説明

走査型プローブ顕微鏡及び表面情報測定方法

【課題】探針にかかるストレスを低減した状態で試料表面の形状情報や物性情報を測定することができ、プローブのダメージを軽減すること。
【解決手段】先端に探針を有するプローブにより試料表面上の隣接する複数のラインを1ライン毎順々に往復走査して、試料の表面情報を測定する方法であって、往路走査又は復路走査のうち一方の走査時に、探針を試料表面に近接或いは接触させた状態でプローブの変位が一定となるように探針と試料表面との距離を制御しながら走査させて、試料表面の測定データを取得する取得工程と、他方の走査時に、探針を所定量引き上げた後、一方の走査時の移動軌跡L1よりも試料表面から離間した移動軌跡L2で走査させる走査工程と、備えている表面情報測定方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、探針を有するプローブを用いて、試料表面の形状情報や、粘弾性等の各種の物性情報を測定する走査型プローブ顕微鏡及び表面情報測定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
周知のように、金属、半導体、セラミック、樹脂、高分子、生体材料や絶縁物等の試料を微小領域にて測定し、試料表面の形状情報や、試料表面の粘弾性等の物性情報の測定を行う装置として、走査型プローブ顕微鏡(SPM:Scanning Probe Microscope)が知られている。
【0003】
この走査型プローブ顕微鏡は、先端に探針を有するプローブを備えており、該プローブと試料との間に作用する様々な物理量を検出することで、試料表面の形状情報や物性情報等の測定を行うものである。通常、試料の測定を行う場合には、予め測定したい測定エリアを決定した後、該測定エリア内でプローブを走査することで測定を行っている。
より詳細に説明すると、プローブを測定エリア内に移動させた後、試料表面に水平なX方向にプローブを往復走査して1ラインの測定を行う。つまり、図12に示すようにX方向に往路走査を行った後、図13に示すように同じライン上を復路走査することで往復走査を行う。よって、図14に示すように、往路走査時の移動軌跡と復路走査時の移動軌跡とは同じ軌跡を描いている。なお、図12及び図13においては、試料表面の凹凸を誇張して図示している。
【0004】
そして、この1ラインの走査が終了後、プローブを試料表面に水平で且つ上記X方向に直交するY方向に移動させる。そして、再度プローブをX方向に移動させて、先ほどのラインに隣接するラインを往復走査して2回目の測定を行う。このように、X方向の1ライン走査をY方向に複数回繰り返し行うことで、測定エリア内をジグザグに走査して、該測定エリア内の測定を行っている(特許文献1及び2参照)。
【0005】
なお、1ラインを往復走査する際に、往路又は復路のどちらか一方で測定データを取得する場合が一般的であるが、往路及び復路の両方で測定データを取得する場合もある。
【特許文献1】特開平11−190739号公報
【特許文献2】特開2003−14605号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した従来の走査型プローブ顕微鏡には、まだ以下の不都合が残されている。
走査型プローブ顕微鏡により上述した測定を行う際、測定対象物である試料の種類や測定したい情報等に応じて、いくつかの測定モードを適宜選択して行うが、いずれの場合であっても、往路走査時及び復路走査時の両方において、プローブの探針が試料表面に近接或いは接触した状態となっている。そのため、走査を行っている間、探針に対して常にストレスをかけてしまうものであった。なお、このストレスは、往路及び復路の両方で測定データを取得する場合、或いは往路のときだけ測定データを取得する場合のいずれの場合であっても同じようにかかってしまう。
【0007】
しかも、このストレスが蓄積すると、探針の先端が欠けたり変形したりする等のダメージが発生してしまう不都合があった。特に、凹凸が頻繁に繰り返されている試料や、凹凸の段差が大きい試料等を測定する場合には、ダメージが顕著に発生し易かった。
【0008】
この発明は、このような事情を考慮してなされたもので、その目的は、探針にかかるストレスを低減した状態で試料表面の形状情報や物性情報を測定することができ、プローブのダメージを軽減することができる走査型プローブ顕微鏡及び表面情報測定方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、この発明は以下の手段を提供している。
本発明に係る走査型プローブ顕微鏡は、試料表面上の隣接する複数のラインを1ライン毎順々に往復走査して、試料の表面情報を測定する走査型プローブ顕微鏡であって、前記試料を固定する試料台と、探針を先端に有するプローブと、前記試料と前記探針とを、前記試料表面に平行な方向及び前記試料表面に垂直な方向に相対的に移動させる移動手段と、前記プローブの変位を測定する変位測定手段と、前記複数のラインを1ライン毎順々に往復走査するように前記移動手段を制御すると共に、該往復走査時に前記変位測定手段による測定結果に基づいて前記試料表面の測定データを取得する制御手段と、を備え、該制御手段が、往路走査又は復路走査のうち一方の走査時に、前記探針を前記試料表面に近接或いは接触させた状態で前記プローブの変位が一定となるように前記探針と前記試料表面との距離を制御しながら走査させて前記測定データを取得させると共に、他方の走査時に、前記探針を所定量引き上げて一方の走査時の移動軌跡よりも前記試料表面から離間した移動軌跡で走査させることを特徴とするものである。
