説明

走査型プローブ顕微鏡を備えた測定システムを動作させるための方法、及び、測定システム

本発明は、走査型プローブ顕微鏡特に原子間力顕微鏡を備えた測定システムを動作させる方法に関する。また、走査型プローブ顕微鏡を使用する試料の検査および上記試料を光学的に検査する測定システムに関する。この方法において、光学的記録装置を用いて記録された、試料の測定対象部分の光学像は表示装置に表示される。続いて、上記光学像の位置が選択される。探針走査測定のために、試料と探針とを相対的に移動する移動装置を座標変換に応じて制御することによって、探針走査測定用に構成された探針を、座標変換により光学像上の被選択位置に関連付けられた測定位置に移動する。座標変換は、光学像上の座標系と、測定位置をその要素として含む空間であって試料に対して探針が取り得る位置の全体からなる空間の座標系とを関連付ける予め定められた座標変換である。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、走査型プローブ顕微鏡、特に原子間力顕微鏡を備えた測定システムを動作させるための方法に関する。また、測定システムに関する。
【0002】
〔発明の背景〕
走査型プローブ顕微鏡(SPM)は、探針を用いて検査対象である試料を走査することによって、例えば、試料の表面的特徴を記録する技術である。このために、探針と試料との相対運動が利用される。この相対運動は、探針および試料の少なくとも何れかが移動することにより達成される。通常、この相対運動は、水平方向への運動により実現される。また、この相対運動は、垂直方向にも行われる。走査型プローブ顕微鏡の一つの形態として、走査型力顕微鏡(SFM)がある。この場合に使用される原子間力顕微鏡が備える探針は、繊細な測定チップを備えたカンチレバー状に形成される。
【0003】
走査型プローブ顕微鏡と従来の光学顕微鏡とを組み合わせることは大きな利益となる。なぜならこれにより、走査型プローブ顕微鏡において検出された測定結果を、光学顕微鏡の光学像から得られる試料の構造に、より都合良く割り当てることが可能となるからである。この方法および上記の技術に従って、光学顕微鏡によって光学像が記録され、特にデジタルデータとして蓄積される。同様の方法により、上記走査型プローブ顕微鏡のフレームワーク内において、同様の試料のSPM像が生成され、蓄積される。この生成された両方の像を、画像処理プログラムを用いて最終的には一致させる。この目的のために、いくつかの条件が必要となる。
【0004】
まず第一に、光学像およびSPM像は厳密に校正されたものでなければならない。SPM像について、この条件は、走査型プローブ顕微鏡の水平方向の移動を検出するセンサを利用することによって、商業用に普及している多くの装置において既に具現化されている。光学像について言えば、厳密なキャリブレーションは困難である(特に生命科学分野において)。ただし、例えば、レンズマイクロメーターを用いた校正は可能である。
【0005】
また、光学像とSPM像とは比較可能でなければならない。これは必然ではないが、多くの場合に当てはまる。なぜなら、両者の測定を実現する原理的な機構が大きく異なるため、これら2つの像をいくらでも一致させられるわけではないからである。
【0006】
これら2つの像を関連付けるために、SPM像は、光学像において識別可能な、ある特徴的な細部を認識できる断面を示していなければならない。しかしながら、走査型プローブ顕微鏡を用いた測定において生成されたSPM像は、検査対象となる試料の小さい断面のみをしばしば示すため、この要件は大きな制限となる。また、検査対象となる試料の大部分を、探針に損傷を与えること無しに検出することはできない。また、ある特定の実験的な検査においては、フォースディスタンスカーブ(force−distance−curve)が、試料における単一のまたは複数の位置においてしか測定されないため、SPM像が生成されないこともある。
【0007】
なお、2つの像点、すなわち、光学的記録装置を用いて得られた光学像の像点と走査型プローブ顕微鏡の測定結果における像点とを関連付ける方法についての以上の記載は厳密なものではなく、限定的に表現されたものに過ぎない。
【0008】
走査型プローブ顕微鏡のフレームワーク内において、ビデオ画像記録を使用することも周知である。ビデオ画像記録は、試料に対する相対的な探針の位置を決めるためのサポートとして使用される。このビデオ画像記録は、そこに位置している探針とともに、試料の表面における測定部分の光学像を示す。しかしながら、探針がビデオ画像の一部分を通常は影にするため、探針の位置を決めるための位置確認が非常に難しくなるといった問題が起こる。またこれにより、ビデオ画像の境界を判断することも非常に難しい。
【0009】
〔発明の要約〕
