説明

貯湯式電気温水器

【発明の詳細な説明】
[産業上の利用分野]
本発明は貯湯式電気温水器に関するものである。
[従来の技術]
従来の貯湯式電気温水器では、深夜電力供給専用の給電線から電力の供給を受けているため、深夜電力時間帯内でのみ湯を沸き上げている。しかしながら最近、電力需給バランスの関係から、深夜電力時間帯以外でも深夜電力供給専用の給電線から電力を供給することが検討され、現実化されようとしている。
そこでこのような電力供給体制にも対応できるものとして、深夜電力時間帯以外の電力や一般電灯用電源を利用し、湯の使用状態及び使用予定に応じて必要な湯の追い焚き(追加加熱)を行う技術が提案されている。この種の公知技術としては、例えば特開平2−169958号、特開昭2−217748号、特開昭2−219948号、特開平2−219949号等がある。これらの公報に記載されている技術では、貯湯タンク内の下部に配置された下部発熱体を用いて主たる加熱(以下主加熱と言う。)を行う深夜電力時間帯のような特定電力時間帯を自由に設定できるようにしている。そして、これら従来の技術では基本的には特定電力時間帯以外の時間帯において追加加熱を行う。追加加熱は、貯湯タンク内の上部に上部発熱体を設けてこの上部発熱体を加熱するか(特開平2−169958号、特開平2−217748号、特開昭2−219948号)、上部発熱体を設けずに下部発熱体を加熱する(特開平2−219949号)かのいずれかによって行う。なお、追加加熱を行うために、上部発熱体を用いる技術は、特開昭57−166443号公報に開示されており、特に目新しい技術ではない。
[発明が解決しようとする課題]
上部発熱体を用いて追加加熱(追い焚き)を行う場合には、上部発熱体よりも上方の部分の湯だけが沸かされるため、ある程度少量の湯が使用されたときには十分に対処できるものの、比較的大量の湯が使用されたときには対処できない。これに対して上部発熱体を用いずに下部発熱体のみで追加加熱を行う場合には、少量の湯の追加加熱が必要な場合でも、下部発熱体より上方にある必要以上の量の湯を追加加熱しなければならず、著しく不経済である。
また従来の技術では、特定電力時間帯以外の時間で追加加熱を行うことを原則としているため、特定電力時間帯内においてある程度の量の湯が使用されると、通電時間帯内において予定通りに湯を沸き上げることができない事態が発生する。また従来の温水器では、上部発熱体を用いて追加加熱を行う場合に、上部発熱体の電源を100Vの商用電源から取り、下部発熱体の電源を200Vの商用電源から取るものもあり、このようにすると追加加熱のために100Vの商用電源の電力契約量を増加しなければならない事態も発生し、維持費が高くなる問題が生じる。
更に従来の上部発熱体を用いた追加加熱では、1個の温度センサを用いて追加加熱による湯温の上昇を測定し、追加加熱による湯温の上昇が設定値になると追加加熱を停止する構成を採用している。しかしながら貯湯タンク内の湯温は一定ではなく、1個の温度センサだけで湯温を測定した場合には、貯湯タンク内の頂部の湯が沸騰しても追加加熱が継続されて、著しく危険な状態が発生する場合がある。
本発明の目的は、上記問題を解決することができる貯湯式電気温水器を提供することにある。
[課題を解決するための手段]
第1図に示した実施例に見られるように、本発明の貯湯式電気温水器は、貯湯タンク2と、貯湯タンク2の内部の下部に配置された下部発熱体H1と、貯湯タンク2の内部の上部に配置された上部発熱体H2と、下部発熱体H1より上方の湯の湯温を測定する下部湯温測定手段(3,TS3)と、上部発熱体H2より上方の湯の湯温を測定する上部湯温測定手段(4,TS1,TS2)と、下部発熱体H1及び上部発熱体H2の選択された一方の発熱体に通電が行われるように通電路を切替える通電路切換手段5と、主加熱制御手段101と、追加加熱制御手段102と追加加熱制御手段に前記追加加熱指令を与える追加加熱指令設定手段107とから構成される。
そして主加熱制御手段101は、所定のデータに基いて深夜電力通電時間帯のような特定電力通電時間帯における通電開始時刻を演算により求め、通電路切換手段5に駆動指令を与えて通電開始時刻から下部発熱体H1に通電を開始するように通電路を切替えて貯湯タンク2内の湯温を所定の温度まで沸き上げるように下部発熱体H1への通電を制御する。
