説明

起倒式シート

【課題】乳幼児が暴れても衝撃吸収性に優れて使用感が高く、さらにコスト低減も可能となる起倒式シートを提供することを目的としている。
【解決手段】起倒可能なシート本体20の4辺に沿って、シート面20aより立ち上がるガード部24を形成し、該ガード部24の表層部分を、シート面20aを成すクッション22と一体に形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、矩形状のシート本体と、該シート本体の上面に取り付けられた軟質材からなるクッションとを備え、壁面側に対して前記シート本体の一側辺を回転軸周りに揺動可能に枢支し、該シート本体を壁面側に沿って起立させた収納位置と略水平に引倒した使用位置とに変位できる起倒式シートに関し、特に、公衆用の化粧室等で乳幼児を寝かせて世話をするときに使用するベビーシートに適した起倒式シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、壁面側に対してシート本体の一側辺を回転軸周りに揺動可能に枢支して、使用時にはシート本体を略水平に引倒し、収納時にはこれを起立させて壁面側に沿わせる起倒式シートは多数知られている。具体的には、公衆用の化粧室等の公共のスペースに設置され、乳幼児を一時的に寝かせたり、乳幼児のオムツを交換したりするときのためのベビーシートがある。
【0003】
例えば本件発明者らは、特許文献1に示すように、ベッド部を開くときに倒伏動作が一挙に行われずに緩やかに行われるようにし、また、収納するとき楽な力でベッド部を起立させることができるように、ベッド部の落下モーメントに対向する上昇モーメントを発生させるばね部材を備え、このばね部材が破損したときに確実に使用不能にして安全性を確保することができるベビーシート(起倒開閉構造体)を既に提案している。
【0004】
このような特許文献1に記載のベビーシートでは、ベッド部に、乳幼児の転落を防止するための樹脂部品から成るガード(囲繞部材)が載置面を囲むように設けられていた。また、ガードの一辺の端縁がそのまま手掛かりとなっていたが、専用部品(ハンドル)を後付けする場合もあった。また、ベッド部を起立させる際、衝撃吸収のために専用のクッション材を壁面側に当接させていた。さらに、ベッド部の外周を囲むガードの上端縁と壁面との間には、指が挟まらない程度の空間(20mm以上の隙間)が設けられていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−237838号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述した特許文献1に記載のベビーシートでは、次のような問題を解決するための更なる改良が望まれていた。先ず、ガードの角の部分にはアールが付けられていたが、材質の樹脂は相当固いものであるため、乳幼児が暴れてぶつかった際に痛がることが予想される。また、ガードの一辺がそのまま手掛かりである場合は、どこに手を掛けるべきか分りづらく、専用部品を後付けする場合は、部品費や取り付け費用(工数)等とコストが嵩むという問題があった。
【0007】
また、ベッド部を起立させた際に衝撃を吸収する専用のクッション材は、その部品費や取り付け費用(工数)等とコストが嵩むという問題があった。さらに、ガードの上端縁と壁面との間に指が挟まらない空間を設けるには、未使用時になるべくガードの厚みを薄くして邪魔にならないようにすべく、特別なリンク機構を備えており、複雑でコスト高を招くばかりでなく、各部品間の隙間が構造上多くなり、清掃性が良くないという問題もあった。
【0008】
本発明は、以上のような従来の技術の有する問題点に着目してなされたものであり、乳幼児が暴れても衝撃吸収性に優れて使用感が高く、専用部品を後付けすることなく手掛かりにより容易に動かすことができ、また、シート本体を起立させた際の衝撃吸収用の専用クッション材も不要となりコスト低減が可能となり、さらに、シート本体を起立させた際に壁との隙間を小さくすることができ、よりいっそうコスト低減が可能になると共に、清掃性を向上させることができる起倒式シートを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述した目的を達成するための本発明の要旨とするところは、以下の各項の発明に存する。