本発明の目的は、走査型プローブ顕微鏡を備えた測定システムを動作させるための改良された方法と、走査型プローブ顕微鏡を備えた測定システムであって、正確な探針の位置決め(検査対象物となる試料に対する探針の相対位置の決定)が可能な測定システムとを実現することにある。
【0010】
この目的は、独立請求項1に係る、走査型プローブ顕微鏡を備えた測定システムを動作させるための方法によって達成される。また、独立請求項10に係る、走査型プローブ顕微鏡を備えたシステムによって達成される。
【0011】
本発明は、光学的記録装置(例えば、CCDカメラ)を用いて記録された、試料の測定対象部分の光学像を、走査型プローブ顕微鏡(例えば、原子間力顕微鏡)を備えた測定システムの動作中、表示装置に表示させるという思想を含む。キーボードやマウスを用いたり、あるいは、表示装置に触れたりして、ユーザによって光学像上のある点(以下、被選択点と呼称)が選択されると、ある座標変換によってその被選択点に関連付けられた測定点に探針が移動される。探針の移動は、試料に対する探針の位置を変化させる移動装置を、その座標変換に応じて制御することによって実現される。この座標変換は、局所的な関連付けまたは局所的な変換としても達成され得る。また、この座標変換は、予め定められた座標変換であって、光学像上の座標系と、試料に対して探針が取り得る位置の全体からなる空間(上述した測定位置をその要素して含む空間)との間に関連付けを与えるものである。この座標変換の決定は、1つまたは幾つかの光学像上の1つまたは幾つかの像点と、(試料に対する探針の配置において)これらの像点に対応する測定位置とを、一方の座標系が他方の座標系の像となるように関連付けることにより、変換の一般則を導出するという、経験的(実験的)な手法によって行なわれることが好ましい。これにより、制御ユニットが、走査型プローブ顕微鏡の検査中に光学像における1つまたはいくつかの像点が選択されれたときに、移動装置をそれに応じて制御することを可能ならしめる。
【0012】
すなわち、走査型プローブ顕微鏡の検査中に、検査対象である試料と対向させて、探針を、光学像上に配置された点に対応する1つまたは幾つかの測定位置に正確に配置することが可能になる。例えば、走査型プローブ顕微鏡の使用者が、試料のある一部分に対して探針走査測定を実施したい場合(例えば、その部分が周囲の像点とのコントラスト比が大きい部分であるなど)、光学像上でその点を選択するだけで、座標変換を用いた移動装置による探針の移動であって、光学像上の被選択点に対応する測定位置への探針の移動が実現される。
【0013】
座標変換については、光学像と測定空間(試料に対する探針の位置の集合)との関連付けるを与え得る種々の変換方法が採用され得る。種々の実施形態において、座標変換を実現するために利用される数学的道具立自体は、当業者にとって公知のものである。既知の変換方法としては、線形な変換方法として、行列を用いるものなどがある。また、非線形な変換方法として、高次の多項式を用いるもの、例えば、各点を2次の多項式を用いて変換するものなどがある。
【0014】
好ましい一実施形態として、表示装置および移動装置と協働する制御装置においてソフトウェアによって実現された手段を用いて、座標変換を行うようにしてもよい。座標変換の結果、表示装置上の光学像における描画物と、検査対象である試料に対する探針の位置との間で、光学像上の被選択位置に応じた探針の正確な移動を保証すべく、キャリブレーションが行なわれる。走査型プローブ顕微鏡を用いた検査中に座標変換を検査することが想定される。また選択的に、いわば再校正を意味する1回または数回の再検査も想定され得る。
【0015】
本発明の好ましいさらなる進歩により以下の事が想定される。すなわち、深針走査測定の測定値は、この動作中に測定位置に動かされた探針に形成された測定チップによって、該測定位置において検出される。
【0016】
本発明の好ましい一実施形態として、探針の少なくとも一部分を、表示装置に表示された光学像上に表示する。
【0017】
また、本発明好ましい一実施形態として、探針を表示することなく、測定対象部分を光学像上に表示する。これは、例えば、光学像の領域外に探針を移動することによって実現され得る。光学像の領域外に探針を移動するために、測定走査のために探針を移動するための、あるいは、試料のみを移動するための機構を流用することは適当ではない。このため、探針を大まかに移動させるための第2の機構を設けることが好ましい。さらなる好ましい実施形態として、探針の多様な位置へ移動するとともに、各々の場合において、探針と一緒に試料の光学像を記録する。そして、これら全ての光学像を、メディアンフィルターに入れる。光学像各々において異なった位置に含まれる探針の像は、このメディアンフィルターによって原画像から除去される。なお、メディアンフィルターの構成は公知である。
