説明

質問項目推薦装置、質問項目推薦方法及び質問項目推薦プログラム

【課題】質の良い有用な回答を回答者から引き出すことを可能にすること。
【解決手段】インタビュー中に次に質問すべき項目を逐次推薦する質問項目推薦装置1において、質問項目の内容の深さに応じて階層構造化された複数の質問項目を質問項目記憶部13に記憶しておき、質問項目推薦部12が、インタビューの残り時間が少ない場合に、浅い階層の質問を優先し、インタビューの残り時間が多い場合に、深い階層の質問を優先して、次の質問項目として逐次推薦する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インタビュー中に、次に質問すべき項目を推薦する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
社会学・看護学を始めとする多くの研究分野において、面接調査を行い、調査対象者の抱える問題を抽出する手法が採用されている。
【0003】
面接調査の方法には、様々な手法があるが、特に近年、「半構造化面接」と呼ばれる手法が、社会学・看護学に加え、工学の研究分野でも行われている。これは、大まかな質問項目のみを予め定めておき、インタビュー回答者(以下、回答者)との会話の流れに応じて、質問順序や質問の深さを変えるという手法である(非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】ウヴェ・フリック、「質的研究入門」、春秋社、p.180-201
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そのように、回答者との会話の流れに応じて、質問順序や質問の深さを変える面接手法は、回答者の本音を聞き出せる効果的な手法である。
【0006】
しかしながら、インタビューを行う者(以下、質問者)が、回答者との話の流れに応じて柔軟に質問を選択する必要があるため、質問者に対して非常に高度なインタビュー技術が求められる。
【0007】
特に、質的研究を目的としたインタビューでは、質問者が予め用意した質問項目を順番に均等に質問していくわけではない。インタビューの残り時間のバランスを考えながら、用意した複数の質問をある程度網羅的にヒアリングすると共に、必要に応じていくつかの質問は切り捨てて(質問せず)、一方で特定の質問は深掘りしてヒアリングすることが求められる。これにより、ある程度の網羅性を保ちつつ、質の良いデータを収集できる。
【0008】
なお、ここで言う「質の良いデータ」とは、今まで明らかではなかった新たな発見を可能とするデータのことであり、具体的には、体験談のバリエーションが豊富であるデータ、抽象的ではなく具体的な事例に基づくデータ、体験談についての詳細な説明や考えが含まれるデータなどを意味する。
【0009】
従って、質問者が、限られた時間の中で、「全ての項目を完全に漏れなく質問をする」ことに気をとられすぎると、深堀りした質問が出来なくなってしまうし、逆に1問を深掘りして時間をかけすぎると、聞きとりたいと思っていた基本的な質問項目まで質問しそびれるという問題がある。
【0010】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、その課題とするところは、インタビューに不慣れな質問者であっても、質の良い有用なデータ(回答)を回答者から引き出すことを可能にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1記載の質問項目推薦装置は、インタビュー中に次に質問すべき項目を逐次推薦する質問項目推薦装置において、質問項目の内容の深さに応じて階層構造化された複数の質問項目データを記憶しておく記憶手段と、前記記憶手段から前記複数の質問項目データを読み出して、インタビューの残り時間が少ない場合に、浅い階層の質問項目を優先して推薦し、インタビューの残り時間が多い場合に、深い階層の質問項目を優先して推薦する推薦手段と、を有することを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、インタビュー中に次に質問すべき項目を逐次推薦する質問項目推薦装置において、質問項目の内容の深さに応じて階層構造化された複数の質問項目データを記憶しておき、インタビューの残り時間が少ない場合に、浅い階層の質問項目を優先して推薦し、インタビューの残り時間が多い場合に、深い階層の質問項目を優先して推薦するため、インタビューに不慣れな質問者であっても、質の良い有用な回答を回答者から引き出すことを可能にすることができる。
