説明

貨幣処理装置、方法及びプログラム

【課題】 一部保留されていた貨幣を出金口に返却する際におけるエラー処理の割合を抑えることができる貨幣処理装置を提供する。
【解決手段】 貨幣処理装置は、入金取引等で貨幣入出金口に投入された貨幣を、貨幣認識部経由で、一時保留部へ搬送させて保留させる。取引が中止されたとき、一時保留部に保留されていた貨幣を、貨幣認識部を経由させないで貨幣入出金口に返却させる。ここで、一時保留部に保留されていた貨幣の枚数を計数すると共に、貨幣入出金口に返却された貨幣の枚数を計数し、保留枚数と返却枚数とを比較する。これら枚数が不一致の場合には、返却枚数を再計数して返却が問題ないことや、若しくは、経路上に貨幣が残留していないことを確認する。このような確認ができない場合にエラー処理に移行させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は貨幣処理装置、方法及びプログラムに関し、例えば、少なくとも紙幣の取込みを伴う取引を行う自動取引装置(ATM;Automatic Teller Machine)の紙幣入出金機に適用し得るものである。
【背景技術】
【0002】
従来、紙幣を取り扱う循環型の自動取引装置は紙幣入出金機を備えている。自動取引装置においては、入金取引が選択されて紙幣を取り込んだが、その後、入金取引が中止され、紙幣を返却する場合が起こり得る。このような場合において、過去においては、取り込んだ紙幣と異なる紙幣を返却することも行われていたが、投入紙幣と返却紙幣とが別の紙幣であることで、顧客とトラブルが起こる恐れがある。
【0003】
そのため、今日においては、一時保留部を有する紙幣入出金機が中心となっている。すなわち、紙幣入出金機の入出金口に入金された紙幣は、紙幣の金種や搬送状態(例えば、重送、斜行など)を認識する紙幣認識部を通過し、一時保留部へ搬送されて一時保留される。入金取引が確定されると、一時保留された紙幣は、紙幣認識部を通過して金種が認識され、金種別収納部に収納される。一方、入金取引が中止されると、一時保留された紙幣は入出金口に返却される。
【0004】
この返却時にも、一時保留されていた紙幣を、紙幣認識部を通過させて枚数などを管理する紙幣入出金機もあれば、返却の高速処理を期して、一時保留されていた紙幣を、紙幣認識部を通過させないで入出金口に返却する紙幣入出金機もある。後者の紙幣入出金機としては、例えば、特許文献1や特許文献2に記載のものを挙げることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−072973号公報
【特許文献2】特開2004−310594号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一時保留されていた紙幣を、紙幣認識部を通過させないで入出金口に返却する紙幣入出金機であっても、返却する紙幣の枚数を管理し、正しく返却できていることを確認することが好ましく、従来、一部保留部に保留されていた枚数と、入出金口に返却された枚数とが一致するかを確認していた。そして、両枚数が不一致の場合には、係員などへの通知処理などのエラー処理を行う。
【0007】
紙幣認識部は画像処理による認識を行うので、紙幣認識部を通過させる場合であれば、紙幣の重送(複数の紙幣が重なった状態で搬送されること)を高い確率で認識することができる。しかしながら、一時保留されていた紙幣を紙幣認識部を通過させないで入出金口に返却する場合、重送を認識することはできない。そのため、一部保留部に保留されていた枚数と、入出金口に返却された枚数とが一致しないと判断することも生じ易く、エラー処理を行う割合が高くなる。その結果、紙幣入出金機を有する自動取引装置の稼働率を低下させ、また、顧客に足止めをさせることが多くなってしまう。
【0008】
