説明

貯湯式給湯機

【課題】給湯動作中に沸き上げ水循環流路の凍結予防運転を実行した場合に、急激な給湯湯温の変動を防止することができる貯湯式給湯機を提供する。
【解決手段】給湯動作中に沸き上げ水循環流路の凍結予防運転を行う場合、弁体32hを沸き上げ用熱交換器62とタンク戻し配管44とが沸き上げ水循環回路を介して連通する位置(弁体位置90°)から沸き上げ用熱交換器62と貯湯タンク10とが沸き上げ水循環回路を介して連通する位置(弁体位置A°)を経て、沸き上げ用熱交換器62とタンク戻し配管44とが沸き上げ水循環回路を介して連通する位置(弁体位置90°)まで回動するように四方弁32を制御する。この際、給湯動作の非実行中に沸き上げ水循環流路の凍結予防運転の要求が出された場合に比して、弁体32hを開始位置から終了位置まで回動するために要する時間を長期化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、貯湯式給湯機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の貯湯式給湯機は、給湯中に湯張りが行われた場合などに、四方弁の流路切替時間を制御することによって、給湯湯温変動の抑制を図るものが知られている(例えば特許文献1)。この装置は、貯湯タンク内の湯を、給湯用混合弁を介し出湯する経路と、風呂用混合弁と四方弁を介し浴槽へ湯張りする経路を備えている。当該四方弁は、弁体の回動により通水経路を切り換えることができる。このような装置によれば、給湯中に湯はり指令が発生した時は、四方弁の開度切替を低速で動作させ、湯張り流量を増加、減少速度を遅くすることで、湯はり開始、停止時に給湯湯温変動が生じる事態を防止できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−92304号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した構成を用いても、給湯機のシステム構成によっては、以下のような課題が生じる。例えば給湯動作中(図3の状態)に、自然放熱などにより配管内の湯水の温度低下が生じて凍結予防運転が必要な状態となりヒートポンプ配管凍結予防運転が動作した場合、ヒートポンプユニット60への往き戻り配管内の湯水は循環加熱される一方、タンク上部配管43内の湯水は低温のままとなる。この状態から従来技術と同様に四方弁32を低速で回路切替(循環していたヒートポンプユニット60からの温水をタンク上部配管43側に出湯)し凍結予防をしようとすると、まずタンク上部配管43に残留していた低温水が給湯湯側配管3に流入してその流量を増やしながら、ついで四方弁32が全開となり、循環加熱されていた温水が流入することになる。すると短時間で給湯湯側配管3内の湯温の上下変動と流量の変動が同時に発生し、結果、給湯混合弁33による湯温補正制御で追従することができず、ユーザーの所望する湯温が給湯できなくなり極端な給湯湯温の変動が生じる可能性がある。
【0005】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、極端な給湯湯温の変動を防止可能である貯湯式給湯機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
貯湯タンクと、貯湯タンクに給水する給水流路と、貯湯タンク内の水を加熱して高温水とする沸き上げ用熱交換器と、一端が貯湯タンクの上部に接続され、途中に流路切替手段と沸き上げ用熱交換器を介して貯湯タンクの第1下部に接続された沸き上げ水循環流路と、沸き上げ水循環流路における沸き上げ用熱交換器と貯湯タンクの第1下部の間に設置された循環ポンプと、流路切替手段と貯湯タンクの第2下部とを接続する下部戻し流路と、流路切替手段は、沸き上げ用熱交換器と貯湯タンクの上部とが沸き上げ水循環流路を介して連通する第1流路形態と、沸き上げ用熱交換器と下部戻し流路とが沸き上げ水循環流路を介して連通する第2流路形態とを、内蔵する弁体の回動によって切替可能な手段であって、沸き上げ水循環流路における流路切替手段と貯湯タンクの上部との接続部の