説明

貯湯式給湯機

【課題】湯切れを効率よく防止し易い貯湯式給湯機を得ること。
【解決手段】ヒートポンプユニットHで水を湯に沸き上げて貯湯タンク20に貯留する沸上運転と、貯湯タンクに貯留した湯を給湯管路40を介して所定の給湯先に供給する給湯運転とを制御装置60が制御する貯湯式給湯機100を構成するにあたり、制御装置は、貯湯タンク内の貯湯熱量と給湯先での単位時間当たりの給湯使用熱量とを基に、湯切れが起こるまでの残り時間を給湯運転中に予測し、該残り時間が所定時間になったときには、給湯先への給湯流量を給湯流量調整器45により調整すると共にヒートポンプユニットで水を湯に沸き上げる湯切れ防止運転を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貯湯式給湯機に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒートポンプやヒータ等の熱源機で水を加熱して得た湯を貯湯タンクに貯留し、該貯湯タンクから給湯管路を介して所望箇所に給湯する貯湯式給湯機では、一般的に、1日のうちの所定の時間帯に使用される湯量を想定して貯湯タンクの容量が設計されているものが多い。所定の時間帯内に使用される湯量がこの貯湯タンクの設計容量を超えてしまうと、貯湯タンク内に湯が残存しない状態(いわゆる「湯切れ」)になる。湯切れになると、水を湯に沸き上げる沸上運転を行って所定量の湯が沸き上がるまでの間、所望温度の給湯をユーザが受けられなくなることがある。ユーザの利便性を高めるために、湯切れを防止するための工夫が種々なされている。
【0003】
例えば特許文献1には、貯湯タンク内の残湯量を検知する残湯量検知手段と、貯湯タンク内に貯湯された湯との熱交換により浴槽の湯水を加熱する浴槽湯水加熱手段とを備え、貯湯タンク内の湯量が所定湯量以下であり、かつ浴槽湯水加熱手段が動作しているときに、湯切れが生じる虞があるとして沸上運転を行う貯湯式給湯機が記載されている。また、特許文献2には、貯湯タンク内の残湯量を検出する残湯温度検出器と、浴槽へお湯を供給する風呂湯張り手段とを備え、貯湯タンク内の残湯量と湯張りに必要な風呂湯量との熱量の比較をし、貯湯タンク内の湯量では熱量が不足すると判断されたときには湯切れが生じる虞があるとして沸上運転を行う貯湯式給湯機が記載されている。
【0004】
【特許文献1】特開2004−245459号公報
【特許文献2】特開2006−170553号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された貯湯式給湯機では、貯湯タンク内の湯量が所定湯量以下であることと浴槽湯水加熱手段が動作していることの2つの条件が成立したときにのみ、湯切れが生じる虞があると判断するので、浴槽以外の給湯先で湯を連続的に大量消費したときに湯切れを起こすことがある。また、浴槽湯水加熱手段を動作させる時間が短時間でよいとき、すなわち沸上運転をしなくても貯湯タンク内の現在の湯でまかなえるときでも、貯湯タンク内の湯量が所定湯量以下であれば沸上運転を開始してしまうので、運転効率が不必要に低下してしまうことがある。
【0006】
また、特許文献2に記載された貯湯式給湯機では、貯湯タンク内の湯の熱量が風呂の湯張りに必要な熱量よりも小さいと判断すると、たとえユーザが湯張りを希望していなくても湯切れに備えて沸上運転を開始してしまうので、運転効率が不必要に低下してしまうことがある。
【0007】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、湯切れを効率よく防止し易い貯湯式給湯機を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成する本発明の貯湯式給湯機は、熱源機で水を湯に沸き上げて貯湯タンクに貯留する沸上運転と、貯湯タンクに貯留した湯を給湯管路を介して所定の給湯先に供給する給湯運転とを制御装置が制御する貯湯式給湯機であって、貯湯タンク内の貯湯熱量に関わる情報を収集する貯湯熱量情報収集部と、給湯先での単位時間当たりの給湯使用熱量に関わる情報を収集する使用熱量情報収集部と、給湯管路に設けられて給湯先への給湯流量を調整する給湯流量調整器とを備え、制御装置は、貯湯熱量情報収集部が収集した情報を用いて算出される貯湯熱量と、使用熱量情報収集部が収集した情報を用いて算出される給湯使用熱量とを基に湯切れが起こるまでの残り時間を給湯運転中に予測し、該残り時間が所定時間になったときには、給湯先への給湯流量を給湯流量調整器により調整すると共に熱源機で水を湯に沸き上げる湯切れ防止運転を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の貯湯式給湯機では、貯湯タンク内の貯湯熱量と給湯先での給湯使用熱量とを基に湯切れが起こるまでの残り時間を予測し、該残り時間が所定時間になったときに湯切れ防止運転を行うので、上記の残り時間を予測せずに貯湯タンク内の湯量の多寡のみで湯切れ防止運転を行う場合と比較して、不必要な沸上げを行うことなく湯切れを防止することが容易である。ユーザの給湯需要に応じて湯切れ防止運転を行うので、本発明の貯湯式給湯機では湯切れを効率よく防止し易い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の貯湯式給湯機の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、本発明は下記の実施の形態に限定されるものではない。
【0011】
実施の形態1.
