説明

走行路形状推定装置

【課題】クロソイドパラメータを所望の精度で算出し、且つ算出されるクロソイドパラメータの信頼性の低下を抑制することが可能な走行路形状推定装置の提供をする。
【解決手段】走行路形状推定装置は、カメラ3とヨーレイトセンサ4と車速センサ5とECU6と表示器7とを備える。ヨーレイトωと車速Vとから算出される車両の走行位置における曲率ρを用いてクロソイドパラメータAを算出し、カメラ3によって撮像された画像情報から算出される車両の走行位置よりも所定距離L前方の前方位置における曲率ρを用いてクロソイドパラメータAを算出する。更に、ρと曲率ρと所定距離Lとを用いてクロソイドパラメータAIYを算出し、A、A及びAIYに重み係数w、w及びwをそれぞれ乗算して合算することによってクロソイドパラメータAを算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の走行路形状の推定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2001−010524号公報には、車両のCCDカメラによって撮像された車両前方の走行路を含む画像から走行路区分線に相当する特徴点列群を抽出し、抽出した特徴点列群から走行路の曲率を推定し、曲率の時系列データよりクロソイドパラメータを算出する走行車両の挙動予測装置が記載されている。また、特開2010−280378号公報には、車両のヨーレイトセンサ及びスピードセンサの測定値から計算される曲率によってクロソイドパラメータを見積もるシステムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−010524号公報
【特許文献2】特開2010−280378号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1のように、カメラで撮像した画像から走行路の曲率を検出する場合は、曲率の検出精度が比較的高く、クロソイドパラメータの算出の精度も高くなる。しかし、走行路の状態や外部環境等の撮像条件が悪い場合、白線等の走行路の特徴点抽出が困難となり、曲率の検出が困難又は不能となり、算出されるクロソイドパラメータの信頼性が低下するおそれがある。一方、上記特許文献2のように、ヨーレイトから走行路の曲率を検出する場合は、ヨーレイトの検出が走行路の状態や外部環境等の影響を受けにくいので、算出されるクロソイドパラメータの精度も所定の範囲内に維持される。しかし、ヨーレイトセンサの測定値自体のノイズが大きいため、画像から曲率を検出する場合に比べて、検出される曲率の精度が低く、算出されるクロソイドパラメータの精度も低い。
【0005】
そこで本発明は、クロソイドパラメータを所望の精度で算出し、且つ算出されるクロソイドパラメータの信頼性の低下を抑制することが可能な走行路形状推定装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成すべく、本発明の走行路形状推定装置は、撮像手段と、ヨーレイト検出手段と、車速検出手段と、第1の走行路曲率算出手段と、第2の走行路曲率算出手段と、走行路特徴量算出手段とを備える。撮像手段は、車両の前方の走行路を撮像してその画像情報を出力する。ヨーレイト検出手段は、車両のヨーレイトを検出する。車速検出手段は、ヨーレイト検出手段と同期して車両の車速を検出する。第1の走行路曲率算出手段は、撮像手段の撮像時の車両の走行位置よりも所定距離前方の前方位置における走行路の曲率を、撮像手段が撮像した画像情報に基づいて第1の曲率として算出する。第2の走行路曲率算出手段は、ヨーレイト検出手段及び車速検出手段の検出時の車両の走行位置における走行路の曲率を、ヨーレイト検出手段が検出したヨーレイトと車速検出手段が検出した車速とに基づいて第2の曲率として算出する。走行路特徴量算出手段は、第1の曲率と第2の曲率とに基づいて、走行路の屈曲度合いを示すクロソイドパラメータを算出する。
【0007】
上記走行路形状推定装置は、車両の走行距離を検出する距離検出手段を備えてもよい。また、撮像手段は、第1検出時及び第2検出時にそれぞれ走行路を撮像してその画像情報を出力し、ヨーレイト検出手段は、第3検出時及び第4検出時にそれぞれヨーレイトを検出し、車速検出手段は、第3検出時及び第4検出時にそれぞれ車速を検出し、距離検出手段は、第1検出時から第2検出時までの車両の第1走行距離と、第3検出時から第4検出時までの車両の第2走行距離とを検出してもよい。この場合、第1の走行路曲率算出手段は、第1検出時の車両の走行位置よりも所定距離前方の第1前方位置と第2検出時の車両の走行位置よりも所定距離前方の第2前方位置との双方における第1の曲率を、撮像手段が第1検出時と第2検出時とにそれぞれ撮像した画像情報に基づいて算出する。第2の走行路曲率算出手段は、第3検出時の車両の第3走行位置と第4検出時の車両の第4走行位置との双方における第2の曲率を、ヨーレイト検出手段と速度検出手段とが第3検出時と第4検出時とにそれぞれ検出したヨーレイトと車速とに基づいて算出する。走行路特徴量算出手段は、第1前方位置と第2前方位置との双方における第1の曲率と第1走行距離とを用いて第1の検出クロソイドパラメータを算出し、第3走行位置と第4走行位置との双方における第2の曲率と第2走行距離とを用いて第2の検出クロソイドパラメータを算出し、第1の検出クロソイドパラメータと第2の検出クロソイドパラメータとを所定の割合で合算してクロソイドパラメータを算出する。
【0008】
上記構成では、画像情報に基づいて第1の曲率が算出され、第1の曲率と第1走行距離とを用いて第1の検出クロソイドパラメータが算出される。また、ヨーレイトと車速とに基づいて第2の曲率が算出され、第2の曲率と第2走行距離とを用いて第2の検出クロソイドパラメータが算出され、第1の検出クロソイドパラメータと第2の検出クロソイドパラメータとを所定の割合で合算することによってクロソイドパラメータが算出される。
【0009】
ヨーレイトに基づく第2の曲率は、ヨーレイトセンサのノイズが大きいため算出される曲率の精度が低く、第2の曲率を用いて算出される第2の検出クロソイドパラメータの精度も低くなる。これに対し、画像情報に基づく第1の曲率は、曲率の検出精度が比較的高く、第1の曲率を用いて算出される第1の検出クロソイドパラメータの精度も比較的高くなる。クロソイドパラメータは、第1の検出クロソイドパラメータと第2の検出クロソイドパラメータとを所定の割合で合算することによって算出されるので、両者の合算割合を適宜設定することによって、所望の精度を有するクロソイドパラメータを得ることが可能となる。
【0010】
