説明

貯湯式給湯装置

【課題】沸き増しに時間がかかり、追い焚きまでの待ち時間が長くなることを防止した貯湯式給湯装置を提供する。
【解決手段】加熱手段3で加熱された湯水を貯湯する貯湯タンク2と、浴槽6に接続される風呂循環回路22と、浴槽6の湯水を風呂循環回路22に循環させる風呂循環ポンプ20と、風呂循環回路22を循環する浴槽6の湯水を前記貯湯タンク2内の湯と熱交換させる風呂熱交換器18を備え、前記風呂熱交換器18により貯湯タンク2内の湯水との熱交換で風呂の保温や追い焚きを行うもので、前記風呂の保温や追い焚きをリモコン5のスイッチ操作で指示されていることを条件とし、貯湯タンク2内の熱量が減少して保温や追い焚きが出来なくなった時には、加熱手段3による沸き増し運転を行わせる熱量確保手段41を備えたので、使用者の要求に確実に答えるようにしたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、貯湯タンクの貯湯温水を用いて浴槽内の湯水を追い焚きする貯湯式給湯装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来よりこの種の電気温水器やヒートポンプ貯湯式給湯装置においては、追い焚き指令があると、貯湯タンクに貯められた温水の温度を検出し、この温度が所定温度以上であれば追い焚き運転を行い、所定温度以下であれば沸き増ししてから追い焚き運転するようにしたものであった。(例えば、特許文献1参照)
【特許文献1】特許3632653号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところでこの従来のものでは、沸き増しに長時間がかかり、この間は使用者は待たなければならず、入浴中では一旦入浴を中断する必要があり、極めて使用勝手が悪く、大きな問題となっており、又これを防止する為に、こまめに沸き増しをしたのでは、電気代が嵩み経済性が悪く、効率も低下するものであった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
そこで、この発明は上記課題を解決するため、特にその構成を、加熱手段で加熱された湯水を貯湯する貯湯タンクと、浴槽に接続される風呂循環回路と、浴槽の湯水を風呂循環回路に循環させる風呂循環ポンプと、風呂循環回路を循環する浴槽の湯水を前記貯湯タンク内の湯と熱交換させる風呂熱交換器を備え、前記風呂熱交換器により貯湯タンク内の湯水との熱交換で風呂の保温や追い焚きを行うものに於いて、前記風呂の保温や追い焚きをリモコンのスイッチ操作で指示されていることを条件とし、貯湯タンク内の熱量が減少して保温や追い焚きが出来なくなった時には、加熱手段による沸き増し運転を行わせる熱量確保手段を備えたものである。
【発明の効果】
【0005】
この発明によれば、風呂の保温や追い焚きがリモコンで指示され、使用者の要求が明確である時には、貯湯タンク内の熱量が減少して保温や追い焚きが出来なくなった時には、自動的に沸き増しして、指示がある時には保温や追い焚きが可能な熱量を確保し、使用者の要求に確実に答えるようにしたものであり、又常に沸き増しを行うものでなく、リモコンによって使用者の要求が確認出来る時のみ行うので、使用者の納得も得られ経済的にも良いものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
次にこの発明の第1実施形態を図面に基づいて説明する。
この貯湯式給湯装置は、時間帯別契約電力の電力単価が安価な深夜時間帯に湯水を沸き上げて貯湯し、この貯湯した湯水を給湯に用いるもので、1は湯水を貯湯する貯湯タンク2を備えた貯湯タンクユニット、3は貯湯タンク内の湯水を加熱する加熱手段としてのヒートポンプユニット、4は台所や洗面所等に設けられた給湯栓、5はこの貯湯式給湯装置を遠隔操作するリモコン、6は浴槽である。
【0007】
前記貯湯タンクユニット1の貯湯タンク2は、上端に出湯管7と、下端に給水管8とが接続され、更に下部にヒーポン循環回路を構成する往き管9と、上端にヒーポン循環回路を構成する戻し管10とが接続され、前記ヒートポンプユニット3によって往き管9から取り出した貯湯タンク2内の湯水を沸き上げて戻し管10から貯湯タンク2内に戻して貯湯され、給水管8からの給水により貯湯タンク2内の湯水が押し上げられて貯湯タンク2内上部の高温水が出湯管7から押し出されて給湯されるものである。