図1は、本発明の貯湯式給湯機の一例を示す概略図である。同図に示す貯湯式給湯機100は、市水などの低温水を熱源機で湯に沸き上げて給湯先に給湯する機能を有するものであり、ヒートポンプユニットH、沸上循環管路10、貯湯タンク20、給水管路30、給湯管路40、沸上熱量情報収集部DG1、貯湯熱量情報収集部DG2、使用熱量情報収集部DG3、および制御装置60を備えている。以下、貯湯式給湯機100の各構成要素について説明する。
【0012】
上記のヒートポンプユニットHは、水を湯に沸き上げる熱源機である。ヒートポンプユニットHは、図示しない熱交換器を有しており、貯湯タンク20の下部から沸上循環管路10に流入した水を熱交換器により湯に沸き上げて貯湯タンク20に戻す。ヒートポンプユニットHは、二酸化炭素あるいはフロンなどの冷媒を用いて運転を行う。
【0013】
沸上循環管路10は、貯湯タンク20の下部から水を取水して貯湯タンク20の上部から該貯湯タンク20に沸き上げた湯を戻す管路であり、往き管11、戻り管12、循環ポンプP、水流量検出器13、水温度検出器14、湯温度検出器15を含んでいる。往き管11は貯湯タンク20の下部とヒートポンプユニットH内の図示しない熱交換器とを繋ぎ、戻り管12は熱交換器と貯湯タンク20の上部とを繋ぐ。往き管11の途中に循環ポンプPが設けられており、該循環ポンプPの下流側に水流量検出器13と水温度検出器14とがこの順番で設けられている。また、戻り管12の途中に湯温度検出器15が設けられている。
【0014】
水流量検出器13は往き管11内を流れる水の流量を検出し、水温度検出器14は往き管11内を流れる水の温度を検出し、湯温度検出器15は戻り管12内を流れる湯の温度を検出する。これら水流量検出器13、水温度検出器14、および湯温度検出器15の各々は、ヒートポンプユニットHでの単位時間当たりの沸上熱量に関わる情報を収集する沸上熱量情報収集部DG1を構成し、制御装置60と有線または無線により接続されて、その検出結果を制御装置60に送信する。
【0015】
貯湯タンク20は、給水管路30から供給される水を貯留すると共にヒートポンプユニットHで沸き上げられた湯を貯留するものであり、常に満水状態に保たれる。貯湯式給湯機100の運転時には、貯湯タンク20内に温度成層が形成される。この貯湯タンク20には、該貯湯タンク20の高さ方向に分散して複数の貯湯温度センサ20a、20b、20c、20dが設けられている。各貯湯温度センサ20a、20b、20c、20dの取り付け高さは互いに異なる。個々の貯湯温度センサ20a、20b、20c、20dは、貯湯タンク20内の貯湯熱量に関わる情報を収集する貯湯熱量情報収集部DG2を構成し、制御装置60に有線または無線により接続されて、その検出結果を制御装置60に送信する。
【0016】
給水管路30は市水などの低温水を貯湯タンク20および後述の三方弁41に供給する管路であり、第1給水管路部30a、第2給水管路部30b、第3給水管路部30c、水圧を所定値以下にする減圧弁31、および水温度検出器32を含んでいる。第1給水管路部30aは水道などの水源(図示せず)と減圧弁31とを繋ぎ、第2給水管路部30bは減圧弁31と貯湯タンク20の下部とを繋ぐ。第3給水管路部30cは第2給水管路部30bから分岐して該第2給水管路部30bと三方弁41とを繋ぐ。水温度検出器32は、三方弁41に水を供給する第3給水管路部30cの途中に設けられており、第3給水管路部30c内を流れる水の温度を検出する。水温度検出器32は、制御装置60に有線または無線により接続されており、その検出結果を制御装置60に送信する。
【0017】
給湯管路40は、貯湯タンク20に貯留された湯を所定の給湯先に供給する管路であり、第1給湯管路部40a、第2給湯管路部40b、三方弁41、湯温度検出器42、給湯温度検出器43、給湯流量検出器44、および給湯流量調整器45を含んでいる。第1給湯管路40aは貯湯タンク20の上部と三方弁41とを繋ぎ、第2給湯管路40bは三方弁41と所定の給湯先とを繋ぐ。
【0018】