間から分岐し、湯水混合手段に接続される混合湯側流路と、給水流路から分岐し、湯水混合手段に接続される混合水側流路と、湯水混合手段から外部水栓に接続される給湯流路と、湯水混合手段を制御し、混合湯側流路と混合水側流路の湯水を混合させ所定温度の湯水を外部水栓に供給する給湯動作を実行する給湯時制御手段と、沸き上げ水循環流路の凍結予防運転時に、弁体を第2流路形態を形成する回動開始位置から、第1流路形態を形成する回動終了位置よりも手前で流路切替手段内の弁体によって流れる湯水の流量が少なくなるように規制される流量規制位置まで回動するように、流路切替手段を制御する凍結予防運転時制御手段と、を備え、凍結予防時制御手段は、給湯動作実行中に凍結予防運転を行う場合には、給湯動作非実行中に行う場合に比して、弁体を開始位置から流量規制位置までの間を回動するための時間を長期化する制御手段を備えるものである。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、極端な給湯湯温の変動を防止することができる貯湯式給湯機を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施の形態1における貯湯式給湯機の構成図である。
【図2】本発明の実施の形態1における沸き上げ水循環流路の凍結予防運転時の回路構成図である。
【図3】本発明の実施の形態1における給湯動作時の回路構成図である。
【図4】本発明の実施の形態1における給湯動作と沸き上げ水循環流路の凍結予防運転の同時運転時の回路構成図である。
【図5】本発明の実施の形態1における四方弁の斜視図である。
【図6】四方弁のa、cポート連通状態(弁体位置90°)の水平断面図である。
【図7】四方弁のc、dポート連通状態(弁体位置180°)の水平断面図である。
【図8】四方弁のc、dポート連通状態(弁体位置A°)の水平断面図である。
【図9】四方弁のa、c、dポート連通状態(弁体位置B°)の水平断面図である。
【図10】四方弁の弁体位置に対する、aポートの流量特性図(A)、dポートの流量特性図(B)、である。
【図11】通常切替時の四方弁の弁体位置と経過時間の特性を示す図である。
【図12】給湯動作中での流路切替時の四方弁の弁体位置と経過時間の特性を示す図である。
【図13】四方弁を断続的に複数回に分けて回動させた場合の弁体位置と経過時間の特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。尚、各図において共通する要素には、同一の符号を付して、重複する説明を省略する。また、動作の説明で湯水の流れる配管を太線で示し、流れ方向を各配管の近傍に矢印を付して示す。
【0010】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1における貯湯式給湯機100の構成図である。図1に示す貯湯式給湯機100は、貯湯ユニット1と、ヒートポンプサイクルを利用するように構成されたヒートポンプユニット60とを備えている。2つのユニット1、60は、ヒートポンプ入口配管41とヒートポンプ出口配管42とによって接続されている。また、貯湯ユニット1には、制御部70が内蔵されている。貯湯ユニット1およびヒートポンプユニット60が備える各種の弁類、ポンプ類等の作動は、これらと電気的に接続された制御部70により制御される。以下、貯湯式給湯機100の各構成要素について説明する。
【0011】
ヒートポンプユニット60は、貯湯ユニット1から導かれた低温水を加熱する(沸き上げる)ための加熱手段として機能するものである。ヒートポンプユニット60は、圧縮機61、沸き上げ用熱交換器62、膨張弁63、空気熱交換器64を冷媒循環配管65にて環状に接続し、ヒートポンプサイクルを構成している。沸き上げ用熱交換器62は、ヒートポンプサイクルを構成する冷媒循環配管65を流れる冷媒と貯湯ユニット1から導かれた低温水との間で熱交換を行うためのものである。また、ヒートポンプ出口側サーミスタ66は、沸き上げ用熱交換器62で加熱した高温水の温度を検知するための温度センサであり、ヒートポンプ出口配管42に設けられている。ヒートポンプユニット60で高温水を得るためには、ヒートポンプサイクルは、冷媒として二酸化炭素を用い、臨界圧を越える圧力で運転することが好ましい。
