説明

貯湯式給湯機

【課題】操作性が良く、かつ、安価な構成で水回路内の閉止および排水を行うことができる貯湯式給湯機を提供すること。
【解決手段】湯水を貯湯する貯湯タンク7と、前記貯湯タンク7と連通する水回路10と、所定圧力以上で前記貯湯タンク7内の圧力を逃す缶体保護弁13を内部に有する止水弁11とを備え、前記止水弁11は排水路12を有するとともに、前記止水弁11を移動させることで、前記水回路10の閉止や前記貯湯タンク7内の湯水を、前記排水路12より排水することが可能な構成としたことを特徴とするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排水機構を備えた貯湯式給湯機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の給湯機には、貯湯タンクの下部から熱源ユニットの熱交換部を通り貯湯タンクの上部へ湯水を供給する沸き上げ回路に貯湯タンク内部の過大圧によるタンク破損に対する保護機構として缶体保護弁を設けるのが一般的である(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、熱源ユニットの修理交換時に前記沸き上げ回路を閉止するために貯湯タンクに止水機構を設け、その他、停電時など非常時にタンク内部の水を取り出すことが可能な排水機構を設けるのが一般的である(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−139258号公報
【特許文献2】特開2010−286181号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記特許文献1に記載の従来技術では、熱源ユニットと貯湯タンクユニットとを接続する配管施工時に別途、開閉バルブを設けなければ、貯湯タンクユニット内の湯水を完全に排水しない限り熱源ユニットもしくは貯湯タンクユニットの交換作業を行うことができないことが課題となる。
【0006】
また、前記特許文献2に記載の従来技術では、貯湯タンクユニットに止水弁を設けたことで前記特許文献1における課題は解決するものの、前記止水弁と前記缶体保護弁および前記排水機構は別筐体で構成されているために止水および排水を行うにあたり、2ヶ所の操作が必要となり、誤操作の要因となるだけでなく、機構が複雑になるという課題を有している。
【0007】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、操作性が良く、かつ、安価な構成で水回路内の閉止および排水を行うことができる貯湯式給湯機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記従来の課題を解決するために、本発明の貯湯式給湯機は、湯水を貯湯する貯湯タンクと、前記貯湯タンクと連通する水回路と、所定圧力以上で前記貯湯タンク内の圧力を逃す缶体保護弁を内部に有する止水弁とを備え、前記止水弁は排水路を有するとともに、前記止水弁を移動させることで、前記貯湯タンク内の湯水を前記排水路より排水する構成としたことを特徴とするものである。
【0009】
これによって、前記缶体保護弁を内部に備えた前記止水弁を操作することで前記水回路の閉止および貯湯タンク内の湯水の排水を行うことが可能となり、止水または排水の操作を正確に行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、操作性が良く、かつ、安価な構成で水回路内の閉止および排水を行う
ことができる貯湯式給湯機を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態1における貯湯式給湯機の構成図
【図2】同貯湯式給湯機の止水弁の断面図(通常位置)
【図3】同貯湯式給湯機の止水弁の断面図(排水位置)
【図4】同貯湯式給湯機の止水弁の断面図(止水位置)
【発明を実施するための形態】
【0012】
第1の発明は、湯水を貯湯する貯湯タンクと、前記貯湯タンクと連通する水回路と、所定圧力以上で前記貯湯タンク内の圧力を逃す缶体保護弁を内部に有する止水弁とを備え、前記止水弁は排水路を有するとともに、前記止水弁を移動させることで、前記貯湯タンク内の湯水を前記排水路より排水する構成とすることにより、前記缶体保護弁を内蔵した前記止水弁を操作することで、貯湯タンク内の湯水を排水することができ、正確に目的の操作を行うことが可能となる。
【0013】
第2の発明は、前記水回路を遮断する前記止水弁と、前記水回路と外部とを遮断するシール部とを備え、前記シール部の排水下流側に前記水回路と前記排水路と連通する開口部を設けたことにより、前記止水弁体を所定の位置よりも排水下流側へ移動させることで排水することが可能となる。
【0014】
第3の発明は、前記シール部により前記水回路と外部とを遮断した状態で、前記缶体保護弁が所定圧力以上の場合に動作するように構成したことにより、いかなるときでも、貯湯タンク内の圧力が設定圧力以上になった場合に、前記缶体保護弁より圧力を逃し、貯湯タンクを過大圧による破損から保護することが可能となる。