【0013】
請求項2記載の質問項目推薦装置は、請求項1記載の質問項目推薦装置において、前記推薦手段は、前記浅い階層の質問項目を優先して推薦してもインタビューの残り時間がある場合に、前記深い階層の質問項目を推薦することを特徴とする。
【0014】
本発明によれば、浅い階層の質問項目を優先して推薦してもインタビューの残り時間がある場合に、上記深い階層の質問項目を推薦するため、より質の良い有用な回答を回答者から引き出すことを可能にすることができる。
【0015】
請求項3記載の質問項目推薦装置は、請求項1又は2記載の質問項目推薦装置において、前記複数の質問項目データは、質問項目の内容の種類に応じて分類され、前記推薦手段は、前記インタビューの残り時間が多い場合に、現在の質問項目と同じ種類に分類され、現在の質問項目の次に深い階層の質問項目を推薦することを特徴とする。
【0016】
請求項4記載の質問項目推薦装置は、請求項3記載の質問項目推薦装置において、前記推薦手段は、前記インタビューの残り時間が少ない場合に、現在の質問項目とは異なる種類に分類された浅い階層の質問項目を推薦することを特徴とする。
【0017】
請求項5記載の質問項目推薦方法は、インタビュー中に次に質問すべき項目を逐次推薦する質問項目推薦装置で行う質問項目推薦方法において、前記質問項目推薦装置により、質問項目の内容の深さに応じて階層構造化された複数の質問項目データを記憶手段に記憶しておく記憶ステップと、前記記憶手段から前記複数の質問項目データを読み出して、インタビューの残り時間が少ない場合に、浅い階層の質問項目を優先して推薦し、インタビューの残り時間が多い場合に、深い階層の質問項目を優先して推薦する推薦ステップと、を有することを特徴とする。
【0018】
本発明によれば、インタビュー中に次に質問すべき項目を逐次推薦する質問項目推薦装置において、質問項目の内容の深さに応じて階層構造化された複数の質問項目データを記憶しておき、インタビューの残り時間が少ない場合に、浅い階層の質問項目を優先して推薦し、インタビューの残り時間が多い場合に、深い階層の質問項目を優先して推薦するため、インタビューに不慣れな質問者であっても、質の良い有用な回答を回答者から引き出すことを可能にすることができる。
【0019】
請求項6記載の質問項目推薦方法は、請求項5記載の質問項目推薦方法において、前記推薦ステップは、前記浅い階層の質問項目を優先して推薦してもインタビューの残り時間がある場合に、前記深い階層の質問項目を推薦することを特徴とする。
【0020】
本発明によれば、浅い階層の質問項目を優先して推薦してもインタビューの残り時間がある場合に、上記深い階層の質問項目を推薦するため、より質の良い有用な回答を回答者から引き出すことを可能にすることができる。
【0021】
請求項7記載の質問項目推薦方法は、請求項5又は6記載の質問項目推薦方法において、前記複数の質問項目データは、質問項目の内容の種類に応じて分類され、前記推薦ステップは、前記インタビューの残り時間が多い場合に、現在の質問項目と同じ種類に分類され、現在の質問項目の次に深い階層の質問項目を推薦することを特徴とする。
【0022】
請求項8記載の質問項目推薦プログラムは、請求項5乃至7のいずれかに記載の各ステップをコンピュータに実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、インタビューに不慣れな質問者であっても、質の良い有用な回答を回答者から引き出すことを可能にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】質問項目推薦装置の機能ブロック構成を示す図である。
【図2】質問項目リスト例を示す図である。
【図3】質問項目の階層構造化例を示す図である。
【図4】質問項目推薦装置の全体動作フローを示す図である。
【図5】質問項目の推薦計算の動作フローを示す図である。
