説明

貯蔵安定な環状ケトンパーオキサイド組成物

【課題】高い総活性酸素含量を有し、製造されたポリマーの望ましくない希釈剤による汚染を防ぎ、また反応器および試薬の有効な使用に有利なパーオキサイドの提供。
【解決手段】安全かつ貯蔵安定な、1以上の環状ケトンパーオキサイド、1以上のジアルキルパーオキサイド、および所望により1以上の慣用の減感剤を含むパーオキサイド組成物。さらに、これらを重合プロセスおよび(コ)ポリマー改変プロセスにおいて使用する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1以上の結晶性環状ケトンパーオキサイド、1以上のジアルキルパーオキサイドおよび所望により、1以上の慣用の減感剤を含むパーオキサイド組成物に関する。本発明は、そのような組成物を重合プロセスおよび(コ)ポリマー改変プロセスにおいて使用する方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
米国特許第5,808,110号は、1以上の環状ケトンパーオキサイドおよび、環状ケトンパーオキサイドのための液体減感剤、可塑剤、固体ポリマー担体、無機支持体、有機パーオキサイド、およびそれらの混合物から成る群から選択される1以上の希釈剤を含む、輸送可能で貯蔵安定な環状ケトンパーオキサイド組成物を開示している。これらの組成物では、総活性酸素含量の少なくとも20%が、1以上の環状ケトンパーオキサイドに起因しなければならない。しかし、開示されている組成物は、−10℃以下で貯蔵されたときに、爆発性の結晶の形成故に危険を与えるような高い活性酸素含量の環状ケトンパーオキサイドを有し、その結果、加熱されると爆発を生じ、従って巨大な危険を与える。
【0003】
爆発性結晶というこの問題のための解決は、公開されていない欧州特許出願EP−A−02080128に与えられている。上記出願は、1以上の結晶性パーオキサイド、所望により1以上の慣用の減感剤(希釈剤)、および結晶性パーオキサイドの結晶化温度より上の固化温度で最終組成物中で固化する共結晶性化合物を含む環状ケトンパーオキサイド組成物を開示している。欧州特許出願EP−A−02080128の組成物は多くの有利な特性を有する(すなわち、高い活性酸素含量を有し、そして安全かつ貯蔵安定である)が、これらの組成物は、全ての種類の重合プロセスおよび(コ)ポリマー改変プロセスにおいて適切であるわけではない。例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)の製造法では、共結晶性化合物が、適用される高圧反応条件下で固化し、それは、使用される(管状)反応器系の導管、特にパーオキサイド投入導管、を塞ぎ得る。
【0004】
米国特許第5,808,110号の組成物を単に希釈することは望ましくない。というのは、これは低すぎる活性酸素含量を有する組成物をもたらすからである。高い総活性酸素含量を有する環状ケトンパーオキサイド組成物の製造は、反応器および試薬の有効な使用に関しておよび、これらのパーオキサイド組成物を用いて製造されたポリマーの望ましくない希釈剤による汚染を防ぐために、有利である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明の目的は、1以上の結晶性環状ケトンパーオキサイドを含む環状ケトンパーオキサイド組成物を提供することであり、ここで、上記組成物は、高い活性酸素含量を有し、さらに、良好な安全性および貯蔵安定性を有する。本発明の別の目的は、重合プロセスおよび(コ)ポリマー改変プロセスにおける使用に適する、高められたまたは高い圧力を必要とするプロセスにすら適する、環状ケトンパーオキサイド組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、
式(I)の1以上の結晶性環状ケトンパーオキサイド:
【化2】

ここで、R〜Rは独立して、水素、直鎖状または分岐状のC〜C20アルキル、C〜C20シクロアルキル、C〜C20アリール、C〜C20アラルキルおよびC〜C20アルカリールから成る群から選択され、R〜Rの各々は所望により、ヒドロキシ、C〜C20アルコキシ、直鎖状または分岐状のC〜C20アルキル、C〜C20アリールオキシ、ハロゲン、エステル、カルボキシ、ニトリルおよびアミドから選択される1以上の基で置換されていてもよい、
