説明

赤外線遮蔽材料微粒子分散体、赤外線遮蔽体、及び赤外線遮蔽材料微粒子の製造方法、並びに赤外線遮蔽材料微粒子

【課題】赤外線遮蔽材料微粒子が媒体中に分散してなる赤外線遮蔽材料微粒子分散体、該赤外線遮蔽材料微粒子分散体より製造した赤外線遮蔽体、該赤外線遮蔽材料微粒子分散体に用いられる赤外線遮蔽材料微粒子の製造方法を提供する。
【解決手段】赤外線遮蔽材料微粒子は、一般式M(1−Y)(但し、Mは、H、He、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Re、Be、Hf、Os、Bi、Iのうちから選択される1種類以上の元素、AはMo、Nb、Ta、Mn、V、Re、Pt、Pd、Tiのうちから選択される1種類以上の元素、Wはタングステン、Oは酸素、0<X≦1.2、0<Y≦1)で表記される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可視光領域の光は透過し、近赤外線領域の光は吸収する特性を有する複合酸化物微粒子を含有する赤外線遮蔽材料微粒子を、媒体に分散させた赤外線遮蔽材料微粒子分散体、該赤外線遮蔽材料微粒子分散体を用いて製造した赤外線遮蔽体、該赤外線遮蔽材料微粒子分散体に用いる赤外線遮蔽材料微粒子を製造する赤外線遮蔽材料微粒子の製造方法、及び赤外線遮蔽材料微粒子の製造方法により製造された赤外線遮蔽材料微粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
窓材等に使用される遮光部材として、特許文献1には、可視光領域から近赤外線領域の光に対し吸収特性を有するカーボンブラック、チタンブラック等の無機顔料、および、可視光領域の光のみに強い吸収特性を有するアニリンブラック等の有機顔料等を含む黒色系顔料を含有する遮光フィルムが提案され、特許文献2には、アルミ等の金属を蒸着したハーフミラータイプの遮光部材が提案されている。
【0003】
特許文献3では、透明なガラス基板上に、基板側より第1層として周期律表のIIIa族、IVa族、Vb族、VIb族及びVIIb族から成る群から選ばれた少なくとも1種の金属イオンを含有する複合タングステン酸化物膜を設け、前記第1層上に第2層として透明誘電体膜を設け、該第2層上に第3層として周期律表のIIIa族、IVa族、Vb族、VIb族及びVIIb族から成る群から選ばれた少なくとも1種の金属イオンを含有する複合タングステン酸化物膜を設け、かつ前記第2層の透明誘電体膜の屈折率を前記第1層及び前記第3層の複合タングステン酸化物膜の屈折率よりも低くすることにより、高い可視光透過率及び良好な熱線遮断性能が要求される部位に好適に使用することができる熱線遮断ガラスが提案されている。
【0004】
特許文献4では、特許文献3と同様の方法で、透明なガラス基板上に、基板側より第1層として第1の誘電体膜を設け、該第1層上に第2層としてタングステン酸化物膜を設け、該第2層上に第3層として第2の誘電体膜を設けた熱線遮断ガラスが提案されている。
【0005】
特許文献5では、特許文献3と同様な方法で、透明な基板上に、基板側より第1層として同様の金属元素を含有する複合タングステン酸化物膜を設け、前記第1層上に第2層として透明誘電体膜を設けた熱線遮断ガラスが提案されている。
【0006】
特許文献6では、水素、リチウム、ナトリウム又はカリウム等の添加材料を含有する三酸化タングステン(WO)、三酸化モリブデン(MoO)、五酸化ニオブ(Nb)、五酸化タンタル(Ta)、五酸化バナジウム(V)及び二酸化バナジウム(VO)の1種以上から選択された金属酸化物膜が、CVD法あるいはスプレー法で被覆され、250℃程度で熱分解して形成された太陽光遮蔽特性を有する太陽光制御ガラスシートが提案されている。
【0007】
特許文献7には、タングステン酸を加水分解して得られたタングステン酸化物を用い、該タングステン酸化物に、ポリビニルピロリドンという特定の構造の有機ポリマーを添加することにより、太陽光が照射されると、光線中の紫外線がタングステン酸化物に吸収されて励起電子とホールとが発生し、少量の紫外線により5価タングステンの出現量が著しく増加して着色反応が速くなり、これに伴って着色濃度が高くなると共に、光を遮断することによって、5価タングステンが極めて速やかに6価に酸化されて消色反応が速くなる特性を用い、太陽光に対する着色及び消色反応が速く、着色時に近赤外線領域の波長1250nmに吸収ピークが現れ、太陽光の近赤外線を遮断することができる太陽光可変調光断熱材料が得られることが記載されている。
【0008】
また、本発明者等は、特許文献8に、六塩化タングステンをアルコールに溶解し、そのまま溶媒を蒸発させるか、若しくは加熱還流した後溶媒を蒸発させ、その後、100℃〜500℃で加熱することにより、三酸化タングステン若しくはその水和物又は両者の混合物からなる粉末を得ること、該タングステン酸化物微粒子を用いてエレクトロクロミック素子が得られること、多層の積層体を構成し膜中にプロトンを導入したときに当該膜の光学特性を変化させることができること等を提案している。
【0009】
近年、各種表示素子の開発に伴い透明電極の需要が高まっている。この透明電極については、材料中に多くの自由電子を保有し導電性が高いことから、酸化インジウムにスズを数モル%ドープしたITO(Indium−Tin−Oxide)が主に用いられている(特許文献9参照)。このITOの母体であるInは酸化物半導体であり、結晶中に含まれる酸素欠陥からキャリア電子が供給されるので、導電性を示す透明導電物質である。このInにSnを添加すると、キャリア電子が大幅に増加し高い導電性を示すようになると考えられている。そして、本発明の微粒子分散体に関連する透明導電膜は、現在、各種表示素子、プラズマ発光表示素子、太陽電池等の透明電極の他、赤外線吸収反射膜、防曇膜、電磁遮蔽膜等に利用されている。
【0010】
ところで、最近の各種表示装置は低コスト化の傾向にあり、表示欠陥の無い高画質の表示素子を得る上で、透明電極の性能、特にシート抵抗値の低減と可視光透過率の向上が望まれている上、透明電極そのもののコストダウンが極めて重要な課題になっている。ITOの成膜技術改良やスパッタリングターゲットの改良等により、透明導電膜の物性向上とコストダウンとが進められてきているが、ITOの低コスト化には限界があり、最近のより広範囲なニーズへの対応が困難になってきている。
【0011】
一方、粒子分散型の透明導電膜として、銀塩およびパラジウム塩を含有する水溶液(A)と、クエン酸イオンおよび第一鉄イオンを含有する水溶液(B)とを、実質的に酸素を含まない雰囲気中で混合することによりAg−Pd微粒子を析出させ、このAg−Pd微粒子を水および/または有機溶媒中に含有した塗布液を基体上に塗布して形成された微粒子膜(特許文献10参照)や、平均1次粒子径10 〜60nmのITO微粒子から平均2次粒子径120〜200nmの2次粒子を形成し、この2次粒子が分散したインク組成物を使用して形成される透明導電膜(特許文献11参照)が知られている。
【0012】
【特許文献1】特開2003−29314号公報
【特許文献2】特開平9−107815号公報
【特許文献3】特開平8−59300号公報