【0010】
また、本発明に係る表面情報測定方法は、先端に探針を有するプローブにより試料表面上の隣接する複数のラインを1ライン毎順々に往復走査して、試料の表面情報を測定する表面情報測定方法であって、前記往復走査における往路走査又は復路走査のうち一方の走査時に、前記探針を前記試料表面に近接或いは接触させた状態で前記プローブの変位が一定となるように前記探針と前記試料表面との距離を制御しながら走査させて、試料表面の測定データを取得する取得工程と、前記往復走査における往路走査又は復路走査のうち他方の走査時に、前記探針を所定量引き上げた後、前記一方の走査時の移動軌跡よりも前記試料表面から離間した移動軌跡で走査させる走査工程と、を備えていることを特徴とするものである。
【0011】
この発明に係る走査型プローブ顕微鏡及び表面情報測定方法においては、まず、試料台上に固定された試料に対して、表面情報を測定するための測定範囲を指定する。測定範囲が指定されると、制御手段はこの測定範囲内においてプローブを走査させて試料表面の測定データを取得することで、表面情報の測定を行う。具体的には、測定範囲内において、複数のラインを1ライン毎順々に往復走査させ、1ライン毎に取得した測定データに基づいて、測定範囲全体の表面情報(試料表面の形状情報や、粘弾性等の物性情報)の測定を行う。
【0012】
ここで、1ライン毎にプローブを往復走査させることについてより詳細に説明する。
制御手段は、プローブをラインに沿って往路走査又は復路走査させるが、この往路走査又は復路走査のうち一方の走査時のときだけ、試料表面の測定データを取得する取得工程を行う。この測定データの取得時には、探針を試料表面に近接或いは接触させた状態でプローブの変位が一定となるように、探針と試料表面との距離を制御しながら走査させることで、試料表面の測定データを取得することができる。これにより、ラインに沿った試料表面の形状情報(凹凸情報)や物性情報等を得ることができる。
【0013】
一方、制御手段は、往路走査又は復路走査のうち他方の走査時、即ち、測定データの取得を行わないときには、プローブの引き上げを行った後に走査を行わせる走査工程を行う。つまり、一方の走査時には、試料表面の測定データを取得するために探針を試料表面に近接或いは接触させた状態で走査させる必要があったが、他方の走査時には、探針の位置を所定量引き上げて探針と試料表面との間隔を一方の走査時よりも離間させた後に走査を行わせる。そのため、この他方の走査時には、一方の走査時の探針の移動軌跡よりも試料表面から離間した移動軌跡で走査させることができる。
【0014】
このように、1ラインを往復走査する際に、測定データの取得を実施しない他方の走査時には、一方の走査時の移動軌跡よりも試料表面から離間した移動軌跡で走査している。つまり、探針を試料表面から十分離間させた状態で走査している。従来は、1ラインを往復走査する際に、往路走査時の移動軌跡と復路走査時の移動軌跡とが同じであり、いずれの走査であっても探針が試料表面に対して常に近接或いは接触している状態であった。そのため、探針に常にストレスがかかってしまい、先端が欠けたり変形したりする等のダメージが発生してしまっていた。
しかしながら、上述したように測定データの取得を実施しない他方の走査を行う場合には、探針を試料表面から十分離間させているので、凹凸が頻繁に繰り返されている試料や凹凸の段差が大きい試料であっても、走査の段階で探針にストレスがかかることがない。
【0015】
従って、従来に比べて探針にかかるストレスを低減した状態で測定を行うことができ、プローブのダメージを軽減することができる。よって、耐久性を向上することができると共に、長期的に安定且つ高精度な測定を行うことができる。
【0016】
なお、1ラインの往復走査を終了した後、隣接するラインにプローブの位置をずらす。そして、上述した各工程を再度行って隣接するラインを同様に往復走査させ、往路走査又は復路走査のいずれか一方の走査時に測定データを取得する。このように、複数のラインを1ライン毎に順々に往復走査しながら測定データの取得を繰り返す。そして、各ラインの測定データを集約することで測定範囲全体の表面情報を測定することができる。
【0017】
また、本発明に係る走査型プローブ顕微鏡は、上記本発明の走査型プローブ顕微鏡において、前記制御手段が、前記他方の走査の際に、前記一方の走査時よりも速い走査速度で走査させることを特徴とするものである。
【0018】
また、本発明に係る表面情報測定方法は、上記本発明の表面情報測定方法において、前記他方の走査の際に、前記一方の走査時よりも速い走査速度で走査させることを特徴とするものである。
【0019】
この発明に係る走査型プローブ顕微鏡及び表面情報測定方法においては、他方の走査を行う際に、測定データの取得を行う一方の走査と同じ速度ではなく、一方の走査時よりも速い速度で走査を行う。そのため、他方の走査に費やす時間を短縮することができる。よって、測定時間の短縮化を図ることができる。その結果、スループットを向上することができる。また、測定時間がかかってしまうと熱ドリフトの影響を受けて測定精度が低下する恐れがあるが、このような恐れもなく、高精度な測定を行うことができる。
【0020】