追加加熱制御手段102は、特定電力通電時間帯を含む全通電時間帯内において、追加加熱指令及び上部湯温測定手段または下部湯温測定手段からの出力に応じて通電路切替手段に駆動指令を与えて通電路を切替えることにより下部発熱体及び上部発熱体への通電を制御する。そして追加加熱制御手段102は、特定電力通電時間帯終了後から通電開始時刻前迄は指令された追加加熱モードに従って上部発熱体H2または下部発熱体H1による追加加熱を実行し且つ通電開始時刻後は主加熱制御手段101による下部発熱体H1の加熱に優先して上部発熱体H2による追加加熱を実行する。
また本発明では、追加加熱制御手段102から、追加加熱指令により上部発熱体H2を用いる追加加熱が指令されると、上部湯温測定手段4により測定した測定湯温が所定の通電開始条件または通電停止条件を満たしたときに上部発熱体H2への通電の開始または停止を行う上部発熱体通電制御手段103と、追加加熱指令により下部発熱体H1を用いる追加加熱が指令されると、下部湯温測定手段3により測定した測定湯温が所定の通電開始条件または通電停止条件を満たしたときに下部発熱体への通電の開始または停止を行う下部発熱体通電制御手段104とから構成される。そして上部発熱体通電制御手段103は、下部発熱体通電制御手段104に優先して制御を行う。
特に本出願の請求項1の発明では、上部湯温測定手段4が上部発熱体H2の上方に配置された第1及び第2の温度センサTS1及びTS2を含んで構成される。第1の温度センサTS1を貯湯タンク2内の頂部付近の湯温を検知するように配置し、第2の温度センサTS2は第1の温度センサTS1よりも下方の湯温を検知するように配置する。そして上部発熱体制御手段103は、第1の温度センサTS1及び前記第2の温度センサTS2のそれぞれが予め定めた温度より低い温度を測定しているときには上記発熱体H2への通電を許容し、通電開始後は第1の温度センサ及び前記第2の温度センサの何れか一方がそれぞれのセンサについて予め定めた温度を測定すると上部発熱体H2への通電を停止させる。
請求項2の発明では、下部発熱体通電制御手段104が、特定電力時間帯以外の通電時間帯において予め定めた一定の時間帯内においてのみ下部発熱体H1への通電を行う。
請求項3の発明では、追加加熱を上部発熱体H2で行う場合に、請求項1の発明と同様にして第1及び第2の温度センサを用いて上部発熱体通電制御手段103が上部発熱体H2の通電を制御する。
[作 用]
本発明においては、下部発熱体H1を用いた主加熱とは別に、上部発熱体H2または下部発熱体H1を用いて追加加熱を行うことができるため、湯の使用量の多少に応じて確実に且つ経済的に追加加熱できる。すなわち残湯量が少なくなった時には、上部発熱体H2を用いて比較的少量の湯を短時間に且つ経済的に自動追加加熱することができ、湯の使用量が多いと予測される場合には予め下部発熱体H1を用いて必要な湯量を少し時間をかけて追加加熱することができる。
また本発明のようにすると、深夜電力時間帯のような特定時間帯を含む一日中、湯が使用されると上部発熱体H2によって追加加熱を行えるため、貯湯が少ない特定時間帯においても必要な湯を短時間に確保できる。さらに本発明においては、通電路切替手段5を設けて、上部発熱体及び下部発熱体H1を共通の電源から通電することができるため、追加加熱のために、わざわざ電力契約量を増加する必要がない。
特に請求項1及び3の発明においては、貯湯タンク2内の頂部に配置した第1の温度センサTS1と該第1の温度センサより下方に配置される第2の温度センサTS2の出力を用いて上部発熱体H2の制御を行う。特に第1の温度センサTS1を用いることにより貯湯タンク2内の頂部の湯が沸騰しないように制御することができ、また第1の温度センサTS1と第2の温度センサTS2とを組合せることにより上部発熱体H2の上方の湯中に生じる温度差によって、十分な追加加熱ができなくなるのを防止できる。第1の温度センサTS1は貯湯タンク2内の頂部付近の湯の沸騰を防止し、第2の温度センサTS2は必要な追加加熱の開始時期を決定する。
請求項2の発明においては、下部発熱体H1を用いた追加加熱を一定の時間に限定することにより、予め湯が大量に使用される時間帯を避けて経済的に追加加熱を行うことができる。
[実施例]
以下図面を参照して、本発明の実施例を詳細に説明する。
[実施例の構成]
