説明

貴金属を含有する燃料電池コンポーネントをリサイクルする方法

本発明は、フッ素含有成分と貴金属含有成分とを有する燃料電池コンポーネントをリサイクルする方法に関する。前記方法において、フッ素含有成分は、超臨界状態にある媒体で処理することにより貴金属含有成分から分離される。超臨界媒体として有利に水が用いられる。フッ素含有成分を分離した後に、貴金属含有残留物は、有害なフッ素又はフッ化水素排出なしにリサイクルプロセス中で回収できる。フッ素含有成分も同様に回収できる。この方法は、貴金属及び/又はフッ素含有成分を膜燃料電池、電解セル、バッテリー、センサー及び他の電気化学デバイスから回収する際に使用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に燃料電池コンポーネント、例えばPEM燃料電池スタック、DMFC燃料電池、触媒被覆膜(CCM)、電極又は膜電極ユニット(MEU)から貴金属及び/又はフッ素含有成分をより濃縮された形で得るために燃料電池コンポーネントをリサイクルする方法に関する。前記フッ素含有成分は、超臨界媒体中で処理することにより貴金属含有残留物から分離される。前記貴金属は、残留物から有害なフッ素又はフッ化水素の排出なしに通常の方法で回収される。
【0002】
この方法は、貴金属及び/又はフッ素含有イオノマー材料を燃料電池、電解セル、バッテリー、センサー及び他の電気化学デバイスから回収する際に使用される。
【0003】
燃料電池中のエネルギー変換プロセスは、主に汚染物質不含であり、特に高い効率を示す。この理由から、燃料電池は、代替駆動コンセプト、家庭用エネルギー供給プラント及び携帯用アプリケーション用に次第に重要になっている。
【0004】
PEM燃料電池は、多くの燃料電池ユニットのスタックから構成される。これらは作動電圧を増大させるために電気的に直列に接続される。PEM燃料電池のキーコンポーネントは、膜電極ユニット(MEU)である。このMEUはプロトン伝導性膜(高分子電解質膜又はイオノマー膜)と、前記膜の両側にある2つのガス分配層(GDL又は「バッキング」)と、膜とガス分配層との間に配置された電極層とからなる。これらの電極層の一方は、水素を酸化するためのアノードとして構成されており、第2の電極層は酸素を還元するためのカソードとして構成されている。
【0005】
その仕様及び使用領域に依存して、燃料電池スタック中の前記触媒コンポーネントは、かなりの量の貴金属、例えば白金、ルテニウム、パラジウム等を含有する。例えば、自動車中の移動用アプリケーションのために現在使用されているような50kWのPEMスタックは、約50〜100グラムの白金を含有している(つまり白金約1〜2g/kW)。大量の燃料電池を必要とする自動車用に燃料電池技術を広範囲の普及させることは、少なくとも第1世代の車両用にかなりの量の白金を準備することを意味する。さらに、燃料電池スタック中に結合する貴金属用の回収プロセスを準備して、貴金属のための閉ループ及びそれによる貴金属の提供を保証しなければならない。
【0006】
貴金属触媒を除けば、前記膜材料が最も高い材料コストを有する。この高分子電解質膜は、プロトン伝導性ポリマー材料からなり、これを以後省略してイオノマーとも表す。有利に、スルホン酸基を有するテトラフルオロエチレン−フルオロビニルエーテルコポリマーが使用される。この材料は、高価で複雑なプロセスで製造され、例えばDuPont社による商品名Nafion(R)で市販されている。燃料電池中に使用するために、前記膜は一般に20〜200μmの厚さを有する必要があるため、かなりの量の膜材料が燃料電池スタック中に存在している。
【0007】
アノード及びカソードの電極層は、プロトン伝導性フッ素含有ポリマー(Nafion(R))だけでなく、それぞれの反応(水素の酸化又は酸素の還元)を触媒する電気触媒も有する。触媒活性成分として、有利に元素の周期表の白金族の金属(Pt、Pd、Ag、Au、Ru、Rh、Os、Ir)が使用される。多くの場合に、触媒活性の白金族金属は微細に分散した形で導電性支持体材料、例えばカーボンブラックの表面に適用された担持触媒が使用される。
【0008】
ガス分配層(GDL)は一般に、通常ではフッ素含有ポリマー(PTFE、ポリテトラフルオロエチレン等)で疎水化されている炭素繊維紙又は炭素繊維不織布からなる。これにより、反応ガスは反応層にまで良好に到達でき、かつセル電流及び形成された水は良好に導出することができる。