【0012】
一方、貯湯ユニット1には、以下の各種部品や配管などが内蔵されている。貯湯タンク10は、湯水を貯留するためのものである。貯湯タンク10の下部には、市水を供給するための給水配管2が接続されており、貯湯タンク10の上部には、貯留した湯水を給湯機外部へ供給するための給湯湯側配管3がタンク上部配管43から分岐されて接続されている。なお、貯湯タンク10には、ヒートポンプユニット60を用いて加熱した高温水がタンク上部から流入されるとともに、給水配管2を介して低温水をタンク下部から流入させることにより、タンク内の上部と下部で温度差が生じるように湯水が貯留される。また、貯湯タンク10の表面には、取付高さを変えて貯湯タンク10内の湯水の温度分布を検知するための残湯サーミスタ11、12が取り付けられている。これらの残湯サーミスタ11、12により取得された温度分布に基づいて、貯湯タンク10内の残湯量が把握され、ヒートポンプユニット60による貯湯タンク10内の湯水の沸き上げ運転の開始および停止などが制御される。
【0013】
タンク上部配管43から分岐した給湯湯側配管3は、給水配管2から分岐した給湯水側配管4とともに給湯混合弁33に接続されている。給湯混合弁33は、給湯湯側配管3を流れる湯と給湯水側配管4を流れる水を混合し、所定の温度に調整された湯として給湯配管5を経由して外部水栓等へ供給する。また、給湯配管5には、混合された湯の温度を検知する給湯温度サーミスタ6が取り付けられている。
【0014】
また、貯湯ユニット1内には、循環ポンプ21および風呂側熱交換器22が内蔵されている。循環ポンプ21は、貯湯ユニット1内の後述する三方弁31と沸き上げ用熱交換器62との間のヒートポンプ入口配管41上に設けられ、各配管に湯水を循環させるためのポンプである。風呂側熱交換器22は、貯湯タンク10やヒートポンプユニット60から供給される高温水を利用して、2次側の加熱対象水(浴槽循環水や暖房用循環水など)を加熱するための熱交換器である。なお、本実施形態では、風呂側熱交換器22の2次側の構成として、浴槽50内の湯水を循環させる浴槽水循環回路51を例に挙げて説明する。風呂側熱交換器22は、浴槽水循環回路51の途中に設置されている。また、浴槽水循環回路51の途中には、浴槽水を循環させるための2次側循環ポンプ52と、浴槽50から出た浴槽水の温度を検知するための浴槽出口側サーミスタ53とが設置されている。
【0015】
次に、貯湯ユニット1が備える弁類および配管類について説明する。貯湯ユニット1は、三方弁31、四方弁32を有している。三方弁31は、湯水が流入する2つの入口(aポート、bポート)と、湯水が流出する1つの出口(cポート)とを有する流路切替手段であり、aポートもしくはbポートのどちらかから湯水が流入するように湯水の経路を切り替え可能に構成されている。四方弁32は、湯水が流入する2つの入口(bポート、cポート)と、湯水が流出する2つの出口(aポート、dポート)とを有する流路切替手段であり、3つの経路、すなわち、a−b経路、a−c経路、c−d経路の間で流路形態を切替可能に構成されている。
【0016】
また、貯湯ユニット1は、タンク下部配管40、ヒートポンプ入口配管41、ヒートポンプ出口配管42、タンク上部配管43、タンク戻し配管44、風呂側熱交換器1次側(熱源側)入口配管45、風呂側熱交換器1次側出口配管46およびバイパス配管47を有している。
【0017】
タンク下部配管40は、貯湯タンク10の第1下部と三方弁31のaポートとを接続する流路である。ヒートポンプ入口配管41は、三方弁31のcポートとヒートポンプユニット60の入口側とを接続する流路であり、ヒートポンプ出口配管42は、ヒートポンプユニット60の出口側と四方弁32のcポートとを接続する流路である。タンク上部配管43は、四方弁32のdポートと貯湯タンク10上部とを接続する流路であり、タンク戻し配管44は、四方弁32のaポートと貯湯タンク10の中央部から下部の間に設けられた戻し口(第2下部)とを接続する流路である。また、風呂側熱交換器1次側入口配管45は、タンク上部配管43における貯湯タンク10上部と四方弁32との間から分岐し、風呂側熱交換器22の1次側入口に接続される流路であり、風呂側熱交換器1次側出口配管46は、風呂側熱交換器22の1次側出口と三方弁31のbポートとを接続する流路である。さらに、バイパス配管47は、ヒートポンプ出口配管41における循環ポンプ21とヒートポンプユニット60の入口側との間から分岐し、四方弁32のbポートに接続される流路である。
