説明

負荷時タップ切換装置用切換開閉器

【課題】絶縁オイルの温度差による粘性の変化が駆動軸の回転速度に与える影響を緩和して、蓄勢バネを解放した際に駆動軸をその全回転範囲に亘ってほぼ一定の回転速度で回転させることができるようにした負荷時タップ切換装置用切換開閉器を提供する。
【解決手段】切換開閉器の駆動軸8の上端部側を支持する上部支持金具4にダンパハウジング21を一体に設け、ダンパハウジング21内に導入した駆動軸の上端部8aに回転羽根23,23を取り付ける。ダンパハウジング21の内周面に障壁部材22,22を取り付け、ダンパハウジング21の開口部を蓋部材24により閉じる。蓋部材24には切欠き24b,24bを設け、回転羽根23,23の回転によりダンパハウジング内で絶縁オイルの流動が生じた際に、絶縁オイルの一部を切欠き24b,24bを通して切換開閉器のタンク内に流出させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、負荷時タップ切換装置に用いる切換開閉器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
負荷時タップ切換装置は、変圧器のタップを選択するタップ選択器と、タップ選択器が選択した隣接タップの一方から他方に負荷電流を切換える切換開閉器とを備えている。負荷時タップ切換装置に用いる切換開閉器としては、特許文献1に示されているように、電流をオンオフするスイッチとして真空バルブを用いたものが多く用いられている。
【0003】
この種の切換開閉器は、上部支持金具及び下部支持金具と、これら上部支持金具及び下部支持金具にそれぞれ上部軸受及び下部軸受を介して上端部寄りの部分及び下端部寄りの部分が回転可能に支持された駆動軸と、駆動軸の下端側に設けられて、回転角度範囲を一定の範囲に制限して蓄勢バネの付勢力により駆動軸を回転駆動する回転駆動機構と、駆動軸により駆動されるカム機構と、このカム機構により開閉操作される真空バルブと、負荷電流を偶数タップ側と奇数タップ側とに切換える切換スイッチと、駆動軸の回転に伴って切換スイッチを駆動する切換スイッチ駆動機構とを構成要素として備えていて、これらの構成要素が、絶縁オイルを充填したタンク内に収容されている。切換開閉器の構成要素を収容したタンクは油密構造で、タップ選択器及び変圧器本体とは隔離されている。
【0004】
この種の切換開閉器では、蓄勢バネに蓄勢されたエネルギを開放することにより、駆動軸を一定の角度範囲で回転させて、この駆動軸の回転の過程で、真空バルブと切換スイッチとを所定のシーケンスで動作させるようにしている。
【0005】
また特許文献2に示されているように、切換スイッチを用いることなく、限流抵抗器の切換接続と、負荷電流の切換とをすべて真空バルブにより行なうようにしたものもある。
【0006】
この種の切換開閉器において、真空バルブ及び切換スイッチの一連の切換シーケンスをほぼ一定の速度で行うことが必要とされる。この要請に応えるためには、蓄勢バネに蓄勢されたエネルギを一気に放出させるのではなく、該エネルギの放出をコントロールして、駆動軸をその全回転範囲に亘ってほぼ一定の速度で回転させることが必要とされる。また駆動軸が限界位置まで回転して停止した際には、大きな衝撃が生じるため、この衝撃を緩和することが望ましい。
【0007】
そのため、この種の切換開閉器では、駆動軸の回転速度の調整と、駆動軸が限界位置まで回転させられて停止する際に生じる衝撃の緩和とを図るために、駆動軸にオイルダンパ(緩衝器)を取り付けている。
【0008】
特許文献2に示された負荷時タップ切換装置では、オイルダンパとして、油が充填されたシリンダ内でピストンを移動させることにより駆動軸の回転に制動をかけるようにしたものが用いられている。しかしながら、このようなダンパを用いた場合には、駆動軸とダンパとの間に、駆動軸の回転運動をピストンの直線運動に変換する機構を設ける必要があるため、構造が複雑になるのを避けられない。