式R−O−O−R(II)に従う1以上のジアルキルパーオキシド、ここでRおよびRは独立して、置換されたまたは置換されていない、直鎖状または分岐状のC〜C20アルキル、C〜C20シクロアルキル、C〜C20アリール、C〜C20アラルキルおよびC〜C20アルカリールから成る群から選択される、および
所望により、1以上の慣用の減感剤(希釈剤)
を含む環状ケトンパーオキサイド組成物を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本明細書に記載されたパーオキサイドの活性酸素含量は、式:(16 x パーオキサイド結合の数/パーオキサイドの分子量) x 100% に従って計算される。組成物の活性酸素含量は、組成物の全化合物の重量平均である。
【0008】
本明細書における用語「結晶性環状ケトンパーオキサイド」は、下記に述べる「結晶化試験」に付されたときに結晶を形成するところの、3.5%以上の活性酸素含量を有しそして所望によりIsopar(商標)Mで希釈された、任意の環状ケトンパーオキサイドのために使用される。
【0009】
本発明に従う環状ケトンパーオキサイド組成物は、「結晶化試験」に付されたときに爆発性の結晶を形成せず、かつ一般的使用を可能にするのに十分高い活性酸素含量を有する。さらに、本発明の組成物への種結晶の添加は、種の結晶成長を開始しないし、追加の結晶の形成も生じず、「結晶化試験」において適用されるような−25℃と低い温度ですら生じない。特に好ましくは、添加された種結晶が、−25℃と低い温度ですら組成物中に溶解する状況である。その結果、本発明に従う組成物は、安全かつ貯蔵安定である。本明細書で使用される用語「貯蔵安定な」および「貯蔵安定性」は、組成物が、−20℃の最低貯蔵温度および組成物中の最も不安定なパーオキサイドの最高貯蔵温度によって決定される最高貯蔵温度で貯蔵されたときまたは貯蔵後に加熱されたときに爆発しそうにないことを意味する。さらに、これらの組成物は、高められたまたは高い圧力を必要とするプロセスを包含する多くの種の重合プロセスおよび(コ)ポリマー改変プロセスに適する。
【0010】
本発明に従う環状ケトンパーオキサイド組成物において使用され得る好ましい環状ケトンパーオキサイドは、アセトン、アセチルアセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、メチルイソアミルケトン、メチルヘキシルケトン、メチルヘプチルケトン、ジエチルケトン、エチルプロピルケトン、エチルアミルケトン、メチルオクチルケトン、メチルノニルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、2−メチルシクロヘキサノン、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノンおよびそれらの混合物から誘導される環状ケトンパーオキサイドを包含する。より好ましくは、アセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、メチルイソアミルケトン、シクロヘキサノンおよびそれらの混合物から誘導される環状ケトンパーオキサイドが使用される。メチルエチルケトンおよび所望により更なるケトンから誘導される環状ケトンパーオキサイドの使用が最も好ましい。適切なケトンからの環状ケトンパーオキサイドの製造は一般的に、主として三量体および二量体の形態から成るパーオキサイドの混合物を生じる。しかし、パーオキサイドの混合物は、いくらかの線状構造およびいくらかの四量体以上のオリゴマー状環状構造をも含み得る。種々の形態の割合、特に三量体/二量体比は、製造中の反応条件に主に依存し、当業者は、この比に影響を及ぼすために行われ得る反応条件における明らかな変化に関して国際出願WO96/03397が参照される。好ましくは、環状ケトンパーオキサイドが、三量体および二量体から本質的に成る。望ましいならば、反応混合物が個々の環状ケトンパーオキサイド化合物に分離され得る。しかし、手間を要する精製手順を回避するために、本発明の組成物は、典型的には、上記で定義したように、三量体構造に次いでいくらかの二量体構造を含むであろう。いくらかの組成物または個々の化合物のための選好は、物理的特性またはパーオキサイドの適用における要件、例えば貯蔵安定性、半減期対温度、揮発性、沸点、溶解性など、の相違に依存し得る。