第1図は本発明の貯湯式電気温水器の一実施例の概略構成図を示しており、第2図は発熱体への通電回路の要部を示している。なお第1図においては、電気回路も概略的に示してある。本実施例は、マイクロコンピュータを用いて制御を行うタイプの温水器に本発明を適用した例であり、制御装置1はハードウエアの構成で見れば、演算処理を行うCPU、各センサからの入力を演算処理に必要なデジタル信号に変換するA/D変換器、条件を入力するための入力回路、データ及びソフトを記憶するメモリ、各制御対象に指令を出力する出力回路等を含んで構成される。なお第1図には、制御装置1内にソフトによって構成される各手段を示してある。
2は貯湯タンクであり、貯湯タンク2の内部には下方から水が供給され、上方から湯が出力される。貯湯タンクの下部には、貯湯タンク2内の水を全体的に沸き上げるための下部発熱体H1が設けられており、貯湯タンク内の上部には追い焚き用の上部発熱体H2が設けられている。最大貯湯湯量は下部発熱体H1の位置で決められ、追い焚き湯量は上部発熱体H2の位置で決められる。なお本実施例では、下部発熱体H1と上部発熱体H2の選択した一方を用いて追加加熱を行うが、本願明細書では上部発熱体H2を加熱して行う追加加熱を追焚といい、下部発熱体H1を加熱して追加加熱を増焚という。
下部発熱体H1の上には、貯湯タンク2の下部の湯温を測定する下部湯温測定手段3としてサーミスタ等からなる温度センサTS3が設けられている。また該温度センサの近くには湯が沸騰する前に下部発熱体H1への通電を自動的に遮断するサーモスタットを用いた過昇防止器TH1が設けられている。上部発熱体H2の上方には、上部発熱体H2より上方の湯温を測定するサーミスタ等からなる第1及び第2の温度センサTS1及びTS2が設けられている。これら第1及び第2の温度センサTS1及びTS2によって上部湯温測定手段4が構成され、第1の温度センサTS1は貯湯タンク内の頂部の湯温を測定し、第2の温度センサTS2は上部発熱体H2の上方近くの湯温を測定する。また第2の温度センサTS2の近くにも、湯が沸騰する前に上部発熱体H2への通電を自動的に遮断するサーモスタットを用いた過昇防止器TH2が設けられている。
なお第1図においては、図面をより簡略化するために各温度センサTS1〜TS3の駆動制御回路及び過昇防止器への配線は省略してある。また理解を容易にするために、下部湯温測定手段3及び上部湯温測定手段4を概念的にブロックで示してある。
下部発熱体H1及び上部発熱体H2への交流電源ACからの通電は、通電路切替手段5を介して行われる。図面は概略図であるため、交流電源ACと通電路切替手段5との間に配置される電源回路は省略してある。なお上部及び下部発熱体H2及びH1は、直流電源によって駆動されるものであっても好い。なおこの例では交流電源ACとして交流200Vが用いられる。通電路切替手段5は、制御装置1からの駆動指令に従ってスイッチSW1及びSW2を駆動して、下部発熱体H1及び上部発熱体H2への通電を切替えるスイッチ駆動手段501を備えている。スイッチ駆動手段501は、スイッチSW1の可動接点が固定接点t2と接触しているときには、上部発熱体H2に交流電源ACから電流を通電して上部発熱体H2を加熱し、スイッチSW1の可動接点が固定接点t1と接触し且つスイッチSW2が閉じているときには、交流電源ACから下部発熱体H1への通電が行われる。
制御装置1は、主加熱制御手段101と追加加熱制御手段102とを有しており、追加加熱制御手段102は上部発熱体通電制御手段103と下部発熱体通電制御手段104とを備えている。主加熱制御手段101は、深夜電力時間帯のような特定通電時間帯において下部発熱体H1への通電を制御することにより、貯湯タンク2内の湯を所定の温度まで沸き上げる。本実施例では、湯温設定手段105によって設定した湯温まで沸き上げるよう下部発熱体H1の通電時間を演算により求めて制御を行う。通電時間の演算は、公知の方法に基いて行えばよく、本実施例では貯湯タンク2に設けた残湯量センサS1〜S3によって測定した残湯量、水温、湯温設定手段105によって設定した沸き上げ湯温等に基いて必要通電時間を演算して通電開始時刻を決定する。なお自動的に沸き上げ湯温を決定する場合にも、本発明を適用できるのは勿論である。