【0009】
そこで、本出願人は、駆動軸の端部に直接結合することができる回転式のオイルダンパを用いることを考えた。図4は、従来から知られている回転式のオイルダンパ14′を切換開閉器の駆動軸の上端に取り付けた状態を示している。このオイルダンパは、駆動軸8′と軸線を共有する内周面21a′を有すると共に軸線方向の一端側及び他端側にそれぞれ開口部及び端部壁を有して、駆動軸8′の上部を端部壁を貫通させて内部に受入れたダンパハウジングと、このダンパハウジングの内周面21a′の180°離れた対称位置から駆動軸に向けて径方向の内側に突出するように設けられてダンパハウジングに対して固定された1対の障壁部材22′,22′と、ダンパハウジングの開口部を塞ぐために該開口部の端面上に配置されて該ダンパハウジングに締結された円板状の蓋部材24′と、駆動軸8′のダンパハウジング内に位置する部分の互いに180°離れた対称位置にそれぞれ取り付けられて駆動軸の回転に伴ってダンパハウジング内で回転させられる1対の回転羽根23′,23′とを備えている。蓋部材24′には、その周方向に間隔をあけて、小径の2個のオイル供給孔hが設けられ、これらのオイル供給孔を通してダンパハウジング内にオイルが供給されるようになっている。ダンパ効果を最大限に引き出すため、回転羽根23′,23′とダンパハウジングの内周面との間の隙間、回転羽根23′,23′と蓋部材24′との間の隙間、及びオイル供給孔hの内径が最小限に設定されている。
【0010】
蓄勢バネに蓄積されたエネルギを開放する際には、駆動軸8′が回転すると同時にオイルダンパ内の回転羽根23′,23′が回転するため、オイルダンパ内のオイルが流動させられるが、オイルの流動は、蓋部材24′とダンパハウジング内の障壁部材22′,22′とにより妨げられるため、回転羽根23′,23′にオイルの大きな流体抵抗が作用する。この流体抵抗により蓄勢バネのエネルギの開放を制御して駆動軸の回転速度をほぼ一定に保つと共に、駆動軸が停止させられた際に生じる衝撃を緩和する。蓋部材にはオイル供給孔hが設けられているが、このオイル供給孔は径が小さく、ダンパの軸線方向にのみ開口しているのに対し、回転羽根の回転に伴って生じるオイルの流動の方向は、主としてダンパハウジングの周方向と放射方向とであるため、オイル供給孔hを通して行われるオイルの流通は僅かである。即ちこのオイルダンパでは、回転羽根が回転した際に、オイルがダンパハウジングの外部に流出することがほとんどないため、回転羽根が回転した際のオイルの流動は、実質的に蓋部材により閉鎖されたダンパハウジング内でのみ生じる。このように構成されたオイルダンパでは、オイルの粘度により、駆動軸に作用するダンパ力が大きく左右される。
【特許文献1】特開2004−319975号公報
【特許文献2】特開平11−329871号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
図4に示された従来のオイルダンパでは、ダンパ効果を最大限に引き出すために、回転羽根とダンパハウジングの内周面との間の隙間、回転羽根と蓋部材との間の隙間及びオイル供給孔の内径を最小限に設定していたため、オイルの温度変化による粘性の変化により駆動軸の回転速度に大きなばらつきが生じ、切換開閉器の一連の切換シーケンスを常にほぼ一定の速度で行うという要請に応えることができないという問題があった。
【0012】
本発明の目的は、絶縁オイルの温度差による粘性の変化が駆動軸の回転速度に与える影響を緩和して、蓄勢バネを解放した際に駆動軸をその全回転範囲に亘ってほぼ一定の回転速度で回転させることができるようにした負荷時タップ切換装置用切換開閉器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、回転可能に支持された駆動軸と、回転角度範囲を一定の範囲に制限して駆動軸を蓄勢バネの付勢力により回転駆動する回転駆動機構と、駆動軸により駆動されるカム機構と、カム機構により開閉操作される真空バルブと、駆動軸の回転速度の調整と駆動軸が限界位置まで回転させられて停止する際に生じる衝撃の緩和とを図るために駆動軸に結合されたオイルダンパとを含む切換開閉器の構成要素が、絶縁オイルを充填したタンク内に収容されてなる負荷時タップ切換装置用切換開閉器に係わるものである。
