説明

起震装置

【課題】装置の大型化を回避しつつ長周期地震動の再現を可能とする起震装置を提供する。
【解決手段】起震装置K1は、直線方向に往復動可能な可動部Mを有するリニアアクチュエータ3と、可動部Mの往復動により伸縮するばね要素5と、リニアアクチュエータ3とばね要素5のいずれか一方を保持する保持部材2と、保持部材2に対して少なくとも可動部Mの往復動方向と同一方向へ相対移動が可能な可動床4とを備え、保持部材2と可動床4との間にリニアアクチュエータ3とばね要素5とが直列に接続されて介装される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、起震装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、起震装置としては、たとえば、車両に搭載されるものを例にとると、車体に固定されるクロスメンバと、このクロスメンバに対してX軸方向へ移動可能なX軸方向移動フレームと、クロスメンバとX軸方向移動フレームとの間に介装される油圧シリンダとを備えて構成され、油圧シリンダを駆動することによって、上記X軸方向移動フレームを車体に対してX軸方向へ駆動し振動させることで、地震動を再現するようにしている。
【0003】
なお、この起震装置では、Y軸方向へもZ軸方向へも地震動を再現するために、X軸方向移動フレームに対してY軸方向へ移動可能なY軸方向移動フレームと、Y軸方向移動フレームに対してZ軸方向へ移動可能なZ軸方向移動フレームとを設け、X軸方向移動フレームとY軸方向移動フレームとの間にY軸方向移動フレームをX軸方向移動フレームに対してY軸方向へ駆動させる油圧シリンダを介装するとともに、Y軸方向移動フレームとZ軸方向移動フレームとの間にZ軸方向移動フレームをY軸方向移動フレームに対してZ軸方向へ駆動させる油圧シリンダを介装するようにしている(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−259073号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の起震装置では、油圧シリンダを伸縮させることで一般的に大地震時に発生する程度の加速度で各フレームを振動させることができる点では問題はないが、長周期地震動を再現しようとすると問題が生じる。
【0006】
ここで、長周期地震動は、地震対策が施された高層建築物の固有振動数に近い振動数で当該高層建築物を加振するため、高層建築物の振動が増幅され、高層階では振幅が非常に大きくなることが知られている。
【0007】
このような長周期地震動を従来の起震装置で体験しようとすると、起震装置における各フレームを大きな振幅で振動させなくてはならない。具体的には、大きな振幅を油圧シリンダ等のリニアアクチュエータの伸縮で再現することから、リニアアクチュエータが長尺となって、起震装置が大型化してしまう問題がある。
【0008】
そこで、本発明は、上記不具合を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、装置の大型化を回避しつつ長周期地震動の再現を可能とする起震装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記した目的を達成するため、本発明の課題解決手段における起震装置は、直線方向に往復動可能な可動部を有するリニアアクチュエータと、上記可動部の往復動により伸縮するばね要素と、上記リニアアクチュエータとばね要素のいずれか一方を保持する保持部材と、上記保持部材に対して少なくとも上記可動部の往復動方向と同一方向へ相対移動が可能な可動床とを備え、上記保持部材と上記可動床との間に上記リニアアクチュエータと上記ばね要素とが直列に接続されて介装されたことを特徴とする。
【0010】
この起震装置では、可動床とばね要素とでなる系の固有振動数に一致する周波数でリニアアクチュエータの可動部を往復動させると、ばね要素が固有振動数で伸縮する。これにより、可動床が共振して往復運動を呈する。この結果、リニアアクチュエータの可動部の振幅を増幅して可動床に伝達することができ、可動床の振幅をリニアアクチュエータのストローク長よりも大きくすることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の起震装置によれば、リニアアクチュエータの可動部の振幅を増幅して可動床を大きな振幅で振動させることができるので、可動床の振幅よりも短いストローク長のリニアアクチュエータを利用することができる。この結果、装置の大型化を回避しつつ長周期地震動の再現が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】一実施の形態における起震装置の側面図である。