なお24時間電力が供給される場合には、従来のように電力の供給開始及び停止によって深夜電力時間帯のような特定通電時間帯を検知することができなくなる。そこで特定通電時間帯を制御装置1に内蔵した図示しない時計機能を有するタイマ部に記憶させる必要が生じる。本実施例では特定通電時間帯設定手段106によりタイマ部に特定通電時間帯を設定する。なお特定通電時間帯が、可変されずに固定される場合には、特に特定通電時間帯設定手段106を設けずに、最初からタイマ部に特定通電時間帯を永久設定しておけばよい。
追加加熱制御手段102は、追加加熱指令設定手段107から出力された追加加熱指令に従って、上部発熱体H2または下部発熱体H1を追加加熱する。追加加熱指令によって設定する追加加熱モードは任意であるが、本発明においては上部発熱体H2による追加加熱(追焚)が、下部発熱体H1による追加加熱(増焚)に優先する。そして上部発熱体と下部発熱体の両方が、同時に加熱されることは無い。追加加熱モードの代表的な例を下記に示す。
■追焚モード…上部発熱体だけで追加加熱を行う。
■追焚・増焚モード…上部発熱体と下部発熱体とを用いて追加加熱を行う。
■増焚モード…下部発熱体だけで追加加熱を行う。
上記モードは、追焚を行う時間及び温度の条件によって更に具体的なモードに分けることができる。上部発熱体通電制御手段103は、追加加熱指令と上部湯温測定手段4(TS1,TS2)からの湯温データに基いて上部発熱体H2の通電を制御する。
本実施例では、特に上部湯温測定手段4が第1の温度センサTS1と第2の温度センサTS2とからなり、第1の温度センサTS1は貯湯タンク2内の頂部の湯温が沸騰しない範囲で追焚を行うために設けられており、第2の温度センサTS2は追焚のための通電開始時期を決定するために設けられる。上部発熱体通電制御手段103の追焚開始条件は、第1の温度センサTS1が頂部の湯温が簡単に沸騰しない湯温を検出しており、第2の温度センサTS2が追焚を必要とする湯温を検出していることである。また追焚停止条件は、第1の温度センサTS1が湯が短時間に沸騰する危険温度を検知するかまたは、第2の温度センサが所定の湯温を検知した場合である。第1及び第2の温度センサTS1及びTS2のいずれが先に設定温度を検知するかは、設定温度、追焚容量、発熱体の出力によって異なるが、沸上げ温度をできるだけ高く取るため、基本的には第1の温度センサTS1が最高温度を検出する場合が先になる。ちなみに上部発熱体H2の上部の容量(追焚容量)が約50■で、上部発熱体H2が4.4kWのヒータである場合の好ましい検出温度の範囲は下記の通りである。
(追焚開始条件)
第1の温度センサ…90〜93℃以下の湯温を測定していること。
第2の温度センサ…沸き上げ設定温度より20〜26℃低い湯温を測定していること。
(追焚停止条件)
第1の温度センサ…91〜94℃以上の湯温を測定していること。
第2の温度センサ…80〜84℃以上の湯温を測定していること。
下部発熱体通電制御手段104の制御により行なう増焚は、上部発熱体H2による追焚によって沸き上げる湯量よりも多い湯量を追加加熱する場合に用いるのが適している。増焚は貯湯タンク内の湯を全部沸き上げるものであるため、実際の湯の使用量によっては即応性に欠け且つ不経済になることもあり、また後の深夜電力時間帯における沸き上げで必要な湯量を確保できる場合もあり、更に時間帯によっては追焚で対応する方が好ましい場合もある。そこで本実施例では、深夜電力時間帯、通常湯の使用量が多くなる時間帯等を避けて増焚を行う。そのために下部発熱体通電制御手段104に対しては、増焚を行う時間帯を設定するための時間帯設定手段108が設けられている。一般的な家庭を想定した場合における増焚に好ましい時間帯は、12〜17時の範囲であると考えられる。但しこの範囲は、湯の使用条件によって変わるため、本実施例ではこの範囲を可変にしている。湯の使用量が極端に多い場合には、24時間増焚を行えるようにしてもよい。上記追焚の場合と同様の条件における、増焚の開始条件と停止条件の例を下記に示す。
(増焚開始条件)
下部湯温測定手段3…沸き上げ設定湯温より13〜18℃以下の湯温を測定していること。
時刻…設定した通電時間帯であること。(増焚停止条件)
下部湯温測定手段3が沸き上げ設定湯温を測定するか、設定した通電時間帯が終了すること。
[実施例の動作]
次に上記実施例を、運転する場合の動作を説明する。なおこの動作は、制御装置1を構成するマイクロコンピュータのメモリに記憶させたソフトウエアによって実行される。第3図(A)ないし(C)は、ソフトウエアのフロー・チャートの一例を示している。
