説明

超純水製造装置

【課題】溶存酸素などの不純物濃度が極めて低い超純水を、長期に渡って製造できる超純水製造装置を提供すること。
【解決手段】一次純水を導入し、超純水を製造する超純水製造装置1の紫外線酸化装置3の後段に、触媒担体と強塩基性アニオン交換樹脂とが混合されて充填されている触媒混合塔4を配置する。触媒混合塔4の後段には、さらに、膜脱気装置5および脱塩装置6を配置する。紫外線酸化装置3で生成された過酸化水素などは、触媒混合塔4に充填された触媒担体と接触して分解され、強塩基性アニオン交換樹脂の分解が抑制される。このため、触媒混合塔4からの溶出物質を低減し、超純水の水質を向上させるとともに、後段に設けられる脱塩装置6の負荷を低くできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超純水製造装置に関し、特に、溶存酸素などの不純物濃度が極めて低い超純水を得ることができる超純水製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、超純水製造装置として、前処理システム、一次純水システム、および二次純水システム(または「サブシステム」)を備えるものが知られている。このような超純水製造装置では、工業用水などの原水を、凝集沈殿装置などを備えた前処理システムで処理したのち、脱塩装置などを備えた一次純水システムで処理して一次純水を得、さらに、二次純水システムでこの一次純水から微量の不純物を除去して、比抵抗が15〜18MΩ・cm程度の超純水を製造する。
【0003】
このようにして製造された超純水は、半導体製品の洗浄などに使用されるが、超純水に有機物や金属などの不純物が含まれていると、パターン欠陥などの半導体 製品の不良を招く恐れがある。このため、超純水を製造する際、これらの不純物は極力、除去することが求められる。特に、近年の半導体製品の高集積化に伴って、超純水の水質に対する要求は厳しくなっており、超純水の有機物(TOC)濃度は1μg/L未満、金属濃度1ng/L未満であることが求められている。
【0004】
また、超純水に溶存酸素が含まれていると、半導体製品の酸化皮膜の厚さをコントロールしにくくなることから、超純水の溶存酸素濃度についても、極力、低減することが求められている。具体的には、近年では超純水の溶存酸素濃度を5μg/L未満とすることが求められている。
【0005】
そこで、超純水製造装置で製造される超純水の溶存酸素濃度を低減するために、紫外線酸化装置後段に、イオン交換装置および膜脱気装置が配置されている超純水製造装置が提案されている(特許文献1)。
【0006】
超純水製造装置に設けられた紫外線酸化装置は、紫外線を照射して、一次純水に含まれる微量の有機物を酸化分解する。有機物の酸化分解により生じた二酸化炭素などは、紫外線酸化装置の後段に設けられたイオン交換装置で除去される。紫外線酸化装置による紫外線照射処理では、紫外線の照射量が過剰となることにより、過酸化水素やオゾンなどが生成されることがある。紫外線酸化装置で生成された過酸化水素などは、後段のイオン交換装置で分解されて酸素を生成するため、溶存酸素濃度が上昇する。
【0007】
これに対し、特許文献1に記載された超純水製造装置は、イオン交換装置後段に膜脱気装置を設けるため、イオン交換装置で過酸化水素などが分解されて生じた酸素を除去し、超純水の溶存酸素濃度を低減できる。
【0008】
しかし、過酸化水素などはイオン交換装置に充填されているイオン交換樹脂を分解する。このため、紫外線酸化装置後段にイオン交換装置を設ける場合、イオン交換樹脂が分解され、イオン交換装置から分解生成物が溶出する。こうした溶出物質は、超純水の水質を悪化させる原因となる。また、膜脱気装置からは微量の金属イオンが溶出し、超純水の水質低下の原因となる。
【0009】
このため、膜脱気装置後段に、さらに、不純物除去装置を設けることが考えられるが、膜脱気装置前段に設けられたイオン交換装置から溶出した物質は、後段に設けられた不純物除去装置の負荷を増大させる。不純物除去装置の負荷が高いと、この不純物除去装置の寿命が短くなる。
【0010】
