説明

貯蔵安定性の優れた硬化性組成物

【発明の詳細な説明】
〔産業上の利用分野〕
本発明は硬化性組成物に関し、更に詳しくは、(A)分子中に少なくとも2個のヒドロシリル基を含有する有機重合体、(B)分子中に少なくとも1個のアルケニル基を有する有機化合物、(C)ヒドロシリル化触媒、及び(D)貯蔵安定性改良剤を必須成分とする貯蔵安定性の優れた硬化性組成物に関する。
〔従来技術と問題点〕
従来、硬化してゴム状物質を生成する硬化性液状組成物としては、各種のものが開発されている。中でも、深部硬化性に優れた硬化系として、末端もしくは分子鎖中に、1分子中に平均2個又はそれ以上のビニル基をもつポリオルガノシロキサンを、珪素原子に結合する水素原子を1分子中に2個以上有するポリオルガノハイドロジェンシロキサンで架橋するものが開発され、その優れた耐候性、耐水性、耐熱性を利用して、シーリング剤、ポッティング剤として使用されている。しかし、この系はコストが高い、接着性が悪い、カビが発生しやすい等の点からその用途に制限を受けている。更に、上記のポリオルガノシロキサンは、一般に有機系重合体に対する相溶性が悪く、ポリオルガノハイドロジェンシロキサンとアルケニル基を含有する有機重合体とを硬化させようとしても、相分離によりポリオルガノハイドロジェンシロキサンの加水分解及び脱水素縮合反応が助長され、ボイドの為に充分な機械特性が得られないという問題があった。
〔問題点を解決するための手段〕
本発明はかかる実情に鑑み鋭意研究の結果、これらの問題を解決して、速硬化性であり、且つ深部硬化性に優れるとともに十分な機械的特性を有する硬化物を与え、且つ貯蔵安定性に優れた硬化性組成物を提供するものである。即ち、従来、ヒドロシリル化による硬化反応に用いられていたポリオルガノハイドロジェンシロキサンの代わりに、分子中に少なくとも2個のヒドロシリル基を含有する有機重合体を用い、ビニル基を含有するポリオルガノシロキサンの代わりに、アルケニル基を含有する、重合体でない有機化合物を用いれば、一般に両者の相溶性が良好である。そこでヒドロシリル化触媒を用いて上記両成分を硬化させれば均一で、且つ速硬化、深部硬化性に優れ、硬化物が十分な引張特性等の機械特性を有する硬化性組成物が得られること、また、あらゆる種類の主鎖骨格を有するSi−H基含有有機重合体を用いることができるので、非常に幅広い用途に適用できる硬化物を作成できること、更に貯蔵安定性改良剤を配合することにより、貯蔵安定性に優れた硬化性組成物が得られることを見出し、本発明に到達した。
即ち、本発明は、下記の成分(A)、(B)、(C)及び(D)を必須成分としてなる貯蔵安定性の優れた硬化性組成物を内容とするものである。
(A)分子中に下記式(1)で示すヒドロシリル基を少なくとも2個有するヒドロシリル基含有重合体。
X−R1− (1)
(式中、Xは少なくとも1個のヒドロシリル基を含む置換基、R1は炭素数2〜20の炭化水素基で、1個以上のエーテル結合を含有していてもよい。)
(B)下記式(2)〜(5)のいずれかで示す、分子中にアルケニル基を少なくとも1個有する、重合体でない有機化合物、 〔H2C=C(R2)−R3−OaR4 (2)
〔H2C=C(R2)−R3−OC(O)aR5 (3)
〔H2C=C(R2aR6 (4)
〔H2C=C(R2)−R3−OC(O)OaR7 (5)
(式中、R2は水素又はメチル基。R3は炭素数1〜20の2価の炭化水素基で1個以上のエーテル結合が含有されていてもよい。R4、R5は炭素数1〜30の芳香族又は脂肪族系の1〜4価の有機基。R6は炭素数2〜50の1〜4価の炭化水素基。R7は炭素数1〜30の芳香族又は脂肪族系の1〜4価の有機基。aは1〜4から選ばれる整数。)
(C)ヒドロシリル化触媒、(D)貯蔵安定性改良剤。
本発明の(A)成分は、分子中に少なくとも2個の下記式(1)で示すヒドロシリル基を含有する有機重合体である。
X−R1− (1)
(Xは少なくとも1個のヒドロシリル基を含む置換基、R1は炭素数2〜20の2価の炭化水素基で1個以上のエーテル結合を含有していてもよい。)
少なくとも1個のヒドロシリル基を含む置換基としては特に制限はないが、ヒドロシリル基を含む基を具体的に例示するならば、−Si(H)(CH23-n,−Si(H)(C2H53-n,−Si(H)(C6H53-n(n=1〜3),−SiH2(C6H13)などのケイ素原子1個だけ含有するヒドロシリル基、−Si(CH32Si(CH32H,−Si)CH32CH2CH2Si(CH32H,−Si(CH32SiCH3H2

−Si(CH32NHSi(CH32H,−Si(CH32N[Si(CH32H]2,



などのケイ素原子を2個以上含む基、

(式中、RはH,OSi(CH3及び炭素数が1〜10の有機基より選ばれる基であり、それぞれのRは同じでも異なっていてもよい。m,nは正整数で、且つ2≦m+n≦50)


(R,m,nは上記に同じ)


(式中、Rは上記に同じ、mは正の整数、n,p,qは0又は正の整数で、且つ1≦m+n+p+q≦50)


