説明

走行残量表示装置

【課題】タクシー等の利用者が、残量が少なくなったことを直感的に知って降車時期を判断することができるようにすることにある。
【解決手段】走行条件に応じて走行距離および走行時間の何れかを選択し、その選択した走行距離または走行時間に基づき料金を加算する料金計算装置において、現在の走行距離および走行時間の、次に料金を加算する時間に対する残り時間と、次に料金を加算する距離に対する残り距離とを求める残量計算手段4と、前記残り時間を直交座標系の縦軸および横軸の何れか一方に対応させるとともに前記残り距離を他方に対応させて、それら残り距離と残り時間とをそれらの積である面積で随時表示する残量表示手段5と、を具えることを特徴とする、走行残量表示装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、タクシーの料金メータ等の、走行条件に応じて走行距離および走行時間の何れかを選択し、その選択した走行距離または走行時間に基づき料金を加算する料金計算装置に用いて好適な、走行残量表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のタクシーの料金メータは、時間と距離の計測値を併用するというものの、基本的には乗車地からの走行距離の計測値を使用し、法定による初乗り距離運賃と加算距離運賃とを合計した距離運賃に、10km/h以下の低速になるとその低速での走行時間に応じた加算距離運賃を加算して、料金を算出している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このため、上記従来のタクシーの料金メータは、次に料金を加算するまでの残り距離や残り時間が走行条件によって変動することから、その残り距離や残り時間を積極的には表示していなかったので、タクシーの利用者は残り距離や残り時間を知ることができないという不都合を強いられていた。一方、残り距離と残り時間とをそれぞれ表示した場合、例えば走行距離が先行して料金を加算した場合など、まだ残り時間があるという理由でトラブルが生じる可能性があった。
【0004】
さらに、残り距離と残り時間とをそれぞれ表示した場合、初乗りと追加走行とで走行可能な距離および時間が異なる点も表示の混乱を招く原因となる可能性があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、この発明の走行残量表示装置は、走行条件に応じて走行距離および走行時間の何れかを選択し、その選択した走行距離または走行時間に基づき料金を加算する料金計算装置において、現在の走行距離および走行時間の、次に料金を加算する時間に対する残り時間と、次に料金を加算する距離に対する残り距離とを求める残量計算手段と、前記残り時間を直交座標系の縦軸および横軸の何れか一方に対応させるとともに前記残り距離を他方に対応させて、それら残り距離と残り時間とをそれらの積である面積で随時表示する残量表示手段と、を具えることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0006】
かかるこの発明の走行残量表示装置にあっては、残量計算手段が、現在の走行距離および走行時間の、次に料金を加算する時間に対する残り時間と、次に料金を加算する距離に対する残り距離とを求め、残量表示手段が、前記残り時間を直交座標系の縦軸および横軸の何れか一方に対応させるとともに前記残り距離を他方に対応させて、それら残り距離と残り時間とをそれらの積である面積で随時表示する。
【0007】
従って、この発明の走行残量表示装置によれば、残り距離が少なくなっても残り時間が少なくなっても残量の表示面積がゼロに近くなることから、タクシー等の利用者が、残量が少なくなったことを直感的に知って降車時期を判断することができるので、安価にタクシー等を利用することができ、料金をめぐるトラブルも回避することができる。
【0008】
なお、この発明の走行残量表示装置においては、前記残量表示手段が、前記残り時間および前記残り距離の少なくとも一方の表示単位を、残り時間の場合は単位時間に対する割合またはパーセント、残り距離の場合は単位距離に対する割合またはパーセントとしていても良く、このようにすれば、初乗りと追加走行とで走行可能な距離および時間が異なっても、表示が割合またはパーセントなので、タクシー等の利用者が、残量が少なくなったことを容易に知って降車時期を判断することができる。
【0009】
また、この発明の走行残量表示装置においては、前記残量表示手段は、前記残り時間および前記残り距離の何れか一方が1割または10パーセントを切った後は、表示色を変更するとともに最大目盛りを1割または10パーセントに変更するものであっても良く、このように拡大表示すれば、タクシー等の利用者が、残量が少なくなったことをより容易に知って降車時期を判断することができる。
【0010】
さらにこの発明の走行残量表示装置においては、前記残量表示手段は、液晶等のディスプレイ装置であっても良いが、前記残り時間および前記残り距離の前記面積での表示を、発光ダイオードを面状に配置したドットマトリックスで行うものであっても良く、このようにすれば、残り時間および残り距離の面積での表示を安価にかつ見易く行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を実施例によって、図面に基づき詳細に説明する。ここに、図1は、この発明の走行残量表示装置の一実施例の構成を機能ブロックで示すブロック線図、図2(a),(b),(c)は、その実施例の走行残量表示装置の表示部の一例をそれぞれ異なる状態で示す説明図、そして図3(a),(b)は、上記実施例の走行残量表示装置の表示部の他の一例をそれぞれ異なる状態で示す説明図である。