[1]矩形状のシート本体(20)と、該シート本体(20)の上面に取り付けられた軟質材からなるクッション(22)とを備え、壁面(W)側に対して前記シート本体(20)の一側辺を回転軸(12)周りに揺動可能に枢支し、該シート本体(20)を壁面(W)側に沿って起立させた収納位置と略水平に引倒した使用位置とに変位できる起倒式シート(10)において、
前記シート本体(20)の4辺のうち少なくとも何れか1辺に沿って、シート面(20a)より立ち上がるガード部(24)を形成し、該ガード部(24)の少なくとも一部を、前記シート面(20a)を成す前記クッション(22)と一体に形成したことを特徴とする起倒式シート(10)。
【0010】
[2]前記ガード部(24)は、前記シート本体(20)の基枠となるフレーム(21)の一部を成すリブ(210)を挟み込むように嵌合したことを特徴とする[1]に記載の起倒式シート(10)。
【0011】
[3]前記ガード部(24)の外側に、前記ガード部(24)の基準面に対して凹設され、前記シート本体(20)を動かす際の手掛かりとなる手掛かり部(25)を設けたことを特徴とする[1]または[2]に記載の起倒式シート(10)。
【0012】
[4]前記手掛かり部(25)は、前記シート本体(20)に埋設されたことを特徴とする[3]に記載の起倒式シート(10)。
【0013】
[5]前記ガード部(24)に、前記壁面(W)側との当接面(26)を形成したことを特徴とする[1],[2],[3]または[4]に記載の起倒式シート(10)。
【0014】
[6]前記当接面(26)は、前記ガード部(24)の一部を突出させて形成したことを特徴とする[5]に記載の起倒式シート(10)。
【0015】
[7]前記ガード部(24)は、前記シート本体(20)の4辺のうち前記一側辺を除く3辺に沿って形成したことを特徴とする[1],[2],[3],[4],[5]または[6]に記載の起倒式シート(10)。
【0016】
次に、前述した解決手段に基づく作用を説明する。
前記[1]に記載の起倒式シート(10)によれば、シート本体(20)の4辺のうち少なくとも何れか1辺に沿って、シート面(20a)より立ち上がるガード部(24)を形成し、該ガード部(24)の少なくとも一部を、前記シート面(20a)を成すクッション(22)と一体に形成する。ここでクッション(22)は、柔らかく厚みがあり衝撃吸収性が高い素材である。
【0017】
これにより、ガード部(24)によって、シート本体(20)に寝かされた乳幼児等の身体がそこからはみ出さないように囲うことができる。しかも、寝かされた乳幼児等が暴れても、手足や頭等を打ち付ける範囲にはクッション(22)があるため、衝撃吸収性に優れて、使用感を高めることができる。
【0018】
ここで前記[2]に記載したように、ガード部(24)を、シート本体(20)の基枠となるフレーム(21)の一部を成すリブ(210)を挟み込むように嵌合させることにより、ガード部(24)が柔軟性のあるクッション(22)から成る場合でも、その形状をしっかりと保持することができる。
【0019】
また、前記[3]に記載の起倒式シート(10)によれば、ガード部(24)の外側に、ガード部(24)の基準面に対して凹設され、シート本体(20)を動かす際の手掛かりとなる手掛かり部(25)を設けたことにより、手掛かりとなる範囲が広くなり、様々な方向から手を掛けて動かすことが可能となるため使い勝手も向上する。しかも、専用部品(ハンドル)を後付けする場合のように、コストが嵩むことがない。
【0020】
ここで前記[4]に記載したように、前記手掛かり部(25)を、シート本体(20)に埋設させることにより、余計な構造が周囲に出っ張ることがなくなり、物が引っ掛かる虞がなく、また、見た目もすっきりとしたデザインとなり、さらに、清掃性も向上する。
【0021】
また、前記[5]に記載の起倒式シート(10)によれば、ガード部(24)に、壁面(W)側との当接面(26)を形成したことにより、シート本体(20)を起立させる際の衝撃吸収用の専用部品を別途設ける必要がなくなり、コスト低減が可能となる。
【0022】
ここで前記[6]に記載したように、前記当接面(26)は、ガード部(24)の一部を突出させて形成すると良い。これにより、例えば型抜きで容易に一体形成することができ、余計なコストがかからずにすむ。
【0023】