【図6】質問項目リストの他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を実施する一実施の形態について図面を用いて説明する。但し、本発明は多くの異なる様態で実施することが可能であり、本実施の形態の記載内容に限定して解釈すべきではない。
【0026】
図1は、本実施の形態に係る質問項目推薦装置の機能ブロック構成を示す図である。本質問項目推薦装置1は、インタビュー中に各質問が終わるたびに次に質問すべき項目を逐次推薦するものであって、インタビューを行う質問者やその回答者の会話を入力する会話データ入力部11と、入力された会話から現在の質問項目を解析して次に推薦されるべき質問項目を求める質問項目推薦部12と、インタビューで質問すべき複数の質問項目を記憶しておく質問項目記憶部13と、次に推薦される質問項目を出力する質問データ出力部14とで主に構成される。
【0027】
同図に示すように、質問項目推薦部12については、現在の質問項目を解析して、その質問のIDを特定する質問ID特定部12aと、その特定された質問IDを用いて、次の質問項目を計算により求める推薦質問計算部12bとで構成される。
【0028】
次に、質問項目記憶部13に記憶されている質問項目リストについて説明する。質問項目リストには、図2に例示するように、インタビューで質問すべき質問のIDと、質問が属する分類IDと、質問の深さと、質問事項としての質問文と、各質問の所要時間とが関連付けて記憶されている。
【0029】
質問IDとは、各質問に対して付与される固有の識別子である。本実施の形態では、図2に示したように、昇順の数字が連続して順番に付与されている。基本的には、この順番(1→2→3→…)に沿って全ての質問が順次行われるが、本発明では、インタビューの残り時間に応じて、一部の質問が切り捨てられる(質問しない)。
【0030】
分類IDとは、各質問文が属するカテゴリの識別子である。質問文の内容の種類に応じて付与されるため、同じIDが付与されている質問は、意味的に類似した質問であることを示している。
【0031】
質問の深さとは、質問文の内容の深さ(深さの度合い)である。後述するが、その内容の深さに応じて全質問を階層構造で表現した場合の階層の深さに相当している。例えば、質問項目の抽象度が高い質問を「浅い質問」、それをより具体化した質問を「深い質問」と定義する方法や、事実を単純に聞きだす質問が「浅い質問」で、回答者の気持ち・感情に踏み込んだ質問を「深い質問」とするなどの方法が考えられる。各質問項目がどの深さに該当するかについては、質問項目推薦装置1の製造元や提供者などのシステム提供側で定義しても良いし、質問者などのシステム利用側が質問項目記憶部13に質問を登録する際に主観で深さを登録しても良い。
【0032】
質問文とは、質問者がインタビュー中に行う予定の質問項目の内容である。質問文は、質問者が質問時に参照可能な形式であれば良く、文章や図・絵・記号として登録されていても良い。質問内容が想起出来るようなキーワードが複数羅列している形式であっても良い。
【0033】
所要時間とは、各質問を行うのに要する時間である。回答者による回答時間を含む時間である。この所要時間は、あくまでも想定される所要時間であり、実際にインタビューを実施すると、その所要時間内に収まるとは限らない。
【0034】
質問項目記憶部13には、上述した要素以外に、インタビュー可能時間も登録されている。インタビュー可能時間とは、インタビューを行う最大時間であり、インタビューの回答者や質問者の時間の都合などによって決まる値であって、事前に登録される。各質問項目の所要時間の合計時間とインタビュー可能時間とが一致していることが望ましいが、必ずしも一致している必要はない。
【0035】
以上説明した各要素の質問項目記憶部13への登録は、インタビュー前に質問者が予め行うことが考えられるが、登録者は必ずしも質問者でなくても良い。例えば、分類IDについては、質問者が質問項目を登録した後に、前述したシステム提供側で各質問項目の内容の類似度に応じてグルーピングし、各グループ内に分類IDを自動で付与するなどの方法も考えられる。
【0036】