そのため、一部保留されていた貨幣を出金口に返却する際におけるエラー処理の割合を抑えることができる貨幣処理装置、方法及びプログラムが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の本発明は、投入された貨幣を受け入れる貨幣入金口と、貨幣を認識する貨幣認識手段と、投入貨幣を一時的に保留する一時保留手段と、上記一時保留手段に保留されていた貨幣が返却される貨幣出金口と、貨幣を搬送させる搬送路とを有し、上記貨幣入金口に投入された貨幣を上記貨幣認識手段経由で上記一時保留手段に搬送させると共に、上記一時保留手段に保留されていた貨幣を、上記貨幣認識手段を経由させないで上記貨幣出金口に返却させる貨幣処理装置において、(1)上記一時保留手段に保留されていた貨幣の枚数である保留枚数を計数する保留枚数計数手段と、(2)上記貨幣出金口に返却された貨幣の枚数である返却枚数を計数する返却枚数計数手段と、(3)上記保留枚数と上記返却枚数とを比較し、これら枚数が所定の不一致関係にあるときに、上記貨幣出金口への返却が正常になされたか否かを確認する処理を実行し、上記貨幣出金口への返却が正常になされたと確認できた場合に貨幣の返却を正常終了させ、上記貨幣出金口への返却が正常になされたと確認できない場合に異常と判断するエラー処理回避手段とを有することを特徴とする。
【0010】
第2の本発明は、投入された貨幣を受け入れる貨幣入金口と、貨幣を認識する貨幣認識手段と、投入貨幣を一時的に保留する一時保留手段と、上記一時保留手段に保留されていた貨幣が返却される貨幣出金口と、貨幣を搬送させる搬送路とを有し、上記貨幣入金口に投入された貨幣を上記貨幣認識手段経由で上記一時保留手段に搬送させると共に、上記一時保留手段に保留されていた貨幣を、上記貨幣認識手段を経由させないで上記貨幣出金口に返却させる貨幣処理装置の貨幣処理方法において、(1)保留枚数計数手段は、上記一時保留手段に保留されていた貨幣の枚数である保留枚数を計数し、(2)返却枚数計数手段は、上記貨幣出金口に返却された貨幣の枚数である返却枚数を計数し、(3)エラー処理回避手段は、上記保留枚数と上記返却枚数とを比較し、これら枚数が所定の不一致関係にあるときに、上記貨幣出金口への返却が正常になされたか否かを確認する処理を実行し、上記貨幣出金口への返却が正常になされたと確認できた場合に貨幣の返却を正常終了させ、上記貨幣出金口への返却が正常になされたと確認できない場合に異常と判断することを特徴とする。
【0011】
第3の本発明の貨幣処理プログラムは、投入された貨幣を受け入れる貨幣入金口と、貨幣を認識する貨幣認識手段と、投入貨幣を一時的に保留する一時保留手段と、上記一時保留手段に保留されていた貨幣が返却される貨幣出金口と、貨幣を搬送させる搬送路とを有し、上記貨幣入金口に投入された貨幣を上記貨幣認識手段経由で上記一時保留手段に搬送させると共に、上記一時保留手段に保留されていた貨幣を、上記貨幣認識手段を経由させないで上記貨幣出金口に返却させる貨幣処理装置に搭載されるコンピュータを、(1)上記一時保留手段に保留されていた貨幣の枚数である保留枚数を計数する保留枚数計数手段と、(2)上記貨幣出金口に返却された貨幣の枚数である返却枚数を計数する返却枚数計数手段と、(3)上記保留枚数と上記返却枚数とを比較し、これら枚数が所定の不一致関係にあるときに、上記貨幣出金口への返却が正常になされたか否かを確認する処理を実行させ、上記貨幣出金口への返却が正常になされたと確認できた場合に貨幣の返却を正常終了させ、上記貨幣出金口への返却が正常になされたと確認できない場合に異常と判断するエラー処理回避手段として機能させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、一部保留されていた貨幣を出金口に返却する際におけるエラー処理の割合を抑えることができる貨幣処理装置、方法及びプログラムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第1の実施形態の自動取引装置の外観を示す斜視図である。
【図2】第1の実施形態における紙幣処理部の構成を示す概略側面図である。
【図3】第1の実施形態における一時保留部への経路と一時保留部からの経路との説明図である。
【図4】第1の実施形態の自動取引装置における制御系の構成を示すブロック図である。
【図5】第1の実施形態の自動取引装置における入金取引の特徴処理を示すフローチャートである。
【図6】第2の実施形態の自動取引装置における入金取引の特徴処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(A)第1の実施形態
以下、本発明による貨幣処理装置、方法及びプログラムを、自動取引装置(ATM)における紙幣入出金機に適用した第1の実施形態を、図面を参照しながら説明する。
【0015】
(A−1)第1の実施形態の構成
図1は、第1の実施形態に係る自動取引装置1の外観を示す斜視図である。第1の実施形態の自動取引装置1は、操作部2、紙幣入出金口3、硬貨入出金口4、カード出入口6、通帳出入口7を備えている。