また、走行路の状態や外部環境等の撮像環境が悪い場合には第1の曲率の検出が困難となり、算出される第1の検出クロソイドパラメータの精度が極端に低下し、信頼性が低下するおそれがある。これに対し、第2の曲率は、走行路の状態や外部環境等の影響を受け難いので、算出される第2の検出クロソイドパラメータの精度が極端に低下せず、信頼性が維持される。クロソイドパラメータは、第1の検出クロソイドパラメータと第2の検出クロソイドパラメータとを所定の割合で合算することによって算出されるので、両者の合算割合を適宜設定することによって、算出されるクロソイドパラメータの信頼性の低下を抑制することができる。
【0011】
このように、第1の検出クロソイドパラメータと第2の検出クロソイドパラメータとを所定の割合で合算することによって、クロソイドパラメータを所望の精度で算出し、且つ算出されるクロソイドパラメータの信頼性の低下を抑制することが可能となる。
【0012】
また、上記所定の割合を、例えば車両の販売及び使用される地域の環境などにとって好適な割合に任意に設定することができる。
【0013】
なお、上記所定の割合は、固定的に設定されてもよく、変更可能に設定されてもよい。所定の割合を固定的に設定する場合は、算出されるクロソイドパラメータの精度と信頼性低下の抑制とのバランスを考慮し、実験やシミュレーションなどによって好適な割合を求めてもよい。また、所定の割合を変更可能に設定する場合は、走行路の状態や外部環境等に応じて所定の割合を変更してもよい。例えば、画像の撮像環境が良い場合には第1の検出クロソイドパラメータの割合が大きく、画像の撮像環境が悪い場合には第2の検出クロソイドパラメータの割合が大きくなるように合算の割合を変更することによって、画像の撮像環境が良い場合のクロソイドパラメータの精度の向上と、画像の撮像環境が悪い場合のクロソイドパラメータの信頼性の維持とを両立して図ることができる。
【0014】
また、撮像手段は、第1検出時に走行路を撮像してその画像情報を出力し、ヨーレイト検出手段は、第1検出時にヨーレイトを検出し、車速検出手段は、第1検出時に車速を検出してもよい。この場合、第1の走行路曲率算出手段は、撮像手段が第1検出時に撮像した画像情報に基づいて第1の曲率を算出する。第2の走行路曲率算出手段は、ヨーレイト検出手段と車速検出手段とが第1検出時にそれぞれ検出したヨーレイトと車速とに基づいて第2の曲率を算出する。走行路特徴量算出手段は、第1の曲率と第2の曲率と所定距離とを用いてクロソイドパラメータを算出する。
【0015】
上記構成では、第1検出時に撮像された画像情報に基づいて算出された前方位置おける第1の曲率と、第1検出時に検出されたヨーレイトと車速とに基づいて算出された走行位置における第2の曲率と、所定距離とを用いてクロソイドパラメータが算出される。
【0016】
第2の曲率は、ヨーレイトセンサのノイズが大きいため算出される曲率の精度が低い。これに対し、第1の曲率は、画像の撮像環境が悪くない限り算出される曲率の精度が比較的高い。従って、第2の曲率の精度が第1の曲率の精度によって補われ、クロソイドパラメータが所望の精度で算出される。また、画像の撮像環境が悪い場合は第1の曲率の検出が困難となり、信頼性が極端に低下するおそれがある。これに対し、第2の曲率は、走行路の状態や外部環境等の影響を受け難いので信頼性が維持される。従って、画像の撮像環境が悪い場合であっても、第1の曲率の信頼性の低下が第2の曲率の信頼性によって補われ、算出されるクロソイドパラメータの信頼性の低下が抑制される。このように、クロソイドパラメータは第1の曲率と第2の曲率とから算出されるので、算出されるクロソイドパラメータの精度及び信頼性には、第1の曲率及び第2の曲率のそれぞれの精度及び信頼性が反映され、クロソイドパラメータを所望の精度で算出し、且つ算出されるクロソイドパラメータの信頼性の低下を抑制することが可能となる。
【0017】
また、第1の曲率の算出に用いられる画像情報と、第2の曲率の算出に用いられるヨーレイト及び車速は、ともに第1の検出時に撮像及び検出されるので、クロソイドパラメータを早期に算出することが可能となる。
【0018】
また、車両の走行位置と前方位置との間の距離である所定距離を固定的に設定することができるので、所定距離の検出精度がクロソイドパラメータに与える影響を排除することができ、算出されるクロソイドパラメータの精度が安定する。
【0019】
また、上記走行路形状推定装置は、車両の走行距離を検出する距離検出手段を備えもよい。また、撮像手段は、第1検出時及び第2検出時にそれぞれ走行路を撮像してその画像情報を出力し、ヨーレイト検出手段は、第1検出時及び第2検出時にそれぞれヨーレイトを検出し、車速検出手段は、第1検出時及び第2検出時にそれぞれ車速を検出し、距離検出手段は、第1検出時から第2検出時までの車両の走行距離を検出してもよい。この場合、第1の走行路曲率算出手段は、第1検出時の車両の走行位置よりも所定距離前方の第1前方位置と第2検出時の車両の走行位置よりも所定距離前方の第2前方位置との双方における第1の曲率を、撮像手段が第1検出時と第2検出時とにそれぞれ撮像した画像情報に基づいて算出する。第2の走行路曲率算出手段は、第1検出時の車両の第1走行位置と第2検出時の車両の第2走行位置との双方における第2の曲率を、ヨーレイト検出手段と速度検出手段とが第1検出時と第2検出時とにそれぞれ検出したヨーレイトと車速とに基づいて算出する。走行路特徴量算出手段は、第1前方位置と第2前方位置との双方における第1の曲率と走行距離とを用いて第1の検出クロソイドパラメータを算出し、第1走行位置と第2走行位置との双方における第2の曲率と走行距離とを用いて第2の検出クロソイドパラメータを算出し、第2前方位置における第1の曲率と第2走行位置における第2の曲率と所定距離とを用いて第3の検出クロソイドパラメータを算出し、第1の検出クロソイドパラメータと第2の検出クロソイドパラメータと第3の検出クロソイドパラメータとを所定の割合で合算してクロソイドパラメータを算出する。
【0020】
上記構成では、画像情報に基づく第1検出時及び第2検出時の第1の曲率と走行距離とを用いて第1の検出クロソイドパラメータが算出され、ヨーレイトと車速とに基づく第1検出時及び第2検出時の第2の曲率と走行距離とを用いて第2の検出クロソイドパラメータが算出される。また、第2検出時の第1の曲率と第2検出時の第2の曲率と所定距離とを用いて第3の検出クロソイドパラメータが算出され、第1から第3の検出クロソイドパラメータを所定の割合で合算してクロソイドパラメータが算出される。
【0021】