(式中、Rは上記に同じ、mは正の整数、nは0又は正の整数で、且つ2≦m+n≦50)
などで示される鎖状、枝分かれ状、環状の各種の多価ハイドロジェンシロキサンより誘導された基などが挙げられる。
上記の各種のヒドロシリル基含有基のうち、本発明のヒドロシリル基含有の有機化合物の各種有機重合体に対する相溶性を損なう可能性が少ないという点から、ヒドロシリル基を構成する基の部分の分子量は500以下が望ましく、さらにヒドロシリル基の反応性も考慮すれば、下記のものが好ましい。


(式中、Rは上に同じ、mは正の整数、n、p、qは0又は正の整数で、且つ1≦m+n+p+q≦50)
例えば、

(式中、pは正の整数、qは0又は正の整数であり、且つ2≦p+q≦4)










同一分子中にヒドロシリル含有基が2個以上存在する場合には、それらは互いに同一でも異なっても構わない。
有機重合体(A)中に含まれるトータルのヒドロシリル基の個数については少なくとも1分子中に2個あればよいが、2〜15個が好ましく、3〜12個が特に好ましい。本発明のヒドロシリル基含有有機系硬化剤をヒドロシリル化触媒存在下に、アルケニル基を含有する各種の有機重合体と混合してヒドロシリル化反応により硬化させる場合には、該ヒドロシリル基の個数が2より少ないと硬化が遅く硬化不良をおこす場合が多い。また該ヒドロシリル基の個数が15より多くなると、該硬化剤の安定性が悪くなり、その上硬化後も多量のヒドロシリル基が硬化物中に残存し、ボイドやクラックの原因となる。
(A)成分は、上記式(1)で表わされる形でヒドロシリル基が有機重合体に結合しているのであるが、有機重合体としては各種主鎖骨格をもつものを使用することができる。
まず、ポリエーテル系重合体としては、例えばポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシテトラメチレン、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン共重合体等が好適に使用される。その他の主鎖骨格をもつ重合体としては、アジピン酸等の2塩基酸とグリコールとの縮合又はラクトン類の開環重合でえられるポリエステル系重合体、エチレン−プロピレン系共重合体、ポリイソブチレン、イソブチレンとイソプレン等との共重合体、ポリクロロプレン、ポリイソプレン、イソプレンとブタジエン、アクリロニトリル、スチレン等との共重合体、ポリブタジエン、ブタジエンとスチレン、アクリロニトリル等との共重合体、ポリイソピレン、ポリブタジエン、イソプレンあるいはブタジエンとアクリロニトリル、スチレン等との共重合体を水素添加してえられるポリオレフィン系重合体、エチルアクリレート、ブチルアクリレート等のモノマーをラジカル重合してえられるポリアクリル酸エステル、エチルアクリレート、ブチルアクリレート等のアクリル酸エステルと酢酸ビニル、アクリロニトリル、メチルメタクリレート、スチレン等とのアクリル酸エステル系共重合体、前記有機重合体中でビニルモノマーを重合してえられるグラフト重合体、ポリサルファィド系重合体、ε−アミノカプロラクタムの開環重合によるナイロン6、ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸の縮重合によるナイロン66、ヘキサメチレンジアミンとセバシン酸の縮重合によるナイロン610、ε−アミノウンデカン酸の縮重合によるナイロン11、ε−アミノラウロラクタムの開環重合によるナイロン12、上記のナイロンのうち2成分以上の成分を有する共重合ナイロン等のポリアミド系重合体、例えばビスフェノールAと塩化カルボニルより縮重合して製造されたポリカルボネート系重合体、ジアリルフタレート系重合体等が例示される。
(A)成分であるヒドロシリル基含有有機重合体は、線状でも、枝分かれ状でもよく、分子量は500〜50000の任意のものが好適に使用できるが、500〜20000のものが特に好ましい。(A)成分のヒドロシリル基は分子末端にあっても分子中にあってもよいが、本発明の組成物を用いてゴム状硬化物を作製する場合には、分子末端にある方が有効網目鎖長が長くなるので好ましい。
(A)成分の製造方法については特に制限はなく、任意の方法を用いればよい。例えば、(i)分子内にSi−Cl基をもつ有機化合物をLiAlH4,NaBH4などの還元剤で処理して該化合物中のSi−Cl基をSi−H基に還元する方法、(ii)分子内にある官能基Xをもつ有機化合物と分子内に上記官能基と反応する官能基Y及びヒドロシリル基を同時にもつ化合物とを反応させる方法、(iii)アルケニル基を含有する有機化合物に対して少なくとも2個のヒドロシリル基をもつポリヒドロシラン化合物を選択ヒドロシリル化することにより、反応後もヒドロシリル基を該化合物の分子中に残存させる方法などが考えられる。これらのうち(iii)の方法が特に好ましい。
本発明の(B)成分である分子中に少なくとも1個のアルケニル基を含有する、重合体でない有機化合物としては、式(6)


(式中、R2は水素又はメチル基)
で示されるアルケニル基を含有する化合物である。
更に具体的に詳述すると、まず式(2)


(R2は水素又はメチル基、R3は炭素数1〜20の2価の炭化水素基で1個以上のエーテル結合が含有されていてもよい。R4は炭素数1〜30の有機基、aは1〜4から選ばれる整数。)
で表わされるエーテル結合を有する化合物が挙げられる。
式(2)中、R3は炭素数1〜20の2価の炭化水素基を表わすが、R3の中には1個以上のエーテル結合が含有されていてもかまわない。具体的には−CH2−,−CH2CH2−,−CH2CH2CH2−,