不純物除去装置などの超純水製造装置構成部材を交換する際、超純水製造装置の運転は停止される。超純水製造装置の停止中は、半導体製品の製造が停止され、また、超純水製造装置の運転再開に際しては、二次純水システムを殺菌洗浄した後、超純水製造装置内に滞留した液体を排出するために、12〜24時間程度の時間をかけて、装置を立ち上げる必要がある。
【0011】
このため、超純水製造装置は長期に渡り、連続運転できるものであることが求められ、例えば、連続して3年以上運転できることが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平9−29251号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、紫外線酸化装置後段に設けられるイオン交換装置からの溶出物質を低減し、長期間、高水質の超純水を連続して製造できる超純水製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の超純水製造装置は、少なくとも紫外線酸化装置を備え、一次純水を被処理液として処理して超純水を製造する超純水製造装置において、紫外線酸化装置後段に、担体に触媒が担持された触媒担体と、アニオン交換樹脂とを有する触媒混合塔が配置されていることを特徴とする。
【0015】
本発明に係る紫外線酸化装置と触媒混合塔とは、一次純水を被処理液として導入して超純水を製造する超純水製造装置の二次純水システムを構成する。一次純水は、前処理装置により、懸濁物質などを除去した濾過水を、さらに一次純水システムにより処理して得られるもので、比抵抗10MΩ・cm以上で、水以外の不 純物が少ない液体である。
【0016】
紫外線酸化装置は、紫外線ランプを備え、この一次純水に僅かに含まれる有機物を分解する装置である。紫外線酸化装置に設けられる紫外線ランプとしては、254nm付近または185nm付近の波長の紫外線を照射できるランプを用い、例えば低圧水銀ランプなどを使用する。185nm付近の波長の紫外線は、254nm付近の波長の紫外線に比べ、有機物分解能力が高く、好ましい。紫外線酸化装置の構造は、滞留型、または流通型など任意の構造を採用できる。
【0017】
触媒混合塔は、触媒が担体に担持されてなる触媒担体と、アニオン交換樹脂とを同一塔内に保持する。紫外線酸化装置後段に、触媒のみを保持する触媒塔とアニオン交換樹脂のみを保持するアニオン交換塔とをこの順に配置することも考えられるが、二次純水システムを簡素化するため、アニオン交換樹脂と触媒担体とは同一塔内に保持することが好ましい。また、触媒混合塔は、触媒担体とアニオン交換樹脂以外に、例えばカチオン交換樹脂などを含んでもよい。
【0018】
触媒混合塔内において、アニオン交換樹脂と触媒担体とは分離されて保持されてもよく、混合された状態で保持されてもよい。触媒混合塔を、アニオン交換樹脂と触媒担体とを分離した状態で保持する、いわゆる複層式のものとする場合、被処理液の流入側に触媒担体層を配置し、流出側にアニオン交換樹脂層を配置することが好ましい。
【0019】
触媒混合塔は、アニオン交換樹脂に対して、触媒担体を3〜20重量%、特に8〜13重量%の比率で混合して構成することが好ましい。触媒担体の混合比率が少なすぎると、過酸化水素の分解効率が低下する。一方、触媒担体の混合比率が多すぎると触媒担体自体から溶出する物質の溶出量が増大する。
【0020】
触媒混合塔に充填されるアニオン交換樹脂は、非再生型の強塩基性アニオン交換樹脂を用いることが好ましいが、弱塩基性のアニオン交換樹脂を用いることもできる。また、アニオン交換樹脂の基体の種類に特に制限はなく、例えば、スチレン系、アクリル系、メタアクリル系、およびフェノール系のものを使用できる。アニオン交換樹脂の基体の構造にも特に限定はなく、ゲル型、ポーラス型、およびハイポーラス型のものなどを用いることができ、特にゲル型のものは好適に使用できる。
【0021】
担体に担持させる触媒としては、過酸化水素を分解できるものであれば特に制限なく使用できる。具体的には、パラジウム、二酸化マンガン、または塩化第二鉄などが挙げられる。これらの中で、パラジウムを含むパラジウム合金は、触媒自体から溶出する溶出物質の量が少ないため、好適に使用できる。
【0022】
触媒を担持させる担体としては、イオン交換樹脂、活性炭、アルミナ、およびゼオライトなどが挙げられる。特に、アニオン交換樹脂を担体として触媒を担持させた触媒担体である触媒樹脂はアニオン交換樹脂と均一に混合しやすく、好ましい。