【0008】
前記ヒートポンプユニット3は、圧縮機11と凝縮器としての冷媒−水熱交換器12と電子膨張弁13と強制空冷式の蒸発器14で構成されたヒートポンプ回路15と、貯湯タンク2内の湯水を前記往き管9および戻し管10を介して冷媒−水熱交換器12に循環させる加熱循環ポンプ16と、それらの駆動を制御するヒーポン制御部17とを備えており、ヒートポンプ回路15内には冷媒として二酸化炭素が用いられて超臨界ヒートポンプサイクルを構成しているものである。なお、冷媒に二酸化炭素を用いているので、低温水を電熱ヒータなしで約90℃の高温まで沸き上げることが可能なものである。
【0009】
ここで、前記冷媒−水熱交換器12は冷媒と被加熱水たる貯湯タンク2内の湯水とが対向して流れる対向流方式を採用しており、超臨界ヒートポンプサイクルでは熱交換時において冷媒は超臨界状態のまま凝縮されるため効率良く高温まで被加熱水を加熱することが出来、被加熱水の冷媒−水熱交換器12入口温度と冷媒の出口温度との温度差が一定になるように前記電子膨張弁12または圧縮機11を制御することで、COP(エネルギー消費効率)がとても良い状態で被加熱水を加熱することが可能なものである。
【0010】
次に、18は前記浴槽6の湯水を加熱するためのステンレス製の蛇管よりなる風呂熱交換器で、貯湯タンク2内の上部に配置されていると共に、この風呂熱交換器18には風呂往き管19および風呂循環ポンプ20を備えた風呂戻り管21よりなる風呂循環回路22が接続されて浴槽6の湯水が循環可能にされ、浴槽6内の湯水が貯湯タンク2内の高温水により加熱されて保温あるいは追い焚きが行われるものである。
【0011】
前記保温や追い焚きの時に、貯湯タンク2内の熱量が不足している場合には、ヒートポンプユニット3による沸き増し運転が行われるが、この時加熱温水は戻し管10ではなく、風呂熱交換器18と対向する貯湯タンク2上部に連通された中間戻し管23を介して戻されるものであり、戻し管10と中間戻し管23との分岐部には流路切替手段を構成する三方弁24が備えられ、この三方弁24は深夜時間帯の沸き上げ運転では戻し管10を選択し、更にこの時間帯以外の沸き増し運転では中間戻し管23を選択するようにしたものである。
【0012】
25は風呂戻り管21を介して風呂熱交換器18に流入する浴槽水の温度を検出する風呂戻り温度センサ、26は風呂熱交換器18を流出して風呂往き管19を介して浴槽6へ流れる浴槽水の温度を検出する風呂往き温度センサである。
【0013】
次に、27は出湯管7からの湯と給水管9から分岐された給水バイパス管28からの低温水を混合する電動ミキシング弁より構成された給湯混合弁であり、その下流の給湯管29に設けた給湯温度センサ30で検出した湯温がリモコン5でユーザーが設定した給湯設定温度になるように混合比率が制御されるものである。
【0014】
31は給湯管29から分岐されて風呂戻り管21に連通された湯張り管で、この湯張り管31には、浴槽6への湯張りの開始/停止を行う湯張り弁32と、浴槽6への湯張り量をカウントする風呂流量カウンタ33と、浴槽水が給湯管29へ逆流するのを防止する逆止弁34とが設けられているものである。
【0015】
次に、35は貯湯タンク2の上下方向に複数個配置された貯湯温度センサで、この実施形態では5つの貯湯温度センサが配置され上から35a、35b、35c、35d、35eと呼び、この貯湯温度センサ35が検出する温度情報によって、貯湯タンク2内にどれだけの熱量が残っているかやどこまで沸き増しで補充されたかを検知し、又貯湯タンク2内の上下方向の温度分布も検知するものである。
【0016】
前記リモコン5には、給湯設定温度を設定する給湯温度設定スイッチ36、及び風呂設定温度を設定する風呂温度設定スイッチ37がそれぞれ設けられていると共に、浴槽6へ風呂設定温度の湯をリモコン5の湯張り量設定スイッチ(図示せず)で設定された湯張り量だけ湯張りし所定時間保温及び、浴槽6内の水位が所定量低下すると設定された水位まで所定温度の補水を行わせる風呂自動スイッチ38と、浴槽水を追い焚きさせる追い焚きスイッチ39が設けられているものである。