【0016】
操作部2は、表示部とタッチパネル式の入力部とを備え、顧客の操作により各種の入力を行なうと共に、操作ガイダンス等が表示されるものである。
【0017】
紙幣入出金口3は、紙幣が投入されると共に、紙幣が排出される開口部である。紙幣入出金口3にはシャッタが設けられ、シャッタが駆動されることにより紙幣入出金口3が開閉される。紙幣入出金口3は、装置内の破線部で示した後述する紙幣処理部(紙幣入出金機)10に接続されている。
【0018】
硬貨入出金口4は、硬貨が投入されると共に、硬貨が排出される開口部である。硬貨入出金口4にもシャッタが設けられ、シャッタが駆動されることにより硬貨入出金口4が開閉される。
【0019】
カード出入口6は、取引で使用されるカード(磁気カード、ICカードなど記録方式は問われない;キャッシュカード、クレジットカードなど発行元は問われない)がここから挿入され、取引が終了するとカードが排出される出入り口である。なお、カード出入口6から、取引内容が記載された明細票が排出されることもあり得る。
【0020】
通帳出入口7は、取引で使用される通帳がここから挿入され、取引が終了すると通帳が排出される出入り口である。
【0021】
図2は、上述した紙幣処理部10の構成を示す概略側面図である。なお、図2は、紙幣カセットが4個の例を示しているが、紙幣カセットの数は4個に限定されないものである。
【0022】
図2において、紙幣処理部10は、上部ユニット10Uと下部ユニット10Dとに分かれている。上部ユニット10Uは、紙幣を投入したり排出したりするための接客ユニット11、紙幣の真偽や種類や重送など判別すると共に、適宜、種類毎の枚数をカウントする紙幣認識ユニット(紙幣認識部)12、搬送路からなる搬送ユニット14、投入され認識が終わり紙幣カセットへの移動待ちの紙幣を一時的に保留する一時保留部13などを有する。下部ユニット10Dには、各金種の紙幣をそれぞれ格納しておく紙幣カセット15a〜15dと、出金用紙幣として補充すべき補充用紙幣を収納したり金種別紙幣カセット15a〜15dのいずれかが満杯になったときなどに回収用紙幣を取り込んで収納したりする補充回収収納部16、紙幣入出金口3へと出金された紙幣を顧客が取り忘れた場合に再び取り込んで収容する取忘れ紙幣収納部17、出金時のリジェクト紙幣などを収容する出金リジェクト収納部18などを有する。
【0023】
ここで、接客ユニット11には、搬送路から当該接客ユニット11へ搬送される紙幣を検知する排出紙幣検知センサ11aが設けられている。この検知センサ11aは、例えば光電センサでなり、投光部と受光部とを結ぶ経路上を紙幣が通過することで投光部からの光線が遮断されることにより紙幣(の通過)を検知するものである。排出紙幣検知センサ11aの検知信号を計数することにより、後述する主制御部20は、接客ユニット11へ排出された紙幣の枚数を捉えることができる。
【0024】
図3(A)は、接客ユニット11に投入された紙幣を一時保留部13へ搬送する際の経路を示し、図3(B)は、一時保留部13に一時保留されていた紙幣を接客ユニット11に排出(返却)する際の経路を示している。なお、図3は、上部ユニット10Uだけを取り出して記載している。この図3に示すように、第1の実施形態に係る自動取引装置1では、一時保留部13に一時保留されていた紙幣を接客ユニット11に排出する際には、紙幣認識ユニット12を通過させない経路が選ばれている。
【0025】
図4は、第1の実施形態の自動取引装置1における制御系の構成を示すブロック図である。図4において、自動取引装置1は、各部の制御を司る主制御部20と、上述した操作部2、キャッシュカード等に情報のリードライトを行うカード処理部21、操作ガイダンス等を音声出力する音声案内部22、通帳の磁気ストライプのリードライトや通帳への印字制御を行う通帳処理部23、取引明細を明細票に印字して排出する明細票処理部24、紙幣の取込みや排出を制御する上述した紙幣処理部10、硬貨の取込みや排出を制御する硬貨処理部25を有する。また、自動取引装置1は、各部に電源を供給する電源部27、主制御部20の記憶部としてのメモリ部28、図示しない当該金融機関のホストコンピュータとのインタフェースを制御するインタフェース部29を有する。
【0026】