【0023】
触媒担体の大きさおよび形状に特に制限はなく、粒状、およびペレット状のいずれも使用できる。しかし、多角形状の触媒担体は、触媒混合塔から流出して後段の装置の負荷となる恐れがあるため、アニオン交換樹脂などのイオン交換樹脂に担持された球形の触媒担体を用いることが好ましい。
【0024】
触媒混合塔への被処理液の通液速度は、SV=10〜200hr−1程度とすることが好ましい。被処理液の通液方向に制限はない。しかし、触媒担体と、アニオン交換樹脂とでは、比重が異なる場合があるため、両者の混合状態を適正な状態に保つために、下向流とすることが好ましい。
【0025】
本発明では、触媒混合塔後段に膜脱気装置を配置し、膜脱気装置後段に、脱塩装置をさらに配置することが好ましい。
【0026】
膜脱気装置としては、脱気膜を介して、被処理液が導入される空間(以下、「液体室」という)と、被処理液中の気体が移行される空間(以下、「吸気室」という)とが形成されたものが用いられる。吸気室は真空ポンプなどによって減圧されており、液体室に導入した被処理液に含まれる気体を、脱気膜を介して吸気室側に移行させ、被処理液中の気体を除去する。
【0027】
膜脱気装置に備えられる脱気膜としては、酸素、窒素、および二酸化炭素などの気体を透過させる一方、液体を透過させない膜であれば特に制限なく使用できる。脱気膜の具体例としては、シリコンゴム系、テトラフルオロエチレン系、ポリテトラフルオロエチレン系、ポリオレフィン系、およびポリウレタン系などの疎水性の高分子膜がある。脱気膜の形状としては、中空糸膜状、平膜状などがある。
【0028】
膜脱気装置後段に設ける脱塩装置は、電気式脱塩装置、またはイオン交換樹脂塔などの任意のものを使用できる。イオン交換樹脂塔は、アニオン交換樹脂の単床層とカチオン交換樹脂の単床層とを同一の塔内に備えた複層式のものを使用してもよく、あるいはアニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂とを混合した混合床を備えた混床式のものを使用してもよい。また、アニオン交換樹脂の単床のアニオン交換塔とカチオン交換樹脂の単床のカチオン交換塔とを直列に接続して脱塩装置を構成してもよい。
【0029】
上記の脱塩装置の中で、強酸性カチオン交換樹脂と強塩基性アニオン交換樹脂とを混合した混合床を備えた非再生型イオン交換樹脂塔は、イオン除去能力が高く、脱塩装置から溶出する物質が少なく、特に好ましい。
【発明の効果】
【0030】
本発明では、紫外線酸化装置で有機物を分解し、被処理液である一次純水に含まれる有機物を除去する。有機物の酸化分解により生じた二酸化炭素などの分解生成物は、有機物酸化装置後段に配置された触媒混合塔で、塔内に保持されたアニオン交換樹脂により吸着され、除去される。このため、本発明に係る超純水製造装置は、陰イオン成分による負荷が高い場合でも、高水質の超純水を製造できる。
【0031】
紫外線酸化装置から排出される液体(以下、「酸化処理水」という)には、過酸化水素やオゾンなどが含まれる。酸化処理水に含まれる過酸化水素などは、アニオン交換樹脂と接触すると、分解されて酸素を生成するとともに、アニオン交換樹脂を分解する。本発明では、過酸化水素などを含む酸化処理水が導入される触媒混合塔に、アニオン交換樹脂とともに触媒担体が充填されていることから、過酸化水素などは担体に担持された触媒と優先的に反応して分解され、アニオン交換樹脂の分解が抑制される。このため、触媒混合塔から排出される液体(以下、「混合塔流出水」という)中に溶出する樹脂分解物を低減できる。
【0032】
また、本発明では、触媒混合塔内に触媒担体が保持されていることから、酸化処理水に含まれる過酸化水素などの分解が促進される。このため、触媒混合塔流出水中には過酸化水素などがほとんど残存しない。したがって、本発明によれば、触媒混合塔の後段に設けられた脱気膜装置を通過した液体中に過酸化水素などが残存することを防止し、脱気膜装置後段で、過酸化水素などが分解して酸素が生成され、溶存酸素濃度が高くなることを防止できる。
【0033】