【0018】
本発明のさらなる進歩として、ライブオペレーティングモードにおいて、瞬間的に記録されたものを光学像として表示する。これは例えば、ビデオ記録を用いて実施され得る。
【0019】
本発明の有利な一実施形態として、探針の像を探針走査測定の測定値とともに表示装置に表示する。例えば、光学像と、座標変換に応じた探針走査測定像とをスーパーインポーズして表示する。
【0020】
本発明の更なる進歩として、測定対象部分の光学像の表示を、表示装置において繰り返し更新する。
【0021】
本発明の更なる進歩として、1つまたは幾つかの光学像上の1つまたは幾つかの像点と、(試料に対する探針の配置において)これらの像点に対応する測定位置とを比較することによって、座標変換を決定することが好ましい。これにより、一般化された変換の規則が導き出される。それ故、この実施形態においては、探針走査測定の測定値を記録することなく、キャリブレーションを実行することができる。
【0022】
本発明の有利な実施形態として、以下の事が想定され得る。1つまたはいくつかの光学像は、蛍光像、バックライト像、およびラマン分光の像からなる群より選択された少なくとも1つの種類の像として記録される。光学像は、上記に規定された光学的な検査方法のうちの1つを用いて作り出されることが好ましい。検査の種類におけるいくつかの像の利用は想定され得る。
【0023】
以下、本発明のさらなる好ましい実施形態について、特に、光学像と試料に対する探針の位置との間のキャリブレーションを目的とする実施形態について、詳細に説明する。
【0024】
SPM測定において、試料に対して探針が取り得る位置の全体からなる空間に対して、移動装置の動座標(試料に対する探針の位置とともに移動する動座標)によって、デカルト座標系が定義される。この場合に移動装置は、それによって移動される部品を確実に回転させることができる。これにより、デカルト座標系に変換を手段として像を形成させることができる。このデカルト座標系に戻す行為はこの方法の不可欠の部分では必ずしも無いが、理解を容易にするものである。多くの場合に、光学的な軸に対しての移動装置の調整は測定方法によって異なる。したがって、製造工場での校正は困難である。これは、デカルト座標系の基点においても同様である。例えば、多くの場合に使用者は探針を手動で取り付ける。また、探針と試料との相対的な位置は、測定方法によって異なる。
【0025】
探針を水平方向に移動する移動装置の場合には、移動装置の座標系において、見込まれるまたは実際の測定位置の2つは探針に近接し得る。もし一致するべく像点が光学像において2つの位置において関連付けられ得たとしたら、この関連付けは光学像の像点と探針の測定位置との間における変換の規則を決定する。変換の規則それ自体は、移動装置の特定の位置、目的、特定の設置、または移動装置の制御値に対応している。ただ2つの点のみが使用されるこの簡単な場合は、もちろんただ1つの変換および回転が実行される必要があるときにのみ、適用される。座標変換は、探針の位置を決定するために、走査型プローブ顕微鏡の次の検査中に実行され得る。探針の位置は、移動装置を用いて光学像における選択に従った、試料に対向する位置である。実験的な走査型プローブ顕微鏡の検査中においても、試料の光学的な検査および走査型プローブ顕微鏡の検査の両方の検査方法からの情報はこの方法において互いに比較され得る。複雑な変換を行なう必要があるこのような場合のために、より多くの点もしかるべく決定される必要がある。
【0026】
形成され表示装置に表示される具体的な像には、多様な選択肢がある。例えば、走査型プローブ顕微鏡の使用者に見慣れた外観を提供するために、光学像を、移動装置により引き起こされる平行移動の2つの移動軸に平行な辺を有する長方形の像に制限することができる。
【0027】
また、以下の事が想定され得る。すなわち、例えば、試料を走査する探針が非常に不安定であることが検知されたとき、光学像を瞬間的な像または生の像としては表示しない。試料が急変することはないため、試料を計測するためには、前回記録された画像、すなわち、探針が測定位置に近づく前に記録された光学像を利用する。これは、試料を走査する場合についても適用される。前回記録された画像を用いて、移動装置により探針を出来る限り走査領域から取り除くことが望ましい。これにより、試料の表面の可能な限り多くの細部を、邪魔されることなく表示することができる。これは、蛍光法による測定よりも、バックライト法による測定にとって重要な意義がある。
【0028】