図3に、図2で示した質問項目の階層構造化例を記す。複数の質問項目(質問項目データ)は、分類IDと質問の深さとで階層構造化されている。図3の各ブロック内の2つの数字は「分類ID−質問の深さ」を表しており、例えば「1−2」とは、分類IDが1であり、質問の深さが2であることを示している。
【0037】
階層の深さは、質問をどの程度掘り下げた質問であるかを示し、図2や図3の例では、値が小さいほど質問の内容が浅いことを示している。つまり、図3の左側の質問ほど質問の深さが浅く、右側の質問ほど質問の深さが深いことを示し、「1−1」の深堀質問が「1−2」、更なる深掘り質問が「1−3」であることを示している。
【0038】
なお、この質問の深さは、次に質問すべき項目の優先順位に対応しており、本実施の形態では、上位の階層である「浅い質問」(より抽象的な質問)ほど、次の質問項目として推薦される優先順位を高くし、下位の階層である「深い質問」(より具体的な質問)ほど、その優先順位を低くしている。
【0039】
本発明では、このように質問の深さ(階層の深さ)に応じて優先順位付け(階層構造化)された質問項目を利用して、次に推薦される質問項目を、インタビューの残り時間に応じて決定することを特徴としている。
【0040】
具体的には、優先順位の高い「浅い質問」を優先して推薦することを基本とするが、インタビューの残り時間が十分にある場合(すなわち、「浅い質問」を全て質問したとしても、なおインタビューの残り時間に余裕がある場合)には、優先順位の低い「深い質問」を優先して推薦するようにする。
【0041】
なお、当該本発明は、そのようにインタビューの残り時間に応じて次の質問項目を決定することから、単純にインタビューの残り時間の少ない・多いを基準にすると、上記推薦方法は、インタビューの残り時間が少ない場合に、「浅い質問」を優先し、インタビューの残り時間が多い場合に、「深い質問」を優先して、次の質問項目として推薦するように上位概念化できる。
【0042】
続いて、質問項目推薦装置1の動作について説明する。図4は、本実施の形態に係る質問項目推薦装置1の全体動作フローを示す図である。
【0043】
最初に、ステップS1において、会話データ入力部11が、質問者と回答者の生会話を取得し、その会話データ(例えば、音声データやテキストデータ)を質問項目推薦装置1に入力して、質問項目推薦部12に出力する。会話データの入力が初めての場合には、インタビューを開始した時刻も併せて質問項目推薦部12に出力する。なお、会話データの入力が無い場合には、会話データの入力待ち状態を継続する(ステップS0参照)。
【0044】
次に、ステップS2において、質問ID特定部12aが、会話データ入力部11から入力された会話データを解釈可能な形式に変換し、質問項目記憶部13から読み出した質問項目と照合して現在の質問IDを特定し、推薦質問計算部12bに出力する。その際、インタビュー開始時刻も併せて出力される。
【0045】
具体的には、まず、会話データ入力部11から入力された音声データの音声認識を行い、話者(質問者又は回答者)を判別すると共に、会話の区切りを判定する。以下、区切られた会話データの話者が質問者である場合、その会話データを「質問データ」という。
【0046】
その後、インタビュー中の会話データ内で質問者が質問項目リスト内のどの質問を行ったかを判別するため、質問項目記憶部13に記憶されている質問項目リストを参照し、質問データと質問項目とを照合して質問IDを特定し、その質問のIDを出力する。
【0047】
例えば、質問項目記憶部13に記憶されている全ての質問項目と質問データとで、それぞれの文章を形態素解析し、両文章間の類似度を計算して、その類似度が最も高い質問項目を質問データの示す質問項目と判定する。
【0048】
なお、質問項目と質問データとの照合は、必ずしも自動で行う必要はない。例えば、質問者が、インタビュー中に自分が質問した内容をGUI上で選択するなどの方法も採用できる。また、形態素解析とは、コンピュータを用いて行う公知の自然言語処理技術であり、上記類似度計算に用いる文や言葉を文章から解析可能であればどのような方法も採用できる。
【0049】
次に、ステップS3において、推薦質問計算部12bが、質問ID特定部12aから出力された現在の質問ID及びインタビュー開始時刻を入力とし、質問項目記憶部13から読み出した質問項目リストから、インタビューの残り時間に応じて、推薦される次の質問項目を算出する。以下、推薦計算の具体例について、図5を参照しながら詳述する。