【0014】
本発明においては、オイルダンパが、駆動軸と軸線を共有する内周面を有すると共に軸線方向の一端側及び他端側にそれぞれ開口部及び端部壁を有して、駆動軸を前記端部壁を貫通させて内部に受入れたダンパハウジングと、ダンパハウジングの内周面から駆動軸に向けて径方向の内側に突出するように設けられてダンパハウジングに対して固定された少なくとも一つの障壁部材と、ダンパハウジングの開口部を塞ぐために該開口部の端面上に配置されて該ダンパハウジングに締結された円板状の蓋部材と、駆動軸のダンパハウジング内に位置する部分に取り付けられて駆動軸の回転に伴ってダンパハウジング内で回転する回転羽根とを備えていて、蓋部材を板厚方向に貫通し、かつ蓋部材の外周側に開口した切欠き部が蓋部材に少なくとも一つ形成されている。この切欠きは、ダンパハウジングの内周面を越えて更に径方向の内側に伸びるように設けられていて、ダンパハウジング内が蓋部材の切欠きを通してタンク内に連通させられている。
【0015】
上記のように、駆動軸とともに回転する回転羽根を収容するダンパハウジングの開口部を塞ぐ円板状の蓋部材に、該蓋部材を板厚方向に貫通し、かつその外周側に開口した切欠き部を少なくとも一つ形成しておくと、駆動軸の回転に伴ってダンパハウジング内で回転羽根が回転したときに、ダンパハウジング内のオイルを切欠き部を通してタンク内に流出させることができる。特に本発明においては、切欠き部が蓋部材の外周側にも開口しているため、オイルの粘度が高い場合にも、回転羽根の回転に伴って放射方向に流動したオイルを切欠き部を通して切換開閉器のタンク内に円滑に流出させることができる。従って、オイルの粘度が高いときに駆動軸に働くダンパ力とオイルの粘度が低い場合に駆動軸に働くダンパ力との差を従来よりも少なくすることができ、所定のダンパ力を確保しながら、オイルの温度による粘性の変化が駆動軸の回転速度に与える影響を軽減して、駆動軸をその全回転角度範囲に亘ってほぼ一定の回転速度で回転させることができる。
【0016】
本発明に係わる切換開閉器の好ましい態様では、上部支持金具及び下部支持金具と、これら上部支持金具及び下部支持金具にそれぞれ上部軸受及び下部軸受を介して上端部寄りの部分及び下端部寄りの部分が回転可能に支持された駆動軸と、回転角度範囲を一定の範囲に制限して駆動軸を蓄勢バネの付勢力により回転駆動する回転駆動機構と、駆動軸により駆動されるカム機構と、カム機構により開閉操作される真空バルブと、駆動軸の回転速度の調整と駆動軸が限界位置まで回転させられて停止する際に生じる衝撃の緩和とを図るために駆動軸の上端に結合されたオイルダンパとを含む切換開閉器の構成要素が、絶縁オイルを充填したタンク内に収容される。
【0017】
本発明においては、オイルダンパが、上部支持金具に一体に設けられていて、駆動軸と軸線を共有する内周面を有すると共に軸線方向の一端側及び他端側にそれぞれ開口部及び端部壁を有し、駆動軸の上部側軸受よりも上方に位置する部分を端部壁を貫通させて内部に受入れたダンパハウジングと、ダンパハウジングの内周面の180°離れた対称位置から駆動軸に向けて径方向の内側に突出するように設けられてダンパハウジングに対して固定された1対の障壁部材と、ダンパハウジングの開口部を塞ぐために該開口部の端面上に配置されて該ダンパハウジングに締結された円板状の蓋部材と、駆動軸のダンパハウジング内に位置する部分の互いに180°離れた対称位置にそれぞれ取り付けられて駆動軸の回転に伴ってダンパハウジング内で回転させられる1対の回転羽根とを備えていて、蓋部材を板厚方向に貫通し、かつ蓋部材の外周側に開口した1対の切欠き部が蓋部材に形成されている。上記1対の切欠きは、1対の障壁部材の対向方向に対して90°をなす方向に沿って対称に設けられている。また各切欠きは、ダンパハウジングの内周面を越えて更に径方向の内側に伸びるように設けられていて、ダンパハウジング内が蓋部材の切欠きを通してタンク内に連通させられている。
