説明

超伝導ジョイント

【課題】液体極低温媒体への浸漬冷却によらないマグネットにおいて、超伝導ジョイントが充分に冷却されるようにするための超伝導ジョイントの冷却方法を提供する。
【解決手段】冷却される超伝導ジョイント(18;60)であって、ジョイントカップ(20;40;66)と、前記ジョイントカップ内に配置される複数の超伝導フィラメント(14)の長さ分と、前記超伝導ジョイントが極低温媒体(68)を運ぶパイプ(24)と熱的かつ機械的に接触するように、前記超伝導フィラメントと接触している、前記ジョイントカップを充填する超伝導材料(28)と、を備え、前記パイプは前記ジョイントカップ内へと延び、前記超伝導材料は前記ジョイントカップ内で前記パイプの周りに延在するものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
例えば、磁気共鳴イメージング(MRI)システムで使用するために超伝導ワイヤの比較的大型の電磁石を製造することが知られている。MRIシステムの既知のマグネットは直径が2m、長さが1.5mであり、数10キロメートルのワイヤを有する。一般にマグネットは、円筒形のマグネットの軸に沿って軸方向に離間したいくつかの比較的短いコイルから成り、いくつかの他の設計も知られているが、本発明は特定のマグネット設計には限定されない。
【背景技術】
【0002】
このような超伝導マグネットは通常、単一の長さ分の超伝導ワイヤから巻かれているわけではない。いくつかの別個のコイルを用いる場合、それらは通常個別に製造されて、マグネットの組み付け時に電気的に接合される。単一のコイル内においてでさえ、数個の長さ分のワイヤを接合しなければならないことが多い。
【0003】
超伝導ワイヤ間のジョイントは製造するのが難しい。最適なのは、ジョイント自体に超伝導性があること、すなわち、マグネット作動時に抵抗がゼロであるということである。これに関してはしばしば妥協があり、幾分かの抵抗を持った「超伝導」ジョイントがしばしば受け入れられている。
【0004】
超伝導ジョイントを製造する一般に周知の方式は、数個の長さ分の超伝導ワイヤを取り、各長さ分のワイヤの端部自体または端部付近の超伝導フィラメントから、典型的には銅である外部クラッドを剥離することである。
【0005】
それから、2つのワイヤの超伝導フィラメントを捻り合わせる。次に、結果として得られる捻ったフィラメントは、典型的には銅またはアルミニウムの、かなり浅い槽であるジョイントカップの内部へとコイル状に巻かれる。
【0006】
別法として、フィラメントは、ジョイントカップの内部へとコイル状に巻かれる前に、捻り合わせるのではなく、編み込みにすることもできる。
【0007】
別の構成では、ワイヤのフィラメントは必ずしも互いに接触するのではなく単純に並べて置かれてジョイントカップ内に配置される。次に、超伝導ジョイントが以下に説明するように製造される。
【0008】
次にジョイントカップは、典型的には液体ウッドメタルである超伝導材料で充填され、冷却し凝固して、複数のフィラメントを超伝導物質内に埋設するようにする。典型的なジョイントカップは、一端が閉じられた円筒形槽である。図1は、超伝導フィラメント14が捻り合わされた状態でワイヤ12が導き入れられる従来型のジョイントカップ10を示す。図1では、複数のフィラメントは捻り合わされておらず編み込まれてもいない。ジョイントカップは典型的には溶融ウッドメタルなどの液体超伝導ジョイント材料28で充填される。次に超伝導ジョイント材料は凝固させられる。
【0009】
本発明は、これらの特徴または方法ステップの変更を追及するものではなく、本質的にジョイントカップ自体に関するものである。
【0010】
従来、超伝導マグネットは、典型的にはヘリウムである液体極低温媒体浴に部分的に浸漬することによって冷却されていた。これによりコイルを超伝導転移温度より低い温度に維持する。超伝導ジョイントを液体極低温媒体内に浸漬することで、超伝導ジョイントも超伝導転移温度より低い温度に維持できる。
【0011】
