説明

負荷平準化システム

【課題】特定の電気設備群の日負荷変動を、簡単な機器構成で平準化可能な負荷平準化システムを提供することを課題とする。
【解決手段】供給する交流電力で所定の電気機器2Aの作動状態を制御するインバータ装置9に併設して、該所定の電気機器2Aを含む特定の電気設備群3の消費電力を平準化する負荷平準化システム1であって、前記特定の電気設備群3へ電力を供給する電源4から繋がる充電回路10によって充電される蓄電手段6と、前記特定の電気設備群3の消費電力が前記蓄電手段6の充電時の該特定の電気設備群3の消費電力よりも大きいと、前記電源4から前記インバータ装置9へ繋がる第一の給電回路11Aを開くと共に、該蓄電手段6から該インバータ装置9へ繋がる第二の給電回路12を閉じて該蓄電手段6の電気を該インバータ装置9へ給電する制御手段7と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、負荷平準化システムに関する。
【背景技術】
【0002】
蓄電技術の発展に伴い、電力系統の日負荷変動等の抑制を目的とした各種の電気設備が開発されている(例えば、特許文献1〜3を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−95180号公報
【特許文献2】特開2008−148443号公報
【特許文献3】特開2003−324848号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電力系統の日負荷変動を抑制する目的で設置される電気設備類の多くは、NaS電池(Natrium-sulfur battery:NAS電池は登録商標)等の大容量蓄電池を擁し、系統連系を行なうための交流/直流変換装置や系統保護装置等の設備を備えている。割安な深夜電力を蓄電して日中に利用する目的で設置される需要者側の電気設備についても、需要者側で使用している電気機器の多くが交流電力を前提としているため、小規模ながらも交流/直流変換装置や交流用の系統保護装置等の設置が必要になる。
【0005】
そこで、本願は、特定の電気設備群の日負荷変動を、簡単な機器構成で平準化可能な負荷平準化システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明は、供給する交流電力で所定の電気機器の作動状態を制御するインバータ装置に蓄電手段を併設し、該所定の電気機器を含む特定の電気設備群の消費電力が大きいと、該蓄電手段を放電させることにした。
【0007】
詳細には、供給する交流電力で所定の電気機器の作動状態を制御するインバータ装置に併設して、該所定の電気機器を含む特定の電気設備群の消費電力を平準化する負荷平準化システムであって、前記特定の電気設備群へ電力を供給する電源から繋がる充電回路によって充電される蓄電手段と、前記特定の電気設備群の消費電力が前記蓄電手段の充電時の該特定の電気設備群の消費電力よりも大きいと、前記電源から前記インバータ装置へ繋がる第一の給電回路を開くと共に、該蓄電手段から該インバータ装置へ繋がる第二の給電回路を閉じて該蓄電手段の電気を該インバータ装置へ給電する制御手段と、を備える。
【0008】
上記負荷平準化システムは、交流の電力を供給して特定の電気設備群の消費電力を平準化するのではなく、該特定の電気設備群に設置されている各種のインバータ装置に併設し、蓄電手段に蓄えた電気をこのインバータ装置に直流のまま供給することにより、該特定の電気設備群の消費電力の平準化を図っている。インバータ装置は、直流を交流へ変換するものであるから、特定の電気設備群に既設され或いは新設したインバータ装置に上記負荷平準化システムを併設すれば、このインバータ装置に繋がる負荷の消費電力を超えない範囲内で、該特定の電気設備群の消費電力を平準化することができる。
【0009】
負荷の平準化は、当然のことながら、特定の電気設備群の消費電力が大きいときに蓄電
手段を放電し、消費電力が小さいときに蓄電手段を充電することで実現される。上記制御装置は、少なくとも蓄電手段の充放電がこのような思想の下で執り行われるよう、前記特定の電気設備群の消費電力が前記蓄電手段の充電時の該特定の電気設備群の消費電力よりも大きい場合に第一の給電回路を開くと共に、第二の給電回路を閉じて該蓄電手段を放電させている。
【0010】
上記負荷平準化システムであれば、特定の電気設備群の負荷に設置されているインバータ装置に、上記蓄電手段と制御手段とを備える簡単な機器構成のシステムを併設するだけで、該特定の電気設備群の日負荷変動を平準化することができる。