いくつかの像を表示装置の上に表示することが想定され得る。これらの像は光学的な像および/またはSPM像であり、個々の像は取り除いたり追加したりすることができる。これに関連して、共通の座標系を有する幾つかの画像を、試料上の同一の点に対応する像点同士が重なり合うように表示することが好ましい。この場合、半透明な画像を用いることが好ましい。SPM像を除去すれば、すなわち、光学像のみを表示すれば、非常に優れた計測が可能となる。1つまたはいくつかのSPM像の除去に加えて、光学的に表示された情報のカラーコードを使用するという選択もある。
【0029】
また、さらなる情報を表示装置に表示し得る。例えば、そこで走査型プローブ顕微鏡による測定が行なわれた点のみでなく、そこで操作が行われた線などもこれに含まれる。このようにして表示装置に表示される像点は、通常の方法によりその像点に関連付けられた電子的なデータを有し得る。通常の方法としては、メニュー機能を用いたアクセス、例えば表示された像点のクリックによるものなどが挙げられる。
【0030】
探針と試料とが相互作用しあう位置を、十分な精度で決定することができない、という事態が生じ得る。。また、光学像上の点を試料に対する探針の位置を表す座標系上の点に変換する座標変換によって、相互作用点(すなわち、探針の測定チップの位置)の代わりに、他の点が基準点として利用される、という事態が生じ得る。この場合、座標変換は、測定チップの位置と基準点との間の距離を考慮に入れて決定されるべきである。この距離(移動ベクトルに関連付けられる距離)を決定するのにはいくつかの選択がある。例えば、さらなる試験的な検査、特に電子顕微鏡検査がこの目的のために使用され得る。探針のデータシートからの情報も使用され得る。像の比較も想定され得る。特に多数の類似の特徴および定期的に繰り返されるパターンを備えた試料を用いることにより、さらなる暗示が無くとも像の比較ではない実質的な改良が得られる。しかしながらこの場合には、両方の検査方法からの比較できる情報が必要条件となる。
【0031】
座標変換において、線形の像は多様な関連した検査のうちのある場合においては部分的にしか効果を示さないという事実が示されている。それ故、平行移動(シフト)と回転移動の他に、更なる適応、例えば、2次の多項式による適応を追加的に考慮することが想定される。十分に正確な座標変換を保証するために、普及している測定装置、好ましくは最大25の測定ポイントを有する測定装置が使用できる事が実際に示されている。
【0032】
走査型プローブ顕微鏡および光学像を記録するための記録装置を備えた測定システムは、制御装置を有している。制御装置は、決定された座標変換を実行する。これにより、表示された光学像における位置を選択した後に、探針および検査を受けた試料は移動装置を利用してそれ相応に配置される。移動装置を作動させるために必要な制御信号が、座標変換の実装に応じた制御装置を起動する。制御装置は、座標変換が決定される進歩的な測定工程を行なうように構成されていることも追加的に想定され得る。この目的のため、ソフトウェアベースの適用が制御装置において実行される事が好ましい。ソフトウェアベースの適用は、光学像の点を検出するという特別な目的、および探針と試料との相対位置を移動装置を用いて提供する。ソフトウェアベースの適用は、この結果として選択的に変換の規則を導き出す。このような前測定工程は、測定システムの使用者によって再度使用され得る。これは、再測定を実行する目的のため、走査型プローブ顕微鏡の検査中にも行なわれる。
【0033】
上記に記載の方法は、特に走査型プローブ顕微鏡における任意の形式に使用できる。すなわち、原子間力顕微鏡だけでなく、他の顕微鏡による検査も想定され得る。他の顕微鏡としては例えば、試料の像が光ピンセットを使用することにより記録され得る走査型光子顕微鏡(SPhM)、または近接場光顕微鏡(SNOW)がある。例外的なケースとして、光学上の1点さえ分かっていれば、走査型プローブ顕微鏡による検査は試料のこの点において正確に実行されるため、この方法を利用することができる。この場合、位置の関連付けは、2つの位置、つまり光学像上の1つの位置と1つの測定位置とに対して行なわれる。
【0034】
〔本発明における好ましい実施形態の詳細〕
本発明の実施形態を、図を参照して以下に詳細に説明する。
【0035】
図1は、測定における配置を断面的に示す概略図である。
【0036】
図2は、3つの異なる座標系における正三角形を示す概略図である。
【0037】
図3は、プローブ走査装置を使用した角度および補正値の測定を示す概略図である。
【0038】
図4は、測定チップを備えたカンチレバーおよび基準点を示す光学像である。
【0039】
図5は、測定チップを備えたカンチレバーおよび基準点を示すさらなる光学像である。
【0040】
図6は、カンチレバーの他の光学像である。
【0041】
図7は、シーケンス線図である。
【0042】
図8は、測定システムの概略図である。
