説明

走路推定装置及びプログラム

【課題】安定して走路パラメータを推定する。
【解決手段】特徴点抽出部30で、撮像装置12で撮像された撮像画像を取得して、撮像画像から特徴点を抽出し、車線境界点選択部32で、抽出された特徴点から車線を示す車線境界点を選択し、分布判定部34で、車線境界点の分布を判定し、システムノイズ設定部36で、車線境界点の分布に基づいてシステムノイズの各々を設定し、走路パラメータ推定部38で、車線境界点、過去の推定結果、及び設定されたシステムノイズに基づいて走路パラメータを推定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走路推定装置及びプログラムに係り、特に、撮像装置により撮像された画像に基づいて、走路パラメータを推定する走路推定装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、CCDカメラで車両前方を撮像した入力画像からレーンマーカを検出し、レーンマーカの検出結果に基づいて、車両前方の道路形状を表すための道路モデルパラメータを、カルマンフィルタにより算出する車両の走行路認識装置が提案されている(特許文献1参照)。特許文献1の走行路認識装置では、推定する道路モデルパラメータの変化は、確率的な振る舞いをするものとして、固定の白色ガウス雑音によって駆動される離散系のランダムウォークモデルとして定義している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−109695号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、推定するパラメータ毎の推定精度は観測値の分布により影響を受けるが、上記の特許文献1の技術では、道路モデルパラメータの変動の度合いを示すシステムノイズが観測値とは無関係に設定されているため、安定して道路モデルパラメータ推定することができない、という問題がある。
【0005】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたもので、安定して走路パラメータを推定することができる走路推定装置及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の走路推定装置は、自車両周辺を撮像した撮像画像を取得する取得手段と、前記取得手段により取得した撮像画像から、車線を示す特徴点を抽出する抽出手段と、前記抽出手段により抽出された特徴点の分布に基づいて、前記自車両が走行する走路に対する自車両の位置及び姿勢、並びに該走路の形状及び大きさに関する走路パラメータを推定する際の該走路パラメータの変動の度合いを示すシステムノイズを設定する設定手段と、前記抽出手段により抽出された特徴点、過去の前記走路パラメータの推定結果、及び前記設定手段により設定されたシステムノイズに基づいて、離散時間信号を扱う確率的信号処理により前記走路パラメータを推定する推定手段と、を含んで構成されている。
【0007】
本発明の走路推定装置によれば、取得手段が、自車両周辺を撮像した撮像画像を取得し、抽出手段が、取得手段により取得した撮像画像から、車線を示す特徴点を抽出する。車線を示す特徴点の抽出は、まず撮像画像からエッジ点を抽出し、エッジ点の連続性や形状等に基づいて、エッジ点の中から車線を示す特徴点を選択することにより行う。
【0008】
そして、設定手段が、抽出手段により抽出された特徴点の分布に基づいて、自車両が走行する走路に対する自車両の位置及び姿勢、並びに走路の形状及び大きさに関する走路パラメータを推定する際の走路パラメータの変動の度合いを示すシステムノイズを設定し、推定手段が、抽出手段により抽出された特徴点、過去の走路パラメータの推定結果、及び設定手段により設定されたシステムノイズに基づいて、離散時間信号を扱う確率的信号処理により走路パラメータを推定する。
【0009】
このように、撮像画像から抽出された車線を示す特徴点の分布、すなわち観測値の分布に基づいて、推定する走路パラメータの各々に対応したシステムノイズを設定するため、安定して走路パラメータを推定することができる。
【0010】
また、前記走路に対する自車両の位置及び姿勢に関する走路パラメータを、該走路に対する自車両の横位置、該走路の中央線に対するヨー角、及び該走路の平面に対するピッチ角とし、前記走路の形状及び大きさに関する走路パラメータを、該走路の曲率及び該走路の車線幅とすることができる。