【図2】リニアアクチュエータの可動部の振幅に対する可動床の振幅のゲイン特性図である。
【図3】他の実施の形態における起震装置の鳥瞰図である。
【図4】別の実施の形態における起震装置の鳥瞰図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図に示した実施の形態に基づき、本発明を説明する。一実施の形態における起震装置K1は、図1に示すように、保持部材2と、リニアアクチュエータ3と、上記保持部材2に対して少なくとも上記リニアアクチュエータ3の伸縮方向と同一方向へ相対移動が可能な可動床4と、ばね要素5とを備えて構成されており、上記可動床4と上記保持部材2との間に上記リニアアクチュエータ3と上記ばね要素5を直列に接続して介装してある。
【0014】
そして、この起震装置K1では、リニアアクチュエータ3で可動床4を振動させることで地震を再現することができ、たとえば、可動床4へ被験者を乗せて振動を与えることで、被験者に地震を体験させることができ、また、構造物、建築物その他を可動床4へ乗せて可動床4を振動させることで、構造物や建築物等の地震被災実験を行うことも可能である。
【0015】
以下、一実施の形態の起震装置K1の各部について詳細に説明する。保持部材2は、この実施の形態では、可動床4が走行する走行床2aと、走行床2aから起立してリニアアクチュエータ3を保持する保持部2bとを備えて構成されている。
【0016】
リニアアクチュエータ3は、この実施の形態では、油圧シリンダとされており、保持部材2の保持部2bに保持されるシリンダ3aと、シリンダ3a内に摺動自在に挿入されたピストン3bと、シリンダ3a内に移動自在に挿入されるとともに一端がピストン3bに連結されたピストンロッド3cと、シリンダ3a内にピストン3bで区画したロッド側室R1とピストン側室R2とに作動油を給排させてシリンダ3aに対してピストン3bを軸方向に相対移動させる油圧ポンプ3dとを備えている。そして、このリニアアクチュエータ3にあっては、上記の油圧ポンプ3dによってロッド側室R1へ作動油を供給し、ピストン側室R2から作動油を排出させることで、ピストン3bとこれに連結されたピストンロッド3cを図1中右方向へ移動させることができるとともに、ロッド側室R1から作動油を排出させ、ピストン側室R2へ作動油を供給することでピストン3bとこれに連結されたピストンロッド3cを図1中左方向へ移動させることができる。すなわち、この実施の形態にあっては、リニアアクチュエータ3における可動部Mは、ピストン3bとこれに連結されたピストンロッド3cで構成され、当該可動部Mを直線方向へ往復移動させることができる。
【0017】
なお、リニアアクチュエータ3は、作動流体を作動油以外の流体、たとえば、気体を使用する空圧シリンダであってもよいし、このようなシリンダ型のアクチュエータ以外にも、リニアモータや、回転型のモータと送りねじ機構とでなるリニアアクチュエータとされてもよい。そして、リニアモータであれば、磁石と電磁石とで構成され、いずれか一方を可動部とすればよく、回転型のモータと送りねじ機構とでなるリニアアクチュエータにあっても、モータ或いは送りねじ機構にて直線運動を呈する部材を可動部とすればよい。
【0018】
他方、可動床4は、床本体4aと、床本体4aの下部に設けた複数の走行輪4bとを備え、上記した保持部材2の走行床2aを図1中左右方向となるリニアアクチュエータ3の伸縮方向に一致する方向へ走行することができるようになっている。つまり、可動床4は、保持部材2に対してリニアアクチュエータ3の伸縮方向に一致する方向へ移動することができるようになっている。
【0019】