【0043】
図1に、多種の座標系においての測定における配置の断面的な概略図を示す。座標系Σは、測定対象の試料1に割り当てられる。また、座標系Σは探針20に割り当てられる。探針20は保持装置2に保持されており、試料1における走査型プローブ顕微鏡の検査のために構成される。観測の他の形態に従って、共通の座標系は試料1および探針20を備えた配置にも割り当てられ得る。2つの座標系Σ、Σのどちらかはオブザーバー3に関連しては動けない。これは、探針20および/または試料10が相対的に位置を動く場合でも同様である。この例における簡単な記載においてオブザーバー3は、レンズ30およびCCDチップ31により示される。レンズ30およびCCDチップ31は、試料1の光学像を記録するためのシステムを形成する。他の座標系Σは、オブザーバー3にあてがわれる。
【0044】
図2に、3つの異なる座標系における正三角形の概略図を示す。正三角形は、図2における符号番号41に示されるように、仮の検査対称を形成する。これは、SPM像(上の図)、光学像(中央の図)、さらなる光学像(下の図)において示される。
【0045】
この条件において、三角形41は実在する構造である。この構造は、走査型プローブ顕微鏡だけでなく、視覚的な検査によっても検査され得る。したがって、少なくとも一つの光学像および走査型プローブ顕微鏡(SPM像)における一つの測定結果の像が生成され得る。図2における上の図は、境界線によって示される走査の領域とともにSPM像40を示す。試料に対する探針の位置を変化させる移動装置によりキャリブレーションされた正三角形41は示される。正三角形41の中央に基点42がある。基点42は、説明を簡単にするためSPM像40の中央に一致している。
【0046】
図2の中央の図において、三角形41の光学像43は、光学像に誤りの無い状態で示されている。この場合、三角形41は角度45の分だけほんの少し回転している。そして、三角形41の中央点46は、光学像43の基点47に向かって動き、これにより三角形41は再度像の中心に戻る。
【0047】
図2の下図に、三角形41の更なる光学像48を示す。この図においては、光学的ひずみが記録されている。これにより、回転または移動による単なる変換は、三角形同士の一致を成立させるためには不十分であることが証明された。この三角形同士とは、図2の下図におけるさらなる光学像における三角形と、図2の上図におけるSPM像における三角形とのことである。
【0048】
図3に、角度キャリブレーションおよび走査型プローブ顕微鏡の走査装置を用いた補正の概略図を示す。探針および試料は、走査型プローブ顕微鏡の検査中に、走査装置によって試料に対する探針の位置を変化させるように動かされる。カンチレバー200として使用される探針の光学像32が示される。光学像32はCCDチップ31を用いて記録される。カンチレバー200は、ピラミッド型測定チップ210を有している。測定チップ210のチップは、基準点220を形成する。説明を簡単にするために他の図面においても、カンチレバー200の表面のみを示す。ベクトル51により参照された動きにより、カンチレバー200は位置を変える。移動後の位置を破線250、260、および270に示す。光学像32における基準点220,270の位置を利用することにより、光学像32の変換(回転および移動)は、参照された場所内においてこのとき果たされ得る。すなわち、座標系は、測定対象の試料およびカンチレバー200と共に配置される。これにより、もし光学像32が走査型プローブ顕微鏡を用いた測定における所望の解像度より強く歪められていなくても、十分な正確性が示される。
【0049】
図4に、測定チップ210および基準点220とともに、カンチレバー200のさらなる光学像33を示す。ここでは試料10が動かされるため、光学像33は静止している。試料2における視認可能な部分は特徴点3を取り囲む。試料2および特徴点3は、ベクトル52により参照された動きにより、新しい位置4,5に動かされる。上記に記述した望ましい場合は、特徴点5が基準点220に正確に一致することにより示される。基準点220はすなわち、カンチレバー200と相互に作用するものである。基準点220および特徴点3,5の位置を利用して、さらなる光学像33の変換(回転および移動)による基準点の移動は行われ得る。
【0050】
図5に、光学像34においての図4における状況を再度示すが、特徴点3はベクトル53を通って基準点から新しい位置に移動される。新しい位置はここでは、基準点を提供するカンチレバー200の角23である。ここでベクトル54がもし既知であれば、図4に関連して記載された座標変換もここにおいて可能である。
【0051】
図6に、カンチレバー200とともに他の光学像35を示す。光学像35は、CCDチップ31を用いて記録される。