さらにまた、前記[7]に記載した起倒式シート(10)のように、ガード部(24)を、シート本体(20)の4辺のうち壁面側に枢支する一側辺を除く3辺に沿って形成すれば、着座者を囲うことができる範囲が広がりいっそう安全性を高めることができる。また、クッション(22)によるガードの高さを維持したまま、壁面(W)側との隙間を極力無くしても問題なく、その分、シート本体(20)を起立させた未使用時の厚みを薄くして、外観をすっきりさせることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係る起倒式シートによれば、寝かされた乳幼児等が暴れても、手足や頭等を打ち付ける範囲にはクッションがあるため、衝撃吸収性に優れて、使用感を高めることができ、専用部品を後付けすることなく手掛かりにより容易に動かすことができ、また、シート本体を起立させた際の衝撃吸収用の専用クッション材も不要となりコスト低減が可能となり、さらに、シート本体を起立させた際に壁との隙間を小さくすることができ、よりいっそうコスト低減が可能になると共に、清掃性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施の形態に係るベビーシートのシート本体が使用位置にある状態を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態に係るベビーシートのシート本体が収納位置にある状態を示す斜視図である。
【図3】本発明の実施の形態に係るベビーシートのシート本体が使用位置にある状態を示す平面図である。
【図4】本発明の実施の形態に係るベビーシートのシート本体が収納位置にある状態を示す平面図である。
【図5】本発明の実施の形態に係るベビーシートのシート本体が使用位置にある状態を示す側面図である。
【図6】本発明の実施の形態に係るベビーシートのシート本体が収納位置にある状態を示す側面図である。
【図7】本発明の実施の形態に係るベビーシートのシート本体が使用位置にある状態を示す縦断面図である。
【図8】本発明の実施の形態に係るベビーシートのシート本体が収納位置にある状態を示す縦断面図である。
【図9】本発明の実施の形態に係るベビーシートのクッションを上方から見た斜視図である。
【図10】本発明の実施の形態に係るベビーシートのクッションを下方から見た斜視図である。
【図11】本発明の実施の形態に係るベビーシートのクッションを示す平面図である。
【図12】本発明の実施の形態に係るベビーシートのクッションを示す正面図である。
【図13】図11のXIII−XIII線断面図である。
【図14】図11のXIV−XIV線断面図である。
【図15】図11のXV−XV線断面図である。
【図16】本発明の実施の形態に係るベビーシートの下受カバーを上方から見た斜視図である。
【図17】本発明の実施の形態に係るベビーシートの下受カバーを下方から見た斜視図である。
【図18】本発明の実施の形態に係るベビーシートの下受カバーを示す平面図である。
【図19】本発明の実施の形態に係るベビーシートの下受カバーを示す正面図である。
【図20】図19のXX−XX線断面図である。
【図21】本発明の実施の形態に係るベビーシートの上面カバーを上方から見た斜視図である。
【図22】本発明の実施の形態に係るベビーシートの上面カバーを下方から見た斜視図である。
【図23】本発明の実施の形態に係るベビーシートの上面カバーを示す平面図である。
【図24】本発明の実施の形態に係るベビーシートの上面カバーを示す正面図である。
【図25】図24のXXV−XXV線断面図である。
【図26】本発明の実施の形態に係るベビーシートにおける排水処理を示す説明図である。
【図27】本発明の実施の形態に係るベビーシートにおける排水処理を示す説明図である。
【図28】本発明の実施の形態に係るベビーシートの下受カバーにおける排水孔の位置を示す説明図である。
【図29】本発明の実施の形態に係るベビーシートの下受カバーにおける排水孔の位置を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明を代表する実施の形態に係る起倒式シートについて、図面を参照して説明する。本実施の形態に係る起倒式シートは、シート本体を壁面側に沿って起立させた収納位置と略水平に引倒した使用位置とに変位可能なものである。以下に、起倒式シートをベビーシート10に適用した場合を例に説明する。ベビーシート10は、公衆用の化粧室等で乳幼児を座らせたり寝かせて世話をするときに使用するベッド状のものである。
【0027】
図1〜図6は、本実施の形態に係るベビーシート10の外観全体を示す。図1は、ベビーシート10のシート本体20を略水平に引倒した使用位置にある状態を示す斜視図であり、図2は、シート本体20を壁面W側に沿って起立させた収納位置にある状態を示す斜視図である。図3は、シート本体20が使用位置にある状態を示す平面図であり、図4は、シート本体20が収納位置にある状態を示す平面図である。図5は、シート本体20が使用位置にある状態を示す側面図であり、図6は、シート本体20が収納位置にある状態を示す側面図である。