ところが、マグネットの最近の設計は、極低温媒体浴を、コストが高いことや、状況によっては極低温媒体の浪費であることから回避している。これらの設計には冷却回路または熱サイフォン、すなわち循環している極低温媒体を運ぶ、マグネットと熱的に接触する熱伝導チューブを配設することができる。循環する極低温媒体は冷却され次にチューブへと導入されて、そこでマグネットから熱を取り出す。次に極低温媒体は膨張または沸騰して熱対流により循環してリザーバに戻り、そこで再冷却される。循環は重力誘導式でも、ポンプなどの任意の適切な手段によって補助されてもよい。極低温媒体浴を用いた構成の場合よりも、ずっと低量の極低温媒体が要求される。マグネットコイルの冷却は、チューブの壁を通した、または可能性としてはフォーマなどのマグネットコイル支持構造の材料を介した伝導によるものである。
【0012】
これらの場合において、ジョイントの冷却は、多くの従来型である液体極低温媒体への浸漬方式よりも冷却効果が低い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
したがって本発明は、改良された超伝導ジョイントを提供するために、液体極低温媒体への浸漬によって冷却されないマグネットにおいて超伝導ジョイントが充分に冷却されるようにするための超伝導ジョイント冷却方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
低量極低温媒体方式超伝導マグネット、すなわち、極低温媒体浴への浸漬による冷却に依存せず、例えば熱サイフォンまたは冷却回路内で低量の極低温媒体によって冷却される超伝導マグネット、を製造するためには、極低温媒体浴への浸漬による冷却を必要としない、適切に冷却される超伝導ジョイントを製造する必要がある。
【0015】
この課題への1つの取り組みは、銅またはアルミニウムブレードまたはラミネートなどのフレキシブルな熱伝導体を用いて、ジョイントを冷凍機に熱的に連結する、または電気的絶縁接着層を用いて、冷却される構成要素に超伝導ジョイントを取り付けることにある。この後者の取り組みは例えば、英国特許第2453734号(米国特許出願公開2009/0101325A1号に相応する)明細書に記載されている。
【0016】
後者を選択し難い理由は、超伝導ジョイントの効果的な冷却のための適切な熱伝導を維持しながらも充分な電気的絶縁を達成するところに生じる。これは一般に、英国特許第2453734号明細書に記載された例のうちいくつかに見られるように、冷却される構成要素と超伝導ジョイントとの間に複数の界面をもたらす。
【0017】
超伝導ジョイントが冷却される構成要素と熱的に接触して形成されているが、電気的絶縁層によって隔てられる別の取り組みが、同時係属中の英国特許出願1011475.9号明細書に記載されている。
【0018】
上記明細書は、改良された超伝導ジョイントと、超伝導ジョイントと冷却される構成要素との間に単一の電気的絶縁被膜のみが配置されている超伝導ジョイントの改良された形成方法とを提案している。その電気的絶縁被膜は、以前に採用されていた電気的絶縁被膜に比べてより薄く、より熱伝導性が高いものとすることができる。
【0019】
本発明は、特許請求の範囲に規定される超伝導ジョイントを提供することによって、これらの従来の構造を改良する。即ち、本発明は、「冷却される超伝導ジョイントであって、ジョイントカップと、前記ジョイントカップ内に配置される複数の超伝導フィラメントの長さ分と、前記超伝導ジョイントが極低温媒体を運ぶパイプと熱的かつ機械的に接触するように、前記超伝導フィラメントと接触している、前記ジョイントカップを充填する超伝導材料と、を備え、前記パイプは前記ジョイントカップ内へと延び、前記超伝導材料は前記ジョイントカップ内で前記パイプの周りに延在すること」を特徴とする。
【0020】
本発明の上記およびさらなる目的、特徴および利点は、図面と併せたいくつかの実施形態の以下の説明からより明白となろう。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】ウッドメタルで充填するジョイントカップを用いた従来型超伝導ジョイントの図である。