三方弁41は、第1給湯管路部40a内の湯および第3給水管路部30c内の水それぞれの流量を調整して第2給湯管路部40bに流すための弁であり、上流側にある2つの流入口に第1給湯管路部40aと第3給水管路部30c内とが接続され、下流側にある流出口に第2給湯管路部40bが接続されている。三方弁41は、制御装置60と有線または無線により接続されており、給湯運転の際に、制御装置60により動作制御される。
【0019】
湯温度検出器42は、第1給湯管路部40aでの三方弁41の上流側に設けられており、三方弁41に流入する湯の温度を検出する。湯温度検出器42は、制御装置60に有線または無線により接続されており、その検出結果を制御装置60に送信する。
【0020】
第2給湯管路部40bの途中には、給湯温度検出器43と、給湯流量検出器44と、給湯流量調整器45とが当該第2給湯管路部40bでの上流側からこの順番で設けられている。給湯温度検出器43は第2給湯管路部40bを流れる湯水の温度を検出し、給湯流量検出器44は第2給湯管路部40b内を流れる湯水の流量を検出し、給湯流量調整器45は第2給湯管路部40b内を流れる湯水の流量を調整する。
【0021】
給湯温度検出器43と給湯流量検出器44とは、給湯先での単位時間当たりの給湯使用熱量に関わる情報を収集する使用熱量情報収集部DG3を構成し、制御装置60と有線または無線により接続されて、その検出結果を制御装置60に送信する。また、給湯流量調整器45は、制御装置60と有線または無線により接続されて、制御装置60により動作制御される。給湯温度検出器43により検出される湯水の温度は給湯先での給湯温度に実質的に相当し、給湯流量検出器44により検出される湯水の流量は給湯先での給湯流量に相当する。給湯流量調整器45は給湯先での給湯流量を調整する。
【0022】
制御装置60は、装置本体61とリモートコントローラ62とを有しており、装置本体61は、制御部61aと記憶部61bとを含んでいる。制御部61aは、記憶部61bに格納された情報やリモートコントローラ62からユーザにより入力された情報ないし指令に基づいて、ヒートポンプユニットHで水を湯に沸き上げて貯湯タンク20に貯留する沸上運転と、貯湯タンク20に貯留した湯を給湯管路40を介して所定の給湯先に供給する給湯運転と、後述する湯切れ防止運転とを制御する。
【0023】
上記の記憶部61bに格納される情報としては、例えば各貯湯温度センサ20a〜20dからの検出結果の送信周期や、各貯湯温度センサ20a〜20dの各取り付け高さと貯湯タンク20での貯湯量との対応関係についての情報や、湯切れ防止運転開始の契機となる条件値などが挙げられる。当該情報は、例えば貯湯式給湯機100のメーカにより予め記憶部61bに格納される。
【0024】
一方、リモートコントローラ62から入力される情報としては、例えば沸上開始時刻、沸上温度、沸上湯量、給湯温度などを指定する情報が挙げられる。また、リモートコントローラ62から入力された指令としては、例えば給湯温度変更、沸上運転中止、沸上湯量変更などを指示する指令が挙げられる。
【0025】
上述した構成を有する貯湯式給湯機100は、制御部61aの制御の下に沸上運転、給湯運転、および湯切れ防止運転を行う。以下、これら沸上運転、給湯運転、および湯切れ防止運転の各々について説明する。
【0026】
沸上運転は、上述した沸上げ開始時刻になると開始される。制御部61aによる制御の下にヒートポンプユニットHおよび循環ポンプPが起動されて貯湯タンク20内の水が沸上循環管路10に流入し、該水がヒートポンプユニットHで所定の沸上温度まで沸上げられて湯となり、該湯が貯湯タンク20の上部から貯湯タンク20に戻される。沸上運転の開始から時間が経過するにつれて、貯湯タンク20の上部に戻された湯により該貯湯タンク20内の頂部側から底部側に向かって湯層が拡大する。沸上運転中や湯切れ防止運転中は、貯湯タンク20内での湯温が各貯湯温度センサ20a〜20dにより例えば周期的に検出され、その検出結果が制御装置60に送信される。
【0027】