第2の曲率は、ヨーレイトセンサのノイズが大きいため曲率の精度が低く、算出される第2の検出クロソイドパラメータの精度も低くなる。これに対し、第1の曲率は、画像の撮像環境が悪くない限り曲率の精度が比較的高く、算出される第1の検出クロソイドパラメータの精度も比較的高くなる。また、第3の検出クロソイドパラメータは、第2の曲率の精度が第1の曲率の精度によって補われ、所望の精度で算出される。クロソイドパラメータは、第1から第3の検出クロサイトパラメータを所定の割合で合算することによって算出されるので、3者の合算割合を適宜設定することによって、所望の精度を有するクロソイドパラメータを得ることが可能になる。また、画像の撮像環境が悪い場合には第1の曲率の検出が困難となり、算出される第1の検出クロソイドパラメータの精度が極端に低下し、信頼性が低下するおそれがある。これに対し、第2の曲率は、走行路の状態や外部環境等の影響を受け難いので、算出される第2の検出クロソイドパラメータの精度が極端に低下せず、信頼性が維持される。また、第3の検出クロソイドパラメータの信頼性は、第1の曲率の信頼性の低下が第2の曲率の信頼性によって補われ、低下が抑制される。クロソイドパラメータは第1から第3の検出クロソイドパラメータを所定の割合で合算することによって算出されるので、3者の合算割合を適宜設定することによって、算出されるクロソイドパラメータの信頼性の低下を抑制することができる。
【0022】
このように、第1から第3の検出クロソイドパラメータを所定の割合で合算することによって、クロソイドパラメータを所望の精度で算出し、且つ算出されるクロソイドパラメータの信頼性の低下を抑制することが可能となる。
【0023】
また、それぞれ異なる方法によって算出される三種類の検出クロソイドパラメータ(第1〜第3の検出クロソイドパラメータ)を所定の割合で合算するので、設定する所定の割合の選択肢が拡がり、各種の条件に対して幅広い対応が可能となる。
【0024】
また、上記所定の割合を、例えば車両の販売及び使用される地域の環境などにとって好適な割合に任意に設定することができる。
【0025】
なお、上記所定の割合は、固定的に設定されてもよく、変更可能に設定されてもよい。所定の割合を固定的に設定する場合は、算出されるクロソイドパラメータの精度と信頼性低下の抑制とのバランスを考慮し、実験やシミュレーションなどによって好適な割合を求めてもよい。また、所定の割合を変更可能に設定する場合は、走行路の状態や外部環境等に応じて所定の割合を変更してもよい。例えば、画像の撮像環境が悪くない限り第1の検出クロソイドパラメータの割合が大きく、画像の撮像環境が悪い場合には第2の検出クロソイドパラメータの割合が大きくなるように合算の割合を変更することによって、画像の撮像環境が良い場合のクロソイドパラメータの精度の向上と、画像の撮像環境が悪い場合のクロソイドパラメータの信頼性の維持とを両立して図ることができる。
【0026】
また、上記走行路形状推定装置は、判定手段を備えてもよい。判定手段は、第1の曲率と第2の曲率とが共に所定の閾値よりも大きく且つ第1の曲率と第2の曲率との差が所定の範囲から外れている場合に算出条件が成立したと判定する。走行路特徴量算出手段は、算出条件が成立したと判定手段が判定したときに、クロソイドパラメータを算出する。
【0027】
直線とカーブとが連続する走行路は、直線区間と入口緩和区間と一定曲率区間と出口緩和区間とに分けられる。直線区間は、走行路の曲率が略ゼロの直線状態が継続する区間である。一定曲率区間は、カーブを含む走行路の最大曲率が維持されて円弧状に曲折する区間である。入口緩和区間は直線区間と一定曲率区間との間の区間であり、走行路の曲率は、直線区間との境界からの距離と所定のクロソイドパラメータとに従って増大し、一定曲率区間との境界において最大曲率に達する。出口緩和区間は一定曲率区間と直線区間との間の区間であり、走行路の曲率は、一定曲率区間との境界からの距離と所定のクロソイドパラメータとに従って減少し、直線区間との境界において略ゼロに戻る。
【0028】
上記構成では、走行位置における第2の曲率と、走行位置よりも所定距離前方の前方位置における第1の曲率とを用いてクロソイドパラメータを算出するか否かが判定される。直線区間においては、第1の曲率と第2の曲率との何れか一方又は双方が所定の閾値以下であるので上記算出条件は成立しない。また、一定曲率区間においては、第1の曲率と第2の曲率とは共に所定の閾値よりも大きい。しかし、走行路の曲率は一定の最大曲率に維持されるので第1の曲率と第2の曲率との差は所定の範囲内にあり上記算出条件は成立しない。入口緩和区間及び出口緩和区間においては、第1の曲率と第2の曲率が共に所定の閾値よりも大きい。また、走行路の曲率が走行路の距離に従って変化しているため第1の曲率と第2の曲率との差は所定の範囲から外れる。従って、上記算出条件が成立し、クロソイドパラメータを算出する区間であると判定され、判定に従ってクロソイドパラメータが算出される。このように、クロソイドパラメータは算出の必要な区間でのみ算出されるので、クロソイドパラメータの算出の負荷が軽減される。
【0029】
また、走行路上の算出位置が異なる第1の曲率と第2の曲率とを用いて判定するので、第1の曲率及び第2の曲率の算出に合わせてクロソイドパラメータを算出するか否かを早期且つ簡便に判定することができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、クロソイドパラメータを所望の精度で算出し、且つ算出されるクロソイドパラメータの信頼性の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施形態に係わる走行路形状推定装置を備えた車両の要部を示すブロック図である。
【図2】走行路形状推定処理を示すフローチャートである。
【図3】第1の実施形態におけるクロソイドパラメータ算出処理を示すフローチャートである。
【図4】第2の実施形態におけるクロソイドパラメータ算出処理を示すフローチャートである。
【図5】第3の実施形態におけるクロソイドパラメータ算出処理を示すフローチャートである。
【図6】直線とカーブとが連続する走行路の形状を示す模式図である。
【図7】カメラを備えた車両と走行路との関係を示す平面図である。
【図8】カメラを備えた車両と走行路との関係を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の第1の実施形態について、図面に基づいて説明する。図1に示すように、第1の実施形態に係わる車両1は、カメラ3(撮像手段)と、ヨーレイトセンサ4(ヨーレイト検出手段)と、車速センサ5(車速検出手段)と、ECU6と、表示器7とを備える。
【0033】