【0011】
好ましくは、本発明に従う組成物は、組成物の総重量に基づいて、3重量%より多い総活性酸素含量を有する。好ましくは、組成物が、組成物の総重量に基づいて、高々11重量%、より好ましくは高々10重量%、最も好ましくは高々8重量%の活性酸素を含む。大量の本発明に従う組成物を貯蔵および輸送するために、組成物を慣用の(不活性)減感剤で希釈し、それによって組成物の総活性酸素含量を低下させることが必要であり得る。
【0012】
好ましくは、本発明の組成物が、組成物の総重量に基づいて、少なくとも1重量%、より好ましくは少なくとも5重量%、最も好ましくは少なくとも10重量%の環状ケトンパーオキサイドを含み、好ましくは、高々50重量%、より好ましくは高々25重量%、さらにより好ましくは高々20重量%、さらにより好ましくは高々17.5重量%、最も好ましくは高々15重量%の環状ケトンパーオキサイドを含み、好ましくは、その結果、環状ケトンパーオキサイドに起因する活性酸素含量が、環状ケトンパーオキサイド組成物の総重量に基づいて、6重量%未満、好ましくは3.5重量%未満、最も好ましくは3重量%未満のままである。
【0013】
本発明の組成物における式R−O−O−R(II)のジアルキルパーオキサイドは、上記で定義されたRおよびRを有する任意の対称または非対称のジアルキルパーオキサイドであり得る。好ましくは、RおよびRが独立して、直鎖状または分岐状のC〜C12アルキル部分から成る群から選択され、より好ましくは、RおよびRの少なくとも1が、分岐したC〜C12アルキル部分から成る群から選択されるところの式R−O−O−R(II)に従うジアルキルパーオキサイドであり、さらにより好ましくは、RおよびRの両方が独立して、分岐したC〜C12アルキル部分から成る群から選択されるところの式R−O−O−R(II)に従うジアルキルパーオキサイドである。好ましいジアルキルパーオキサイドは、ジ(t−ブチル)パーオキサイド、ジ(t−アミル)パーオキサイド、(t−ブチル)(t−アミル)パーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)−3−ヘキシン、および(1,1,3,3−テトラメチルブチル)(t−ブチル)パーオキサイドを包含し、より好ましいジアルキルパーオキサイドは、ジ(t−ブチル)パーオキサイドおよびジ(t−アミル)パーオキサイドを包含し、最も好ましいジアルキルパーオキサイドはジ(t−ブチル)パーオキサイドである。本発明に従う組成物は、組成物の総重量に基づいて、好ましくは、少なくとも10重量%、より好ましくは少なくとも20重量%、さらにより好ましくは少なくとも40重量%、さらにより好ましくは少なくとも50重量%、最も好ましくは少なくとも60重量%の1以上のジアルキルパーオキサイドを含み、好ましくは、高々99重量%、より好ましくは高々95重量%、最も好ましくは高々90重量%の1以上のジアルキルパーオキサイドを含む。
【0014】
本発明の組成物に所望により添加され得る慣用の減感剤(不活性希釈剤)は、任意の慣用の減感剤であり得る。また、これらの慣用の減感剤の1以上の混合物も使用され得る。慣用の減感剤が添加される場合、本発明に従う組成物は、環状ケトンパーオキサイド組成物の総重量に基づいて、好ましくは少なくとも1重量%、より好ましくは少なくとも5重量%、最も好ましくは少なくとも10重量%の1以上の慣用の減感剤を含み、好ましくは高々99重量%、より好ましくは高々90重量%、最も好ましくは高々80重量%の1以上の慣用の減感剤を含む。環状ケトンパーオキサイドのための好ましい慣用の減感剤は、アルカノール、シクロアルカノール、アルキレングリコール、アルキレングリコールモノアルキルエーテル、環状エーテル置換されたアルコール、環状アミド、アルデヒド、ケトン、エポキシド、エステル、ホスフェート、炭化水素溶剤、ハロゲン化炭化水素溶剤、パラフィン油、ホワイト油、シリコーン油、およびそれらの混合物を包含する。
【0015】