【0050】
まず、ステップS3−0において、推薦質問計算部12bに、ステップS2で特定された現在の質問ID及びインタビュー開始時刻が入力される。以下、この質問IDの番号を仮にsとする。
【0051】
次に、ステップS3−1において、現在時刻からインタビュー開始時刻を減算し、更に質問項目リスト内のインタビュー可能時間から減算することにより、インタビューの残り時間LeftTimeを算出する。
【0052】
次に、ステップS3−2において、入力された現在の質問ID(s)の次の質問ID(s+1)から最後の質問までの質問、つまり、残りの全質問の所要時間の合計値L(n)を、質問の深さn(=1,2,3,…)ごとに算出する。
【0053】
例えば、図2の例示において、入力された質問のIDが2、すなわちID(2)の場合、質問の深さ1の所要時間の合計値L(1)は、質問ID(3)から質問ID(7)のうち、深さ1の質問項目(質問ID=4,6)の所要時間の合計値より、L(1)=12(分)となる。同様に、質問の深さ2の所要時間の合計値はL(2)=10(分)、質問の深さ3の所要時間の合計値はL(3)=10(分)となる。
【0054】
次に、ステップS3−3において、式(1)を満たすnを算出することにより、インタビューの残り時間内で終えることが可能な質問の深さnを計算する。
【数1】

【0055】
例えば、図2の例示において、インタビューの残り時間LeftTimeが20の場合には、Σk=1〜1L(k)=12、Σk=1〜2L(k)=22であることから、式(1)を満たすnは1となる。すなわち、この例では、質問の深さが1までであれば、インタビューの残り時間内に全てを質問して聞き終えることが可能であることを表している。
【0056】
次に、ステップS3−4において、入力された現在の質問ID(s)の次の質問ID(s+1)の深さdと、ステップS3−3で計算された質問の深さnとの大小関係から、次に推薦される候補質問を決定する。
【0057】
具体的には、dが、n以下であるか、n+1であるか、n+2以上であるかを判定し、n以下の場合にはステップS3−5に進み、n+1の場合にはステップS3−6に進み、n+2以上の場合にはステップS3−7に進む。
【0058】
例えば、図2の例示において、入力された現在の質問IDが2であり、インタビューの残り時間LeftTimeが20の場合、ステップS3−3で計算された質問の深さnは1であり、次の質問ID(3(=2+1))の質問の深さdは3であって、n+2以上に該当することから、ステップS3−7に進む。
【0059】
次に、ステップS3−4の判定結果、dがn以下の場合には、ステップS3−5において、質問ID(s+1)を次の候補質問として、ステップS3−8に進む。
【0060】
一方、ステップS3−4の判定結果、dがn+1の場合には、ステップS3−6において、式(2)を計算することにより、インタビューの残り時間内で終えることが可能な質問に要する全所要時間減算後の残時間Sを計算し、その残時間Sが質問ID(s+1)の所要時間T以上の場合には、その質問ID(s+1)を次の候補質問として、ステップS3−8に進み、S<Tの場合には、ステップS3−7に進む。
【数2】

【0061】
但し、nは、ステップS3−3で算出されたnの値である。
【0062】
なお、この手順に従うと、現在の質問IDが若い質問ほど、深い質問を次に優先して推薦することになる。例えば、ステップS3−3において、インタビューの残り時間内に深さ1の質問が全て回答可能であると算出された場合、深さ2の質問については、一部の質問は質問できるが、残りの質問は切り捨てることになる。本手順では、深さ2の質問がいくつあろうとも、質問ID(s+1)の質問の深さが2であり、かつ、S≧Tを満たせば、その質問を優先して推薦する。質問ID(s+1)の質問が選ばれたことにより、質問ID(s+1)の質問に時間が使われ、残りの質問の中に深さ2の質問があってもその質問を切り捨てざるを得ない状況になることが考えられるためである。
【0063】
なお、質問IDが若い質問、つまり、インタビューの最初の方の質問ほど深い質問を推薦するのに代えて、質問IDの大小に関係なく均等に深い質問ができるようにするには、例えば以下の方法が考えられる。