【0012】
この実施例の走行残量表示装置は、タクシーの図示しない料金メータに外付けまたは内蔵されて、タクシー車両の運転席脇等にタクシー利用者から視認可能なように設けられるもので、図1に示すように、パルスカウンタ1と、タイマ2と、タリフデータメモリ3と、中央処理ユニット(CPU)4と、残量表示部5とを具えている。
【0013】
ここで、パルスカウンタ1は、タクシー車両が所定距離走行する毎に発生してそのタクシー車両から料金メータに供給される走行パルスの数をCPU4からの指示に従って計測する。またタイマ2は、CPU4からの指示に従って経過時間を計測する。さらにタリフデータメモリ3は、料金加算までの初乗り距離および追加走行可能距離並びに料金加算までの走行可能時間、距離計測モードと時間計測モードとの切替条件等の料金計算基準データを予め記憶していて、CPU4に供給する。
【0014】
そしてCPU4は、料金メータから賃走データおよび支払いデータを受信し、賃走データを受信した時は残量計算を開始して、パルスカウンタ1に走行パルスの計数を開始させ、計数開始から現在までの走行パルス数から、タクシー利用者の乗車場所から現在の場所までの走行距離を計算し、その走行距離が上記初乗り距離を越えるまではその走行距離を初乗り距離から引いて残り距離を求め、その残り距離を初乗り距離で割った後100を乗じて、残り距離を初乗り距離に対するパーセントの単位で求めるという処理を短時間毎に繰返し実行する。またその走行距離が初乗り距離を越えた後はその走行距離を初乗り距離に上記追加走行可能距離を加算した距離から引いて残り距離を求め、その残り距離を追加走行可能距離で割った後100を乗じて残り距離を追加走行可能距離に対するパーセントの単位で求めるという処理を短時間毎に繰返し実行する。
【0015】
さらにCPU4は、パルスカウンタ1が出力する走行パルス数の単位時間当たりの数からタクシー車両の走行速度を求め、その走行速度が所定速度、例えば10km/h以下の低速になると、その低速での走行時間を上記走行可能時間から引いて残り時間を求め、その残り時間を走行可能時間で割った後100を乗じて、残り時間を走行可能時間に対するパーセントの単位で求めるという処理を短時間毎に繰返し実行する。
【0016】
このようにして求めた現在の残り距離および残り時間をCPU4は残量表示部5に随時表示させ、残量表示部5は、それらの残り距離および残り時間を、図2(a)〜(c)に示すように、残り時間を縦軸、残り距離を横軸として、直交座標系の面積で表示する。図2に示す例では残量表示部5は、縦横10個ずつ合計100個の、各々複数色発行可能な発光ダイオード(LED)6によってドットマトリックスを構成している。
【0017】
例えば図2(a)は、残り時間80%かつ残り距離90%の場合を示し、ここでは例えば残り時間および残り距離の部分の8×9=72個のLED6は緑色で発光させ、上側および右側の消費部分の28個のLED6は白色で発光させている。また図2(b)は、その後に渋滞等で時間だけ消費して残り時間30%かつ残り距離90%となった場合を示し、ここでは例えば残り時間および残り距離の部分の3×9=27個のLED6は緑色で発光させ、上側および右側の消費部分の73個のLED6は白色で発光させている。
【0018】
そして図2(c)は、その後に渋滞等でさらに時間だけ消費して残り時間7%かつ残り距離90%となった場合を示しており、ここでは残り時間および残り距離の何れか一方が10%以下になったので、残り時間および残り距離の最大目盛りを10パーセントに変更して拡大表示するとともに、残り時間および残り距離を表示するLED6の色を例えば赤色に変えて、例えば残り時間および残り距離の部分の7×10=70個のLED6を赤色で発光させ、上側および右側の消費部分の30個のLED6は白色で発光させている。
【0019】
また図3に示す例では、残量表示部5は、残り距離および残り時間を、液晶ディスプレイ装置、プラズマディスプレイ装置、有機ELディスプレイ装置あるいは電子ペーパ等の表示色変更可能な二次元表示装置7により、残り時間を縦軸、残り距離を横軸として、直交座標系の面積でグラフィック表示しても良い。
【0020】
例えば図3(a)は、残り時間80%かつ残り距離90%の場合を示し、ここでは例えば残り時間の最大目盛りの8割×残り距離の最大目盛りの9割の部分を緑色で表示し、上側および右側の消費部分は白色で表示している。また図3(b)は、その後に残り時間50%かつ残り距離30%となった場合を示し、ここでは例えば残り時間の最大目盛りの5割×残り距離の最大目盛りの3割の部分を緑色で表示し、上側および右側の消費部分は白色で表示している。
【0021】
図2,3の何れの場合も、さらに時間が経過するか走行距離が増すかして、残量表示部5が緑色で表示する残量面積がなくなると、料金メータは追加料金を加算し、CPU4は残量表示部5に表示させる残量を残り時間100%、残り距離100%にリセットする。また、料金メータから支払いデータを受信した時は、CPU4は残量計算を終了して残量を同様にリセットする。
【0022】