【0018】
上記各切欠きは、蓋部材の周方向に測った幅寸法が、蓋部材の径方向の外側に向かって徐々に大きくなっていく形状を有していることが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
以上のように、本発明によれば、駆動軸とともに回転する回転羽根を収容するダンパハウジングの開口部を塞ぐ円板状の蓋部材に、該蓋部材を板厚方向に貫通し、かつその外周側にも開口した切欠き部を少なくとも一つ形成して、駆動軸の回転に伴ってダンパハウジング内で回転羽根が回転した際に、ダンパハウジング内のオイルを切欠き部を通してタンク内に円滑に流出させることができるようにしたので、オイルの粘度が高いときに駆動軸に働くダンパ力とオイルの粘度が低い場合に駆動軸に働くダンパ力との差を従来よりも少なくすることができ、所定のダンパ力を確保しながら、オイルの温度による粘性の変化が駆動軸の回転速度に与える影響を軽減して、駆動軸をその全回転角度範囲に亘ってほぼ一定の回転速度で回転させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下図面を参照して本発明の好ましい実施形態を詳細に説明する。
図1は、負荷時タップ切換装置の要部の構成の一例を示したもので、同図において1はタップ選択器、2は切換開閉器である。3は切換開閉器のタンク、4及び5はそれぞれタンク3内に収容されて、該タンクに対して固定された上部支持金具及び下部支持金具である。タンク3内には更に、上部支持金具4及び下部支持金具5にそれぞれ上部軸受6及び下部軸受7を介して上端部寄りの部分及び下端部寄りの部分が回転可能に支持された駆動軸8と、回転角度範囲を一定の範囲に制限して駆動軸8を蓄勢バネ9の付勢力により回転駆動する回転駆動機構10と、駆動軸8により駆動されるカム機構11と、カム機構11により開閉操作される真空バルブ12と、駆動軸8の回転に伴って操作されて負荷電流を偶数タップ側と奇数タップ側とに切換える切換スイッチ13と、駆動軸8の回転速度の調整と駆動軸8が限界位置まで回転させられて停止する際に生じる衝撃の緩和とを図るために駆動軸8の上端に結合された回転式のオイルダンパ14と、限流抵抗器15とを含む切換開閉器の構成要素が絶縁オイル16とともに収容されている。
【0021】
図1には真空バルブ12が1つしか図示されていないが、実際には真空バルブ12が駆動軸8の周囲に多数個(例えば6個)設けられて、タンク3の内面に固定されている。切換スイッチ13は、固定補助接触子13aと、駆動軸8により駆動されて固定補助接触子13aに接離する可動補助接触子13bとにより構成されている。
【0022】
タンク3の上部に固定されたフレーム17に減速機からなる駆動ユニット18が取り付けられ、この駆動ユニットの出力軸18aの回転が絶縁駆動軸19と、回転軸20と、回転軸20に取り付けられた駆動歯車21と、歯車21に噛み合わされた歯車22と、オルダム継手23とを通して回転駆動機構10の入力軸に伝達されている。駆動ユニット18の出力はまた、絶縁駆動軸19と回転軸20とを通してタップ選択器1にも伝達される。
【0023】
タップ切換指令が与えられると、図示していない電動操作機構からの動力が伝達されて、駆動ユニット18の出力軸が回転する。駆動ユニット18の出力軸が回転すると、絶縁駆動軸19と、回転軸20と、駆動歯車21及び22と、オルダム継手23とを通して回転駆動機構10に駆動力が伝達されて、蓄勢バネ9が蓄勢された後、その蓄勢バネ9が一気に開放されるため、その付勢力により駆動軸8が高速で回転する。この駆動軸8が回転している間に、カム機構11を介して真空バルブ12が開閉操作されるとともに、可動補助接触子13bが操作される。真空バルブ12の開閉操作と、切換スイッチ13の切換操作と、タップ選択器1のタップ選択動作とが所定のシーケンスで行なわれることにより、タップ巻線の選択されるタップが、奇数タップから偶数タップへ、または偶数タップから奇数タップへと切り換えられる。