【0009】
燃料電池スタックの構築の際に、GDL及びMEUは、バイポーラプレートを使用しながら互いに積み重ねられる。この順序は一般に次のようである:エンドプレート−GDL(アノード)−CCM−GDL(カソード)−バイポーラプレート−GDL(アノード)−CCM−GDL(カソード)−バイポーラプレート(等)−エンドプレート。必要な出力領域に依存して、100までのMEUがスタックの形に互いに積み重ねられる。
【0010】
このバイポーラプレートは一般に導電性炭素、有利に黒鉛からなる。これは所定のパターンの形の通路を有し、この通路を通してガスはスタック中へ(燃料ガスはアノードまで、及び空気はカソードまで)供給される。貴金属及び膜をPEMFCスタックから回収することにより、バイポーラプレートは原則としてスタックの解体により分離され、再使用される。しかしながら、全体のスタック(バイポーラプレートを有する)を回収するプロセスも可能である。
【0011】
PEM燃料電池技術の商業化は、触媒被覆された膜(CCM)、触媒被覆されたガス分配層(CCB)及び膜電極ユニット(MEU)の工業的製造プロセスだけでなく、貴金属及び高価なイオノマー膜の回収のための工業的及び合理的プロセスをも必要とする。このようなプロセスの使用によってのみ、燃料電池技術は経済的かつ環境的に実行可能となる。適当なリサイクルプロセスを提供することが、移動用、据置用及び携帯用アプリケーションにおいて大量に市場に導入することができる燃料電池アセンブリのための前提条件となる。
【0012】
貴金属含有燃料電池コンポーネントのリサイクル及びイオノマー膜のリサイクルのための例は文献中にあまり存在しない。
【0013】
触媒から貴金属を濃縮するための通常の燃焼プロセスは公知である。燃焼可能な炭素支持体(例えばPd/活性炭)を有する触媒の残留物はガス炉中で燃焼され、貴金属含有の灰に処理される。灰化の後の貴金属濃度は、通常では湿式化学的方法を用いる直接分解のために十分に高い(C. Hagelueken著、"Edelmetalleinsatz und -Recycling in der Katalysatortechnik", Erzmetall 49, No. 2, pages 122-133 (DZA Verlag fur Kultur und Wissenschaft, D-04600 Altenburg)参照)。
【0014】
WO 01/83834 A1は、有機不純物及び残留物を酸化プロセス中での超臨界水及び酸素を用いて除去する、貴金属含有有機材料から貴金属を回収するためのプロセスを開示している。
【0015】
WO 81/00855は、超臨界水中で有機材料を処理するための方法を教示している。供給された有機材料は、毒性出発材料と有用な揮発性有機液体から得られる無毒の材料を有する有機材料を形成させるために再構築される。
【0016】
US 5,133,843は、貴金属で被覆されたイオノマー膜の処理又は回収(回復"rejuvenation")のために王水中で貴金属を溶解させることを有する方法を提供する。このイオノマー膜は次いで燃料電池のために再使用することができる。
【0017】
JP 11,288,732は、フッ素含有イオノマー又は膜を溶解する溶剤で膜電極ユニットを処理する、燃料電池用の成分を回収する方法を記載している。このフルオロポリマーは、この方法で金属触媒及び他の不溶性成分から分離される。このプロセスの欠点は、引火性、安全性、環境汚染及び毒性に関して問題がある有機溶剤の使用である。フッ素含有触媒成分の他の処理は記載されていない。
【0018】
使用されたペルフルオロ化スルホン酸膜の回収は、H-F Xu, X. Wang et al.著、Journal of Applied Electrochemistry (2002), 32 (12), 第1337-1340頁に記載されている。このNafion(R)膜は、DMSO中で170℃で大気圧で溶解し、引き続き「リキャスト(recast)」プロセスで回収される。この場合でも有機溶剤の使用は欠点である。
【0019】