本発明の組成物における慣用の減感剤として使用され得る好ましいエステルは、それらに限定されないが、一価および二価アルコールのモノカルボン酸エステル、一価アルコールのジカルボン酸エステル、一価アルコールのカーボネート、アルコキシアルキルエステル、β−ケトエステル、フタレート、ホスフェート、ベンゾエート、アジペート、およびシトレート(citrate)を包含する。本発明の組成物における慣用の減感剤として有用なより好ましいエステルは、ジメチルフタレート、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジベンジルフタレート、ブチルベンジルフタレート、ジアリルフタレート、n−ペンチルアセテート、イソペンチルアセテート、n−ヘキシルアセテート、2−エチルヘキシルアセテート、ベンジルアセテート、メチルベンゾエート、エチルベンゾエート、イソプロピルベンゾエート、n−オクチルベンゾエート、イソデシルベンゾエート、n−ブチルピバレート、イソアミルピバレート、sec−アミルピバレート、n−ヘキシルピバレート、ジオクチルアジペート、ジイソデシルアジペート、メチルネオデカノエート、n−ブチルネオデカノエート、プロピレングリコールジアセテート、エチレングリコールジアセテート、シクロヘキシルアセテート、ネオペンチルアセテート、メチル−2−エチルヘキサノエート、n−ヘプチルホルメート、n−オクチルホルメート、ジプロピルカーボネート、ジブチルカーボネート、イソアミルプロピオネート、sec−アミルプロピオネート、ベンジルプロピオネート、ブチルカプロエート、エチレングリコールジプロピオネート、ヘプチルプロピオネート、メチルフェニルアセテート、オクチルアセテート、2−エチルヘキシルアセテート、プロピルカプリレート、メチルデカノエート、ジメチルスクシネート、ジエチルスクシネート、ジメチルマロネート、ジエチルマロネート、メチルエチルスクシネート、ジイソブチルナイロネート(nylonate)、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、ジエチルオキサレート、メチルp−トルエート、アセチルトリブチルシトレート、およびそれらの混合物から成る群から選択される。
【0016】
本発明の組成物における慣用の減感剤として使用され得る好ましいホスフェートは、それらに限定されないが、トリエチルホスフェート、トリクレシルホスフェート、トリキシリルホスフェート、クレシルジフェニルホスフェート、2−エチルヘキシル−ジフェニルホスフェート、イソデシル−ジフェニルホスフェート、トリ(2−エチルヘキシル)ホスフェート、ジメチルメチルホスホネート、塩素化されたホスフェートエステル、トリブチルホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、およびそれらの混合物を包含する。
【0017】
本発明の組成物における慣用の減感剤として使用され得る好ましい直鎖状および分岐状の炭化水素溶剤は、それらに限定されないが、アルカンの水素化されたオリゴマー、例えばIsopar(商標)製品(Exxon製)、例えばIsopar(商標)M、ペンタン、ヘプタン、イソドデカン、アミルベンゼン、イソアミルベンゼン、デカリン、o−ジイソプロピルベンゼン、m−ジイソプロピルベンゼン、n−ドデカン、2,4,5,7−テトラメチルオクタン、n−アミルトルエン、1,2,3,4−テトラメチルベンゼン、3,5−ジエチルトルエンおよびヘキサヒドロナフタレン、テトラデカン、トリデカン、Exxsol(商標)D80、Exxsol(商標)D100S、Soltrol(商標)145、Soltrol(商標)170、Varsol(商標)80、Varsol(商標)110、Shellsol(商標)D100、Shellsol(商標)D70、Halpasol(商標)i235/265、およびそれらの混合物を包含する。特に好ましい慣用の減感剤は、Isopar(商標)MおよびSoltrol(商標)170である。
【0018】
好ましいハロゲン化された炭化水素は、フェニルトリクロライド、3−ブロモ−o−シキレン、4−ブロモ−o−キシレン、2−ブロモ−m−キシレン、4−ブロモ−m−キシレン、5−ブロモ−m−キシレン、o−ジブロモベンゼン、p−ジブロモベンゼン、1,4−ジブロモブタン、1,1−ジブロモ−2,2−ジクロロエタン、ブロモオクタン、テトラブロモエチレン、1,2,3−トリクロロベンゼン、1,2,4−トリクロロベンゼン、およびそれらの混合物を包含する。
【0019】
本発明の組成物における慣用の減感剤として有用な好ましいアルデヒドは、n−クロロベンズアルデヒドおよびデカナールを包含する。
【0020】