図8に示すように、車両1は、キャブ2が概ねエンジン(図示省略)よりも前方に位置するキャブオーバー型の車両である。カメラ3は、キャブ2のフロントウインド内側の車幅方向中央前部であって走行路面から高さh(m)の位置に、車両ピッチ角ηで車両1の前下方に向けて固定されている。カメラ3はCCDカメラ等であって、車両1の進行方向前方の走行路面を撮像し、画像情報をECU6に出力する。
【0034】
ヨーレイトセンサ4は、車両1の旋回走行時に車両1に発生するヨーレイトω(rad/s)を検出し、検出したヨーレイトωをECU6に出力する。車速センサ5は、車両1の車速V(m/s)を検出し、検出した車速VをECU6に出力する。
【0035】
なお、カメラ3による撮像と、ヨーレイトセンサ4によるヨーレイトωの検出と、車速センサ5による車速Vの検出とは同時に実行され、また、上記撮像及び検出は時間Δt毎に繰り返して実行される。
【0036】
ECU6は、CPU(Central Processing Unit)11と画像処理プロセッサ12とROM(Read Only Memory)13とRAM(Random Access Memory)14とを備える。CPU11は、ROM13に格納されたプログラムを読み出して後述の各処理を実行し、距離検出手段、第1の走行路曲率算出処理手段、第2の走行路曲率算出処理手段、走行路特徴量算出手段及び判定手段として機能する。RAM14は、ヨーレイトセンサ4が検出したヨーレイトω、車速センサ5が検出した車速Vの記憶領域、CPU演算結果の一時記憶領域、後述の走行路の曲率の記憶領域、区間設定領域及び各種閾値の設定領域として機能する。画像処理プロセッサ12は、カメラ3から出力された画像情報を処理し、走行路の形状を検出する。
【0037】
表示器7は、キャブ内の例えばインストルメントパネル(図示外)に設けられ、ECU6から表示指示信号を受信したとき、道路区間の種別及びクロソイドパラメータを表示し、運転支援情報として運転者に提供する。
【0038】
次に、ECU6が実行する処理について、図2及び図3のフローチャートに基づいて説明する。本処理は、同時に実行されるカメラ3による撮像とヨーレイトセンサ4及び車速センサ5による検出とに同期して実行され、且つ上記の時間Δt毎に繰り返して実行される。ECU6は、まず、カメラ3が時刻tに撮像し出力した画像情報を取得し(ステップS1)、続いて、ヨーレイトセンサ4及び車速センサ5が時刻tに検出したヨーレイトω(t)及び車速V(t)を取得する(ステップS2)。
【0039】
次に、ECU6は、画像情報に基づいて走行路の曲率を算出する画像曲率算出処理を行う(ステップS3)。本実施形態では、カルマンフィルタを用いて画像情報に基づく走行路の曲率の算出を実行する。ECU6に取得された画像情報は、まずECU6の画像処理プロセッサ12によって処理される。画像処理プロセッサ12は、画像情報からソーベルフィルタなどによりエッジを抽出し、ハフ変換等を用いて直線成分を抽出して、車線を示す白線等を認識して走行路の形状を検出する。
【0040】
ここで、走行路の形状が直線路と一定曲率のカーブ路とから構成されるものと仮定し、図7及び図8に示すように車両1及び走行路の形状の緒元を定義すると、カメラレンズの中心を原点とする絶対空間の3次元座標(X,Y,Z)を用いて式(1)及び式(2)の関係が導かれる。
【0041】
【数1】

【0042】
【数2】

【0043】
但し、式(1)及び式(2)の各記号の定義は以下の通りである。
ρ:曲率(1/m)
φ:道路中心に対する車両1のヨー角
yc:道路中心に対する車両1重心位置の横変位(m)
i:左右の車線の識別(左側=0、右側=1)
W:車線幅(m)
h:道路面からカメラレンズまでの高さ(m)
η:車両1ピッチ角
【0044】
カメラ3によって撮像された画像情報は、3次元座標(X,Y,Z)から撮像面である2次元の平面座標(x,y)へ変換されている。3次元座標と2次元座標との関係は、式(3)及び式(4)によって示されるので、
x=−f×X/Z ・・・(3)
y=−f×Y/Z ・・・(4)
【0045】
但し、f:カメラの焦点距離(m)
式(1)〜式(4)からX,Yを消去して出力方程式(5)が求められる。
【0046】
【数3】

【0047】
式(5)に含まれる車両1及び道路形状の諸元を確率的な振舞いをする状態量として扱い、白色ガウス雑音によって駆動される系として定義すると、状態方程式は式(6)で表される。ただし、カメラ3の焦点距離f及び車線幅Wは一定として扱い、確率的に変化する状態量から除外する。
【0048】
【数4】

【0049】
出力方程式(5)及び状態方程式(6)を、それぞれ式(7)及び式(8)のように簡略化して表現すると、カルマンフィルタは式(9)〜式(12)のように構成される。
【0050】
【数5】

【0051】
【数6】

【0052】
【数7】

【0053】
【数8】

【0054】
【数9】

【0055】
【数10】

【0056】
但し、式(9)〜式(12)の各記号の定義は以下の通りである。
【0057】
【数11】

【0058】
ECU6は、式(9)〜式(12)に示されるカルマンフィルタを用いて出力方程式(5)及び状態方程式(6)から時刻tに撮像された画像情報に基づく走行路の曲率ρ(t)を算出し、時刻tに関連付けられた曲率ρの記憶領域に記憶させる。
【0059】
次に、ECU6は、ヨーレイト曲率算出処理を行う(ステップS4)。ECU6は、時刻tに検出されたヨーレイトω(t)と車速V(t)とを用いて式(13)により曲率ρ(t)算出する。
【0060】
ρ(t)=ω(t)/V(t) ・・・(13)
【0061】
ヨーレイトセンサ4のセンサ出力のノイズが大きい場合は、曲率ρ(t)の算出の過程でフィルタ処理等によってノイズを低減させてもよい。ECU6は、算出した曲率ρ(t)を時刻tに関連付けられた曲率ρの記憶領域に記憶させる。
【0062】
なお、ヨーレイトω(t)と車速V(t)とに基づいて算出した曲率ρ(t)は、車両1の時刻tにおける走行位置の曲率を表すのに対して、画像情報に基づいて算出した曲率ρ(t)は、車両1の走行位置よりも所定距離L前方のカメラ3の撮像位置である前方位置における走行路の曲率を表す。
【0063】