【0018】
図2は、本発明の実施の形態1における貯湯式給湯機100の沸き上げ水循環流路の凍結予防運転時の回路構成図である。ここでいう沸き上げ水循環流路の凍結予防運転とは、ヒートポンプユニット60を利用して貯湯タンク10内の水を沸き上げ、循環させることで、主にタンク上部配管43内の湯水の凍結予防を行う運転である。この沸き上げ水循環流路の凍結予防運転時には、三方弁31は、aポートとcポートとが連通し、bポートが閉状態となるように制御される。これにより、タンク下部配管40とヒートポンプ入口配管41とが連通するとともに、風呂側熱交換器1次側出口配管46側を閉として風呂側熱交換器22からの流路が遮断される。また、沸き上げ水循環流路の凍結予防運転時には、四方弁32は、cポートとdポートとが連通し、aポートとbポートが閉状態となるように制御される。これにより、ヒートポンプ出口配管42とタンク上部配管43とが連通するとともに、バイパス配管44側を閉として貯湯タンク10の第2下部への流路が遮断される。
【0019】
この沸き上げ水循環流路の凍結予防運転は単独で、あるいは、ヒートポンプ配管凍結予防運転(三方弁31をaポートとcポートが連通、bポートが閉となるように制御し、四方弁32をaポートとcポートとが連通、bポートとdポートが閉状態となるように制御した状態で循環ポンプ21とヒートポンプユニット60を動作させ湯水を貯湯タンク10の第1下部からヒートポンプユニット60を経由して貯湯タンク10の第2下部まで循環させ、ヒートポンプ入口配管41からヒートポンプ出口配管42までの凍結予防を実施する運転)のあとに、所定の短時間行われる。
【0020】
その結果、貯湯タンク10の第1下部から流出する低温水は、タンク下部配管40、三方弁31、循環ポンプ21およびヒートポンプ入口配管41を経由してヒートポンプユニット60に導かれ、沸き上げ用熱交換器62において加熱された後、湯となってヒートポンプ出口配管42、四方弁32、タンク上部配管43を経由することで、当該タンク上部配管43の凍結予防を行う。
【0021】
図3は、本発明の実施の形態1における貯湯式給湯機100の給湯動作時の回路構成図である。給湯動作とは、貯湯タンク10に貯えた高温水と給水配管2から給水された水とをそれぞれ給湯湯側配管3と給湯水側配管4を通じて給湯混合弁33に供給し、給湯混合弁33からユーザーの所望湯温に調整した湯を給湯配管5を通じて外部の水栓やシャワーに給湯する動作のことである。この給湯動作は、ユーザーが任意の水栓を開くことで開始され、ユーザーが設定した給湯温度に従い、給湯混合弁33に流入する高温水と水の混合比率を制御することで、給湯する湯温がユーザーの所望する湯温に調整される。なお、給湯動作中は、外部の水栓やシャワーに給湯する湯温を給湯温度サーミスタ6により常に監視し、給湯する湯水の給湯量の変動や貯湯タンク10から供給される高温水の低下、給水配管2から供給される水の温度変動に併せて給湯混合弁33の混合比率を常に制御することで、一定の湯温に調整された湯水が外部の水栓やシャワーへ供給される。
【0022】
また、給湯動作中は、貯湯タンク10に貯えた高温水の供給量と同量の水が給水配管2から貯湯タンク10の下部に供給される構成となっている。給湯動作時の三方弁31は、aポートとcポートとが連通し、bポートが閉状態となるように制御される。また、給湯動作時の四方弁32は、aポートとcポートとが連通し、bポートとdポートとが閉状態となるように制御される。これにより、風呂側熱交換器22や貯湯タンク10の上部への湯水流入を防止している。
【0023】
