説明

貼付剤及び貼付製剤

【課題】低伸縮性の貼付剤及び貼付製剤であって、皮膚へ貼付中に、種々の要因により望まれずに皮膚から剥離及び、甚だしくは脱落することなく、長時間持続的に貼付可能な貼付剤及び貼付製剤の提供。
【解決手段】支持体の片面に粘着剤層を有する低伸縮性貼付剤4であって、貼付剤の平面外形の曲線部分5の合計長さW(mm)の、貼付剤の平面外形の直線部分6,7の合計長さS(mm)に対する割合P(W/S)が1.22以下であり、曲線部分5を円弧と近似した場合の当該円弧の半径R(mm)が0.5mm以上であることを特徴とする貼付剤及び貼付製剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支持体と粘着剤層を有する貼付剤及び貼付製剤に関する。より詳しくは、低伸縮性の貼付剤及び貼付製剤であって、皮膚へ貼付中に、種々の要因により望まれずに皮膚から剥離及び、甚だしくは脱落することなく、長時間持続的に貼付可能な貼付剤及び貼付製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より矩形の外形を有する貼付剤が知られている。しかし、貼付剤は皮膚へ貼付中に、種々の要因により望まれずに皮膚から剥離し、甚だしくは脱落することがある。そのような望まれない剥離の問題を取り扱った文献としては例えば下記の文献が挙げられる。
【0003】
特開2000−109427号公報(特許文献1)には、支持体の片面に含水粘着剤層が形成され、支持体の外形を異形状とした貼付剤が開示され、そこにはこのような貼付剤は、湾曲した皮膚面上においても粘着性が良好であり、剥離し難いことが述べられている。
【0004】
また、特開2000−297033号公報(特許文献2)には、支持体の片面に含水粘着剤層が形成され、角部に丸みをつけた長方形の外形を有する貼付剤が開示されている。そして、そのような丸みをつけることにより剥離し難くなることが述べられている。
【0005】
しかし、このような貼付剤においてもなお、衣服により覆われる皮膚部位に、貼付剤を長期間にわたり貼付すると、衣服との摩擦により貼付剤は剥離することがある。加えて、上記文献における貼付剤は伸縮性が高いものであり、剥離が望まれるときの剥離操作が比較的面倒なものである。当該文献には、衣服に覆われる皮膚部位に長時間貼付される場合に、皮膚からの剥離が十分に抑制された低伸縮性の貼付剤を提供するための解決手段は何ら教示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−109427号公報
【特許文献2】特開2000−297033号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明はこのような実情に鑑みなされたものであり、その解決しようとする課題は、低伸縮性の貼付剤及び貼付製剤であって、皮膚へ貼付中に、種々の要因により望まれずに皮膚から剥離及び、甚だしくは脱落することなく、長時間持続的に貼付可能な貼付剤及び貼付製剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、低伸縮性貼付剤において、その外形の角部に丸みを付けても、貼付剤の望まれない剥離を回避することができない問題に取り組んだ結果、予測不可能なことに、外形の直線部分を確保することで、貼付剤の望まれない剥離を十分に抑制できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち本発明は
(1)支持体の片面に粘着剤層を有する低伸縮性貼付剤であって、貼付剤の平面外形の曲線部分の合計長さW(mm)の、貼付剤の平面外形の直線部分の合計長さS(mm)に対する割合P(W/S)が1.22以下であり、
曲線部分を円弧と近似した場合の当該円弧の半径R(mm)が0.5mm以上であることを特徴とする貼付剤。
(2)5%モジュラスが0.5(N)以上である、(1)記載の貼付剤。
(3)支持体の最外層表面の静摩擦係数が1.0以下である、(1)記載の貼付剤。
(4)粘着剤層は非水系のものである、(1)記載の貼付剤。
(5)(1)〜(4)のいずれかに記載の貼付剤の粘着剤層に薬物が含まれる、貼付製剤、
を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、貼付剤を低伸縮性とし、貼付剤の外形を、所定比率を有する直線部分の合計長さと曲線部分の合計長さを形成することで、その低伸縮性にもかかわらず、衣服の下に長期間皮膚に貼付しても、望まれない剥離が起こりにくい。しかも、低伸縮性であることで、ある程度の剛性を有し、皮膚への貼付操作が容易であるとともに、剥離が望まれるときには剥離操作は容易となる。したがって、このような貼付剤は、貼付と剥離のタイミングを厳密に管理することが可能となるので、貼付剤に広く用いることができるだけではなく、薬物投与量を厳密に制御したい貼付製剤において特に優れたものである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、本発明の貼付剤の例の模式的断面図である。図中、1は支持体、2は粘着剤層、3は剥離ライナー、4は貼付剤をそれぞれ示す。
【図2】図2は、本発明の貼付剤の例の模式的平面図である。図中、4は貼付剤、5は曲線部分、6及び7は直線部分、8及び9は延長線、10は延長線が交わる点、11は半径Rをそれぞれ示す。
【図3】図3は、本発明の貼付剤のもう一つの例の模式的平面図である。図中、4は貼付剤、5は曲線部分、6及び7は直線部分、8及び9は延長線、10は延長線が交わる点、11は半径Rをそれぞれ示す。
【図4】図4は、本発明の貼付剤のさらなる例の模式的平面図である。図中、4は貼付剤、5は曲線部分、6及び7は直線部分、8及び9は延長線、10は延長線が交わる点、11は半径Rをそれぞれ示す。
【図5】図5は、本発明の貼付剤のさらなる例の模式的平面図である。図中、4は貼付剤、5は曲線部分、6及び7は直線部分、8及び9は延長線、10は延長線が交わる点、11は半径Rをそれぞれ示す。
【図6】図6は、従来の貼付剤の例の模式的平面図である。図中、4は貼付剤、6及び7は直線部分をそれぞれ示す。
【図7】図7は、従来の貼付剤のもう一つの例の模式的平面図である。図中、4は貼付剤、5は曲線部分をそれぞれ示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の好ましい実施態様を示すが、それらの詳細な説明及び特定の例は、例示の目的のみのためのものであることが意図されており、本発明の範囲を限定しない。以下の好ましい実施態様の説明は、単に例示的な性質のものであり、決して本発明、その応用、又は用途を限定することが意図されるわけではない。
【0013】
図1は、本発明の貼付剤の例の模式的断面図である。図1では、本発明の貼付剤は、説明の目的で、剥離ライナー3を含めて図示される。しかし、後記において、本明細書にいう「貼付剤」は、文脈から別の意味に解釈される場合を除き、支持体および粘着剤層の積層体を意味するものとする。
図2を参照し、本発明の貼付剤の平面外形に着目すると、平面外形のうちの曲線部分5について、隣接する2つの直線部分6及び7を延長した2つの延長線が交わる点10を貼付剤の外形の角部であると想定した場合、貼付剤の外形は多角形を形成する。本明細書では、それ自体角部を有する厳密な意味での多角形のほか、このような形状を含めて多角形(例えば矩形(例えば正方形、長方形)、三角形、五角形、六角形等)という。図2の例では正方形である。図3の例では、貼付剤の平面外形は長方形である。図4の例では、貼付剤の平面外形は三角形である。図5の例では、貼付剤の平面外形は六角形である。本発明では、資材の利用効率及び貼付剤の取り扱いの観点から、貼付剤の平面外形は矩形が好ましい。
【0014】
再び図2を参照しつつ、本発明の貼付剤を説明する。本発明者らの研究の結果、低伸縮性の貼付剤を皮膚に貼付時に、貼付剤が衣服と摩擦される場合、その外形の非直線部分、すなわち角部又は曲線部分から貼付剤の剥離が開始する傾向にあることがわかった。図6を参照すると、この従来の貼付剤は角部を有する。このような貼付剤は皮膚への貼付時に、角部から貼付剤の剥離が開始する傾向にある。図7を参照すると、この従来の貼付剤はその平面外形が角部を有しないが曲線部分のみから構成される。このような貼付剤は皮膚への貼付時に、任意の曲線部分から貼付剤の剥離が開始する傾向にある。つまり、従来よりいわれているように、貼付剤の角部に丸みをつけても、予測に反して貼付剤の剥離を十分に抑制することができない。一方、貼付剤の外形の直線部分が衣服と摩擦されても、直線部分は角部又は曲線部分よりも剥離に対する耐性が強く、直線部分から貼付剤の剥離が開始する場合は少ないこともわかった。
【0015】
再び本発明の貼付剤の例である図2を参照する。このような知見に基づけば、貼付剤が任意の方向に、衣服から摩擦力を受ける場合、その外形の直線部分ができるだけ多くの、摩擦力を負担するように貼付剤を設計することが有用であると考えられる。かかる観点から、貼付剤の平面外形の曲線部分の合計長さW(mm)の、貼付剤の平面外形の直線部分の合計長さS(mm)に対する割合P(W/S)が1.22以下であることが必要である。すなわち本発明では、Pが1.22を超える、つまり直線部分の合計長さに対する曲線部分の合計長さの比率が上記値よりも高くなると、貼付剤の貼付中に、曲線部分が衣服と摩擦する機会が増加し、曲線部分からの貼付剤の剥離が早期に開始する傾向にある。その結果、生成された剥離部分は、衣服との度重なる摩擦により次第に拡大し、ついには貼付剤は望まれないタイミングで皮膚から脱落するであろう。Pは1.22以下であれば特に制限されないが、曲線部分が全くないと逆に剥離しやすくなることから、Pは0より大であることが好ましく、0.01より大であることがより好ましい。
【0016】
一方、曲線部分5が当該曲線部分5を円弧と近似した場合の当該円弧の半径R(mm)11があまりに小さいと、当該曲線部分が衣服の繊維と絡まることで、衣服から当該曲線部分へ応力が集中し、当該曲線部分5からの貼付剤の剥離が早期に開始する傾向にある。かかる観点から、かかる曲線部分を円弧と近似した場合の当該円弧の半径R(mm)は0.5mm以上であることが必要である。十分に本発明の効果を得るためには、かかるR(mm)は好ましくは0.75mm以上、より好ましくは1.00mm以上である。貼付剤の外形のすべての曲線部分の円弧の半径が0.5mm以上であることが好ましい。Rは0.5mm以上であれば特に限定されないが、Rが大きくなるにつれPも大きくなる傾向にあるので、好ましくは40よりも小さく、より好ましくは20よりも小さいく、最も好ましくは19.5以下である。
【0017】
本発明では貼付剤は低伸縮性である必要がある。貼付剤を低伸縮性とすることで、貼付剤は剛性を有することとなり、皮膚への貼付操作が容易となる。したがって、典型的には支持体を選択すれば、そのような貼付剤の伸縮性を達成することができる。
【0018】
本発明の貼付剤において「低伸縮性」とは、5%モジュラスが、0.5N以上、好ましくは、1.0N以上をいう。本明細書にいう5%モジュラスは、試験片を、少なくとも幅10mmおよびチャック間距離10mmを確保して、チャック間の長さが5%伸張するために必要とする力[N]を意味する。疑義の回避のために、試験片は剥離ライナーを含まない。通常の貼付剤の大きさの範囲内での、試験片の大きさの、5%モジュラスへの影響は十分に小さい。十分に大きい試験片が得られる場合は、5%モジュラスは、幅25mm、長さ100mmの貼付剤の試験片について、JIS Z 0237−2000に記載の試験方法によって測定される。
【0019】
貼付剤の伸縮性の調整は自体当業者公知の方法でなされえるが、支持体は、柔軟である粘着剤層の伸縮性はほぼ無視できることに鑑みれば、貼付剤の伸縮性を規定する大きなファクターとなり得る。
【0020】
そのような支持体としては、特に限定されないが、貼付剤を容易に皮膚に貼付できるためには、ある程度剛性を有することが望ましい。
【0021】
そのような支持体としては、例えば、ポリエステル、ナイロン、サラン(登録商標)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、ポリテトラフルオロエチレン、サーリン(登録商標)等の樹脂フィルム及び金属箔等の単独フィルム並びにこれらの積層フィルム等が挙げられる。支持体の厚さは、通常10〜500μm、好ましくは10〜300μmである。
【0022】
これらのうち支持体と粘着剤層との接着力(投錨力)を良好とするために、支持体を上記材質からなる無孔のプラスチックフィルムと多孔質フィルムとの積層フィルムとすることが好ましい。この場合、粘着剤層は多孔質フィルム側に形成するようにすることが好ましい。一方、貼付剤の風合い、外観的な高級感のためには、多孔質フィルム面を露出させることが望まれ、そのためには粘着剤層をプラスチックフィルム側に形成することが好ましい。
【0023】
このような多孔質フィルムとしては、具体的には紙、織布、不織布、編布、機械的に穿孔処理を施したシート等が挙げられ、前記フィルムと積層することができる。これらのうち低伸縮性の観点からは、特に紙、不織布が好ましい。低伸縮性の支持体を容易に得るためには、支持体は樹脂フィルム、金属箔を含むことが好ましい。
【0024】
また、多孔質フィルムとして織布や不織布を用いる場合、目付量を5〜30g/m、好ましくは6〜20g/mとするのがよい。
【0025】
本発明において最も好適な支持体としては、1.5〜6μm厚のポリエステルフィルム(好ましくは、ポリエチレンテレフタレートフィルム)と、目付量6〜12g/mのポリエステル(好ましくは、ポリエチレンテレフタレート)製不織布との積層フィルムである。
【0026】
前記支持体の厚さは、キーエンス社製デジタルマイクロスコープ(VHX−600型、VH−100レンズ使用、倍率200倍)を用いて、支持体の断面を撮影し、画像中の支持体の厚さを、デジタルマイクロスコープ内臓の画像処理ソフトを用いて3箇所以上計測し、平均値をとることにより算出される。
【0027】
また、貼付剤は、皮膚に貼付し、その上に衣服により覆われることを想定すれば、支持体最外層表面の静摩擦係数が0.01以上1.0以下であることが好ましい。このような好適な範囲の静摩擦係数は、支持体を構成する要素の材質を適宜選択することによって達成することができる。静摩擦係数が大きすぎると衣服との摩擦により貼付剤が剥がれやすくなる。支持体最外層表面の静摩擦係数が0.01に満たないような貼付剤はその材料の選択が困難である。ここにいう静摩擦係数はJIS P 8147−1994に記載された測定方法により測定される。
【0028】
粘着剤層に使用される粘着剤は、特に限定されず:アクリル系重合体からなるアクリル系粘着剤;スチレン−ジエン−スチレンブロック共重合体(例えばスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体など)、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン等のゴム系粘着剤;シリコーンゴム、ジメチルシロキサンベース、ジフェニルシロキサンベース等のシリコーン系粘着剤;ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルエチルエーテル、ポリビニルイソブチルエーテル等のビニルエーテル系粘着剤;酢酸ビニル−エチレン共重合体等のビニルエステル系粘着剤;ジメチルテレフタレート、ジメチルイソフタレート、ジメチルフタレート等のカルボン酸成分とエチレングリコール等の多価アルコール成分からなるポリエステル系粘着剤等が挙げられ、これらは1種で又は2種以上配合して用いられる。
【0029】
このような粘着剤のうち、アクリル系粘着剤、特に容易に架橋できるアクリル系粘着剤が好ましい。そのようなアクリル系粘着剤層によって多量の液状成分が保持でき、皮膚貼付時において、皮膚にソフト感を付与できる。粘着剤層が薬物を含有する場合、薬物安定性の観点からは、ゴム系粘着剤が好ましい。
【0030】
このようなアクリル系粘着剤としては、(メタ)アクリル酸C2〜18アルキルエステルを重合成分として重合させた重合体を主成分とするアクリル酸エステル系粘着剤が挙げられる。ヒト皮膚への接着性がよいという観点から、アクリル酸を共重合成分として用いたアクリル酸エステル系粘着剤が好ましく、接着及び剥離の繰り返しが容易である観点から、(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしての2−エチルヘキシルアクリレートと、アクリル酸と、N−ビニル−2−ピロリドンとを、40〜99.9:0.1〜10:0〜50の重量比で配合して共重合させた粘着剤が好ましい。所望により、これらの粘着剤に、紫外線照射や電子線照射などの放射線照射による物理的架橋、三官能性イソシアネートなどのイソシアネート系化合物や有機過酸化物、有機金属塩、金属アルコラート、金属キレート化合物、多官能性化合物(多官能性外部架橋剤やジアクリレートやジメタクリレートなどの多官能性内部架橋用モノマー)などの各種架橋剤を用いた化学的架橋処理を施してもよい。
【0031】
このようなゴム系粘着剤としては、ポリイソブチレン、ポリイソプレン及びスチレン−ジエン−スチレン共重合体から選ばれる少なくとも一種のエラストマーを主成分とするゴム系粘着剤が挙げられる。薬物安定性が高く、必要な接着力及び凝集力が両立できる観点から、粘度平均分子量500,000〜5,500,000の高分子量ポリイソブチレンと、粘度平均分子量10,000〜200,000の低分子量ポリイソブチレンとを、95:5〜5:95の重量比で配合し、必要によりタッキファイヤーを配合した粘着剤が好ましい。本明細書においてゴム系粘着剤は、それ自体粘着性を有するゴム系エラストマー、又はゴム系エラストマーとタッキファイヤーとからなる粘着性を有するポリマー組成物を意味する。
【0032】
タッキファイヤーとしては、例えば、ポリブテン類、石油系樹脂(例えば、芳香族系石油樹脂、脂肪族系石油樹脂)、テルペン系樹脂、ロジン系樹脂、クマロンインデン樹脂、スチレン系樹脂(例えば、スチレン樹脂、α−メチルスチレン)、水添石油樹脂(例えば、脂環族飽和炭化水素樹脂)等が挙げられる。中でも、ポリブテン類が薬物の保存安定性が良好になるため好適である。タッキファイヤーは、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0033】
タッキファイヤーの量は、粘着剤の全重量に対して、好ましくは30〜90重量%、より好ましくは50〜70重量%である。タッキファイヤーの量が30重量%未満であるとタックが乏しい場合があり、他方90重量%を超えると粘着剤層が固くなり、皮膚接着性が低下する傾向にある。
【0034】
粘着剤層の厚さは、通常10〜500μm、好ましくは10〜300μmである。本発明の貼付剤は、使用時まで粘着剤層の粘着面を保護するため、当該粘着面に剥離ライナーを積層するのが好ましい。
【0035】
皮膚接着性の観点から非水系の粘着剤層が好ましい。ここにいう非水系の粘着剤層は、必ずしも完全に水分を含まないものに限定されるわけではなく、空中湿度、皮膚等に由来する若干量の水分を含むものは包含される。十分な皮膚接着性を得るためには、低水分含量の粘着剤層を有する貼付剤が好ましく、その場合貼付剤の含水率は10重量%以下が好ましく、5重量%以下がより好ましく、2重量%以下がもっとも好ましい。ここで、貼付剤の含水率とは、カールフィッシャー電量滴定法により測定される、存在する場合剥離ライナーを剥離した貼付剤中に含まれる水の重量割合(貼付剤の総重量に対する水の重量割合)を意味し、本明細書においては、後述する実施例に記載の測定条件で測定される値である。
【0036】
剥離ライナーとしては、十分に軽い剥離性を確保できれば、特に限定されず、例えば粘着剤層と接触する面にシリコーン樹脂、フッ素樹脂等を塗布することによって剥離処理が施された、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレンテレフタレート等のフィルム、上質紙、グラシン紙等の紙、或いは上質紙又はグラシン紙等とポリオレフィンとのラミネートフィルム等が挙げられる。
【0037】
当該剥離ライナーの厚さは、通常10〜200μm、好ましくは25〜100μmである。
【0038】
本発明の剥離ライナーとしては、バリアー性、価格の点からポリエステル(特に、ポリエチレンテレフタレート)樹脂からなるものが好ましい。さらに、この場合、取り扱い性の点から、25〜100μm程度の厚さのものがより好ましい。剥離ライナーの平面外形は、貼付剤の他の部分(支持体及び粘着剤層)のそれらと一致してもよいが、粘着剤層のはみ出し(いわゆる糊はみ出し)を抑制するため、貼付剤の他の部分(支持体及び粘着剤層)の平面外形より突出させてもよい(いわゆるドライエッジ)。
【0039】
所望により粘着剤層に薬物を含有させて、皮膚貼付製剤を形成することができる。ここにいう薬物は特に限定されず、ヒトなどの哺乳動物にその皮膚を通して投与し得る、すなわち経皮吸収可能な薬物が好ましい。そのような薬物としては、具体的には、例えば、全身性麻酔薬、催眠・鎮静薬、抗癲癇薬、解熱鎮痛消炎薬、鎮暈薬、精神神経用薬、局所麻酔薬、骨格筋弛緩薬、自律神経用薬、鎮痙薬、抗パーキンソン薬、抗ヒスタミン薬、強心薬、不整脈用薬、利尿薬、血圧降下薬、血管収縮薬、冠血管拡張薬、末梢血管拡張薬、動脈硬化用薬、循環器用薬、呼吸促進薬、鎮咳去痰薬、ホルモン薬、化膿性疾患用外用薬、鎮痛・鎮痒・収斂・消炎用薬、寄生性皮膚疾患用薬、止血用薬、痛風治療用薬、糖尿病用薬、抗悪性腫瘍用薬、抗生物質、化学療法薬、麻薬、禁煙補助薬、抗アルツハイマー病薬などが挙げられる。
【0040】
薬物の含有量は、その経皮吸収用薬物の効果を満たし、粘着剤の接着特性を損なわない範囲であれば特に限定されないが、好ましくは粘着剤中に0.1〜60重量%、より好ましくは0.5〜40重量%含有されることが好ましい。0.1重量%より少ないと治療効果が十分でない虞があり、60重量%より多いと皮膚刺激発生の可能性がありまた経済的にも不利である虞がある。
【0041】
所望により、貼付製剤は、例えばその粘着剤層中に、種々の添加剤を含有してもよい。そのような添加剤としては、可塑剤、経皮吸収促進剤等のその他の各種添加剤、例えば酸化防止剤等が挙げられる。粘着剤との相溶性の観点から疎水性成分が好ましい。
【0042】
可塑剤は、粘着剤を可塑化することによって、貼付部位に対する粘着力を調整することができるものである。そのような可塑剤としては、ジイソプロピルアジペート、ジアセチルセバケートなどが挙げられ、これらの1種又は2種以上の可塑剤を用いることができる。
【0043】
経皮吸収促進剤としては、粘着剤層内での薬物の溶解性や拡散性を良くする機能を有し、薬物の経皮吸収を改善する化合物等が用いられる。
【0044】
このような経皮吸収促進剤としては、主に薬物溶解性を高める化合物として、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のグリコール類、主に薬物拡散性を高める化合物として、オリーブ油、ヒマシ油、スクアラン、ラノリン等の油脂類等が挙げられる。
【0045】
その他流動パラフィンのような炭化水素類、各種界面活性剤、エトキシ化ステアリルアルコール、オレイン酸モノグリセリド、カプリル酸モノグリセリド、ラウリル酸モノグリセリドのようなグリセリンモノエステル類、或いはグリセリンジエステル、グリセリントリエステル又はそれらの混合物、ラウリル酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソトリデシル、パルミチン酸オクチル、パルミチン酸イソプロピル、オレイン酸エチル、アジピン酸ジイソプロピルのような高級脂肪酸エステル、オレイン酸、カプリル酸のような高級脂肪酸、その他N−メチルピロリドン、1,3−ブタンジオール等が挙げられる。
【実施例】
【0046】
以下に実施例を挙げて本発明を詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、以下の文中で部とあるのは全て重量部を意味する。表1及び表2中において、曲線(W)及び直線(S)の数値は実測値を四捨五入した値を、PはW及びSの四捨五入前の値に基づいて算出した値を四捨五入した値を示している。
【0047】
(1)アクリル系粘着剤溶液の調製
不活性ガス雰囲気下、アクリル酸2−エチルへキシル75部、N−ビニル−2−ピロリドン22部、アクリル酸3部及びアゾビスイソブチロニトリル0.2部を酢酸エチル中60℃にて溶液重合させてアクリル系粘着剤溶液(粘着剤固形分濃度:28重量%)を得た。
【0048】
(2)ポリイソブチレン系粘着剤溶液の調製
高分子量ポリイソブチレン(粘度平均分子量900000)28.5部、低分子量ポリイソブチレン(粘度平均分子量60000)43部、ポリブテン(数平均分子量1400)8.5部、及び脂環族系石油樹脂(軟化点100℃)20部をヘキサンに溶解して、ポリイソブチレン系粘着剤溶液(固形分濃度25%)を得た。
【0049】
(実施例1)
粘着剤固形分44部を含む量のアクリル系粘着剤溶液、ミリスチン酸イソプロピル54部を容器中で均一になるように混合攪拌を行った。その後、この混合物に、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレートを粘着剤固形分100部当たり0.4部となる量添加し、酢酸エチルで粘度を調整し、この液状物を剥離ライナーとしてのPETフィルム(75μm厚)に粘着剤層の乾燥後の厚さが200μmとなるように積層し、2μm厚さのポリエチレンテレフタレート(以下「PET」と記す。)フィルム/目付け量12g/mのPET不織布からなる、(合計)厚さ54μmの支持体の不織布面側に貼りあわせ、70℃で48時間熟成処理(粘着剤層の架橋処理)を行った。さらに、熟成後の積層シートを、平面外形のうちの曲線部分について、隣接する2つの直線部分をそれぞれ延長した2つの延長線が交わる点を貼付剤の外形の角部であると想定した場合、貼付剤の外形は正方形を形成し、当該延長線を含む正方形の辺の長さは63mmであり、曲線部分は半径0.5mmの円弧状であるように切断して、実施例1の貼付剤を得た。このことを、縦横63mm(角部分は半径0.5mmの円弧状)の正方形に切断して実施例1の貼付剤を得た、と表記する。実施例1〜10および比較例1〜10において同様である。
【0050】
(実施例2)
熟成後の積層シートの切断形状を、角部分の半径が1.0mmの円弧状にする以外は実施例1と同じであった。
【0051】
(実施例3)
熟成後の積層シートの切断形状を、縦横63.5mm(角部分の半径が5mmの円弧状)にする以外は実施例1と同じであった。
【0052】
(実施例4)
熟成後の積層シートの切断形状を、縦横63.5mm(角部分の半径が10mmの円弧状)にする以外は実施例1と同じであった。
【0053】
(実施例5)
熟成後の積層シートの切断形状を、縦横64.5mm(角部分の半径が15mmの円弧状)にする以外は実施例1と同じであった。
【0054】
(実施例6)
熟成後の積層シートの切断形状を、縦横65.5mm(角部分の半径が19.5mmの円弧状)にする以外は実施例1と同じであった。
【0055】
(比較例1)
熟成後の積層シートの切断形状を、縦横63mm(角部分は円弧状にしない)以外は実施例1と同じであった。
【0056】
(比較例2)
熟成後の積層シートの切断形状を、縦横65.5mm(角部分の半径が20mmの円弧状)にする以外は実施例1と同じであった。
【0057】
(比較例3)
熟成後の積層シートの切断形状を、縦横65.5mm(角部分の半径が20.5mmの円弧状)にする以外は実施例1と同じであった。
【0058】
(比較例4)
熟成後の積層シートの切断形状を、縦横69mm(角部分の半径が30mmの円弧状)にする以外は実施例1と同じであった。
【0059】
(比較例5)
熟成後の積層シートの切断形状を、半径35.7mmの円にする以外は実施例1と同じであった。
【0060】
(実施例7)
ポリイソブチレン系粘着剤溶液をPETフィルム(75μm厚)に乾燥後の厚さが20μmになるように塗布し、乾燥して粘着剤層を形成した。6μm厚さのPETフィルム/目付け量20g/mのPET不織布からなる、(合計)厚さ71μmの支持体のPETフィルム面側に貼りあわせ、25℃で7日間熟成(エージング)を行った。
【0061】
さらに、熟成後の積層シートを、縦横16mm(角部分は半径0.5mmの円弧状)に切断して実施例7の貼付剤を得た。
【0062】
(実施例8)
熟成後の積層シートの切断形状を、角部分の半径が1.0mmの円弧状にする以外は実施例7と同じであった。
【0063】
(実施例9)
熟成後の積層シートの切断形状を、角部分の半径が2.4mmの円弧状にする以外は実施例7と同じであった。
【0064】
(実施例10)
熟成後の積層シートの切断形状を、縦横16.5mm(角部分の半径が5mmの円弧状)にする以外は実施例7と同じであった。
【0065】
(比較例6)
熟成後の積層シートの切断形状を、縦横16mm(角部分は円弧状にしない)以外は実施例7と同じであった。
【0066】
(比較例7)
熟成後の積層シートの切断形状を、縦横17mm(角部分の半径が6.7mmの円弧状)にする以外は実施例7と同じであった。
【0067】
(比較例8)
熟成後の積層シートの切断形状を、半径9mmの円にする以外は実施例7と同じであった。
【0068】
(比較例9)
支持体を伸縮性のあるポリエステルからなる編布(厚さ565μm)にすることと、熟成後の積層シートを、縦横63.5mm(角部分は半径5mmの円弧状)の正方形に切断する以外は、実施例1と同じであった。
【0069】
(比較例10)
支持体を伸縮性のあるポリエステルからなる編布(厚さ565μm)にすることと、熟成後の積層シートを、縦横16mm(角部分は半径2.4mmの円弧状)の正方形に切断する以外は、実施例1と同じであった。
【0070】
【表1】

【0071】
貼付剤の含水率はいずれも1.0重量%以下であった。
【0072】
<<薬物を含む製造実施例>>
(実施例11〜13、比較例11〜14)
粘着剤固形分40部を含む量のアクリル系粘着剤溶液、ミリスチン酸イソプロピル10部、リドカイン50部を容器中で均一になるように混合攪拌を行った。その後、この混合物に、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレートを粘着剤固形分100部当たり0.4部となる量添加し、酢酸エチルで粘度を調整し、この液状物を剥離ライナーとしてのPETフィルム(75μm厚)に乾燥後の厚さが60μmになるように塗布し、乾燥して粘着剤層を形成した。粘着剤層を2μm厚さのPETフィルム/目付け量8g/mのPET不織布からなる支持体の不織布面側に貼りあわせ、25℃で24時間エージング処理(粘着剤層の架橋処理)を行った。さらに、熟成後の積層シートを、表に示す長方形に切断して、実施例11〜13、比較例11〜14を得た。
【0073】
(実施例14〜17、比較例15〜18)
ポリイソブチレン系粘着剤溶液に粘着剤層中のインドメタシン含有率が20%になるようにインドメタシンを添加、混合して十分に攪拌した後、離型ライナー上に乾燥後の厚さが100μmとなるように塗布乾燥させ、粘着剤層を形成した。6μm厚さのPETフィルム/目付け量8g/mのPET不織布からなる支持体の不織布面側に貼りあわせ、25℃で2日間熟成(エージング)を行った。さらに、熟成後の積層シートを、表に示す長方形に切断して、実施例14〜17、比較例15〜18を得た。
【0074】
これらの薬物を含む貼付剤である貼付製剤は、貼付剤と同様の効果を有した。
【0075】
【表2】

【0076】
注:平面外形のうちの曲線部分について、隣接する2つの直線部分をそれぞれ延長した2つの延長線が交わる点を貼付剤の外形の角部であると想定した場合、貼付剤の外形は長辺および短辺を有する長方形を形成し、当該延長線を含む長方形の長辺および短辺の長さを表中に示す。
【0077】
(試験方法)
5%モジュラス
JIS Z 0237−2000に記載の試験方法により測定した。ただし、試験片は、幅25mm、長さ100mmの貼付剤を用いた。
【0078】
静摩擦係数
JIS P 8147−1994に記載された測定方法により測定した。
【0079】
貼付試験
上記の実施例1〜10、比較例1〜8の貼付剤を各10枚用意した。そして、各例の貼付剤をそれぞれ30人の胸、又は背中に貼付し、普段の生活を行ってもらった。貼付4日後に、貼付剤面積に対する剥離面積を記録した。
【0080】
また、上記の実施例3、9、比較例9、10の貼付剤を各10枚用意し、各例の貼付剤をそれぞれ10人の胸、又は背中に貼付し、普段の生活を行ってもらった。4日間の貼付後、簡単に剥がせたものを○、剥がしにくいものを×とした。
【0081】
薬物を含有する貼付剤である、実施例11〜17、比較例11〜18も同様に貼付試験を実施し、貼付剤面積に対する剥離面積及び、貼付後の剥がし易さの評価を行う。結果、薬物を含まない貼付剤と同様の結果を得る。
【0082】
含水率
温度23±2℃及び相対湿度40±5%RHに制御された環境下で、剥離ライナーを有する貼付剤を7.5cmに打ち抜いて、試験片を作製した。その後、試験片から剥離ライナーを除去して水分気化装置へ投入した。水分気化装置内で試験片を140℃で加熱し、これにより発生した水分を、窒素をキャリヤーとして滴定フラスコへと導入し、カールフィッシャー電量滴定法により、貼付剤の含水率(重量%;貼付剤の総重量に対する、水分の重量割合)を測定した。
【0083】
なお、本実施例中の記載における「辺」とは、段落[0013]にいう多角形において、隣接する2つの直線部分を延長した延長線が交わる点を角部と想定した場合、隣接した2つの角部の間の距離を意味する。本実施例中の記載における面積は実際の面積である。
【0084】
本発明の説明は、単に例示的な性質のものであり、かくして本発明の要旨から離れないその変形態様は、本発明の範囲内であるべきことが意図される。そのような変形態様は、本発明の精神及び範囲から離れるものとしてみなされるべきではない。
【0085】
本出願は、日本で出願された特願2009−028903を基礎としておりそれらの内容は本明細書に全て包含されるものである。
【符号の説明】
【0086】
1 支持体
2 粘着剤層
3 剥離ライナー
4 貼付剤
5 曲線部分
6 直線部分
7 直線部分
8 延長線
9 延長線
10 延長線が交わる点
11 半径R

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体の片面に粘着剤層を有する低伸縮性貼付剤であって、
貼付剤の平面外形の曲線部分の合計長さW(mm)の、貼付剤の平面外形の直線部分の合計長さS(mm)に対する割合P(W/S)が1.22以下であり、
曲線部分を円弧と近似した場合の当該円弧の半径R(mm)が0.5mm以上であることを特徴とする貼付剤。
【請求項2】
5%モジュラスが0.5(N)以上である、請求項1記載の貼付剤。
【請求項3】
支持体の最外層表面の静摩擦係数が1.0以下である、請求項1記載の貼付剤。
【請求項4】
粘着剤層は非水系のものである、請求項1記載の貼付剤。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の貼付剤の粘着剤層に薬物が含まれる、貼付製剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−207571(P2010−207571A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−25498(P2010−25498)
【出願日】平成22年2月8日(2010.2.8)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】