【図2】本発明の実施形態の模式断面図である。
【図3】図2の実施形態の透視図である。
【図4A】いくつかの同一部品から組み立てられるジョイントカップの実施形態の図である。
【図4B】いくつかの同一部品から組み立てられるジョイントカップの実施形態の図である。
【図4C】いくつかの同一部品から組み立てられるジョイントカップの実施形態の図である。
【図5】本発明の一実施形態による、熱サイフォン回路によって冷却され、いくつかの超伝導ジョイントが配設された超伝導マグネット構造の部分軸方向断面例の模式図である。
【図6】本発明の異なる実施形態による超伝導ジョイント60の断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明は、有効に冷却され、上述の従来型装置構成の空間よりも少ない空間を占める超伝導ジョイントを提供する。本発明は、多数のジョイントが低量極低温媒体方式超伝導マグネットシステムに収容されて効果的に冷却されることを可能にする。
【0023】
上記に論じたように、低量極低温媒体方式超伝導マグネットは、典型的に熱サイフォンによって冷却されるが、熱サイフォンとは、マグネットと熱的に接触していて極低温媒体を閉回路で廻らせて運び、それで極低温媒体が再冷却され再循環される熱伝導パイプである。
【0024】
特に、本発明は熱サイフォンの伝導パイプと直接熱的に接触している超伝導ジョイントを提供する。パイプが導電性材料である場合、超伝導ジョイント形成の前にパイプの適切な表面に電気絶縁被膜が施される。別の実施形態において、熱サイフォンパイプ、または少なくともその適切な部分は非導電性材料であり、その場合パイプの表面に電気絶縁被膜を施す必要はない。
【0025】
図2は、本発明の一実施形態の模式断面図であり、図3は同様の透視図である。
【0026】
本発明のこの実施形態において、超伝導ジョイント18は底部に穴22を有するジョイントカップ20を備える。熱サイフォンパイプ24はジョイントカップ20の底部の穴22を貫通する。これは、ジョイントカップをパイプ24に沿ってジョイントの所望の位置までスライドさせることによって達成される。超伝導ワイヤ12のフィラメント14は、従来技術および図1に関連してそれ自体説明されるようにジョイントカップ内に配置される。フィラメントは捻り合わせるか、或いは編み込むこともできるが、そのように処理しなくともよい。少なくともジョイントカップ20付近の部分の熱サイフォンパイプ24には電気的絶縁被膜層26が配設されている。これは、銅パイプ上への酸化アルミニウムまたはセラミックの噴霧堆積、または、銅パイプ上に化学的に形成された酸化銅の層、または例えば陽極酸化によってアルミニウムパイプ上に噴霧または形成された酸化アルミニウムの層である。別法として、エポキシ樹脂または同等物の層を、例えば噴霧によってパイプの関連する表面上に形成することができる。
【0027】
ジョイントカップはウッドメタルなどの溶融超伝導材料28で充填され、それは次に冷却されて硬化される。この工程はそれ自体従来の方法である。
【0028】
使用時、図2〜3の構造物はパイプ24を通じて流れる極低温媒体によって極低温まで冷却される。相対的に適切な熱膨張係数を持つ材料が選択されていれば、冷却中に超伝導材料28はパイプ24上に収縮して、超伝導材料28とパイプ24との間の、両者間に電気的絶縁層26を介在させた緊密な機械的界面を確実にする。
【0029】
これは、極低温媒体とジョイントとの間の良好な熱的連結を提供し、ジョイントの超伝導材料28は、パイプ24の材料と電気的絶縁層26によってのみ極低温媒体から隔離される。
【0030】
電気的絶縁層26は、例えばクエンチ時に起こり得る5kVまでの高電圧に耐えなければならない一方、比較的薄肉にする。そのようなセラミックまたはエポキシ層をパイプ上に噴霧して形成することができる。エマーソン&キューミング(Emerson & Cuming)によるスタイキャスト(STYCAST(登録商標))ブランド名で販売されているものの内のいずれかのようないくつかのエポキシ樹脂は、通常よりも大きな熱伝導性を持ち、好適に使用できる。