【0011】
また、前記設定手段は、前記特徴点が撮像画像上の遠方領域にのみ分布する場合には、前記走路の曲率、前記走路の車線幅、及び前記走路に対する自車両の横位置に対応するシステムノイズの各々を小さくし、前記特徴点が撮像画像上の近傍領域にのみ分布する場合には、前記走路の曲率に対応するシステムノイズを小さくし、前記車線の左側境界を示す特徴点または右側境界を示す特徴点のみが分布している場合には、前記走路の車線幅、及び前記走路の平面に対するピッチ角に対応するシステムノイズの各々を小さくし、前記特徴点が予め定めた所定数以上存在しない場合には、全ての走路パラメータに対応するシステムノイズの各々を小さくするようにすることができる。これにより、走路パラメータの推定精度が低下するような観測状況であっても、安定して走路パラメータを推定することができる。
【0012】
また、本発明の走路推定プログラムは、コンピュータを、自車両周辺を撮像した撮像画像を取得する取得手段、前記取得手段により取得した撮像画像から、車線を示す特徴点を抽出する抽出手段、前記抽出手段により抽出された特徴点の分布に基づいて、前記自車両が走行する走路に対する自車両の位置及び姿勢、並びに該走路の形状及び大きさに関する走路パラメータを推定する際の該走路パラメータの変動の度合いを示すシステムノイズを設定する設定手段、及び前記抽出手段により抽出された特徴点、過去の前記走路パラメータの推定結果、及び前記設定手段により設定されたシステムノイズに基づいて、離散時間信号を扱う確率的信号処理により前記走路パラメータを推定する推定手段として機能させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように、本発明の走路推定装置及びプログラムによれば、撮像画像から抽出された車線を示す特徴点の分布、すなわち観測値の分布に基づいて、推定する走路パラメータの各々に対応したシステムノイズを設定するため、安定して走路パラメータを推定することができる、という効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施の形態に係る走路推定装置の電気系の要部構成を示すブロック図である。
【図2】推定する走路パラメータを模式的に示した図である。
【図3】本実施の形態に係る走路推定装置の機能的な構成を示すブロック図である。
【図4】特徴点の抽出を説明するための図である。
【図5】車線境界点の選択を説明するための図である。
【図6】遠方領域及び近傍領域を説明するための図である。
【図7】車線境界点の分布のパターンを示す図である。
【図8】車線境界点の分布に応じた走路パラメータ毎のシステムノイズの設定の一例を示す図である。
【図9】本実施の形態に係る走路推定装置における走路推定処理ルーチンの内容を示すフローチャートである。
【図10】パーティクルフィルタを用いた例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0016】
図1に示すように、本実施の形態の走路推定装置10は、車両前方領域を連続的に撮像する撮像装置12と、走路パラメータを推定する処理を実行するコンピュータ16と、を備えている。
【0017】
撮像装置12は、車両前方の対象領域を撮影し、画像信号を生成する撮像部(図示省略)、撮像部で生成されたアナログ信号である画像信号をデジタル信号に変換するA/D変換部(図示省略)、及びA/D変換された画像信号を一時的に格納するための画像メモリ(図示省略)を備えている。
【0018】
コンピュータ16は、走路推定装置10全体の制御を司るCPU20と、後述する走路推定処理ルーチンのプログラム等各種プログラムを記憶した記憶媒体としてのROM22と、ワークエリアとしてデータを一時的に格納するRAM24と、各種情報が記憶された記憶手段としてのメモリ26と、入出力ポート(I/Oポート)28と、これらを相互に接続するバスと、を含んで構成されている。I/Oポート28には、撮像装置12が接続されている。
【0019】
本実施の形態の走路推定装置-10は、撮像装置12により撮像された撮像画像から、車線を示す特徴点(車線境界点)を抽出し、この特徴点を観測値としてカルマンフィルタを用いて走路パラメータを推定する。