【0011】
なお、前記制御手段は、前記特定の電気設備群の消費電力が日中よりも小さい夜間の時間帯に、前記充電回路を閉じて前記蓄電手段を充電し、該特定の電気設備群の消費電力が該蓄電手段の充電時よりも大きい日中の時間帯に、前記第一の給電回路を開くと共に、前記第二の給電回路を閉じて該蓄電手段の電気を該インバータ装置へ給電するものであってもよい。
【0012】
電気設備群の多くは、消費電力の日負荷変動の時間帯が概ね一定なので、制御手段は、時間帯に応じて蓄電手段の充放電を切り替えるだけで、特定の電気設備群の日負荷変動を平準化することができる。
【0013】
また、前記制御手段は、前記特定の電気設備群の消費電力の日負荷変動のパターンに基づいて、前記第一の給電回路及び前記第二の給電回路を開閉するものであってもよい。
【0014】
電気設備群の多くは、消費電力の日付加変動のパターンが概ね一定なので、制御手段は、予め作成した日負荷変動のパターンに基づいて蓄電手段の充放電を切り替えるだけで、特定の電気設備群の日負荷変動を平準化することができる。
【0015】
また、前記制御手段は、前記特定の電気設備群の消費電力を測定する電力計から前記日負荷変動のパターンを得るものであってもよい。
【0016】
上記負荷平準化システムがこのように構成されていれば、特定の電気設備群の日負荷変動のパターンや時間帯の変化に対しても追従できるので、特定の電気設備群の日負荷変動をより適切に平準化することができる。
【0017】
また、前記電源は、交流であり、前記インバータ装置には、コンバータ装置によって交流から直流へ変換され、平滑コンデンサによって平滑化された前記電源の電力が供給され、前記蓄電手段は、交流を直流へ変換する整流器を設けた前記充電回路によって充電され、前記第二の給電回路は、前記コンバータ装置と前記インバータ装置とを繋ぐ回路と前記蓄電手段とを繋ぐものであってもよい。
【0018】
上記負荷平準化システムがこのように構成されていれば、インバータ装置への電力の供給元をコンバータ装置から蓄電手段へ、或いは蓄電手段からコンバータ装置への切り替えの際、インバータ装置への入力電力の電圧変動が平滑コンデンサによって抑制されるので、瞬時電圧低下の虞が無い。
【発明の効果】
【0019】
特定の電気設備群の日負荷変動を、簡単な機器構成で平準化可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】負荷平準化システムを併設した構内電気設備群の構成図である。
【図2】スイッチのパターンを示す表である。
【図3】消費電力の日負荷変動の第一のパターンを示したグラフである。
【図4】消費電力の日負荷変動の第二のパターンを示したグラフである。
【図5】消費電力の日負荷変動の第三のパターンを示したグラフである。
【図6】負荷平準化システムを併設した変形例に係る構内電気設備群の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本願発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態は、本願発明の一態様を例示的に示すものであり、本願発明の技術的範囲を以下の実施形態に限定するものではない。
【0022】
図1は、本実施形態に係る負荷平準化システムを設置した構内電気設備群の構成図である。構内電気設備群E(本発明でいう特定の電気設備群の一態様である。本願でいう特定の電気設備群とは、電気需要家全体(例えばビル等の建物全体)であっても良いし、或いはそれより小単位の設備群(例えば特定の空調設備の群)であっても良い)は、ビルディングや住居、工場、プラントといった特定の電力需要家が有する電気設備群であり、電力会社の原子力発電所、火力発電所、水力発電所、その他の各種発電所から送配電網を介して送電される電力を消費する。ここでは、構内電気設備群Eとして、空調システムを擁する商用ビルディング類を適用対象とすることを前提に、以下、説明する。構内電気設備群Eは、図1に示すように、多数の負荷(負荷2A〜2Z)によって構成される負荷群3を擁している。なお、図1では、電路を1本の線で図示しているが、相数や線数は問わない。
【0023】
負荷群3は、遮断器や変圧器類をキャビネット内に収容したスイッチギヤ(いわゆるメタクラ(メタルクラッドスイッチギヤ)やパワーセンタ、コントロールセンタ等)やケーブル類を介して、商用電源4から交流電力の供給を受ける。負荷群3は、電力を消費する電気設備類(例えば、空調設備や照明設備、電算設備等)で構成される。