【0028】
各図に示すように、ベビーシート10は、壁面Wに固定されるベース11と、該ベース11の上端部に揺動可能に支持される矩形状のシート本体20と、該シート本体20の上面に取り付けられた軟質材からなるクッション22とを備える。壁面W側であるベース11の上端部に対して、シート本体20の一側辺が回転軸12周りに揺動可能に枢支されている。つまり、回転軸12周りにシート本体20を揺動することにより、シート本体20が壁面Wに沿って起立した収納位置(図2参照)と、シート本体20が略水平に引倒された使用位置(図1参照)とに変位可能となっている。
【0029】
図7は、シート本体20が使用位置にある状態を示す縦断面図であり、図8は、シート本体20が収納位置にある状態を示す縦断面図である。これらの図に示すように、ベース11は、壁面Wに沿って立設させる金属製の固定フレーム110と、この固定フレーム110を覆うように取り付けられるベースカバー111とを備えている。
【0030】
ベース11の上端部には、シート本体20の回転軸12を回動可能に軸支するための軸受け13が設けられている。軸受け13の周囲には図示省略したが、シート本体20を使用位置に係止するストッパのほか、シート本体20の落下モーメントに対向する上昇モーメントを発生させるばね部材等を設けると良い。また、軸受け13の下方には、回転軸12の下方を覆う下受カバー14が設けられている。一方、軸受け13の上方には、回転軸12の上方を覆う上面カバー15が設けられている。下受カバー14および上面カバー15について詳しくは後述する。
【0031】
図1〜図8に示すように、シート本体20は、全体的には両側方向に延びる矩形状に形成されており、上面が開口した底浅箱形のフレーム21と、この上面に取り付けられてシート面20aをなすクッション22と、フレーム21の下面側を覆うように装着されるカバー体23から成る。シート本体20の4辺のうち、前記回転軸12周りに揺動する一側辺を含む4辺に沿って、クッション22のシート面20aより立ち上がるガード部24が形成されている。
【0032】
図2に示すように、ガード部24は、前記シート面20aを成すクッション22と一体に形成されている。詳しく言えばガード部24は、シート面20aの両側短辺に沿ってそれぞれ立ち上がる一対の側縁ガード部24a,24bと、シート面20aの前記回転軸12側である後側長辺(一側辺)とは反対側の前側長辺に沿って立ち上がる前縁ガード部24cとからなる。また、シート面20aの前記回転軸12側である後側長辺にも、実質的には後側長辺に沿って立ち上がる後縁ガード部24dが形成されている。
【0033】
図7に示すように、ガード部24は、後縁ガード部24dを除いてシート本体20の基枠となるフレーム21のリブ210を挟み込むようにクッション22を嵌合してなる。なお、後縁ガード部24dは、他の側縁ガード部24a,24bや前縁ガード部24cの高さの略半分の高さであるため、必ずしもガード部24として捉える必要はない。
【0034】
フレーム21は、上面が開口した底浅箱形に合成樹脂等の硬質材で一体成形されており、リブ210は、フレーム21の底板の4辺に沿ってフランジ状に立ち上がるように設けられている。また、フレーム21の後側長辺が、前記ベース11に設けられている軸受け13に揺動可能に連結される。
【0035】
図9〜図15は、クッション22を示している。図9は、クッション22を上方から見た斜視図であり、図10は、クッション22を下方から見た斜視図である。図11は、クッション22の平面図であり、図12は、クッション22の正面図である。また、図13は、図11のXIII−XIII線断面図であり、図14は、図11のXIV−XIV線断面図であり、図15は、図11のXV−XV線断面図である。
【0036】
図9〜図15に示すように、クッション22は、例えば発泡ウレタン等の軟質材から一体成形されるものである。かかるクッション22の形状は、シート面20aを底とする底深のトレー状であり、型抜き容易な形状となっている。詳しく言えば、クッション22におけるシート面20aの両側短辺と前側長辺の3側辺は、前記ガード部24を形成すべく同じ高さに立ち上がっている。
【0037】