なお、この実施の形態では、保持部材2の走行床2aを可動床4が走行するようになっているが、保持部材2が走行床の代わりにリニアアクチュエータ3の伸縮方向に沿うレールを備えていて、可動床4がレール上を走行するようにしてもよいし、また、保持部材2と可動床4との間にガイドレールとスライダでなるリニアガイドを設けて可動床4がリニアアクチュエータ3の伸縮方向に一致する方向以外へ移動することを制限してもよい。また、特に、可動床4の保持部材2に対する相対移動方向を制限しない場合には、走行輪4bが床本体4aに対して図中上下方向を軸として軸周りに回転するようにしておいてもよいし、走行輪4bに球状の車輪を持つボール車輪を使用したり、可動床4の床本体4aの下面或いは保持部材2の走行床2aの上面に多数のボールを配して、可動床4の相対移動を円滑にならしめるようにしてもよい。さらには、走行輪4bを廃して、走行床2aにローラを多数配置しておき、当該ローラ上を可動床4に走行させるようにしてもよく、走行輪4bを廃して走行床2aと可動床4を低摩擦材量で形成してこれらの接触面を平滑にして、走行床2a上を可動床4に滑らせるようにしてもよい。なお、保持部材2は、リニアアクチュエータ3を保持できればよいので、走行床2aは必須ではないが、上述したように、走行床2aを設ける方が、可動床4の走行に適する環境を提供することができるので、可動床4の円滑な移動を実現できる。
【0020】
ばね要素5は、この場合、コイルばねとされており、一端が可動床4に連結され、他端がリニアアクチュエータ3のピストンロッド3cに連結されている。つまり、ばね要素5とリニアアクチュエータ3とは、直列に接続されて、保持部材2と可動床4との間に介装されている。なお、ばね要素5は、コイルばねに限定されるものではなく、外力を受けることで伸縮し、当該伸縮に伴って外力に対抗する反力を発生するものであればよい。
【0021】
このように構成された起震装置K1にあっては、リニアアクチュエータ3の可動部Mであるピストン3bとピストンロッド3cを往復動させると、ばね要素5が伸縮する。そして、上記可動部Mの振動は、当該ばね要素5を介して可動床4へ伝達されるので、この起震装置K1は、可動床4を保持部材2に対して相対移動させることができる。
【0022】
そして、ばね要素5の質量を無視すれば、可動床4の質量とばね要素5のばね定数で決まる固有振動数、すなわち、可動床4とばね要素5の系における固有振動数に一致する周波数でリニアアクチュエータ3の可動部Mを往復動させると、ばね要素5が固有振動数で伸縮して可動床4が共振するので、リニアアクチュエータ3の可動部Mの振幅が増幅されて可動床4に伝達されることになる。可動床4の質量を1000kgとし、固有振動数を0.2Hzとし、振動の減衰比が5%である場合、リニアアクチュエータ3の可動部Mの振幅に対する可動床4の振幅のゲイン特性は、図2に示す通りであり、上記固有振動数にてリニアアクチュエータ3の可動部Mを伸縮させる場合、可動部Mの振幅に対する可動床4の振幅の倍率は、10倍程度となる(図2中実線)。また、同条件で、減衰比が2%の場合には、同倍率は、25倍程度となる(図2中破線)。実際には、リニアアクチュエータ3で可動床4を加振させる場合、可動床4上に積載される被験者や物の質量も含めて固有振動数を求め、リニアアクチュエータ3を駆動するようにすればよい。
【0023】
このように、本発明の起震装置K1では、リニアアクチュエータ3の可動部Mの振幅を増幅することで、可動床4を大きな振幅で振動させることができ。これにより、起震装置K1では、可動床4の振幅よりも短いストローク長を持つリニアアクチュエータ3を利用することができる。したがって、本発明の起震装置1によれば、装置の大型化を回避しつつ長周期地震動の再現が可能となる。
【0024】
また、この起震装置K1で、長周期地震動を体験する場合、ばね要素5のばね定数を変更することで、様々な建物の特性を簡単に再現することができる。
【0025】
なお、リニアアクチュエータ3は、保持部材2に連結されていたが、ばね要素5を保持部材2に連結して可動床4とばね要素5との間にリニアアクチュエータ3を介装するようにしてもよい。具体的には、保持部材2の保持部2bにばね要素5の一端を連結し、ばね要素5の他端をリニアアクチュエータ3のシリンダ3aと可動部Mの一方に連結し、リニアアクチュエータ3のシリンダ3aと可動部Mの他方を可動床4に連結するようにしてもよい。この場合もリニアアクチュエータ3の可動部Mを往復動させると、可動床4が保持部材2に対して相対移動し、慣性力でばね要素5も伸縮することになるので、上記したところと同様の作用効果を得ることができる。
【0026】