【0024】
タップ切換動作を支障なく行なわせるためには、切換開閉器の一連の切換シーケンスを常にほぼ一定の速度で行なわせる必要があり、そのためには、駆動軸8をその全回転角度範囲に亘ってほぼ一定の速度で回転させる必要がある。蓄勢バネ9の蓄勢力の開放をコントロールすることにより駆動軸8の回転速度をコントロールすることは困難であるため、駆動軸8にオイルダンパ14を結合して、このオイルダンパから駆動軸8にダンパ力(制動力)を作用させることにより、駆動軸の回転速度をほぼ一定に保つとともに、駆動軸8が限界位置まで回転して停止する際に生じる衝撃を緩和するようにしている。
【0025】
本実施形態で用いるオイルダンパ14は、図2及び図3に示されているように、上部支持金具4の一部(駆動軸8の上端を支持する部分)に一体に設けられて駆動軸8の上端を内部に受入れたダンパハウジング21と、このダンパハウジング21の内周に固定された一対の障壁部材22,22と、ダンパハウジング21内で駆動軸8に取り付けられた1対の回転羽根23,23と、ダンパハウジング21の開口部を閉じる蓋部材24とにより構成されている。
【0026】
ダンパハウジング21は、駆動軸8と軸線を共有する内周面21aを有すると共に軸線方向の一端側及び他端側にそれぞれ開口部21b及び端部壁21cを有するカップ状の形に形成されている。ダンパハウジング21の端部壁21cの中心部に上部軸受6を介して駆動軸8の上端部寄りの部分が回転自在に支持され、駆動軸8の上部側軸受6よりも上方に位置する部分が端部壁21cを貫通してダンパハウジング21内に受入れられている。上部支持金具4の上面には、ダンパハウジング21の開口部21bを取り囲む円管状の凹部4aが形成され、この凹部4aの底面がダンパハウジング21の開口部の端面21b1となっている。
【0027】
各障壁部材22は、先端部に向かって幅が狭くなるように両側面22a,22aに2段階にテーパが付けられ、後端部の端面22bがダンパハウジングの内周面に相応した円筒面状の凸面をなすように形成された金属ブロックからなっている。一対の障壁部材22,22は、ダンパハウジング21の内周面21aの180°離れた対称位置に、それぞれの後端部の端面22bをダンパハウジングの内周面に当接させた状態で配置されて、ボルト25によりダンパハウジング21に固定されている。
【0028】
1対の回転羽根23,23は、駆動軸8のダンパハウジング21内に位置する部分の互いに180°離れた対称位置にそれぞれ取り付けられて、駆動軸8の回転に伴ってダンパハウジング内で回転させられる。図示の例では、1対の回転羽根23,23のそれぞれの一端が円筒状のボス26の外周に溶接され、ボス26が駆動軸8のダンパハウジング内に受入れられた部分に嵌合されて該駆動軸8にキー止めされている。
【0029】
各障壁部材22の先端には、円筒面状の凹面22cが形成されていて、各障壁部材22の先端の凹面22cが、回転羽根23を支持している円筒状のボス26に均一な微小間隙を介して対向させられている。また各回転羽根23の他端は、ダンパハウジング21の内周面21aに微小間隙を介して対向させられている。
【0030】
蓋部材24は円板状に形成されていて、ダンパハウジングの開口部21bを塞ぐために該開口部の端面21b1上に配置されて、ダンパハウジング21にボルト27により締結されている。図示の例では、蓋部材24の中央部に孔24aが形成され、この孔24aに回転羽根のボス26の先端が回転自在に嵌合されている。
【0031】
