説明

貼付剤および貼付製剤

【課題】支持体の少なくとも片面に粘着剤層を備える貼付剤および貼付製剤であって、特に皮膚接着力に優れ、かつ皮膚面の糊残りが少ない貼付剤および貼付製剤の提供。
【解決手段】支持体の少なくとも片面に粘着剤層を備える貼付剤であって、粘着剤層がブタジエン骨格部分を有する第一ポリマーと、第一ポリマーと異なる第二ポリマーとを、有機過酸化物の存在下で架橋して得られることを特徴とする、貼付剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支持体の少なくとも片面に粘着剤層を備える貼付剤および貼付製剤に関し、特に皮膚接着力に優れ、かつ皮膚面の糊残りが少ない貼付剤および貼付製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
貼付剤は、傷口の保護、あるいは薬物の生体への投与のために簡便かつ効果的な剤形である。貼付剤は、品質を長期間安定に維持しつつ、皮膚接着力の増強および皮膚面への糊残りの減少等、粘着物性の向上が要求される。
これまでに、貼付剤の品質を長期間安定に維持しつつ、皮膚接着力の増強および皮膚面への糊残りの減少等、良好な粘着物性を得るために取り組んだ貼付剤として、二種以上のゴム系粘着剤を組み合わせた貼付剤が開示されている(特許文献1)。
しかし、特許文献1に記載の発明は、ブタジエン骨格部分を有するポリマーが開示されておらず、有機過酸化物の存在下で架橋されることは記載も示唆もされていない。また、これらの貼付剤は長期間保存した場合、粘着剤層がいわゆるコールドフロー(保存温度で塑性変形を生じる現象)を生じる可能性がある
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】WO2001/043729号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、解決しようとする課題は、貼付剤の品質を長期間安定に維持しつつ、皮膚接着力の増強および皮膚面への糊残りの減少等、粘着物性を向上した貼付剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは鋭意検討の結果、粘着剤層が有機過酸化物の存在下で特定のポリマーを架橋して得られるエラストマーを含有することで、皮膚接着力の増強および皮膚面への糊残りの減少等、向上した粘着物性を有する点で優れた実用性を有することを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は以下の通りである。
〔1〕
支持体の少なくとも片面に粘着剤層を備える貼付剤であって、前記粘着剤層がブタジエン骨格部分を有する第一ポリマーと、前記第一ポリマーと異なる第二ポリマーとを、有機過酸化物の存在下で架橋して得られることを特徴とする、貼付剤。
〔2〕
前記第一ポリマーが、ポリブタジエンである、上記〔1〕に記載の貼付剤。
〔3〕
前記第二ポリマーが、スチレン単位とイソプレン単位とを有する共重合体、ポリイソブチレン、イソプレンおよびスチレン単位とブタジエン単位とを有する共重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種である、上記〔1〕または〔2〕に記載の貼付剤。
〔4〕
前記有機過酸化物が、ジベンゾイルパーオキサイドである、上記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の貼付剤。
〔5〕
前記粘着剤層が、タッキファイヤーをさらに含有することを特徴とする、上記〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の貼付剤。
〔6〕
前記粘着剤層が、有機液状成分をさらに含有することを特徴とする、上記〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の貼付剤。
〔7〕
前記有機液状成分が、ミリスチン酸イソプロピルである、上記〔6〕に記載の貼付剤。
〔8〕
上記〔1〕〜〔7〕のいずれかに記載の貼付剤の粘着剤層が、薬物をさらに含有することを特徴とする、貼付製剤。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、粘着剤層は強いタックを発現することから貼付初期に脱落し難い貼付剤を得ることができる。複数種のポリマーを用いることで、タックを相乗的に増強させることも可能である。また本発明によれば、粘着力をも十分確保されるため、運動する皮膚へ容易に追従することができ、貼付剤の品質を長期間安定に維持しつつ、皮膚接着力に優れ、かつ皮膚面の糊残りが少ない等、良好な粘着物性を有する貼付剤を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明の好ましい実施態様を示すが、詳細な説明および実施例は、例示の目的のみを意図しており、本発明の範囲を限定しない。
【0008】
本発明の貼付剤は、支持体の少なくとも片面に粘着剤層を備える貼付剤であって、前記粘着剤層がブタジエン骨格部分を有する第一ポリマーと、前記第一ポリマーと異なる第二ポリマーとを、有機過酸化物の存在下で架橋して得られることを特徴とする貼付剤である。
【0009】
少なくとも第一ポリマーが、さらには第二ポリマーの種類によっては第二ポリマーも架橋される結果、粘着剤層は、比較的高分子量の炭化水素鎖を有するエラストマーを含有し、貼付剤として好適な粘着力および凝集力を有することとなる。
また、本発明ではブタジエン骨格部分を有する第一ポリマーを用いるので、架橋反応可能な官能基を導入することが不要となるため、貼付剤の製造中および保管中の品質を長期間安定に維持することができる。また、第一ポリマーに官能基を導入する必要がないので、種々の第一ポリマーを選択することができ、第一ポリマーの選択の自由度を広げることができる。
【0010】
本発明において、第一ポリマーは、安定性の観点から炭化水素鎖部分を有するポリマーが好ましい。炭化水素鎖部分を有するポリマーを使用すると、架橋により形成するエラストマーは、比較的高分子量の炭化水素鎖を有し、また炭化水素鎖が3次元的に複雑に絡み合う構造となるため、粘着剤層に貼付剤として必要な皮膚接着力および凝集力を付与することができる。炭化水素鎖としては非芳香族炭化水素鎖と芳香族炭化水素鎖を含み、非芳香族炭化水素鎖としては、アルキレン、アルケニレン、アルキニレン等が挙げられ、芳香族炭化水素鎖としては、フェニレン、ナフチレン等が挙げられる。また、炭化水素鎖は、主鎖および側鎖の少なくともいずれか一方にあればよい。
【0011】
第一ポリマーとしては、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエンブロックコポリマー(以下「SB」と略することがある。)、スチレン−ブタジエン−スチレンブロックコポリマー(以下「SBS」と略することがある。)等が好ましい。なお、第一のポリマーとして、SBまたはSBSを用いると、強い凝集力を粘着剤層に付与することができる。架橋の反応性等の観点からは、ポリブタジエンが特に好ましい。第一ポリマーの使用量は特に限定されないが、通常粘着剤の固形分における10〜75重量%、好ましくは20〜50重量%である。本発明においては、これらの第一ポリマーを、目的に応じて一種または二種以上組み合わせて使用することができる。
【0012】
本明細書において、第二ポリマーとは第一ポリマーとは構造が異なるポリマーを指す。第二ポリマーが第一ポリマーと異なる必要がある技術的な意義は、両者が同じ構造のポリマーである場合には得られないような、三次元的な架橋体が得られることである。異なる構造の第一ポリマーと第二ポリマーを架橋させて得られた三次元的な架橋体が、粘着剤層に十分な凝集力および粘着力を付与するものと推測される。
【0013】
第二ポリマーとしては、第一ポリマーと構造が異なる限り特に限定されないが、スチレン単位とイソプレン単位とを有する共重合体(例えばスチレン−イソプレン−スチレン共重合体)、ポリイソブチレン、ポリイソプレン、およびスチレン単位とブタジエン単位とを有する共重合体(例えばスチレン−ブタジエン−スチレン共重合体)等が挙げられ、粘着剤層のタックを相乗的に増強するためには、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体(以下「SIS」と略することがある。)、ポリイソブチレン、ポリイソプレンが好ましい。これらは1種でまたは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0014】
ここで、「第一ポリマーとは構造が異なる」第二ポリマーには、重合体中に第一ポリマーと異なる共重合単位が含まれる場合や、共重合の形態が第一ポリマーと異なる場合を含む。例えば、第一ポリマーがポリブタジエンで、第二ポリマーがSBやSBSの場合は前者に属する。また、第一ポリマーがSBSで第二ポリマーがSISの場合も前者に属する。一方、第一ポリマーがスチレンブタジエンゴム(SBR)で、第二ポリマーがブロック共重合SBSのような重合形態の異なるものは後者に属する。
【0015】
第一ポリマーおよび第二ポリマーの重量平均分子量は特に限定されないが、いずれも好ましくは50,000〜5,000,000、より好ましくは100,000〜5,00,000である。本明細書にいう重量平均分子量とは、下記の分析条件でゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定される値を意味する:
(分析条件)
GPC装置:HLC8120(東ソー株式会社製)
カラム:TSKgelGMH−H(S)(東ソー株式会社製)
標準:ポリスチレン
溶離液:テトラヒドロフラン
流速:0.5ml/min
測定温度:40℃
検出手段:示差屈折計
【0016】
第一ポリマーの100重量部に対する、第二ポリマーの配合量は、10〜600重量部が好ましい。600重量部を超えると第一ポリマーの架橋が不十分であり、凝集力が不足する恐れがあり、一方、10重量部を下回ると、架橋が促進し過ぎ、必要な粘着力が得られない恐れがある。
【0017】
本発明の好ましい実施態様は、ブタジエン骨格部分を有する第一ポリマーを有機過酸化物の存在下で架橋させて粘着剤層を得ることを特徴とする。有機過酸化物としては、特に限定されず、高分子化学の分野で通常用いられる公知の有機過酸化物を用いることができる。例えばジアシルパーオキサイド(例えばジベンゾイルパーオキサイド、ジイソブチリルパーオキサイド、ジ(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキサイド、ジラウロイルパーオキサイド、ジスクシニックアシッドパーオキサイド、パーオキシエステル(例えば1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン)、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート)、ケトンパーオキサイド(例えばメチルエチルケトンパーオキサイド)、パーオキシケタール(例えば1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン)、ハイドロパーオキサイド(例えばp−メンタンハイドロパーオキサイド)、ジアルキルパーオキサイド(例えばジクミルパーオキサイド)、パーオキシジカーボネート(例えばジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート)等が挙げられる。
【0018】
これらのうち、反応性の観点から、ジアシルパーオキサイド(特にジベンゾイルパーオキサイド)およびパーオキシエステル(特に1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート)が好ましい。特にジアシルパーオキサイドが好ましく、ジアシルパーオキサイドは第一ポリマーと反応し、エラストマー中に、それぞれ置換されていてもよい、アルキル、フェニル、アシルもしくはベンゾイル、またはアシルオキシもしくはベンゾイルオキシである有機基を付与する。また、パーオキシエステルは、第一ポリマーと反応し、エラストマー中に、それぞれ置換されていてもよい、アルキル、アルコキシ、フェニル、アシルもしくはベンゾイル、またはアシルオキシもしくはベンゾイルオキシである有機基を付与する。
【0019】
このような有機過酸化物の配合量は、第一ポリマー100重量%に対して、好ましくは0.01〜1.0重量%である。0.01重量%未満であると粘着剤層の凝集力が不十分となる傾向にあり、一方、1.0重量%を超えると、粘着剤層が固くなるので粘着力およびソフト感が低下する傾向にある。
【0020】
本発明においては、粘着剤溶液に他の成分を添加し、粘着剤層に他の成分を含有させることができる。含有させる他の成分としては、例えば粘着付与剤としてのタッキファイヤーが挙げられる。タッキファイヤーを添加すると、第一ポリマーが有機過酸化物の存在下で架橋し、エラストマーとして三次元的に網目状の分子構造を形成する際に、タッキファイヤーをその構造中に取り込むため、粘着剤層に多量のタッキファイヤーを含有させることが可能となる。これによって粘着力および凝集力のバランスが改善されると考えられる。その結果、本発明の貼付剤は、皮膚に貼付する際の粘着力およびタックをより向上させ、かつ皮膚面への糊残りの減少が可能となる。
【0021】
タッキファイヤーとしては、貼付剤の分野で公知のものを適宜選択して用いることができる。具体的には、例えば、石油系樹脂(例えば、芳香族系石油樹脂、脂肪族系石油樹脂)、テルペン系樹脂、ロジン系樹脂、クマロンインデン樹脂、スチレン系樹脂(例えば、スチレン樹脂、α−メチルスチレン)、水添石油樹脂(例えば、脂環族飽和炭化水素樹脂)等が挙げられる。中でも、脂環族飽和炭化水素樹脂は、粘着剤層中の他の化合物、例えば有機液状成分および薬物等の保存安定性が良好になるため好適である。
【0022】
タッキファイヤーは、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができ、2種以上を組み合わせて使用する場合には、例えば、樹脂の種類や軟化点の異なる樹脂を組み合わせてもよい。
本発明では、第一ポリマーおよび第二ポリマーの合計重量(a)とタッキファイヤーの重量(b)との比率((a):(b))は特に限定されないが、好ましくは3.0:1〜1:2.0であり、より好ましくは2.5:1〜1:1.75である。この比率よりも第一ポリマーおよび第二ポリマーの合計重量(a)の比率が高いと、粘着剤層の粘着力が低下し、また、凝集力が強すぎてソフト感が低下する傾向にある。この比率よりもタッキファイヤーの重量(b)の比率が高いと、粘着剤層が柔らかくなりすぎ、べたつく傾向にある。
【0023】
また、含有させる他の成分として、粘着剤層に有機液状成分を含有させることもできる。有機液状成分を含有する効果として、皮膚に貼付する際にソフト感を与え、皮膚から剥離する際の刺激を減らし、かつ皮膚面への糊残りの減少が可能となる。さらに、粘着剤層に後述の薬物を含有する場合には、その経皮吸収を促進することが可能となる。
【0024】
このような有機液状成分としては粘着剤層との相溶性の観点から疎水性液状成分が好ましく、例えば脂肪酸アルキルエステルが挙げられる。脂肪酸アルキルエステルとしては、例えば、炭素数が12〜16、好ましくは12〜14の高級脂肪酸と炭素数が1〜4の低級1価アルコールとからなる脂肪酸アルキルエステルが挙げられる。上記高級脂肪酸としては、ラウリン酸(C12)、ミリスチン酸(C14)、パルミチン酸(C16)が挙げられ、好ましくはミリスチン酸である。上記1価アルコールとしては、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール等が挙げられ、好ましくはイソプロピルアルコールである。従って、好ましい脂肪酸アルキルエステルは、ミリスチン酸イソプロピルである。有機液状成分は、一種または二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0025】
有機液状成分の含有量は、第一ポリマーおよび第二ポリマーの合計重量100重量部に対して、好ましくは5〜300重量部であり、より好ましくは50〜170重量部である。有機液状成分の量が5重量部以上である場合、粘着剤層に高いソフト感を付与すると共に、粘着剤層に薬物を含有する場合は高い経皮吸収促進効果が得られる。50重量部以上である場合、粘着剤層全体の粘着力、凝集力の低下を抑制しつつ、粘着剤層に優れたソフト感を付与すると共に、粘着剤層に薬物を含有する場合は高い経皮吸収性が得られるので有利である。
【0026】
また、本発明においては、粘着剤層に薬物を含有させ、貼付製剤を製造することも可能である。上述の通り、第一ポリマーは、架橋のための官能基が不要となるため、粘着剤層における薬物の望ましくない反応を抑制し、薬物の安定性に貢献することができる。また、第一ポリマーの官能基と薬物との望まれない反応を考慮する必要がなくなり、貼付剤の設計の自由度が向上する。
【0027】
薬物は特に限定されず、ヒトなどの哺乳動物にその皮膚を通して投与し得る、すなわち経皮吸収可能な薬物が好ましい。薬物は必要に応じて二種以上併用することもできる。そのような薬物としては、具体的には、例えば、全身性麻酔薬、催眠・鎮静薬、抗癲癇薬、解熱鎮痛消炎薬、鎮暈薬、精神神経用薬、局所麻酔薬、骨格筋弛緩薬、自律神経用薬、鎮痙薬、抗パーキンソン薬、抗ヒスタミン薬、強心薬、不整脈用薬、利尿薬、血圧降下薬、血管収縮薬、冠血管拡張薬、末梢血管拡張薬、動脈硬化用薬、循環器用薬、呼吸促進薬、鎮咳去痰薬、ホルモン薬、化膿性疾患用外用薬、鎮痛・鎮痒・収斂・消炎用薬、寄生性皮膚疾患用薬、止血用薬、痛風治療用薬、糖尿病用薬、抗悪性腫瘍用薬、抗生物質、化学療法薬、麻薬、禁煙補助薬などが挙げられる。
また、薬物の含有量は、その経皮吸収用薬物の効果を満たし、粘着剤の接着特性を損なわない範囲であれば特に限定されないが、好ましくは第一ポリマーおよび第二ポリマーの合計重量60重量部に対して例えば0.5〜50重量部である。
【0028】
粘着剤層には、その他必要に応じて、自体公知の添加剤、例えば老化防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、充填剤等を含有させてもよい。
【0029】
本発明で使用する支持体としては、特に限定されないが、粘着剤層の成分、例えば、粘着剤、添加剤、薬物等が実質的に不透過であるもの、すなわち、これらが支持体の中に浸透し、支持体の背面から漏洩し、含有量が低下しない材料が好ましい。
【0030】
このような支持体としては、例えば、ポリエステル、ナイロン、サラン(登録商標)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリテトラフルオロエチレン、サーリン(登録商標)、アイオノマー樹脂等からなるフィルム、金属箔等の単独フィルム又はこれらの積層フィルム等が挙げられる。
【0031】
これらの支持体と粘着剤層との接着力(投錨力)を向上させるために、上記材料からなる無孔フィルムと多孔質フィルムとの積層フィルムを支持体とし、多孔質フィルム側に粘着剤層を形成することが好ましい。
【0032】
また、多孔質フィルムは、投錨力向上、貼付製剤全体の柔軟性及び貼付操作性等の点から厚み10〜200μmの範囲のものが採用され、プラスタータイプや粘着テープタイプのような薄手の製剤の場合には厚み10〜100μmの範囲のものが採用される。多孔質フィルムとして織布や不織布を用いる場合の目付量は特に限定されないが、通常5〜30g/m、好ましくは6〜15g/mである。
【0033】
本発明において、最も好適な支持体としては、1.5〜6μm厚のポリエステルフィルム(好ましくは、ポリエチレンテレフタレートフィルム)と、目付量6〜12g/mのポリエステル(好ましくは、ポリエチレンテレフタレート)製不織布との積層フィルムが挙げられる。
【0034】
本発明の貼付剤および貼付製剤は、使用時まで粘着剤層の粘着面を保護するため、該粘着面に剥離ライナーを積層するのが好ましい。剥離ライナーとしては、剥離処理され、充分に軽い剥離力を確保できれば、特に限定されるものでは無く、例えば粘着剤層と接触する面にシリコーン樹脂、フッ素樹脂等を塗布することによって剥離処理が施された、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレンテレフタレート等のフィルム、上質紙、グラシン紙等の紙、あるいは上質紙またはグラシン紙等とポリオレフィンとのラミネートフィルム等が用いられる。好ましくはポリエステルである。該剥離ライナーの厚みは、通常10〜200μm、好ましくは25〜100μmである。
【0035】
本発明の貼付剤および貼付製剤は、使用直前に剥離ライナーを剥がして、露出した粘着面を皮膚面等に貼付して使用することができる。
【0036】
本発明の貼付剤および貼付製剤は、例えば次のようにして製造される。製造方法は、特に限定されないが、例えば、(i)第一ポリマーとしてブタジエン骨格部分を有するポリマーと、第二ポリマーと、必要により粘着付与剤、有機液状成分、薬物等を、溶媒に溶解または分散させ、さらに有機過酸化物を添加し、混合攪拌する工程;(ii)得られた粘着剤溶液または分散液を、支持体の少なくとも片面に塗布し、乾燥して粘着剤層を支持体の表面に形成する工程;(iii)次いで剥離ライナーを粘着剤層上に設ける工程とを含む方法(いわゆる直写法)が挙げられる。あるいは、(i)上記粘着剤溶液または分散液を保護用の剥離ライナーの少なくとも片面に塗布する工程;(ii)乾燥して粘着剤層を剥離ライナーの表面に形成する工程;(iii)次いで支持体を粘着剤層に接着させる工程とを含む方法(いわゆる転写法)によっても、貼付剤および貼付製剤を製造することができる。
【0037】
また、粘着剤層における第一ポリマーの架橋を促進するため、上記方法には、例えば熟成工程をさらに設けることが好ましい。熟成工程は例えば50〜300℃で10〜100時間加温、保管することにより実施できる。より好ましくは、上記熟成工程を、酸素濃度0.01〜1vol%の雰囲気下で実施することにより、上記割合を効果的に調整することができる。
【0038】
本発明の粘着剤層の厚みは、皮膚接着性の観点から10μm〜1000μmが好ましく、特に好ましくは20μm〜500μmである。
【0039】
本発明の貼付剤および貼付製剤の形態は特に限定されず、例えばテープ状、シート状、リザーバー型等を含む。
【0040】
以下、本発明について、実施例を挙げてさらに具体的に説明する。本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。
【実施例】
【0041】
製造実施例(貼付剤)
下記表1に実施例1〜4および比較例1〜5の粘着剤の配合割合を示す。
実施例および比較例で用いた原料およびその略号は次の通りである:
<原料>
BR:ポリブタジエンゴム、重量平均分子量458,000
SIS:スチレン・イソプレン・スチレンゴム、重量平均分子量211,000
PIB:ポリイソブチレンゴム、重量平均分子量308,000
IR:ポリイソプレンゴム、重量平均分子量149,000
SBR:スチレンブタジエンゴム、重量平均分子量300,000
【0042】
空気雰囲気下で、第一ポリマーとしてBRを25重量%、第二ポリマーとしてそれぞれ表1に示す種類および配合量の第二ポリマーを配合し、タッキファイヤーとして脂環族飽和炭化水素樹脂P100(軟化点100.5℃、環球法)を35重量%および有機液状成分としてミリスチン酸イソプロピル29.9重量%をトルエンに添加し、混合撹拌した。得られた混合液に、有機過酸化物としてジベンゾイルパーオキサイドを0.1重量%となるよう添加し、さらに混合撹拌し、粘着剤溶液を得た。
次に、粘着剤溶液の固形分が25〜40重量%となるよう粘着剤溶液を調整し、調整した粘着剤溶液をポリエステル製の剥離ライナー(75μm厚)上に、乾燥後の厚みが100μmとなるように塗工し、乾燥させ粘着剤層を形成した。
そして、支持体として、ポリエステルフィルム(2μm厚)と、ポリエステル製不織布(目付量8g/m)との積層フィルムを用い、該支持体の不織布面に、上記粘着剤層を転写して積層し、これを窒素雰囲気下(酸素濃度0.1vol%)80℃、2日間加温、熟成して、実施例1〜4および比較例1〜5の貼付剤を得た。
【0043】
製造実施例(貼付製剤)
実施例1〜4において、25重量%の第一ポリマーを、24重量%の第一ポリマーおよび1重量%のインドメタシンと置き換えた以外は、実施例1〜4と同様にして実施例5〜8の貼付製剤を製造した。実施例5〜8の貼付製剤は、実施例1〜4の貼付剤と同様に、下記試験結果から物性はいずれも良好である。
[試験例]
【0044】
実施例1〜4および比較例1〜5の貼付剤を、下記評価項目について測定して評価した。評価結果を表1に示す。
(1)粘着力
23℃、60%RHの室内にて、貼付剤を幅12mm、長さ5cmの試験片に切断し、その試験片の剥離ライナーを除去し、試験片を試験板であるフェノール樹脂板に、2kgローラーで1往復させることにより圧着させた。その環境下で30分間放置した後、引張り試験機により試験片を剥離角度180°、剥離速度300mm/分で引っ張った際の粘着力を測定した。破壊モードは凝集破壊をG、界面破壊をKとした。ここで、表1の粘着力の平均値とは3個の試験片についての測定結果の平均を示し、値が0.5(N/12mm)以上であって、凝集破壊しないもの、すなわち破壊モードが界面破壊「K」であるものが粘着力の評価としては好ましい。また、SDは標準偏差を意味する。
【0045】
(2)ボールタック
粘着剤層のタックを、JIS Z 0237で規定されている傾斜式ボールタック試験法(傾斜角度:30度、23℃、65%RH)に準じて測定した。具体的には、傾斜板の角度が30°に設定された傾斜式ボールタック装置(球転装置)の所定の位置に、粘着剤層をセットした後、助走路用のポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ25μmのJIS C 2318に規定されたポリエチレンテレフタレートフィルム)を、粘着面の所定の位置に貼り付ける。そして、ボールの大きさに合わせて、助走路の長さが50mmになるボールスタート位置にボールの中心が位置するように、ボールを置いて、ボールを転がし、測定部内である粘着面上に停止するボールのうち最大の大きさのボールを見出し、さらに、この見出した最大のボールと、その前後の大きさのボールとの計3個のボールについて、前記と同様にして、1回ずつ計3回転がし、最大の大きさのボールであると見出したボールが、測定規定に当てはまる最大のボールであることを確認することにより、最大のボールの直径(mm)を求め、それを粘着剤層のタックとした。
【0046】
表1の粘着力評価結果より、実施例1〜4の貼付剤は、いずれも粘着力が0.5(N/12mm)以上であって、貼付剤として必要な粘着力および凝集力を有するものであった。また、実施例1〜4の貼付剤は、粘着力測定時に試験板と粘着剤層との間で界面破壊が起こり、試験板に粘着剤が残る糊残りは見られなかった。また、BR単独の比較例5よりも高い粘着力が得られた。
また、破壊モードの評価結果によると、比較例1〜4の貼付剤は凝集力が不十分(G)であり、粘着力測定時に凝集破壊が起こり、糊残りが見られた。比較例1〜4の粘着剤層にはそれぞれ1種類のポリマーしか含まれておらず、含まれている該1種類のポリマーの架橋反応が生じなかったためと考えられる。
また、実施例1〜4の粘着剤層におけるボールタック試験の結果は、いずれも直径7.1mm以上であり良好な数値を示した。一方、比較例1では、直径4.8mmで実施例1〜4と比べ、タックが弱く、凝集力を有する比較例5についても直径3.2mmとタックが弱かった。比較例2および3については、凝集力が弱いもののタックについてはいずれも10.3mmであった。
以上説明したように、本発明に属する実施例1〜4の粘着剤のみが、必要な粘着力と十分な凝集力を有し、かつ、ボールタック性にも優れることが示された。
【0047】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明の貼付剤は、品質を長期間安定に維持しつつ、良好な粘着物性を有し、さらに貼付製剤としても有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体の少なくとも片面に粘着剤層を備える貼付剤であって、
前記粘着剤層がブタジエン骨格部分を有する第一ポリマーと、前記第一ポリマーと異なる第二ポリマーとを、有機過酸化物の存在下で架橋して得られることを特徴とする、貼付剤。
【請求項2】
前記第一ポリマーが、ポリブタジエンである、請求項1に記載の貼付剤。
【請求項3】
前記第二ポリマーが、スチレン単位とイソプレン単位とを有する共重合体、ポリイソブチレン、イソプレンおよびスチレン単位とブタジエン単位とを有する共重合体、からなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1または請求項2に記載の貼付剤。
【請求項4】
前記有機過酸化物が、ジベンゾイルパーオキサイドである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の貼付剤。
【請求項5】
前記粘着剤層が、タッキファイヤーをさらに含有することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の貼付剤。
【請求項6】
前記粘着剤層が、有機液状成分をさらに含有することを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の貼付剤。
【請求項7】
前記有機液状成分が、ミリスチン酸イソプロピルである、請求項6に記載の貼付剤。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の貼付剤の粘着剤層が、薬物をさらに含有することを特徴とする、貼付製剤。

【公開番号】特開2010−248076(P2010−248076A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−95994(P2009−95994)
【出願日】平成21年4月10日(2009.4.10)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】