【0020】
また、走路パラメータとしては、自車両が走行する走路に対する自車両の位置及び姿勢に関する走路パラメータ、並びに自車両が走行する走路の形状及び大きさに関する走路パラメータを推定する。より具体的には、走路に対する自車両の位置及び姿勢に関する走路パラメータを、走路の左側境界を示す車線、右側境界を示す車線、または中央線に対する自車両の横位置ek|k、走路の中央線に対するヨー角θk|k、及び走路の平面に対するピッチ角φk|kとし、走路の形状及び大きさに関する走路パラメータを、走路の曲率ck|k、及び走路の車線幅wk|kとする。これら5つの走路パラメータを合わせて走路パラメータと呼ぶ場合には、走路パラメータxk|k(xk|k=(ek|k θk|k φk|kk|kk|k))とする。図2(A)〜(C)に、走路パラメータとして推定を行う横位置、ヨー角、ピッチ角、曲率(走路の形状)及び車線幅を模式的に示す。
【0021】
このような処理を実行するコンピュータ16をハードウエアとソフトウエアとに基づいて定まる機能実現手段毎に分割した機能ブロックで説明すると、図3に示すように、撮像装置12で撮像された撮像画像を取得して、撮像画像から特徴点を抽出する特徴点抽出部30と、抽出された特徴点から車線を示す車線境界点を選択する車線境界点選択部32と、車線境界点の分布を判定する分布判定部34と、車線境界点の分布に基づいてシステムノイズの各々を設定するシステムノイズ設定部36と、車線境界点、過去の推定結果、及び設定されたシステムノイズに基づいて走路パラメータを推定する走路パラメータ推定部38と、を含んだ構成で表すことができる。
【0022】
特徴点抽出部30は、例えば、図4(A)に示すような撮像画像に対して、同図(B)に示すように、水平方向に走査して画素毎の輝度の変化点であるエッジ点を特徴点として抽出する。同図(C)に、抽出された特徴点を模式的に表した一例を示す。
【0023】
車線境界点選択部32は、特徴点抽出部30で抽出された特徴点から、連続的に並ぶエッジ点の形状や幅、色などを判別することにより、車線を示す車線境界点を選択する。車線が複数存在する場合には、最も内側の左右1対の車線を示す車線境界点を選択する。図5に、選択された車線境界点を模式的に表した一例を示す。
【0024】
なお、特徴点抽出部30及び車線境界点選択部32が、本発明の抽出手段の一例である。
【0025】
分布判定部34は、車線境界点選択部32で選択された車線境界点がどのような分布かを判定する。本実施の形態では、車線境界点が遠方領域及び近傍領域の両方に分布しているか、遠方領域にのみ分布しているか、または近傍領域にのみ分布しているかを判定する。また、左側境界を示す車線境界点及び右側境界を示す車線境界点の両方が存在する分布か、左側境界を示す車線境界点のみが存在する分布か、または右側境界を示す車線境界点のみが存在する分布かを判定する。また、選択された車線境界点の総数が予め定めた所定数以下か否かも判定する。車線境界点の総数が所定数以下の分布を観測値なしの分布という。
【0026】
ここで、遠方領域及び近傍領域に車線境界点が存在するか否かの判定について説明する。まず、図6に示すように、撮像画像の左上端の画素を原点として、水平方向をx軸、垂直方向をy軸とする。消失点の位置のy座標ya、撮像画像のy座標の最大値をybとして、yc=ya+k(yb−ya)となるy座標ycを設定する。なお、kは、0<k<1の値とし、例えば1/3とすることができる。また、撮像装置12の取り付け角度等を考慮し、撮像装置12からの距離が例えば20mとなる位置に対応する撮像画像上のy座標をycとして設定するようにしてもよい。そして、y座標がya〜ycの範囲を遠方領域、y座標がyc〜ybの範囲を近傍領域とする。
【0027】
次に、左側境界を示す車線境界点のy座標の最小値をLFとし、LF≦ycであれば、車線境界点が左側遠方領域に存在すると判定する。また、左側境界を示す車線境界点のy座標の最大値をLNとし、LN>ycであれば、車線境界点が左側近傍領域に存在すると判定する。同様に、右側境界を示す車線境界点のy座標の最小値をRF、最大値をRNとして、ycと比較して車線境界点が右側遠方領域または右側近傍領域に存在するかを判定する。なお、車線境界点が遠方領域及び近傍領域に存在するか否かを判定するためのy座標閾値Tf及びTnを各々設けて、LF(RF)≦Tfであれば、車両境界点が遠方領域に存在、LN≧Tnであれば、車両境界点が近傍領域に存在すると判定するようにしてもよい。