【0052】
基準点220は、基準点から9つの異なる位置に続いて動かされる。9つの異なる位置は図中に破線において示される。これらの位置は4個の角、4個の側面における中央点、および四角の中央点がある。これらの点は、互いに同距離の3つの平行線とそれに直交する3つの平行線との交差点である。他の光学像35においては、垂直線330はもはや互いに平行ではなく、かつ水平線340も平行ではない。したがって、測定位置51〜59も当然にもはや四角に配置されていない。点の位置は、変換指示の見積もりを基準点の空間における他の光学像35の変換においても可能にし、続いて原子間力顕微鏡の座標系においても可能にする。他の点の配置も選択され得る。もし光学像を記録するための光学が実質的に変わらなかったとしても、一度得られた変換の指示は概して維持される。したがって、試料に対する大まかな調整、および同じ変換を新しい光学像に適用することが可能になる。この場合においてカンチレバー200は、それ自体が基準点を通り抜ける以外でも、どのような形にも動かされる。そして、上記に記載した方法に従って平面における変換のみが行なわれ得る。
【0053】
図7に、上記の方法を説明するシーケンス線図を示す。
【0054】
まず第一に、段階60において検査が行なわれる。この検査は、光学像において探針20が視認可能かどうかの検査である。もし光学像における探針20が視認可能であれば、段階61において検査が行なわれる。この検査は、走査型プローブ顕微鏡の検査において全ての探針20が予め決められた測定位置にあるかどうかの検査である。もしこの検査においても問題が無ければ、実際の走査型プローブ顕微鏡の検査が直接開始され得る。
【0055】
もし上記の2つの検査のうちどちらかに問題がある場合には、段階80に従って、大まかな動きを利用した探針20の相対運動が実行される。そして、段階61が再度行なわれる。表示された光学像において探針20が視認可能中に第一の動きは行なわれる。したがって、段階60に戻る必要は無いことはこの簡単な方法において当然である。
【0056】
装置の動きは、概して以下のように行なわれることが好ましい。一方では、走査型プローブ顕微鏡の検査中に正確かつ高解像度の走査の動きが、細かい動作の機構例えば圧電素子を利用して行なわれ得る。この場合に採用される細かい動作の機構における位置の正確さは、通常はサブマイクロメーター好ましくはナノメーターの範囲である。他方では、探針および試料の容器は、大まかな動作機構を用いて互いに大まかに動かされ得る。例えば、光学像から探針を検出するために、前測定が行われる。
【0057】
キャリブレーションする目的のため段階81において、光学像は記録され、特にデジタルデータとして蓄積される。次に、段階62において検査が行われる。この検査は、座標変換を利用して行なわれるキャリブレーションのための十分な量の光学像があるかどうかを調べる検査である。例えばもし前測定における測定位置の数が探針の数に近づき、かつ関連した光学像が記録された場合に、光学像の数が十分であるかどうかを調べる。もしここで問題があれば、探針20は段階82において動かされる。また、段階81において光学像は再び記録される。
【0058】
もし段階62における検査において肯定的な結果が得られれば、段階83において探針各々の位置についての適切なアルゴリズムを用いて、それらに対応する像点は決定される。このアルゴリズムは、好ましい実施形態において、上記像点が探針上に形成された測定チップに一致するものである。これは、周知である像を調整する方法を用いて行なわれ得る。他の方法として、使用者が探針20における少なくとも一つの位置を選択し得る方法もある。自動検査または部分的な自動検査のために、段階62と連動して、段階83において実行されたアルゴリズムを用いることも想定され得る。
【0059】
もし対応する正確な距離が既知である光学像における像点の走査を行なう場合には、座標変換の調整は段階84に従って得られる。段階84は、探針20の移動動作における光学像を取得する段階である。座標変換は、走査型プローブ顕微鏡における光学像の限定使用に基づいた検査の実行前に、前測定において決定される。
【0060】
探針20の測定チップが特定の場所に十分に、かつ正確に配置され得る場合においては、光学像の座標系と、試料に対向する探針の測定位置の座標系との2つの座標系の基点は等しくなるように選択され得る。
【0061】
この方法において得られた座標変換とともに、段階85に従って光学像は表示装置の画面に表示される。また、走査型プローブ顕微鏡を用いた測定結果の像が記録され得る、この画面における領域は選択され得る。光学像におけるただ一つの像点が、力対距離分光法(force−distance−spectroscopy)のために選択されることも想定される。走査型プローブ顕微鏡の検査における測定結果は、表示装置の画面において表示され得る。これを連結することにより、異なる色を多様な像に割り当てることも想定され得る。さらに、少なくとも部分的に透明な像も採用され得る。