【特許文献4】特開平8−12378号公報
【特許文献5】特開平8−283044号公報
【特許文献6】特開2000−119045号公報
【特許文献7】特開平9−127559号公報
【特許文献8】特開2003−121884号公報
【特許文献9】特開2003−249125号公報
【特許文献10】特開2000−90737号公報
【特許文献11】特開2001−279137号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
特許文献1に記載された黒色系顔料は、可視光領域に大きな光の吸収特性があるため、これらが適用された窓材等は色調が暗くなり用途が限られていた。
また、特許文献2に記載された金属蒸着膜が適用された窓材等は、外観がハーフミラー状となり、屋外で用いられた場合には反射がまぶしく景観上問題があった。
【0014】
また、特許文献3〜5に記載の熱線遮断材は、主に、スパッタリング法、蒸着法、イオンプレーティング法及び化学気相法(CVD法)等の真空成膜方式による乾式法を用いて製造される。このため、大型の製造装置を必要とし製造コストが高くなるという課題がある。また、熱線遮断材の基材が高温のプラズマに曝されたり、成膜後加熱を必要とすることになるため、フィルム等の樹脂を基材とする場合には別途、設備上、成膜条件上の検討を行う必要があった。
【0015】
また、特許文献6に記載の太陽光制御被覆ガラスシートは、原料を、CVD法またはスプレー法と熱分解法とを併用してガラス上に被膜を形成するが、前駆体となる原料が高価であること、高温で熱分解すること等から、フィルム等の樹脂を基材とする場合には別途、成膜条件上の検討を行う必要があった。
【0016】
さらに、特許文献7〜8に記載の太陽光可変調光断熱材料、エレクトロクロミック素子は、紫外線や電位差によりその色調を変化させる材料であるため膜構造が複雑であり、色調変化が望まれない用途分野には適用が困難であった。
【0017】
特許文献9に記載されたITO導電膜は、インジウムを使用しているため高価であり、安価な透明導電薄膜が工業的に望まれている。
また、特許文献10に記載された貴金属粒子や、特許文献11に記載されたITO粒子は、塗布法によって成膜可能であるため大掛かりな装置が不要となり、成膜コストを低減できるが、粒子自体が高価であり汎用性に欠ける。
【0018】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであり、可視領域の光は十分に透過し、近赤外線領域の光は遮蔽する特性を有しながら、基材への成膜に際し大掛かりな製造装置を必要としない赤外線遮蔽材料微粒子分散体、該赤外線遮蔽材料微粒子分散体より製造した赤外線遮蔽体、該赤外線遮蔽材料微粒子分散体に用いられる赤外線遮蔽材料微粒子の製造方法、及び該赤外線遮蔽材料微粒子の製造方法により製造された赤外線遮蔽材料微粒子を、提供することを目的とする。さらには、該赤外線遮蔽体では、可視光透過型の導電性用途にも応用可能な赤外線遮蔽体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
一般に、自由電子を含む材料は、プラズマ振動によって波長200nmから2600nmの太陽光線の領域周辺における電磁波に対し、反射吸収応答を示すことが知られている。そして、このような材料の粉末を光の波長より小さな微粒子化すると、可視光領域(波長380nmから780nm)の幾何学散乱が低減され、可視光領域における透明性が得られることが知られている。尚、本明細書において、「透明性」とは、可視光領域の光に対して散乱が少なく透過特性が高いという意味で用いている。
【0020】
一方、3酸化タングステンにNa等の陽性元素を添加したいわゆるタングステンブロンズは導電性材料であり、自由電子を持つ材料であることが知られている。また、タングステン以外でも上記と同様の性質を持つ元素として、Mo、Nb、Ta、Mn、V、Re、Pt、Pd、Tiが知られている(以下、A元素と記す。)。そして、これらA元素の酸化物もタングステン酸化物と同様に、結晶中に陽性元素を含むいわゆるタングステンブロンズ構造をとることが知られている。さらに、これらの材料の単結晶等の分析より、導電特性や、赤外線領域の光に対する自由電子の応答が示唆されている。
発明者等は、タングステンやA元素を含有する複合酸化物微粒子に含まれる自由電子量を増加させることにより、有効な可視光透過型近赤外線遮蔽体や、可視光透過型導電性赤外線遮蔽体の製造が可能になることを見出し、本発明に想到した。
【0021】
さらに、当該複合酸化物微粒子を、適宜な媒体中に分散させて製造した膜は、スパッタリング法、蒸着法、イオンプレーティング法及び化学気相法(CVD法)などの真空成膜法等の乾式法で作製した膜や、スプレー法で作製した膜と比較して、光の干渉効果を用いずとも太陽光線、特に近赤外線領域の光をより効率良く吸収し、同時に可視光領域の光を透過させることを見出し、本発明に想到した。さらに、当該複合酸化物微粒子は、導電性を有するため、分散体中のこれら微粒子同士を接触させることで、この分散体自体が導電性を示すことを見出し、本発明に想到した。
【0022】
すなわち、上述の課題を解決するために、第1の構成は、赤外線遮蔽材料微粒子が媒体中に分散してなる赤外線遮蔽材料微粒子分散体であって、前記赤外線遮蔽材料微粒子は、一般式M(1−Y)(但し、M元素は、H、He、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Re、Be、Hf、Os、Bi、Iのうちから選択される1種類以上の元素、A元素はMo、Nb、Ta、Mn、V、Re、Pt、Pd、Tiのうちから選択される1種類以上の元素、Wはタングステン、Oは酸素、0<X≦1.2、0<Y≦1)で表記される複合酸化物微粒子を含有することを特徴とする赤外線遮蔽材料微粒子分散体である。
【0023】
第2の構成は、第1の構成に記載の赤外線遮蔽材料微粒子分散体であって、
前記一般式M(1−Y)で表される複合酸化物微粒子が、六方晶の結晶構造を有する複合酸化物微粒子、正方晶の結晶構造を有する複合酸化物微粒子、立方晶の結晶構造を有する複合酸化物微粒子の、いずれか1種以上であることを特徴とする赤外線遮蔽材料微粒子分散体である。
【0024】
第3の構成は、第1または第2の構成に記載の赤外線遮蔽材料微粒子分散体であって、前記M元素が、Cs、Rb、K、Tl、In、Ba、Li、Ca、Sr、Fe、Snのうちの1種類以上を含み、前記一般式M(1−Y)で表される複合酸化物が六方晶の結晶構造を有することを特徴とする赤外線遮蔽材料微粒子分散体である。
【0025】
第4の構成は、第1から第3の構成のいずれかに記載の赤外線遮蔽材料微粒子分散体であって、前記赤外線遮蔽材料微粒子の表面が、Si、Ti、Zr、Alのいずれか1種類以上の元素を含有する酸化物で被覆されていることを特徴とする赤外線遮蔽材料微粒子分散体である。
【0026】
第5の構成は、第1から第4の構成のいずれかに記載の赤外線遮蔽材料微粒子分散体であって、前記媒体が、樹脂またはガラスであることを特徴とする赤外線遮蔽材料微粒子分散体である。
【0027】