【0028】
上記のように、車線境界点が遠方領域または近傍領域に分布するか、及び左側または右側に分布するかを判定するため、車線境界点の分布のパターンは、図7(A)〜(P)に示すようなパターンに分類される。同図(P)は、観測値なしの分布である。
【0029】
システムノイズ設定部36は、分布判定部34で判定された車線境界点の分布に基づいて、推定する走路パラメータxk|kの各々に対応したシステムノイズを設定する。システムノイズは、今回の観測に基づいて前回の推定結果を変動させて今回の走路パラメータを推定する際に走路パラメータを変動させる度合いを示すものである。
【0030】
車線境界点が遠方領域及び近傍領域、並びに左右両側に分布している場合には、走路パラメータxk|kの全てを安定して推定することができる。しかし、例えば、車線境界点が遠方領域にのみ分布する場合には、自車両の横位置ek|kや車線幅wk|k等の走路パラメータの推定精度が低下するため、推定結果が不安定となる。そこで、車線境界点の分布に応じて観測状況を判断して走路パラメータの各々に対応するシステムノイズを設定するものである。
【0031】
図8に、システムノイズの設定方法の一例を示す。横位置ek|kは、車線境界点が近傍領域に分布する場合、ヨー角θk|kは、車線境界点が所定数以上存在する場合(観測値ありの場合)、ピッチ角φk|kは、車線境界点が左右両側に分布している場合、曲率ck|kは、車線境界点が近傍領域から遠方領域にかけて分布している場合、車線幅wk|kは、車線境界点が近傍領域の左右両側に分布している場合に、比較的安定してパラメータを推定することができる。そこで、分布判定部34で判定された車線境界点の分布のパターンが、車線境界点が全ての領域に存在する「遠近左右あり」、遠方領域にのみ存在する「遠方のみ」、近傍領域にのみ存在する「近傍のみ」、左側境界を示す車線境界点及び右側境界を示す車線境界点の両方が存在する「左右あり」、左側境界または右側境界の片側の境界を示す車線境界点のみ存在する「片側のみ」、及び車線境界点の総数が所定数以下の「観測値なし」のいずれの分布の種類に該当するかを判定する。図8の分布の種類名の下段のアルファベットは、図7の各分布のパターンに対応する。「左右あり」には、図7の(A)、(F)及び(J)のパターンは含まれない。また、同図(H)及び(N)のパターンは、「遠方のみ」及び「片側のみ」の両方に該当する。また、同図(L)及び(O)のパターンは、「近傍のみ」及び「片側のみ」の両方に該当する。
【0032】
また、図8に示すように、分布の種類毎に走路パラメータの各々に対応するシステムノイズの設定方法が定められている。例えば、「遠方のみ」の場合には、横位置ek|k、曲率ck|k及び車線幅wk|kに対応するシステムノイズについて、「ノイズ小」と定められている。「ノイズ小」の場合には、そのシステムノイズを小さく設定(例えば、「0」に設定)し、「ノイズ小」ではない場合には、従来の手法に従ってシステムノイズを設定する。また、システムノイズを小さく設定するとは、走路パラメータ推定の際の変動の度合いを小さくすることであり、該当する走路パラメータを更新しないように設定することを含む。走路パラメータは、システムノイズが大きいほど変動し易く、小さいほど変動し難く安定した推定結果が得られる。
【0033】
なお、分布判定部34及びシステムノイズ設定部36が、本発明の設定手段の一例である。
【0034】
走路パラメータ推定部38は、下記に示すカルマンフィルタの式に従って、走路パラメータxk|kを推定する。
【0035】
【数1】

【0036】
k|kは時刻kにおける内部状態(走路パラメータ)、yはy=[y・・・yで表される観測値(車線境界点の座標)、fは状態遷移関数、hは観測関数、Fは時刻kにおける状態遷移行列、Gは時刻kにおける駆動行列、Hは観測行列、Σk|kは時刻kにおける推定誤差共分散行列、Σk+1|kは時刻kにおける予測誤差共分散行列、Σwkは時刻kにおけるシステムノイズの共分散行列、Σvkは時刻kにおける観測ノイズの共分散行列である。システムノイズ設定部36で設定されるシステムノイズは、(5)式のΣwkである。そして、車線境界点の座標を観測値yとして与え、走路パラメータxk|kを推定する。