−CH2CH2O−CH2CH2−,−CH2CH2O−CH2CH2CH2−などが挙げられる。合成上の容易さから−CH2−が好ましい。
式(2)中、R4は炭素数1〜30の芳香族系又は脂肪族系の1〜4価の有機基である。具体的に示すならば、CH3−,CH3CH2−,CH3CH2CH2−,

















(nは2〜10の整数)
などが挙げられる。これらのうちで、下記のものが好ましい。


次に、一般式(3)


(R2は水素又はメチル基、R2は炭素数1〜20の2価の炭化水素基で1個以上のエーテル結合を含有していてもよい。R5は炭素数1〜30の有機基、aは1〜4から選ばれる整数。)で表わされるエステル結合を有する化合物が挙げられる。
式(3)中、R3は式(2)におけるR3と同一である。またR5は炭素数1〜30の芳香族系又は脂肪族系の1〜4価の有機基である。具体的に示すならば、









などが挙げられる。これらのうちで下記のものが好ましい。
−(CH2−、−(CH2−,−(CH2−,

次に、一般式(4)


(R2は水素又はメチル基、R6は炭素数2〜50の1〜4価の炭化水素基、aは1〜4から選ばれる整数。)
で示される炭化水素を主鎖骨格とする化合物が挙げられる。
式(4)中、R6は炭素数2〜50の1〜4価の炭化水素基を表すが、具体的には















さらに−(CH2−(n=2〜10)が特に好ましい。
(B)成分の具体例としては、更に一般式(5)


(R2は水素又はメチル基、R3は炭素数1〜20の2価の炭化水素基で1個以上のエーテル結合を含有していてもよい。R7は炭素数1〜30の芳香族系又は脂肪族系の1〜4価の有機基、aは1〜4から選ばれる整数。)で表わされるカーボネート結合を有する化合物が挙げられる。
式中、R3は式(2)、(3)中のR3に同じである。またR7としては、

















(nは2〜10の整数)
■CH2CH2O)nCH2CH2− (nは1〜5の整数)


■CH2CH2CH2O)nCH2CH2CH2− (nは1〜5の整数)
■CH2CH2CH2CH2O)nCH2CH2CH2CH2−(nは1〜5の整数)
などが挙げられる。これらのうち下記のものが特に好ましい。
−CH2CH2OCH2CH2− −CH2CH2OCH2CH2OCH2CH2

(B)成分のアルケニル基含有有機化合物は単独で用いても2種以上の混合物を用いてもよい。
(B)成分のアルケニル基含有有機化合物は、そのアルケニル基と(A)成分のヒドロシリル基がモル比で0.2〜5.0となるような範囲で用いるのが好ましい。これは、モル比が0.2より小さいと硬化不良を起こし、5.0より大きいと硬化後の機械物性の低下を招くからである。
本発明の(C)成分であるヒドロシリル化触媒としては、白金の単体、アルミナ、シリカ、カーボンブラック等の担体に固体白金を担持させたもの、塩化白金酸、塩化白金酸とアルコール、アルデヒド、ケトン等との錯体、白金−オレフィン錯体{例えば、Pt(CH2=CH2(PPh3、Pt(CH2=CH22Cl2};白金−ビニルシロキサン錯体{例えば、Ptn(ViMe2SiOSiMe2Vi)、Pt〔(MeViSiO)};白金−ホスフィン錯体{例えば、Pt(PPh3、Pt(PBu3};白金−ホスファイト錯体{例えば、Pt〔P(OPh3、Pt〔P(OBu)}(式中、Meはメチル基、Buはブチル基、Viはビニル基、Phはフェニル基を表し、n、mは整数を表す)、ジカルボニルジクロロ白金、また、アシュビー(Ashby)の米国特許第3159601及び3159662号明細書中に記載された白金−炭化水素複合体、並びにラモロー(Lamoreaux)の米国特許第3220972号明細書中に記載された白金アルコラート触媒も挙げられる。更にモディック(Modic)の米国特許第3516946号明細書中に記載された塩化白金−オレフィン複合体も本発明において有用である。
また、白金化合物以外の触媒の例としては、RhCl(PPh33,RhCl3,RhlAl2O3,RuCl3,IrCl3,FeCl3,AlCl3,PdCl2・2H2O,NiCl2,TiCl4等が挙げられる。これらの触媒は単独で使用してもよく、2種以上併用してもかまわない。触媒活性の点から塩化白金酸、白金−オレフィン錯体、白金−ビニルシロキサン錯体等が好ましい。
触媒量としては特に制限はないが、(B)成分中のアルケニル基1molに対して10-1〜10-8molの範囲で用いるのがよい。好ましくは10-3〜10-6molの範囲で用いるのがよい。10-8molより少ないと硬化が十分に進行しない。またヒドロシリル化触媒は一般に高価で腐蝕性であり、また水素ガスが大量に発生して硬化物が発泡してしまう場合があるので10-1molより多量に用いないほうが望ましい。
本発明の(A)成分であるヒドロシリル基含有有機重合体を上記の選択ヒドロシリル化により製造する場合、反応後にも(A)成分中にヒドロシリル化触媒を含むので、一般にその安定性が良好でなく、長期間放置したり、湿分が混入したりするとSi−H基のSi−OH基への転化が起こり、粘度増大やゲル化等の現象が見られる。従って、(A)成分の中に(D)成分として貯蔵安定性改良剤を含有させることが必須である。更に、この(D)成分は低温ではヒドロシリル化触媒を不活性化するが、比較的高温になるとヒドロシリル化反応を阻害しなくなるので、本発明の組成物は機械特性に優れた硬化物を与える。
(D)成分としては、脂肪族不飽和結合を含有する化合物、有機リン化合物、有機イオウ化合物、窒素含有化合物、スズ系化合物、有機過酸化物等を良好に用いることができる。
脂肪族不飽和結合を含む化合物としては、一般式(7)