【0017】
40は貯湯タンクユニット1内の各センサの入力を受け各アクチュエータの駆動を制御するマイコンを有し制御部を構成する給湯制御部である。この給湯制御部40に前記リモコン5が無線または有線により接続されユーザーが任意の給湯設定温度および風呂設定温度を設定できるようにしているものであり、この風呂設定温度+アルファー(約+10℃位)が沸き増し目標温度となるものである。
【0018】
前記給湯制御部40には、リモコン5の風呂自動スイッチ38或いは追い焚きスイッチ39が押されていることを条件として、貯湯タンク2内の熱量が保温や追い焚きが出来ない温度や量まで低下したことを検知して、自動的に上記したヒートポンプユニット3を駆動させる沸き増し運転を行わせる判断をする熱量確保手段41を備えている。
【0019】
42は風呂自動スイッチ38のONによる風呂自動運転時に自動的に補水を行う自動補水手段で、風呂往き管19に設けた圧力センサから成る水位センサ43で浴槽6の水位を監視し、所定水位以下を検知して設定水位まで風呂設定温度の温水を湯張り管31を介して補水するものである。
【0020】
44は風呂自動スイッチ38のONによる風呂自動運転時に保温の為の追い焚きを行う自動保温手段で、タイマー手段45を有し4時間の保温中、20分毎に風呂循環ポンプ20を駆動して、風呂戻り温度センサ25で現在の浴槽6内の湯温を検知し、所定温度以下の検知で風呂熱交換器18を利用した追い焚きを行い、風呂設定温度より1℃低い温度まで追い焚きして保温を行うものである。
【0021】
なお、46は貯湯タンク2の過圧を逃す過圧逃し弁、47は給水の圧力を減圧する減圧弁、48は給湯する湯水の量をカウントする給湯流量カウンタ、49は給水の温度を検出する給水温度センサである。
【0022】
次にこの第1実施形態の作動を説明する。
まず、深夜電力時間帯になって貯湯温度センサ35が貯湯タンク2内に翌日に必要な熱量が残っていないことを検出すると、給湯制御部40はヒーポン制御部17に対して沸き上げ開始指令を発する。指令を受けたヒーポン制御部17は圧縮機11を起動した後に加熱循環ポンプ16を駆動開始し、貯湯タンク2下部に接続された往き管9から取り出した5〜20℃程度の低温水を冷媒−水熱交換器12で70〜90℃程度の高温に加熱し、貯湯タンク2上部に接続された戻り管10から貯湯タンク2内に戻し、貯湯タンク2の上部から順次積層して高温水を貯湯して行く。貯湯温度センサ35が必要な熱量が貯湯されたことを検出すると、給湯制御部40はヒーポン制御部17に対して沸き上げ停止指令を発し、ヒーポン制御部17は圧縮機11を停止すると共に加熱循環ポンプ16も停止して沸き上げ動作を終了するものである。
【0023】
次に給湯運転について説明すると、給湯栓4を開くと、給水管8からの給水が貯湯タンク2内に流れ込む。そして貯湯タンク2に貯められた高温水が出湯管7を介して給湯混合弁27へ流入し、給水バイパス管28からの低温水と混合され、給湯制御部40により給湯混合弁30の混合比率が調整されて給湯設定温度の湯が給湯栓4から給湯される。そして、給湯栓4の閉止によって給湯が終了するものである。
【0024】
一方、風呂の追い焚きは、リモコン5の風呂自動スイッチ38や追い焚きスイッチ39を押圧することで行われるもので、風呂循環ポンプ20の駆動で温度低下した浴槽水を風呂熱交換器18を流通させ、貯湯タンク2内の高温水と熱交換させることにより昇温して浴槽6に戻す循環を順次行い、風呂往き温度センサ26による戻り湯温が風呂設定温度に達すると風呂の追い焚きを終了するものであり、保温時の追い焚きも同様に行われるものである。
【0025】
次に沸き増し運転の判断について説明すると、貯湯温度センサ35によって貯湯タンク2内の風呂熱交換器18が位置する上部の熱量を検知し、ステップ50で風呂設定温度に対する貯湯タンク2内の熱量から、熱量確保手段41が追い焚きには熱量が不足すると判断した時には、YESでステップ51に進み更に熱量確保手段41によりリモコン5の風呂自動スイッチ38や追い焚きスイッチ39が押されている状態かを判断し、押されている場合のYESの時のみステップ52で沸き増し運転を行うものである。