第6の構成は、第5の構成に記載の赤外線遮蔽材料微粒子分散体であって、前記樹脂が、ポリエチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリエステル樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ふっ素樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂のうちのいずれか1種類以上であることを特徴とする赤外線遮蔽材料微粒子分散体である。
【0028】
第7の構成は、第1から第6の構成のいずれかに記載の赤外線遮蔽材料微粒子分散体が、板状またはフィルム状または薄膜状に形成されていることを特徴とする赤外線遮蔽体である。
【0029】
第8の構成は、第7の構成に記載の赤外線遮蔽体であって、
波長400nm〜700nmの領域における全光線透過率の最高値をV値としたとき、該V値が10%以上であり、かつ、波長700nm〜2600nmの領域における全光線透過率の最低値が前記V値以下であり、かつ、65%以下であることを特徴とする赤外線遮蔽体である。
【0030】
第9の構成は、第7の構成に記載の赤外線遮蔽体であって、
波長400nm〜700nmの領域における全光線透過率の最高値をV値としたとき、該V値が10%以上であり、かつ、表面抵抗値が1×1010Ω/□以下であることを特徴とする赤外線遮蔽体である。
【0031】
第10の構成は、一般式M(1−Y)(但し、M元素は、H、He、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Re、Be、Hf、Os、Bi、Iのうちから選択される1種類以上の元素、A元素はMo、Nb、Ta、Mn、V、Re、Pt、Pd、Tiのうちから選択される1種類以上の元素、Wはタングステン、Oは酸素、0<X≦1.2、0<Y≦1)で表記される複合酸化物微粒子を含有する赤外線遮蔽材料微粒子の製造方法であって、
前記複合酸化物微粒子の出発原料を、還元性ガス雰囲気中、または/及び、不活性ガス雰囲気中にて250℃以上で熱処理して、前記複合酸化物微粒子を製造することを特徴とする赤外線遮蔽材料微粒子の製造方法である。
【0032】
第11の構成は、第10の構成に記載の赤外線遮蔽材料微粒子の製造方法であって、上記複合酸化物微粒子の出発原料が、タングステン化合物、A元素化合物、M元素化合物であり、それぞれの元素の酸化物、酸化物の水和物、塩化物、アンモニウム塩、炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩、シュウ酸塩、水酸化物、過酸化物、金属単体、から選択されるいずれか1種類以上であることを特徴とする赤外線遮蔽材料微粒子の製造方法である。
【0033】
第12の構成は、第10の構成に記載の赤外線遮蔽材料微粒子の製造方法であって、上記複合酸化物微粒子の出発原料が、タングステン化合物、A元素化合物と、M元素化合物の溶液を混合したのち、乾燥して得られた粉末であることを特徴とする赤外線遮蔽材料微粒子の製造方法である。
【0034】
第13の構成は、第10から第12の構成のいずれかに記載の赤外線遮蔽材料微粒子の製造方法により製造された、一般式M(1−Y)(但し、M元素は、H、He、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Re、Be、Hf、Os、Bi、Iのうちから選択される1種類以上の元素、A元素はMo、Nb、Ta、Mn、V、Re、Pt、Pd、Tiのうちから選択される1種類以上の元素、Wはタングステン、Oは酸素、0<X≦1.2、0<Y≦1)で表記される複合酸化物微粒子を含有することを特徴とする赤外線遮蔽材料微粒子である。
【発明の効果】
【0035】
本発明の赤外線遮蔽材料微粒子分散体は、赤外線遮蔽材料微粒子が媒体中に分散してなる赤外線遮蔽材料微粒子分散体であって、該赤外線遮蔽材料微粒子が、一般式M(1−Y)(但し、M元素は、H、He、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Re、Be、Hf、Os、Bi、Iのうちから選択される1種類以上の元素、A元素はMo、Nb、Ta、Mn、V、Re、Pt、Pd、Tiのうちから選択される1種類以上の元素、Wはタングステン、Oは酸素、0<X≦1.2、0<Y≦1)で表記される複合酸化物微粒子を含有し、これら複合酸化物中の自由電子量を増加させており、スパッタリング法、蒸着法、イオンプレーティング法及び化学気相法(CVD法)などの真空成膜法等の乾式法で作製した膜や、スプレー法で作製した膜に比較しても、太陽光線、特に近赤外線領域の光をより効率良く吸収して遮蔽し、同時に可視光領域の透過率を保持することが可能である。
【0036】
また、これら赤外線遮蔽材料微粒子は導電性を有するため、赤外線遮蔽材料微粒子分散体中の粒子同士を接触させることで、この分散体自体を導電性材料として機能させることができ、可視光透過性で導電性を有する赤外線遮蔽体として利用することも可能である。
【0037】
また、上記赤外線遮蔽材料微粒子分散体を製造する際には、真空装置等の大掛かりな装置を使用することなく安価に製造可能となり、工業的に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
本実施形態の赤外線遮蔽材料微粒子分散体は、赤外線遮蔽材料微粒子が媒体中に分散してなる赤外線遮蔽材料微粒子分散体であって、前記赤外線遮蔽材料微粒子は、一般式M(1−Y)(但し、M元素は、H、He、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Re、Be、Hf、Os、Bi、Iのうちから選択される1種類以上の元素、A元素はMo、Nb、Ta、Mn、V、Re、Pt、Pd、Tiのうちから選択される1種類以上の元素、Wはタングステン、Oは酸素、0<X≦1.2、0<Y≦1)で表記される複合酸化物微粒子を含有することを特徴としている。上述のように本実施形態の赤外線遮蔽材料微粒子は、Y=1の場合は、タングステンが含まれず、A元素を主体とした複合酸化物微粒子となる。
【0039】
1.複合酸化物微粒子
一般に、WOや、MoO、Nb、Ta、V、TiO、MnO中には有効な自由電子が存在しないため、導電性が無く(もしくは小さく)、伝導電子による近赤外線領域の光の吸収(反射)も無い(もしくは、少ない)。しかし、これらの物質へ、M元素を添加し、一般式M(1−Y)(但し、M元素は、H、He、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Re、Be、Hf、Os、Bi、Iのうちから選択される1種類以上の元素、A元素はMo、Nb、Ta、Mn、V、Re、Pt、Pd、Tiのうちから選択される1種類以上の元素、Wはタングステン、Oは酸素、0<X≦1.2、0<Y≦1)で表記される複合酸化物微粒子とすると、当該M元素は、WもしくはA元素の酸化物構造中に伝導電子を放出し、自らは陽イオンになる。
【0040】
そして、当該放出された伝導電子は、近赤外線領域の光を吸収(反射)する効果があり、また、当該複合酸化物微粒子の導電性にも寄与する。尤も、PtO、PdO、ReO等は、M元素の添加が無くても導電性を示すものがあるが、M元素を添加することで更に伝導電子が増加し、近赤外線領域の吸収(反射)や導電特性が向上する。