主制御部20は、例えば、主にマイクロコンピュータなどで構成されており、当該自動取引装置1の動作全体を制御するものである。メモリ部28は、例えば、プログラムメモリやワーキングメモリや設定データメモリでなる。主制御部20(マイクロコンピュータ)は、プログラムメモリに格納されているプログラムや設定データメモリに設定されているデータに従い、ワーキングメモリを、情報を一時的に記憶するメモリとして用いながら、各部を制御する。
【0027】
メモリ部28に記憶されているプログラムとして、入金取引プログラム28a(後述する図5参照)がある。メモリ部28に記憶されている作業データ(ワーキングデータ)として、一時保留部13に保留されている紙幣の枚数データ28bや、接客ユニット11へ排出された紙幣の枚数データ28cがある。
【0028】
(A−2)第1の実施形態の動作
第1の実施形態は、一時保留部13に一時保留されていた紙幣を接客ユニット11に排出(返却)する際の処理に特徴を有するものである。そこで、以下では、入金取引処理が選択されたときの処理を、図5のフローチャートを参照しながら説明する。図5は、第1の実施形態の特徴が理解し易いように、入金取引で紙幣が投入され、一時保留部13への搬送が完了した後に、入金取消が選択され、一時保留部13から接客ユニット11(言い換えると紙幣入出金口3)へ返却する場合の例を示している。
【0029】
入金取引が選択されると、主制御部20は、紙幣入出金口3のシャッタを開き、入金紙幣を接客ユニット11に投入させる(ステップS100)。顧客は、シャッタが開いた際には、入金紙幣を接客ユニット11に投入し、操作部2に表示されている画面の「読取」アイコンを操作する。
【0030】
このとき、主制御部20は、紙幣入出金口3のシャッタを閉じ、投入された紙幣1枚ずつを分離、繰出し、紙幣認識ユニット12経由で一時保留部13に搬送させて、一時保留部13に保留させる(ステップS101)。投入された全ての紙幣は、紙幣認識ユニット12を通過するので、一時保留部13に搬送された枚数は確定し、保留紙幣の枚数データ28bが格納され、また、入金総額が算出される。
【0031】
全ての入金紙幣を一時保留部13に搬送させた後では、主制御部20は、入金総額や「入金確定」アイコンや「取消」アイコンを含む画面を操作部2に表示させ、これに応じて顧客が操作したアイコンがいずれであるかを判別する(ステップS102)。「入金確定」アイコンが操作されたときには、主制御部20は、一時保留部13に保留されている紙幣を、いずれかの紙幣カセット15a〜15dに移送させる処理などの入金確定時の処理を実行させる(ステップS103)。
【0032】
これに対して、顧客が「取消」アイコンを操作したときには、主制御部20は、一時保留部13に保留されている紙幣を接客ユニット11(紙幣入出金口3)に排出(返却)させると共に、排出紙幣検知センサ11aの検知信号に基づいて、接客ユニット11へ排出された紙幣の枚数データ28cを得る(ステップS104)。そして、主制御部20は、一時保留部13に保留されていた紙幣の枚数データ28bと、接客ユニット11へ排出された紙幣の枚数データ28cとが一致しているか否かを判別する(ステップS105)。
【0033】
両枚数データ28b及び28cが一致している場合には、主制御部20は、紙幣入出金口3のシャッタを開き、投入紙幣を顧客に返却させる(ステップS106)。
【0034】
一方、両枚数データ28b及び枚数データ28cが不一致の場合には、主制御部20は、接客ユニット11へ排出された紙幣の枚数を再計数する(ステップS107)。
【0035】
この再計数時の搬送ルートは限定されるものではないが、紙幣認識ユニットを通過するルートであることが好ましい。例えば、接客ユニット11が紙幣の分離、繰出しと、搬送路側からの投入とを並行的に実行できるものであれば、接客ユニット11→紙幣認識ユニット12→接客ユニット11の一時保留部13を含まない経路を再計数時の搬送ルートとし、紙幣認識ユニット12の認識処理で得た枚数のデータを、接客ユニット11へ排出された紙幣の新たな枚数データ(再計数枚数データ)28cとするようにしても良い。また例えば、接客ユニット11→紙幣認識ユニット12→一時保留部13→接客ユニット11の経路を再計数時の搬送ルートとしても良い。この場合、紙幣認識ユニット12の認識処理で得た枚数のデータを、接客ユニット11へ排出された紙幣の新たな枚数データ(再計数枚数データ)28cとするようにしても良く、また、排出紙幣検知センサ11aの検知信号に基づいて得た枚数のデータを、接客ユニット11へ排出された紙幣の新たな枚数データ(再計数枚数データ)28cとするようにしても良い。