制御部61aは、貯湯熱量情報収集部DG2を構成する各貯湯温度センサ20a〜20dの検出結果と、記憶部61bに格納された各貯湯温度センサ20a〜20dの各取り付け高さと貯湯タンク20での貯湯量との対応関係についての情報などを用いて、貯湯タンク20での貯湯熱量を例えば周期的に算出する。給湯運転時および湯切れ防止運転時の各々においてのみ当該貯湯熱量の算出を行うように貯湯式給湯機100を構成することもできるし、沸上運転時、給湯運転時、および湯切れ防止運転時の各々において当該貯湯熱量の算出を行うように貯湯式給湯機100を構成することもできる。
【0028】
上記の貯湯熱量から算出される貯湯量がユーザにより指定された沸上湯量に達したと制御部61aが判断したとき、あるいは貯湯温度センサ20a〜20dのうちの所定の貯湯温度センサの検出結果が条件値以上になったときに、制御部61aによる制御の下にヒートポンプユニットHおよび循環ポンプPが停止されて沸上運転が終了する。なお、上記の条件値は、貯湯式給湯機100のメーカにより予め記憶部61bに格納される。
【0029】
給湯運転は、第2給湯管路部40bに接続されている給湯栓が開にされると開始される。制御部61aは、水温度検出器32、湯温度検出器42、および給湯温度検出器43それぞれの検出結果を用いて、給湯先での給湯温度がユーザの設定温度となるように三方弁41の動作を制御する。
【0030】
給湯運転の開始から所定時間が経過すると、制御部61aは、上述した給湯先での単位時間当たりの給湯使用熱量と貯湯熱量とを例えば周期的に算出し、これら貯湯熱量と給湯使用熱量とを基に湯切れが起こるまでの残り時間(以下、「湯切れ時間」という)を予測して、該湯切れ時間が前述の条件、すなわち湯切れ防止運転開始の契機となる条件を満たすか否かを判断する。なお、給湯運転の開始から上記給湯使用熱量または貯湯熱量の算出を行うまでの時間は、貯湯式給湯機100のメーカにより予め設定されて、その情報が記憶部61bに格納される。また、給湯先での単位時間当たりの給湯使用熱量は、使用熱量情報収集部DG3を構成する給湯温度検出器43および給湯流量検出器44それぞれの検出結果を用いて算出される。
【0031】
湯切れ防止運転は、上記の条件が満たされたと制御部61aが判断したときに開始される。例えば、予測される湯切れ時間が最大許容値未満のときに上記の条件が成立したものと制御部61aが判断して、湯切れ防止運転が開始される。湯切れ防止運転が開始されると、制御部61aによる制御の下に給湯流量調整器45が動作制御されて、給湯先での給湯流量が調整される。具体的には、給湯流量が低減される。また、ヒートポンプユニットHおよび循環ポンプPが起動されて、沸上運転が開始される。
【0032】
給湯先での給湯流量の調整は、当該給湯流量が予め固定された低減量ないし低減率となるように調整することもできるし、ヒートポンプユニットHでの沸上熱量に応じて適宜調整することもできる。図1に示した貯湯式給湯機100は、前述した沸上熱量情報収集部DG1を有しているので、沸上熱量情報収集部DG1を構成する水流量検出器13、水温度検出器14、および湯温度検出器15それぞれの検出結果を用いてヒートポンプユニットHでの沸上熱量を算出し、給湯先での給湯使用熱量が当該沸上熱量程度以下となるように給湯先での給湯流量を調整する。記憶部61bには、給湯先での給湯温度および給湯流量の各々と上記沸上熱量との対応関係を表す情報が貯湯式給湯機100のメーカにより予め格納される。
【0033】
制御部61aは、湯切れ防止運転中も湯切れ時間の予測および該予測される湯切れ時間が前述の条件を満たすか否かの判断を例えば周期的に行い、給湯先への給湯が停止されたと判断されたとき、または予測される湯切れ時間が上述の条件を満たさなくなったときに、湯切れ防止運転を終了する。なお、給湯先への給湯が停止されたとの判断は、例えば給湯流量検出器44による検出結果がゼロになった時点で行ってもよいし、給湯流量検出器44による検出結果が予め定められた時間以上継続してゼロになった時点で行ってもよい。上記の時間は、例えば貯湯式給湯機100のメーカにより選定されて、記憶部61bに予め格納される。