【0031】
図2および3に示すように、ジョイントカップは穴22の周縁に縁30を有する。好適には、縁30は円錐台形でありその円錐台形の狭い方の端部は穴22の輪周32から離間している。別の実施形態では、図示したように縁30はカップの容積内へと方向付けられても、またはカップの容積から離れた反対方向に方向付けられてもよい(図示せず)。縁は、超伝導ジョイント形成の前にカップをチューブ上の定位置に保持して、超伝導ジョイントが形成されるにつれて溶融超伝導材料28がジョイントカップから漏出することを防止するように形成されていると好適である。さらに縁は、パイプ上に配置されたときに電気的絶縁層26を破損しないように形成されているべきである。
【0032】
図4A〜4Cに示された別の実施形態では、2つまたはそれ以上の部品42に分割されたジョイントカップ40が提供される。好適には、図4A〜4Cに示すように、いくつかの同じ部品が使用され、互いに組み付けられてジョイントカップ40を形成する。
【0033】
図示された実施形態において、掛止構成43,44がジョイントカップ40の各部品42の縁に形成されて部品42の相互の組み付けを可能にしている。さらに好適には、また、図示しているように、各部品42の底部には、部品42間の接合部をジョイントカップの底部に封止することを助けるべく超伝導ジョイント形成中の溶融超伝導材料の漏出を防止する重なり凸部45が配設されている。付加的に、または別法として、少なくとも超伝導ジョイントが形成されるまでは、ジョイントカップの部分の外周の周りにクランプを施すこともできる。いくつかの実施形態では、掛止構成43,44を互いに圧着して、ジョイントカップの部品間のより堅固な封止と結合を得るようにしてもよい。
【0034】
ジョイントカップ40がいくつかの好適には同一の部品から形成されるような実施形態では、ジョイントカップをパイプに沿ってスライドさせる必要はなく、寧ろ所望の位置にある部品からジョイントカップを組み立てるようにすることもできる。こうして電気的絶縁層26への破損のリスクは低減される。
【0035】
一般に用いられるウッドメタルなどのいくつかの超伝導材料は、溶融状態においては非常に高い表面張力を有する。このことが、ジョイントカップの部品間、またはジョイントカップとパイプの界面における溶融超伝導材料の漏出の防止を助ける。
【0036】
図5は、熱サイフォン回路によって冷却され、本発明の一実施形態によるいくつかの超伝導ジョイントが配設されている超伝導マグネット構造の、部分的軸方向断面例を模式的に示す。
【0037】
図のように、超伝導ワイヤのいくつかのコイル50が、この場合は軸A−Aに沿って軸方向に整列して配設されている。それ自体が冷却回路構成の一部である極低温媒体パイプ24の部分が示されている。この例において軸A−Aは水平であることが意図されているが、パイプ24は、冷却回路を廻る極低温媒体の重力供給方式循環を助けるために若干の傾斜を設けている。パイプに沿っていくつかの超伝導ジョイント18が形成されている。上述したように、各コイルを構成するいくつかの超伝導ワイヤ間のジョイント、ならびにコイル間のジョイントが必要であるということは一般的であるため、必要な超伝導ジョイントの個数が、配設されるコイルの個数を大幅に超えることは一般的である。コイル50からジョイント18に延びる超伝導ワイヤは図には示されておらず、超伝導材料28も示されていない。図5に示すような構成において、マグネットが端部にあって軸A−Aが垂直である場合には、ジョイントカップ20を超伝導材料で充填するほうが簡単である。そのようなマグネットの製造工程においてこれは一般的なステップである。
【0038】
使用時、マグネットに電流が印加される前に、超伝導ジョイント18はその超伝導転移温度より下まで冷却される。したがって、各ジョイント18における消散電力はごく少量であり、つまり、超伝導ジョイントからの冷却回路への定常熱負荷は比較的小さい。この状況は、当技術分野で周知のようにクエンチの場合には該当しないが、本発明には直接関係しない。
【0039】