【0037】
次に、図9を参照して、本実施の形態に係る走路推定装置10のコンピュータ16において実行される走路推定処理ルーチンについて説明する。本ルーチンは、ROM22に記憶された走路推定プログラムをCPU20が実行することにより行われる。
【0038】
ステップ100で、撮像装置12で撮像された撮像画像を取得し、次に、ステップ102で、撮像画像の画素毎の輝度の変化点であるエッジ点を特徴点として抽出する。
【0039】
次に、ステップ104で、上記ステップ102で抽出された特徴点から、連続的に並ぶエッジ点の形状や幅、色などを判別することにより、車線を示す車線境界点を選択する。
【0040】
次に、ステップ106で、上記ステップ104で選択された車線境界点がどのような分布かを判定する。まず、車線境界点の総数が所定数以下か否かを判定し、車線境界点の総数が所定数以下であれば、図7(P)のパターンの観測値なしの分布であると判定する。次に、左側境界を示す車線境界点のy座標の最小値をLFとし、LF≦ycであれば、車線境界点が左側遠方領域に存在すると判定する。また、左側境界を示す車線境界点のy座標の最大値をLNとし、LN>ycであれば、車線境界点が左側近傍領域に存在すると判定する。同様に、右側境界を示す車線境界点のy座標の最小値をRF、最大値をRNとして、ycと比較して車線境界点が右側遠方領域または右側近傍領域に存在するかを判定する。これらの判定により、車線境界点の分布が図7の(A)〜(O)のいずれに該当するかを判定する。例えば、車線境界点が左側遠方領域、左側近傍領域、右側遠方領域、及び右側近傍領域のいずれにも存在している場合には、同図(A)のパターンであると判定される。また、車線境界点が左側遠方領域及び右側遠方領域にのみ存在している場合には、同図(F)のパターンであると判定される。
【0041】
次に、ステップ108で、上記ステップ106で判定された車線境界点の分布に基づいて、推定する走路パラメータxk|kの各々に対応したシステムノイズを設定する。図8に示すような、予め定められた車線境界点とシステムノイズとの対応を参照して、車線境界点の分布のパターンに対応した各システムノイズの設定を読み込み、上記(5)式のΣwkに設定する。例えば、上記ステップ106で判定された車線境界点の分布が図7の(F)のパターンであった場合には、分布の種類が「遠方のみ」に該当するため、横位置ek|k、曲率ck|k及び車線幅wk|kの走路パラメータに対応するシステムノイズを小さく設定する。また、車線境界点の分布が図7の(N)のパターンであった場合には、分布の種類が「遠方のみ」及び「片側のみ」に該当するため、上記の走路パラメータに加え、ピッチ角φk|kに対応するシステムノイズも小さく設定する。
【0042】
次に、ステップ110で、上記(1)〜(5)式に従って、上記ステップ104で選択された車線境界点の座標を観測値yとして与え、走路パラメータxk|kを推定し、推定結果を出力する。出力された推定結果は、図示しない表示装置により表示したり、車両運動を制御する車両運動制御システム等の入力データとして用いたりすることができる。
【0043】
以上説明したように、本実施の形態の走路推定装置によれば、車線境界点の分布、すなわち観測値の分布に基づいて、走路パラメータの各々について推定精度が低下するような観測状況であるか否かを判断して、推定精度が低下するような走路パラメータに対応するシステムノイズの設定を小さくして走路パラメータの変動を小さくするため、安定して走路パラメータを推定することができる。
【0044】
なお、上記実施の形態では、カルマンフィルタを用いて走路パラメータを推定する場合について説明したが、その他の離散時間信号を扱う確率的(統計的)信号処理に基づくフィルタを用いてもよい。例えば、パーティクルフィルタを用いることができる。その場合、図10に示すように、(1)走路パラメータの確率をパーティクルの大きさ(重み)で表現し、(2)次時刻における走路パラメータを予測する。この際、例えば車両が車線に対して傾いていれば、次時刻の横位置も変動する等の車両の運動モデルを考慮する。そして、(3)走路パラメータを確率的に拡散させる。変化が大きい場合には広い範囲に、小さい場合には狭い範囲に拡散させる。この拡散させる幅が、本発明のシステムノイズに相当する。そして、(4)各走路パラメータの値の尤もらしさ(尤度)を観測値(車線境界点)を用いて重み付けし、(5)観測値により更新された走路パラメータの確率分布を算出する。