また、本発明に係る走査型プローブ顕微鏡は、上記本発明の走査型プローブ顕微鏡において、前記一方の走査が前記往路走査、前記他方の走査が前記復路走査とされ、前記制御手段が、前記復路走査の際に、前記測定データから前記試料表面の凹凸高さを認識した後、認識した凹凸高さのうち最大高さよりも前記試料表面から離間するように前記探針を引き上げると共に、引き上げた高さを維持しながら前記試料表面に対して略平行な直線の移動軌跡を描くように走査させることを特徴とするものである。
【0021】
また、本発明に係る表面情報測定方法は、上記本発明の表面情報測定方法において、前記一方の走査が前記往路走査、前記他方の走査が復路走査とされ、前記走査工程の際に、前記測定データから前記試料表面の凹凸高さを認識した後、認識した凹凸高さのうち最大高さよりも試料表面から離間するように前記探針を引き上げ、引き上げた高さを維持しながら前記試料表面に対して略平行な直線の移動軌跡を描くように走査させることを特徴とするものである。
【0022】
この発明に係る走査型プローブ顕微鏡及び表面情報測定方法においては、まず制御手段が、往路走査時に測定データの取得を行う取得工程を行い、復路走査時にプローブの引き上げを行って走査を行わせる走査工程を行う。
特に、往路走査時に測定データの取得を行うので、プローブの引き上げを行う前に、取得した測定データに基づいて走査を行ったラインに沿った試料表面の凹凸高さを認識することができる。そして、制御手段は、探針の引き上げを行う際に、認識した凹凸高さのうち最大高さよりも試料表面から離間するように探針の引き上げを行う。そして、この引き上げた高さを維持しながら、試料表面に対して略平行な直線の移動軌跡を描くようにプローブを復路走査させる。
【0023】
このように、確認された凹凸のうち最も高い凹凸よりも探針を上方に引き上げるので、当該ライン上における走査開始点(往路走査の出発点)に向けて一直線に移動させながらプローブを戻すことができる。従って、余分な経路を経ることなく、最も効率の良い最短の経路で復路走査させることができるので、復路走査に費やす時間を短縮することができる。よって、測定時間の短縮化を図ることができる。その結果、スループットを向上することができる。また、測定時間がかかってしまうと熱ドリフトの影響を受けて測定精度が低下する恐れがあるが、このような恐れもなく、高精度な測定を行うことができる。
【0024】
また、本発明に係る走査型プローブ顕微鏡は、上記本発明の走査型プローブ顕微鏡において、前記一方の走査が前記往路走査、前記他方の走査が前記復路走査とされ、前記制御手段が、前記復路走査の際に、隣接するラインの走査開始点に向けて前記探針を走査させることを特徴とするものである。
【0025】
また、本発明に係る表面情報測定方法は、上記本発明の表面情報測定方法において、前記一方の走査が前記往路走査、前記他方の走査が復路走査とされ、前記走査工程の際に、隣接するラインの走査開始点に向けて前記探針を走査させることを特徴とするものである。
【0026】
この発明に係る走査型プローブ顕微鏡及び表面情報測定方法においては、まず制御手段が、往路走査時に測定データの取得を行う取得工程を行い、復路走査時にプローブの引き上げを行って走査を行わせる走査工程を行う。
そして、復路走査する際に、探針を当該ライン上における走査開始点(往路走査の出発点)に戻すのではなく、隣接するライン(次に測定を行うライン)の走査開始点に向かって走査させる。これにより、次のラインの測定に速やかに移行することができ、測定時間の短縮化を図ることができる。その結果、スループットを向上することができる。また、測定時間がかかってしまうと熱ドリフトの影響を受けて測定精度が低下する恐れがあるが、このような恐れもなく、高精度な測定を行うことができる。
【0027】
また、本発明に係る走査型プローブ顕微鏡は、上記本発明の走査型プローブ顕微鏡において、前記制御手段が、前記所定量に予め決められた補正量を加算した量だけ前記探針を引き上げることを特徴とするものである。
【0028】
また、本発明に係る表面情報測定方法は、上記本発明の表面情報測定方法において、前記走査工程の際に、前記所定量に予め決められた補正量を加算した量だけ前記探針を引き上げることを特徴とするものである。
【0029】
この発明に係る走査型プローブ顕微鏡及び表面情報測定方法においては、探針を引き上げる際に、所定量にマージンとなる補正量をさらに加えた量だけ引き上げる。先ほど往路走査を行ったラインと、次に測定を行う隣接するラインとの間における試料表面の凹凸高さは不明であるが、上述したように所定量に補正量を加えた量だけ引き上げることで、探針と試料表面とが接触してダメージを受けてしまうリスクを極力回避することができる。
【0030】
また、本発明に係る走査型プローブ顕微鏡は、上記本発明の走査型プローブ顕微鏡において、前記補正量が、既に終了した往復走査によって得られた前記試料表面の凹凸高さの変化具合に基づいて決定された量であることを特徴とするものである。
【0031】
また、本発明に係る表面情報測定方法は、上記本発明の表面情報測定方法において、前記補正量が、既に終了した往復走査によって得られた前記試料表面の凹凸高さの変化具合に基づいて決定された量であることを特徴とするものである。
【0032】
この発明に係る走査型プローブ顕微鏡及び表面情報測定方法においては、既に終了した往復走査によって得られた試料表面の凹凸高さの変化具合に基づいて補正量を決定するので、探針と試料表面とが接触してダメージを受けてしまうリスクをより確実に回避し易い。
【0033】
また、本発明に係る走査型プローブ顕微鏡は、上記本発明の走査型プローブ顕微鏡において、前記補正量が、予め前記試料表面をプリスキャンして得られた試料表面の凹凸高さの変化具合に基づいて決定された量であることを特徴とするものである。