さらに、触媒混合塔後段に膜脱気装置を配置することで、触媒混合塔で過酸化水素などが分解されて生じた酸素などの気体を除去できる。また、膜脱気装置後段に、脱塩装置を配置することにより、膜脱気装置から溶出した金属イオンなどのイオン性物質を除去できるため、金属濃度が1ng/L未満の高水質の超純水を製造できる。
【0034】
膜脱気装置の前段には、アニオン交換樹脂と触媒担体とを含む触媒混合塔が配置されているため、触媒混合塔から溶出する物質量が少なく、後段の脱塩装置は長期に渡り、継続して使用できる。したがって、本発明によれば、溶存酸素や金属などの不純物濃度が極めて低い、高水質の超純水を長期間、連続して製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の一実施形態に係る超純水製造装置の模式図である。
【図2】実施例2および比較例3の試験結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
次に、図面を用いて本発明について詳細に説明する。
【0037】
図1は、本発明の第1実施形態に係る超純水製造装置1の模式図である。超純水製造装置1は、貯留タンク2、紫外線酸化装置3、触媒混合塔4、膜脱気装置5、脱塩装置6、および限外濾過膜を備えた膜濾過装置7を備えている。貯留タンク2内には、図示しない前処理システム、および一次純水システムにより処理された一次純水が貯留されている。
【0038】
前処理システムは、凝集沈殿装置や濾過装置などを備え、工業用水などの原水に含まれる懸濁物質や有機物の一部を除去する。一次純水システムは、前処理システムから供給される液体(濾過水)中の不純物を除去して、比抵抗10MΩ・cm以上、溶存酸素濃度0〜1000μg/L、有機物濃度0〜20μg/L、金属濃度が0〜1μg/L程度の一次純水を製造するシステムである。一次純水システムは、例えば、脱塩装置、逆浸透膜濾過装置、および脱気装置などで構成される。
【0039】
紫外線酸化装置3、触媒混合塔4、膜脱気装置5、脱塩装置6、および膜濾過装置7は、一次純水を被処理液とし、一次純水に含まれる微量の不純物を除去して超純水を製造し、二次純水システム、またはサブシステムとも称される。
【0040】
本実施形態では、紫外線酸化装置3は、185nm付近および254nm付近の波長の紫外線を照射する低圧水銀ランプ(140W、10本)を備えている。
【0041】
触媒混合塔4は、強塩基性アニオン交換樹脂と、アニオン交換樹脂を担体としてパラジウムを担持させた触媒担体である触媒樹脂とが混合された触媒混合床を備えている。触媒樹脂は、アニオン交換樹脂に塩化パラジウムの酸性溶液を接触させることにより調整したものである。触媒混合床は、この触媒樹脂を、強塩基性アニオン交換樹脂に対して、5〜10重量%となるように混合して構成している。
【0042】
膜脱気装置5は、ポリプロピレン系の高分子膜を中空糸状に形成された気体分離膜を備え、この気体分離膜を介して、液体室と吸気室とが対向するように設けられている。膜脱気装置5では、液体室に被処理液を導入し、吸気室を減圧することにより、被処理液に含まれる気体を吸気室側に移行させ、溶存酸素濃度を1μg/L未満、全溶存ガス濃度を3000ng/L未満とする。
【0043】
脱塩装置6は、強塩基性カチオン交換樹脂と強酸性アニオン交換樹脂とを、1対1の割合で混合した混合床を備えた混床式のイオン交換樹脂塔である。また、脱塩装置6の後段には、限外濾過膜を備えた膜濾過装置7を設けている。
【0044】
貯留タンク2、紫外線酸化装置3、触媒混合塔4、膜脱気装置5、脱塩装置6、および膜濾過装置7は、この順に配置され、隣接する機器は、配管により直列に接続されている。超純水製造装置1は、これらの機器以外のものを含んでもよい。例えば、紫外線酸化装置3の前段には、熱交換器を設けることができる。
【0045】
本実施形態に係る超純水製造装置1では、貯留タンク2に一時的に貯留された一次純水を、送液ポンプ(図示せず)などの送液手段により、貯留タンク2から紫外線酸化装置3へ導入する。紫外線酸化装置3では、被処理液としての一次純水に含まれる有機物が分解されるとともに、過酸化水素などが生成される。また、紫外線酸化装置3での紫外線照射により、一次純水が殺菌され、バクテリアなどの増殖が抑制される。
【0046】