【0045】
また、上記実施の形態では、車線境界点の分布を、遠方領域または近傍領域、及び左側または右側に存在するか否かにより判定する場合について説明したが、この場合に限定されない。より詳細な領域に分割して分布を判定してもよいし、遠方領域または近傍領域のみで判定するようにしてもよく、推定する走路パラメータの性質に応じて、観測値である車線境界線の分布が判定できるものであればよい。
【0046】
また、本発明のプログラムは、記録媒体に格納して提供したり、有線または無線による通信手段を介して提供したりする形態としてもよい。また、ソフトウエア構成による実現に限られるものではなく、ハードウエア構成や、ハードウエア構成とソフトウエア構成の組み合わせによって実現してもよい。
【符号の説明】
【0047】
10 走路推定装置
12 撮像装置
16 コンピュータ
30 特徴点抽出部
32 車線境界点選択部
34 分布判定部
36 システムノイズ設定部
38 走路パラメータ推定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両周辺を撮像した撮像画像を取得する取得手段と、
前記取得手段により取得した撮像画像から、車線を示す特徴点を抽出する抽出手段と、
前記抽出手段により抽出された特徴点の分布に基づいて、前記自車両が走行する走路に対する自車両の位置及び姿勢、並びに該走路の形状及び大きさに関する走路パラメータを推定する際の該走路パラメータの変動の度合いを示すシステムノイズを設定する設定手段と、
前記抽出手段により抽出された特徴点、過去の前記走路パラメータの推定結果、及び前記設定手段により設定されたシステムノイズに基づいて、離散時間信号を扱う確率的信号処理により前記走路パラメータを推定する推定手段と、
を含む走路推定装置。
【請求項2】
前記走路に対する自車両の位置及び姿勢に関する走路パラメータを、該走路に対する自車両の横位置、該走路の中央線に対するヨー角、及び該走路の平面に対するピッチ角とし、前記走路の形状及び大きさに関する走路パラメータを、該走路の曲率及び該走路の車線幅とした請求項1記載の走路推定装置。
【請求項3】
前記設定手段は、前記特徴点が撮像画像上の遠方領域にのみ分布する場合には、前記走路の曲率、前記走路の車線幅、及び前記走路に対する自車両の横位置に対応するシステムノイズの各々を小さくし、前記特徴点が撮像画像上の近傍領域にのみ分布する場合には、前記走路の曲率に対応するシステムノイズを小さくし、前記車線の左側境界を示す特徴点または右側境界を示す特徴点のみが分布している場合には、前記走路の車線幅、及び前記走路の平面に対するピッチ角に対応するシステムノイズの各々を小さくし、前記特徴点が予め定めた所定数以上存在しない場合には、全ての走路パラメータに対応するシステムノイズの各々を小さくする請求項2記載の走路推定装置。
【請求項4】
コンピュータを、
自車両周辺を撮像した撮像画像を取得する取得手段、
前記取得手段により取得した撮像画像から、車線を示す特徴点を抽出する抽出手段、
前記抽出手段により抽出された特徴点の分布に基づいて、前記自車両が走行する走路に対する自車両の位置及び姿勢、並びに該走路の形状及び大きさに関する走路パラメータを推定する際の該走路パラメータの変動の度合いを示すシステムノイズを設定する設定手段、及び
前記抽出手段により抽出された特徴点、過去の前記走路パラメータの推定結果、及び前記設定手段により設定されたシステムノイズに基づいて、離散時間信号を扱う確率的信号処理により前記走路パラメータを推定する推定手段
として機能させるための走路推定プログラム。
【請求項5】
コンピュータを、請求項1〜請求項3のいずれか1項記載の走路推定装置を構成する各手段として機能させるための走路推定プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−68961(P2012−68961A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−214025(P2010−214025)
【出願日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】