本発明では、蓋部材24を板厚方向に貫通し、かつ蓋部材24の外周側に開口した1対の切欠き部24b,24bが蓋部材24に形成されている。図示の例では、1対の切欠き24b,24bが、1対の障壁部材22,22の対向方向に対して90°をなす方向に沿って対称に設けられている。各切欠き24bは、ダンパハウジングの内周面21aを越えて更にダンパハウジングの径方向の内側に伸びるように設けられていて、ダンパハウジング21内が蓋部材24の切欠き24b,24bを通して切換開閉器のタンク3内に連通させられている。ダンパハウジング21内は、タンク3内に充填された絶縁オイルと同じオイルで満たされている。
【0032】
上部支持金具4に設けられた凹部4aの内周面の内径は、蓋部材24の外径よりも十分に大きく設定されていて、蓋部材24の外周面と凹部4aの内周面との間に、ダンパハウジング21内から切欠き24b,24bを通して放射方向(蓋部材24の径方向の外側)に絶縁オイルが流出するのを許容する大きさの隙間gが形成されている。
【0033】
蓋部材に設ける切欠き24bの大きさは、駆動軸8に作用させる必要があるダンパ力に応じて適宜に設定する。
【0034】
駆動軸8は、蓄勢バネが開放されたときにその付勢力により図2に示された角度θの範囲を回転する。駆動軸8が回転すると、ダンパハウジング21内で回転羽根23,23が回転するため、ダンパハウジング内で絶縁オイルが流動し、流動した絶縁オイルの一部が切欠き部24b,24bを通して切換開閉器のタンク3内に流出する。本発明で用いるオイルダンパでは、各切欠き部24bが蓋部材24の外周側にも開口しているため、オイルの粘度が高い場合でも、回転羽根23,23の回転に伴ってダンパハウジングの周方向及び放射方向に流動したオイルを、切欠き部24b,24bを通してタンク3内に円滑に流出させることができる。従って、オイルの粘度が高いときに駆動軸8に働くダンパ力とオイルの粘度が低い場合に駆動軸8に働くダンパ力との差を従来よりも少なくすることができ、所定のダンパ力を確保しながら、オイルの温度による粘性の変化が駆動軸の回転速度に与える影響を軽減して、駆動軸をその全回転角度範囲に亘ってほぼ一定の回転速度で回転させることができる。
【0035】
上記の実施形態では、回転羽根を2つ設けたが、本発明において回転羽根は少なくとも1つ設けられていれば良く、回転羽根の数は2つに限定されない。
【0036】
上記の実施形態では、障壁部材22を2つ設けたが、障壁部材22も少なくとも1つ設けられていれば良く、駆動軸の回転角度範囲に応じて障壁部材の数を増減することができる。
【0037】
上記の例では、蓋部材24に2つの切欠きを設けたが、切欠きの数も2つに限定されない。切欠きを複数設ける場合、複数の切欠きは等角度間隔で設けるのが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明に係わる切換開閉器が用いられた負荷時タップ切換装置の要部の構成を示した断面図である。
【図2】本発明で用いるオイルダンパの一構成例を示した上面図である。
【図3】図2のIII−III線断面図である。
【図4】従来の回転式オイルダンパの上面図である。
【符号の説明】
【0039】
3 タンク
4 上部支持金具
5 下部支持金具
6 上部軸受
7 下部軸受
8 駆動軸
9 蓄勢バネ
11 カム機構
21 ダンパハウジング
22 障壁部材
23 回転羽根
24 蓋部材
24b 切欠き

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能に支持された駆動軸と、回転角度範囲を一定の範囲に制限して前記駆動軸を蓄勢バネの付勢力により回転駆動する回転駆動機構と、前記駆動軸により駆動されるカム機構と、前記カム機構により開閉操作される真空バルブと、前記駆動軸の回転速度の調整と前記駆動軸が限界位置まで回転させられて停止する際に生じる衝撃の緩和とを図るために前記駆動軸に結合されたオイルダンパとを含む切換開閉器の構成要素が、絶縁オイルを充填したタンク内に収容されてなる負荷時タップ切換装置用切換開閉器において、