フッ素含有燃料電池コンポーネント及び複合材料(例えばPEMスタック、MEU、GDL及び触媒被覆イオノマー膜)の直接的な熱分解処理の際に、燃焼の間にフッ化水素(HF)が前記有機ポリマーから形成される。このガスは燃焼ガス中に存在するため、この除去のための付加的な精製デバイスが必要である。さらに、この毒性及び腐食性の特性のために、フッ化水素は特別な安全手段、例えば導管、フィルター及びスクラバーをステンレス鋼で製造する必要がある。この理由から、フッ素含有燃料電池コンポーネントからの貴金属の直接的な熱分解による濃縮は、今までは大きな技術的問題との関連していた。
【0020】
さらに、このフッ素成分は貴金属含有スラグ又は混合物から除去しなければならない、それというのもこれらは後の処理プロセス又は貴金属分離において妨げとなり、かつ収率を減少させるためである。この理由からも、フッ素含有成分は貴金属含有成分から除去しなければならない。
【0021】
従って、本発明の課題は、特に燃料電池コンポーネントから貴金属及び/又はフッ素含有化合物をさらに濃縮された形で得るために、前記欠点を克服した燃料電池をリサイクルする方法を提供することであった。前記プロセスは、簡単で、可変性で、環境に優しいのが好ましく、かつフッ素を排出しないか又は溶剤を排出しないのが好ましい。
【0022】
前記課題は、請求項1記載の方法により解決される。有利な実施態様は、引用形式請求項に記載されている。
【0023】
本発明の場合に、フッ素含有成分又はフッ素含有化合物(例えばイオノマー、ポリマー、湿潤剤、界面活性剤等)を、超臨界媒体中で処理することにより溶解させ、貴金属を含有する成分から分離する。前記基金属は、分離された残留物からリサイクルされる。このフッ素含有化合物は、超臨界媒体中の溶液から回収することができる。
【0024】
本発明の方法は、フッ素含有化合物を貴金属含有燃料電池コンポーネントから分離するために抽出プロセスに基づく。この抽出プロセスは、超臨界媒体を使用して実施される。この抽出プロセスにおいて、燃料電池コンポーネントは、まず粉砕され、次いで超臨界状態の媒体で処理される。このフッ素含有化合物を抽出もしくは溶液にもたらし、貴金属含有残留物から分離する。
【0025】
この抽出されたフッ素含有化合物をさらに適当な方法で加工し、引き続き貴金属含有残留物をさらに通常のプロセスで処理する。このリサイクルプロセスにおいて有機溶剤は使用されない。さらに、このプロセスはフッ素含有排出物(例えばフッ化水素(HF)、フッ素(F2)又はフッ化物の排出物)を生じさせないため、全体のプロセスは極めて環境に優しい。
【0026】
意外にも、フッ素含有成分又はフッ素含有化合物(ポリマー、イオノマー、界面活性剤等)は超臨界媒体中で溶解することができ、かつこの方法で貴金属含有の燃料電池コンポーネントから分離できることが見出された。フッ素不含の残留物からの引き続く貴金属の処理において、この処理はもちろんフッ素含有排出物を放出することはないため、後の熱処理において高価な排ガス浄化プラントの使用は行われない。
【0027】
さらに、フッ素の不在により貴金属の分離プロセス(例えばPt及びRuの分離)は妨害されない。
【0028】
超臨界媒体の技術は、包括的に文献中に記載されている。水又は二酸化炭素のような物質は、加圧下で沸点を十分に超えるまで加熱した場合に、著しく効果的な溶剤及び反応媒体となる。特定の点で、蒸気の密度は液体の密度と実質的に同様に高くなる。この「超臨界状態」(つまり同時に液状でかつガス状)は、完全に新しい物理学的特性を示す。このように、約374℃(647°K)及び220.6barの圧力から、水は突然、油及び他の有機化合物を溶解する。この現象は、広範で多様な適用に利用することができる。1990年来、超臨界二酸化炭素は、コーヒーの脱カフェインのために使用され、かつ食品、化粧品及び製薬工業のための天然フレーバー及び活性化合物の単離のためにも使用され、さらに染色及びクリーニングのためにも使用されている。
【0029】
超臨界媒体として、有利に水が使用され、さらに可能な媒体は表1に示した。
【0030】
表1:超臨界媒体及びフッ素含有成分を燃料電池コンポーネントから抽出するための使用条件
【表1】

【0031】
