ずる可能性もないため、環境に対しても安全である。また、トナー製造時の不純物抑制管理方法として適している。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の負帯電性電子写真用トナー製造時の不純物抑制管理方法では、第1段階で一般式(1)で表される2:1型鉄錯塩化合物中の不純物である、一般式(2)で表されるモノアゾ化合物含有量βについて、分析を行う。第2段階では、得られたβ値に応じて、次のトナー製造段階に直接移行するのか、または一般式(1)で表される2:1型鉄錯塩化合物について再度精製を実施するのかを決定する。β値が大きいと、第3段階で製造されるトナーは2:1型鉄錯塩化合物の添加量が制限されることになる。2:1型鉄錯塩化合物の添加量が低いトナーの場合には、β値がやや大きい場合でも、そのまま第3段階のトナー製造に直接移行することが可能である。ただし、トナー中の2:1型鉄錯塩化合物添加量を低下させ過ぎると、トナーの性能が損なわれることになる。β値がさらに大きくなると、2:1型鉄錯塩化合物について再度精製を実施することになる。このように、第1段階でβ値をあらかじめ分析しておくことにより、品質の悪いトナーを製造する危険率を確実に低減することができる。また逆に、過剰に精製を余儀無くされる負担を確実に低減することができる。さらにこのことは、一般式(3)で表される2:1型鉄錯塩化合物中の不純物である、一般式(4)で表されるモノアゾ化合物含有量βを第1段階で分析しておくことによっても、上述したものと同一の効果を得ることができる。
【0031】
本発明の負帯電性電子写真用トナー製造時の不純物抑制管理方法における、第1段階の一般式(2)または一般式(4)で表されるモノアゾ化合物含有量βの分析手段としては、高速液体クロマトグラフィー法が適している。その他ガスクロマトグラフィー法も採用可能である。いずれも、化合物製造時の不純物抑制管理方法として適した手段である。
【0032】
一般式(1)または一般式(3)で表される、2:1型鉄錯塩化合物中の製造時、および第1段階でβ値が大きくて再精製が必要な時の、2:1型鉄錯塩化合物中の不純物である一般式(2)または一般式(4)で表されるモノアゾ化合物の除去方法としては、溶解度差を利用するのが最も適している。モノアゾ化合物の溶媒に対する溶解度が比較的高いためである。
【0033】
不純物であるモノアゾ化合物の除去方法としては、メタノール、ジメチルホルムアミド(DMF)などで洗浄する方法、メタノール、DMFなどで再結晶する方法、テトラヒドロフラン(THF)、DMF、ジメチルスルホキシド(DMSO)などの溶媒に溶解し、シクロヘキサン等の溶解性の低い溶媒を用いて晶析する方法、さらに純度を高める方法として、クロマトグラフィーによりカラム上で分離した後に極性溶媒を用いて抽出する方法等があり、これらを単独又は組み合わせることにより可能である。
【実施例1】
【0034】
以下、実施例を示すが、これらに限定されるものではない。実施例中、部、%は特に記載が無い限り、質量部または質量%とする。
2:1型鉄錯塩化合物として、一般式(1)の式中、A=5−Cl基、B=水素原子、X=CH基、Y=無置換フェニル基、J=水素イオン(一般式(3)の式中、X=CH基、CおよびDが水素原子、J=水素イオン)であるものを選定した。この中に、不純物として一般式(2)の式中、A=5−Cl基、B=水素原子、X=CH基、Y=無置換フェニル基(一般式(4)の式中、X=CH基、CおよびDが水素原子)としたモノアゾ化合物を、その含有量が0.9質量%となるように調製して、2:1型鉄錯塩化合物を3種類用意した。カーボンブラック5部、スチレンアクリル系合成樹脂(三井化学社製、商品名CPR−200)を下記[表1]の割合で配合し、十分混合後、加熱溶融混練させ、冷却後常法で粉砕分級し、体積平均粒径9±0.5μmの負帯電性トナーを得た。このトナーをシリコンコートキャリア(パウダーテック社製、商品名:F96−100)と4対100質量部の割合で混合振とうし、トナーを負に帯電させた後、ブローオフ帯電量測定装置で測定した。この場合、一般式(1)の2:1型鉄錯塩化合物中における、一般式(2)のモノアゾ化合物の含有量βが0.9質量wt%で、トナー中への一般式(1)の2:1型鉄錯塩化合物の添加量αが1質量%であるので、α×β=0.9となる。