次に、ECU6は、クロソイドパラメータの算出条件が成立しているか否かの判定処理を行う(ステップS5,S6)。直線とカーブが連続する道路の形状は、図6に示すように、直線区間ab、入口緩和区間bc、一定曲率区間cd、出口緩和区間de及び直線区間efの各区間に分けることができる。直線区間abは、走行路の曲率が略ゼロの直線状態が継続する区間である。一定曲率区間cdは、カーブを含む走行路の最大曲率が維持されて円弧状に曲折する区間である。入口緩和区間bcは直線区間abと一定曲率区間cdとの間の区間であり、走行路の曲率は、直線区間abとの境界bからの距離と所定のクロソイドパラメータとに従って増大し、一定曲率区間cdとの境界cにおいて最大曲率に達する。出口緩和区間deは一定曲率区間cdと直線区間efとの間の区間であり、走行路の曲率は、一定曲率区間cdとの境界dからの距離と所定のクロソイドパラメータとに従って減少し、直線区間efとの境界eにおいて略ゼロに戻る。従って、走行路の区間が入口緩和区間又は出口緩和区間いずれかであるか否かを判定することによって、クロソイドパラメータの算出条件が成立しているか否かを判定することができる。
【0064】
上記判定処理において、ECU6は、まず、算出したρ(t)とρ(t)とが共に閾値mよりも大きいか否かを判定する(ステップS5)。ρ(t)とρ(t)とが共に閾値m以下の場合は、走行路は直線区間であると判定できる。また、ρ(t)が閾値mを超えているがρ(t)が閾値m以下の場合は、走行路は直線区間から入口緩和区間へ移行中であり、ρ(t)は閾値m以下であるがρ(t)が閾値mを超えている場合は、走行路は出口緩和区間から直線区間へ移行中であると判定できる。上記いずれの場合も、走行路の区間は直線とみなし、区間の種別を設定する区間設定領域に直線区間に対応するコードを設定して(ステップS12)出力処理(ステップS13)に進む。
【0065】
ρ(t)とρ(t)とが共に閾値mを超えている場合は、ステップS6に進み、ρ(t)とρ(t)との差が所定の範囲から外れているか否かを判定する。すなわち、ρ(t)とρ(t)との差の絶対値を演算し、この絶対値が閾値nよりも大きいか否かを判定する。ρ(t)とρ(t)との差の絶対値が閾値n以下の場合、走行路は最大曲率が維持される一定曲率の区間と判定できるので、区間設定領域に一定曲率区間に対応するコードを設定して(ステップS11)出力処理(ステップS13)に進む。ρ(t)とρ(t)との差の絶対値が閾値nを超えている場合は、入口緩和区間又は出口緩和区間であると判定できるのでステップS7に進んでクロソイドパラメータ算出処理を行う。
【0066】
入口緩和区間においては、直線区間と入口緩和区間との境界地点からの距離Lと、距離Lの地点における道路の曲率ρとの関係は、クロソイドパラメータAを用いて式(14)で表される。
【0067】
=ρ×A ・・・(14)
【0068】
また、出口緩和区間においては、一定曲率区間の曲率をρとすると、一定曲率区間と出口緩和区間との境界地点からの距離Lと、距離Lの地点における道路の曲率ρとの関係は式(15)で表される。
【0069】
=(ρ−ρ)×A ・・・(15)
【0070】
入口緩和区間を走行中の車両1の時刻tにおける距離L(t)、距離L(t)における曲率ρ(t)と、時刻tよりも時間Δt前の時刻(t-Δt)における距離L(t−Δt)、距離L(t−Δt)における曲率ρ(t−Δt)との関係はそれぞれ式(16)及び式(17)のように表されるので、
(t)=ρ(t)×A ・・・(16)
(t−Δt)=ρ(t−Δt)×A ・・・(17)
【0071】
式(16)及び式(17)を用いてクロソイドパラメータAは次式のように導かれる。
【0072】
A=((L(t)―L(t−Δt)/(ρ(t)−ρ(t−Δt)))1/2
・・・(18)
【0073】
ここで、L(t)―L(t−Δt)は、時間Δtの間に車両1が走行路を走行した距離(走行距離)である。走行距離は、車速Vを用いてV(t)×Δtと近似できるので、クロソイドパラメータAは式(19)で表される。
【0074】
A=(V(t)×Δt/(ρ(t)−ρ(t−Δt)))1/2 ・・・(19)
【0075】
また、車両1が出口緩和区間を走行中の場合は、今回の曲率ρ(t)が、前回の曲率ρ(t−Δt)よりも減少するのでρ(t)−ρ(t−Δt)の絶対値をとることによって、入口緩和区間及び出口緩和区間の両区間についてのクロソイドパラメータAを式(20)のように表すことができる。
【0076】
A=(V(t)×Δt/|ρ(t)−ρ(t−Δt)|)1/2 ・・・(20)
【0077】
画像情報に基づく曲率ρを用いたクロソイドパラメータAは、式(20)を用いて式(21)のように導かれる。
【0078】
=(V(t)×Δt/|ρ(t)−ρ(t−Δt)|)1/2 ・・・(21)
【0079】
同様に、ヨーレイトωと車速Vとに基づく曲率ρを用いたクロソイドパラメータAは、式(20)を用いて式(22)のように導かれる。
【0080】
=(V(t)×Δt/|ρ(t)−ρ(t−Δt)|)1/2 ・・・(22)
【0081】
ECU6は、以上の関係式を用いてクロソイドパラメータAを算出する。図3のフローチャートに示すように、ECU6は、まず、時間Δtと車速Vとを乗算することによって、時刻tよりも時間Δt前にカメラ3による撮像と、ヨーレイトセンサ4及び車速センサ5によるヨーレイト及び車速の検出とが同時に実行された時刻(t-Δt)(前回検出時刻)と、時刻t(今回検出時刻)までに車両1が走行した走行距離(V×Δt)を算出する(ステップS21)。なお、車速Vには、前回検出時刻の車速V(t-Δt)と今回検出時刻の車速V(t)との平均値を使用する。次に、ECU6は、画像情報による前回検出時刻の曲率ρ(t-Δt)と今回検出時刻の曲率ρ(t)と走行距離(V×Δt)とを式(21)に代入してクロソイドパラメータA(第1の検出クロソイドパラメータ)を算出する(ステップS22)。次に、ECU6は、ヨーレイトωと車速Vとに基づく前回検出時刻の曲率ρ(t-Δt)と今回検出時刻の曲率ρ(t)と走行距離(V×Δt)とを式(22)に代入してクロソイドパラメータA(第2の検出クロソイドパラメータ)を算出する(ステップS23)。
【0082】
次に、ECU6は、下記の式(23)に従って、クロソイドパラメータA及びAに重み係数(所定の割合)w及びwをそれぞれ乗算して合算し、クロソイドパラメータAを算出する(ステップS24)。
【0083】
A=w×A+w×A ・・・(23)
但し、w及びwは正の数であり、w+w=1の関係にある。
【0084】
次にECU6は、緩和区間が入口緩和区間か出口緩和区間かの判定をする(ステップS8)。ρ(t)とρ(t)とを比較して、ρ(t)>ρ(t)の場合は、入口緩和区間であると判定し、区間設定領域に入口緩和区間のコードを設定し(ステップS9)出力処理(ステップS13)に進む。ρ(t)<ρ(t)の場合は、出力緩和区間であると判定し、区間設定領域に出口緩和区間のコードを設定し(ステップS10)出力処理(ステップS13)に進む。
【0085】