多様な段階を有する本発明の方法は、図1に図示されている。フッ素含有成分のための抽出プロセスに対して付加的に、本発明の方法はさらに粉砕工程及び貴金属の濃縮又は分離工程を含むことができる。さらに、このプロセスは付加的に、フッ素含有成の回収及び/又は精製のための工程を有していてもよい(ペルフルオロスルホン酸イオノマーの場合には、例えばフィルム延伸プロセス又は「リキャスト」プロセス)。
【0032】
貴金属の濃縮及び/又は分離のための工程は、例えば、熱分解プロセス、溶融プロセス、冶金学的精錬プロセス、湿式化学プロセス又はこれらの組合せを有する。貴金属の処理、分離及び単離のための適当な湿式化学プロセスは、例えば酸処理、アルカリ処理、酸化又は還元プロセス及び沈殿プロセスである。
【0033】
フッ素含有成分の抽出を、室温でかつ大気圧で液状で、かつこのプロセスの間に超臨界条件にもたらされる媒体(例えば水)中で実施する場合、フッ素含有成分は選択された媒体中に溶解した形で残り、かつ分離される。
【0034】
貴金属含有の残留物は、貴金属回収が行われる。この貴金属は、湿式化学プロセス、例えば貴金属の浸出及び引き続く濾過又は分離で前記残留物から分離することができる。しかしながら、これは通常の熱分解プロセス又は溶融プロセスで実施することもできる。
【0035】
フッ素含有成分又はフッ素含有化合物用の抽出プロセスをバッチ式で実施するために、例えば、必要な温度及び圧力を設定するために適したオートクレーブを使用することもできる。このオートクレーブは、超臨界条件下で腐食しない材料からなるのが好ましい。粉砕された燃料電池コンポーネントは、次いでフリットフィルター又はソックスレーフィルター中に置かれるため、この粉砕されたコンポーネントは超臨界媒体により十分に濡らされ、かつフッ素含有成分を抽出及び分離することができる。
【0036】
このプロセスを連続的に運転するために、流通管式反応器又は他の流通式反応器を使用することができる。
【0037】
水は超臨界媒体として特に有用であることが見出された。本発明によるプロセスにより得られる水溶液は、溶解した形でフッ素含有成分を含有し、低排出プロセス中でさらに加工することができる。
【0038】
この超臨界媒体は、(フッ素含有成分の質量に対して)一般に1000倍までの過剰量で、有利に100倍までの過剰量で使用される。
【0039】
水を超臨界媒体として使用する場合に、耐圧反応器(オートクレーブ)のための温度範囲は約350〜450°であり、圧力は約200〜400bar(つまり200〜400x105Pa)の範囲内である。この反応時間は約1時間〜10時間である。他の超臨界媒体を使用する場合に、この反応条件は予備的実験を用いて決定しなければならない。
【0040】
燃料電池コンポーネント中のフッ素含有成分又はフッ素含有化合物の例は、ペルフルオロスルホン酸ポリマー及びフッ素含有イオノマー膜、例えばNafion(R), Flemion(R), Gore-Select(R), Aciplex(R)等、酸又は塩の形で、ペルフルオロ化ポリマー、例えばPTFE(R), Hostaflon(R)又はTeflon(R)、GDLの疎水化のために使用された分散液(例えばTeflon(R)又はHostaflon(R)の水性分散液);フッ素化されたコポリマー、例えばFEP(テトラフルオロエチレン及びヘキサフルオロプロピレンのコポリマー)又はPFA(ペルフルオロ化アルコキシ側鎖を有するポリテトラフルオロエチレン);フッ素化されたポリマーから製造された支持体繊維を有するコンポジット膜(例えばGore-Select(R)膜)、多様な調製剤中で使用される部分的にフッ素化された又はペルフルオロ化された湿潤剤、添加剤及び界面活性剤(例えばFluorad(R)、ペルフルオロオクタン酸等)である。
【0041】
本発明のリサイクルする方法のための出発材料は、原則として、膜燃料電池(PEMFC、DMFC)のスタック中に存在する全てのフッ素含有及び貴金属含有の成分である。これは、片側又は両側が触媒で被覆された膜(CCM)、触媒被覆されたガス分散層(GDL)、膜電極ユニット(MEU)、両側に適用されたガス分配層を有するMEU(5層MEU)、保護フィルム又はシールを有する又は有しないMEU、組み込み式バイポーラプレートを有する5層MEU(7層又は9層MEU)を含む。原則として、PEM燃料電池スタックも、本発明の方法において、相応する破砕及び/又は解体の後に出発材料として使用することができる。さらに、燃料電池コンポーネントの製造からのフッ素及び貴金属含有スクラップ(例えば触媒残留物、ペースト残留物、触媒インキ及びMEU、CCM及びGDLの製造からのさらなる中間製品又は不良品)を、このリサイクルする方法の出発材料として使用することもできる。貴金属の回収のための触媒被覆膜(CCM)及びMEUの処理からの中間製品、例えばCCMの分離された触媒層又は分離された電極層も、本発明のリサイクルする方法で加工することができる。このような電極層は一般に微細に分散された形でイオノマー材料を含有する。