この第3図(A)の例では特定通電時間帯を可変に制御できるため、まず特定通電時間帯設定手段106により深夜電力時間帯のような特定電力通電時間帯(以下簡略化のために特定時間帯という。)を設定する(ステップST1)。実施例では深夜電力通電時間帯(23時〜7時)設定するものとする。次に湯温設定手段105により設定した希望の沸き上げ湯温を確認する(ステップST2)。なおこの沸き上げ湯温は、いつでも変更可能なものであり、本実施例では常に制定した沸き上げ湯温の変更をチェックできる体制になっている。次に追加加熱指令設定手段107によって追加加熱モードを設定する。なおこの追加加熱モードもいつでも変更が可能である。
特定時間帯(23時〜7時)であるか否かを確認し(ステップST4)、特定時間帯以外であれば、追加加熱モードの内容をチェックし、特定時間帯内であれば第3図(B)のルーチンへと進む。第3図(A)は特定時間帯以外(7〜23時)の間のフローを示している。
常に追焚を優先するために、まず追焚指令があるか否を確認し(ステップST5)、追焚指令がある場合には、追焚を実行する。そのために追焚条件が揃っているか否かをみるために上部発熱体H2より上の湯温を確認する(ステップST6及び7)。第1及び第2の温度センサTS1及びTS2が、追焚開始条件を満たしている場合には、通電路切替手段5が通電路を上部発熱体H2側に切替えて通電を開始する(ステップST8及び9)。このとき通電路切替手段5内のスイッチSW1は固定接点t2に接触し、スイッチSW2は開いている。追焚開始条件を満たしていない場合には、後述するステップST14へと進む。なおステップST6及び7、後述するステップST10及び11に記載した温度条件は一例である。
上部発熱体H2による追焚が開始されて、追焚停止条件が揃った場合には、追焚は停止される。この例では第1及び2の温度センサTS1及びTS2のいずれかが所定の温度を検出した場合である(ステップST10または11)。追焚停止条件が満たされると、上部発熱体H2への通電が停止され(ステップST12)、同時に通電路が下部発熱体H1側に切替えられる(ステップST13)。この状態ではスイッチSW1の可動接触子が固定接点t1に接触しており、スイッチSW2は開いた状態にある。ステップST14では、追焚指令があるかまたは増焚指令があるかを判断し、増焚指令があれば、増焚条件が満たされているか否かを判断するためにステップST17へと進む。
ステップST5で追焚指令が無く増焚指令があることを確認すると、ステップST15に進んで、通電路を下部発熱体H1側に切替える。すなわちスイッチSW1の可動接触子が固定接点t1に接触し、スイッチSW2が開いた状態になる。追焚及び増焚のいずれもが指定されていない場合には、フローの最初に戻る。増焚指令の場合には、時間帯設定手段108で任意に設定した時間帯(12時〜16時)であるかを確認し(ステップST17)、設定時間帯内であれば増焚条件が満たされているか否かを判断する(ステップST18)。この例では下部湯温測定手段3(第3の温度センサTS3)が湯温設定手段105で設定した設定温度より−15℃より低い温度を検出すると(ステップST18)、増焚を開始すために下部発熱体H1をオン状態(通電状態)にする(ステップST19)。具体的には、スイッチSW2が閉じられる。下部発熱体H1への通電開始後、増焚停止条件が満たされると、下部発熱体への通電は停止される(ステップST20及び21またはステップST22)。増焚停止条件は、下部湯温測定手段3(温度センサTS3)が設定温度を検出するか、時間帯が終了時間(16時)になるかのいずれかである。増焚後及び時間帯が終了時間(16時)になると、追加加熱モードの変更で追焚指令が入力されているか否かを見るために、ステップST2に戻る。
次に第3図(B)に示した特定時間帯(深夜電力通電時間帯)における動作を説明する。第3図(A)のステップST5で特定時間帯内であることが判定されると、ステップST23において下部発熱体H1を用いた主加熱制御のために、下部発熱体H1への通電開始時刻の演算が開始される。特定時間帯中においても、主加熱のための下部発熱体H1への通電開始時刻前にあっては、追焚と増焚が実行される。但しここでの増焚は、増焚時間が特定時間帯と重なるように設定されるか、または増焚時間が24時間と設定された場合に実行される。ステップST25からステップST34までの動作は第3図(A)のステップST5からステップST14までと同じであるため説明は省略する。増焚が設定されている場合には、ステップST35へと進み、増焚条件が満たされているか否かの判定が行われる(ステップST37)。増焚条件が満たされれば、増焚として通電開始時刻前でも下部発熱体H1への通電が開始され(ステップST38)、下部湯温測定手段3で測定した湯温が設定温度になると下部発熱体H1への通電を停止する(ステップST39及び40)。ここでも温度設定及び追加加熱モードの変更に対応するために、設定温度に達していない場合には、ステップST39からステップST2に戻るようになっている。