で示されるプロパギルアルコール(式中、R8,R9は水素原子、アルキル基、アリール基、又はR8,R9が他端において相互に連結したもの)、一般式(8)


で示されるエンーイン化合物(式中、R10,R11,R12は水素原子又は炭化水素基であり、R10,R11,R12の炭素数の総和は2−6である。ただし、R10,R11,R12が炭化水素基であるときは、R10,R11もしくはR11,R12が他端において相互に連結したものであってもよい。)、一般式(9)


で示されるシラン化合物(式中、R13,R14,R15は炭素数1〜10個の炭化水素基、ただしR14とR15が他端において相互に連結したものであってもよい。)、一般式(10)


で示されるポリシロキサン化合物(式中R16の少なくとも1つはアセチレン性不飽和結合を有する炭化水素基)、一般式(11)


で示されるオレフィン系化合物(式中、R17〜R21は水素原子、ハロゲン又は1価炭化水素基、Xは塩素、臭素等のハロゲン又はアルコキシ基)、テトラメチルビニルシロキサン環状体、2−ペンテンニトリル、一般式(12)


で示される化合物(式中、R22は少なくとも1個のアセチレン結合を含有する一価の有機基)、酢酸ビニル等のオレフィン系アルコールの脂肪族カルボン酸エステル、一般式(13)
R23O2C−C≡C−CO2R23 (13)
で示されるアルキルアセチレンジカルボキシレート(式中、R23はメチル、エチル等の炭化水素基)、一般式(14)


で示されるマレイン酸エステル(式中、R24はメチル、エチル、アリル、ヒドロカルボノキシアルキル基等の炭化水素基)、ジオルガノフマレート等が例示される。
有機リン化合物としてはトリオルガノフォスフィン、ジオルガノフォスフィン、トリオルガノフォスファイト、オルガノフォスフォン酸等が例示される。
有機イオウ化合物としてはオルガノメルカプタン、ジオルガノスルフィド、ジオルガノスルフォキシド、メルカプト基含有オルガノシラン類、硫化水素、ベンゾチアゾール、ベンゾチアゾールジサルファイト、2−(4−モルフォジニルジチオ)ベンゾチアゾール等が例示される。
窒素含有化合物としては、アンモニア、1〜3級アルキルアミン、アリールアミン、アルキルアリールアミン、N,N−ジオルガノアミノアルコール、尿素、チオ尿素、ピリミジン、ピコリン、ヒドラジン、スルフォン酸アミド、ベンゾトリアゾール、キノリン、トリアリルイソシアヌレート、一般式(15)
R252NR27NR262 (15)
で示されるジアミン化合物(式中、R25は1〜4の炭素原子を含むアルキル基、R26は水素又はR25であり、R27は2〜4個の炭化原子を含むアルキル基)等が例示される。
スズ系化合物としてはハロゲン化第一スズ2水和物、カルボン酸第一スズ等が例示される。
また、有機過酸化物としては、ジ−t−ブチルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)−3−ヘキシン、ジクミルペルオキシド、t−ブチルクミルペルオキシド、α,α′−ビス(t−ブチルペルオキシ)イソプロピルベンゼンのようなジアルキルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、p−クロロベンゾイルペルオキシド、m−クロロベンゾイルペルオキシド、2,4−ジクロロベンゾイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシドのようなジアシルペルオキシド、過安息香酸t−ブチルのような過酸エステル、過ジ炭酸ジイソプロピル、過ジ炭酸ジ−2−エチルヘキシルのようなペルオキシジカーボネート、1,1−ジ(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、1,1−ジ(t−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンのようなペルオキシケタール等が例示される。
これらのうち、室温付近での(A)成分の粘度上昇を長期間にわたって抑制し、取り扱いやすいという点から、ジアルキルマレート、ジアルキルアセチレンジカルボキシレート、2−ペンテンニトリル、ベンゾチアゾール、キノリン、2,3−ジクロロプロペンが好ましい。更に、比較的高温(約50℃)でも(A)成分の粘度上昇をほぼ完全に抑制するという点から、2−ペンテンニトリル、ベンゾチアゾール、キノリンが特に好ましい。
(D)成分の使用量は、(A)成分及び(B)成分の有機重合体に均一に分散する限りにおいてほぼ任意に選ぶことができるが、(A)成分のヒドロシリル基含有化合物1モルに対して10-5〜10-1モルの範囲で用いることが好ましい。これは10-5モル未満では(A)成分の貯蔵安定性が充分改良されず、10-1モルを越えると硬化を阻害するからである。(D)成分の貯蔵安定性改良剤は単独で用いても、また、2種以上を混合して用いてもよい。
本発明の組成物は(A)成分中に(D)成分を含有させることを除いては、その保存形態についてはなんら制限はない。例えば、(D)成分は(A)成分の貯蔵安定性を向上させるだけでなく、(A)成分と(B)成分の付加反応による硬化を遅延する働きも有するので、本発明の組成物は1包装化することも可能である。しかし、長期にわたる貯蔵安定性という点から、例えば、(A)成分と(D)成分及び(B)成分と(C)成分をそれぞれ1パッケージとする2包装型の組成物とする方が好ましい。もし、一包装化する場合は、低温(0℃以下)で保存するのが好ましい。
本発明の(D)成分を含む(A)及び(C)成分を混合し、硬化させれば深部硬化性に優れた均一な硬化物が得られる。硬化条件については特に制限はないが、一般に20〜200℃、好ましくは50〜150℃で10秒〜4時間硬化するのがよい。特に80〜150℃での高温では10秒〜1時間程度の短時間で硬化するものも得られる。
組成物を硬化させる段階で発泡現象が見られる場合があるが、組成物に鉄、コバルト、ニッケル、銅、タングステン等の遷移金属粉末を加えることにより、発泡を抑えることができる。また、(A)〜(D)成分を低温(−60〜5℃)で混合し、比較的低温(25〜100℃)で硬化させることによっても発泡を抑制することができる。
硬化物の性状は用いる(A)及び(B)成分の主鎖骨格や分子量等に依存するが、ゴム状のものから樹脂状のものまで作製することができる。
硬化物を作製する際には、(A)、(B)、(C)及び(D)の必須4成分の他に、その使用目的に応じて溶剤、接着性改良剤、物性調整剤、保存安定性改良剤、可塑剤、充填剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、金属不活性化剤、オゾン劣化防止剤、光安定剤、アミン系ラジカル連鎖禁止剤、リン系過酸化物分解剤、滑剤、顔料、発泡剤等の各種添加剤を適宜添加できる。
本発明の硬化物は種々の用途に適用することができる。例を挙げれば、接着・粘着剤、塗料、塗膜防水剤、発泡体シーリング剤、電気・電子用ポッティング剤、フィルム、化粧品、医療用成形品、歯科用印象剤等である。
〔実施例〕
以下、実施例に基づき本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらにより何ら制限を受けるものではない。
合成例1 特開昭53−134095に開示された方法に従って、末端にアリル型オレフィン基を有するポリオキシプロピレンを合成した。
平均分子量3000であるポリオキシプロピレングリコールと粉末苛性ソーダを60℃で撹拌し、ブロモクロロメタンを加えて、反応を行い、分子量を増大させた。次に、アリルクロライドを加えて、110℃で末端をアリルエーテル化した。これをケイ酸アルミニウムにより処理して、精製末端アリルエーテル化ポリオキシプロピレンを合成した。
このポリエーテルの平均分子量は7960であり、ヨウ素価から末端の92%がオレフィン基であった。E型粘度計による粘度は130ポイズ(40℃)であった。
合成例2 撹拌棒、滴下ロート、温度計、3方コック、冷却管を備え付けた1■4つ口フラスコを準備した。次に窒素雰囲気下で環状ポリシロキサン