前記オイルダンパは、
前記駆動軸と軸線を共有する内周面を有すると共に軸線方向の一端側及び他端側にそれぞれ開口部及び端部壁を有して、前記駆動軸を前記端部壁を貫通させて内部に受入れたダンパハウジングと、
前記ダンパハウジングの内周面から前記駆動軸に向けて径方向の内側に突出するように設けられて前記ダンパハウジングに対して固定された少なくとも一つの障壁部材と、
前記ダンパハウジングの前記開口部を塞ぐために該開口部の端面上に配置されて該ダンパハウジングに締結された円板状の蓋部材と、
前記駆動軸の前記ダンパハウジング内に位置する部分に取り付けられて前記駆動軸の回転に伴って前記ダンパハウジング内で回転する回転羽根とを備え、
前記蓋部材を板厚方向に貫通し、かつ前記蓋部材の外周側に開口した切欠き部が前記蓋部材に少なくとも一つ形成され、
前記切欠きは、前記ダンパハウジングの内周面を越えて更に径方向の内側に伸びるように設けられていて、前記ダンパハウジング内が前記蓋部材の切欠きを通して前記タンク内に連通させられていること、
を特徴とする負荷時タップ切換装置用切換開閉器。
【請求項2】
上部支持金具及び下部支持金具と、前記上部支持金具及び下部支持金具にそれぞれ上部軸受及び下部軸受を介して上端部寄りの部分及び下端部寄りの部分が回転可能に支持された駆動軸と、回転角度範囲を一定の範囲に制限して前記駆動軸を蓄勢バネの付勢力により回転駆動する回転駆動機構と、前記駆動軸により駆動されるカム機構と、前記カム機構により開閉操作される真空バルブと、前記駆動軸の回転速度の調整と前記駆動軸が限界位置まで回転させられて停止する際に生じる衝撃の緩和とを図るために前記駆動軸の上端に結合されたオイルダンパとを含む切換開閉器の構成要素が、絶縁オイルを充填したタンク内に収容されてなる負荷時タップ切換装置用切換開閉器において、
前記オイルダンパは、
前記上部支持金具に一体に設けられていて、前記駆動軸と軸線を共有する内周面を有すると共に軸線方向の一端側及び他端側にそれぞれ開口部及び端部壁を有し、前記駆動軸の前記上部側軸受よりも上方に位置する部分を前記端部壁を貫通させて内部に受入れたダンパハウジングと、
前記ダンパハウジングの内周面の180°離れた対称位置から前記駆動軸に向けて径方向の内側に突出するように設けられて前記ダンパハウジングに対して固定された1対の障壁部材と、
前記ダンパハウジングの前記開口部を塞ぐために該開口部の端面上に配置されて該ダンパハウジングに締結された円板状の蓋部材と、
前記駆動軸の前記ダンパハウジング内に位置する部分の互いに180°離れた対称位置にそれぞれ取り付けられて前記駆動軸の回転に伴って前記ダンパハウジング内で回転させられる1対の回転羽根とを備え、
前記蓋部材を板厚方向に貫通し、かつ前記蓋部材の外周側に開口した1対の切欠き部が前記蓋部材に形成され、
前記1対の切欠きは、前記1対の障壁部材の対向方向に対して90°をなす方向に沿って対称に設けられ、
各切欠きは、前記ダンパハウジングの内周面を越えて更に径方向の内側に伸びるように設けられていて、前記ダンパハウジング内が前記蓋部材の切欠きを通して前記タンク内に連通させられていること、
を特徴とする負荷時タップ切換装置用切換開閉器。
【請求項3】
各切欠きは、前記蓋部材の周方向に測った幅寸法が、前記蓋部材の径方向の外側に向かって徐々に大きくなっていく形状を有している請求項1または2に記載の負荷時タップ切換装置用切換開閉器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2007−95775(P2007−95775A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−279934(P2005−279934)
【出願日】平成17年9月27日(2005.9.27)
【出願人】(000000262)株式会社ダイヘン (990)