次に第3図(C)に示した特定時間帯(深夜電力通電時間帯)内における通電開始時刻以降の動作を説明する。まず通電時間帯になると増焚設定が解除される(ステップST41)。そして追焚指令があるか否かの判定が行われ(ステップST42)、常に追焚が優先するようになっている。追焚指令がある場合には、ステップST43〜ステップST50に従って追焚制御が行われる。なおステップST43〜ステップST50は、第3図(A)のステップST6〜ステップST13と実施的に同じであるため説明を省略する。なおステップST43及びステップST44において、追焚開始条件が満たされない場合には、いつでも下部発熱体H1による主加熱を継続するように、後述するステップST52に進むようになっている点が第3図(A)の場合とは異なる。
追焚指令がない場合には、通電路が下部発熱体側に切替えられて(ステップST51)、下部発熱体H1への通電が開始される(ステップST52)。そして設定温度になると下部発熱体H1への通電が停止される(ステップST53及び54)。深夜電力通電時間帯が終了した時(7時)に、湯恩が設定温度に達しない場合でも下部発熱体H1への通電は停止される(ステップST57及び58)。本実施例では下部発熱体H1への通電を停止した時点で、まだ深夜電力通電時間帯が終了していないときには、大量に湯が使用された場合を考慮して、湯温の再加熱条件が満たされると自動的に再加熱を行うようになっている(ステップST56)。
動作は以上の通りであるが、本発明は上記実施例にのみ限定されるものではない。特に請求項3に記載の発明を実施する場合には、増焚は必須の要件ではないため、追焚と主加熱とを行うように制御装置1を構成してもよい。その場合には、下部発熱体通電制御手段が不要になる。
本発明によれば、下部発熱体を用いた主加熱とは別に、上部発熱体又は下部発熱体を用いて追加加熱を行うことができるため、湯の使用量の多少に応じて確実に且つ経済的に追加加熱できる。すなわち残湯量が少なくなった時に、上部発熱体を用いて比較的少量の湯を短時間に且つ経済的に自動追加加熱することができ、湯の使用量が多いと予測される場合には予め下部発熱体を用いて必要な湯量を少し時間をかけて追加加熱することができる。
また本発明によれば、深夜電力時間帯のような特定時間帯を含む一日中、湯が使用されると上部発熱体によって追加加熱を行えるため、貯湯量が少ない特定時間帯においても必要な湯を短時間に確保できる。さらに本発明においては、通電路切替手段を設けているため、上部発熱体及び下部発熱体のそれぞれに別電源を用意する必要がなく、電力契約量を増加させる必要性が生じることがない。
[発明の効果]
請求項1及び3の発明によれば、貯湯タンク内の頂部に配置した第1の温度センサと該第1の温度センサより下方に配置される第2の温度センサの出力を用いて上部発熱体の制御を行う。特に第1の温度センサを用いることにより貯湯タンク内の頂部の湯が沸騰しないように制御することができ、また第1の温度センサと第2の温度センサとを組合せることにより上部発熱体の上方の湯中に生じる温度差によって、十分な追加加熱ができなくなるのを防止できる。
請求項2の発明によれば、下部発熱体を用いた追加加熱を一定の時間に限定することにより、予め湯が大量に使用される時間帯を避けて経済的に追加加熱を行うことができる利点がある。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明の一実施例の概略構成図、第2図は上部発熱体及び下部発熱体への具体的な通電回路を示す図、第3図(A)ないし(C)は実施例の動作を説明するためのフローチャート図である。