【0034】
また、本発明に係る表面情報測定方法は、上記本発明の表面情報測定方法において、前記補正量が、予め前記試料表面をプリスキャンして得られた試料表面の凹凸高さの変化具合に基づいて決定された量であることを特徴とするものである。
【0035】
この発明に係る走査型プローブ顕微鏡及び表面情報測定方法においては、予め前記試料表面をプリスキャン(実際のイメージデータを測定する際に、最初に粗いデータ点数で測定するスキャン)して得られた試料表面の凹凸高さの変化具合に基づいて補正量を決定するので、探針と試料表面とが接触してダメージを受けてしまうリスクをより確実に回避し易い。
【発明の効果】
【0036】
本発明に係る走査型プローブ顕微鏡及び表面情報測定方法によれば、探針にかかるストレスを低減した状態で感度を低下させることなく試料表面の形状情報や物性情報を測定することができ、プローブのダメージを低減することができる。よって、耐久性の向上化を図ることができると共に、長期的に安定且つ高精度な測定を行うことができる。また、スループットの向上化及び高精度な測定を行うこともできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下、本発明に係る走査型プローブ顕微鏡及び表面情報測定方法の一実施形態について、図1から図11を参照して説明する。なお、本実施形態では、光てこ方式を利用すると共に、探針を振動させないモードで測定を行う場合を例に挙げて説明する。また、1ラインを往復走査するにあたって、往路走査時に測定データを取得する場合を例に挙げて説明する。
【0038】
本実施形態の走査型プローブ顕微鏡1は、図1に示すように、試料Sを固定するステージ(試料台)2と、試料Sに対向配置された探針3aを先端に有するプローブ3と、試料Sと探針3aとを試料表面S1に平行なXY方向及び試料表面S1に垂直なZ方向に相対的に移動させる移動手段4と、プローブ3の変位(撓み)を測定する変位測定手段5と、これら各構成品を総合的に制御する制御手段6と、を備えている。
【0039】
上記プローブ3は、シリコンやシリコンナイトライド等により形成されており、本体部3bによって片持ち状態に支持されている。この本体部3bは、ホルダ部10に固定された斜面ブロック11の載置面11aに図示しないワイヤ等を利用して着脱自在に固定されている。これによりプローブ3は、試料表面S1に対して所定角度傾いた状態で固定されている。
【0040】
上記ホルダ部10は、試料Sの上方に位置するように図示しない架台に取り付けられている。また、このホルダ部10には、プローブ3の裏面に形成された図示しない反射面に向けて、後述するレーザ光Lを入射させると共に、反射面で反射したレーザ光Lを出射させる開口部10aが形成されている。
上記ステージ2は、XYZスキャナ12上に載置されており、該XYZスキャナ12は図示しない防振台上に載置されている。このXYZスキャナ12は、例えばピエゾ素子であり、XY走査系とZサーボ系を含むXYZスキャナ制御部13から電圧を印加されることで、XY方向及びZ方向にそれぞれ微小移動するようになっている。即ち、これらXYZスキャナ12及びXYZスキャナ制御部13は、上記移動手段4として機能する。
【0041】
また、ホルダ部10の上方には、ミラー14を介してプローブ3の裏面側に形成された反射面に向けてレーザ光Lを照射するレーザ光源15と、反射面で反射されたレーザ光Lを受光する光検出部16と、が設けられている。なお、レーザ光源15から照射されたレーザ光Lは、ミラー14で反射された後、ホルダ部10の開口部10a内を通過しながら反射面に達し、反射面で反射された後、再度開口部10a内を通過して光検出部16に入射するようになっている。
なお、上述したミラー14は必須なものではなく、ミラー14を介さずに直接レーザ光Lを反射面に照射するように構成しても構わない。また、反射面で反射されたレーザ光Lを、ミラー14を介して受光するようにホルダ部10と光検出部16との間にミラー14を設けても構わない。
【0042】
光検出部16は、例えば入射面が2分割或いは4分割されたフォトダイオードであり、レーザ光Lの入射位置からプローブ3の変位(撓み)を検出する。そして、光検出部16は、検出したプローブ3の変位をDIF信号としてプリアンプ17に出力している。即ち、これらレーザ光源15、ミラー14、光検出部16は、プローブ3の変位を測定する上記変位測定手段5として機能する。
【0043】
また、光検出部16から出力されたDIF信号は、プリアンプ17によって増幅された後、Z電圧フィードバック回路18に送られる。Z電圧フィードバック回路18は、送られてきたDIF信号が常に一定となるように、XYZスキャナ制御部13をフィードバック制御する。これにより、試料表面S1を測定する際に、試料Sと探針3aとの距離をプローブ3の変位が一定となるように高さ制御することができる。
【0044】
また、Z電圧フィードバック回路18には、制御部19が接続されており、該制御部19がZ電圧フィードバック回路18により上下させる信号に基づいて、試料表面S1の測定データを取得することができるようになっている。これにより、試料表面S1の凹凸形状や粘弾性等の各種の物性情報を測定することができるようになっている。即ち、これらZ電圧フィードバック回路18及び制御部19は、上記制御手段6として機能する。
【0045】