【0042】
リサイクルすべき燃料電池コンポーネントは、この方法の開始時に適当な装置及びプロセスで粉砕される。細断法は、例えばMEU及びCCMを粉砕するために有利であることが見出された。バイポーラプレートを有するMEUの粉砕のためにジョークラッシャー及び/又はハンマーミルを使用することも可能である。粉末化された材料又は1〜3cmのエッジ長さを有する断片を用いるのが有利である。この材料は耐圧反応器中に置かれ、反応媒体で処理される。
【0043】
抽出後に、貴金属含有残留物を抽出溶液から通常の装置(例えばフィルター、フィルタープレス、サクションフィルター等)を用いて分離することができる。
【0044】
抽出溶液は、フッ素含有成分の回収のために使用することができる。この抽出溶液がイオノマー成分だけを有する(つまりPTFE又は他のF含有成分を有しない)場合に、この溶液は直接膜回収を行うことができる。例えば、これは、キャスティング(リキャスト)プロセスによりリサイクルされた膜フィルムを製造するために使用することができる。
【0045】
抽出溶液が、イオノマーの他に他のフッ素含有化合物を含有する場合に、これらはさらに処理する前に適当な精製工程を用いてイオノマー成分から分離することができる。
【0046】
貴金属の分離残分からの回収は、湿式化学プロセス、例えば貴金属の浸出及び引き続く濾過又は分離により実施することができる。しかしながら、これは融解プロセスで実施することもできる。
【0047】
次の実施例は本発明の方法を説明する。
【0048】
実施例
3層の、触媒被覆された膜(CCM、質量:約10g、約1gの触媒被覆を含有)を機械的に粉砕して1〜3cmのエッジ長さを有する断片にした。1500mlの脱塩水と一緒に、前記材料を、次いで撹拌機を備えた加熱可能なステンレス鋼のオートクレーブ中に置いた。このCCMは、カーボンブラックに担持された白金触媒、ペルフルオロ化イオノマー(Nafion(R)溶液から、DE−1020、DuPont社、USA)及び25μmの厚さのペルフルオロ化イオノマー膜(Nafion(R) NR 112、DuPont社、USA)を含有する。
【0049】
オートクレーブの設定温度を374℃に設定した。約7時間の試験期間の間に、382℃の最高温度及び240barの最大圧力が達成された。
【0050】
前記試験から得られた黒色沈殿物を有する透明な緑がかった溶液を、市販の実験室フィルターで濾過した。前記の得られたフィルターケークはカーボンブラックと同様のコンシステンシーを有し、濾液は透明でかつ緑がかった色を有する。
【0051】
前記フィルターケークを引き続き110℃で乾燥し、分析した。貴金属のPtの他に、炭素含有残留物がけを検出することができ、フッ素含有成分は存在しなかった。このフィルターケークは、貴金属回収のために湿式化学プロセスを実施され、Ptはフッ素排出なしで極めて良好な収率で得られた。
【0052】
この緑がかった溶液を濃縮し、さらにキャスティングプロセスによるイオノマー膜の製造のために使用することができた。しかしながら、これは触媒インキの製造のためのイオノマー溶液としても使用することができた。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】多様な段階を有する本発明の方法を示すフローシート。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ素含有成分を超臨界状態にある媒体で処理することにより貴金属含有成分から分離する、フッ素含有成分と貴金属含有成分とを有する燃料電池コンポーネントをリサイクルする方法。
【請求項2】
さらに燃料電池コンポーネントの粉砕のための工程を有する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