【0024】
負荷群3のうち、特に負荷2A(本発明でいう所定の電気機器の一態様である)は、単に電力系統に繋がった商用電源4から供給される電力を直接受けて作動する機器ではなく、周波数変換装置(以下、インバータという)によって周波数や電圧が調整された電力を受けて作動する機器である。すなわち、負荷2Aは、供給する交流電力の周波数や電圧を調整することで負荷2Aの作動状態を制御するインバータ5Aに併設されている。負荷2Aの適用例としては、例えば、空調用冷凍機の圧縮機や冷却水を循環するポンプ、産業設備に設けられた駆動機器類を作動させるための交流電動機といった、入力電力の周波数調整が行なわれるあらゆる電気機器類を適用できる。
【0025】
本実施形態に係る負荷平準化システム1は、既設のインバータ5Aに追加的に併設することで、構内電気設備群Eで消費される電力の日負荷変動を平準化することを目的としており、蓄電池6(本発明でいう蓄電手段の一態様である)や制御装置7(本発明でいう制御手段の一態様である)、商用電源4からの交流電流をダイオードで直流電流に整流する整流器14を備えている。蓄電池6には、整流器14により直流に変換された電気が充電される。もっとも、インバータ5Aが設置されていない構内電気設備群Eに新たにインバータ5Aを設置し、更に負荷平準化システム1を併設することも可能である。負荷平準化システム1を平準化するインバータ5Aは、蓄電池6を直流の線路に繋ぐことが可能であれば、IPMドライバのような汎用のモジュール品であってもよい。
【0026】
インバータ5Aは、交流電流を直流電流に変換するコンバータ部8と、直流電流を交流電流に変換するインバータ部9(本発明でいうインバータ装置の一態様である)とを備え
ており、コンバータ部8によって整流された直流電流を、インバータ部9が要求に応じた任意の周波数の交流電流に変換して負荷2Aに供給する。例えば、負荷2Aが空調用電動ファンであれば、ファンの回転数が、空調システムの制御装置が要求する回転数になるように、インバータ5Aがスイッチング周波数を調整する。なお、コンバータ部8とインバータ部9との間には、直流電流の脈動を平滑化する図示しない平滑コンデンサが設けられている。蓄電池6は、コンバータ部8とインバータ部9との間に接続されてさえいれば、平滑コンデンサよりも上流側と下流側の何れの側に接続されていてもよい。
【0027】
蓄電池6は、充放電可能な二次電池である。蓄電池6の種類や台数は、要求される蓄電容量や予算等に応じて適宜決定される。蓄電池6は、リチウム電池やLL形電池(制御弁式鉛蓄電池)などの各種電池から適宜選択される。
【0028】
制御装置7は、CPUや記憶装置、入出力インターフェース、表示装置等で構成される制御機器であり、負荷平準化システム1を制御する。より詳細には、制御装置7は、構内電気設備群Eの消費電力のパターンや蓄電池6の容量に基づいて、構内電気設備群Eの消費電力の負荷平準化(ピークシフト)を行う。蓄電池6の残量は、蓄電池6の開放電圧と電池残量との相関関係を既定したマップに基づいて特定可能である。蓄電池6の開放電圧は電圧計等で検知する。制御装置7は、構内電気設備群Eの消費電力のパターンや蓄電池6の残量、その他の各種外部信号に基づき、商用電源4からインバータ5Aへ繋がる第一の給電回路11Aを開閉するスイッチswAA、蓄電池6からインバータ5Aへ繋がる第
二の給電回路12を開閉するスイッチswB、及び商用電源4から蓄電池6へ繋がる充電回路10を開閉するスイッチswCを制御する。
【0029】
制御装置7は、スイッチswAA,swB,swCを、以下のようなパターンで制御す
る。制御装置7が実行する各スイッチの制御パターンを図2に示す。制御装置7は、図2に示すように、蓄電池6を充電する場合(蓄電モード)、スイッチswCとスイッチswAAをオンにし、スイッチswBをオフにする。また、蓄電池6から負荷2Aへ給電する
場合(放電モード)、スイッチswCとスイッチswAAをオフにし、スイッチswBを
オンにする。また、充電の完了や蓄電池6の故障などにより蓄電池6を充放電しない場合(商用モード)、スイッチswAAをオンにし、スイッチswCとスイッチswBをオフ
にする。
【0030】
なお、上述では、蓄電モードと商用モードにおいてスイッチswAAをオンにし、放電