【0015】
第4の発明は、前記水回路が、前記貯湯タンク内の湯水を循環させ加熱する沸き上げ回路であることを特徴とするもので、熱源ユニットと貯湯タンクユニットが配管によって接続され、かつ、湯水が満たされている状態であっても、止水弁を閉止することで湯水を排水することなく、熱源ユニットと貯湯タンクユニットとを接続した配管を取り外すことが可能となる。
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0017】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態における貯湯式給湯機の構成図である。まず、図1を用いて本実施の形態の貯湯式給湯機の構成を説明する。なお、本発明は、図1に示す貯湯式給湯機の構成に限定されることはなく、例えば、湯張り機能や暖房機能を有している貯湯式給湯機であっても問題はない。
【0018】
図1において、本実施の形態の貯湯式給湯機は、高温水を精製する熱源ユニット1と、内部に貯湯タンクを有する貯湯タンクユニット2とで構成されている。なお、本実施の形態では熱源ユニット1にはヒートポンプを使用しているが、これに限定されることはなく、電気ヒータ等の熱源であっても問題はない。
【0019】
次に、熱源ユニット1の構成について説明する。熱源ユニット1は、水冷媒熱交換器3、圧縮機4、蒸発器5、膨張弁6を冷媒配管により順次環状に接続して構成されており、冷媒には二酸化炭素を使用しているため、高圧側が臨界圧力を超えるので、水冷媒熱交換器3を流通する水に熱を奪われて温度が低下しても凝縮することがなく、水冷媒熱交換器
3で冷媒と水との間で温度差を形成しやすくなり、高温の湯が得られ、かつ熱交換効率を高くすることができる。
【0020】
また、比較的安価でかつ安定な二酸化炭素を冷媒に使用しているので、製品コストを抑えるとともに、信頼性を向上させることができる。また、二酸化炭素はオゾン破壊係数がゼロであり、地球温暖化係数も代替冷媒HFC−407Cの約1700分の1と非常に小さいため、地球環境に優しい製品を提供できる。
【0021】
また、熱源ユニット1において、圧縮機4で冷媒が圧縮され、圧縮機4から吐出された冷媒が水冷媒熱交換器3で放熱し、膨張弁6で減圧されたあと、蒸発器5で空気から熱を吸収し、ガス状態で再び圧縮機4に吸入される。なお、圧縮機4の能力制御および膨張弁6の開度制御は、圧縮機4の吐出側に設けたサーミスタ(図示せず)で検出される吐出冷媒の温度が予め設定された温度を維持するように制御される。
【0022】
次に、貯湯タンクユニット2の構成について説明する。貯湯タンクユニット2の内部には、貯湯タンク7と貯湯タンク7の下部から水道水を供給する給水管8と、貯湯タンク7の下部から水冷媒熱交換器3を経て、貯湯タンク7の上部へ加熱された湯水を供給する循環ポンプ9を有する沸き上げ回路10と、沸き上げ回路10を閉止する止水弁11と、非常時に貯湯タンク内の湯水を取り出すことが可能となる排水路12と、貯湯タンク7の内部圧力が以上上昇したときに、内部圧力を逃して貯湯タンク7の破損を防止する缶体保護弁13とを有している。
【0023】
また、貯湯タンク7の上部から湯水を取出す出湯管14と、沸き上げ中の膨脹水を排水する逃がし弁15と、逃がし弁15の出口には膨脹水を排水する導管16を有するとともに、所定温度の湯水を蛇口17へ供給する給湯混合弁18とを備えている。
【0024】
このように構成された貯湯式給湯機において、本発明の特徴である缶体保護弁13を内蔵した止水弁11と排水路12の構成について説明する。図2、図3および図4は、本発明の実施の形態における貯湯式給湯機の沸き上げ回路10、缶体保護弁13、止水弁11および排水路12の断面図である。
【0025】
図2は、沸き上げ回路10内を湯水が流れることが可能な状態を示す。図2に示すように、缶体保護弁13は、缶体保護弁体19と缶体保護弁体押さえ20と、缶体保護弁スプリング21と缶体保護弁スプリング押さえ22と缶体保護弁スプリング押さえストッパー23で構成されており、沸き上げ回路10の圧力が所定の設定圧力以上になった場合に、缶体保護弁体19を介して、缶体保護弁スプリング21が圧縮され、缶体保護弁体19が排水下流側へ移動することで、排水路12から過大圧力分だけ湯水を排水し、沸き上げ回路10を所定の圧力以下に調整する。
【0026】
また、止水弁11が図2の位置にある場合には、沸き上げ回路10と外部とはシール部24でシールされており、缶体保護弁体19が移動しない限り、沸き上げ回路内の湯水が外部へ排水されることはない。
【0027】
図2では缶体保護弁スプリング押さえ22と缶体保護弁スプリング押さえストッパー23で缶体保護弁スプリング21の一端を固定しているが、缶体保護弁スプリング押さえ22の外郭にねじ部を設けて、ねじの締め付け距離を調整することで缶体保護弁設定圧を調整することが可能な調圧機能を有する場合も考えられる。
【0028】