【実施例2】
【0035】
トナー中への一般式(1)の2:1型鉄錯塩化合物の添加量αを2質量%とし、その他は実施例1と同様の方法でトナーを調製し、ブローオフ帯電量測定装置で測定した。この場合α×β=1.8となる。
【実施例3】
【0036】
トナー中への一般式(1)の2:1型鉄錯塩化合物の添加量αを3質量%とし、その他は実施例1と同様の方法でトナーを調製し、ブローオフ帯電量測定装置で測定した。この場合α×β=2.7となる。
【実施例4】
【0037】
一般式(1)の2:1型鉄錯塩化合物中の一般式(2)のモノアゾ化合物含有量βを3.1質量%とし、トナー中への一般式(1)の2:1型鉄錯塩化合物の添加量αを1質量%とし、その他は実施例1と同様の方法でトナーを調製し、ブローオフ帯電量測定装置で測定した。この場合α×β=3.1となる。
【実施例5】
【0038】
トナー中への一般式(1)の2:1型鉄錯塩化合物の添加量αを2質量%とし、その他は実施例4と同様の方法でトナーを調製し、ブローオフ帯電量測定装置で測定した。この場合α×β=6.2となる。
【実施例6】
【0039】
トナー中への一般式(1)の2:1型鉄錯塩化合物の添加量αを3質量%とし、その他は実施例4と同様の方法でトナーを調製し、ブローオフ帯電量測定装置で測定した。この場合α×β=9.3となる。
【実施例7】
【0040】
一般式(1)の2:1型鉄錯塩化合物中の一般式(2)のモノアゾ化合物含有量βを5.3質量%とし、トナー中への一般式(1)の2:1型鉄錯塩化合物の添加量αを1質量%とし、その他は実施例1と同様の方法でトナーを調製し、ブローオフ帯電量測定装置で測定した。この場合α×β=5.3となる。
【0041】
[比較例1]
一般式(1)の2:1型鉄錯塩化合物中の一般式(2)のモノアゾ化合物含有量βを5.3質量%とし、トナー中への一般式(1)の2:1型鉄錯塩化合物の添加量αを2質量%とし、その他は実施例1と同様の方法でトナーを調製し、ブローオフ帯電量測定装置で測定した。この場合α×β=10.6となる。
【0042】
[比較例2]
一般式(1)の2:1型鉄錯塩化合物中の一般式(2)のモノアゾ化合物含有量βを5.3質量%とし、トナー中への一般式(1)の2:1型鉄錯塩化合物の添加量αを3質量%とし、その他は実施例1と同様の方法でトナーを調製し、ブローオフ帯電量測定装置で測定した。この場合α×β=15.9となる。
【0043】
また、帯電立ち上がり性の指標である時定数(τ)についても算出した。時定数(τ)は、飽和帯電に達するまでの帯電量を一定時間ごとにブローオフ帯電量測定装置で測定し、電子写真学会誌、P307、第27巻、第3号(1988)に記載される、次式によってln(qmax−q)を算出し、時間tとln(qmax−q)の関係をグラフにプロットし、時定数(τ)を求めた。
(qmax−q)/(qmax−q)=exp(−t/τ)
ここで、qmaxは飽和帯電量、qは初期帯電量(ここでは帯電時間30秒のときの値)、tが各測定時間であり、そのときの帯電量がqである。
帯電の立ち上がりのよいものは、時定数がより小さな値となる。時定数の単位は秒である。
【0044】
また、帯電の環境安定性についても評価を行った、環境安定性の評価方法は、通常の25℃−50%RH(相対湿度)の環境下での測定に加え、高温高湿環境下(35℃−85%RH)での帯電量測定を行うことにより判定した。
帯電量測定は、各環境下に24時間暴露した現像剤を、その環境においたままで十分に帯電させ、飽和帯電量をブローオフ帯電量測定装置により測定した。
2つの環境で帯電量の変動が20%未満であるものを良好(○)、20%を超えるものを不良(×)とした。結果を[表1]に示した。
【0045】
【表1】