【0036】
再計数動作が終了すると、主制御部20は、一時保留部13に保留されていた紙幣の枚数データ28bと、接客ユニット11へ排出された紙幣の再計数枚数データ28cとが一致しているか否かを判別する(ステップS108)。両枚数データ28b及び28cが一致している場合には、主制御部20は、紙幣入出金口3のシャッタを開き、投入紙幣を顧客に返却させる(ステップS106)。
【0037】
これに対して、再計数後においても、両枚数データ28b及び28cが不一致の場合には、主制御部20は、異常と判断し、係員などへの通知処理や自動取引装置の停止などのエラー処理に移行する(ステップS109)。
【0038】
例えば、投入紙幣が一時保留部13に搬送された後、入金取引が取り消され、一時保留部13に保留されている紙幣を接客ユニット11に排出させる際において、一時保留部13からの分離、繰出しの段階から重送が始まり、その重送紙幣がそのまま、接客ユニット11に排出された場合には、ステップS105の判別で不一致という結果が得られる。そのため、接客ユニット11へ排出された紙幣が再計数される。この再計数において重送が生じなければ、再計数後のステップS108の判別で一致という結果が得られ、正常終了することになる。
【0039】
(A−3)第1の実施形態の効果
第1の実施形態によれば、紙幣認識ユニットを通過しない搬送ルートで、一時保留部に保留されていた紙幣を接客ユニットに排出した場合において、保留枚数と排出枚数が不一致のときには、接客ユニットに排出された紙幣を再計数して排出(枚数)の正常、異常を確認するようにしたので、再計数により正常終了となることもあり、エラー処理に移行する割合を従来より低減することができる。その結果、紙幣入出金機を有する自動取引装置の稼働率を高めることができ、また、エラー処理のために顧客に足止めさせるようなことをほとんどなくすことができる。
【0040】
(B)第2の実施形態
次に、本発明による貨幣処理装置、方法及びプログラムを、自動取引装置(ATM)における紙幣入出金機に適用した第2の実施形態を、図面を参照しながら説明する。
【0041】
第2の実施形態に係る自動取引装置1Aも、そのハードウェア構成は、第1の実施形態と同様であり、図1、図2及び図4で表すことができる。第2の実施形態に係る自動取引装置1Aは、一時保留部13に一時保留されていた紙幣を接客ユニット11に排出(返却)する際の処理が、第1の実施形態とは異なっている。
【0042】
図6は、入金取引処理が選択されたときの第2の実施形態における処理を示すフローチャートであり、第1の実施形態に係る図5との同一ステップには同一符号を付して示している。
【0043】
第2の実施形態においても、主制御部20が、一時保留部13に保留されていた紙幣の枚数データ28bと、接客ユニット11へ排出された紙幣の枚数データ28cとが一致しているか否かを判別するまでの処理(ステップS101〜S105)は、第1の実施形態と同様であり、また、両枚数データ28b及び28cが一致している場合に、主制御部20が、紙幣入出金口3のシャッタを開き、投入紙幣を顧客に返却させる処理(ステップS106)を実行することも第1の実施形態と同様である。
【0044】
第2の実施形態の場合、一時保留部13に保留されていた紙幣の枚数データ28bと、接客ユニット11へ排出された紙幣の枚数データ28cとが一致しない場合には、主制御部20は、接客ユニット11へ排出された紙幣のうち、所定枚数(例えば、1枚)の紙幣を使用し、搬送路上や各構成要素に何らかのトラブル(例えば、ジャム)が発生していないかを確認する試し出し処理を実施する(ステップS150)。そして、主制御部20は、試し出し処理が正常に終了したか否かを判別する(ステップS151)。
【0045】
試し出し処理で確認が必要な経路(搬送路や構成要素)は、入金取引のために接客ユニット11に投入された紙幣が、取引の取消のために接客ユニット11に返却するために移動した経路の全経路であることが好ましい。そのため、試し出し処理における紙幣の搬送は、接客ユニット11から紙幣認識ユニット12経由での一時保留部13への搬送と、一時保留部13から紙幣認識ユニット12を経由しない接客ユニット11への搬送とになる。
【0046】