【0034】
このように構成された貯湯式給湯機100では、制御部61aが上述の湯切れ時間を予測し、該湯切れ時間が所定条件を満たしたときに初めて湯切れ防止運転を行うので、湯切れ時間を予測せずに貯湯タンク20内の湯量の多寡のみで湯切れ防止運転を行う場合と比較して、不必要な沸上運転を行うことなく湯切れを防止することが容易である。ユーザの給湯需要に応じて湯切れ防止運転を行うので、貯湯式給湯機100では湯切れを効率よく防止し易い。
【0035】
湯切れを効率よく防止し易くなる結果として、貯湯式給湯機100では、省エネルギー化を図ることができると共に、効率よく沸上運転を行うことで不必要な沸上運転の回数を減らすことができるために製品の長寿命化を図ることができる。また、ユーザの給湯需要に応じて沸上運転を行うことにより、ユーザの給湯需要が多い場合に備えて貯湯タンク20を大型化して湯を貯留する必要がないため、製品の小型化を図ることができる。
【0036】
上述の技術的効果を奏する貯湯式給湯機100での制御部61aによる動作制御および処理、特に湯切れ防止運転に関わる動作制御および処理は、種々の手順の下に行うことができる。以下、図1で用いた参照符号を適宜引用しつつ図2を参照して、湯切れ防止のために制御部61aが行う動作制御および処理の具体例を説明する。
【0037】
図2は、図1に示した貯湯式給湯機で湯切れを防止するために制御部が行う動作制御および処理の一例を概略的に示すフローチャートである。図2に示す例では、貯湯式給湯機100での湯切れを防止するために制御部61a(図1参照)がステップS101〜S110の各処理を行う。
【0038】
最初に行われるステップS101は、給湯運転の開始から所定時間経過後に行われるステップであり、当該ステップS101では、貯湯熱量情報収集部DG2(図1参照)から得た情報を基に貯湯タンク20内の貯湯熱量Rを算出する。次いで行われるステップS102では、使用熱量情報収集部DG3(図1参照)から得た情報を基に給湯先での単位時間当たりの給湯使用熱量Vsを算出する。ステップS103では、ステップS101で算出した貯湯熱量RをステップS102で算出した給湯使用熱量Vsで除算することで、湯切れが起こるまでの残り時間である湯切れ時間Tを算出する。
【0039】
この後ステップS104に進んで、記憶部61b(図1参照)に格納されている情報である条件値T0、すなわち湯切れ時間の最大許容値よりもステップS103で算出した湯切れ時間Tが小さい(T<T0)か否かを判断する。ステップS104で湯切れ時間Tが条件値T0よりも小さい(T<T0)、すなわち湯切れ時間Tが条件値T0未満であると判断したときにはステップS105に進み、貯湯式給湯機100が沸上運転中であるか否かを判断する。ステップS104で湯切れ時間Tが条件値T0未満でない(T≧T0)、すなわち、湯切れ時間Tが条件値T0以上であると判断したときにはステップS109に進む。
【0040】
ステップS105で貯湯式給湯機100が沸上運転中であると判断したときには、ステップS106に進み、沸上熱量情報収集部DG1(図1参照)から得た情報を基にヒートポンプユニットHでの単位時間当たりの沸上熱量Vbを算出する。ステップS105で貯湯式給湯機100が沸上運転中でない判断したときには、ステップS107へ進み、貯湯式給湯機100が沸上運転を開始するように動作制御を行う。ステップS107で沸上運転を開始すると、ステップS106へ進む。
【0041】
ステップS106で沸上熱量Vbを算出するとステップS108に進み、給湯先での給湯使用熱量Vsが沸上熱量Vb程度以下となるように給湯流量調整器45(図1参照)の動作制御を行って、給湯先での給湯流量を調整する。ステップS108で給湯流量を調整するとステップS109に進み、貯湯式給湯機100が給湯運転中であるか否かを判断する。
【0042】