本発明の組成物において有用な好ましいケトンは、アセトフェノン、イソホロン、イソブチルケトン、メチルフェニルジケトン、ジアミルケトン、ジイソアミルケトン、エチルオクチルケトン、エチルフェニルケトン、アセトン、メチル−n−アミルケトン、エチルブチルケトン、エチルプロピルケトン、メチルイソアミルケトン、メチルヘプチルケトン、メチルヘキシルケトン、エチルアミルケトン、ジメチルケトン、ジエチルケトン、ジプロピルケトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルプロピルケトン、メチル−t−ブチルケトン、イソブチルヘプチルケトン、ジイソブチルケトン、2,4−ペンタンジオン、2,4−ヘキサンジオン、2,4−ヘプタンジオン、3,5−ヘプタンジオン、3,5−オクタンジオン、5−メチル−2,4−ヘキサンジオン、2,6−ジメチル−3,5−ヘプタンジオン、2,4−オクタンジオン、5,5−ジメチル−2,4−ヘキサンジオン、6−メチル−2,4−ヘプタンジオン、1−フェニル−1,3−ブタンジオン、1−フェニル−1,3−ペンタンジオン、1,3−ジフェニル−1,3−プロパンジオン、1−フェニル−2,4−ペンタンジオン、メチルベンジルケトン、フェニルエチルケトン、メチルクロロメチルケトン、メチルブロモメチルケトン、2−ピロリドン、N−メチル−ピロリドン、それらのカップリング生成物、およびそれらの混合物を包含する。
【0021】
本発明の組成物における慣用の減感剤として使用され得る好ましいエポキシドは、スチレンオキサイドである。
【0022】
本発明の組成物における慣用の減感剤として有用な好ましいアルコールは、n−ブチルアルコール、カプリルアルコール、オクチルアルコール、ドデシルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール、1,4−ジヒドロキシメチルシクロヘキサン、シクロヘキサノール、グリセロール、エチレングリコール、20,000g/mlより下の分子量を有するポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、ヘキシレングリコール、1,4−ブチレングリコール、2,3−ブチレングリコール、ブテンジオール、1,5−ペンタンジオール、3,6−ジメチルオクタン−3,6−ジオール、2,5−ジメチル−ヘキシ−3−イン−2,5−ジオール、2,4,7,9−テトラメチルデカン−4,7−ジオール、2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、およびそれらの混合物である。
【0023】
本発明の組成物における慣用の減感剤として有用な好ましいパラフィン油は、それらに限定されないが、ハロゲン化パラフィン油およびパラフィンディーゼル油を包含する。他の油、例えばホワイト油、エポキシ化された大豆油およびシリコーン油も本発明の組成物における慣用の減感剤として有用である。
【0024】
本発明の組成物の安全性は、組成物を−25℃で48時間保持し、次いで結晶の存在に関して組成物を調べる(「結晶化試験」)ことにより決定された。−25℃で24時間後に結晶が形成されていない場合には、純粋な環状ケトンパーオキサイドの種結晶が極少量、組成物に添加される。種結晶の添加の後、組成物は−25℃でさらに24時間保持される。最後に組成物を検査する。組成物は、以下の場合に安全かつ安定であるとみなされる。
種結晶が成長しなかった場合(ただし、種結晶が添加されたとき)、
結晶が存在しない場合、または(種結晶が添加された場合には)追加の結晶が存在しない場合、あるいは、
組成物が全く結晶を含まない場合、すなわち、所望により添加された種結晶ですら溶解した場合。
【0025】
上記した「結晶化試験」に加えて、本発明の組成物は、以下の慣用の安全性試験にも合格すべきである。
爆燃試験(爆燃)、
時間圧力試験(爆燃)、
ケーネン(Koenen)試験(定義された制限下で加熱)、
圧力容器試験(PVT)(定義された制限下で加熱)、および
熱爆発容器試験(定義された制限下で加熱)。
【0026】