また、制御部19には、オペレータが各種の情報を入力することができる入力部19aが接続されており、該入力部19aを介して測定範囲E等を自由に設定できるようになっている。そして、制御部19は、測定範囲Eが設定されると、該測定範囲E内で測定を行うように設定されている。具体的には、隣接する複数のラインを1ライン毎順々に往復走査することで、測定範囲E内を測定するように制御手段6が各構成品を制御している。これについては、後に詳細に説明する。
【0046】
次に、このように構成された走査型プローブ顕微鏡1により、試料Sの表面情報を測定する表面情報測定方法について、以下に説明する。
本実施形態の表面情報測定方法は、設定された測定範囲E内において、隣接する複数のラインを1ライン毎に順々に往復走査することで測定を行う方法であって、1ライン毎に往復走査する際に、取得工程と走査工程とを順に行いながら測定を行う。これら各工程について、以下に詳細に説明する。
【0047】
まず測定を開始する前に、初期設定を行う。即ち、ステージ2上に試料Sを確実に載置固定した後、プローブ3の反射面に確実にレーザ光Lが入射するように、また、反射したレーザ光Lが光検出部16に確実に入射するように、レーザ光源15及び光検出部16の位置やプローブ3の取付け状態等を調整する。続いてオペレータは、入力部19aを介して、測定したい範囲を図2に示すように測定範囲Eとして指定する。この測定範囲Eは、例えば、100μm×100μmの範囲である。
【0048】
この初期設定が終了した後、測定を開始させる。
測定が開始されると、制御手段6は、まずXYZスキャナ12を駆動して探針3aを測定範囲Eの略中心に移動させた後、探針3aと試料Sとを接近させ、試料Sに対して探針3aを近接させる。次いで、近接させた探針3aを、図2に示す測定開始ポイントPまで移動させると共に、該ポイントPで探針3aを試料Sに対して微小な力で接触させる。
なお、探針3aを近接或いは接触させる際、探針3aと試料表面S1との距離に応じてプローブ3の撓み量が変位する。よって、この変位に基づいて、探針3aが近接或いは微小な力で接触したか否かを高精度に検出することができる。
【0049】
次に、制御手段6は、図3に示すように試料表面S1に水平なX方向に沿ってライン状にプローブ3を往復走査させる工程に移行する。まず、往復走査するにあたり、プローブ3を往路走査しながら試料表面S1の測定データを取得する取得工程を行う。即ち、この往路走査では、探針3aを接触させた状態で、プローブ3の変位が一定となるように探針3aと試料表面S1との距離を高さ制御しながらラインに沿って走査させて、測定データを取得する。
この往路走査の際、図4に示すように、試料表面S1の凹凸に応じてプローブ3が撓んで変位しようとするので、光検出部16に入射するレーザ光Lの位置が異なる。なお、図4、後述する図5、図6、図8及び図9においては、試料表面S1の凹凸を誇張した状態で図示している。すると光検出部16は、入射位置の変位に応じたDIF信号をプリアンプ17に出力する。出力されたDIF信号は、プリアンプ17によって増幅された後、Z電圧フィードバック回路18に送られる。
【0050】
Z電圧フィードバック回路18は、送られてきたDIF信号が常に一定となるように(つまり、プローブ3の変位が一定となるように)、XYZスキャナ制御部13によりXYZスキャナ12をZ方向に微小移動させてフィードバック制御を行う。これにより、プローブ3の変位が一定となるように高さ制御した状態で走査を行うことができる。また、制御部19は、Z電圧フィードバック回路18により上下させる信号に基づいて、試料表面S1の測定を行うことができる。その結果、このラインに沿った試料表面S1の形状情報(凹凸情報)や物性情報等を取得することができる。
【0051】
この往路走査を行った後、プローブ3を復路走査して、図3に示す当該ラインの走査開始ポイントPまで戻す走査工程を行う。この走査工程を行うにあたり、ますプローブ3の引き上げを行う。上述した往路走査では、試料表面S1の測定データを取得するために探針3aを試料表面S1に接触させた状態で走査させたが、この復路走査では図5に示すように、探針3aの位置を所定量Hだけ引き上げ、探針3aと試料表面S1との間隔を往路走査時よりも離間させる。
【0052】
この引き上げが終了した後、図6に示すように、プローブ3を復路走査させる。この際、探針3aの位置が往路走査時よりも所定量Hだけ引き上げられているので、図7に示すように、往路走査時の移動軌跡(L1)よりも試料表面S1から離間した移動軌跡(L2)で復路走査することができる。
【0053】
そして、復路走査によって走査開始ポイントPまでプローブ3が戻った時点で、1ラインの往復走査が終了する。続いて、図3に示すように、試料表面S1に平行で且つX方向に直交するY方向にプローブ3を移動させ、隣接するラインの走査開始ポイントPに位置をずらす。そして、上述した各工程を再度行って、隣接するラインをX方向に沿って同様に往復走査させ、往路走査時に測定データを取得する。このように、複数のラインを1ライン毎に順々に往復走査しながら測定データの取得を繰り返し、その後、各ラインの測定データを集約することで測定範囲E全体の表面情報を測定することができる。
なお、100μm×100μmの測定範囲Eの場合には、例えば、256本の複数のラインを1ライン毎に順々に走査することで、測定範囲Eの詳細な表面情報を測定することができる。
【0054】