従って、この実施例において、CPU4は残量計算手段に相当し、残量表示部5は残量表示手段に相当する。そしてこの実施例の走行残量表示装置によれば、CPU4が、現在の走行距離および走行時間の、次に料金を加算する時間に対する残り時間と、次に料金を加算する距離に対する残り距離とを求め、残量表示部5が、上記残り時間を直交座標系の縦軸に対応させるとともに上記残り距離を横軸に対応させて、それら残り距離と残り時間とをそれらの積である面積で随時表示するから、残り距離が少なくなっても残り時間が少なくなっても残量の表示面積がゼロに近くなることから、タクシー等の利用者が、残量が少なくなったことを直感的に知って降車時期を判断することができるので、安価にタクシー等を利用することができ、料金をめぐるトラブルも回避することができる。
【0023】
しかもこの実施例の走行残量表示装置によれば、残量表示部5が、残り時間および残り距離の表示単位を、残り時間の場合は単位時間に対するパーセント、残り距離の場合は単位距離に対するパーセントとしていることから、初乗りと追加走行とで走行可能な距離および時間が異なっても、表示がパーセントなので、タクシー等の利用者が、残量が少なくなったことを容易に知って降車時期を判断することができる。
【0024】
また、この実施例の走行残量表示装置によれば、残量表示部5が、残り時間および残り距離の何れか一方が10パーセントを切った後は、表示色を緑色から赤色に変更するとともに最大目盛りを10パーセントに変更して拡大表示するので、タクシー等の利用者が、残量が少なくなったことをより容易に知って降車時期を判断することができる。
【0025】
そしてこの実施例の走行残量表示装置によれば、残量表示部5が、図2の例では残り時間および残り距離の面積での表示を、発光ダイオード6を面状に配置したドットマトリックスで行っているので、残り時間および残り距離の面積での表示を安価にかつ見易く行うことができる。
【0026】
以上、図示例に基づき説明したが、この発明は上述の例に限定されるものでなく、特許請求の範囲の記載範囲内で適宜変更でき、例えば、残量表示部5は、残り距離を縦軸、残り時間を横軸として残量表示しても良く、また残量表示部5は、残り時間および残り距離の表示単位をパーセントでなく割(=10%)としても良く、あるいは元の分およびmとしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0027】
かくしてこの発明の走行残量表示装置によれば、残り距離が少なくなっても残り時間が少なくなっても残量の表示面積がゼロに近くなることから、タクシー等の利用者が、残量が少なくなったことを直感的に知って降車時期を判断することができるので、安価にタクシー等を利用することができ、料金をめぐるトラブルも回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】この発明の走行残量表示装置の一実施例の構成を機能ブロックで示すブロック線図である。
【図2】(a),(b),(c)は、上記実施例の走行残量表示装置の表示部の一例をそれぞれ異なる状態で示す説明図である。
【図3】(a),(b)は、上記実施例の走行残量表示装置の表示部の他の一例をそれぞれ異なる状態で示す説明図である。
【符号の説明】
【0029】
1 パルスカウンタ
2 タイマ
3 タリフデータメモリ
4 中央処理ユニット(CPU)
5 残量表示部
6 発光ダイオード(LED)
7 二次元表示装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行条件に応じて走行距離および走行時間の何れかを選択し、その選択した走行距離または走行時間に基づき料金を加算する料金計算装置において、
現在の走行距離および走行時間の、次に料金を加算する時間に対する残り時間と、次に料金を加算する距離に対する残り距離とを求める残量計算手段と、
前記残り時間を直交座標系の縦軸および横軸の何れか一方に対応させるとともに前記残り距離を他方に対応させて、それら残り距離と残り時間とをそれらの積である面積で随時表示する残量表示手段と、
を具えることを特徴とする、走行残量表示装置。
【請求項2】
前記残量表示手段は、前記残り時間および前記残り距離の少なくとも一方の表示単位を、残り時間の場合は単位時間に対する割合またはパーセント、残り距離の場合は単位距離に対する割合またはパーセントとしていることを特徴とする、請求項1記載の走行残量表示装置。
【請求項3】
前記残量表示手段は、前記残り時間および前記残り距離の何れか一方が1割または10パーセントを切った後は、表示色を変更するとともに最大目盛りを1割または10パーセントに変更することを特徴とする、請求項2記載の走行残量表示装置。
【請求項4】
前記残量表示手段は、前記残り時間および前記残り距離の前記面積での表示を、発光ダイオードを面状に配置したドットマトリックスで行うことを特徴とする、請求項1から3までの何れか1項記載の走行残量表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−86028(P2010−86028A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−251110(P2008−251110)
【出願日】平成20年9月29日(2008.9.29)
【出願人】(592059448)原田電子工業株式会社 (20)
【Fターム(参考)】