【0041】
これら、A元素、タングステン、酸素で構築される母体構造は、A元素およびタングステンから選択される1種類の元素と酸素とで構築されていても良いし、複数の元素と酸素とで構築されていても良い。当該A元素またはタングステンと、酸素とで構成された構造の空隙にM元素が添加されると、伝導電子が生成され、近赤外線吸収や導電特性に効果がある。
【0042】
前記M(1−Y)において、Xの範囲は0<X≦1.2が好ましい。X>0であれば、M元素により伝導電子が生成され、近赤外線吸収や導電特性の効果が発揮される。Xの値が1.2以下であれば、M元素を含む不純物の生成が回避され、特性の低下を防止できるので好ましい。
【0043】
前記M(1−Y)において、Yの範囲は0<Y≦1が好ましい。Y=0であってもM元素が存在していれば、伝導電子が生成され、近赤外線吸収や導電性特性が発揮されるが、当該複合酸化物中にタングステンと異なるA元素が存在することで、当該複合酸化物の光学特性を変化させることができるなど、従来にない特長を発揮させることができるので、0<Yであることが好ましい。A元素の好ましい添加量は、目的によって変化するが、1以下であることが好ましい。Y≦1であれば、過剰なA元素が存在することに起因するA元素を含む不純物が生成しないので、当該複合酸化物の特性低下を回避できるからである。
【0044】
まず、Y<1の場合について説明する。
上述のM(1−Y)なる組成の複合酸化物微粒子が六方晶の結晶構造を有する場合、当該複合酸化物微粒子の可視光領域における光の透過特性が向上し、近赤外領域における光の吸収特性も向上する。この六方晶の結晶構造の模式的な平面図である図1を参照しながら説明する。図1において、符号1で示すW(もしくはA元素)O単位にて形成される8面体が6個集合して六角形の空隙が構成され、当該空隙中に、符号2で示すM元素が配置されて1箇の単位を構成し、この1箇の単位が多数集合して六方晶の結晶構造を構成する。これは、所謂、六方晶タングステンブロンズ構造と呼ばれる構造である。
【0045】
可視光領域における光の透過特性を向上させ、近赤外線領域における光の吸収特性を向上させる効果を得るためには、複合酸化物微粒子中に、図1で説明した単位構造(W(もしくはA元素)O単位で形成される8面体が6個集合して六角形の空隙が構成され、当該空隙中にM元素が配置された構造)が含まれていれば良く、当該複合酸化物微粒子が、結晶質であっても非晶質であっても構わない。
【0046】
この六角形の空隙にM元素の陽イオンが添加されて存在すると、他の結晶構造と比べて可視光領域おける光の透過特性が向上し、近赤外線領域おける光の吸収特性が向上するので好ましい。また、導電性用途からの観点においても、当該複合酸化物微粒子の可視光領域における光の吸収が少ないために、多量に使用しても可視光透過率の低下が少なく、可視光透過型導電性材料としての導電性を向上させるのに有効である。ここで、一般的には、イオン半径の大きなM元素を添加したとき当該六方晶が形成され、具体的には、Cs、Rb、K、Tl、In、Ba、Li、Ca、Sr、Fe、Snのうちの1種類以上を添加したとき六方晶が形成されやすい。勿論これら以外の元素でも、W(もしくはA元素)O単位で形成される六角形の空隙にM元素が存在すれば良く、上記元素に限定される訳ではない。
【0047】
上記タングステンブロンズ構造において、六方晶の結晶構造を有する複合酸化物微粒子が均一な結晶構造を有するとき、M元素の添加量は、0.2以上、0.5以下が好ましく、更に好ましくは0.33程度である。M元素の値が0.33となることで、タングステンブロンズ構造において、M元素が六角形の空隙の全てに配置されると考えられる。このとき、タングステンブロンズ構造のタングステンサイトがA元素で置換されていたり、A元素とタングステンのブロンズ構造が共存、またはおのおの単独で存在しても構わない。
【0048】
また、タングステンブロンズ構造において、上述した六方晶以外の、正方晶、立方晶のタングステンブロンズ構造も赤外線遮蔽材料として有効である。結晶構造によって、近赤外線領域の光の吸収位置が変化する傾向があり、立方晶より正方晶、正方晶より六方晶と吸収位置が長波長側に移動する傾向がある。また、それとともに可視光領域の光の吸収特性は、六方晶が最も少なく、正方晶、立方晶の順で大きくなる。従って、より可視光領域の光を透過し、より近赤外線領域の光を遮蔽させたい用途には、六方晶のタングステンブロンズ構造を用いることが好ましい。このとき、タングステンブロンズ構造のタングステンサイトがA元素で置換されていたり、A元素のブロンズ構造が共存しても構わない。ただし、ここで述べた光学特性の傾向は、添加元素の種類や、添加量によって変化するものであるので、適宜、試験を行って最適解を求めれば良く、本発明がこれに限定されるわけではない。
【0049】
次に、Y=1の場合について説明する。
上述のM(1−Y)なる組成の複合酸化物微粒子において、Y=1の場合は、MAOとなりタングステンを含まない材料となる。しかし、当該タングステンを含まない材料においても、M元素が添加されることで電子が生成し、上述のM(1−Y)(但し、Y<1)の場合と同様の機構により近赤外線領域の吸収が起きるので、上述のタングステンを含む場合(Y<1の場合)と、同様に扱うことができる。
【0050】
本実施形態の、複合酸化物微粒子を含有する赤外線遮蔽材料微粒子は、近赤外線領域、特に波長1000nm付近の光を大きく吸収するため、その透過色調は青色系から緑色系となる物が多い。勿論、当該赤外線遮蔽材料微粒子の粒子径は、その使用目的によって各々選定することができる。まず、高い透明性を保持すべき応用に使用する場合には、800nm以下の粒子径を有していることが好ましい。これは、800nmよりも小さい粒子は、散乱により光を完全に遮蔽することが無く、可視光領域の視認性を保持し、同時に効率良く透明性を保持することができるからである。特に可視光領域の透明性を重視する場合は、さらに、粒子による散乱を考慮することが好ましい。
【0051】
この粒子による散乱の低減を重視するとき、粒子径は200nm以下、好ましくは100nm以下が良い。これは、当該複合酸化物微粒子の粒子径が小さければ、幾何学散乱もしくはミー散乱による、波長400nm〜780nmの可視光領域の光散乱が低減される結果、赤外線遮蔽材料微粒子分散体が曇りガラスのようになって、鮮明な透明性が得られなくなるのを回避できるからである。即ち、当該複合酸化物微粒子の粒子径が200nm以下になると、上記幾何学散乱もしくはミー散乱が低減し、レイリー散乱領域になる。レイリー散乱領域では、散乱光は粒子径の6乗に反比例して低減するため、粒子径の減少に伴い散乱が低減し透明性が向上するからである。粒子径が100nm以下になると散乱光は非常に少なくなり、さらに好ましい。光の散乱を回避する観点からは、粒子径が小さい方が好ましく、粒子径が1nm以上あれば工業的な製造は容易である。
【0052】