モードにおいてスイッチswBをオンにすると述べたが、図2に示すように、これらのスイッチの状態は必ずしもオンである必要は無い。すなわち、負荷2Aを停止する場合は、蓄電モードと商用モードにおいてスイッチswAAをオフにし、放電モードにおいてスイ
ッチswBをオフにする。
【0031】
また、コンバータ部8とインバータ部9との間には平滑コンデンサがあるため、平滑コンデンサの容量が十分であれば、各スイッチの切り替えに伴う瞬時電圧低下の虞は無い。
【0032】
制御装置7に記憶されている構内電気設備群Eの消費電力の日負荷変動のパターンを、図3のグラフに示す。構内電気設備群Eの消費電力は、負荷2A〜2Zの作動状態が様々な理由で変動することにより、一日中変動している。例えば、深夜帯であれば、負荷2A〜2Zの作動状態が変更されないことにより、消費電力が一定である。しかし、朝方からは負荷2A〜2Zが起動され、或いは運転状態が変更されることにより、消費電力が増加していく。消費電力の増加は、人為的な操作によるものに限られず、例えば、夏季の外気温度の上昇に伴う冷凍機のベーン開度の増加といった自動制御によるものも含まれる。図3のグラフに示すような構内電気設備群Eの消費電力のパターンは、電力計などで予め測定してデータ化しておく。なお、制御装置7は、予め記憶されている日負荷変動のパター
ンに基づく充放電切り替えの他、構内電気設備群Eの消費電力値等の変動の度合いによる予測に基づいて充放電を切り替えてもよい。変動の度合いによる予測に基づく制御は、例えば、構内電気設備群Eの消費電力の上昇度合いが大きくなり、所定値を超えると予測されたときに、蓄電池6から放電する制御などを例示できる。
【0033】
制御装置7は、図3のグラフが示す日負荷変動のパターンと現在時刻との相関から、構内電気設備群Eの消費電力の最大値が小さくなるように、消費電力の平準化を行う。すなわち、制御装置7は、図3において符号α1で示される消費電力の小さい領域(例えば、0時から8時)において蓄電池6が充電され、符号α2で示される消費電力のピーク帯域において蓄電池6が放電されるように、スイッチswC〜swBを制御する。具体的には、制御装置7は、符号α1で示される領域の時間帯において蓄電モードを実行し、符号α2で示される領域の時間帯において放電モードを実行し、それ以外の時間帯において商用モードを実行する。制御モードの切り替えは、現在時刻が日負荷変動パターンに基づいて設定される設定時刻になると実行される。
【0034】
なお、制御装置7は、放電モードから商用モードへ遷移する場合には、蓄電池6の残量が既定値以下になったことを契機に切り替えることが好ましい。放電モードから商用モードへの遷移を、蓄電池6の残量の有無に関わらず、図3のような日負荷変動のパターンが示す時間だけを契機に実行すると、蓄電池6の残量が無くなって負荷2Aが停電する虞があるためである。
【0035】
制御装置7が、スイッチswC〜swBをこのように制御することにより、構内電気設備群Eの消費電力の日負荷変動が簡単な機器構成で平準化され、図3において「変更後契約電力」として示すように契約電力を小さくすることができる。契約電力を小さくできることにより電気料金にかかるコストを削減することができ、また、電力系統の日負荷変動の抑制に貢献して電力システムの維持にかかる社会的なコストの削減にも寄与することができる。例えば、日負荷変動が全国的な規模で抑制されると、日中のピーク時間帯の電力を確保するために必要な発電設備を減らすことができ、その分の電力を夜間電力を増やして賄うことでベース電源となる原子力発電所などの比率を高め、世界的な二酸化炭素の排出量削減義務に寄与することができる。上記負荷平準化システム1は、日負荷変動が大きい構内電気設備群に適用されると効果的であるが、例えば、氷蓄熱システムといった夜間電力で製氷した氷を日中に用いる各種のピークシフトシステムと併用することで、より徹底した日負荷変動の抑制を行なうことができる。なお、上記実施形態においては商用電源4が交流電力を供給することを前提にしていたが、商用電源4は直流電力を供給するものであっても、交流の場合と同様に、構内電気設備群Eの消費電力の日負荷変動を平準化できる。
【0036】
負荷平準化システム1であれば、系統保護装置のように位相検出器等を備えた同期装置類も不要であり、機器構成が簡単である。更に、蓄電池6はNaS電池のような大規模なものである必要がなく、広く流通し入手も容易な各種の蓄電手段を適用できるので、蓄電に必要な設備を簡素化できる。蓄電池6の容量は、構内電気設備群Eの日負荷変動の大きさや、負荷平準化システム1が併設されるインバータの負荷の大きさにもよるが、系統安定に使われるような大規模(例えば、数千kW〜数万kW級)なものではなく、比較的小規模(例えば、数kW〜数十kW程度)なものでよい。