さらに貴金属を濃縮及び分離するための工程を有する、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
さらにフッ素含有成分を回収及び/又は精製するための工程を有する、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
貴金属の濃縮及び/又は分離のための工程は、例えば、熱分解プロセス、溶融プロセス、冶金学的精錬プロセス、湿式化学プロセス又はこれらの組合せを有する、請求項3記載の方法。
【請求項6】
フッ素含有成分は、例えばペルフルオロスルホン酸ポリマー、フッ素含有イオノマー膜、フッ素含有イオノマー、ペルフルオロ化ポリマー、部分的にフッ素化されたポリマー、フッ素化されたコポリマー、PTFE分散液、フッ素化されたポリマーから製造された支持体繊維を有するコンポジット膜、及びフッ素化された湿潤剤又はフッ素化された界面活性剤を含む、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
貴金属含有成分は、周期表の白金族からなる貴金属、例えば白金、ルテニウム、パラジウム、ロジウム、銀、金、オスミウム、イリジウム及び/又はこれらの混合物及び/又はこれらの合金を含む、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記処理を、超臨界水を用いて350〜450℃の温度範囲でかつ200〜400barの圧力範囲で1時間〜10時間の反応時間で実施する、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
超臨界状態にある媒体を、フッ素含有成分の質量に対して、1000倍までの過剰量で、有利に100倍までの過剰量で使用する、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
フッ素含有成分を、超臨界状態にある媒体で抽出する、請求項1から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
フッ素含有成分を、超臨界状態にある媒体中に溶解させる、請求項1から10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
使用された燃料電池コンポーネントは、片面又は両面が触媒で被覆された膜、触媒被覆されたガス分配層、膜電極ユニット、組み込み式バイポーラプレートを有する膜電極ユニット、PEM燃料電池スタック、分離された触媒層、ペースト残留物、触媒インキ、触媒残留物及びMEU、CCM及びGDLの製造からの中間製品及び/又は不良品である、請求項1から11までのいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
燃料電池コンポーネントから貴金属を回収するための、請求項1から12までのいずれか1項記載の方法の使用。
【請求項14】
燃料電池コンポーネントからフッ素含有成分を回収するための、請求項1から12までのいずれか1項記載の方法の使用。

【図1】
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【公表番号】特表2008−511752(P2008−511752A)
【公表日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−528772(P2007−528772)
【出願日】平成17年8月31日(2005.8.31)
【国際出願番号】PCT/EP2005/009359
【国際公開番号】WO2006/024507
【国際公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【出願人】(501399500)ユミコア・アクチエンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト (139)
【氏名又は名称原語表記】Umicore AG & Co.KG
【住所又は居所原語表記】Rodenbacher Chaussee 4,D−63457 Hanau,Germany
【Fターム(参考)】