次に図4は本発明の実施の形態1における貯湯式給湯機100の給湯動作と沸き上げ水循環流路の凍結予防運転の同時運転時の回路構成図である。ここでいう給湯動作と沸き上げ水循環流路の凍結予防運転の同時運転とは、図3に示した給湯動作と図2に示した沸き上げ水循環流路の凍結予防運転とが同時に行われる運転動作であって、例えば、給湯動作中に、低外気環境においてヒートポンプ出口側サーミスタ66が所定の温度より低くなり、これを検出した制御部70が、前述のヒートポンプ配管凍結予防運転から沸き上げ水循環流路の凍結予防運転を実施した場合である。この給湯動作と沸き上げ水循環流路の凍結予防運転の同時運転時には、三方弁31はa、cポート連通、bポート閉となるように制御され、四方弁32は、a、c、dポートが連通し、bポートが閉状態となるように制御される。これにより、ヒートポンプ出口配管42とタンク戻し配管44とタンク上部配管43とが、流路を完全に切替えた場合に比して少ない流路断面積をもって連通するとともに、バイパス配管47側の流路が遮断される。なお、この場合の四方弁32内の弁体32hの動作による流路の調整の詳細については、後述する。
【0024】
この給湯動作と沸き上げ水循環流路の凍結予防運転の同時運転では、図3に示した給湯動作と異なり、給湯湯側配管には貯湯タンク10からの高温水とタンク上部配管43の残水およびヒートポンプユニット60からの循環水との混合水が供給される。なお、給湯動作と沸き上げ水循環流路の凍結予防運転との同時運転中であっても、給湯動作を単独で実行している時と同様に給湯混合弁33が制御されて、給湯水を所望の湯温に調整する動作は実行される。
【0025】
ここで、四方弁32の構成について、図5〜図9に基づいて詳細に説明する。図5は本発明の実施形態1における四方弁32の斜視図であり、図6乃至図9は図5に示す四方弁32の水平断面図である。図5に示すとおり、四方弁32はa、b、c、dポートの配管32a、32b、32c、32d、弁枠32e、ステッピングモーター32f、回転軸32g、および弁体32hによって構成されている。弁枠32eの上部にステッピングモーター32fが回転軸32gを介して弁体32hに接続されている。よって、ステッピングモーター32fの回動により回転軸32gを中心として弁体32hが回動して、弁体32h内に形成された連通部32iを通じて四方弁32内の流路の切替えを行う構成となっている。なお、図6に示す弁体位置は、四方弁32のaポートとcポートとが連通し、bポートとdポートとが閉状態となる位置(以下、この弁体位置を「弁体位置90°」と称する)を表し、例えば、単独給湯動作時はこの弁体位置となる。また、図7に示す弁体位置は、四方弁32のcポートとdポートとが連通し、aポートとbポートとが閉状態となる位置(以下、この弁体位置を「弁体位置180°」と称する)を表し、例えば、給湯動作中でない沸き上げ水循環流路の凍結予防運転時は、図6に示す弁体位置90°から図7に示す弁体位置180°へと弁体32hが回動される。
【0026】
また、図8に示す弁体位置は、四方弁32のcポートとdポートとが図7の弁体位置180°の場合に比して小さな流路断面積の状態で連通し、aポートとbポートが閉状態となる位置(以下、この弁体位置を「A°」と称する)を表し、例えば、沸き上げ水循環流路の凍結予防運転時は弁体位置90°から弁体位置A°まで断続的に複数回に分けて回動し、その後断続的に複数回に分けて弁体位置A°から弁体位置90°へ戻る制御となる。この弁体位置A°の状態においては、上述のとおり流路断面積が弁体位置180°の場合に比して小さいので、四方弁32をcポートからdポートへ流れる湯水の量を、全開状態となる弁体位置180°の場合より少なく制御することが可能となる。さらに、弁体位置90°から弁体位置A°までを断続的に複数回に分けて回動させることにより、さらにcポートからdポートへ流れる湯水の量を、より少なく制御することが可能となる。
【0027】