なお、止水弁11を図2の位置で固定するために、止水弁ストッパー25を設け、止水弁11を排水方向とは逆向きに移動させ、止水弁ストッパー25に当たったところが図2
の位置となる。ただし、止水弁11の位置を固定する方法を止水弁ストッパー25に限定するものではない。
【0029】
図3は、沸き上げ回路10内の湯水を外部へ排水可能な状態を示す。図2に対して図3に示すように、止水弁11は移動可能であり、図3の位置にある場合には、前記シール部24のシールが解除され、止水弁に設けられた排水穴26から排水路12を通り、外部へ湯水を排水することが可能となる。
【0030】
前記シール部24よりも排水下流側に前記排水穴26を設け、さらに後方に水漏れシール部27を設けることで、排水時に排水路12以外を通って排水されることを防ぐ。
【0031】
なお、止水弁11を図3の位置に固定するために、止水弁ストッパー25を設け、止水弁11を排水方向と同じ方向に移動させ、前記止水弁ストッパー25に当たったところが図3の位置となる。
【0032】
これにより、止水弁11を排水方向と同じ方向に止水弁ストッパー25に当たるところまで移動させることで、排水路12からのみ排水することが可能となる。ただし、止水弁11の位置を固定する方法を止水弁ストッパー25に限定するものではない。
【0033】
図4は、沸き上げ回路10を上下流に分断した状態を示す。止水弁11が図4の位置にある場合には、止水弁体28が沸き上げ回路10の開口部を塞ぎ、沸き上げ回路10の流れを塞き止める。
【0034】
なお、前記止水弁11は前記止水弁ストッパー25を取り外すことで、前記図2の位置からさらに排水方向逆向きに移動させることが可能となる。
【0035】
ただし、止水弁11の位置を固定する方法を止水弁ストッパー25に限定するものではなく、止水弁ストッパー25を用いずに止水弁11を図2および図3の位置を決める場合には、止水弁ストッパー25を取り外す必要はない。
【0036】
通常、施工に関する専門知識を有しない一般使用者は、貯湯式給湯機使用する図2に示す状態と、非常時に使用する図3に示す排水状態を利用するのみであり、単に止水弁11を移動させるだけで図2および図3の状態を作り出すことができる。
【0037】
また、図4に示す閉止機能は、熱源ユニットと貯湯タンクユニットが接続され、かつ、湯水で満たされている場合に、湯水を排水することなく熱源ユニットもしくは貯湯タンクユニットの交換作業を行う場合に必要とする機能であり、施工に関する専門知識を有する者の操作のため、止水弁ストッパー25の着脱作業を正確に行うことが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0038】
以上のように、本発明にかかる貯湯式給湯機は、缶体保護弁を内蔵した止水弁のみを操作することで、前記水回路の閉止と貯湯タンクからの湯水の取り出しが可能となることから、熱源がヒートポンプ式や電気ヒータ等の貯湯式給湯機に適応できる。
【符号の説明】
【0039】
7 貯湯タンク
8 給水管
10 水回路(沸き上げ回路)
11 止水弁
12 排水路
13 缶体保護弁
16 導管
19 缶体保護弁体
20 缶体保護弁体押さえ
21 缶体保護弁スプリング
22 缶体保護弁スプリング押さえ
23 缶体保護弁スプリング押さえストッパー
24 シール部
25 止水弁ストッパー
26 開口部(排水穴)
27 水漏れシール部
28 止水弁体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
湯水を貯湯する貯湯タンクと、前記貯湯タンクと連通する水回路と、所定圧力以上で前記貯湯タンク内の圧力を逃す缶体保護弁を内部に有する止水弁とを備え、前記止水弁は排水路を有するとともに、前記止水弁を移動させることで、前記貯湯タンク内の湯水を前記排水路より排水する構成としたことを特徴とする貯湯式給湯機。
【請求項2】
前記水回路を遮断する止水弁体と、前記水回路と外部とを遮断するシール部とを備え、前記シール部の排水下流側に、前記水回路と前記排水路と連通する開口部を設けたことを特徴とする請求項1に記載の貯湯式給湯機。
【請求項3】
前記止水弁体が前記水回路を遮断せず、かつ、前記シール部により前記水回路と外部とを遮断した状態で、前記缶体保護弁が所定圧力以上の場合に動作するように構成したことを特徴とする請求項2に記載の貯湯式給湯機。
【請求項4】
前記水回路が、前記貯湯タンク内の湯水を循環させ加熱する沸き上げ回路であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の貯湯式給湯機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−19649(P2013−19649A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−155337(P2011−155337)
【出願日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】