試し出し処理のために接客ユニット11から分離、繰出された紙幣が、試し出し処理で確認が必要な経路を通って接客ユニット11に戻り、不足分(枚数データ28bマイナス枚数データ28c)の他の紙幣が接客ユニット11に搬送されない場合でも、主制御部20は、試し出し処理が正常に終了したと捉える。一時保留部13に保留されていた紙幣を、一時保留部13から分離、繰出された際に重送が生じ、重送されたまま接客ユニット11に排出された際には、両枚数データ28b及び28cは不一致になるが、経路上にジャムがないことはこのような重送が生じたと捉えることができ、一時保留部13からの全ての紙幣の返却がなされたと捉えることができる。
【0047】
上記以外を、試し出し処理の異常終了と捉えるようにしても良い。
【0048】
また、上記以外ではあるが、次の場合も、試し出し処理の正常終了と捉えるようにしても良い。試し出し処理のために接客ユニット11から分離、繰出された紙幣が、試し出し処理で確認が必要な経路を通って接客ユニット11に戻ると共に、不足分(枚数データ28bマイナス枚数データ28c)の他の紙幣が接客ユニット11に搬送された場合には、主制御部20は、試し出し処理が正常に終了したと捉えるようにしても良い。この場合は、紙幣のジャム状態が、試し出し処理による紙幣の搬送動作を通じて解消し、ジャム状態の紙幣も試し出し処理の紙幣と同様に接客ユニット11に搬送された場合である。
【0049】
主制御部20は、試し出し処理が正常終了すると、紙幣入出金口3のシャッタを開き、投入紙幣を顧客に返却させる(ステップS106)。
【0050】
これに対して、試し出し処理が異常終了すると、主制御部20は、異常と判断し、係員などへの通知処理や自動取引装置の停止などのエラー処理に移行する(ステップS109)。
【0051】
第2の実施形態によれば、紙幣認識ユニットを通過しない搬送ルートで、一時保留部に保留されていた紙幣を接客ユニットに排出した場合において、保留枚数と排出枚数が不一致のときには、接客ユニットに排出された紙幣の一部を使用して試し出し処理を実行するようにしたので、紙幣が搬送路や構成要素に残留していないことを確認できて正常終了となることもあり、エラー処理に移行する割合を従来より低減することができる。その結果、紙幣入出金機を有する自動取引装置の稼働率を高めることができ、また、エラー処理のために顧客に足止めさせるようなことをほとんどなくすことができる。
【0052】
(C)他の実施形態
上記実施形態の説明においても、種々変形実施形態に言及したが、さらに、以下に例示するような変形実施形態を挙げることができる。
【0053】
上記各実施形態においては、一時保留部13に保留されていた紙幣の枚数データ28bが、接客ユニット11へ排出された紙幣の枚数データ28cより多くて一致しない場合と、一時保留部13に保留されていた紙幣の枚数データ28bが、接客ユニット11へ排出された紙幣の枚数データ28cより少なくて一致しない場合とを区別しないものを示したが、2種類の不一致態様で処理を変えるようにしても良い。例えば、一時保留部13に保留されていた紙幣の枚数データ28bが、接客ユニット11へ排出された紙幣の枚数データ28cより少なくて一致しない場合には、再計数処理や試し出し処理を行うことなく、正常と見なすようにしても良い。紙幣認識ユニット12を経由しても認識できない重送紙幣が一時保留部13に搬送されて保留され、一時保留部13から接客ユニット11への返却では重送が生じなかった場合に、一時保留部13に保留されていた紙幣の枚数データ28bが接客ユニット11へ排出された紙幣の枚数データ28cより少なくなるので、このような場合を正常と扱っても良いと思われる。
【0054】
上記各実施形態においては、一時保留部13に保留されていた紙幣の枚数データ28bと、接客ユニット11へ排出された紙幣の枚数データ28cとが一致しない場合には、再計数処理や試し出し処理を行うものを示したが、場合によっては、直ちに、エラー処理に移行するようにしても良い。例えば、枚数の差分が1枚の場合(若しくは総枚数の所定割合以内の場合)など、エラー処理回避条件を満たす場合に再計数処理や試し出し処理を行い、枚数の差分が2枚以上の場合(若しくは総枚数の所定割合を超えている場合)など、エラー処理回避条件を満たさない場合には、直ちに、エラー処理に移行するようにしても良い。
【0055】