かかるクッション22の立ち上がり部分の裏側には、前記フレーム21のリブ210が嵌入する取付溝220(図10,図13参照)が形成されている。同様に、クッション22におけるシート面20aの後側長辺の側にも、他の3辺に比べて低い前記後縁ガード部24dを成す立ち上がり部分があり、当該部位は後述する上面カバー15の一部と共に小物等を置ける載置面を成すことになる。
【0038】
カバー体23は、前記フレーム21の下面側を覆う形状に合成樹脂等の硬質材で一体成形される。かかるカバー体23は、シート本体20の底面および側面を囲うものであり、シート本体20の側面を覆う部分においては、前記ガード部24の外側外装を成している。カバー体23の上端縁に連なる前記クッション22の立ち上がり部分の上端縁は、カバー体23の上端縁より内側に一段凹むように形成されている。
【0039】
これにより、ガード部24の外側には、その基準面(カバー体23の外表面)に対して凹設され、シート本体20を動かす際の手掛かりとなる手掛かり部25が形成されている。図3に示すように、手掛かり部25は、シート本体20の4辺のうち後側長辺を除く3辺より立ち上がるガード部24の上端側において、シート本体20に埋設されるように形成されている。
【0040】
また、ガード部24の上端側をなすクッション22の立ち上がり部分の上端縁には、前記壁面W側との当接面26が形成されている。図1に示すように、当接面26は、シート本体20の前側長辺の両端において、それぞれ前記クッション22の上端縁の一部を円柱形に突出させた端面として形成されている。当接面26は、シート本体20を収納位置まで揺動させた際に前記壁面Wに当接するように設定されている。
【0041】
さらに、図1,図3に示すように、クッション22の中央部分には、シート面20aに乳幼児を寝かせた際に乳幼児を拘束するベルト27を通すための一対のベルト挿通孔28,28が形成されている。各ベルト挿通孔28の周囲表面に、該ベルト挿通孔28への液体の侵入を防止するためのリブ29が形成されている。リブ29は、ベルト挿通孔28の内周縁を取り囲むようシート面20aの基準面より一段高い凸状断面に形成されている。
【0042】
図16〜図20は、下受カバー14を示している。図16は、下受カバー14を上方から見た斜視図であり、図17は、下受カバー14を下方から見た斜視図である。図18は、下受カバー14の平面図であり、図19は、下受カバー14の正面図である。また、図20は、図19のXX−XX線断面図である。下受カバー14は、前記回転軸12の下方を覆う形状に合成樹脂等の硬質材で一体成形されている。下受カバー14は、回転軸12の下方を覆うことで指等の侵入を防ぎ安全性を高めると共に、シート本体20に侵入した液体の水受けともなる部材である。
【0043】
図21〜図25は、上面カバー15を示している。図21は、上面カバー15を上方から見た斜視図であり、図22は、上面カバー15を下方から見た斜視図である。図23は、上面カバー15の平面図であり、図24は、上面カバー15の正面図である。また、図25は、図24のXXV−XXV線断面図である。上面カバー15は、前記回転軸12の上方を覆う形状に合成樹脂等の硬質材で一体成形されている。上面カバー15は、回転軸12の上方からの指等の侵入を防ぎ安全性を高めると共に、小物を載せるスペースを確保することができる部材である。
【0044】
図7および図8に示すように、前記カバー体23の回転軸12側に延びる後側長辺は、前記軸受け13を周回するように立ち上がっており、この後側長辺の外側に沿うように、回転軸12の下方を覆う下受カバー14が配されている。下受カバー14は、前記ベース11の上端部に取り付けられている。また、下受カバー14に対して軸受け13を間に対向する上側には、前記軸受け13を周回してから水平に延びさらに垂直に立ち上がる上面カバー15が配されている。上面カバー15も、前記ベース11の上端部に取り付けられている。
【0045】
上面カバー15の水平部分15bは、前記クッション22における後側長辺の立ち上がり部分の上端縁と共に小物等を置ける載置面を成している。なお、クッション22の後側長辺の立ち上がり部分と、上面カバー15のうち前記軸受け13を周回する下垂部分15cとの間には、液体が通過し得る程度の隙間が空いている。
【0046】
また、前記カバー体23で回転軸12側に延びる後側長辺は、前記軸受け13を周回するように立ち上がっており、この後側長辺の端縁は、シート本体20を収納位置に起立させた際に、前記下受カバー14に下向きに連なる状態になるよう設定されている。これにより、シート本体20のシート面20aに溜まった液体は、シート本体20の収納位置への起立に伴って、シート本体20の後側長辺から上面カバー15を介してクッション22下側のカバー体23内側に流出し、このカバー体23より下受カバー14へ流出可能となっている。