【0037】
なお、上記負荷平準化システム1は、例えば、商用電源4が停電したことを検知する低電圧継電器等を設け、この低電圧継電器が商用電源4の停電を検知すると制御装置がスイッチswC〜swBのパターンを放電モードに瞬時に切り替わるようにしておけば、停電に伴う負荷2Aの停止を防止できる。この場合、交流用の無停電電源装置に比べてシステムを簡素化できるし、電池容量に見合うように負荷制限を行なう装置類を追加する必要も
無い。なお、負荷2Aは、停電の場合でも作動し続けることが要求される機器を選定すると効果的である。ただし、非常時にしか作動しない機器を適用すると、本来の目的である負荷の平準化が実現できないため、通常時と非常時の両方で作動する機器を選定することに注意を要する。
【0038】
なお、商用電源4の停電は、低電圧継電器等で検知するもののみならず、例えば、外部から送られる信号などによって検知されてもよい。また、制御装置7は、スイッチswC〜swBを、商用電源4の停電のみならず、その他の各種外部信号に基づいて切り替えるようにしてもよい。非常時に作動することが要求される機器を上記負荷平準化システム1で作動できるようにしておけば、構内電気設備群Eに法規上の義務あるいはその他の事情で設置される非常用の発電設備の発電能力を削減することができる。
【0039】
また、上記負荷平準化システム1は、必ずしも構内電気設備群Eの消費電力の最大値が低くなるように消費電力の平準化を行う必要は無い。例えば、図4のグラフに示すように、夕方の時間帯において消費電力を低減したいという何らかの要請がある場合には、符号β1で示される領域において充電した蓄電池6が、符号β2で示される領域(例えば、16時以降)において放電されるように、スイッチswC〜swBを制御してもよい。また、図3において符号α2で示される領域を経過後に電気が残留している蓄電池6を、図4において符号β2で示されるような領域で再び放電するようにしてもよい。
【0040】
また、上記負荷平準化システム1は、制御装置7に記憶された構内電気設備群Eの消費電力の日負荷変動のパターンに基づいて負荷平準化を行っていたが、構内電気設備群Eの消費電力の日負荷変動のパターンは、制御装置7が取得して作成したものであってもよい。この場合、負荷平準化システム1の制御装置7は、例えば、図1の符号※で示すように、商用電源4と構内電気設備群Eとの間に設けた電力計13に基づいて構内電気設備群Eの消費電力の日負荷変動を測定する。
【0041】
そして、制御装置7は、スイッチswC〜swBを商用モードにし続けて測定した、電力計13で測定した構内電気設備群Eの日負荷変動のデータから、図3や図4に示したような構内電気設備群Eの消費電力の日負荷変動のパターンを得ることができる。制御装置7は、電力計13で測定して得た構内電気設備群Eの日負荷変動のデータに基づいてスイッチswC〜swBを図2のパターンに沿って制御し、上述したような負荷の平準化を行う。この場合、制御パターンを切り替えるタイミングは、上述したように日負荷変動のデータに基づいて既定された設定時刻ではなく、例えば、蓄電池6の容量や構内電気設備群E、あるいは負荷2Aの消費電力を積算した電力量から各種の演算処理を行い、構内電気設備群Eの消費電力の最大値が最も小さくなるように制御パターンの切り替えタイミングが決定されてもよい。
【0042】
また、上記実施形態では、構内電気設備群Eに一つの負荷平準化システム1を併設していたが、同一の構内電気設備群に設けた複数のインバータに、負荷平準化システム1をそれぞれ併設してもよい。同一の構内電気設備群に設けた2つのインバータにそれぞれ負荷平準化システム1を併設した場合、蓄電池6も2つになるため、システム全体で蓄電(放電)できる容量が大きくなり、図5のグラフに示すように、負荷平準化システム1が1つだけの場合に比べて日負荷変動を更に抑制できる。
【0043】
また、上記実施形態では、一つのインバータ5Aに対して一つに負荷平準化システム1を併設していたが、複数のインバータに対して一つの負荷平準化システム1を併設してもよい。この場合の変形例を図6に示す。
【0044】
本変形例では、負荷2Aにインバータ5Aが設置されており、負荷2Bにインバータ5