また、本実施形態の赤外線遮蔽材料微粒子を構成する複合酸化物微粒子の表面が、Si、Ti、Zr、Alの一種類以上を含有する酸化物で被覆されていることは、当該赤外線遮蔽材料微粒子の耐候性向上の観点から好ましい。ただし、導電性用途として応用する場合には、粒子表面を上記酸化物で被覆すると、粒子同士の接触抵抗値が上昇し、抵抗値上昇の原因になるので、より低抵抗値化を目的とした場合には好ましくない。
【0053】
2.赤外線遮蔽材料微粒子の製造方法
前記一般式M(1−Y)で表記される複合酸化物微粒子は、出発原料を不活性ガス雰囲気、もしくは/及び還元性ガス雰囲気中で熱処理して得ることができる。
タングステンおよびA元素の出発原料は、タングステンもしくはA元素を含んでいればよく、特に限定されない。例えば、酸化物、酸化物の水和物、塩化物、アンモニウム塩、炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩、シュウ酸塩、水酸化物、過酸化物、各金属単体、から選択されるいずれか1種類以上があげられる。また、有機化合物、2種類以上の金属元素を含有する化合物(例えば、タングステン酸ナトリウム等)でも良い。工業的製造方法としては、酸化物や、炭酸塩、水和物等を使用すると、加熱還元時に除去が困難な不純物を生成しないため好ましい。
【0054】
また、前記一般式M(1−Y)で表記される複合酸化物微粒子のうち、M元素の出発原料はM元素を含んで入ればよく、A元素の出発原料はA元素を含んでいればよく、特に限定されないが、好ましい例として、酸化物、酸化物の水和物、塩化物、アンモニウム塩、炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩、シュウ酸塩、水酸化物、過酸化物、金属単体、から選択されるいずれか1種類以上があげられる。また、有機錯体、2種類以上の金属元素を含有する化合物(例えば、タングステン酸ナトリウム等)でも良い。工業的製造方法としては、酸化物や、炭酸塩、水和物等を使用すると、加熱還元時に不純物を生成しないため好ましい。
【0055】
上記タングステンW、上記A元素、上記M元素のそれぞれの出発原料のうち、溶液化できるもの(塩化物や硝酸塩など)は溶液化して混合し、乾燥して粉体として、複合酸化物微粒子の出発原料とすることで、十分な混合を実現することができ好ましい。尤も、溶液化されない原料であっても、粉体のまま混合して複合酸化物微粒子の出発原料とすることもできる。
【0056】
ここで、上記タングステンおよびA元素の出発原料、及びM元素の出発原料を混合した後の熱処理条件としては、250℃以上が好ましい。250℃以上で熱処理されて得られた赤外線遮蔽材料微粒子は、十分な近赤外線吸収力や導電性を有する。
熱処理雰囲気は、Ar、N等の不活性ガスを用いることが良い。また還元性ガスとしては、アンモニアや水素ガスが使用可能である。
水素ガスを用いる場合には、還元雰囲気の組成として、水素ガスが体積比で0.1%以上が好ましく、さらに好ましくは1%以上が良い。0.1%以上であれば効率よく還元を進めることができる。
【0057】
上述の工程にて得られた複合酸化物微粒子の表面が、Si、Ti、Zr、Alの一種類以上の金属を含有する酸化物で被覆されていることは、耐候性向上の観点から好ましい。被覆方法は特に限定されないが、当該赤外線遮蔽材料微粒子を分散した溶液中に、上記金属のアルコキシドを添加することで、赤外線遮蔽材料微粒子の表面を被覆することが可能となる。
【0058】
3.赤外線遮蔽材料微粒子分散体、赤外線遮蔽体、
本実施形態の赤外線遮蔽材料微粒子の適用方法として、上記赤外線遮蔽材料微粒子を適宜な媒体中に分散して赤外線遮蔽材料微粒子分散体を得、所望の基材表面に成膜形成する方法がある。この方法は、あらかじめ高温で焼成して得られた赤外線遮蔽材料微粒子を基材中に練り込む、もしくは媒体によって基材表面に結着させることが可能なので、樹脂材料等の耐熱温度の低い基材材料への応用が可能である。このため、成膜形成の際に大型の装置を必要とせず安価であるという利点がある。
また、本実施形態の赤外線遮蔽材料微粒子が含有する複合酸化物微粒子は導電性材料であるため、連続的な膜(分散体)として使用した場合には、光学的用途と併せて、導電性用途として応用可能である。
【0059】
(a)赤外線遮蔽材料微粒子を媒体中に分散して基材表面に成膜形成する方法
例えば、本実施形態の赤外線遮蔽材料微粒子を適宜な溶媒中に分散させ、これに媒体樹脂を添加した後、基材表面にコーティングし、溶媒を蒸発させて所定の方法で樹脂を硬化させれば、当該赤外線遮蔽材料微粒子を媒体樹脂中に分散した薄膜の形成が可能となる。コーティングの方法は、基材表面に赤外線遮蔽材料微粒子含有樹脂が均一にコートできればよく、特に限定されないが、例えば、バーコート法、グラビヤコート法、スプレーコート法、ディップコート法等が挙げられる。また、赤外線遮蔽材料微粒子を直接媒体樹脂中に分散したものは、基材表面に塗布した後に、溶媒を蒸発させる必要が無いので環境的、工業的にも好ましい。
【0060】
上記媒体には、樹脂またはガラスを用いることができる。
樹脂であれば、例えば、UV硬化樹脂、熱硬化樹脂、電子線硬化樹脂、常温硬化樹脂、熱可塑樹脂等が目的に応じて選定可能である。具体的には、ポリエチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリエステル樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ふっ素樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂が挙げられる。また、金属アルコキシドを用いた媒体の利用も可能である。上記金属アルコキシドとしては、Si、Ti、Al、Zr等のアルコキシドが代表的である。これら金属アルコキシドを用いた媒体は、加水分解して加熱することで酸化物膜を形成することが可能である。
上記基材としては、所望によりフィルムでもボードでも良く、形状は限定されない。透明基材材料としては、PET、アクリル、ウレタン、ポリカーボネート、ポリエチレン、エチレン酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル、ふっ素樹脂等が各種目的に応じて使用可能である。また、樹脂以外ではガラスを用いることができる。
【0061】
(b)基材中に赤外線遮蔽材料微粒子を分散する方法
本実施形態の赤外線遮蔽材料微粒子を基材中に分散させても良い。赤外線遮蔽材料微粒子を基材中に分散させるには、基材表面から浸透させても良く、基材樹脂の溶融温度以上に温度を上げて溶融させた後、赤外線遮蔽材料微粒子と樹脂とを混合しても良い。このようにして得られた赤外線遮蔽材料微粒子含有樹脂は、所定の方法でフィルムやボード状に成形して赤外線遮蔽材料微粒子成形体として応用可能である。
例えば、PET樹脂に赤外線遮蔽材料微粒子を分散する方法として、まずPET樹脂と赤外線遮蔽材料微粒子分散液を混合し分散溶媒を蒸発させてから、PET樹脂を、その溶融温度である300℃程度に加熱してPET樹脂を溶融させ、混合し冷却することで、赤外線遮蔽材料微粒子を分散させたPET樹脂の作製が可能となる。