【0046】
[表1]の結果から、一般式(1)の2:1型鉄錯塩化合物中の、一般式(2)のモノアゾ化合物含有量β質量%と、トナー中への一般式(1)の2:1型鉄錯塩化合物の添加量α質量%との積が、10以下の条件を満すトナーは、高い帯電量を有し、帯電立ち上り性、環境安定性が良好であることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の負帯電性電子写真用トナーは、トナー製造時の不純物抑制管理方法によって特定の不純物含量が抑制されているので、高い帯電量、帯電の立ち上がりの速さ、環境安定性の要求される用途に適している。構造式中にニトロ基を有していないのでトナー製造時における粉体爆発の無いことが要求される場合や、クロム等の金属を含まないために、燃焼又は酸化しても有害な物質を生じないことが要求される場合に適している。また、トナー製造時の不純物抑制管理方法として適している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)
【化1】

(式中、A、Bはそれぞれ独立して水素原子またはハロゲン原子を表し、Xは炭素数1〜8のアルキル基を表し、Yは無置換の芳香族環基もしくはハロゲン原子で置換された芳香族環基を表す。Jは、水素イオン、アルカリ金属イオン、アンモニウムイオン、またはアルキルアンモニウムイオンを表し、Jにおいてこれらのイオンは2種以上が混合されていてもよい。ただし、Xがメチル基であって、Yが無置換のフェニル基である場合を除く。)で表される2:1型鉄錯塩化合物を電荷制御剤としてα質量%含有するトナーであって、該鉄錯塩化合物中に不純物としてβ質量%含有されている下記一般式(2)
【化2】

(式中、A、Bはそれぞれ独立して水素原子またはハロゲン原子を表し、Xは炭素数1〜8のアルキル基を表し、Yは無置換の芳香族環基もしくはハロゲン原子で置換された芳香族環基を表す。ただし、Xがメチル基であって、Yが無置換のフェニル基である場合を除く。)で表されるモノアゾ化合物を、トナーに対する含量として1000ppm以下とするために、該電荷制御剤のトナー中における含有量αを1〜3質量%であるものとし、α×β≦10に設定管理して製造されたことを特徴とする負帯電性電子写真用トナー。
【請求項2】
下記一般式(3)
【化3】

(式中、Xは炭素数1〜8のアルキル基を表し、C、Dはそれぞれ独立して水素原子またはハロゲン原子を表し、Jは、水素イオン、アルカリ金属イオン、アンモニウムイオン、またはアルキルアンモニウムイオンを表し、Jにおいてこれらのイオンは2種以上が混合されていてもよい。ただし、Xがメチル基であって、CとDが同時に水素原子である場合を除く。)で表される2:1型鉄錯塩化合物を電荷制御剤としてα質量%含有するトナーであって、該鉄錯塩化合物中に不純物としてβ質量%含有されている下記一般式(4)
【化4】