(信越化学(株)製、LS8600)41.7g(0.173mol)をフラスコ内に仕込んだ。合成例1で合成した分子末端の92%がアリル基であるポリプロピレンオキシド300g(アリル基のモル数0.069mol)、トルエン230ml、及び塩化白金酸触媒溶媒(H2PtCl6・6H2O 1gをエタノール1ml、1,2−ジメトキシエタン9mlに溶解させた溶液)83μ■からなるトルエン溶液を滴下ロートへ仕込んだ。フラスコを70℃に加熱し、該トルエン溶液を1分間に約2mlのを割合で5時間かけて滴下した。その後反応温度を80℃に上げ約6時間撹拌した時点で、反応溶液中の残存アリル基をIRスペクトル分析法により定量したところ、1645cm-1の炭素−炭素二重結合が消失していることが確認された。更に、反応系中のトルエン及び未反応の過剰の環状ポリシロキサンを除去するために減圧脱気を80℃で3時間行い、ヒドロシリル基を有するポリプロピレンオキシド約315gが、淡黄色、粘稠な液体として得られた。E型粘度計による粘度は310ポイズ(40℃)であった。該ポリプロピレンオキシド中のヒドロシリル基はIRスペクトルで2150cm-1の強い吸収として確認された。300MHzのNMRスペクトルを分析し、Si−CH3とSi−CH2−とを合わせたピークの強度とSi−Hのピークの強度を比較することにより、該環状ポリシロキサン1分子当たり平均1.31個のヒドロシリル基が反応したことがわかった。即ち、該重合体は環状ハイドロジェンポリシロキサンにより一部分子量が増大した、次式の分子末端を有するポリプロピレンオキシドである。


合成例3 300g(0.1モル)の末端水酸基ポリカプロラクトン(数平均分子量3000、水酸基当量1500)、24.0gのピリジン、300mlのTHFを攪拌棒、温度計、滴下ロート、窒素吹き込み管、冷却管を付設した丸底フラスコに仕込み、室温下、滴下ロートより32gのクロルギ酸アリルを徐々に滴下した。その後50℃に加熱し3時間攪拌した。生成した塩を濾過で除いた後150mlのトルエンを添加し、200mlの塩酸水溶液で洗浄、中和、濃縮することによりアリル末端ポリカプロラクトンを得た。得られたオリゴマーのVPO測定から数平均分子量は3200であった。300MHzのNMRのオレフィン部分のスペクトルよりアリル基の導入が確認できた。またヨウ素価滴定によるオレフィンの定量から1分子中に平均2.0個のアリル型不飽和基が導入されていることを確認した。
合成例4 撹拌棒、滴下ロート、温度計、3方コック、冷却管を備え付けた300mlの4つ口フラスコを準備した。次に窒素雰囲気下で環状ポリシロキサン