出力処理(ステップS13)では、区間設定領域に設定された区間種別のコードを読み出す。表示器7に表示指示信号を出力し、区間設定領域に設定された走行路の区間の種別を表示器7に表示する。区間の種別が入口緩和区間及び出口緩和区間の場合は、算出されたクロソイドパラメータAを区間の種別と共に表示器7に表示する。
【0086】
本実施形態では、画像情報に基づく前方位置の曲率ρを用いてクロソイドパラメータAが算出され、ヨーレイトωと車速Vとに基づく走行位置の曲率ρを用いてクロソイドパラメータAが算出される。また、A及びAに重み係数w及びwをそれぞれ乗算して合算し、クロソイドパラメータAが算出される。ρは、ヨーレイトセンサ4のノイズが大きいため曲率の精度が低く、算出されるAの精度も低くなる。これに対し、ρは、カメラ3の撮像環境が悪くない限り曲率の精度が比較的高く、算出されるAの精度も比較的高くなる。クロソイドパラメータAは、A及びAに重み係数w及びwをそれぞれ乗算し合算することによって算出されるので、重み係数w及びwを適宜設定することによって、所望の精度を有するクロソイドパラメータを得ることが可能になる。また、カメラ3の撮像環境が悪い場合にはρの検出が困難となり、算出されるAの精度が極端に低下し、信頼性が低下するおそれがある。これに対し、ρは、走行路の状態や外部環境等の影響を受け難いので、算出されるAの精度が極端に低下せず、信頼性が維持される。クロソイドパラメータAは、A及びAに重み係数w及びwをそれぞれ乗算し合算することによって算出されるので、重み係数w及びwを適宜設定することによって、算出されるクロソイドパラメータの信頼性の低下を抑制することができる。このように、A及びAに重み係数w及びwをそれぞれ乗算し合算するので、クロソイドパラメータを所望の精度で算出し、且つ算出されるクロソイドパラメータの信頼性の低下を抑制することが可能となる。
【0087】
また、上記重み係数w及びwは、例えば車両1の販売及び使用される地域の環境などにとって好適な割合に任意に設定することができる。
【0088】
また、本実施形態では、ρ(t)とρ(t)とを用いてクロソイドパラメータAの算出条件を判定し、ECU6は判定結果に従って、クロソイドパラメータAを算出する。算出条件は、ρ(t)とρ(t)とが共に所定の閾値mよりも大きく且つρ(t)とρ(t)の差が所定の範囲nから外れている場合、すなわち、クロソイドパラメータAの算出が必要な入口緩和区間及び出口緩和区間である場合と判定される。このように、ECU6は、算出の必要な区間でのみクロソイドパラメータAの算出を実行するので、ECU6の演算負荷が軽減される。また、走行路上の算出位置が所定距離L異なるρ(t)とρ(t)とを判定に用いるので、ρ(t)及びρ(t)の算出に合わせてクロソイドパラメータAを算出するか否かを早期且つ簡便に判定することができる。
【0089】
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。第2の実施形態の構成は、図1に示す第1の実施形態の構成と同様であるので説明を省略する。また、図2に示す走行路形状推定処理もクロソイドパラメータ算出処理(ステップS7)を除いて同様であるので、以下、クロソイドパラメータ算出処理について説明し、他の処理の説明を省略する。
【0090】
上記の式(19)に、時刻tに撮像された画像情報に基づく前方位置における曲率ρ(t)と、時刻tに検出されたヨーレイトω及び車速Vに基づく走行位置における曲率ρ(t)と、走行位置と前方位置との間の距離である所定距離L(t)とを代入することによって、ρ(t)とρ(t)とを組み合わせたクロソイドパラメータAIYを式(24)のように導くことができる。
【0091】
IY=(L(t)/|ρ(t)−ρ(t)|)1/2 ・・・(24)
【0092】
第2の実施形態においては、ECU6は、図4に示すフローチャートに従ってクロソイドパラメータ算出処理(図2ステップS7)を実行する。ECU6は、まず、今回検出時刻の曲率ρ(t)と今回検出時刻の曲率ρ(t)と所定距離Lとを式(24)に代入してクロソイドパラメータAIYを算出し(ステップS31)、クロソイドパラメータAとする(ステップS32)。すなわち、
A=AIY ・・・(25)
【0093】
本実施形態では、カメラ3の撮像環境が悪くない限りρ(t)の精度がρ(t)の精度によって補われ、クロソイドパラメータAが所望の精度で算出される。また、カメラ3の撮像環境が悪い場合であっても、ρ(t)の信頼性の低下がρ(t)の信頼性によって補われ、算出されるクロソイドパラメータの信頼性の低下が抑制される。クロソイドパラメータAはρ(t)とρ(t)とから算出されるので、算出されるクロソイドパラメータAの精度及び信頼性には、ρ(t)及びρ(t)のそれぞれの精度及び信頼性が反映され、クロソイドパラメータAを所望の精度で算出し、且つ算出されるクロソイドパラメータの信頼性の低下を抑制することが可能となる。また、ρ(t)の算出に用いられる画像情報と、ρ(t)の算出に用いられるヨーレイトω及び車速Vは、ともに今回検出時刻tに撮像及び検出されるので、クロソイドパラメータAを早期に算出することが可能となる。また、車両1の走行位置と前方位置との間の距離である所定距離L(t)を固定的な距離Lに設定することができるので、所定距離の検出精度がクロソイドパラメータAに与える影響を排除することができ、算出されるクロソイドパラメータAの精度が安定する。
【0094】
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。第3の実施形態の構成は、図1に示す第1の実施形態の構成と同様であるので説明を省略する。また、図2に示す走行路形状推定処理もクロソイドパラメータ算出処理(ステップS7)を除いて同様であるので、以下、クロソイドパラメータ算出処理について説明し、他の処理の説明を省略する。
【0095】
本実施形態では、ECU6は、図5に示すフローチャートに従ってクロソイドパラメータ算出処理(図2ステップS7)を実行する。ECU6は、まず、時間差Δtと車速Vとを乗算することによって、前回検出時刻(t-Δt)から今回検出時刻tまでに車両1が走行した走行距離(V×Δt)を算出する(ステップS41)。次に、ECU6は、画像情報による前回検出時刻の曲率ρ(t-Δt)と今回検出時刻の曲率ρ(t)と走行距離(V×Δt)とを式(21)に代入してクロソイドパラメータA(第1の検出クロソイドパラメータ)を算出する(ステップS42)。次に、ECU6は、ヨーレイトωと車速Vとに基づく前回検出時刻の曲率ρ(t-Δt)と今回検出時刻の曲率ρ(t)と走行距離(V×Δt)とを式(22)に代入してクロソイドパラメータA(第2の検出クロソイドパラメータ)を算出する(ステップS43)。続いて、ECU6は、今回検出時刻の曲率ρ(t)と今回検出時刻の曲率ρ(t)と、所定距離Lとを式(24)に代入し、クロソイドパラメータAIY(第3の検出クロソイドパラメータ)を算出する(ステップS44)。