ステップS109で貯湯式給湯機100が給湯運転中であると判断したときには、ステップS101まで戻り、上記手順を繰り返す。ステップS109で貯湯式給湯機100が給湯運転中でないと判断したときには、ステップS110に進み、給湯流量調整器45(図1参照)の動作制御を終了することにより、給湯先での給湯流量の調整を終了する。具体的には、給湯流量調整器45の弁開度を全開状態あるいは全閉状態にする。ステップS110で給湯先での給湯流量の調整を終了すると、湯切れを防止するための動作制御および処理を終了する。
【0043】
実施の形態2.
本発明の貯湯式給湯機のうちで熱源機としてヒートポンプユニットを備えたものでは、水流量検出器を含ませることなく沸上熱量情報収集部を構成することができる。このような沸上熱量情報収集部を備えた貯湯式給湯機の具体例としては、例えば図1に示した貯湯式給湯機100での水流量検出器13を省略した構成のものが挙げられる。
【0044】
当該貯湯式給湯機での沸上熱量情報収集部は、例えば水温度検出器14、湯温度検出器15、および循環ポンプP(図1参照)を含んで構成される。また、制御装置は、湯切れ防止運転を行っている間、循環ポンプPの流量制御に関わる入力値(例えば循環ポンプPの回転数や出力値など)を用いて往き管11(図1参照)内を流れる水の流量を算出し、該流量と水温度検出器14および湯温度検出器15それぞれの検出結果とを用いてヒートポンプユニットH(図1参照)での単位時間当たりの沸上熱量を求める。循環ポンプPの入力値を用いて往き管11での水の流量を算出することで、水流量検出器13(図1参照)が不要となるため、図1に示す貯湯式給湯機100と比較して検出器の点数を減らすことができる。
【0045】
実施の形態3.
本発明の貯湯式給湯機には、湯切れ防止運転を行うか否かを判断する際の条件をユーザの給湯需要に応じて制御装置が自ら更新する機能を付加することもできる。当該機能を付加した貯湯式給湯機の構成は、制御装置の機能を除き、例えば実施の形態1または実施の形態2で説明した貯湯式給湯機の構成と同様にすることができるので、ここではその図示を省略する。
【0046】
上記の機能が付加された貯湯式給湯機では、給湯運転が行われるたびに給湯先での総給湯使用熱量を制御装置の制御部が記憶部に記憶させ、所定の期間毎、例えば1週間毎に上記総給湯使用熱量の最大値を求める。給湯先での総給湯使用熱量は、例えば使用熱量情報収集部DG3により収集された情報を用いて上記の制御部が算出する。制御部には、必要に応じて計時機能が予め付与される。上記の最大値が更新されると、1回の給湯運転で湯切れが生じてしまわないように、湯切れ防止運転開始の契機となる条件、例えば湯切れ時間の最大許容値を上記最大値に応じて制御部が変更する。
【0047】
図3は、上述の機能が付加された貯湯式給湯機で湯切れを防止するために制御部が行う動作制御および処理の一例を概略的に示すフローチャートである。同図に示す例では、図2に示したステップS103とステップS104との間で新たなステップS103a、S103bの各々を行う点、および図2に示したステップS110の後に新たなステップS110aを行う点をそれぞれ除き、図2に示した各ステップを行う。図3に示した手順のうちで図2に示した手順と共通するものについては、図2で用いた参照符号と同じ参照符号を付してその説明を省略し、異なる点のみを下記に記載する。
【0048】
制御部は、ステップS103で湯切れ時間Tを算出すると記憶部から上記総給湯使用熱量の最大値Vmaxを読み出して、湯切れ防止運転開始の契機となる条件値T0、例えば湯切れ時間の最大許容値を変更する必要があるか否かを判断する。例えば、貯湯熱量Rよりも最大値Vmaxの方が大きいときには上記の条件値T0を変更する必要があると判断し、貯湯熱量Rが最大値Vmax以上であるときには上記の条件値T0を変更する必要がないと判断する。
【0049】
ステップS103aで条件値T0を変更する必要があると判断するとステップS103bに進んで、1回の給湯運転で湯切れが生じてしまわないように条件値T0を変更する。具体的には、条件値T0の数値を増加させる。どの程度増加させるかは、貯湯式給湯機のメーカにより予め設定される。ステップS103bで条件値T0を変更すると、ステップS104へ進む。また、前述のステップS103aで条件値T0を変更する必要がないと判断すると、ステップS104へ進む。