(信越化学(株)製、LS8600)34.55g(0.1435mol)をフラスコ内に仕込んだ。合成例3で合成した1分子中に平均2.0個のアリル基を有するポリカプロラクトン100g(オレフィンのモル数0.0575mol)、トルエン100ml、及び塩化白金酸触媒溶媒(H2PtCl6・6H2O 1gをエタノール1ml、1,2−ジメトキシエタン9mlに溶解させた溶液)60μ■からなるトルエン溶液を滴下ロート内へ仕込んだ。フラスコを70℃に加熱し、該トルエン溶液を約2時間かけて滴下した。滴下終了後、80℃で約5時間撹拌した時点で、反応溶液中の残存アリル基をIRスペクトル分析法により定量したところ、1645cm-1の炭素−炭素二重結合が消失していることが確認された。次に反応系中に残存している触媒を除去するために、シリカゲル(和光純薬(株)製、ワコーゲルC−200)10gを室温で加え、2時間攪拌してフラッシュ・カラムを用いて濾過した。トルエン及び過剰の環状ポリシロキサンを除去するために、濾液をエバポレートし、更に減圧脱揮を80℃で3時間行い、無色透明の粘稠な液体を得た。該ポリカプロラクトン中のヒドロシリル基はIRスペクトルで2150cm-1の強い吸収として確認された。また300MHzのNMRスプクトルでSi−HのピークとSi−CH2及びSi−CH2−とを合わせたピークの強度を比較することにより、該環状ポリシロキサン1分子当たり平均1.05個のヒドロシリル基が反応したことがわかった。即ち、該重合体は環状ハイドロジェンポリシロキサンにより一部分子量が増大した、次式の分子末端を有するポリカプロラクトンである。


合成例5 両末端ヒドロシリル基を有する水素添加ポリイソプレン(出光石油化学(株)製、商品名エポール)300gにトルエン50mlを加え共沸脱気により脱水した。t−BuOK48gをTHF200mlに溶解したものを注入した。50℃で1時間反応させた後、アリルクロライド47mlを約30分間かけて滴下した。滴下終了後50℃で1時間反応させた。反応終了後、生成した塩を吸着させるために反応溶液にケイ酸アルミ30gを加え、30分間室温で攪拌した。濾過精製により約250gのアリル末端水添ポリイソプレンを粘稠な液体として得た。300MHz 1H NMR分析により末端の92%にアリル基が導入されていることが確認された。ヨウ素価より求めたオレフィンのモル数は0.1072mol/100gであった。またE型粘度計による粘度は302ポイズ(32℃)であった。
*エポールの代表的な物性値(技術試料より)
水酸基含有量(meq/g) 0.90 粘度(poise/30℃) 700 平均分子量〔VPO測定〕 2500合成例6 撹拌棒、滴下ロート、温度計、3方コック、冷却管を備え付けた300mlの4つ口フラスコを準備した。次に窒素雰囲気下で環状ポリシロキサン

(信越化学(株)製、LS8600)31.5g(0.131mol)をフラスコ内に仕込んだ。合成例5で合成した、分子末端の92%がアリル基である水添ポリイソプレン50g(オレフィンのモル数0.0536mol)、トルエン50ml、及び塩化白金酸触媒溶媒(H2PtCl6・6H2O 1gをエタノール1ml、1,2−ジメトキシエタン9mlに溶解させた溶液)60μ■からなるトルエン溶液を滴下ロートへ仕込んだ。フラスコを70℃に加熱し、該トルエン溶液を約2時間かけて滴下した。滴下終了後、80℃で約5時間撹拌した時点で、反応溶液中の残存アリル基をIRスペクトル分析法により定量したところ、1645cm-1の炭素−炭素二重結合が消失していることが確認された。次に反応系中に残存している触媒を除去するために、シリカゲル(和光純薬(株)製、ワコーゲルC−200)5gを室温で加え、2時間攪拌してフラッシュ・カラムを用いて濾過した。トルエン及び過剰の環状ポリシロキサンを除去するために、濾液をエバポレートし、更に減圧脱揮を80℃で3時間行い、無色透明の粘稠な液体を得た。E型粘度計による粘度は514ポイズ(23℃)であった。該水添ポリイソプレン中のヒドロシリル基はIRスペクトルで2150cm-1の強い吸収として確認された。また300MHzはNMRスプクトルでSi−HのピークとSi−CH3及びSi−CH2−とを合わせたピークの強度を比較することにより、該環状ポリシロキサン1分子当たり平均1.2個のヒドロシリル基が反応したことがわかった。即ち、該重合体は環状ハイドロジェンポリシロキサンにより一部分子量が増大した、次式の分子末端を有する水添ポリイソプレンである。


合成例7 攪拌棒、滴下ロート、温度計、3方コック、冷却管を備えつけた1■の4つ口フラスコを準備した。次に窒素雰囲気下でトルエン20mlを仕込んだ。n−ブチルアクリレート25.6g、アリルメタクリレート2.52g、n−ドデシルメルカプタン0.81g、アゾビスイソブチロニトリル1.0g、トルエン100mlよりなるモノマーのトルエン溶液を、トルエン還流下に、滴下ロートより約1時間かけて滴下した。滴下終了後さらに2時間反応させた。該トルエン溶液をケイ酸アルミと処理した後、濾過助剤(珪藻土)を用いて吸収濾過することにより、ほぼ透明な溶液を得た。この溶液をエバポレートし、更に80℃で3時間減圧乾燥することにより、淡黄色の粘稠な液状オリゴマー約26gを得た。ヨウ素価滴定による重合体中のアリル基のモル数は0.154mol/100g、VPOによる分子量は3900であった。分子量及びヨウ素価滴定によるアリル基のモル数より、重合体1分子中に平均して約6.0個のアリル基が導入されたことがわかった。
合成例8 撹拌棒、滴下ロート、温度計、3方コック、冷却管を備え付けた200mlの4つ口フラスコを準備した。次に窒素雰囲気下で環状ポリシロキサン