図6は、本発明の別の実施形態による超伝導ジョイント60の断面模式図を示す。この実施形態において、極低温媒体68を運ぶパイプ24には、棘突起62が配設され、この棘突起62はパイプから遠ざかるように延出しているが、パイプ24の内部へと開放した内部空隙64を有し、この内部空隙は、パイプが極低温媒体を収容している場合に極低温媒体68を収容する。この実施形態においてジョイントカップ66はその底部に穴を有さず、棘突起62はその開放端70を介してジョイントカップの容積内へと延出する。棘突起62または、少なくとも超伝導材料28と接触するその一部は電気的絶縁層26で被覆されている。これは、図2および3の実施形態に関連して述べた材料および方法のうちいずれによっても形成できる。
【0040】
ジョイント60は以下の方法によって製造されることができる。それ自体従来方法であるように、接合される複数の超伝導フィラメント14は、保護外被が剥離されて、必要に応じて捻り合わされるか編み込まれるか、或いはそのような処理をせずに、ジョイントカップ66内に配置される。一般にジョイントカップに適合させるためにフィラメントはコイル状に巻かれる。この処理を、棘突起62がワイヤのコイルの中心を通って延出するように行なうことが好ましい。次に溶融超伝導材料28がジョイントカップへと注入されて超伝導フィラメント14を覆い、棘突起62の所望の長さ分に接触するために充分な所望の深さまでジョイントカップを充填する。この実施形態において、超伝導材料28が凝固するまでジョイントカップを定位置に保持するための保持構成(図示せず)を、パイプ24に対して所望の位置に配設することが必要である。
【0041】
図6の構成は、ジョイントカップの底部に穴が必要でないためそのような穴からの漏出の可能性が排除されるという点において、図2および3の構成に比べて有利である。図6の構成は、パイプ24が水平に延びる位置に超伝導ジョイントを構築することが好ましい場合に用いることができる。ジョイントカップをパイプに沿ってスライドさせたり、ジョイントカップをパイプの周りに組み付けたりする必要がない。これは実質的に組立時の電気的絶縁層に対する破損のリスクを排除する。他方、図6の構成は、超伝導ジョイントが配設される位置毎にパイプに棘突起62を配設することを必要としない。
【0042】
図6に示す実施形態の一変形形態において、ジョイントカップ66はその底部に穴を配設したものでもよく、棘突起64は、図6に示すように、その開放端を介してジョイントカップへと下るように延出するというよりは、その穴を介して上方にジョイントへと延出することができる。
【0043】
上述した実施形態はすべて極低温媒体搬送パイプによって冷却されるが、本発明は、超伝導ジョイントが、機械式冷凍機または極低温媒体リザーバ、さらには超伝導ジョイントを通過しない極低温媒体搬送パイプなどの遠隔冷却源によって冷却される固体熱伝導体を介した伝導により冷却される同様の構成にも展開可能である。上記の実施形態全てが、各場合における極低温媒体搬送パイプを固体熱伝導体に単純に置き換えることによってそのような構成に適合させることができる。ここで、前記の「固体」とは液体または気体ではなく物の固体状態をいう。したがって固体熱伝導体は、アルミニウムまたは銅などの熱導電材料のブレードまたはラミネート、または材料の単一の棒状体から構成されることができる。極低温媒体パイプの実施形態のように、いかなる導電性固体熱伝導体でも、超伝導ジョイントと接触している領域においては電気的絶縁で被覆すきである。極低温媒体パイプの実施形態に関連して上述したように、酸化アルミニウム、セラミックまたはエポキシ樹脂の被膜を使用することができる。別法として、超伝導ジョイントと接触している領域に、特に被覆の必要がない非導電性固体熱伝導体を使用することもできる。固体熱伝導体は、使用時にマグネットを動作温度まで冷却するように働く冷却構成の一部を構成することができる。
【0044】