上記赤外線遮蔽材料微粒子を樹脂に分散させる方法は、特に限定されないが、例えば、超音波照射、ビーズミル、サンドミル等を使用することができる。また、均一な分散体を得るために、各種添加剤を添加したり、pH調整したりしても良い。
【0062】
(c)赤外線遮蔽体
本実施形態における赤外線遮蔽材料微粒子は、上述のように、基材上にコーティングしたり、基材中に練り込むなどの方法により、赤外線遮蔽材料微粒子分散体とすることができる。
上記赤外線遮蔽材料微粒子分散体を板状、フィルム状または薄膜状に形成すれば赤外線遮蔽体とすることができる。
また、赤外線遮蔽材料微粒子分散体は、含有する複合酸化物微粒子が導電性を有することから、上述と同様の方法で基材上にコーティングしたり、基材中に練り込むと、赤外線遮蔽材料微粒子分散体の導電性は、複合酸化物微粒子の接触によって2次元もしくは3次元的に広がり、結果として、赤外線遮蔽材料微粒子分散体が導電性を生じることとなる。この赤外線遮蔽材料微粒子分散体を板状、フィルム状または薄膜状に形成すれば、可視光を透過し導電性を有する赤外線遮蔽体とすることができる。
【0063】
4.赤外線遮蔽材料微粒子分散体、赤外線遮蔽体の光学特性及び導電特性
本発明に係る赤外線遮蔽材料微粒子は上述の赤外線遮蔽性能を有しているので、当該赤外線遮蔽材料微粒子の分散体を板状、フィルム状または薄膜状に形成すれば赤外線遮蔽体とすることができ、また、当該赤外線遮蔽体は、波長400nm〜700nmの領域の全光線透過率の最高値をV値としたとき、当該V値が10%以上であり、かつ、波長700nm〜2600nmの領域の全光線透過率の最低値が、V値以下であり、かつ、65%以下である赤外線遮蔽機能を有する赤外線遮蔽体を得ることができる。
【0064】
ここで、後述する実施例1に係る赤外線遮蔽材料微粒子(Rb0.33MoO)の分散体膜を例として、赤外線遮蔽性能について更に説明する。
図2は、実施例1に係る赤外線遮蔽材料微粒子(Rb0.33MoO)の分散体膜である赤外線遮蔽膜における光の透過プロファイルである。図2に示すように、波長400nm〜700nmの領域における光線透過率の最高値であるV値は80.25%であり、可視光領域の光は十分に透過していることが判明した。一方、波長700nm〜2600nmの領域の全光線透過率の最低値がV値以下の22.65%であり、近赤外線領域の光を十分に遮蔽していることが判明した。
【0065】
また、本実施形態における赤外線遮蔽材料微粒子分散体は、含有する複合酸化物微粒子が導電性を有することから、上述と同様の方法で基材上にコーティングしたり、基材中に練り込むと、赤外線遮蔽材料微粒子分散体の導電性は、複合酸化物微粒子同士の接触によって2次元もしくは3次元的に広がり、結果として、赤外線遮蔽材料微粒子分散体が導電性を生じることとなる。この赤外線遮蔽材料微粒子分散体を板状、フィルム状または薄膜状に形成すれば、可視光を透過し導電性を有する赤外線遮蔽体とすることができ、波長400nm〜700nmの領域の全光線透過率の最高値が10%(V値とする)以上であり、表面抵抗値が1×1010Ω/□以下である、可視光を透過し導電性を有する赤外線遮蔽体とすることができる。
【0066】
透明性を必要とする場合は、前述のとおり粒子径を800nm以下にすることが必要であるが、粒子径を微細化すると単位体積あたりの接触抵抗値が大きくなるので、低抵抗値化には好ましくない。また、粒子の形状は、粒状でも板状でも針(ファイバー)状でも良いが、導電性を向上させるためには、接触抵抗値を低減可能な板状もしくは針状が好ましい。
【実施例】
【0067】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
実施例及び比較例における光学測定は、建築窓ガラス用フィルムJIS A 5759(1998)(光源:A光)に基づき測定を行い、可視光透過率、日射透過率を算出した。ただし、測定用試料はガラスに貼付せず、フィルム試料自体を使用した。
ヘイズ値は、JISK 7105に基づき測定を行なった。
平均分散粒子径は、動的光散乱法を用いた測定装置(ELS−800(大塚電子株式会社製))により測定して平均値を用いた。
また、導電特性の評価は、作製した膜の表面抵抗値を、三菱油化製のハイレスタIP MCP−HT260を用いて測定した。
実施例で使用した基材PETフィルム:HPE−50(帝人製)の光学特性は、可視光透過率88%、日射透過率88%、ヘイズ0.9〜0.8%である。
【0068】
(実施例1)
目的組成のRb0.33MoOとなるように、原料RbCOと、MoO・HOとを乳鉢で混合した。これを水素:窒素=3:7(体積比)の雰囲気(フロー)で450℃で1時間還元し、その後、N2雰囲気で800℃で1時間熱処理して、Rb0.33MoOの粉末を得た。
この粉末を20重量部、トルエン75重量部、分散剤5重量部を混合し、分散処理を行い、平均分散粒子径80nmの分散液とした。この液10重量部とハードコート用紫外線硬化樹脂(固形分100%)100重量部とを混合して赤外線遮蔽材料微粒子分散体液とした。この赤外線遮蔽材料微粒子分散体液を、PET樹脂フィルム(HPE−50)上にバーコーターを用いて塗布して成膜した。この成膜を60℃で30秒乾燥し、溶剤を蒸発させた後、高圧水銀ランプで硬化させて赤外線遮蔽膜を得た。
【0069】
この赤外線遮蔽膜の光学特性を表1に示す。この表1中の透過率ピークとは、波長400nm〜700nmの領域の全光線透過率の最高値を示し、透過率ボトムとは、波長700nm〜2600nmの領域の全光線透過率の最低値を示す。
得られた赤外線遮蔽膜は、透明性が極めて高く内部の状況が外部からもはっきり確認できた。透過色調は、美しい青色となった。また、当該赤外線遮蔽膜における光の透過プロファイルである図2より、上述したように波長400nm〜700nmの領域における光線透過率の最高値であるV値は80.25%であり、可視光領域の光は十分に透過していることが判明した。一方、波長700nm〜2600nmの領域の全光線透過率の最低値がV値以下の22.65%であり、平均値(日射透過率)が57.0%であって、近赤外線遮蔽性能が高いことも判明した。
但し、上述した可視光透過率、日射透過率は、単位面積当たりに分散している赤外線遮蔽材料の量によって変化するものであるため、可視光透過率、日射透過率とも、赤外線遮蔽材料の分散量によって連動して上下する。以下の実施例及び比較例においても同様である。
【0070】
(実施例2)
目的組成のRb0.33Mo0.30.7となるように、原料RbCOと、MoO・HO、WO・HOとを乳鉢で混合した。これを水素:窒素=3:7(体積比)の雰囲気(フロー)で450℃で1時間還元し、その後、N雰囲気で800℃で1時間熱処理して、Rb0.33Mo0.30.7の粉末を得た。この粉末を実施例1と同様の方法で分散し、成膜して赤外線遮蔽膜を得た。
この赤外線遮蔽膜の光学特性を表1に示す。
得られた赤外線遮蔽膜は、透明性が極めて高く内部の状況が外部からもはっきり確認できた。透過色調は、美しい青色となった。
【0071】
(実施例3)
目的組成のRb0.33Mo0.50.5となるように、原料RbCOと、MoO・HO、WO・HOとを乳鉢で混合した。これを水素:窒素=3:7(体積比)の雰囲気(フロー)で450℃で1時間還元し、その後、N2雰囲気で800℃で1時間熱処理して、Rb0.33Mo0.50.5の粉末を得た。この粉末を実施例1と同様の方法で分散し、成膜して赤外線遮蔽膜を得た。