(信越化学(株)製、LS8600)9.26g(38.5mmol)及びトルエン20mlをフラスコ内に仕込んだ。合成例7で合成したアリル基含有アクリル酸エステル重合体10g、塩化白金酸触媒溶媒(H2PtCl6・6H2O 1gをエタノール1ml、1,2−ジメトキシエタン9mlに溶解させた溶液)16μ■をトルエン30mlに溶解したトルエン溶液を滴下ロートへ仕込んだ。フラスコを70℃に加熱し、該トルエン溶液を1分間かけてフラスコ内に滴下した。滴下終了後、80℃で更に2時間反応させた。この時点で、反応溶液中の残存アリル基をIRスペクトル分析法により定量したところ、1645cm-1の炭素−炭素二重結合が消失していることが確認された。更に、反応系中に残存している触媒を除去するためにシリカゲル(和光純薬(株)製ワコーゲルC−200)2gを加え室温で約30分間攪拌した後、フラッシュカラムを用いて濾過した。トルエン及び過剰の環状ポリシロキサンを除去するために、濾液をエバポレートし、更に減圧脱気を80℃で3時間行い、無色透明の粘稠な液体を得た。該アクリル酸エステル系重合体中のヒドロシリル基はIRスペクトルで2150cm-1の強い吸収として確認された。また300MHzのNMRスペクトルでSi−HのピークとSi−CH3及びSi−CH2とを合わせたピークとの強度を比較することにより、該環状ポリシロキサン1分子当たり平均約1.1個のヒドロシリル基が反応したことがわかった。即ち、該重合体は環状ハイドロジェンポリシロキサンにより一部分子量が増大した次式のような構造をもつヒドロシリル基含有のアクリル酸エステル系重合体である。


合成例9 ビスフェノールA114g(0.5mol)、5N水酸化ナトリウム水溶液250ml(1.25mol)及びイオン交換水575mlをよく混合した。次に相間移動触媒としてベンジルトリエチルアンモニウムクロライド

加えた。該水溶液にアリルブロマイド242g(2.0mol)をトルエン300mlに溶解した溶液を、滴下ロートより徐々に滴下した。80℃で2時間攪拌しながら反応させた。この時点で水層のpHを測定すると酸性になっていたので加熱攪拌を止めた。重曹水で有機層を洗浄した後、更にイオン交換水で洗浄し、Na2SO4で乾燥した。エバポレーションにより揮発分を除去後、80℃で2時間減圧乾燥することにより淡黄色の粘稠な液体146g(収率95%)を得た。この粘稠な液体は元素分析、300MNz 1HNMR、IRスペクトルなどの同定により、ビスフェノールAのジアリルエーテル

であることが確認された。
IR(neat)cm-1,3070(m,ν=C-H),3030(m),2960(S),2920(S),2860(S)(νC-H),1645(m,νC-C),1620(S),1520(S),1290(S),1235(S),1180(S),1025(S),1000(S),920(S),825(S)
元素分析,計算値C,81.78%;H,7.84%実測値C,81.9%;H,7.96%貯蔵安定性テスト(1)
合成例2で製造したポリプロピレンオキシドを主鎖骨格とするSi−H基含有重合体に各種の貯蔵安定性改良剤を白金に対して30当量添加し、それぞれ50℃で保存してその粘度の経時変化を測定した。結果を第1表に示した。
安定性改良剤を添加することにより、重合体の貯蔵安定性が飛躍的に向上することがわかる。


貯蔵安定性テスト(2)
合成例6で製造した水素添加ポリイソプレンを主鎖骨格とするSi−H基含有重合体の貯蔵安定性を実施例1と同様にして調べた。結果を第2表に示したが、ベンゾチアゾールの効果が最も大きかった。


実施例1 合成例9で製造したアリル基含有エーテル系化合物と各種の主鎖骨格をもつSi−H基含有の有機重合体との相溶性を調べるために第3表に示すような組合せで、該化合物の所定量と該有機重合体1.0gをよく混合し、遠心脱泡後、混合状態を観察した。わずかに白濁するものもあるが、概ね透明で均一であった。該アリル基含有エーテル系化合物は各種の有機重合体に対して良好な相溶性を有していることがわかった。
次に硬化性を調べるために上記の各混合物に合成例2で用いた塩化白金酸触媒溶液を10倍に稀釈した溶液を所定量加えよく混合した。貯蔵安定性改良剤は第3表に記載のものを用いた。該混合物の一部をゲル化試験器(日新科学(株)製)の上に採り、所定温度でスナップアップタイム(ゴム弾性になるまでの時間)を測定した。結果を第3表に示したが、該組成物は高温速硬化性であることがわかった。


実施例2 合成例2で製造したSi−H基含有エーテル系重合体の所定量と合成例9で製造したエーテル系化合物、及び第4表に示したエステル系化合物、炭化水素系化合物、ポリカーボネート系化合物と、合成例2で用いた塩化白金酸触媒溶液及び貯蔵安定性改良剤を第4表に示す割合でよく攪拌混合した。該混合物を遠心分離により脱泡してポリエチレン製の型枠に流し込んだ。室温減圧下で再度脱泡を行った後100℃で1時間硬化させることにより、厚さ約3mmの均一なゴム状硬化物が得られた。該硬化物のシートからJIS K 6301に準拠した3号ダンベルを打抜き、引張速度200mm/minで引張試験を行った。結果を第5表に示す。
第5表から、本発明の硬化性組成物を用いれば、短時間で硬化して均一なゴム状硬化物を製造できることがわかった。