更に、図9に示す弁体位置は、弁体位置90°から弁体位置A°に至る途中の弁体位置(以下、この弁体位置を「B°」と称する。90°<B°<A°<180°である。)を表している。弁体位置B°では、aポート、cポート、dポートが部分的に連通し、bポートが閉状態となる。この弁体位置B°の状態においても、流路断面積が弁体位置A°の場合に比して小さいので、四方弁32をcポートからdポートへ流れる湯水の量を、全開状態となる弁体位置180°の場合や弁体位置A°の場合より少なくなる。
【0028】
図10(A)は、非給湯動作時など四方弁32を通常に回路切替した場合の、aポートを経由する湯水の流量と弁体位置との関係を示す特性図であり、図10(B)は、dポートを経由する湯水の流量と弁体位置との関係を示す特性図である。四方弁32は、例えば図6に示す弁体位置90°から図7に示す弁体位置180°へ回路切替えを実施した場合、aポートの循環流量は図10(A)に示すように90°から180°までの初期と180°に近い位置での弁体位置の変化量に対する流量変化に対して、中間の位置での変化量が大きくなる傾向となり、最終的に弁体位置180°までに閉塞状態、逆にdポートの循環流量は増加傾向となり、最終的に弁体位置180°で最大流量に達する。
【0029】
次に、本発明の実施の形態1における貯湯式給湯機100の特徴的動作について説明する。図11は、四方弁32の弁体位置の変化とそれに要する時間(経過時間)の関係を示す図であり、弁体位置90°から弁体位置180°への通常の回路切替時の特性を示している。この図のとおり、非給湯動作中に制御部70からの沸き上げ水循環流路の凍結予防運転指示があった場合には、四方弁32を弁体位置90°から弁体位置180°へ通常の流路切替えを実施する。この時、四方弁32は弁体位置90°から弁体位置180°へ素早く(例えば15秒)切り替わる通常流路切替が実施され、短時間で必要充分な流量を確保可能となる。
【0030】
一方、図12は、給湯動作中の場合の流路切替えにおける四方弁32の弁体位置の変化とそれに要する時間の関係を示す図である。図12のとおり、制御部70からの沸き上げ水循環流路の凍結予防運転指示があった場合、給湯動作が行われているので、図11に示す通常流路切替時に比して弁体32hの回動を遅らせて、切り替えに要する時間を長期化(例えば50秒)するとともに、弁体位置を図8のA°の状態までの回動とし、dポートからの流量が弁体位置180°の場合に比して少なくなるようにする。図12に示すとおり、四方弁32の弁体32hの回動速度を通常流路切替の時と比較して遅くし、かつ、弁体位置をA°の位置までの回動となるようにすることで、四方弁32のdポート側への流量の時間当たりの極端な変動を抑制することが可能となる。これにより、タンク上部配管43に残留していた低温水やヒートポンプユニット60で沸き上げられた循環水が給湯湯側配管3内に短時間に多量に流れ込むことによる当該給湯湯側配管3内の急激な湯温変動を抑制することができるので、給湯混合弁33の湯温補正制御で十分に追従することができ、使用中の給湯温度変動は極めて小さく抑えることが可能となる。また、四方弁32の切替は図11の場合に比して長時間となるので、弁体位置がA°で流路が狭く時間当たりの流量は少ないが、トータルとして凍結防止に必要充分な流量を確保可能となる。
【0031】
なお、これらの凍結予防のための四方弁32の切替動作のあと、四方弁32を元の位置(弁体位置90°)に戻すように制御しても良い。また、図12では、給湯動作時の流路切り替え動作を連続的に行う場合について述べたが、後述の図13のように断続的に行ってもよい。
【0032】
また、給湯動作中に、ヒートポンプ配管凍結予防運転から沸き上げ水循環流路の凍結予防運転制御へ移行した場合は、図13に示すとおり、四方弁32の弁体位置A°から弁体位置B°への弁体32hの回動を、断続的に複数回に分けて行うことで、四方弁32のdポートの循環流量の極端な流量変動をさらに抑制することが可能となる。これにより、タンク上部配管43に残留していた低温水やヒートポンプユニット60で沸き上げられた循環水が給湯湯側配管3内に流れ込み始める状態から流れ込みが終わる状態までの間、その流量が急激に変化することがないので、給湯湯側配管3内の湯水の急激な湯温変動を抑制することができ、給湯混合弁33の湯温補正制御で十分に追従することが可能となり、使用中の給湯温度変動は極めて小さく抑えることができる。