【0026】
そして沸き増し運転は、加熱循環ポンプ及びヒーポン制御部17及び三方弁24を駆動して行われるもので、ヒートポンプユニット3による沸き増し運転が開始され、三方弁24は沸き増し運転であるので、戻し管10側を閉塞すると共に、中間戻し管23側を開口状態とし、ヒートポンプユニット3で高温に加熱された加熱温水を、貯湯タンク2上部の風呂熱交換器18の位置する部分に集中的に供給して沸き増し時間の短縮を図るものであり、目標温度、目標量の加熱温水の貯湯で沸き増し運転を終了し、前記した追い焚き運転が開始されるものである。
【0027】
従って、風呂の保温や追い焚きがリモコン5で指示され、使用者の要求が明確である時に限って、貯湯タンク2内の熱量が減少して保温や追い焚きが出来なくなった時には、自動的に沸き増し運転をして、指示がある時には保温や追い焚きが可能な熱量を確保し、使用者の要求に確実に答えるようにしたものであり、又常に沸き増しを行うものでなく、リモコン5によって使用者の要求が確認出来る時のみ行うので、使用者の納得も得られ経済的にも良いものである。
【0028】
又沸き増し時にヒートポンプユニット3で加熱された加熱温水は、中間戻し管23を介して風呂熱交換器18が位置する貯湯タンク2上部に直接戻されるので、沸き増しが必要な部分を直に沸き増しすることが出来、無駄な沸き増しをしない分、短時間に追い焚きへと移行させ、経済的な沸き増しで効率の良い加熱が行え、極めて使用勝手が良いものである。
【0029】
次に図4に示すこの発明の第2実施形態について説明するが、第1実施形態と同一部分は同一符号を付して説明は省略し、相違する部分のみを説明する。
風呂熱交換器18が貯湯タンク2外に出た外熱交方式で、貯湯タンク2上部と風呂熱交換器18とは送湯管53で連通し、貯湯タンク2上部の高温水と浴槽水とを熱交換して、低温となった湯水を熱交ポンプ54を備えた返湯管55を介して貯湯タンク2下部に戻すようにしたものである。
【0030】
この構成に於いて、風呂熱交換器18が外にあるだけで第1実施形態と同様な効果を得られるものであり、又沸き増し時には送湯管53の接続口部分と対向した中間戻し管23から、加熱温水を戻すようにしたことで、風呂熱交換器18へ熱交換用として送られる湯水を優先して形成出来るものである。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】この発明の第1実施形態を示す貯湯式給湯装置の概略構成図。
【図2】同要部電気回路のブロック図。
【図3】同沸き増し運転の判断を説明するフローチャート。
【図4】この発明の第2実施形態を示す貯湯式給湯装置の概略構成図。
【符号の説明】
【0032】
2 貯湯タンク
3 ヒートポンプユニット(加熱手段)
5 リモコン
6 浴槽
18 風呂熱交換器
20 風呂循環ポンプ
22 風呂循環回路
41 熱量確保手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱手段で加熱された湯水を貯湯する貯湯タンクと、浴槽に接続される風呂循環回路と、浴槽の湯水を風呂循環回路に循環させる風呂循環ポンプと、風呂循環回路を循環する浴槽の湯水を前記貯湯タンク内の湯と熱交換させる風呂熱交換器を備え、前記風呂熱交換器により貯湯タンク内の湯水との熱交換で風呂の保温や追い焚きを行うものに於いて、前記風呂の保温や追い焚きをリモコンのスイッチ操作で指示されていることを条件とし、貯湯タンク内の熱量が減少して保温や追い焚きが出来なくなった時には、加熱手段による沸き増し運転を行わせる熱量確保手段を備えた事を特徴とする貯湯式給湯装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−308123(P2006−308123A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−127616(P2005−127616)
【出願日】平成17年4月26日(2005.4.26)
【出願人】(000000538)株式会社コロナ (753)