この赤外線遮蔽膜の光学特性を表1に示す。
得られた赤外線遮蔽膜は、透明性が極めて高く内部の状況が外部からもはっきり確認できた。透過色調は、美しい青色となった。
【0072】
(実施例4)
目的組成のNa0.33MoOとなるように、原料NaCOと、MoO・HOとを乳鉢で混合した。これを水素:窒素=3:7(体積比)の雰囲気(フロー)で550℃で1時間還元して、Na0.33MoOの粉末を得た。この粉末を実施例1と同様の方法で分散し、成膜して赤外線遮蔽膜を得た。
この赤外線遮蔽膜の光学特性を表1に示す。
得られた赤外線遮蔽膜は、透明性が極めて高く内部の状況が外部からもはっきり確認できた。透過色調は、美しい青色となった。
【0073】
(実施例5)
目的組成のRb0.44MoOとなるように、原料RbCOと、MoO・HOとを乳鉢で混合した。これを水素:窒素=3:7(体積比)の雰囲気(フロー)で550℃で1時間還元し、その後、N2雰囲気で800℃で1時間熱処理して、Rb0.44MoOの粉末を得た。この粉末を実施例1と同様の方法で分散し、成膜して赤外線遮蔽膜を得た。
この赤外線遮蔽膜の光学特性を表1に示す。
得られた赤外線遮蔽膜は、透明性が極めて高く内部の状況が外部からもはっきり確認できた。透過色調は、美しい青色となった。
【0074】
(実施例6)
目的組成のK0.33MoOとなるように、原料KCOと、MoO・HOとを乳鉢で混合した。これを水素:窒素=3:7(体積比)の雰囲気(フロー)で550℃で1時間還元し、その後、N2雰囲気で800℃で1時間熱処理して、K0.33MoOの粉末を得た。この粉末を実施例1と同様の方法で分散し、成膜して赤外線遮蔽膜を得た。
この赤外線遮蔽膜の光学特性を表1に示す。
得られた赤外線遮蔽膜は、透明性が極めて高く内部の状況が外部からもはっきり確認できた。透過色調は、美しい青色となった。
【0075】
(実施例7)
目的組成のRb0.33Mo0.050.95となるように、原料RbCOと、MoO・HO、WO・HOとを乳鉢で混合した。これを水素:窒素=3:7(体積比)の雰囲気(フロー)で550℃で1時間還元し、その後、N2雰囲気で800℃で1時間熱処理して、Rb0.33Mo0. 050.95の粉末を得た。この粉末を実施例1と同様の方法で分散し、成膜して赤外線遮蔽膜を得た。
この赤外線遮蔽膜の光学特性を表1に示す。
得られた赤外線遮蔽膜は、透明性が極めて高く内部の状況が外部からもはっきり確認できた。透過色調は、美しい青色となった。
【0076】
(実施例8)
目的組成のRb0.33Mo0.10.9となるように、原料RbCOと、MoO・HO、WO・HOとを乳鉢で混合した。これを水素:窒素=3:7(体積比)の雰囲気(フロー)で550℃で1時間還元し、その後、N2雰囲気で800℃で1時間熱処理して、Rb0.33Mo0. 10.9の粉末を得た。この粉末を実施例1と同様の方法で分散し、成膜して赤外線遮蔽膜を得た。
この赤外線遮蔽膜の光学特性を表1に示す。
得られた赤外線遮蔽膜は、透明性が極めて高く内部の状況が外部からもはっきり確認できた。透過色調は、美しい青色となった。
【0077】
(実施例9)
目的組成のRb0.33Nb0.10.9となるように、原料RbCOと、NbClと、WO・HOとを乳鉢で混合した。これを水素:窒素=3:7(体積比)の雰囲気(フロー)で550℃で1時間還元し、その後、N雰囲気で800℃で1時間熱処理して、Rb0.33Nb0. 10.9の粉末を得た。この粉末を実施例1と同様の方法で分散し、成膜して赤外線遮蔽膜を得た。
この赤外線遮蔽膜の光学特性を表1に示す。
得られた赤外線遮蔽膜は、透明性が極めて高く内部の状況が外部からもはっきり確認できた。透過色調は、美しい青色となった。
【0078】
(実施例10)
目的組成のRb0.33Ta0.10.9となるように、原料RbCOと、TaClと、WO・HOとを乳鉢で混合した。これを水素:窒素=3:7(体積比)の雰囲気(フロー)で550℃で1時間還元し、その後、N雰囲気で800℃で1時間熱処理して、Rb0.33Ta0. 10.9の粉末を得た。この粉末を実施例1と同様の方法で分散し、成膜して赤外線遮蔽膜を得た。
この赤外線遮蔽膜の光学特性を表1に示す。
得られた赤外線遮蔽膜は、透明性が極めて高く内部の状況が外部からもはっきり確認できた。透過色調は、美しい青色となった。
【0079】
(実施例11)
目的組成のNa0.8Mo0.050.95となるように、原料NaCOと、MoO・HO、WO・HOとを乳鉢で混合した。これを水素:窒素=3:7(体積比)の雰囲気(フロー)で450℃で1時間還元し、その後、N雰囲気で700℃で1時間熱処理して、Na0.8Mo0. 0.50.95の粉末を得た。この粉末を実施例1と同様の方法で分散し、成膜して赤外線遮蔽膜を得た。
この赤外線遮蔽膜の光学特性を表1に示す。
得られた赤外線遮蔽膜は、透明性が極めて高く内部の状況が外部からもはっきり確認できた。透過色調は、美しい青色となった。
【0080】
(実施例12)
目的組成のRb0.33MoOとなるように、原料RbCOと、MoO・HOとを乳鉢で混合した。これを水素:窒素=3:7(体積比)の雰囲気(フロー)で550℃で1時間還元し、その後、N雰囲気で800℃で1時間熱処理して、Rb0.33MoOの粉末を得た。
この粉末を20重量部、イソプロリルアルコール80重量部を混合し、分散処理を行い、平均分散粒子径200nmの分散液とした。この液100重量部とハードコート用紫外線硬化樹脂(固形分100%)2重量部とを混合して赤外線遮蔽材料微粒子分散体液とした。この赤外線遮蔽材料微粒子分散体液を、PET樹脂フィルム(HPE−50)上にバーコーターを用いて塗布して成膜した。この成膜を60℃で30秒乾燥し、溶剤を蒸発させた後、高圧水銀ランプで硬化させて赤外線遮蔽膜を得た。
【0081】
この赤外線遮蔽膜の光学特性を表1に示す。
得られた赤外線遮蔽膜は、透明性が極めて高く内部の状況が外部からもはっきり確認できた。透過色調は、美しい青色となった。更に、表1に示すとおり、導電性があることも分かる。
【0082】
(比較例1)
実施例1から実施例12にて基材として使用した、膜厚50μmPETフィルム自体の光学特性を測定した。すると、可視光透過率は88.1%で、可視光領域の光を十分透過しているが、日射透過率は88.1%であり、太陽光線の直接入射光を約12%しか遮蔽しておらず断熱効果が低いことが判明した。
【0083】
(比較例2)
WO・HO粉末を大気中で800℃で1時間熱処理して、WOの粉末を得た。
この粉末を20重量部、トルエン75重量部、分散剤5重量部を混合し、分散処理を行い、平均分散粒子径80nmの分散液とした。この液10重量部とハードコート用紫外線硬化樹脂(固形分100%)100重量部とを混合して赤外線遮蔽材料微粒子分散体液とした。この赤外線遮蔽材料微粒子分散体液を、PET樹脂フィルム(HPE−50)上にバーコーターを用いて塗布して成膜した。この成膜を60℃で30秒乾燥し、溶剤を蒸発させた後、高圧水銀ランプで硬化させ赤外線遮蔽膜を得た。