上記各実施形態においては、再計数処理及び試し出し処理の一方を実行するものを示したが、再計数処理及び試し出し処理を併用するようにしても良い。例えば、一時保留部13に保留されていた紙幣の枚数データ28bと接客ユニット11へ排出された紙幣の枚数データ28cとの差分が1枚のときに、試し出し処理を通じて、エラー処理への移行を回避しようとし、差分が2枚以上のときに、再計数処理を通じて、エラー処理への移行を回避しようとしても良い。また例えば、再計数処理を実行しても差分が残っている場合に試し出し処理を実行するようにしても良い。再計数処理での搬送経路が、試し出し処理での搬送経路よりかなり短い場合に、このような再計数処理、試し出し処理の順で処理するようにしても良い。
【0056】
上記各実施形態においては、接客ユニット22に投入された紙幣を紙幣認識ユニット12経由で一時保留部13で搬送する際に計数した紙幣枚数のデータを、一時保留部13に保留されていた紙幣の枚数データ28bとするものを示したが、一時保留部13における分離、繰出し機構に関連して設けられている光電センサの検知信号を計数し、その計数データを、一時保留部13に保留されていた紙幣の枚数データ28bとするようにしても良い。このようにした場合には、一時保留部13からの分離、繰出しで重送した紙幣がその重送したまま接客ユニット11に排出された場合には、両枚数データ28及び28cは一致したものとなり、この点で、エラー処理への移行を回避することができる。
【0057】
また、紙幣認識ユニット12経由で一時保留部13に搬送する際に計数した紙幣枚数のデータ28bと、一時保留部13から分離、繰出し時に計数した紙幣枚数のデータ28b−2とを併用するようにしても良い。例えば、接客ユニット11へ排出(返却)された紙幣の枚数データ28cとの比較は、データ28bで行い、差分がある場合に、データ28cと28b−2とを比較し、ここで不一致の場合に始めて、再計数処理や試し出し処理を行うようにしても良い。
【0058】
上記各実施形態においては、一時保留部13が1個のものを示したが、複数の一時保留部がある自動取引装置であっても本発明を適用することができる。例えば、金種別の一時保留部を備えている場合であっても、各金種別の一時保留部から接客ユニットの搬送毎に、枚数の一致不一致を確認して、上記各実施形態と同様な処理を実行すれば良い。
【0059】
上記各実施形態においては、紙幣を投入させる入金口と、紙幣を排出させる出金口とが同じものを示したが、これらが異なるものであっても本発明の技術思想を適用することができる。
【0060】
上記各実施形態の説明では、一時保留部13を利用する取引が入金取引である場合を説明したが、取引の種類は入金取引に限定されないことは勿論である。例えば、現金入金の振込取引が途中で取り消されたために入金紙幣を返却する場合にも本発明の技術思想を適用することができ、また例えば、両替取引が途中で取り消されたために入金紙幣を返却する場合にも本発明の技術思想を適用することができる。
【0061】
上記各実施形態では、紙幣の処理で説明したが、硬貨の入金、入金取消の場合にも、同様に処理することができる。
【0062】
上記各実施形態では、紙幣及び硬貨を取り扱う自動取引装置を示したが、紙幣だけを取り扱う自動取引装置に対しても、硬貨だけを取り扱う自動取引装置に対しても、本発明を適用することができる。
【0063】
本発明に係る貨幣処理装置が取り扱う貨幣は紙幣や硬貨に限定されず、小切手、証券、証書、チケットなどの他の貨幣であっても良い。また、本発明に係る貨幣処理装置は、金融機関に関係する装置に限定されず、貨幣の取込みを伴う装置であれば良く、例えば、駅等に設置されている切符の自動販売機や、定期券の新規、継続発行装置、コンビニエンスストアやスーパーマーケット等で利用される釣銭処理装置等であっても良い。また、顧客や利用者が操作を行う装置に限定されず、テラーや店員や駅員などの業務が行うものが取り扱う装置に対し、本発明の技術思想を適用することができる。
【符号の説明】
【0064】
1、1A…自動取引装置、3…紙幣入出金口、10…紙幣処理部、11…接客ユニット、11a…排出紙幣検知センサ、12…紙幣認識ユニット、13…一時保留部、15a〜15d…紙幣カセット、20…主制御部、28…メモリ部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
投入された貨幣を受け入れる貨幣入金口と、貨幣を認識する貨幣認識手段と、投入貨幣を一時的に保留する一時保留手段と、上記一時保留手段に保留されていた貨幣が返却される貨幣出金口と、貨幣を搬送させる搬送路とを有し、上記貨幣入金口に投入された貨幣を上記貨幣認識手段経由で上記一時保留手段に搬送させると共に、上記一時保留手段に保留されていた貨幣を、上記貨幣認識手段を経由させないで上記貨幣出金口に返却させる貨幣処理装置において、