(式中、Xは炭素数1〜8のアルキル基を表し、C、Dはそれぞれ独立して水素原子またはハロゲン原子を表す。ただし、Xがメチル基であって、CとDが同時に水素原子である場合を除く。)で表されるモノアゾ化合物を、トナーに対する含量として1000ppm以下とするために、該電荷制御剤のトナー中における含有量αを1〜3質量%であるものとし、α×β≦10に設定管理して製造されたことを特徴とする負帯電性電子写真用トナー。
【請求項3】
前記した一般式(3)式中および一般式(4)式中、Xがメチル基で、Cが水素原子、Dが4−クロロ基である、請求項2記載の負帯電性電子写真用トナー。
【請求項4】
前記した一般式(3)式中および一般式(4)式中、Xがメチル基で、Cが3−クロロ基、Dが4−クロロ基である、請求項2記載の負帯電性電子写真用トナー。
【請求項5】
下記一般式(1)
【化5】

(式中、A、Bはそれぞれ独立して水素原子またはハロゲン原子を表し、Xは炭素数1〜8のアルキル基を表し、Yは無置換の芳香族環基もしくはハロゲン原子で置換された芳香族環基を表す。Jは、水素イオン、アルカリ金属イオン、アンモニウムイオン、またはアルキルアンモニウムイオンを表し、Jにおいてこれらのイオンは2種以上が混合されていてもよい。ただし、Xがメチル基であって、Yが無置換のフェニル基である場合を除く。)で表される2:1型鉄錯塩化合物を電荷制御剤としてα質量%含有するトナーであって、該鉄錯塩化合物中に不純物としてβ質量%含有されている下記一般式(2)
【化6】

(式中、A、Bはそれぞれ独立して水素原子またはハロゲン原子を表し、Xは炭素数1〜8のアルキル基を表し、Yは無置換の芳香族環基もしくはハロゲン原子で置換された芳香族環基を表す。ただし、Xがメチル基であって、Yが無置換のフェニル基である場合を除く。)で表されるモノアゾ化合物を、トナーに対する含量として1000ppm以下とするために、該電荷制御剤のトナー中における含有量αを1〜3質量%であるものとし、α×β≦10に設定管理することを特徴とする、負帯電性電子写真用トナー製造時の不純物抑制管理方法。
【請求項6】
下記一般式(3)
【化7】

(式中、Xは炭素数1〜8のアルキル基を表し、C、Dはそれぞれ独立して水素原子またはハロゲン原子を表し、Jは、水素イオン、アルカリ金属イオン、アンモニウムイオン、またはアルキルアンモニウムイオンを表し、Jにおいてこれらのイオンは2種以上が混合されていてもよい。ただし、Xがメチル基であって、CとDが同時に水素原子である場合を除く。)で表される2:1型鉄錯塩化合物を電荷制御剤としてα質量%含有するトナーであって、該鉄錯塩化合物中に不純物としてβ質量%含有されている下記一般式(4)
【化8】

(式中、Xは炭素数1〜8のアルキル基を表し、C、Dはそれぞれ独立して水素原子またはハロゲン原子を表す。ただし、Xがメチル基であって、CとDが同時に水素原子である場合を除く。)で表されるモノアゾ化合物を、トナーに対する含量として1000ppm以下とするために、該電荷制御剤のトナー中における含有量αを1〜3質量%であるものとし、α×β≦10に設定管理することを特徴とする、負帯電性電子写真用トナー製造時の不純物抑制管理方法。
【請求項7】
前記した一般式(3)式中および一般式(4)式中、Xがメチル基で、Cが水素原子、Dが4−クロロ基である、請求項6記載の負帯電性電子写真用トナー製造時の不純物抑制管理方法。
【請求項8】
前記した一般式(3)式中および一般式(4)式中、Xがメチル基で、Cが3−クロロ基、Dが4−クロロ基である、請求項6記載の負帯電性電子写真用トナー製造時の不純物抑制管理方法。

【公開番号】特開2010−237689(P2010−237689A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−117966(P2010−117966)
【出願日】平成22年5月24日(2010.5.24)
【分割の表示】特願2005−68501(P2005−68501)の分割
【原出願日】平成17年3月11日(2005.3.11)
【出願人】(000005315)保土谷化学工業株式会社 (107)
【Fターム(参考)】