光学特性を測定したところ、可視光透過率は85.2%で、可視光領域の光を十分透過しているが、日射透過率は84.1%であり、太陽光線の直接入射光を約16%しか遮蔽しておらず断熱効果が低いことが判明した。
得られた赤外線遮蔽膜は、透明性が極めて高く内部の状況が外部からもはっきり確認できるが、近赤外線領域の透過率が高く、赤外線遮蔽材料として機能しないことがわかる。また、表面抵抗値は1015Ω/□以上であり、導電性を有していなかった。
【0084】
(比較例3)
NaCOと、MoO・HOとWO・HOとを、モル比がNa:Mo:W=1.5:0.1:0.9となるように乳鉢で混合した。これを水素:窒素=3:7(体積比)の雰囲気(フロー)で550℃で1時間還元し、その後、N2雰囲気で800℃で1時間熱処理した。得られた粉末には、目的のNaとMoとWとOとの化合物(Na0.8Mo0.050.95)以外に、NaとOとの目的以外の化合物が多く生成したので、以後の測定は実施しなかった。
【0085】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】本発明に係る赤外線遮蔽材料微粒子が含有する六方晶を有する複合タングステン酸化物微粒子の結晶構造を示す模式図である。
【図2】実施例1に係る赤外線遮蔽材料微粒子(Rb0.33MoO)の分散体膜における光の透過プロファイルである。
【符号の説明】
【0087】
1 WO単位
2 M元素

【特許請求の範囲】
【請求項1】
赤外線遮蔽材料微粒子が媒体中に分散してなる赤外線遮蔽材料微粒子分散体であって、前記赤外線遮蔽材料微粒子は、一般式M(1−Y)(但し、M元素は、H、He、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Re、Be、Hf、Os、Bi、Iのうちから選択される1種類以上の元素、A元素はMo、Nb、Ta、Mn、V、Re、Pt、Pd、Tiのうちから選択される1種類以上の元素、Wはタングステン、Oは酸素、0<X≦1.2、0<Y≦1)で表記される複合酸化物微粒子を含有することを特徴とする赤外線遮蔽材料微粒子分散体。
【請求項2】
前記一般式M(1−Y)で表される複合酸化物微粒子が、六方晶の結晶構造を有する複合酸化物微粒子、正方晶の結晶構造を有する複合酸化物微粒子、立方晶の結晶構造を有する複合酸化物微粒子の、いずれか1種以上であることを特徴とする請求項1記載の赤外線遮蔽材料微粒子分散体。
【請求項3】
前記M元素が、Cs、Rb、K、Tl、In、Ba、Li、Ca、Sr、Fe、Snのうちの1種類以上を含み、前記一般式M(1−Y)で表される複合酸化物が六方晶の結晶構造を有することを特徴とする請求項1、2記載の赤外線遮蔽材料微粒子分散体。
【請求項4】
前記赤外線遮蔽材料微粒子の表面が、Si、Ti、Zr、Alのいずれか1種類以上の元素を含有する酸化物で被覆されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか記載の赤外線遮蔽材料微粒子分散体。
【請求項5】
前記媒体が、樹脂またはガラスであることを特徴とする請求項1から4記載の赤外線遮蔽材料微粒子分散体。
【請求項6】
前記樹脂が、ポリエチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリエステル樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ふっ素樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂のうちのいずれか1種類以上であることを特徴とする請求項5記載の赤外線遮蔽材料微粒子分散体。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか記載の赤外線遮蔽材料微粒子分散体が、板状またはフィルム状または薄膜状に形成されていることを特徴とする赤外線遮蔽体。
【請求項8】
請求項7記載の赤外線遮蔽体であって、
波長400nm〜700nmの領域における全光線透過率の最高値をV値としたとき、該V値が10%以上であり、かつ、波長700nm〜2600nmの領域における全光線透過率の最低値が前記V値以下であり、かつ、65%以下であることを特徴とする赤外線遮蔽体。
【請求項9】
請求項7記載の赤外線遮蔽体であって
波長400nm〜700nmの領域における全光線透過率の最高値をV値としたとき、該V値が10%以上であり、かつ、表面抵抗値が1×1010Ω/□以下であることを特徴とする赤外線遮蔽体。
【請求項10】
一般式M(1−Y)(但し、M元素は、H、He、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Re、Be、Hf、Os、Bi、Iのうちから選択される1種類以上の元素、A元素はMo、Nb、Ta、Mn、V、Re、Pt、Pd、Tiのうちから選択される1種類以上の元素、Wはタングステン、Oは酸素、0<X≦1.2、0<Y≦1)で表記される複合酸化物微粒子を含有する赤外線遮蔽材料微粒子の製造方法であって、
前記複合酸化物微粒子の出発原料を、還元性ガス雰囲気中、または/及び、不活性ガス雰囲気中にて250℃以上で熱処理して、前記複合酸化物微粒子を製造することを特徴とする赤外線遮蔽材料微粒子の製造方法。
【請求項11】
上記複合酸化物微粒子の出発原料が、タングステン化合物、A元素化合物、M元素化合物であり、それぞれの元素の酸化物、酸化物の水和物、塩化物、アンモニウム塩、炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩、シュウ酸塩、水酸化物、過酸化物、金属単体、から選択されるいずれか1種類以上であることを特徴とする請求項10記載の赤外線遮蔽材料微粒子の製造方法。
【請求項12】
上記複合酸化物微粒子の出発原料が、タングステン化合物、A元素化合物と、M元素化合物の溶液を混合したのち、乾燥して得られた粉末であることを特徴とする請求項10記載の赤外線遮蔽材料微粒子の製造方法。
【請求項13】
請求項10から12のいずれかに記載の赤外線遮蔽材料微粒子の製造方法により製造された、一般式M(1−Y)(但し、M元素は、H、He、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Re、Be、Hf、Os、Bi、Iのうちから選択される1種類以上の元素、A元素はMo、Nb、Ta、Mn、V、Re、Pt、Pd、Tiのうちから選択される1種類以上の元素、Wはタングステン、Oは酸素、0<X≦1.2、0<Y≦1)で表記される複合酸化物微粒子、を含有することを特徴とする赤外線遮蔽材料微粒子。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−299086(P2006−299086A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−122668(P2005−122668)
【出願日】平成17年4月20日(2005.4.20)
【出願人】(000183303)住友金属鉱山株式会社 (2,015)
【Fターム(参考)】