【0050】
一方、ステップS110で給湯流量の調整を終了すると、ステップS110aに進んで総給湯使用熱量を算出し、該総給湯使用熱量の情報を記憶部に格納してから処理を終了する。
【0051】
以上、本発明の貯湯式給湯機について実施の形態を挙げて説明したが、前述のように、本発明は上述の形態に限定されるものではない。例えば、図1では、貯湯タンク20に貯留した湯を所定の給湯先に送る貯湯式給湯機100を挙げているが、本発明の貯湯式給湯機は、熱源機で沸き上げた湯を一旦貯留して、所定の箇所に該貯留された湯の熱を供給するものであればよく、その構成は適宜変更可能である。例えば熱源機としてヒータを用いることもでき、この場合には当該ヒータが貯湯タンク内に配置される。また、浴槽内の浴水を取水し、貯湯タンクに貯留された湯の熱で当該浴水を加熱して浴槽に戻す追焚き機能付き貯湯式給湯機であってもよい。
【0052】
貯湯熱量情報収集部、使用熱量情報収集部、および沸上熱量情報収集部は、それぞれ、所望の熱量の算出に必要な情報が得られるものであればよく、その構成は適宜変更可能である。また、実施の形態3で説明した総給湯使用熱量の最大値をユーザがリモートコントローラから設定できるように貯湯式給湯機を構成することも可能である。図3に示した貯湯熱量R、給湯使用熱量Vs、湯切れ時間T、沸上熱量Vbなどをユーザが容易に確認することができるように、各数値を表示することができる表示部を制御装置に設けてもよい。本発明の貯湯式給湯機については、上述した以外にも種々の変形、修飾、組合せ等が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明の貯湯式給湯機は、家庭用または業務用の貯湯式給湯機として好適である。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の貯湯式給湯機の一例を示す概略図である。
【図2】図1に示した貯湯式給湯機で湯切れを防止するために制御部が行う動作制御および処理の一例を概略的に示すフローチャートである。
【図3】本発明の貯湯式給湯機で湯切れを防止するために制御部が行う動作制御および処理の他の例を概略的に示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0055】
10 沸上循環管路
11 往き管
12 戻り管
13 水流量検出器
14 水温度検出器
15 湯温度検出器
20 貯湯タンク
20a, 20b, 20c, 20d 貯湯温度センサ
30 給水管路
30a 第1給水管路部
30b 第2給水管路部
30c 第3給水管路部
31 減圧弁
32 水温度検出器
40 給湯管路
40a 第1給湯管路部
40b 第2給湯管路部
41 三方弁
42 湯温度検出器
43 給湯温度検出器
44 給湯流量検出器
45 給湯流量調整器
60 制御装置
61 装置本体
61a 制御部
61b 記憶部
62 リモートコントローラ
100 貯湯式給湯機
H ヒートポンプユニット
P 循環ポンプ
DG1 沸上熱量情報収集部
DG2 貯湯熱量情報収集部
DG3 使用熱量情報収集部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱源機で水を湯に沸き上げて貯湯タンクに貯留する沸上運転と、前記貯湯タンクに貯留した湯を給湯管路を介して所定の給湯先に供給する給湯運転とを制御装置が制御する貯湯式給湯機であって、
前記貯湯タンク内の貯湯熱量に関わる情報を収集する貯湯熱量情報収集部と、
前記給湯先での単位時間当たりの給湯使用熱量に関わる情報を収集する使用熱量情報収集部と、
前記給湯管路に設けられて前記給湯先への給湯流量を調整する給湯流量調整器と、
を備え、