紫外線酸化装置3で処理された液体は、酸化処理水として紫外線酸化装置3から排出される。酸化処理水は、触媒混合塔4の被処理液として、触媒混合塔4内にSV=10〜200hr−1程度、好ましくはSV=50〜150hr−1で通液する。触媒混合塔4に導入された酸化処理水は、触媒混合床を構成する触媒樹脂と接触し、過酸化水素などが分解されて除去されるとともに、強塩基性アニオン交換樹脂と接触することにより、炭酸イオンなどが除去される。
【0047】
触媒混合塔4で処理された液体は、混合塔流出水として触媒混合塔4から排出され、膜脱気装置5に供給される。膜脱気装置5は、混合塔流出水を被処理液とし、混合塔流出水に含まれる溶存酸素などの気体を除去する。膜脱気装置5で脱気処理されて得られる液体(以下、「脱気処理水」という)は、触媒混合塔4や膜脱気装置5から流出した微量の不純物を含む。
【0048】
そこで、脱気処理水を、さらに脱塩装置6に供給し、溶存イオンを除去する。本発明では、この脱塩装置6は非再生型のイオン交換樹脂塔であり、イオン交換樹脂の吸着量が飽和点に達した場合は、イオン交換樹脂を取替える。
【0049】
本発明では、紫外線酸化装置3とこの脱塩装置6との間に、触媒担体とアニオン交換樹脂とを含む触媒混合塔が設けられていることから、脱塩装置6の負荷は低い。このため、脱塩装置6を小型化することができる、あるいは、脱塩装置6に充填されたイオン交換樹脂の交換頻度を少なくして3年以上の長期連続運転ができる。
【0050】
脱塩装置6で処理された液体(以下、「脱塩処理水」という)は、膜分離装置7に供給され、脱塩装置6で除去されなかった金属微粒子などの不溶性成分が除去される。膜分離装置7から排出される液体は、不純物濃度が極めて低い超純水である。このように、本発明の超純水製造装置1によれば、比抵抗18〜18.25MΩ・cm程度で、有機物濃度(TOC)1μg/L未満、溶存酸素濃度5μg/L未満、金属濃度1ng/L未満の超純水を得ることができる。
【0051】
膜濾過装置7から排出された超純水は、配管を通じて、半導体製品洗浄装置(図示せず)などが設けられたユースポイント8へ供給される。また、図に示すように、ユースポイント8で使用されなかった超純水は、配管を通じて貯留タンク2へ循環させる。これにより、超純水製造装置1を常時稼動させ、配管などで超純水が滞留し、バクテリアが繁殖することや、装置構成部材から金属などの物質が溶出することによる水質低下を防止する。
【実施例】
【0052】
[実施例1]
図1に示した超純水製造装置1を用い、原水を前処理装置および一次純水システムで処理して得られた一次純水を被処理液として処理し、超純水を製造した。前処理装置としては、凝集沈殿装置および砂濾過装置を備えたものを用いた。また、一次純水システムとしては、2床3塔式イオン交換樹脂塔、逆浸透膜装置、および真空脱気装置を備えたものを用いた。
【0053】
原水の水質は、電気伝導度20mS/m、TOC濃度700〜1200μg/L、溶存酸素濃度6〜8mg/L、金属濃度0〜20mg/L、一次純水の水質は、比抵抗17.8MΩ・cm、TOC濃度1〜5μg/L、溶存酸素濃度10〜50μg/L、金属濃度10〜100ng/Lであった。また、触媒混合塔4への通液速度はSV=80とした。
【0054】
[比較例1]
図1の超純水装置1の触媒混合塔4に代えて、強塩基性アニオン交換樹脂と強酸性カチオン交換樹脂との混床式のイオン交換樹脂塔を配置し、さらに、脱塩装置6を取り除いて超純水製造装置を構成した。すなわち、比較例1では、一次純水を、紫外線酸化装置、混床式イオン交換樹脂塔、膜脱気装置、および限外膜濾過装置の順で通水して、超純水を製造した。
【0055】
混床式イオン交換樹脂塔は、触媒樹脂を含まない以外は実施例1と同じ構成で、紫外線酸化装置、膜脱気装置、および限外膜濾過装置の構成は実施例1と同じとした。
【0056】
[比較例2]
比較例2として、比較例1の超純水製造装置の膜脱気装置後段に、実施例1で用いたイオン交換装置と同じイオン交換装置を配置した。すなわち、比較例2では、一次純水を紫外線酸化装置、混床式イオン交換樹脂塔、膜脱気装置、混床式イオン交換樹脂塔、および限外膜濾過装置の順で通水して超純水を製造した。
【0057】