特に本実施形態では、復路走査を行う際に、往路走査時の移動軌跡(L1)よりも試料表面S1から離間した移動軌跡(L2)で走査している。つまり、探針3aを試料表面S1から十分離間させた状態で走査することができる。従来は、1ラインを往復走査する際に、往路走査時の移動軌跡と復路走査時の移動軌跡とが同じであり、探針3aが試料表面S1に対して常に近接或いは接触している状態であった。そのため、探針3aに常にストレスがかかってしまい、先端が欠けたり変形したりする等のダメージが発生し易かった。しかしながら、本実施形態では上述したように、復路走査を行う場合に、探針3aを試料表面S1から十分離間させているので、凹凸が頻繁に繰り返される試料や凹凸の段差が大きい試料であっても、復路走査の段階で探針3aにストレスがかかることがない。
【0055】
従って、従来に比べて探針3aにかかるストレスを低減した状態で感度を低下させることなく測定を行うことができ、プローブ3のダメージを軽減することができる。よって、耐久性を向上することができると共に、長期的に安定且つ高精度な測定を行うことができる。
【0056】
なお、上記実施形態では、引き上げ工程で探針3aを所定量Hだけ引き上げた後、往路走査時の移動軌跡(L1)に対して略平行な軌跡を描くように復路走査したが、試料表面S1に対して略平行な直線の移動軌跡を描くように復路走査しても構わない。
【0057】
この場合には、まず制御手段6が、往路走査で取得した測定データに基づいて走査を行ったライン上の凹凸高さを認識し、図8に示すように認識した凹凸高さのうち最大高さよりも試料表面S1から離間するように探針3aを引き上げる。そして、復路走査を行う際に、図9及び図10に示すように、引き上げた高さを維持しながら、試料表面S1に対して略平行な直線の移動軌跡(L3)を描くようにプローブ3を走査させる。
【0058】
このように、確認された凹凸のうち最も高い凹凸よりも上方に探針3aを引き上げるので、当該ラインの走査開始ポイントPに向けて一直線に移動させながらプローブ3の位置を戻すことができる。従って、余分な経路を経ることなく、最も効率の良い最短の経路で復路走査することができるので、復路走査に費やす時間を短縮することができる。よって、測定時間の短縮化を図ることができる。
その結果、スループットを向上することができる。また、測定時間がかかってしまうと熱ドリフトの影響を受けて測定精度が低下する恐れがあるが、このような恐れもなく、高精度な測定を行うことができる。
【0059】
また、上記実施形態において、復路走査を行う際に、往路走査と同じ速度ではなく往路走査時よりも速い速度で走査を行っても構わない。こうすることで、復路走査に費やす時間をさらに短縮することができ、測定時間のさらなる短縮化を図ることができる。例えば、往路走査を1ライン2秒で行った場合には、往路より2倍速の1ライン1秒で復路走査を行う。こうすることで、復路走査に費やす時間を往路走査に費やす時間に比べて半分にすることができる。
従ってこの場合も同様に、スループットの向上化、測定精度の高精度化を図ることができる。特に、速い速度で復路走査することに加え、上述したように直線の移動軌跡(L3)を描くように走査させることを組み合わせることで、その作用効果をより顕著なものにすることができる。
【0060】
また、上記実施形態において、復路走査の際に、探針3aを当該ライン上における走査開始ポイントP(往路走査の出発点)に戻すのではなく、図11に示すように隣接するライン(次に測定を行うライン)の走査開始ポイントPに向かって斜めに走査しても構わない。これにより、次のラインの測定に速やかに移行することができ、やはり測定時間の短縮化を図ることができる。従ってこの場合も同様に、スループットの向上化、測定精度の高精度化を図ることができる。
なお、次の走査開始ポイントPに向かって斜めに走査する場合には、探針3aを引き上げる際、所定量Hにマージンとなる補正量をさらに加えた量だけ引き上げることが好ましい。つまり、先ほど往路走査を行ったラインと、次に測定を行う隣接するラインとの間における試料表面S1の凹凸高さは不明であるが、所定量Hに補正量を加えた量だけ引き上げることで、探針3aと試料表面S1とが接触して該探針3aがダメージを受けてしまうリスクを極力回避することができる。
【0061】
なお、上記補正量は、既に終了した往復走査によって得られた試料表面S1の凹凸高さの変化具合に基づいて決定しても構わないし、予め試料表面S1をプリスキャン(実際のイメージデータを測定する際に、最初に粗いデータ点数で測定するスキャン)して得られた試料表面S1の凹凸高さの変化具合に基づいて決定しても構わない。
こうすることで、先ほど往路走査を行ったラインと、次に測定を行う隣接するラインとの間における試料表面S1の凹凸高さを、ある程度事前に予測することができる。そのため、探針3aと試料表面S1とが接触してしまうリスクをより確実に回避し易い。
【0062】
なお、本発明の技術範囲は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の変更を加えることが可能である。
【0063】
例えば、上記実施形態では、往路走査時に試料表面S1の測定データを取得し、復路走査時に探針3aの引き上げを行ったが、これとは逆に、往路走査時に探針3aの引き上げを行い、復路走査時に測定データを取得するようにしても構わない。
この場合には、最初のラインを往路走査するときに、例えばプリスキャンによって得られた試料表面S1の凹凸情報に基づいて、探針3aの引き上げを行えば良い。また、次のラインを往路走査するときには、前のラインの復路走査時に得られた測定データに基づいて、探針3aの引き上げを行えば良い。