【0064】
質問ID=s>s+1の関係を満たす全ての質問について、ステップS3−3で算出された深さnよりひとつ深い質問(深さn+1の質問)において、所要時間がS≧Tの質問項目を選択し、その結果選ばれた複数の質問の中からランダムに質問項目を順次選択していき、選ばれた質問の所要時間の総和(ΣT)がS以下となるまで質問項目を選び続ける。そして、その選ばれた質問の中に、質問IDがs+1であるものが含まれている場合には、その質問を次の候補質問としてステップS3−8に進み、含まれていない場合には、ステップS3−7に進む。このような方法を採用することにより、質問IDの大小に関わらず、均等に深い質問ができることになる。
【0065】
次に、ステップS3−4の判定結果、dがn+2以上の場合、又は、ステップS3−6でS<Tの場合には、ステップS3−7において、質問IDをs+2、s+3、s+4、…というように少しずつ大きくしていくことにより、質問IDがs+1より大きく、質問の深さがn+1以下の質問を検索する。そして、最初に検索されたn+1以下の質問IDを仮にuとして、s=u−1と書き換える。その後、質問ID(s+1=u)の質問の深さが、n+1であるか、n以下であるかを判定する。n+1の場合にはステップS3−6に進み、n以下の場合はステップS3−5に進む。
【0066】
ステップS3−5やステップS3−6では、インタビューの残り時間が多い場合に、現在の質問と同じ分類に属し、現在の質問の次の「深い質問」を推薦するようにしている。更にステップS3−7を経由することにより、インタビューの残り時間が少ない場合に、現在の質問項目とは異なる分類の「浅い質問」を推薦するようにしている。
【0067】
最後に、ステップS3−8において、ステップS3−5又はステップS3−6によって計算された次の候補質問を質問データ出力部14に出力する。その後、その質問データ出力部14により、その候補質問が質問者に提示される。提示方法としては、音声・画像・テキストなど、その形態は問わない。
【0068】
以上、図4や図5を用いて説明した動作は、質問者が質問するたびに行われ、次に推薦される質問項目が随時提示される。
【0069】
以上より、本発明によれば、インタビュー中に次に質問すべき項目を逐次推薦する質問項目推薦装置1において、質問項目の内容の深さに応じて階層構造化された複数の質問項目を記憶しておき、インタビューの残り時間が少ない場合に、浅い階層の質問(「浅い質問」)を優先し、インタビューの残り時間が多い場合に、深い階層の質問(「深い質問」)を優先して、次の質問項目として推薦するので、インタビューに不慣れな質問者であっても、質の良い有用な回答を回答者から引き出すことを可能にすることができる。
【0070】
また、本実施の形態によれば、優先順位の高い「浅い質問」を優先して推薦することを基本とするが、インタビューの残り時間が十分にある場合(すなわち、「浅い質問」を全て質問したとしても、なおインタビューの残り時間に余裕がある場合)には、優先順位の低い「深い質問」を優先して推薦するので、より質の良い有用な回答を回答者から引き出すことを可能にすることができる。
【0071】
なお、図2や図3は、質問の深さが2以上の質問項目について、同一階層に1つしか質問が存在しない単純な例であるが、例えば、図6に示すように複雑な階層関係の場合も考えられる。同図は、分類IDが1において、質問の深さ2の質問項目が2つ存在し、質問の深さ3の質問項目が3つ存在する例である。このような場合であっても、上述と同じ手順に基づいて計算することにより、次に推薦されるべき質問項目を決定することができる。
【0072】
なお、質問IDを割り振るルールは、前述したように重複しなければよいが、図5に示す手順に従う場合には、分類方向の広さ優先ではなく、階層方向の深さ優先で割り振ることとする。
【0073】
具体的には、分類IDが1の場合における質問の深さ1の質問をID(1)とし、質問の深さ2のひとつ目の質問をID(2)とし、質問の深さ3のひとつ目の質問をID(3)とする。図6の例では、深さ4の質問がないので、質問の深さ3のふたつ目の質問で、上位階層の質問が同一分類に属する質問をID(4)としている。次に、上位階層の質問が同一の質問である質問がこれ以上ないため、深さ2のふたつ目の質問項目をID(5)としている。