上記したところでは、可動床4の移動方向が制限されておらず、ばね要素5の図1中紙面を貫く方向への撓みも許容されているので、ある程度は、図1中紙面を貫く方向への移動も許容される。しかしながら、このままでは、自由度が低い。そこで、自由度を高めるためには、図3に示した他の実施の形態の起震装置K2のように、上記保持部材2が第二保持部材6上をリニアアクチュエータ3の可動部の往復動方向とは異なる方向へ相対移動することができるようにし、保持部材2と第二保持部材6との間に、リニアアクチュエータ3の可動部の往復動方向と異なる方向へ往復動する可動部を有する第二リニアアクチュエータ7と第二ばね要素8とを直列接続して介装するようにすればよい。
【0027】
第二保持部材6は、保持部材2が走行する走行床6aと、走行床6aから起立して第二リニアアクチュエータ7を保持する保持部6bとを備えて構成されている。保持部材2は、この場合、走行床2aの床下に複数の走行輪2cを設けてあって、第二保持部材6の走行床6a上を円滑に走行することができるようになっている。
【0028】
第二リニアアクチュエータ7については、詳細には図示しないが、リニアアクチュエータ3と同様に、直線方向へ往復動する可動部を備えており、各種のリニアアクチュエータの使用が可能であり、第二ばね要素8についてもばね要素5と同様である。
【0029】
この他の実施の形態における第二保持部材6と保持部材2との関係は、図1に示した一実施の形態における保持部材2と可動床4との関係に相当している。したがって、リニアアクチュエータ3の可動部の往復動方向とは異なる方向へ往復動する可動部を有する第二リニアアクチュエータ7と、第二ばね要素8とで、第二保持部材6に対して保持部材2をリニアアクチュエータ3の可動部の往復動方向とは異なる方向へ保持部材2を振動させることで、保持部材2の振幅も第二リニアアクチュエータ7の振幅が増幅されるので、第二リニアアクチュエータ7のストローク長を超える振幅となる。なお、図3では、図が複雑となるため、可動床4の床本体4aの下部に設けられた走行輪4bの図示を省略している。また、図3中の実線矢印は、アクチュエータ3の可動部の往復動する方向、つまり、往復動方向を示しており、破線矢印は、第二アクチュエータ7の可動部(符示せず)の往復動方向を示している。
【0030】
他の実施の形態における起震装置K2にあっては、一実施の形態と同様の構成を備えている、すなわち、保持部材2、リニアアクチュエータ3、可動床4およびばね要素5を備えているので、保持部材2上では、可動床4は、上述の一実施の形態の起震装置K1と同様の動作を呈する。なお、この例の場合、第二リニアアクチュエータ7については、保持部材2、可動床4、リニアアクチュエータ3およびばね要素5を加振するので、これらと第二ばね要素8の系における固有振動数を求め、当該固有振動数で第二リニアアクチュエータ7を駆動することになる。具体的には、起震装置K1と同様の部材に走行輪2cを加算した質量と第二ばね要素8のばね定数から固有振動数を求めればよい。
【0031】
このように起震装置K2を構成することで、可動床4が異なる方向へ伸縮するリニアアクチュエータ3と第二リニアアクチュエータ7によって振動せしめられるので、可動床4は、2自由度で振動せしめられ、より実際に近い地震動を再現することができるようになる。
【0032】
また、第二リニアアクチュエータ7のストローク長以上の振幅で保持部材2を振動させることができるので、装置の大型化を回避しつつ長周期地震動の再現が可能となるのは当然である。
【0033】
なお、上述した通り、第二保持部材6と保持部材2との関係は、図1に示した一実施の形態における保持部材2と可動床4との関係に相当しており、これらの構造については、保持部材2と可動床4の詳細説明で説明したように、各種の構造を採用することが可能であることは当然である。
【0034】
また、図示したところでは、第二リニアアクチュエータ7とリニアアクチュエータ3とが、可動床4を水平方向に移動させるようになっているが、いずれか一方または両方の可動部の往復動方向に上下方向成分を含ませるようにしてもよい。この場合には、可動床4を傾かせずに振動させることができるように、保持部材2と第二保持部材6との間、可動床4と保持部材2との間にリニアガイドを設けるとよい。
【0035】
さらに、第二リニアアクチュエータ7の可動部の往復動方向と、リニアアクチュエータ3の可動部Mの往復動方向と、可動床4の移動方向と、保持部材2の移動方向とを一致させるようにすることも可能である。この場合には、第二リニアアクチュエータ7の伸縮によって保持部材2が共振し、さらに、リニアアクチュエータ3の伸縮によって可動床4も保持部材2と同一方向へ共振するので、可動床4の振動の振幅を起震装置K1よりもさらに大きくすることができる。