【0047】
図16に示すように、下受カバー14のうちシート本体20の壁面W側に対する金属製の固定フレーム110を除く位置に排水孔141が設けられている。排水孔141は、下受カバー14の両側に一対設けられており、各排水孔141は、それぞれ壁面W側から手前側に離れた位置に形成されている。
【0048】
排水孔141は、シート本体20の底面となる前記カバー体23内側に溜まった液体を下受カバー14が受けた際に、液体を壁面Wや固定フレーム110から離れた所定の位置に排水するものである。また、図20に示すように、排水孔141の周囲表面に、前記壁面W側への液体の回り込みを防止するためのリブ142が形成されている。リブ142は、排水孔141の内周縁のうち後端側より下方に突出するように形成されている
【0049】
次に、本実施の形態に係るベビーシート10の作用について説明する。
図2,図6に示すように、シート本体20が収納位置にある際に、該シート本体20が起立してクッション22のガード部24の上端縁が壁面Wに沿った状態にある。このとき、ガード部24にある当接面26が壁面Wに当接している。これにより、シート本体20を起立させる際の衝撃吸収用の専用部品を別途設ける必要がなく、コスト低減が可能となる。
【0050】
また、従来のベビーシートでは、ガードの上端縁と壁面との間に指が挟まらない空間を設ける必要があったが、本ベビーシート10によれば、壁面Wに対向するガード部24の表層は、衝撃吸収性が高い素材からなるクッション22であるため、クッション22によりガード高さを維持したまま、壁面W側との隙間を極力無くしても安全上問題がない。その分、シート本体20を起立させた未使用時における壁面Wからの出っ張り(厚み)を薄くして、外観をすっきりとしたデザインにすることができる。
【0051】
ベビーシート10を使用するときには、シート本体20を前記収納位置から図1,図5に示す使用位置まで手前方向に引倒せば良い。ガード部24の外側には、その基準面に対して凹設された手掛かり部25があるため、シート本体20を動かす際の手掛かりとなる範囲が広く、様々な方向から手を掛けて容易に動かすことができる。しかも、専用部品(ハンドル)を後付けする必要もなくコスト低減が可能となり、余計な構造が周囲に出っ張ることもなく清掃性も向上する。
【0052】
図1に示すように、シート本体20が略水平に使用位置まで変位すると、シート本体20は、クッション22のシート面20aを底面とした略水平な状態に保持され、シート面20aの4辺は何れも、クッション22と一体に形成したガード部24によって囲まれる。これにより、シート面20aに乳幼児を寝かせて世話をする際に、シート本体20から乳幼児等の身体がはみ出ることがなく、乳幼児が暴れても手足や頭等を打ち付ける範囲がクッション22であるため、衝撃吸収性に優れて、使用感を高めることができる。
【0053】
ガード部24は、シート本体20の基枠となるフレーム21のリブ210を挟み込むように嵌合させているから、ガード部24が柔軟性のあるクッション22から成る場合でも、その形状をしっかりと保持することができる。また、ガード部24は、シート本体20の4辺に沿って形成されているため、乳幼児を囲う範囲も広く安全性をいっそう高めることができる。なお、シート本体20の後側長辺に沿う後縁ガード部24dは省略しても良い。
【0054】
また、クッション22にはベルト27が装備されており、シート面20aにあるベルト挿通孔28から引き出したベルト27によって、寝かせた乳幼児の動きを制限しておくことができる。ここで挿通孔28の周囲表面に、該挿通孔28への液体の侵入を防止するリブ29が形成されているため、クッション22のシート面20a上にこぼれたジュース等の液体が、ベルト挿通孔28よりシート本体20の内部に侵入することを防止することができる。
【0055】
次に、シート面20a上にこぼれたジュース等の液体の排水処理について説明する。
シート面20a上にこぼれた液体は、図26に示すように、シート本体20の収納位置への起立に伴って、シート本体20の後側長辺から上面カバー15と後縁ガード部24dとの隙間を通ってクッション22下側のカバー体23内側に流出する。
【0056】