上記一時保留手段に保留されていた貨幣の枚数である保留枚数を計数する保留枚数計数手段と、
上記貨幣出金口に返却された貨幣の枚数である返却枚数を計数する返却枚数計数手段と、
上記保留枚数と上記返却枚数とを比較し、これら枚数が所定の不一致関係にあるときに、上記貨幣出金口への返却が正常になされたか否かを確認する処理を実行し、上記貨幣出金口への返却が正常になされたと確認できた場合に貨幣の返却を正常終了させ、上記貨幣出金口への返却が正常になされたと確認できない場合に異常と判断するエラー処理回避手段と
を有することを特徴とする貨幣処理装置。
【請求項2】
上記エラー処理回避手段が実行する確認処理が、上記貨幣出金口へ返却された貨幣の枚数を再計数させ、再計数された返却枚数が上記保留枚数と一致したことを、上記貨幣出金口への返却が正常になされたと捉える処理であることを特徴とする請求項1に記載の貨幣処理装置。
【請求項3】
上記貨幣出金口へ返却された貨幣を上記貨幣認識手段を通過させることにより、再計数された返却枚数を得ることを特徴とする請求項2に記載の貨幣処理装置。
【請求項4】
上記エラー処理回避手段が実行する確認処理が、上記貨幣出金口へ返却された所定枚数の貨幣を使用し、上記貨幣入金口に投入された貨幣を上記貨幣認識手段経由で上記一時保留手段に搬送させる経路と、上記一時保留手段に保留されていた貨幣を上記貨幣認識手段を経由させないで上記貨幣出金口に返却させる経路とに貨幣が残留しているか否かを確認し、貨幣が残留していないことを、上記貨幣入出金口への返却が正常になされたと捉える処理であることを特徴とする請求項1に記載の貨幣処理装置。
【請求項5】
投入された貨幣を受け入れる貨幣入金口と、貨幣を認識する貨幣認識手段と、投入貨幣を一時的に保留する一時保留手段と、上記一時保留手段に保留されていた貨幣が返却される貨幣出金口と、貨幣を搬送させる搬送路とを有し、上記貨幣入金口に投入された貨幣を上記貨幣認識手段経由で上記一時保留手段に搬送させると共に、上記一時保留手段に保留されていた貨幣を、上記貨幣認識手段を経由させないで上記貨幣出金口に返却させる貨幣処理装置の貨幣処理方法において、
保留枚数計数手段は、上記一時保留手段に保留されていた貨幣の枚数である保留枚数を計数し、
返却枚数計数手段は、上記貨幣出金口に返却された貨幣の枚数である返却枚数を計数し、
エラー処理回避手段は、上記保留枚数と上記返却枚数とを比較し、これら枚数が所定の不一致関係にあるときに、上記貨幣出金口への返却が正常になされたか否かを確認する処理を実行し、上記貨幣出金口への返却が正常になされたと確認できた場合に貨幣の返却を正常終了させ、上記貨幣出金口への返却が正常になされたと確認できない場合に異常と判断する
ことを特徴とする貨幣処理方法。
【請求項6】
投入された貨幣を受け入れる貨幣入金口と、貨幣を認識する貨幣認識手段と、投入貨幣を一時的に保留する一時保留手段と、上記一時保留手段に保留されていた貨幣が返却される貨幣出金口と、貨幣を搬送させる搬送路とを有し、上記貨幣入金口に投入された貨幣を上記貨幣認識手段経由で上記一時保留手段に搬送させると共に、上記一時保留手段に保留されていた貨幣を、上記貨幣認識手段を経由させないで上記貨幣出金口に返却させる貨幣処理装置に搭載されるコンピュータを、
上記一時保留手段に保留されていた貨幣の枚数である保留枚数を計数する保留枚数計数手段と、
上記貨幣出金口に返却された貨幣の枚数である返却枚数を計数する返却枚数計数手段と、
上記保留枚数と上記返却枚数とを比較し、これら枚数が所定の不一致関係にあるときに、上記貨幣出金口への返却が正常になされたか否かを確認する処理を実行させ、上記貨幣出金口への返却が正常になされたと確認できた場合に貨幣の返却を正常終了させ、上記貨幣出金口への返却が正常になされたと確認できない場合に異常と判断するエラー処理回避手段と
して機能させることを特徴とする貨幣処理プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−3963(P2013−3963A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−136334(P2011−136334)
【出願日】平成23年6月20日(2011.6.20)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【Fターム(参考)】