1……制御装置、2……貯湯タンク、3……下部湯温測定手段、4……上部湯温測定手段、5……通電路切替手段、101……主加熱制御手段、102……追加加熱制御手段、103……上部発熱体通電制御手段、104……下部発熱体通電制御手段、105……湯温設定手段、106……特定通電時間帯設定手段、107……追加加熱指令設定手段、108……時間帯設定手段。

【特許請求の範囲】
【請求項1】貯湯タンクと、前記貯湯タンクの内部の下部に配置された下部発熱体と、前記貯湯タンクの内部の上部に配置された上部発熱体と、前記下部発熱体と前記上部発熱体との間に配置されて湯温を測定する下部湯温測定手段と、前記上部発熱体より上部に配置されて湯温を測定する上部湯温測定手段と、前記下部発熱体及び前記上部発熱体の選択された一方の発熱体に通電が行われるように通電路を切替える通電路切替手段と、所定のデータに基いて深夜電力通電時間帯のような特定電力通電時間帯における通電開始時刻を演算により求め、前記通電路切替手段に駆動指令を与えて前記通電開始時刻から前記下部発熱体に通電を開始するように前記通電路を切替えて前記貯湯タンク内の湯温を所定の温度まで沸き上げるように前記下部発熱体への通電を制御する主加熱制御手段と、前記特定電力通電時間帯を含む全通電時間帯内において、追加加熱指令及び前記上部湯温測定手段または下部湯温測定手段からの出力に応じて前記通電路切替手段に駆動指令を与えて前記通電路を切替えることにより前記下部発熱体及び上部発熱体への通電を制御する追加加熱制御手段と、前記追加加熱制御手段に前記追加加熱指令を与える追加加熱指令設定手段とを具備し、前記追加加熱制御手段は、前記特定電力通電時間帯終了後から前記通電開始時刻前迄は指令された追加加熱モードに従って前記上部発熱体または下部発熱体による追加加熱を実行し且つ前記通電開始時刻後は前記主加熱制御手段による前記下部発熱体の加熱に優先して前記上部発熱体による追加加熱を実行し、前記追加加熱制御手段は、前記追加加熱指令により前記上部発熱体を用いる追加加熱が指令されると、前記上部湯温測定手段により測定した測定湯温が所定の通電開始条件または通電停止条件を満たしたときに前記上部発熱体への通電の開始または停止を行う上部発熱体通電制御手段と、前記追加加熱指令により前記下部発熱体を用いる追加加熱が指令されると、前記下部湯温測定手段により測定した測定湯温が所定の通電開始条件または通電停止条件を満たしたときに前記下部発熱体への通電の開始または停止を行う下部発熱体通電制御手段とを具備し、前記上部発熱体通電制御手段は前記下部発熱体通電制御手段に優先して制御を行い、前記上部湯温測定手段は前記上部発熱体の上方に配置された第1及び第2の温度センサを備えており、前記第1の温度センサは前記貯湯タンク内の頂部付近の湯温を検知するように配置され、前記第2の温度センサは前記第1の温度センサよりも下方の湯温を検知するように配置され、前記上部発熱体通電制御手段は、前記第1の温度センサ及び前記第2の温度センサのそれぞれが予め定めた温度より低い温度を測定しているときには前記上部発熱体への通電を許容し、通電開始後は前記第1の温度センサ及び前記第2の温度センサの何れか一方がそれぞれのセンサについて予め定めた温度を測定すると前記上部発熱体への通電を停止させることを特徴とする貯湯式電気温水器。
【請求項2】貯湯タンクと、前記貯湯タンクの内部の下部に配置された下部発熱体と、前記貯湯タンクの内部の上部に配置された上部発熱体と、前記下部発熱体と前記上部発熱体との間に配置されて湯温を測定する下部湯温測定手段と、前記上部発熱体より上部に配置されて湯温を測定する上部湯温測定手段と、前記下部発熱体及び前記上部発熱体の選択された一方の発熱体に通電が行われるように通電路を切替える通電路切替手段と、所定のデータに基いて深夜電力通電時間帯のような特定電力通電時間帯における通電開始時刻を演算により求め、前記通電路切替手段に駆動指令を与えて前記通電開始時刻から前記下部発熱体に通電を開始するように前記通電路を切替えて前記貯湯タンク内の湯温を所定の温度まで沸き上げるように前記下部発熱体への通電を制御する主加熱制御手段と、前記特定電力通電時間帯を含む全通電時間帯内において、追加加熱指令及び前記上部湯温測定手段または下部湯温測定手段からの出力に応じて前記通電路切替手段に駆動指令を与えて前記通電路を切替えることにより前記下部発熱体及び上部発熱体への通電を制御する追加加熱制御手段と、前記追加加熱制御手段に前記追加加熱指令を与える追加加熱指令設定手段とを具備し、前記追加