【0062】
もし探針20の光学像が記録され、かつもし関連する細部が走査型プローブ顕微鏡の像においてだけでなく光学像においても認識される場合には、段階63における検査が行なわれる。この検査は、予め決定された座標変換が十分であるかどうかを調べる検査である。もしここで問題がある場合には、段階86において一度の軽微な修正が行なわれる。もし修正が必要で無い場合には、試料が段階87の処置に移るまでの間、段階85の処置が続けられる。この場合には段階64において、試料の動きかどうかを調べる検査が行なわれる。この検査は、座標系Σの動きが光学像の記録における光学的な変化を引き起こすかどうかの検査である。もし段階64において問題があれば、光学像を記録する測定が再度段階81において行なわれる。もし段階64においての検査に問題がある場合には、段階85において古い光学像は新しい光学像に交換され得る。段階64における問題とは例えば、光学的特性を記録する像においてカバーガラスまたは他の通常の組立品についての問題が考えられる。新しい光学像に交換される場合には、生の像は背景に示されることも想定され得る。
【0063】
図8に測定システムの概略図を示す。測定システムは、走査型プローブ顕微鏡90および記録装置91を備えている。記録装置91は、検査対象の試料の光学像の一部を記録するように、走査型プローブ顕微鏡90とともに構成されている。記録装置91は、例えばCCDカメラを備えた顕微鏡でも良い。表示装置92は記録装置91に連結されている。表示装置92は例えば、記録装置91によって記録された光学像を表示する目的のために構成されたコンピュータと連結したスクリーンまたはモニターである。さらに、表示装置92は走査型プローブ顕微鏡の検査における測定結果を示すためにも配置される。この測定結果は、重ね合わせる形、すなわち例えば光学像および同一の座標系における走査型プローブ顕微鏡の像において表示されることが好ましい。表示装置92は制御装置93に連結されている。これにより、走査型プローブ顕微鏡90または記録装置91を選択的に結合する入力装置94を利用することによって、使用者は表示されている光学像において処置が実行された選択された位置を検出することができる。制御装置93は、例えばコンピュータプログラムによって形成される。入力装置は、意図的にコンピュータマウスまたはキーボードにしてもよい。走査型プローブ顕微鏡による検査中に、制御装置93は電気制御信号を生成する。電気制御信号は、試料と探針とをそれ相応に配置する目的のため、走査型プローブ顕微鏡90の移動装置に送られる。
【0064】
この記述、請求項および図において明示された発明の特徴は、その多様な実施形態における発明の実現のため、任意の組み合わせだけでなく個々においても重要となり得る。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の一実施形態に係る、測定における配置を断面的に示す概略図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る、3つの異なる座標系における正三角形を示す概略図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る、プローブ走査装置を使用した角度および補正値の測定を示す概略図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る、測定チップを備えたカンチレバーおよび基準点を示す光学像の図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る、測定チップを備えたカンチレバーおよび基準点を示すさらなる光学像の図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る、カンチレバーを示す他の光学像の図である。
【図7】本発明の一実施形態に係る、シーケンス線図である。
【図8】本発明の一実施形態に係る、測定システムの概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走査型プローブ顕微鏡、特に原子間力顕微鏡を備えた測定システムを動作させるための方法であって、
光学的記録装置を用いて記録された、試料の測定対象部分の光学像を、表示装置に表示する工程と、
上記光学像上の位置を選択する工程と、
探針走査測定のために、上記試料と探針とを相対的に移動する移動装置を座標変換に応じて制御することによって、探針走査測定用に構成された探針を、上記座標変換により上記光学像上の被選択位置に関連付けられた測定位置に移動する工程と、を含み、