【0096】
次に、ECU6は、下記の式(26)に従って、クロソイドパラメータA、A及びAIYに重み係数(所定の割合)w、w及びwをそれぞれ乗算して合算し、クロソイドパラメータAを算出する(ステップS45)。
【0097】
A=w×A+w×A+w×AIY ・・・(26)
但し、w、w及びwはすべて正の数であり、w+w+w=1の関係にある。
【0098】
本実施形態では、画像情報に基づく前方位置の曲率ρを用いてクロソイドパラメータAが算出され、ヨーレイトωと車速Vとに基づく走行位置の曲率ρを用いてクロソイドパラメータAが算出され、ρとρとを組み合わせてクロソイドパラメータAIYが算出される。また、A、A及びAIYに重み係数w、w及びwをそれぞれ乗算して合算し、クロソイドパラメータAが算出される。ヨーレイトωに基づく曲率ρを用いて算出されるAの精度は低くなるが、画像情報に基づく曲率ρを用いて算出されるAの精度は比較的高くなる。また、AIYは、ρの精度がρの精度によって補われ、所望の精度で算出される。クロソイドパラメータAは、A、A及びAIYに重み係数w、w及びwをそれぞれ乗算して合算することによって算出されるので、重み係数w、w及びwを適宜設定することによって、所望の精度を有するクロソイドパラメータを得ることが可能になる。また、カメラ3の撮像環境が悪い場合にはAの信頼性が低下するおそれがあるが、Aの信頼性は維持される。また、AIYの信頼性は、信頼性の低下がρの信頼性によって補われ、低下が抑制される。クロソイドパラメータAは、A、A及びAIYに重み係数w、w及びwをそれぞれ乗算して合算することによって算出されるので、重み係数w、w及びwを適宜設定することによって、算出されるクロソイドパラメータの信頼性の低下を抑制することができる。このように、A、A及びAIYに重み係数w、w及びwをそれぞれ乗算して合算するので、クロソイドパラメータを所望の精度で算出し、且つ算出されるクロソイドパラメータの信頼性の低下を抑制することが可能となる。
【0099】
また、それぞれ異なる方法によって算出される三種類のクロソイドパラメータ(A、A及びAIY)に重み係数w、w及びwをそれぞれ乗算して合算するので、設定する重み係数w、w及びwの選択肢が拡がり、各種の条件に対して幅広い対応が可能となる。
【0100】
また、上記重み係数w、w及びwは、例えば車両1の販売及び使用される地域の環境などにとって好適な割合に任意に設定することができる。
【0101】
なお、本実施形態において、重み係数w、w及びwを、w+w=1、w=0と設定した場合は、第1の実施形態と実質的に同一となる。また、重み係数w、w及びwを、w=w=0、w=1と設定した場合は、第2の実施形態と実質的に同一となる。
【0102】
また、第1の実施形態及び第3の実施形態において、それぞれの実施形態における重み係数は、固定的に設定されてもよく、変更可能に設定されてもよい。重み係数を固定的に設定する場合は、算出されるクロソイドパラメータAの精度と信頼性低下の抑制とのバランスを考慮し、実験やシミュレーションなどによって好適な割合を求めてもよい。また、重み係数を変更可能に設定する場合は、走行路の状態や外部環境等に応じて重み係数を変更してもよい。例えば、カメラ3の撮像環境が悪くない限りAの係数であるwの割合が大きく、カメラ3の撮像環境が悪い場合にはAの係数であるwの割合が大きくなるように重み係数を変更することによって、カメラ3の撮像環境が良い場合のクロソイドパラメータAの精度の向上と、カメラ3の撮像環境が悪い場合のクロソイドパラメータAの信頼性の維持とを両立して図ることができる。
【0103】
また、第1の実施形態、第2の実施形態及び第3の実施形態において、画像情報に基づく曲率ρの算出は、カルマンフィルタを用いた算出方法に限定されない。例えば、画像処理によって検出した走行路に対し、最小二乗法による曲線の当てはめ等を適用して走行路の曲率を算出してもよい。
【0104】
また、ヨーレイトωに基づいた曲率ρの算出にはヨーレイトセンサ4の出力を用いたが、ヨーレイトωの検出はヨーレイトセンサに限定されず車両1の旋回走行時の回転角速度が検出できるものであればよい。例えば、車両1の操舵角の時間的変化等を検出してもよい。
【0105】
また、曲率ρと曲率ρとを用いてクロソイドパラメータAを算出するか否かを判定したが、クロソイドパラメータAを算出するか否かの判定は、曲率ρと曲率ρとを用いて判定する方法に限定されるものではなく、例えば、ρ又はρのいずれか一方を用いて、車両1の走行距離に対するρ又はρの変化の状況等から走行路の区間を認識し、クロソイドパラメータAを算出するか否かを判定してもよい。
【0106】
また、クロソイドパラメータの算出条件が成立しているか否かの判定処理をせずに常にクロソイドパラメータAの算出を実行してもよい。この場合は、例えば、クロソイドパラメータAが所定の範囲に入った場合にクロソイドパラメータAを表示器7に表示してもよい。
【0107】
また、走行路の形状推定結果を走行路の区間の種別及びクロソイドパラメータとして表示器7に表示したが、形状推定結果を他のシステム、例えば、前方車両との衝突防止システムや走行路逸脱防止システム等に出力してもよい。この結果、上記他のシステムでは、車両1の走行距離に伴って変化する入口緩和区間及び出口緩和区間の走行路の曲率を、クロソイドパラメータを用いて所望の精度で推定または予測することが可能となる。また、上記他のシステム等を備えた既存の車両に対しては、本処理を実行する装置(ユニット)を追加して設置すればよい。また、上記他のシステム等がカメラ、ヨーレイトセンサ及び車速センサ等を備えている場合は、本実施形態で使用するカメラ3、ヨーレイトセンサ4及び車速センサ5との共有が可能となる。このように、本発明は、上記システム等を備えた既存の車両に対して少ないコスト負担で容易に適用が可能である。
【0108】
以上、本発明者によってなされた発明を適用した実施形態について説明したが、この実施形態による本発明の開示の一部をなす論述及び図面により本発明は限定されることはない。すなわち、この実施形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施形態、実施例及び運用技術等は全て本発明の範疇に含まれることは勿論である。
【符号の説明】
【0109】
1 車両
2 キャブ
3 カメラ(撮像手段)
4 ヨーレイトセンサ(ヨーレイト検出手段)
5 車速センサ(車速検出手段)