続いて、図27に示すように、シート本体20を収納位置となる略垂直な状態まで起立させると、カバー体23はその後側長辺の端縁が下受カバー14に下向きに連なる状態となる。これにより、カバー体23に溜まっていた液体は下受カバー14へ流出する。下受カバー14には、排水孔141が設けられているため、下受カバー14まで流出した液体は、排水孔141より外部に排出される。これにより、液体がシート本体20の内部に残留して悪臭が発生することを未然に防止することができる。
【0057】
図28,図29に示すように、排水孔141は、下受カバー14のうち金属製の固定フレーム110を回避する位置に設けられているので、板金部位が直接被水することがなく錆の発生を防止することができる。また、排水孔141は、壁面W側から手前側に離れた位置にあるため、壁面W側が排水で汚れる事態を防止することができる。さらに、排水孔141の周囲表面には、壁面W側への液体の回り込みを防止するリブ142があるため、よりいっそう壁面W側が排水で汚れる事態を未然に防止することができる。
【0058】
以上、本発明の実施の形態を図面によって説明してきたが、具体的な構成は前述したような実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。例えば、前記実施の形態では、本発明に係る起倒式シートをベビーシートとして説明したが、他に介護用の簡易ベッド等にも適用することができる。また、前記ガード部24は、前記シート本体20の4辺に沿って形成したが、回転軸12側の後側長辺(一側辺)を除く3辺だけに沿って形成しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明に係る起倒式シートは、特に、公衆用の化粧室等で乳幼児を寝かせて世話をするときに使用するベビーシートとして活用することができる。
【符号の説明】
【0060】
10…ベビーシート
11…ベース
110…固定フレーム
111…ベースカバー
12…回転軸
13…軸受け
14…下受カバー
141…排水孔
142…リブ
15…上面カバー
20…シート本体
20a…シート面
21…フレーム
210…リブ
211…回動部
22…クッション
220…取付溝
23…カバー体
24…ガード部
24a…側縁ガード部
24b…側縁ガード部
24c…前縁ガード部
24d…後縁ガード部
25…手掛かり部
26…当接面
27…ベルト
28…ベルト挿通孔
29…リブ
W…壁面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
矩形状のシート本体と、該シート本体の上面に取り付けられた軟質材からなるクッションとを備え、壁面側に対して前記シート本体の一側辺を回転軸周りに揺動可能に枢支し、該シート本体を壁面側に沿って起立させた収納位置と略水平に引倒した使用位置とに変位できる起倒式シートにおいて、
前記シート本体の4辺のうち少なくとも何れか1辺に沿って、シート面より立ち上がるガード部を形成し、該ガード部の少なくとも一部を、前記シート面を成す前記クッションと一体に形成したことを特徴とする起倒式シート。
【請求項2】
前記ガード部は、前記シート本体の基枠となるフレームの一部を成すリブを挟み込むように嵌合したことを特徴とする請求項1に記載の起倒式シート。
【請求項3】
前記ガード部の外側に、前記ガード部の基準面に対して凹設され、前記シート本体を動かす際の手掛かりとなる手掛かり部を設けたことを特徴とする請求項1または2に記載の起倒式シート。
【請求項4】
前記手掛かり部は、前記シート本体に埋設されたことを特徴とする請求項3に記載の起倒式シート。
【請求項5】
前記ガード部に、前記壁面側との当接面を形成したことを特徴とする請求項1,2,3または4に記載の起倒式シート。
【請求項6】
前記当接面は、前記ガード部の一部を突出させて形成したことを特徴とする請求項5に記載の起倒式シート。
【請求項7】
前記ガード部は、前記シート本体の4辺のうち前記一側辺を除く3辺に沿って形成したことを特徴とする請求項1,2,3,4,5または6に記載の起倒式シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【公開番号】特開2011−41694(P2011−41694A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−192043(P2009−192043)
【出願日】平成21年8月21日(2009.8.21)
【出願人】(390010054)小糸工業株式会社 (136)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)