上記座標変換は、上記光学像上の座標系と、上記測定位置をその要素として含む空間であって上記試料に対して上記探針が取り得る位置の全体からなる空間の座標系とを関連付ける予め定められた座標変換である、
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
上記探針を上記測定位置に移動する工程において、上記測定位置に移動される上記探針上に形成された測定チップを用いて、上記探針走査測定の測定値を検出する工程を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
上記表示装置に表示された上記光学像上に、上記探針の少なくとも一部分を表示する、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
上記表示装置に表示された上記光学像上に、上記探針を表示することなく、上記測定対象部分を表示する、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
ライブオペレーティングモードにおいて、瞬間的に記録された光学像を、上記光学像として表示する、
ことを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載の方法。
【請求項6】
上記表示装置上に、少なくとも1つの探針走査測定像を探針走査測定の測定値とともに表示し、該探針走査測定像と上記光学像とを少なくとも部分的にスーパーインポーズ表示する、
ことを特徴とする請求項1から5の何れか1項に記載の方法。
【請求項7】
上記測定対象部分の上記光学像の表示を、上記表示装置において繰り返し更新する、
ことを特徴とする請求項1から6の何れか1項に記載の方法。
【請求項8】
上記座標変換を、1つまたは幾つかの光学像上の1つまたは幾つかの像点と、上記試料に対する上記探針の位置のうちこれらの像点に対応する測定位置とを比較することによって座標変換を決定し、一般化された変換の規則を導き出す工程を含む、ことを特徴とする請求項1から7の何れか1項に記載の方法。
【請求項9】
上記1つまたは上記幾つかの光学像は、蛍光像、バックライト像、およびラマン分光像からなる群より選択された少なくとも1種類の像として記録される、ことを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
走査型プローブ顕微鏡と光学的手段とを用いて試料を測定するための測定システムであって、
探針が形成されている走査型プローブ顕微鏡と、
探針走査測定のフレームワーク内での上記探針を用いた測定の対象となる試料の測定対象部分の光学像を記録するように構成された記録装置と、
上記光学像を表示するように構成された、上記光学的記録装置に接続された表示装置と、
上記測定の対象となる試料に対する上記探針の位置を変化させる移動装置と、
上記移動装置に接続され、上記表示装置に表示された光学像上の被選択位置を検出した後、探針走査測定のために上記移動装置を動作させるために必要な制御信号を生成することによって、上記探針を、上記光学像上の座標系と上記試料に対して上記探針が取り得る位置の全体からなる空間の座標系との間に予め定められた関連付けを与える座標変換よって上記光学像上の上記被選択位置に関連づけられた測定位置に移動するように構成された制御装置と、を備えた測定システム。
【請求項11】
上記走査型プローブ顕微鏡は、原子間力顕微鏡、走査型近接場顕微鏡、またはフォトン走査型顕微鏡である、ことを特徴とする請求項10に記載の測定システム。
【請求項12】
上記制御装置は、上記光学像上の座標系と、上記試料に対して上記探針が取り得る位置の全体からなる空間との間に関連付けを検出するように構成されている、ことを特徴とする請求項10または11に記載の測定システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2009−522560(P2009−522560A)
【公表日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−548926(P2008−548926)
【出願日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際出願番号】PCT/DE2006/002298
【国際公開番号】WO2007/076828
【国際公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【出願人】(507038249)イェーペーカー インストゥルメンツ アクチエンゲゼルシャフト (4)