実施例3 合成例2で製造したSi−H基含有ポリプロピレンオキシド12.0g、合成例9で得られたアリル基含有のエーテル系化合物1.3g(アリル基とSi−H基のモル比が1)及び合成例2で用いたのと同じ塩化白金酸触媒溶液44μ■及びジメチルアセチレンジカルボキシレート4μ■をよく撹拌混合した。該混合物を遠心分離により脱泡後、縦6cm、横0.8cm、深さ1.8cmの型枠に流し込んだ。室温減圧下で再度脱泡を行った後、100℃で30分硬化させることにより、厚さ13mmのゴム状硬化物を得た。JIS K 6301 5−2項スプリング式硬さ試験(A形)に定める硬度測定方法により硬度を測定したところ、硬化物の表面は25、裏面も26で、深部硬化性の良好なサンプルが得られた。
〔発明の効果〕
本発明の組成物を用いれば、機械的特性が良好で、速硬化性であり、且つ深部硬化性にも優れるとともに、貯蔵安定性に優れた均一な硬化物を得ることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】下記の成分(A)、(B)、(C)及び(D)を必須成分としてなる貯蔵安定性の優れた硬化性組成物。
(A)分子中に下記式(1)で示すヒドロシリル基を少なくとも2個有するヒドロシリル基含有重合体。
X−R1− (1)
(式中、Xは少なくとも1個のヒドロシリル基を含む置換基、R1は炭素数2〜20の炭化水素基で、1個以上のエーテル結合を含有していてもよい。)
(B)下記式(2)〜(5)のいずれかで示す、分子中にアルケニル基を少なくとも1個有する、重合体でない有機化合物、〔H2C=C(R2)−R3−OaR4 (2)
〔H2C=C(R2)−R3−OC(O)aR5 (3)
〔H2C=C(R2aR6 (4)
〔H2C=C(R2)−R3−OC(O)OaR7 (5)
(式中、R2は水素又はメチル基。R3は炭素数1〜20の2価の炭化水素基で1個以上のエーテル結合が含有されていてもよい。R4、R5は炭素数1〜30の芳香族系又は脂肪族系の1〜4価の有機基。R6は炭素数2〜50の1〜4価の炭化水素基。R7は炭素数1〜30の芳香族系又は脂肪族系の1〜4価の有機基。aは1〜4から選ばれる整数。)
(C)ヒドロシリル化触媒、(D)貯蔵安定性改良剤。
【請求項2】(A)成分の重合体の分子量が500〜50000である請求項1記載の組成物。
【請求項3】(A)成分の式(1)中の置換基Xが、

(Rは、H,OSi(CH3、又は炭素数が1〜10の有機基より選ばれる基であり、それぞれのRは同じでも異なっていてもよい。mは正の整数、nは0又は正の整数で、且つ2≦m+n≦50)
あるいは、

(式中、Rは上に同じ、mは正の整数、n、p、qは0又は正の整数で、且つ1≦m+n+p+q≦50)
からなる群より選ばれる基である請求項1記載の組成物。
【請求項4】(A)成分の式(1)中の置換基Xが、





(式中、pは正の整数、qは0又は正の整数であり、且つ2≦p+q≦4)
からなる群より選ばれる基である請求項1記載の組成物。
【請求項5】(D)成分の貯蔵安定性改良剤が、脂肪族不飽和結合を含む化合物、有機リン化合物、有機イオウ化合物、窒素含有化合物、スズ系化合物及び有機過酸化物からなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1記載の組成物。
【請求項6】(D)成分の貯蔵安定性改良剤が、ジメチルマレート、ジメチルアセチレンジカルボキシレート、2−ペンテンニトリル、ベンゾチアゾール、2、3−ジクロロプロペン及びキノリンからなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1記載の組成物。
【請求項7】(A)成分中のヒドロシリル基と(B)成分中のアルケニル基との比率が、モル比で0.2〜5.0である請求項1記載の組成物。
【請求項8】(C)成分のヒドロシリル化触媒の量が、(B)成分中のアルケニル基1モルに対して10-8〜10-1モルの範囲である請求項1記載の組成物。
【請求項9】(D)成分の貯蔵安定性改良剤の量が、(A)成分1モルに対して10-5〜10-1モルの範囲である請求項1記載の組成物。

【特許番号】特許第3040143号(P3040143)
【登録日】平成12年3月3日(2000.3.3)
【発行日】平成12年5月8日(2000.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平2−211283
【出願日】平成2年8月8日(1990.8.8)
【公開番号】特開平4−93364
【公開日】平成4年3月26日(1992.3.26)
【審査請求日】平成9年8月5日(1997.8.5)
【出願人】(999999999)鐘淵化学工業株式会社
【参考文献】
【文献】特開 平1−138230(JP,A)
【文献】特開 昭63−35656(JP,A)
【文献】特開 平2−14244(JP,A)
【文献】特開 平1−45468(JP,A)
【文献】特開 昭56−20051(JP,A)
【文献】特開 昭61−141758(JP,A)
【文献】特開 昭62−294239(JP,A)
【文献】特開 昭52−132064(JP,A)
【文献】特開 平3−294320(JP,A)