前記制御装置は、前記貯湯熱量情報収集部が収集した情報を用いて算出される前記貯湯熱量と、前記使用熱量情報収集部が収集した情報を用いて算出される前記給湯使用熱量とを基に湯切れが起こるまでの残り時間を前記給湯運転中に予測し、該残り時間が所定時間になったときには、前記給湯先への給湯流量を前記給湯流量調整器により調整すると共に前記熱源機で水を湯に沸き上げる湯切れ防止運転を行う、
ことを特徴とする貯湯式給湯機。
【請求項2】
前記貯湯熱量情報収集部は、前記貯湯タンクの高さ方向に分散して該貯湯タンクに設けられて該貯湯タンク内の湯の温度を検出する複数の貯湯温度検出器を含み、
前記使用熱量情報収集部は、前記給湯管路に設けられて前記給湯先での給湯温度を検出する給湯温度検出器と、前記給湯管路に設けられて前記給湯先への給湯流量を検出する給湯流量検出器とを含み、
前記制御装置は、前記複数の残湯温度検出器それぞれの検出結果を用いて前記貯湯タンク内の貯湯熱量を算出すると共に、前記給湯温度検出器および前記給湯流量検出器それぞれの検出結果を用いて前記給湯先での単位時間当たりの給湯使用熱量を算出する、
ことを特徴とする請求項1に記載の貯湯式給湯機。
【請求項3】
前記貯湯タンクの下部から前記熱源機を経て前記貯湯タンクの上部に達する沸上循環管路と、
該沸上循環管路に設けられて前記熱源機での単位時間当たりの沸上熱量に関わる情報を収集する沸上熱量情報収集部と、
を更に備え、
前記制御装置は、前記湯切れ防止運転を行っている間、前記沸上熱量情報収集部が収集した情報を用いて前記熱源機での沸上熱量を求め、前記給湯先への給湯流量を前記沸上熱量の多寡に応じて前記給湯流量調整器により調整する、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の貯湯式給湯機。
【請求項4】
前記沸上循環管路は、
前記貯湯タンクの下部から前記熱源機へ水を流入させる往き管と、
前記熱源機で沸き上げられた湯を前記貯湯タンクの上部に戻す戻り管と、
前記往き管または前記戻り管の途中に設けられて前記制御装置により動作制御される循環ポンプと、
を含み、
前記沸上熱量情報収集部は、
前記往き管の途中に設けられて前記水の温度を検出する水温度検出器と、
前記戻り管の途中に設けられて前記湯の温度を検出する湯温度検出器と、
前記往き管または戻り管の途中に設けられて前記往き管または前記戻り管を流れる水の流量を検出する水流量検出器と、
を含み、
前記制御装置は、前記湯切れ防止運転を行っている間、前記水温度検出器、前記水流量検出器、および前記湯温度検出器それぞれの検出結果を用いて前記熱源機での沸上熱量を求めることを特徴とする請求項3に記載の貯湯式給湯機。
【請求項5】
前記沸上熱量情報収集部は、
前記循環ポンプと、
前記往き管の途中に設けられて前記水の温度を検出する水温度検出器と、
前記戻り管の途中に設けられて前記湯の温度を検出する湯温度検出器と、
を含み、
前記制御装置は、前記湯切れ防止運転を行っている間、前記水温度検出器および前記湯温度検出器それぞれの検出結果と前記循環ポンプの流量制御に関わる入力値とを用いて前記熱源機での沸上熱量を求めることを特徴とする請求項3に記載の貯湯式給湯機。
【請求項6】
前記制御装置は、前記給湯運転が行われるたびに前記給湯先での総給湯使用熱量を記憶する記憶部を更に備え、該記憶部に記憶された前記総給湯使用熱量の最大値を所定の期間毎に求めて、前記湯切れ防止運転を行うか否かを判断する際の前記所定時間を更新することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の貯湯式給湯機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−257707(P2009−257707A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−109504(P2008−109504)
【出願日】平成20年4月18日(2008.4.18)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)