6 ECU
7 表示器
11 CPU
12 画像処理プロセッサ
13 ROM
14 RAM

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の前方の走行路を撮像してその画像情報を出力する撮像手段と、
前記車両のヨーレイトを検出するヨーレイト検出手段と、
前記ヨーレイト検出手段と同期して前記車両の車速を検出する車速検出手段と、
前記撮像手段の撮像時の前記車両の走行位置よりも所定距離前方の前方位置における前記走行路の曲率を、前記撮像手段が撮像した画像情報に基づいて第1の曲率として算出する第1の走行路曲率算出手段と、
前記ヨーレイト検出手段及び前記車速検出手段の検出時の前記車両の走行位置における前記走行路の曲率を、前記ヨーレイト検出手段が検出したヨーレイトと前記車速検出手段が検出した車速とに基づいて第2の曲率として算出する第2の走行路曲率算出手段と、
前記第1の曲率と前記第2の曲率とに基づいて、前記走行路の屈曲度合いを示すクロソイドパラメータを算出する走行路特徴量算出手段と、を備える
ことを特徴とする走行路形状推定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の走行路形状推定装置であって、
前記車両の走行距離を検出する距離検出手段を備え、
前記撮像手段は、第1検出時及び第2検出時にそれぞれ前記走行路を撮像してその画像情報を出力し、
前記ヨーレイト検出手段は、第3検出時及び第4検出時にそれぞれヨーレイトを検出し、
前記車速検出手段は、前記第3検出時及び前記第4検出時にそれぞれ車速を検出し、
前記距離検出手段は、前記第1検出時から前記第2検出時までの前記車両の第1走行距離と、前記第3検出時から前記第4検出時までの前記車両の第2走行距離とを検出し、
前記第1の走行路曲率算出手段は、前記第1検出時の前記車両の走行位置よりも所定距離前方の第1前方位置と前記第2検出時の前記車両の走行位置よりも所定距離前方の第2前方位置との双方における前記第1の曲率を、前記撮像手段が前記第1検出時と前記第2検出時とにそれぞれ撮像した画像情報に基づいて算出し、
前記第2の走行路曲率算出手段は、前記第3検出時の前記車両の第3走行位置と前記第4検出時の前記車両の第4走行位置との双方における前記第2の曲率を、前記ヨーレイト検出手段と前記速度検出手段とが前記第3検出時と前記第4検出時とにそれぞれ検出したヨーレイトと車速とに基づいて算出し、
前記走行路特徴量算出手段は、前記第1前方位置と前記第2前方位置との双方における前記第1の曲率と前記第1走行距離とを用いて第1の検出クロソイドパラメータを算出し、前記第3走行位置と前記第4走行位置との双方における前記第2の曲率と前記第2走行距離とを用いて第2の検出クロソイドパラメータを算出し、前記第1の検出クロソイドパラメータと前記第2の検出クロソイドパラメータとを所定の割合で合算して前記クロソイドパラメータを算出する
ことを特徴とする走行路形状推定装置。
【請求項3】
請求項1に記載の走行路形状推定装置であって、
前記撮像手段は、第1検出時に前記走行路を撮像してその画像情報を出力し、
前記ヨーレイト検出手段は、前記第1検出時にヨーレイトを検出し、
前記車速検出手段は、前記第1検出時に車速を検出し、
前記第1の走行路曲率算出手段は、前記撮像手段が前記第1検出時に撮像した画像情報に基づいて前記第1の曲率を算出し、
前記第2の走行路曲率算出手段は、前記ヨーレイト検出手段と前記車速検出手段とが前記第1検出時にそれぞれ検出したヨーレイトと車速とに基づいて前記第2の曲率を算出し、
前記走行路特徴量算出手段は、前記第1の曲率と前記第2の曲率と前記所定距離とを用いて前記クロソイドパラメータを算出する
ことを特徴とする走行路形状推定装置。
【請求項4】
請求項1に記載の走行路形状推定装置であって、
前記車両の走行距離を検出する距離検出手段を備え、
前記撮像手段は、第1検出時及び第2検出時にそれぞれ前記走行路を撮像してその画像情報を出力し、
前記ヨーレイト検出手段は、前記第1検出時及び前記第2検出時にそれぞれヨーレイトを検出し、
前記車速検出手段は、前記第1検出時及び前記第2検出時にそれぞれ車速を検出し、
前記距離検出手段は、前記第1検出時から前記第2検出時までの前記車両の走行距離を検出し、
前記第1の走行路曲率算出手段は、前記第1検出時の前記車両の走行位置よりも所定距離前方の第1前方位置と前記第2検出時の前記車両の走行位置よりも所定距離前方の第2前方位置との双方における前記第1の曲率を、前記撮像手段が前記第1検出時と前記第2検出時とにそれぞれ撮像した画像情報に基づいて算出し、
前記第2の走行路曲率算出手段は、前記第1検出時の前記車両の第1走行位置と前記第2検出時の前記車両の第2走行位置との双方における前記第2の曲率を、前記ヨーレイト検出手段と前記速度検出手段とが前記第1検出時と前記第2検出時とにそれぞれ検出したヨーレイトと車速とに基づいて算出し、
前記走行路特徴量算出手段は、前記第1前方位置と前記第2前方位置との双方における前記第1の曲率と前記走行距離とを用いて第1の検出クロソイドパラメータを算出し、前記第1走行位置と前記第2走行位置との双方における前記第2の曲率と前記走行距離とを用いて第2の検出クロソイドパラメータを算出し、前記第2前方位置における前記第1の曲率と前記第2走行位置における前記第2の曲率と前記所定距離とを用いて第3の検出クロソイドパラメータを算出し、前記第1の検出クロソイドパラメータと前記第2の検出クロソイドパラメータと前記第3の検出クロソイドパラメータとを所定の割合で合算して前記クロソイドパラメータを算出する
ことを特徴とする走行路形状推定装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4に記載の走行路形状推定装置であって、
前記第1の曲率と前記第2の曲率とが共に所定の閾値よりも大きく且つ前記第1の曲率と前記第2の曲率との差が所定の範囲から外れている場合に算出条件が成立したと判定する判定手段を備え、
前記走行路特徴量算出手段は、前記算出条件が成立したと前記判定手段が判定したときに、前記クロソイドパラメータを算出する
ことを特徴とする走行路形状推定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−39881(P2013−39881A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−178471(P2011−178471)
【出願日】平成23年8月17日(2011.8.17)
【出願人】(000000170)いすゞ自動車株式会社 (1,721)
【Fターム(参考)】