これらの試験に合格することは、定義された制限下での加熱における「中位」または「低い」の評価、および爆燃試験における「爆燃しない(no)」または「ゆっくり爆燃する(Yes,slowly)」の評価を意味する。試験のいずれか1における最も厳しい評価が使用されるところの最終の危険評価は、「中位」または「低い」でなければならない。安全性試験および対応する基準は、「United Nations Recommendations on the Transport of Dangerous Goods,Manual of Tests and Criteria」に記されている。
【0027】
本発明の好ましい実施態様では、環状ケトンパーオキサイドが、上記した1以上の慣用の減感剤中で直接製造され、次いで、環状ケトンパーオキサイド/慣用の減感剤混合物が式(II)の1以上のジアルキルパーオキサイドと一緒にされる。所望により、1以上の追加の慣用の減感剤が添加され得る。上記ですでに述べたように、高い総活性酸素含量を有する環状ケトンパーオキサイド組成物の製造は、反応器および試薬の有効な使用に関して有利である。
【0028】
大量の本発明に従う組成物を貯蔵および輸送するために、本発明の環状ケトンパーオキサイド組成物を式(II)の1以上のジアルキルパーオキサイドおよび/または1以上の慣用の減感剤で(さらに)希釈し、その結果、安全な貯蔵および輸送のための規定を満たすことが必要であり得る。これは、タンクおよび中間バルク容器(intermediate bulk container)(IBC)において貯蔵および輸送されるところの大量の場合には特にそうである。ジアルキルパーオキサイドおよび慣用の減感剤は、好ましくは、貯蔵の前に添加される限り、環状ケトンパーオキサイドの製造後に添加される。所望ならば、慣用の減感剤は、環状ケトンパーオキサイドの製造の前または製造中にも添加され得る。
【0029】
なお、式(II)のジアルキルパーオキサイドおよび使用されるならば慣用の減感剤は、使用の前に一緒にされ得る。従って、その場合には、1以上の慣用の減感剤を含む特定のジアルキルパーオキサイドを購入および使用することが可能である。
【0030】
本発明の組成物は、組成物の安全性、輸送可能性および/または貯蔵安定を著しく抑制するのではない限り、いくつかの添加剤を所望により含み得る。そのような添加剤の例として、オゾン分解防止剤、酸化防止剤、分解防止剤(antidegradant)、UV安定剤、助剤、殺真菌剤、帯電防止剤、顔料、染料、カップリング剤、分散助剤、発泡剤、滑剤、プロセス油、および離型剤が挙げられる。これらの添加剤は、通常の量で使用され得る。使用される場合、そのような添加剤は、典型的には、組成物が重合プロセスまたは(コ)ポリマー改変プロセスにおいて使用されるすぐ前に環状ケトンパーオキサイド組成物に添加される。
【0031】
本発明は、環状ケトンパーオキサイド組成物の、(ラジカル)重合プロセス、(コ)ポリマー改変プロセス、例えば制御されたレオロジーポリプロピレン(CR−PP)加工処理、およびパーオキサイドを含む他の反応、例えばいくつかの化学薬品の合成、における使用にも関する。本発明に従う組成物は、高められたまたは高い圧力を必要とする重合プロセスまたは(コ)ポリマー改変プロセスに特に適する。例として、低密度ポリエチレン(LDPE)を製造するためのエチレンの高圧重合プロセスが挙げられる。上記重合反応では、慣用の添加剤、例えば鎖移動剤などが使用され得る。
【0032】
本発明を以下の実施例によって説明する。
【0033】
材料
ジ(t−ブチル)パーオキサイド−製品(Trigonox(商標)B)Akzo Nobel製(アッセイ:99重量%、活性酸素:10.83重量%)
環状メチルエチルケトンパーオキサイド−製品(Trigonox(商標)301)Akzo Nobel 製(アッセイ:41%(Isopar(商標)M中)、活性酸素:7.45重量%)
【実施例1】
【0034】
16.4重量%の環状メチルエチルケトンパーオキサイド、60重量%のジ(t−ブチル)パーオキサイド、および23.6重量%のIsopar(商標)Mを含む組成物の製造:
反応容器に900gのTrigonox(商標)Bを充填する。次いで、600gのTrigonox(商標)301を投入する。得られた混合物は、総活性酸素含量9.41重量%および環状メチルエチルケトンパーオキサイドに起因する活性酸素含量2.98重量%を有する。この組成物はPVT試験が低であり、合格である。
【実施例2】
【0035】
20.5重量%の環状メチルエチルケトンパーオキサイド、50重量%のジ(t−ブチル)パーオキサイド、および29.5重量%のIsopar(商標)Mを含む組成物の製造:
反応容器に750gのTrigonox(商標)Bを充填する。次いで、750gのTrigonox(商標)301を投入する。得られた混合物は、総活性酸素含量9.14重量%および環状メチルエチルケトンパーオキサイドに起因する活性酸素含量3.73重量%を有する。この組成物はPVT試験が低であり、合格である。
【0036】
比較例
環状メチルエチルケトンパーオキサイドが、生成物が3.5%以上の活性酸素含量を有するようにIsopar(商標)Mだけと配合されるとき、結晶の形成を示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の1以上の環状ケトンパーオキサイド:
【化1】

ここで、R〜Rは独立して、水素、直鎖状または分岐状のC〜C20アルキル、C〜C20シクロアルキル、C〜C20アリール、C〜C20アラルキルおよびC〜C20アルカリールから成る群から選択され、R〜Rの各々は所望により、ヒドロキシ、C〜C20アルコキシ、直鎖状または分岐状のC〜C20アルキル、C〜C20アリールオキシ、ハロゲン、エステル、カルボキシ、ニトリルおよびアミドから選択される1以上の基で置換されていてもよい、および、
式R−O−O−R(II)に従う1以上のジアルキルパーオキサイド、ここでRおよびRは独立して、置換されたまたは置換されていない、直鎖状または分岐状のC〜C20アルキル、C〜C20シクロアルキル、C〜C20アリール、C〜C20アラルキルおよびC〜C20アルカリールから成る群から選択される、
を含む環状ケトンパーオキサイド組成物。
【請求項2】
1以上の慣用の減感剤(希釈剤)をさらに含む、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
環状ケトンパーオキサイドに起因する活性酸素含量が、環状ケトンパーオキサイド組成物の総重量に基づいて6重量%未満である、請求項1または2記載の組成物。
【請求項4】
環状ケトンパーオキサイドが、アセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、メチルイソアミルケトン、シクロヘキサノンおよびそれらの混合物から誘導される環状ケトンパーオキサイドから成る群から選択される、請求項1〜3のいずれか1項記載の組成物。
【請求項5】
式R−O−O−R(II)に従うジアルキルパーオキサイドのRおよびRが独立して、C〜C12アルキル部分から成る群から選択される、請求項1〜4のいずれか1項記載の組成物。
【請求項6】
式R−O−O−R(II)に従うジアルキルパーオキサイドのRおよびRの少なくとも1が、分岐したC〜C12アルキル部分から成る群から選択され、好ましくは、式R−O−O−R(II)に従うジアルキルパーオキサイドのRおよびRの両方が独立して、分岐したC〜C12アルキル部分から成る群から選択される、請求項1〜5のいずれか1項記載の組成物。
【請求項7】
式R−O−O−R(II)に従うジアルキルパーオキサイドが、ジ(t−ブチル)パーオキサイドまたはジ(t−アミル)パーオキサイドである、請求項1〜6のいずれか1項記載の組成物。
【請求項8】
慣用の減感剤がIsopar(商標)MまたはSoltrol(商標)170である、請求項2〜7のいずれか1項記載の組成物。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項記載の組成物を重合プロセスまたは(コ)ポリマー改変プロセスにおいて使用する方法。
【請求項10】
該プロセスが、高められたまたは高い圧力下で行われる、請求項9記載の方法。


【公開番号】特開2011−173895(P2011−173895A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−77500(P2011−77500)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【分割の表示】特願2006−501639(P2006−501639)の分割
【原出願日】平成16年1月28日(2004.1.28)
【出願人】(390009612)アクゾ ノーベル ナムローゼ フェンノートシャップ (132)
【氏名又は名称原語表記】Akzo Nobel N.V.
【Fターム(参考)】