表1に、実施例および比較例の各装置出口で採取した液体中の過酸化水素濃度を示す。なお、以下の表において、「UV」は紫外線酸化装置、「ADI」は触媒混合塔、「MD」は膜脱気装置、「DI1」は混床式イオン交換樹脂塔、「DI2」は混床式イオン交換樹脂塔、「UF」は限外膜濾過装置を意味する。また、数値単位は、金属濃度を除いて全て、μg/Lとする。
【0058】
【表1】

【0059】
表2に、実施例および比較例の各装置出口で採取した液体中の溶存酸素濃度を示す。
【0060】
【表2】

【0061】
表3に、実施例および比較例の各装置出口で採取した液体中のTOC濃度を示す。
【0062】
【表3】

【0063】
表4に、実施例および比較例の各装置出口で採取した液体中の金属(Fe)濃度を示す。表4については、数値の単位はng/Lである。
【0064】
【表4】

【0065】
表1〜4に示す通り、比較例においては、限外濾過膜出口水(超純水)の溶存酸素濃度、TOC濃度、または金属濃度のいずれかが高くなったのに対し、実施例では、過酸化水素水濃度、溶存酸素濃度、およびTOC濃度はいずれも1μg/L未満であり、金属濃度も1ng/L未満で、高水質の超純水を製造することができた。
【0066】
[実施例2]
実施例2として実施例1と同様に図1に示す超純水製造装置1を用い、触媒混合塔4に通液される被処理液の通液速度を変えて試験を行なった。具体的には、触媒混合塔4への通液速度は実施例1ではSV=80としたのに対し、実施例2ではSV=53とした。なお触媒混合塔4に供給される紫外線酸化装置3出口液の過酸化水素濃度は、実施例1では表1に示すとおり12μg/Lであったのに対し、実施例2では29μg/Lであった。
【0067】
[比較例3]
触媒混合塔4に代えて強塩基性アニオン交換樹脂を含まず触媒樹脂が単独で充填された触媒塔を用い、この触媒塔に通液速度を変化させて、通液する試験を行った。紫外線酸化装置3の出口液の過酸化水素濃度は実施例2と同じく29μg/Lであった。
【0068】
図2に実施例2および比較例3の試験結果を示す。図2において縦軸は、紫外線酸化装置3出口における液体の過酸化水素濃度に対する触媒混合塔4出口における液体の過酸化水素濃度から求めた過酸化水素の分解率(%)、横軸は触媒樹脂に対する通液速度(SV)を示す。図2において、過酸化水素の分解率(%)は符号Hで示し、実施例2の結果は符合PE2で示す四角形の点で表し、比較例3の結果はCE3で示す三角形の点で表す。実施例2では触媒混合塔4にはアニオン交換樹脂と触媒樹脂とが充填され、触媒樹脂の割合はアニオン交換樹脂に対して5重量%であるため、触媒樹脂に対する通液速度としてはSV=1065となる。
【0069】
触媒樹脂単独で処理する比較例3では、過酸化水素の分解率は通液速度が大きくなるに従って低下し、過酸化水素の分解率と通液速度との関係は図2に示す直線状になることが示された。一方、触媒樹脂とアニオン交換樹脂との混合床で処理した実施例2の結果は比較例3の試験結果から導かれた直線から想定される過酸化水素分解率よりはるかに高いことが示された。
【0070】
本発明は、LSIやウェハなどの半導体製品の製造や、医薬品製造などに用いられる超純水製造装置に適用できる。
【符号の説明】
【0071】
1 超純水製造装置
2 貯留タンク
3 紫外線酸化装置
4 触媒混合塔
5 膜脱気装置
6 脱塩装置
7 膜濾過装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外線酸化装置を備え、一次純水を被処理液として導入して超純水を製造する超純水製造装置であって、
前記紫外線酸化装置後段に、担体に触媒が担持された触媒担体と、アニオン交換樹脂と、を有する触媒混合塔が配置されていることを特徴とする超純水製造装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−194402(P2011−194402A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−128421(P2011−128421)
【出願日】平成23年6月8日(2011.6.8)
【分割の表示】特願2006−511705(P2006−511705)の分割
【原出願日】平成17年3月30日(2005.3.30)
【出願人】(000001063)栗田工業株式会社 (1,536)
【Fターム(参考)】