【0074】
このように質問の深さ優先で階層構造をもった質問文にIDを割り振ることにより、図5に示したフローチャート通りの手順で正しく次の候補質問を選択することが可能となる。
【0075】
また、このように質問IDを割り振ることにより、浅い質問から少しずつ深い質問へ進めることができ、これ以上深い質問がない場合には、類似する質問(その質問が属するひとつ上の階層の質問が、前にした質問と同じである質問)を推薦し、さらに類似する質問がない場合には、次の質問にうつる、というように、自然な流れで質問項目を推薦することが可能となる。
【0076】
最後に、本実施の形態で説明した質問項目推薦装置1は、CPUなどの制御手段やメモリなどの記憶手段で実現できる。各機能部の処理は、各処理を実行可能なプログラムで実現できる。
【符号の説明】
【0077】
1…質問項目推薦装置
11…会話データ入力部
12…質問項目推薦部
12a…質問ID特定部
12b…推薦質問計算部
13…質問項目記憶部
14…質問データ出力部
S0〜S3、S3−0〜S3−8…ステップ(処理手順)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インタビュー中に次に質問すべき項目を逐次推薦する質問項目推薦装置において、
質問項目の内容の深さに応じて階層構造化された複数の質問項目データを記憶しておく記憶手段と、
前記記憶手段から前記複数の質問項目データを読み出して、インタビューの残り時間が少ない場合に、浅い階層の質問項目を優先して推薦し、インタビューの残り時間が多い場合に、深い階層の質問項目を優先して推薦する推薦手段と、
を有することを特徴とする質問項目推薦装置。
【請求項2】
前記推薦手段は、
前記浅い階層の質問項目を優先して推薦してもインタビューの残り時間がある場合に、前記深い階層の質問項目を推薦することを特徴とする請求項1記載の質問項目推薦装置。
【請求項3】
前記複数の質問項目データは、質問項目の内容の種類に応じて分類され、
前記推薦手段は、
前記インタビューの残り時間が多い場合に、現在の質問項目と同じ種類に分類され、現在の質問項目の次に深い階層の質問項目を推薦することを特徴とする請求項1又は2記載の質問項目推薦装置。
【請求項4】
前記推薦手段は、
前記インタビューの残り時間が少ない場合に、現在の質問項目とは異なる種類に分類された浅い階層の質問項目を推薦することを特徴とする請求項3記載の質問項目推薦装置。
【請求項5】
インタビュー中に次に質問すべき項目を逐次推薦する質問項目推薦装置で行う質問項目推薦方法において、
前記質問項目推薦装置により、
質問項目の内容の深さに応じて階層構造化された複数の質問項目データを記憶手段に記憶しておく記憶ステップと、
前記記憶手段から前記複数の質問項目データを読み出して、インタビューの残り時間が少ない場合に、浅い階層の質問項目を優先して推薦し、インタビューの残り時間が多い場合に、深い階層の質問項目を優先して推薦する推薦ステップと、
を有することを特徴とする質問項目推薦方法。
【請求項6】
前記推薦ステップは、
前記浅い階層の質問項目を優先して推薦してもインタビューの残り時間がある場合に、前記深い階層の質問項目を推薦することを特徴とする請求項5記載の質問項目推薦方法。
【請求項7】
前記複数の質問項目データは、質問項目の内容の種類に応じて分類され、
前記推薦ステップは、
前記インタビューの残り時間が多い場合に、現在の質問項目と同じ種類に分類され、現在の質問項目の次に深い階層の質問項目を推薦することを特徴とする請求項5又は6記載の質問項目推薦方法。
【請求項8】
請求項5乃至7のいずれかに記載の各ステップをコンピュータに実行させることを特徴とする質問項目推薦プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−89109(P2013−89109A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−230525(P2011−230525)
【出願日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)