【0064】
例えば、上記実施形態では、試料S側を3次元方向に移動させるスキャン方式としたが、この場合に限られず、プローブ3側を3次元方向に移動させるようにしても構わない。また、プローブ3側をZ方向に移動させると共に、試料S側をXY方向に移動させるように構成しても構わないし、これとは逆に、プローブ3側をXY方向に移動させると共に、試料S側をZ方向に移動させるように構成しても構わない。いずれの場合であっても、スキャン方式が異なるだけで、上記実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0065】
また、上記実施形態では、ホルダ部10に形成された開口部10aを通してプローブ3にレーザ光Lを入射させると共に、反射したレーザ光Lを出射させる構成としたが、この場合に限られるものではない。例えば、ホルダ部10を光学的に透明な材料(例えば、ガラス)で形成して開口部10aをなくしても構わない。
また、上記実施形態では、変位測定手段5が光てこ方式によりプローブ3の変位検出を行ったが、光てこ方式に限定されるものではない、例えば、プローブ3自身に変位検出機能(例えば、ピエゾ抵抗素子等)を設けた自己検知方式を採用しても構わない。
【0066】
また、上記実施形態では、探針3aを振動させずに測定を行った場合を例に挙げて説明したが、斜面ブロック11とプローブ3を片持ち状態で支持している本体部3bとの間に、プローブ3を所定の周波数で振動させるピエゾ素子等の加振源を設けても構わない。
こうすることで、例えばSPMの測定モードの1つである振動モードAFMで測定を行うことができる。なお、加振源を設ける場合には、プリアンプ17とZ電圧フィードバック回路18との間に、プリアンプ17で増幅されたDIF信号を直流変換してZ電圧フィードバック回路18に出力する交流−直流変換回路を設ければ良い。
【0067】
なお、振動モードAFMで測定を行う場合には、初めに加振電源から加振源に対して信号を出力して、加振源を所定の振幅及び周波数で振動させる。これにより、プローブ3が所定の周波数で振動する。そして、この状態で走査を行う。なお、この場合には、プローブ3の振動状態(プローブ3の変位)が一定となるように試料表面S1とプローブ3との距離をフィードバック制御すれば良い。その結果、振動モードAFMで試料Sの測定を行うことができる。
このように、振動モードAFMで測定を行う場合であっても、本発明に係る走査型プローブ顕微鏡及び表面情報測定方法を適用することができ、上述した実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明に係る走査型プローブ顕微鏡の一実施形態を示す構成図である。
【図2】図1に示す走査型プローブ顕微鏡のステージ上に固定されている試料の拡大斜視図である。
【図3】図2に示す試料上に設定した測定範囲を走査する場合のプローブの軌跡を示した図である。
【図4】図1に示す走査型プローブ顕微鏡により試料の表面情報を測定する際の一工程図であって、プローブを往路走査している状態の図である。
【図5】図1に示す走査型プローブ顕微鏡により試料の表面情報を測定する際の一工程図であって、図4に示す状態の後、プローブを引き上げている状態の図である。
【図6】図1に示す走査型プローブ顕微鏡により試料の表面情報を測定する際の一工程図であって、図5に示す状態の後、プローブを復路走査している状態の図である。
【図7】プローブを往路走査したときの移動軌跡と、復路走査したときの移動軌跡とを示した図である。
【図8】図1に示す走査型プローブ顕微鏡により試料の表面情報を測定する際の一工程図であって、図4に示す状態の後、プローブを引き上げる際に、試料表面の凹凸高さのうち最大高さよりも上方に引き上げた状態の図である。
【図9】図1に示す走査型プローブ顕微鏡により試料の表面情報を測定する際の一工程図であって、図8に示す状態の後、引き上げた高さを維持しながら、プローブを直線状に復路走査している状態の図である。
【図10】プローブを往路走査したときの移動軌跡と、直線状に復路走査したときの移動軌跡とを示した図である。
【図11】試料上に設定した測定範囲を走査する場合のプローブの軌跡を示した図であって、隣接するラインの走査開始点に向けて復路走査しながら走査を行う場合の軌跡を示す図である。
【図12】従来の方法により、試料の表面情報を測定する場合の一工程図であって、プローブを往路走査している状態の図である。
【図13】従来の方法により、試料の表面情報を測定する場合の一工程図であって、プローブを復路走査している状態の図である。
【図14】従来の方法により、プローブを往路走査したときの移動軌跡と、復路走査したときの移動軌跡とを示した図である。
【符号の説明】
【0069】
L1 往路時の移動軌跡
L2、L3 復路時の移動軌跡
P 走査開始ポイント(走査開始点)
S 試料
S1 試料表面
1 走査型プローブ顕微鏡
2 ステージ(試料台)
3 プローブ
3a 探針
4 移動手段
5 変位測定手段
6 制御手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料表面上の隣接する複数のラインを1ライン毎順々に往復走査して、試料の表面情報を測定する走査型プローブ顕微鏡であって、
前記試料を固定する試料台と、
探針を先端に有するプローブと、
前記試料と前記探針とを、前記試料表面に平行な方向及び前記試料表面に垂直な方向に相対的に移動させる移動手段と、