Bが設置されているものとする。構内電気設備群Eにこのようにインバータが2つある場合、負荷平準化システム1の制御装置7は、スイッチswAAと共に、商用電源4からイ
ンバータ5Bへ繋がる第一の給電回路11Bを開閉するスイッチswABを制御する。ス
イッチswAAとスイッチswABは、機械的に連結されて同時に開閉されるものであってもよいし、同一の制御線に電気的に接続されて同時に開閉されるものであってもよい。
【0045】
負荷平準化システム1を2つのインバータに併設すると、1つのインバータに併設する場合に比べて、放電モードの際の蓄電池6の放電速度が速くなるので、放電モードを持続可能な時間が短くなり得る。しかし、放電モードの際に商用電源4から構内電気設備群Eへ流れる電力が小さくなるので、消費電力のピーク値を更に下げることができる。よって、構内電気設備群Eの消費電力の日負荷変動のパターンが、日中の電力のピークが比較的急激な山型を描くような場合、換言すると、放電モードの持続時間よりも消費電力のピーク値を低く抑えることが優先されるような場合に、負荷平準化システム1を1つのインバータではなく複数のインバータに併設すると効果的である。
【0046】
なお、このような効果は、厳密には、負荷平準化システム1に併設するインバータの数に依存するのではなく、負荷平準化システム1に併設する全てのインバータの消費電力の大きさに依存する。何れにしても、負荷平準化システム1に併設するインバータの電気的な負荷の大きさに比例して、放電モードの際に構内電気設備群Eの電力のピークを低く抑えることができる。よって、制御装置7は、例えば、インバータ毎にスイッチswCやswBを設け、インバータ毎に放電モードや商用モードを選択可能なようにすることで、構内電気設備群Eの実消費電力の大きさや実消費電力の増大率等の関係から、インバータ毎に放電モードや商用モードを選択して構内電気設備群Eの電力のピーク値を制御可能なようにしてもよい。
【符号の説明】
【0047】
E・・・構内電気設備群
1・・・負荷平準化システム
2A〜Z・・・負荷
3・・・負荷群
4・・・商用電源
5A・・・インバータ
6・・・蓄電池
7・・・制御装置
8・・・コンバータ部
9・・・インバータ部
10・・・充電回路
11A,B・・・第一の給電回路
12・・・第二の給電回路
13・・・電力計
14・・・整流器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給する交流電力で所定の電気機器の作動状態を制御するインバータ装置に併設して、該所定の電気機器を含む特定の電気設備群の消費電力を平準化する負荷平準化システムであって、
前記特定の電気設備群へ電力を供給する電源から繋がる充電回路によって充電される蓄電手段と、
前記特定の電気設備群の消費電力が前記蓄電手段の充電時の該特定の電気設備群の消費電力よりも大きいと、前記電源から前記インバータ装置へ繋がる第一の給電回路を開くと共に、該蓄電手段から該インバータ装置へ繋がる第二の給電回路を閉じて該蓄電手段の電気を該インバータ装置へ給電する制御手段と、を備える、
負荷平準化システム。
【請求項2】
前記制御手段は、前記特定の電気設備群の消費電力が日中よりも小さい夜間の時間帯に、前記充電回路を閉じて前記蓄電手段を充電し、該特定の電気設備群の消費電力が該蓄電手段の充電時よりも大きい日中の時間帯に、前記第一の給電回路を開くと共に、前記第二の給電回路を閉じて該蓄電手段の電気を該インバータ装置へ給電する、
請求項1に記載の負荷平準化システム。
【請求項3】
前記制御手段は、前記特定の電気設備群の消費電力の日負荷変動のパターンに基づいて、前記第一の給電回路及び前記第二の給電回路を開閉する、
請求項1または2に記載の負荷平準化システム。
【請求項4】
前記制御手段は、前記特定の電気設備群の消費電力を測定する電力計から前記日負荷変動のパターンを得る、
請求項3に記載の負荷平準化システム。
【請求項5】
前記電源は、交流であり、
前記インバータ装置には、コンバータ装置によって交流から直流へ変換され、平滑コンデンサによって平滑化された前記電源の電力が供給され、
前記蓄電手段は、交流を直流へ変換する整流器を設けた前記充電回路によって充電され、
前記第二の給電回路は、前記コンバータ装置と前記インバータ装置とを繋ぐ回路と前記蓄電手段とを繋ぐ、
請求項1から4の何れか一項に記載の負荷平準化システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate