説明

貼付剤用支持体およびこれを用いた貼付剤

【課題】従来の布や不織布に代わる薄い支持体を用いて、薬剤成分の支持体への移行による目減りの防止と薬剤成分の大気中への散逸による効果持続性の減少を防止するとともに、貼付時の皮膚刺激性を減少させ、かつ貼付後の皮膚の動きにも追従しうる新規な貼付剤用支持体およびこれを用いた貼付剤を提供しようとするものである。
【解決手段】常温において伸縮自在な厚さ5〜300μmの基体フィルム層と、該基体フィルム層上に配置された厚さ1〜25μmのポリエステル樹脂フィルム層とを含み、該ポリエステル樹脂フィルム層は、前記基体フィルム層の伸張に応じて幅が変化する溝部を有することを特徴とする貼付剤用支持体、ならびにこれを用いた貼付剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚面に貼付して使用する貼付剤に関し、特に粘着剤層に含まれる薬剤の保存安定性、効果持続性と、使用時の皮膚の動きに対する追従性とを両立した貼付剤用支持体およびこれを用いた貼付剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、皮膚に貼付して使用する貼付剤は、皮膚面の保護や、運動時の関節部の保護等の被覆用途や、薬物を経皮的に体内に吸収させるための貼付製剤などそれぞれの用途に応じて、さまざまな構成の製品が製造されている。貼付剤は、支持体となるシート材料に、薬剤を添加した粘着剤を塗布した構成が一般的であるが、皮膚の動きに対する追従性を高めるため、支持体として布、不織布等の伸縮性の材料を用いた場合、これらの材料は厚さが厚いため、支持体に吸収されて無駄になる薬剤量が多いという問題と、皮膚に貼付したときに厚い支持体のエッジで皮膚が刺激されるという問題があった。
【0003】
また、貼付剤の保存中には全体をガスバリア性の包装袋に入れて保存したとしても、薬剤が徐々に支持体に移行するため粘着剤中の薬剤量が時間と伴に減少するという保存安定性の問題と、さらに使用時に包装袋を開封して皮膚に貼付した後に粘着剤中の薬剤が支持体を通過して大気中に散逸するため、効果が長時間持続しないという問題があった。
【0004】
特許文献1に開示された貼付剤は、これらの問題を解決するためになされたものであり、厚さ0.5〜6μmのポリエステル製フィルムと坪量5〜20g/m2のポリエステル製不織布を積層してなる支持体の不織布面に粘着剤層を積層してなる貼付剤である。
この発明によると、支持体が薄いため、支持体のエッジによる皮膚刺激性の問題が解決され、さらにポリエステルフィルムによる薬剤透過防止効果が期待できるが、ポリエステルフィルムは、本来伸びにくいため、関節部など大きな伸びが必要とされるような部位には使用しにくいものである。
【0005】
特許文献2に開示された貼付剤は、支持体上に熱可塑性樹脂フィルムを介して粘着剤層を設けるとともに、この粘着剤層と上記フィルムとを貫通する多数個の小孔を設け、この小孔内に薬剤含有成分を埋入する一方、上記小孔内壁面に上記フィルムを延出させて上記薬剤含有成分と粘着剤層との接触を防ぐ隔壁を形成したことを特徴とする貼付剤である。この発明によると、薬剤有効成分と粘着剤層が分離されているため、粘着性を損なうことなく、薬剤の放出性を調節することが可能となる。また例えば親水性ポリマーからなる粘着剤と親油性薬剤の併用などが可能となる。しかしながら、この発明による貼付剤は、支持体となる熱可塑性フィルムに多数の小孔をあけ、さらにこの小孔に薬剤を埋入するという煩雑な工程を要するので、高価なものとならざるを得なかった。
【特許文献1】特許第3081858号公報
【特許文献2】特公昭62-48643号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記に記したような従来の問題点に鑑みてなされたものであって、その解決しようとする課題は、従来の布や不織布に代わる薄い支持体を用いて、薬剤成分の支持体への移行による目減りの防止と薬剤成分の大気中への散逸による効果持続性の減少を防止すると伴に、貼付時の皮膚刺激性を減少させ、かつ貼付後の皮膚の動きにも追従しうる新規な貼付剤用支持体およびこれを用いた貼付剤を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するための手段として、請求項1に係る発明は、常温において伸縮自在な厚さ5〜300μmの基体フィルム層と、該基体フィルム層上に配置された厚さ1〜25μmのポリエステル樹脂フィルム層とを含み、該ポリエステル樹脂フィルム層は、前記基体フィルム層の伸張に応じて幅が変化する溝部を有することを特徴とする貼付剤用支持体である。
【0008】
また、請求項2に係る発明は、前記基体フィルム層は、ポリウレタン樹脂フィルムまたはポリオレフィン系樹脂フィルムであることを特徴とする請求項1に記載の貼付剤用支持体である。
【0009】
また、請求項3に係る発明は、前記溝部は、前記ポリエステル樹脂フィルム層の長手方向に伸長しかつ間隔が20mm以下のストライプ形状であることを特徴とする請求項1または2に記載の貼付剤用支持体である。
【0010】
また、請求項4に係る発明は、前記溝部は、1辺が20mm以下の格子形状であることを特徴とする請求項1または2に記載の貼付剤用支持体である。
【0011】
また、請求項5に係る発明は、前記溝部の深さが、前記ポリエステル樹脂フィルム層の厚さ未満であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の貼付剤用支持体である。
【0012】
また、請求項6に係る発明は、前記基体フィルム層と前記ポリエステル樹脂フィルム層との間に接着層が配置され、前記溝部の深さが、前記ポリエステル樹脂フィルム層の厚さよりも大であり前記ポリエステル樹脂フィルム層の厚さと前記接着層の厚さの合計値よりも小であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の貼付剤用支持体である。
【0013】
また、請求項7に係る発明は、前記溝部により画定されかつ互いに隣り合っている島状領域の間に前記ポリエステルフィルム層からなる結合部が設けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の貼付剤用支持体である。
【0014】
また、請求項8に係る発明は、前記ポリエステル樹脂フィルム上に蒸着層をさらに含むことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の貼付剤用支持体である。
【0015】
また、請求項9に係る発明は、前記ポリエステル樹脂フィルム層の表面に、表面処理層を設けたことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の貼付剤用支持体である。
【0016】
また、請求項10に係る発明は、請求項1〜9のいずれか1項に記載の貼付剤用支持体の前記ポリエステル樹脂フィルム層側に、薬剤を含有する粘着剤層を設けたことを特徴とする貼付剤である。
【発明の効果】
【0017】
本発明の貼付剤用支持体は、常温において伸縮自在な基体フィルム層と、伸びは小さいが、バリア性に優れ、粘着剤中の薬剤の移行、拡散を防止する効果が高いポリエステル樹脂フィルム層とを積層し、さらにポリエステル樹脂フィルム層に溝部を設けたため、この支持体を用いた貼付剤は、使用前の段階ではポリエステル樹脂フィルム層が薬剤の移行、拡散を防止するので保存安定性が高く、使用段階では基体フィルム層の伸張に応じて、溝部が開いて幅が変化するため、皮膚の動きによく追従するという効果がある。また溝部が開いても、残ったポリエステル樹脂フィルム層が、使用中の薬剤の大気中への拡散を防止
するので、薬効が長時間持続するという効果がある。
【0018】
基体フィルム層として、ポリウレタン樹脂フィルムを使用した場合には、大きな伸びが期待できるため、皮膚に対する追従性が高く、装着感に優れた貼付剤が得られる。
また基体フィルム層としてポリオレフィン系樹脂フィルムを使用した場合には、加工性に優れるため比較的低コストの製品が得られる。
【0019】
ポリエステル樹脂フィルム層に入れる溝部の形状をフィルムの長手方向に伸長するストライプ形状とした場合には、加工が容易にできるため、低コストの製品が得やすい。また溝部を格子形状とした場合には、加工は多少難しくなるが、貼付時には支持体がたてよこ両方向に伸びるため、より装着感に優れた貼付剤が得られる。
【0020】
ポリエステル樹脂フィルム層に入れる溝部の深さを、ポリエステル樹脂フィルム層の厚さよりも小さくし、ポリエステル樹脂フィルム層が僅かに残るようにした場合には、粘着剤中の薬効成分の移行を防止する効果がさらに高まる。
【0021】
また基体フィルム層とポリエステル樹脂フィルム層との間に接着剤層が配置され、溝部の深さを、ポリエステル樹脂フィルム層の厚さよりも大きく、ポリエステル樹脂フィルム層の厚さと接着層の厚さの合計値よりも小さくした場合には、溝部が接着剤層の一部を切断する形になるため、基体フィルム層の伸びが一層円滑になり、さらに装着間に優れた貼付剤が得られる。
【0022】
また、溝部により画定されかつ互いに隣り合っている島状領域の間に前記ポリエステルフィルム層からなる結合部が設けられている場合には、途中工程において、貼付剤用支持体がばらばらになるのを防ぐ効果があり、目的とする貼付剤の製造が容易になる。
【0023】
また、ポリエステル樹脂フィルム上に蒸着層を設ける場合には、粘着剤中の薬剤の移行拡散の防止効果がさらに高まることにより、基体フィルム層への薬剤浸透防止効果をより一層高めることができる。
【0024】
またポリエステル樹脂フィルム層の表面に、粘着剤層との接着性を改善するための表面処理層を設けた場合には、粘着剤層の選択の幅が広がり、広範囲の種類の粘着剤あるいは、薬剤が使用できる。
【0025】
本発明の貼付剤用支持体は、従来貼付剤の支持体として一般的に使用されている布や不織布に比較して厚さが薄いものの支持体への薬剤浸透を防止することができるので、支持体に吸収されて無駄になる薬剤の量が少なくなる。また従来、支持体への薬剤の移行のばらつきによって皮膚に吸収される薬剤の量がばらついていたものが、本発明の支持体を用いた場合には、適量の薬剤を的確に配合することが可能となり、粘着剤の量も少なくて済む。また厚さが薄いことにより、支持体のエッジによる皮膚刺激性が少ないという効果もある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
図面に従って、本発明の貼付剤用支持体およびこれを用いた貼付剤について詳細に説明する。図1は、本発明に係る貼付剤用支持体の基本的な実施形態を示した断面模式図である。基体フィルム層1としては、常温において容易に伸縮する厚さ5〜300μmの合成樹脂フィルムを用いる。基体フィルム層に用いる合成樹枝フィルムとしては、常温における伸び率が100〜1000%、望ましくは200〜600%であり、厚さ30〜100μmの合成樹脂フィルムが好適に用いられる。合成樹脂フィルムの材質の具体的な例としては、ポリウレタン樹脂、ポリオレフィン系樹脂(ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリオレフィン系エラストマー樹脂等)、エチレン酢酸ビニル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、各種合成ゴム、シリコンゴム、各種熱可塑性エラストマー、各種ポリマーアロイ等があげられるが、これらに限定されるものではない。
【0027】
基体フィルム層の材質や厚みは、目的とする貼付剤の用途に応じて、適宜選択されるが、これらの中で、ポリウレタン樹脂フィルムやポリオレフィン系エラストマー樹脂フィルムは、特に大きな破断伸び特性を有するため、関節に貼る貼付剤のように、大きな伸びを必要とする用途には好適に使用できる。
また、汎用のポリオレフィン系樹脂フィルムは、コスト、加工適性に優れるため、それ程大きな伸びを必要としない用途には好適に使用できる。
【0028】
次に、ポリエステル樹脂フィルム層2については、厚さ1〜25μmの通常のPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムが使用できる。PETフィルムと基体フィルム層の積層は、通常はPETフィルム側に接着剤を塗布して、基体フィルム層と貼り合わせる方法がとられる。接着剤としては、一般的に使用される共縮合ポリエステル樹脂接着剤、二成分系ポリウレタン樹脂接着剤、ニトリルゴム系接着剤、アクリル樹脂系接着剤、塩ビ酢ビ共重合樹脂接着剤、エポキシ樹脂接着剤等が使用できる。基体フィルム層の材質によっては、基体フィルム層に予めコロナ放電処理、プラズマ処理、オゾン処理、紫外線照射処理、火炎処理等の前処理を施しても良い。
【0029】
なお、基体フィルム層については、フィルムの状態のものを貼り合わせるのではなく、ポリエステル樹脂フィルム層上に、押出機から溶融した樹脂をフィルム状に押し出して、形成することも可能である。特にポリオレフィン系樹脂の場合には、押し出し適性に優れた材料を用いることが好ましい。
【0030】
以上のようにして、積層が完了した貼付剤用支持体のポリエステル樹脂フィルム層2に溝部2aを形成する。溝部2aを形成する方法としては、フィルムの長手方向に伸長するストライプ形状の溝であれば、所定の深さに切れ目が入るように適当な間隙を残して一定間隔に並べた刃物によって容易に溝部2aを形成することができる。
図3は、ストライプ形状の溝部2aを形成した貼付剤用支持体の平面模式図である。
ストライプ形状の溝部2aの間隔は、20mm以下が望ましい。間隔が20mmより広い場合には、支持体としての十分な伸びが期待できない。
なお、ストライプ形状の溝の場合は、基体フィルム層1とポリエステル樹脂フィルム層2を積層するラミネート工程において、貼り合わせる直前にポリエステル樹脂フィルム層にストライプ形状の溝部2aを設けて貼り合わせることも可能である。
【0031】
格子形状の溝の場合には、円筒状のダイを用いたダイカット方式が使用可能である。
この他、レーザーの出力を調節して、必要な深さに溝を形成するようにしたレーザーカット法も使用できる。
図4は、格子形状の溝部2aを形成した貼付剤用支持体の平面模式図である。
格子を形成する溝部2aの間隔は、ストライプ形状の場合と同様の理由により、20mm以下が望ましい。
図5は、この格子形状の溝部を設けた支持体をたて、よこ方向に伸ばした状態を示した平面模式図である。ポリエステル樹脂フィルム層2は伸びないが、基体フィルム層が伸びるため、溝部2aが広がって、全体としては伸びた形になる状態を模式的に示している。
【0032】
溝部の形状と深さについて、図6と図7に示した説明図によって説明する。
図6は、刃物やダイによって溝部2aを形成した場合の状態を模式的に示したものであり、図7は、レーザーカット法によって溝部2aを形成した場合の状態を模式的に示したものである。刃物やダイによって溝部2aが形成された場合には、単に切れ目が入るだけであるが、レーザーカット法の場合には、フィルム基材そのものが高温によって蒸発して消失するので、レーザーの光束幅に応じたほぼ一定の幅の溝が形成される。
【0033】
図6、図7においてそれぞれ(a)図は、溝部2aの深さがポリエステル樹脂フィルム層2の厚さ未満である場合の状態を模式的に示したものである。またそれぞれ(b)図は、溝部2aの深さがポリエステル樹脂フィルム層2の厚さより大であり、ポリエステル樹脂フィルム層2の厚さと接着層6の厚さの合計値より小である場合の状態を模式的に示したものである。すなわち(b)図の場合には、溝部2aの深さは、接着剤層6にまで及んでいる。
【0034】
ポリエステル樹脂フィルム層2に溝部2aを形成するに当たっては、ポリエステル樹脂フィルム層2を全厚さにわたって切断せず、僅かに残るように溝部2aを設け、貼付剤を使用する段階で伸ばされた時に自然に切れるようにするのが理想的である。こうすることにより、既に述べたように保存時における粘着剤中の薬剤の移行を防止し、薬剤量を安定的に保持する機能がさらに高まる。このとき、切らずに残すポリエステル樹脂フィルム層の厚さは、ポリエステル樹脂フィルム層の厚さと、加工の精度にもよるが、0.2〜1μmとするのが望ましい。これにより、貼付剤として使用する際、引き伸ばされた時に、溝部の部分が容易に破断して、自然に伸びるので、皮膚への追従性が確保される。
【0035】
このような加工を施すことは、きわめて微妙な機械的あるいは電気的な調整を必要とするため、安定した品質の製品を大量に生産するには次に示す構成が好ましい。すなわち、図8に示したように、溝部2aによって画定されかつ互いに隣り合っている島状領域2cの間に、ポリエステル樹脂フィルム層2からなる結合部2bが設けられていても良い。ポリエステル樹脂フィルム層2は、結合部2b以外の部分では、完全に切り離されており、結合部では繋がっているため、ばらばらにならず、途中の工程における支持体の取り扱いが容易になる。またこのような加工は、ダイカット方式の場合であれば、ダイにあらかじめ結合部に相当する溝をいれておけばよく、レーザーカット法の場合であれば、結合部に相当する部分のレーザー出力を減少させてやればよいため、比較的容易に為し得るものである。
なお、結合部として残されるポリエステル樹脂フィルム層の厚さは、0.2〜1μm、幅は、0.5〜2mmが適当である。
【0036】
次に図2に示したように、以上のようにして得られた貼付剤用支持体に、薬剤を含有する粘着剤層4を設ける。粘着剤層4を設ける方法は、通常は、セパレーター5の上に粘着剤層4を形成すべき塗工液を塗布して乾燥させ、これを支持体と圧着して形成するのが一般的であるが、必ずしもこれに限定されるものではなく、支持体に直接塗工液を塗布して粘着剤層4を形成してもよい。図2は、直接塗工した場合の状態を模式的に示した図であって、溝部2aの内部に粘着剤層4が進入している。
なお粘着剤層4の厚さは、通常の不織布等を使用した支持体の場合に比較して、少なくて済み、乾燥重量(坪量)で8〜15g/m2程度で十分である。
【0037】
粘着剤層を形成する塗工液の配合処方としては、アクリル系粘着剤、シリコン系粘着剤、ゴム系粘着剤等公知の粘着性ポリマーに、必要に応じて粘着性付与剤、架橋剤、可塑剤、充填剤、各種添加剤、溶剤などを混合した粘着剤基剤に所望の薬効成分および必要に応じて相溶化剤、経皮吸収促進剤等を添加して調製する。
【0038】
ポリエステル樹脂フィルム層面に粘着剤層4を設けるにあたり、予めポリエステル樹脂フィルム層面に粘着剤層との接着性を高める目的で、表面処理層3を設けても良い。
表面処理層3の具体的な例としては、コロナ放電処理、プラズマ処理、オゾン処理、紫外線照射処理、火炎処理等の物理的表面処理や、アンカーコート、プライマーコート等の塗
工剤による表面処理またはこれらの組合せが用いられる。
表面処理層3は、溝部2aを形成する前の段階で設けるのが望ましいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0039】
アンカーコート、プライマーコートに用いる塗工剤としては、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ゴム系樹脂、アクリル樹脂、塩ビ酢ビ共重合樹脂、エポキシ樹脂等の合成樹脂あるいは、これらの混合物に必要に応じて、硬化剤、充填剤、顔料、ブロッキング防止剤等の各種添加剤、希釈剤等を混合して調製する。
【0040】
図9は、こうして得られた貼付剤を皮膚の表面に貼付した状態を示した断面模式図である。皮膚7の伸びに応じて、基体フィルム層1が伸び、ポリエステル樹脂フィルム層2に形成した溝部2aが広がって、皮膚7によく追従する。
【0041】
ポリエステル樹脂フィルム層の上に蒸着層を設けた場合には、既に述べたようにポリエステル樹脂フィルムの持つ薬剤の移行拡散防止効果がさらに高まる。蒸着層の材質としては、アルミニウム、錫、銀、金等の金属かまたは、珪素、アルミニウム、マグネシウム、チタン、ジルコニウム、錫などの金属の酸化物を用いることができる。
金属の中では、アルミニウムが最も一般的に使用できる。また金属酸化物の場合、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化マグネシウムなどの金属酸化物を使用した場合には、透明な蒸着層が得られる。
蒸着層の厚さは、その材質により異なるが、0.5nm〜500nmの範囲であることが好ましく、より好ましくは5nm〜50nmの範囲である。
蒸着層2を形成する方法としては、金属の場合であれば真空蒸着法やスパッタリング法が、また金属酸化物の場合であれば、真空蒸着法、スパッタリング法に加え、反応性蒸着法や、金属酸化物の種類によってはプラズマ気相成長法(CVD法)を用いることができる。
次に、実施例に基づいて、本発明の貼付剤用支持体およびこれを用いた貼付剤についてさらに具体的に説明する。
【実施例1】
【0042】
基体フィルム層として厚さ30μmのポリウレタンフィルム(日本ユニポリマー社製Ding
Zing Film(登録商標))を用い、ポリエステル樹脂フィルム層として厚さ12μmのPETフィルム(東レ社製ルミラー(登録商標))を用い、これらを積層して貼付剤用支持体を作成した。
積層にあたってはPETフィルムの表面に二液型ウレタン樹脂系接着剤(三井化学ポリウレタン社製タケラック(登録商標))を塗布し、ドライラミネーション法によって接着積層した。次に得られた積層フィルムのPETフィルム面にポリエステル樹脂系アンカーコートを施し、しかる後にダイカットマシンによってPETフィルム面に格子状の溝部を形成した。溝部の間隔は、5mmとした。溝部の深さは、僅かに接着層に到達する深さとし、PETフィルム層と接着剤層が切断されるようにした。
こうして得られた貼付剤用支持体の表面に、粘着剤層を設けて、貼付剤を作成した。
粘着剤層を設けるにあたっては、セパレーターとして表面にシリコン離型処理を施した厚さ12μmのPETフィルムを用い、このセパレーターの表面に、インドメタシン等を含む粘着剤組成物を乾燥後の坪量が12g/m2となるように形成し、先に得られた支持体のアンカーコート面に圧着して接着させた。
【0043】
こうして得られた貼付剤は、保存性試験によっても粘着剤中の薬剤成分量の変化が少なく、保存安定性に優れていた。
また、セパレーターを剥離して、皮膚に貼付すると、基体フィルム層であるウレタンフィルムが伸びてPETフィルムの溝部が広がり、皮膚に良く追従した。また、残ったPET
フィルムが、薬効成分の散逸を防止するため、効果が長時間持続した。
【実施例2】
【0044】
実施例1と同様の材料、手順を用いて貼付剤を作成した。但し、PETフィルム面に施す溝部の深さは、11〜11.5μmとし、PETフィルムが僅かに残るようにした。
こうして得られた貼付剤は、保存性試験によっても粘着剤中の薬剤成分量の変化がさらに少なく、保存安定性に優れていた。
また、セパレーターを剥離して、皮膚に貼付すると、PETフィルムの溝部が切れて基体フィルム層が伸び、皮膚に良く追従した。また、切れて残ったPETフィルムが、薬効成分の散逸を防止するため、効果が長時間持続した。
【実施例3】
【0045】
実施例1と同様の材料、手順を用いて貼付剤を作成した。PETフィルム面に溝部を形成するにあたり、溝部の深さが12.5〜13μmであり、PETフィルム層が切断され、接着剤層がわずかに残して切断される深さとした。また、島状に画定された四辺形の領域と領域の間に、PETフィルムが厚さ約0.8μm残される幅約1mmの結合部が形成されるように調製したダイを用いた。得られた貼付剤用支持体は、粘着剤層を形成するまでの途中工程における取り扱いが容易であり、作業安定性が向上した。得られた貼付剤の保存性、効果持続性等は、実施例1の場合と同様であった。また、貼付剤を使用する際に、手で伸張すると、結合部が容易に切断し、全体が円滑に伸びるので、皮膚への装着感も良好であった。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明に係る貼付剤用支持体の基本的な実施形態を示す断面模式図である。
【図2】本発明に係る貼付剤用支持体を用いた貼付剤の実施形態の一例を示す断面模式図である。
【図3】請求項3に係る貼付剤用支持体の実施形態を示す平面模式図である。
【図4】請求項4に係る貼付剤用支持体の実施形態を示す平面模式図である。
【図5】請求項4に係る貼付剤用支持体を引き伸ばした場合の状態を示す平面模式図である。
【図6】本発明に係る貼付剤用支持体の溝部の形状と深さを説明した断面説明図である。
【図7】本発明に係る貼付剤用支持体の溝部の形状と深さを説明した断面説明図である。
【図8】請求項7に係る貼付剤用支持体の実施形態の一例を示す平面模式図である。
【図9】本発明の貼付剤用支持体を用いた貼付剤を皮膚に貼付した状態を示す断面説明図である。
【符号の説明】
【0047】
1・・・基体フィルム層
2・・・ポリエステル樹脂フィルム層
2a・・溝部
2b・・結合部
2c・・島状領域
3・・・表面処理層
4・・・粘着剤層
5・・・セパレーター
6・・・接着剤層
7・・・皮膚

【特許請求の範囲】
【請求項1】
常温において伸縮自在な厚さ5〜300μmの基体フィルム層と、該基体フィルム層上に配置された厚さ1〜25μmのポリエステル樹脂フィルム層とを含み、該ポリエステル樹脂フィルム層は、前記基体フィルム層の伸張に応じて幅が変化する溝部を有することを特徴とする貼付剤用支持体。
【請求項2】
前記基体フィルム層は、ポリウレタン樹脂フィルムまたはポリオレフィン系樹脂フィルムであることを特徴とする請求項1に記載の貼付剤用支持体。
【請求項3】
前記溝部は、前記ポリエステル樹脂フィルム層の長手方向に伸長しかつ間隔が20mm以下のストライプ形状であることを特徴とする請求項1または2に記載の貼付剤用支持体。
【請求項4】
前記溝部は、1辺が20mm以下の格子形状であることを特徴とする請求項1または2に記載の貼付剤用支持体。
【請求項5】
前記溝部の深さが、前記ポリエステル樹脂フィルム層の厚さ未満であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の貼付剤用支持体。
【請求項6】
前記基体フィルム層と前記ポリエステル樹脂フィルム層との間に接着層が配置され、前記溝部の深さが、前記ポリエステル樹脂フィルム層の厚さよりも大であり前記ポリエステル樹脂フィルム層の厚さと前記接着層の厚さの合計値よりも小であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の貼付剤用支持体。
【請求項7】
前記溝部により画定されかつ互いに隣り合っている島状領域の間に前記ポリエステルフィルム層からなる結合部が設けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の貼付剤用支持体。
【請求項8】
前記ポリエステル樹脂フィルム上に蒸着層をさらに含むことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の貼付剤用支持体。
【請求項9】
前記ポリエステル樹脂フィルム層の表面に、表面処理層を設けたことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の貼付剤用支持体。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の貼付剤用支持体の前記ポリエステル樹脂フィルム層側に、薬剤を含有する粘着剤層を設けたことを特徴とする貼付剤。

【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図8】
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【図1】
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【図2】
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【図6】
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【図7】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−173626(P2009−173626A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−125669(P2008−125669)
【出願日】平成20年5月13日(2008.5.13)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】