本発明を限られた数の特定の例に関連して述べてきたが、様々な変更および変形を行なえることが当業者には明白であろう。例えば、ウッドメタル以外の超伝導材料を使用して超伝導ジョイントを形成することもでき、本発明は、使用される極低温媒体にかかわらず、または、接合された超伝導ワイヤが投入される応用例にかかわらず適用されることができる。上記に論じた超伝導マグネットは超伝導ジョイントの一般的な応用例であるが、本発明は電動機、発電機またはエネルギー貯蔵システムなどの超伝導システムにも適用することができる。
【0045】
本発明をいくつかの実施形態に関連して述べてきたが、それらはすべて形状が円柱形のジョイントカップを用いるものである。しかし、ジョイントカップ自体の形状は本発明の限定するものではなく、本発明は例えば断面が円形、長方形、三角形、楕円形等のジョイントカップに適用することができる。実際、ジョイントカップは、超伝導ジョイントの容器として機能し、適切な量のウッドメタル等の溶融超伝導材料を保持するように機能する任意の形状およびサイズのものであってもよい。
【0046】
上述のように、ワイヤ12の超伝導フィラメント14は捻り合わされても、または一緒に編み込まれてもよく、或いは、超伝導ジョイントの形成の前に単に横並びに配置されてもよい。ジョイントカップの形状に応じて、複数のフィラメントがジョイントカップ内に配置できるようにコイル状に巻かれることができる。
【符号の説明】
【0047】
10 ジョイントカップ
12 ワイヤ
14 フィラメント
18 超伝導ジョイント
20 ジョイントカップ
22 穴
24 パイプ
26 電気的絶縁層
28 超伝導材料
30 縁
32 輪周
40 ジョイントカップ
42 部品
43 掛止構成
44 掛止構成
45 重なり凸部
50 コイル
60 超伝導ジョイント
62 棘突起
64 内部空隙
66 ジョイントカップ
68 極低温媒体
70 開放端

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却される超伝導ジョイント(18;60)であって、
ジョイントカップ(20;40;66)と、
前記ジョイントカップ内に配置される複数の超伝導フィラメント(14)の長さ分と、
前記超伝導ジョイントが極低温媒体(68)を運ぶパイプ(24)と熱的かつ機械的に接触するように、前記超伝導フィラメントと接触している、前記ジョイントカップを充填する超伝導材料(28)と、
を備え、
前記パイプは前記ジョイントカップ内へと延び、前記超伝導材料は前記ジョイントカップ内で前記パイプの周りに延在することを特徴とするジョイント。
【請求項2】
前記パイプは導電性材料製であり、前記パイプの表面上に電気的絶縁層(26)が配設されており、その結果、前記パイプと前記超伝導材料との間に電気的絶縁層が延在してそれにより超伝導ジョイントが前記パイプから電気的に絶縁される請求項1に記載のジョイント。
【請求項3】
前記パイプは非導電性材料である請求項1に記載のジョイント。
【請求項4】
前記パイプは前記ジョイントカップを貫通し、前記超伝導材料は前記ジョイントカップ内で前記パイプの周りに延在する請求項1から3のいずれかに記載のジョイント。
【請求項5】
前記ジョイントカップには底部に穴(22)が配設されており、前記パイプは前記ジョイントカップの前記底部の前記穴(22)を貫通して延出する請求項4に記載のジョイント。
【請求項6】
前記ジョイントカップは少なくとも2つの部品(42)で形成され、前記超伝導ジョイントの形成前に前記パイプの周りに組み付けられる請求項4に記載のジョイント。
【請求項7】
前記ジョイントカップは単一体として形成され、前記超伝導ジョイントの形成前に前記パイプの上に配置される請求項4に記載のジョイント。
【請求項8】
複数の超伝導ジョイント(18)が対応する複数のジョイントカップ内に形成され、前記パイプは前記ジョイントカップそれぞれを貫通している請求項4から7のいずれかに記載のジョイントカップ。
【請求項9】
前記パイプには棘突起(62)が配設され、前記パイプの前記棘突起は前記ジョイントカップ内へと延び、前記超伝導材料は前記ジョイントカップ内で前記パイプの周りに延在し、前記パイプの前記棘突起は、前記パイプの棘突起と前記超伝導材料との間に延在する電気的絶縁層で被覆されている請求項1から8のいずれかに記載のジョイント。