【0033】
なお、四方弁32の弁体32hの回動は、給湯動作時の給湯流量に応じて変化させることとしてもよい。例えば、給湯動作時の給湯流量が10リットル/分時の場合には弁体32hの回動時間を60秒とし、給湯流量が5リットル/分時の場合には弁体32hの回動時間を90秒としてもよい。これは、給湯流量全体に対するヒートポンプユニット60側からタンク上部配管43を経由して流れ込む湯水の割合を、出湯側の流量が少ない場合と多い場合とで大きく変わらないよう(給湯流量が少ない場合に、タンク上部配管43側から流れ込む湯水の量が多く支配的とならないように)にして給湯湯側配管3内を流れる湯水の温度変動を抑えて給湯温度を安定させるようにするためである。
【0034】
さらに、図10で示すように、四方弁32は、弁体32hの回動位置によって極端に流量が増加する開度領域と極端に流量が変化しない開度領域がある。そこで、このような四方弁32を用いて給湯動作時の流路切り替え動作を実施する場合には、四方弁32の弁体32hの開度による流量特性に応じて所定時間毎(例えば10秒)の動作開度を可変とし、1度の回動(開度の変化量)を、極端に流量が増加する開度領域は小さく(例えば5°)、極端に流量が変化しない開度領域は大きく(例えば20°)に設定してもよい。これにより、四方弁32の回動による給湯湯側配管3内を流れる湯水の温度変動をより抑えることができ給湯温度を安定させることができる。
【0035】
また、四方弁32の弁体32hの回動位置による流量特性を利用して断続動作の回数を可変に設定してもよい。極端に流量が増加する開度領域と極端に流量が変化しない開度領域がある場合は、図13に示すように切替開始から完了までの動作を複数の領域に分割し、切替初期から極端な流量変動が発生するまでの領域を第一領域(例えば90°からB°)とし、1回の動作(例えば20°)で弁体32hを動作させ、動作後は一定時間(例えば7.5秒)待機する。次に、第一領域の終点(ここではB°)から極端な流量変動が発生する領域を第二領域(例えばB°からA°に至り、B°まで)とし、第一領域よりも小さい開度(例えば10°)で複数回に分けて断続的に動作させ、動作後は各々一定時間(例えば3秒)待機する。次に、第二領域の終点(ここではB°)から切替完了までの開度までを第三領域(ここではB°から90°)とし、第二領域の動作開度よりも大きい開度で第三領域の終点(ここでは90°)まで1回の動作(ここでは20°)で切替える。これにより、四方弁32の回動による給湯時の温度変動影響が大きい領域のみ細かく動作させることで、給湯湯側配管3内を流れる湯水の温度変動をより抑えることができる。また、温度変動影響が小さい領域は、すばやく回動させることができるので、四方弁32の動作時間を短縮することができる。
【符号の説明】
【0036】
1 貯湯ユニット
2 給水配管
3 給湯湯側配管
4 給湯水側配管
5 給湯配管
6 給湯温度サーミスタ
10 貯湯タンク
21 循環ポンプ
22 風呂側熱交換器
31 三方弁
32 四方弁(流路切替手段)
32h 弁体
33 給湯混合弁
40 タンク下部配管
41 ヒートポンプ入口配管
42 ヒートポンプ出口配管
43 タンク上部配管
44 タンク戻し配管
47 バイパス配管
60 ヒートポンプユニット
62 沸き上げ用熱交換器
70 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
温水を貯留させる貯湯タンクと、
前記貯湯タンクに給水するための給水流路と、
所定の加熱手段を利用して前記貯湯タンク内の水を加熱して高温水とする沸き上げ用熱交換器と、
一端が前記貯湯タンクの上部に接続され、途中に流路切替手段と前記沸き上げ用熱交換器を介して前記貯湯タンクの第1下部に接続された沸き上げ水循環流路と、
前記沸き上げ水循環流路における前記沸き上げ用熱交換器と前記貯湯タンクの第1下部の間に設置された循環ポンプと、
前記流路切替手段と前記貯湯タンクの第2下部とを接続する下部戻し流路と、