【0036】
最後に、図4に示した別の実施の形態の起震装置K3を説明する。この起震装置K3は、可動床4を3軸の方向へ振動させるようにしたものである。
【0037】
この起震装置K3は、図4に示すように、他の実施の形態の起震装置K2に第三保持部材9、第三リニアアクチュエータ10および第三ばね要素11を追加して設けている。
【0038】
具体的には、第二保持部材6と第三保持部材9との間にリニアアクチュエータ3の伸縮方向と第二リニアアクチュエータ7の伸縮方向と異なり、これらアクチュエータ3,7の伸縮方向を含む平面内にない方向へ伸縮する第三リニアアクチュエータ10と第三ばね要素11とを直列接続して介装してある。第三リニアアクチュエータ9については、詳細には図示しないが、リニアアクチュエータ3と同様に、直線方向へ往復動する可動部を備えており、各種のリニアアクチュエータの使用が可能であり、第三ばね要素11についてもばね要素5と同様である。なお、図4では、図が複雑となるため、可動床4の走行輪4bと保持部材2の走行輪2cの図示を省略している。また、図4中の実線矢印は、アクチュエータ3の可動部の往復動方向を示しており、破線矢印は、第二アクチュエータ7の可動部の往復動方向を示しており、さらに、図4中一点鎖線矢印は、第三アクチュエータ10の可動部の往復動方向を示している。
【0039】
可動床4の3軸の各方向への振動は、リニアアクチュエータ3、第二リニアアクチュエータ7および第三リニアアクチュエータ10によって与えられるが、必ずしも、三軸の方向はそれぞれが直行する方向でなくともよく、各リニアアクチュエータ3,7,10の伸縮方向が全て異なっており、これらの三つのリニアアクチュエータ3,7,10のうち一つの伸縮方向が、残り二つの伸縮方向を含む平面内になければ、可動床4を3次元的に振動させることができる。
【0040】
この実施の形態では、第二保持部材6を第三保持部材9に対して上下方向へ振動させるようにしており、そのために、第三保持部材9は、第三リニアアクチュエータ10の一端を保持する基部9aと、基部9aから立ち上がるガイドレール9bとを備えており、第二保持部材6は、ガイドレール9bをスライド自在に把持するスライダ6cを備えている。
【0041】
また、第二保持部材6の走行床6aと第三リニアアクチュエータ10の他端との間には第三ばね要素11が介装されており、第三リニアアクチュエータ10を伸縮させることで、第二保持部材6を図3中に示すように一点鎖線方向へ振動させることができる。そして、この別の実施の形態における第三保持部材9と第二保持部材6との関係は、図1に示した一実施の形態における保持部材2と可動床4との関係、図3に示した他の実施の形態における第二保持部材6と保持部材2との関係に相当している。したがって、この第三保持部材9と第二保持部材6との間に介装される第三リニアアクチュエータ10と第三ばね要素11とで、第三保持部材9に対して第二保持部材6を振動させるとともに、その振幅も第三リニアアクチュエータ10の振幅が増幅されるため、第三リニアアクチュエータ10のストローク長を超える振幅となる。
【0042】
なお、別の実施の形態における起震装置K3にあっては、他実施の形態と同様の構成を備えているので、第二保持部材6上では、保持部材2および可動床4は、上述の他の実施の形態の起震装置K2と同様の動作を呈する。なお、この例の場合、第三リニアアクチュエータ10については、起震装置K2に相当する部材にスライダ6cを加算した質量と第三ばね要素11のばね定数から固有振動数を求め、当該固有振動数で第三リニアアクチュエータ10を駆動することになる。
【0043】
このように起震装置K3を構成することで、可動床4が3軸方向へ振動させることができ、可動床4は、3次元的に振動せしめられるので、より精密に地震動を再現することができるようになる。
【0044】
また、第三リニアアクチュエータ10のストローク長以上の振幅で第二保持部材6を振動させることができるので、装置の大型化を回避しつつ長周期地震動の再現が可能となるのは当然である。
【0045】
なお、上述した通り、第三保持部材9と第二保持部材6との関係は、上記したように保持部材2と可動床4との関係に相当しており、これらの構造については、保持部材2と可動床4の詳細説明で説明したように、各種の構造を採用することが可能であることは当然である。