【請求項10】
前記電気的絶縁被膜は、前記パイプの外表面に施されたセラミック噴霧被膜からなる請求項2記載のジョイント。
【請求項11】
請求項1から10のいずれかに記載のジョイント(18)によって接合された超伝導ワイヤのいくつかのコイル(50)を備えた、冷却される超伝導マグネットであって、前記パイプ(24)は、使用時に前記マグネットをその動作温度へと冷却するように働く熱サイフォンの一部を形成する、冷却される超伝導マグネット。
【請求項12】
冷却される超伝導ジョイントであって、
ジョイントカップと、
前記ジョイントカップ内に配置された複数の超伝導フィラメントと、
前記超伝導ジョイントが固体熱伝導体と熱的かつ機械的に接触するように、前記超伝導フィラメントと接触している、前記ジョイントカップを充填する超伝導材料と、
を備え、
前記固体熱伝導体は前記ジョイントカップ内へと延び、前記超伝導材料は前記ジョイントカップ内で前記固体熱伝導体の周りに延在することを特徴とする、冷却される超伝導ジョイント。
【請求項13】
前記固体熱伝導体は、熱伝導材料のブレードまたはラミネート、或いは材料の単一棒状体のうち1つである請求項12に記載の冷却される超伝導ジョイント。
【請求項14】
前記固体熱伝導体は導電性材料製であり、前記固体熱伝導体の表面上に電気的絶縁層(26)が配設されており、その結果、前記固体熱伝導体と前記超伝導材料との間に電気的絶縁層が延在してそれにより超伝導ジョイントが前記固体熱伝導体から電気的に絶縁される請求項12または13に記載のジョイント。
【請求項15】
前記固体熱伝導体は非導電性材料である請求項12に記載のジョイント。
【請求項16】
前記固体熱伝導体は前記ジョイントカップを貫通し、前記超伝導材料は前記ジョイントカップ内で前記固体熱伝導体の周りに延在する請求項12から15のいずれかに記載のジョイント。
【請求項17】
前記ジョイントカップには底部に穴(22)が配設されており、前記固体熱伝導体は前記ジョイントカップの前記底部の前記穴(22)を貫通して延出する請求項16に記載のジョイント。
【請求項18】
前記ジョイントカップは少なくとも2つの部品(42)で形成されて前記超伝導ジョイントの形成前に前記固体熱伝導体の周りに組み付けられる請求項16記載のジョイント。
【請求項19】
前記ジョイントカップは単一体として形成され、前記超伝導ジョイントの形成前に前記固体熱伝導体の上に配置される請求項16に記載のジョイント。
【請求項20】
複数の超伝導ジョイント(18)が対応する複数のジョイントカップ内に形成され、前記固体熱伝導体は前記ジョイントカップそれぞれを貫通している請求項16から19のいずれかに記載のジョイント。
【請求項21】
前記固体熱伝導体には棘突起(62)が配設され、前記固体熱伝導体の前記棘突起は前記ジョイントカップ内へと延び、前記超伝導材料は前記ジョイントカップ内で前記固体熱伝導体の周りに延在し、前記固体熱伝導体の前記棘突起は、前記固体熱伝導体の棘突起と前記超伝導材料との間に延在する電気的絶縁層で被覆されている請求項12から20のいずれかに記載のジョイント。
【請求項22】
前記電気的絶縁被膜は、前記固体熱伝導体の外表面に施されたセラミック噴霧被膜からなる請求項14に記載のジョイント。
【請求項23】
請求項1から22のいずれかに記載のジョイント(18)によって接合された超伝導ワイヤのいくつかのコイル(50)を備えた冷却される超伝導マグネットであって、前記固体熱伝導体(24)は、使用時に前記マグネットをその動作温度へと冷却するように働く冷却装置構成の一部を形成する超伝導マグネット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−156507(P2012−156507A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−9901(P2012−9901)
【出願日】平成24年1月20日(2012.1.20)
【出願人】(509272285)シーメンス ピーエルシー (9)