前記流路切替手段は、前記沸き上げ用熱交換器と前記貯湯タンクの上部とが前記沸き上げ水循環流路を介して連通する第1流路形態と、前記沸き上げ用熱交換器と前記下部戻し流路とが前記沸き上げ水循環流路を介して連通する第2流路形態とを、内蔵する弁体の回動によって切替可能な手段であって、
前記沸き上げ水循環流路における前記流路切替手段と前記貯湯タンクの前記上部との接続部の間から分岐し、湯水混合手段に接続される混合湯側流路と、
前記給水流路から分岐し、前記湯水混合手段に接続される混合水側流路と、
前記湯水混合手段から外部水栓に接続される給湯流路と、
前記湯水混合手段を制御し、前記混合湯側流路と前記混合水側流路の湯水を混合させ所定温度の湯水を前記外部水栓に供給する給湯動作を実行する給湯時制御手段と、
前記沸き上げ水循環流路の凍結予防運転時に、前記弁体を前記第2流路形態を形成する回動開始位置から、前記第1流路形態を形成する回動終了位置よりも手前で前記流路切替手段内の前記弁体によって流れる湯水の流量が少なくなるように規制される流量規制位置まで回動するように、前記流路切替手段を制御する凍結予防運転時制御手段と、
を備え、
前記凍結予防時制御手段は、前記給湯動作の実行中に前記凍結予防運転を行う場合には、前記給湯動作の非実行中に前記凍結予防運転を行う場合に比して、前記弁体を前記開始位置から前記流量規制位置までの間を回動するために要する時間を長期化する制御手段を備えることを特徴とする貯湯式給湯機。
【請求項2】
前記制御手段は、
前記沸き上げ水循環流路の凍結予防運転時に、
前記弁体を前記第2流路形態を形成する回動開始位置から、前記第1流路形態を形成する回動終了位置よりも手前で前記流路切替手段内の前記弁体によって流れる湯水の流量が少なくなるように規制される流量規制位置まで回動し、続いて前記弁体を前記第2流路形態を形成する前記回動開始位置まで戻すように、
前記流路切替手段を制御することを特徴とする請求項1に記載の貯湯式給湯機。
【請求項3】
前記制御手段は、前記給湯動作の実行中にのみ、
前記沸き上げ水循環流路の凍結予防運転時に、
前記弁体を前記第2流路形態を形成する回動開始位置から、前記第1流路形態を形成する回動終了位置よりも手前で前記流路切替手段内の前記弁体によって流れる湯水の流量が少なくなるように規制される流量規制位置まで回動し、続いて前記弁体を前記第2流路形態を形成する前記回動開始位置まで戻すように、
前記流路切替手段を制御することを特徴とする請求項1に記載の貯湯式給湯機。
【請求項4】
前記制御手段は、前記給湯動作の実行中に前記凍結予防運転を行う場合に、
前記流路切替手段における前記弁体を、前記開始位置から前記流量規制位置まで断続的に複数回に分けて回動させることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1つに記載の貯湯式給湯機。
【請求項5】
前記制御手段は、前記流路切替手段における前記弁体を断続的に複数回に分けて回動させる場合に、
前記弁体の位置に応じて1回あたりの回動幅を可変に設定することを特徴とする請求項4に記載の貯湯式給湯機。
【請求項6】
前記制御手段は、前記給湯動作の給湯量に応じて、
前記弁体を前記開始位置から前記流量規制位置まで回動するために要する時間を可変に設定することを特徴とする請求項1乃至5の何れか1つに記載の貯湯式給湯機。
【請求項7】
前記制御手段は、前記流路切替手段における前記弁体を断続的に複数回に分けて回動させる場合に、
前記流路切替手段から前記貯湯タンクの上部へ流れる湯水の湯量と前記第2下部へ流れる湯水の流量との比率に応じて、比率の変化量が一定となるように1回あたりの回動幅を可変に設定することを特徴とする請求項4に記載の貯湯式給湯機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−88043(P2013−88043A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−229481(P2011−229481)
【出願日】平成23年10月19日(2011.10.19)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】