加熱制御手段は、前記特定電力通電時間帯終了後から前記通電開始時刻前迄は指令された追加加熱モードに従って前記上部発熱体または下部発熱体による追加加熱を実行し且つ前記通電開始時刻後は前記主加熱制御手段による前記下部発熱体の加熱に優先して前記上部発熱体による追加加熱を実行し、前記追加加熱制御手段は、前記追加加熱指令により前記上部発熱体を用いる追加加熱が指令されると、前記上部湯温測定手段により測定した測定湯温が所定の通電開始条件または通電停止条件を満たしたときに前記上部発熱体への通電の開始または停止を行う上部発熱体通電制御手段と、前記追加加熱指令により前記下部発熱体を用いる追加加熱が指令されると、前記下部湯温測定手段により測定した測定湯温が所定の通電開始条件または通電停止条件を満たしたときに前記下部発熱体への通電の開始または停止を行う下部発熱体通電制御手段とを具備し、前記上部発熱体通電制御手段は前記下部発熱体通電制御手段に優先して制御を行い、前記下部発熱体通電制御手段は、特定電力時間帯以外の通電時間帯においては予め定めた一定の時間帯内においてのみ前記下部発熱体への通電を行うことを特徴とする貯湯式電気温水器。
【請求項3】貯湯タンクと、前記貯湯タンクの内部の下部に配置された下部発熱体と、前記貯湯タンクの内部の上部に配置された上部発熱体と、前記下部発熱体と前記上部発熱体との間に配置されて湯温を測定する下部湯温測定手段と、前記上部発熱体より上部に配置されて湯温を測定する上部湯温測定手段と、前記下部発熱体及び前記上部発熱体の選択された一方の発熱体に通電が行われるように通電路を切替える通電路切替手段と、所定のデータに基いて深夜電力通電時間帯のような特定電力通電時間帯における通電開始時刻を演算により求め、前記通電路切替手段に駆動指令を与えて前記通電開始時刻から前記下部発熱体に通電を開始するように前記通電路を切替えて前記貯湯タンク内の湯温を所定の温度まで沸き上げるように前記下部発熱体への通電を制御する主加熱制御手段と、前記通電路切替手段を駆動制御して前記上部発熱体への通電を制御する上部発熱体通電制御手段とを具備し、前記上部湯温測定手段は前記上部発熱体の上方に配置された第1及び第2の温度センサを備えてなり、前記第1の温度センサは前記貯湯タンク内の頂部付近の湯温を検知するように配置され、前記第2の温度センサは前記第1の温度センサよりも下方の湯温を検知するように配置され、前記上部発熱体通電制御手段は、前記第1の温度センサ及び前記第2の温度センサがそれぞれ予め定めた温度より低い温度を測定しているときには前記上部発熱体への通電を許容し、通電開始後は前記第1の温度センサ及び前記第2の温度センサの何れか一方がそれぞれのセンサについて予め定めた温度を測定すると前記上部発熱体への通電を停止させることを特徴とする貯湯式電気温水器。

【第1図】
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【第2図】
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【第3図(A)】
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【第3図(B)】
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【第3図(C)】
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【特許番号】第2921795号
【登録日】平成11年(1999)4月30日
【発行日】平成11年(1999)7月19日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平2−265098
【出願日】平成2年(1990)10月4日
【公開番号】特開平4−143545
【公開日】平成4年(1992)5月18日
【審査請求日】平成6年(1994)11月24日
【前置審査】 前置審査
【出願人】(999999999)九州電力株式会社
【出願人】(999999999)九州変圧器株式会社
【参考文献】
【文献】特開 平2−217748(JP,A)
【文献】特開 平2−219948(JP,A)
【文献】特開 昭63−131951(JP,A)
【文献】特開 平1−203846(JP,A)
【文献】実開 昭60−111447(JP,U)