【0046】
さらに、本実施の形態では、第三保持部材9に対して第二保持部材6を上下方向へ振動させるようにしているが、第二保持部材6に対して保持部材2を上下方向へ振動させる態様としてよいし、保持部材2に対して可動床4を上下方向へ振動させる態様としてもよいことは当然である。
【0047】
またさらに、第三リニアアクチュエータ10の可動部の往復動方向と、第二リニアアクチュエータ7の可動部の往復動方向と、リニアアクチュエータ3の可動部Mの往復動方向と、可動床4の移動方向と、保持部材2の移動方向と、第二保持部材5の移動方向を一致させるようにすることも可能である。この場合には、第三リニアアクチュエータ10の伸縮によって第二保持部材6が共振し、第二リニアアクチュエータ7の伸縮によって保持部材2が共振し、さらに、リニアアクチュエータ3の伸縮によって可動床4も保持部材2と同一方向へ共振するので、可動床4の振動の振幅を起震装置K1よりもさらに大きくすることができる。
【0048】
以上で、本発明の実施の形態についての説明を終えるが、本発明の範囲は図示されまたは説明された詳細そのものには限定されないことは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明の起震装置は、地震動を体験したり地震動を与えて実験するための地震シミュレータ等に利用することが可能である。
【符号の説明】
【0050】
2 保持部材
3 リニアアクチュエータ
5 ばね要素
6 第二保持部材
7 第二リニアアクチュエータ
8 第二ばね要素
9 第三保持部材
10 第三リニアアクチュエータ
11 第三ばね要素
M 可動部
K1,K2,K3 起震装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直線方向に往復動可能な可動部を有するリニアアクチュエータと、上記可動部の往復動により伸縮するばね要素と、上記リニアアクチュエータとばね要素のいずれか一方を保持する保持部材と、上記保持部材に対して少なくとも上記可動部の往復動方向と同一方向へ相対移動が可能な可動床とを備え、上記保持部材と上記可動床との間に上記リニアアクチュエータと上記ばね要素とが直列に接続されて介装されたことを特徴とする起震装置。
【請求項2】
直線方向に往復動可能な可動部を有する第二リニアアクチュエータと、上記第二リニアアクチュエータの可動部の往復動により伸縮する第二ばね要素と、上記第二リニアアクチュエータと第二ばね部材のいずれか一方を保持する第二保持部材とを備え、上記保持部材が上記第二保持部材に対して少なくとも上記第二リニアアクチュエータの可動部の移動方向と同一方向へ相対移動が可能であって、上記保持部材と上記第二保持部材との間に上記第二リニアアクチュエータと上記第二ばね要素とが直列に接続されて介装されたことを特徴とする請求項1に記載の起震装置。
【請求項3】
上記リニアアクチュエータの可動部の往復動方向と上記第二リニアアクチュエータの可動部の往復動方向とが異なることを特徴とする請求項2に記載の起震装置。
【請求項4】
直線方向に往復動可能な可動部を有する第三リニアアクチュエータと、上記第三リニアアクチュエータの可動部の往復動により伸縮する第三ばね要素と、上記第三リニアアクチュエータと第三ばね要素のいずれか一方を保持する第三保持部材とを備え、上記第二保持部材が上記第三保持部材に対して少なくとも上記第三リニアアクチュエータの可動部の往復動方向と同一方向へ相対移動が可能であって、上記第二保持部材と上記第三保持部材との間に上記第三リニアアクチュエータと上記第三ばね要素とが直列に接続されて介装されたことを特徴とする請求項2または3に記載の起震装置。
【請求項5】
上記第三リニアアクチュエータの可動部の往復動方向は、上記リニアアクチュエータの可動部の往復動方向と上記第二リニアアクチュエータの可動部の往復動方向の双方を含む平面に含まれないことを特徴とする請求項4に記載の起震装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−181297(P2012−181297A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−43454(P2011−43454)
【出願日】平成23年3月1日(2011.3.1)
【出願人】(304039065)カヤバ システム マシナリー株式会社 (185)