前記プローブの変位を測定する変位測定手段と、
前記複数のラインを1ライン毎順々に往復走査するように前記移動手段を制御すると共に、該往復走査時に前記変位測定手段による測定結果に基づいて前記試料表面の測定データを取得する制御手段と、を備え、
該制御手段は、往路走査又は復路走査のうち一方の走査時に、前記探針を前記試料表面に近接或いは接触させた状態で前記プローブの変位が一定となるように前記探針と前記試料表面との距離を制御しながら走査させて前記測定データを取得させると共に、他方の走査時に、前記探針を所定量引き上げて一方の走査時の移動軌跡よりも前記試料表面から離間した移動軌跡で走査させることを特徴とする走査型プローブ顕微鏡。
【請求項2】
請求項1に記載の走査型プローブ顕微鏡において、
前記制御手段は、前記他方の走査の際に、前記一方の走査時よりも速い走査速度で走査させることを特徴とする走査型プローブ顕微鏡。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の走査型プローブ顕微鏡において、
前記一方の走査が前記往路走査、前記他方の走査が前記復路走査とされ、
前記制御手段は、前記復路走査の際に、前記測定データから前記試料表面の凹凸高さを認識した後、認識した凹凸高さのうち最大高さよりも前記試料表面から離間するように前記探針を引き上げると共に、引き上げた高さを維持しながら前記試料表面に対して略平行な直線の移動軌跡を描くように走査させることを特徴とする走査型プローブ顕微鏡。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の走査型プローブ顕微鏡において、
前記一方の走査が前記往路走査、前記他方の走査が前記復路走査とされ、
前記制御手段は、前記復路走査の際に、隣接するラインの走査開始点に向けて前記探針を走査させることを特徴とする走査型プローブ顕微鏡。
【請求項5】
請求項4に記載の走査型プローブ顕微鏡において、
前記制御手段は、前記所定量に予め決められた補正量を加算した量だけ前記探針を引き上げることを特徴とする走査型プローブ顕微鏡。
【請求項6】
請求項5に記載の走査型プローブ顕微鏡において、
前記補正量は、既に終了した往復走査によって得られた前記試料表面の凹凸高さの変化具合に基づいて決定された量であることを特徴とする走査型プローブ顕微鏡。
【請求項7】
請求項5に記載の走査型プローブ顕微鏡において、
前記補正量は、予め前記試料表面をプリスキャンして得られた試料表面の凹凸高さの変化具合に基づいて決定された量であることを特徴とする走査型プローブ顕微鏡。
【請求項8】
先端に探針を有するプローブにより試料表面上の隣接する複数のラインを1ライン毎順々に往復走査して、試料の表面情報を測定する表面情報測定方法であって、
前記往復走査における往路走査又は復路走査のうち一方の走査時に、前記探針を前記試料表面に近接或いは接触させた状態で前記プローブの変位が一定となるように前記探針と前記試料表面との距離を制御しながら走査させて、試料表面の測定データを取得する取得工程と、
前記往復走査における往路走査又は復路走査のうち他方の走査時に、前記探針を所定量引き上げた後、前記一方の走査時の移動軌跡よりも前記試料表面から離間した移動軌跡で走査させる走査工程と、を備えていることを特徴とする表面情報測定方法。
【請求項9】
請求項8に記載の表面情報測定方法において、
前記他方の走査の際に、前記一方の走査時よりも速い走査速度で走査させることを特徴とする表面情報測定方法。
【請求項10】
請求項8又は9に記載の表面情報測定方法において、
前記一方の走査が前記往路走査、前記他方の走査が復路走査とされ、
前記走査工程の際に、前記測定データから前記試料表面の凹凸高さを認識した後、認識した凹凸高さのうち最大高さよりも試料表面から離間するように前記探針を引き上げ、引き上げた高さを維持しながら前記試料表面に対して略平行な直線の移動軌跡を描くように走査させることを特徴とする表面情報測定方法。
【請求項11】
請求項8又は9に記載の表面情報測定方法において、
前記一方の走査が前記往路走査、前記他方の走査が復路走査とされ、
前記走査工程の際に、隣接するラインの走査開始点に向けて前記探針を走査させることを特徴とする表面情報測定方法。
【請求項12】
請求項11に記載の表面情報測定方法において、
前記走査工程の際に、前記所定量に予め決められた補正量を加算した量だけ前記探針を引き上げることを特徴とする表面情報測定方法。
【請求項13】
請求項12に記載の表面情報測定方法において、
前記補正量は、既に終了した往復走査によって得られた前記試料表面の凹凸高さの変化具合に基づいて決定された量であることを特徴とする表面情報測定方法。
【請求項14】
請求項12に記載の表面情報測定方法において、
前記補正量は、予め前記試料表面をプリスキャンして得られた試料表面の凹凸高さの変化具合に基づいて決定された量であることを特徴とする表面情報測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2009−74987(P2009−74987A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−245325(P2007−245325)
【出願日】平成19年9月21日(2007.9.21)
【出願人】(503460323)エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社 (330)